特許第5788332号(P5788332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788332
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】アトピー性皮膚炎予防剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20150910BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20150910BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20150910BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   A61K37/12
   A61P17/04
   A61P37/08
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K9/08
   A61K9/14
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-545082(P2011-545082)
(86)(22)【出願日】2010年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2010007099
(87)【国際公開番号】WO2011070767
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2009-280606(P2009-280606)
(32)【優先日】2009年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100064447
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100102808
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 憲通
(74)【代理人】
【識別番号】100128646
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 恒夫
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕明
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 敦
(72)【発明者】
【氏名】大澤 謙二
(72)【発明者】
【氏名】清水 和正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅範
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−148610(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/039368(WO,A1)
【文献】 特開2007−167079(JP,A)
【文献】 特開2008−072935(JP,A)
【文献】 特開2008−195702(JP,A)
【文献】 特開2001−048789(JP,A)
【文献】 特開2001−302690(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/128584(WO,A1)
【文献】 齊藤 美智子 他,海洋性コラーゲンペプチド「マリンマトリックス」の特性と美容効果,FOOD Style 21,2003年 2月 1日,第7巻, 第2号,p.85−88
【文献】 大原浩樹 他,コラーゲンペプチド経口摂取による皮膚角層水分量の改善効果,日本食品科学工学会誌,2009年 3月,第56巻, 第3号,p.137−145
【文献】 速水 千佐子,アトピー性皮膚炎の病態−バリア機能の観点から,医学のあゆみ,2009年 1月 3日,第228巻, 第1号,p.15−19
【文献】 J Agric Food Chem, vol.55, p.1532-1535 (2007)
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL 2006-3 p.33-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00〜38/58
A61P 1/00〜43/00
A61K 9/00〜9/72
A23L 1/30〜1/308
A23L 2/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚由来のコラーゲンを含み、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤または散剤のいずれかから選ばれるアトピー性皮膚炎予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアトピー性皮膚炎予防剤ならびにそれを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰返す、痒のある湿疹を主病変とする疾患である。
アトピー性皮膚炎の主要病変は、皮膚の紅斑または丘疹、耳切れ、乾燥性皮膚、粃糠様落屑を伴う毛孔一致性角化性丘疹、患部皮膚の掻は痕があげられる。近年の調査によると、アトピー性皮膚炎の有症率は4カ月児12.8%、1歳半児9.8%、3歳児13.2%、小学1年生11.8%、小学6年生10.6%、大学1年生8.2%であり、小児においては10人に1人と高い。原因・悪化因子は、食物、発汗、環境因子、細菌真菌、接触抗原、ストレスなどが主なものとされ、その治療さらには予防が求められる。
【0003】
アトピー性皮膚炎の治療は1)原因・悪化因子の検索と対策 2)スキンケア 3)薬物療法により行われる。1)2)によって症状が軽快しない場合に薬物による治療行われる。薬物はステロイド外用薬が最も広く用いられ、多種類のステロイド外用薬が存在する。一方、非ステロイド系の外用薬としては、免疫調整剤であるプロトピックは近年その有用性が認められている。また、経口薬としては抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などが用いられ、最重症度の患者に限ってはステロイドの内服薬が一時的に用いられる場合もある。しかし、ステロイドは、外用薬として使用した場合、皮膚の萎縮、血管拡張、毛のう炎などの副作用が伴うことがあり、厚生労働科学研究班によって作成されたガイドラインによれば顔面にはステロイド外用薬はなるべく使用しないよう指導されている。またステロイド薬に対しては副作用を不安に思い拒否反応を示す患者が多い。一方、プロトピックは、1999年11月に使用が認められた比較的新しい薬剤であり、未だ小児には低濃度での使用しか認められておらず、さらに2歳以下の小児では低濃度の使用も認められていない。内服薬である抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬は、眠気、だるさ、また抗コリン作用に伴う痰の喀出困難などの副作用が起こることがある。
【0004】
一方、アトピー性皮膚炎の発症前の予防については、現在のところ、あまり報告がなされていない。しかし、アトピー性皮膚炎の患者は増える一方であり、その予防は切望されるものである。予防という観点においては、安全性が確保され、副作用がないことが重要であるから、予防のために使用される物質は、天然物やさらには食材に由来するものが望ましい。
【0005】
コラーゲンは動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分であり、ゼラチンやにかわの原料であり、古くから食材として利用されるものである。また、コラーゲンは日常的にも肉の煮込みなどから摂取されるものであり、安全性が広く確認されている。コラーゲンはコラーゲン三重らせん構造をもつことを特徴とするタンパク質をいい、全部で30種類以上が報告されており、それぞれ、I型,II型のように呼ばれる。真皮、靱帯、腱、骨などではI型コラーゲンが、関節軟骨ではII型コラーゲンが主成分である。また、すべての上皮組織の裏打ち構造である基底膜にはIV型コラーゲンが主に含まれている。体内で最も豊富に存在しているのはI型コラーゲンである。
【0006】
マリンコラーゲンの塗布、または経口投与が発症後のアトピー性皮膚炎を抑制することがマウスのアトピー性皮膚炎モデルを用いて示されている(非特許文献1)。しかしながら、発症前のアトピー性皮膚炎の予防については、なんら言及していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】財団法人北海道科学技術総合振興センター平成17年(平成16年度採択分)研究開発助成事業報告書p161−174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はアトピー性皮膚炎予防剤ならびにそれを含む食品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究の結果、コラーゲンを経口摂取することにより、アトピー性皮膚炎が予防されることを見出し、本発明を完成した。本発明は、コラーゲンからなるアトピー性皮膚炎予防剤及び上記アトピー性皮膚炎予防剤を含有する飲食品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
コラーゲンは哺乳類の生体で総タンパクあたり占める割合が高く、安価に入手することができる。また、コラーゲンはゼラチンやにかわの原料であり、古くから食材として利用されるものであり、さらに、日常的にも肉の煮込みなどから摂取されるものであり、安全性が広く確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】各群の臨床症状スコアの推移を示す図である。
図2】各群の引っ掻き行動回数を示す図である。
図3】各群の引っ掻き行動時間を示す図である。
図4】各群における試験開始前後の血中の総IgE値を示す図である。
図5】各群における経表皮水分喪失量(TEWL)の推移を示す図である。
図6】各群における体重の推移を示す図である。
図7】各群における肉眼的所見の結果を示す図である。
図8】各群における頭背部皮膚組織の好酸球数と肥満細胞数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明のコラーゲンからなるアトピー性皮膚炎予防剤及びそれを含有する飲食物について説明する。本発明のコラーゲンは、その由来は特に限定されることなく、ウシやブタ等の哺乳類、ニワトリ、ダチョウ等の鳥類、サメ等の魚類等に由来するものを用いることができる。ウシ、ブタ、ニワトリなど家畜に由来するものは大量に入手しやすいため、特に好ましい。また、コラーゲンの型は特に限定されることなく、いずれの型も用いることができ、また、複数の型のコラーゲンの混合物であってもよい。また、コラーゲンは、コラーゲンそのものであってもよく、また、ゼラチン、さらには、コラーゲンペプチドであってもよい。ゼラチンとは、コラーゲンを酸やアルカリで前処理して、熱加水分解をして可溶化したものを指す。コラーゲンペプチドは、コラーゲンを酸、アルカリ、酵素等で加水分解して得られる低分子コラーゲンをいう。例えば、コラーゲン加水分解物は、豚、牛及び鶏などの動物の皮や関節または魚のうろこや皮を酸またはアルカリ性の液に浸漬し、抽出によりゼラチンを得て、これを酵素や酸で処理して得ることができる。
【0013】
本発明のアトピー性皮膚炎予防剤は経口用であるが、その形態は問わず、例えば、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などの形態で投与されうる。さらには、本発明のアトピー性皮膚炎予防剤は飲食物に含有して投与されてもよく、その場合、含有されるべき飲食物は限定されず、例えば、生鮮食品、肉、魚などの動物性食品、穀物、野菜などの植物性食品、乳製品、パン、インスタント食品などの加工食品、菓子類などの嗜好食品、甘味料、調味料等の調理調味用材料、健康食品、特別用途食品、水、清涼飲料水、アルコール飲料、茶などの飲料、食品加工材料、食品添加物などに含有することができる。
【実施例】
【0014】
以下に本発明の例を挙げて説明するが、本発明の範囲は以下の例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
NC/NgaTndマウスを用いたコラーゲン摂取の皮膚炎予防効果の確認
【0016】
実験内容
コラーゲンの摂取がアレルギーによる皮膚炎の症状改善に効果を示すかどうかについて動物試験により検討した。すなわち、アトピー性皮膚炎自然発症モデルマウスであるNC/NgaTndマウスを用いて試験を行った。
【0017】
飼料
飼料はコラーゲン混餌飼料及び対照飼料を用いた。コラーゲン混餌飼料は対照飼料に0.20%のコラーゲンペプチドを加えたものである。コラーゲン混餌飼料は一日当たりのコラーゲン摂取量が200mg/Kgとなるよう調整されている。コラーゲン混餌飼料中のコラーゲンはゼライス株式会社の豚コラーゲンペプチドを用いた。豚コラーゲンペプチドは豚の皮を酸またはアルカリ性の液に浸漬後、抽出によりゼラチンを得たものを、さらに酵素分解したものである。なお、本コラーゲンペプチドは、主に豚のI型コラーゲンに由来する。
【0018】
実験項目及び内容
5週齢のNC/NgaTndマウスの雌雄を1群あたり7匹、2群となるよう準備した。これらをそれぞれコラーゲン投与群及び対照飼料投与群とした。共に1週間の予備飼育後、それぞれ、コラーゲン混餌飼料または対照飼料、及び水を6週間、自由摂取させた。いずれのマウスも、飼料の投与開始時には、皮膚炎を発症していなかった。各飼料投与期間中及びその前後において、それぞれの群について、以下の7項目を評価した。各項目の試験実施時期を括弧内に示す。(1)臨床症状スコアの判定(飼料投与期間中2回/週)(2)掻爬回数および持続時間の測定(飼料投与期間の前後)(3)血中の総IgE値測定(飼料投与期間の前後)(4)経表皮水分喪失量(TEWL)測定(飼料投与期間中1回/2週)(5)体重測定(飼料投与期間中1回/2週)、(6)皮膚病変の肉眼観察(飼料投与期間終了時)及び(7)組織学的検査(飼料投与期間終了後)。
【0019】
各評価項目の試験方法
(1)臨床症状スコアの判定
試験食給餌開始前日及び給餌開始日から最終給餌翌日迄の毎週2回、「掻痒症状」、「紅斑/出血」、「浮腫」、「擦傷/びらん」、「落屑/乾燥」の5項目について、「0:なし」、「1:軽度」、「2:中等度」、「3:重度」の4段階に分けて判定し、各項目の合計スコアで示した。なお、判定する者と給餌する者は試験期間を通して違う者が行い、判定者に動物がどの群に属するか分からないようにして行った。
(2)掻爬回数および持続時間の測定
測定環境に馴化させる目的で、試験食給餌開始の3日前より1日1回2日間30分間の掻爬回数測定装置(SCLABA(登録商標)−Real、ノベルテック)内で馴化させた。飼料投与開始前の掻爬回数および持続時間の測定は、給餌開始前日に30分間馴化させた後、30分間の撮影、記録を行った。飼料投与期間終了翌日に、同様の方法で馴化させた後、掻爬回数および持続時間の撮影、記録を30分間行った。なお、撮影は、撮影日と個体番号を記録し、12:00から18:00の間に実施した。
(3)血中の総IgE値測定
飼料投与開始前は尾静脈より、また飼料投与期間終了翌日に、掻爬回数および持続時間の撮影・記録行った後、エーテル麻酔下にヘパリン処理したシリンジを用いて血液約1mLを腹大動脈より採血した。採取した血液は、遠心分離(4℃)により血漿を分離し凍結保存(−20℃)した。保存した血漿を用いて、IgEの濃度を測定した。IgEの測定は、2種類の異なるエピトープを認識する抗マウスIgE抗体(YAMASA,ME−01−DEおよびME−02−B)を用いたサンドイッチELISA法にて実施した。
(4)TEWL測定
飼料投与開始前および飼料投与期間終了後の2回、およびその間の2週間に1回測定を行った。マウスの背部を測定前日に剃毛し、マルチプローブアダプター(CK electronic GmbH社製)を用いて背部のTEWLを測定した。毎回一個体につき3回測定し、その平均値をもってTEWLとした。
(5) 体重測定
飼料投与開始の前日から2週間ごとに実施した。測定には、電子天秤(アーンストンハンセン社、HL−320)を用いた。
(6)皮膚病変の肉眼観察
飼料投与期間終了時の各群のマウスの頭背部および顔部を写真撮影した。
(7)組織学的検査
飼料投与期間終了後、背部の皮膚を採取し10%緩衝ホルマリンにて固定し、パラフィン包埋をしたのち、薄切標本を作成した。組織標本は、コンゴーレッド染色およびトルイジンブルー染色をしたのち、顕微鏡下強拡大(400倍)にてそれぞれ好酸球数(コンゴーレッド染色標本)および肥満細胞数(トルイジンブルー染色標本)を数えた。各標本あたり4視野の平均値をもって個体データとし、群ごとに集計した。
【0020】
実験期間
平成19年1月17日〜平成19年5月25日
【0021】
結果
(1)臨床症状スコアの判定
結果を表1及び図1に示す。図1では、各群の臨床症状スコアの平均値±標準誤差をそれぞれ○(対照飼料群)▲(コラーゲン投与群)で示す。
【0022】
【表1】
【0023】
両群において、飼料投与開始時の臨床症状スコアは0(未発症)であった。対照飼料投与群では、飼料投与開始3日後より経時的な臨床症状スコアの上昇が認められ、飼料投与期間終了時の臨床症状スコアは5.9±1.7であった。コラーゲン投与群では、飼料投与開始後25日目までは対照飼料投与群とほぼ同様に皮膚炎スコアが増加していったが、飼料投与開始25日後以降皮膚炎症状は顕著な悪化を示すことなく、飼料投与期間終了後(43日目)の臨床症状スコアは、3.6±0.8と軽度な状態を保っていた。コラーゲン投与群では、飼料投与開始25日目以降飼料投与期間終了まで、統計学的有意差は認められないものの、対照飼料群に比べ低い臨床症状スコアを示す傾向にあった。
【0024】
(2)掻爬回数および持続時間の測定
図2に各群における飼料投与期間前後の引っ掻き行動回数(30分間)を示す。飼料投与開始前(0日目)および飼料投与期間終了後(43日目)のデータは、平均値±標準誤差(各群7匹)で標記した。
【0025】
図3に各群における飼料投与期間前後の引っ掻き行動時間(秒/30分間)を示す。飼料投与開始前(0日目)および飼料投与期間終了後(43日目)のデータは、平均値±標準誤差(各群7匹)で標記した。
【0026】
両群において、飼料投与開始前(試験0日目)の引っ掻き行動回数(Scratching Frequency)および引っ掻き行動時間(Scratching Duration)(秒)は、30分間の撮影時間あたりそれぞれ10回および10秒程度であった。両群とも、飼料投与開始前に比べて飼料投与期間終了後(43日目)には引っ掻き行動回数および引っ掻き行動時間が増加する傾向を示し、有意差は認められないものの、引っ掻き行動回数および引っ掻き行動時間ともコラーゲン投与群では、対照飼料投与群と比較して、その値が低かった。
【0027】
(3)血中の総IgE値測定
図4に各群における飼料投与期間前後の血中の総IgE値を示す。飼料投与開始前(0日目)および飼料投与期間終了後(43日目)のデータは、平均値±標準誤差(各群7匹)で標記した。
【0028】
飼料投与開始前(0日目)の血中の総IgE値(ng/ml)は、500ng/ml前後で、群間に統計学的有意差は認められなかった。試験終了後(43日目)には共に血中の総IgE値は増加したが、コラーゲン投与群では、統計学的な有意差は認められないものの、血中総IgE値は対照飼料群と比較して低かった。
【0029】
(4)TEWL測定について
図5に各群におけるTEWLの推移を示す。飼料投与開始前(0日目)、15日目、29日目、および飼料投与期間終了後(43日目)のデータを、平均値±標準誤差(各群7匹)で標記した。
【0030】
両群において、飼料投与開始時のTEWLは5g/hr/m以下で、正常範囲内であった。飼料投与開始15日目以降、TEWLは上昇する傾向を示し、特に対照飼料投与群では経時的に上昇、飼料投与期間終了時(43日目)には25.97±3.85g/hr/mと高値を示した。コラーゲン投与群でも上昇したが、飼料投与期間終了時には23.72±9.38g/hr/mと、有意差は認められないものの、値はやや低かった。
【0031】
(5)体重測定
図6に各群における体重の推移を示す。飼料投与開始前(0日目)、15日目、29日目、および飼料投与期間終了後(43日目)のデータを、平均値±標準誤差(各群7匹)で標記した。
【0032】
飼料投与開始時の体重は、18.7〜20.8gであった。その後、両群ともに経時的に増加し、増加率に群間の差はなかった。
【0033】
(6)皮膚病変の肉眼観察
図7に各群における肉眼的所見を示す。これらのマクロ写真は、飼料投与期間終了後の各群のマウスについて(7)の組織学検査の試料採取の前に撮影したものである。
B;コラーゲン、D;対照飼料 試験終了時の各群のマウスの頭背部および顔部の肉眼的所見を比較すると、対照飼料投与群では、各部位の皮膚炎が進行していることが観察された。しかしながらコラーゲン投与群では、皮膚炎は発症しているものの軽度であった。
【0034】
(7)組織学的検査
図8に各群における頭背部皮膚組織の好酸球数と肥満細胞数を示す。これらは飼料投与期間終了後(43日目)に採取した皮膚組織に関して数えた結果を、平均値±標準誤差(各群7匹)で標記した。コラーゲン投与群では、対照飼料群と比較し、有意差は認められないものの好酸球数、肥満細胞数共に、細胞数は少なかった。
【0035】
実施例1のまとめ
両群とも、飼料投与開始時には、いずれの試験においても皮膚炎は認められなかった。
いずれの群においても、その後皮膚炎を発症するが、コラーゲン混餌飼料を投与されたNC/NgaTndマウスにおいては、臨床症状スコア、掻爬回数および持続時間、血中の総IgE値、TEWL、病変の肉眼観察、及び組織学的検査において、対照群と比較して、値の低下が認められた。以上より、発症以前より、コラーゲンを投与することにより、アトピー性皮膚炎を予防する効果があることが示された。
【0036】
一方、コラーゲン投与群においても、体重増加は対象飼料投与群と変わらず、コラーゲン投与の安全性が確かめられた。
【0037】
以下の処方により、飲料、散剤、錠剤、チューイングガム、キャンディ、錠菓を製造した。
【実施例2】
【0038】
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 8.0重量部
砂糖 4.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 5.0重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例3】
【0039】
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
スクラロース 0.005重量部
ステビオサイド 0.008重量部
レバウディオサイド 0.008重量部
アセスルファムカリウム 0.01重量部
ピーチ香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例4】
【0040】
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
酸性乳性飲料 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 10.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 5.0重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例5】
【0041】
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 10.0重量部
蜂蜜 5.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 5.0重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例6】
【0042】
ゼリー飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
スクラロース 0.005重量部
ステビオサイド 0.008重量部
レバウディオサイド 0.008重量部
アセスルファムカリウム 0.01重量部
ピーチ香料 0.5重量部
ビタミンC 5.0重量部
ゲル化用安定剤 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例7】
【0043】
ゼリー飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 8.0重量部
砂糖 4.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 5.0重量部
ゲル化用安定剤 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例8】
【0044】
コーヒー飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
コーヒーエキス 5.0重量部
砂糖 4.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
重曹を用いpH6.5に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例9】
【0045】
緑茶飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
緑茶抽出液 10.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
重曹を用いpH6.5に調整した後、精製水で100容量部とした。
【実施例10】
【0046】
散剤の処方
コラーゲンペプチド 90.0重量部
乳糖 5.0重量部
デキストリン 4.0重量部
ビタミンC 1.0重量部
【実施例11】
【0047】
錠剤の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
D−マンニトール 40.0重量部
乳糖 40.0重量部
結晶セルロース 10.0重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 5.0重量部
【実施例12】
【0048】
チューインガムの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
ガムベース 20.0重量部
砂糖 55.0重量部
グルコース 10.5重量部
水飴 9.0重量部
香料 0.5重量部
【実施例13】
【0049】
キャンディの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
砂糖 50.0重量部
水飴 29.5重量部
香料 0.5重量部
水 15.0重量部
【実施例14】
【0050】
錠菓の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
砂糖 73.5重量部
グルコース 17.0重量部
ショ糖脂肪酸エステル 0.2重量部
香料 0.2重量部
水 4.1重量部
【実施例15】
【0051】
グミゼリーの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
ゼラチン 55.0重量部
水飴 23.0重量部
砂糖 8.5重量部
植物油脂 4.5重量部
マンニトール 3.0重量部
レモン果汁 1.0重量部
【実施例16】
【0052】
チョコレートの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
粉糖 36.8重量部
カカオビター 20.0重量部
全脂粉乳 20.0重量部
カカオバター 17.0重量部
マンニトール 1.0重量部
香料 0.2重量部
【実施例17】
【0053】
シャーベットの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
オレンジ果汁 25.0重量部
砂糖 23.0重量部
卵白 9.0重量部
水 38.0重量部
【0054】
この出願は2009年12月10日に出願された日本国特許出願第2009−280606からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図8
図7