(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1から
図3を用い、第1の実施形態に係る半導体装置SDの構成について説明する。この半導体装置SDは、Si、O、CおよびHを含む層間絶縁膜IL1と、層間絶縁膜IL1上に設けられ、Niを含むアンダーバンプメタル膜UBMと、アンダーバンプメタル膜UBM上に設けられたバンプ電極BEと、を備えている。層間絶縁膜IL1のうち、FTIR法によって求められる、波数1030cm
−1近傍のSi−Oのピーク高さに対する波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さの比率は0.15以上0.27以下である。また、波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さに対する波数1360cm
−1近傍のSi−CH
2−Siのピーク高さの比率は0.031以上である。以下、詳細を説明する。
【0013】
図1および
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置SDの構成を示す断面図である。
図1は、ダイシングされた半導体チップSCの一部を示している。
図2は、
図1のA部を拡大した断面図である。
図3は、パッケージ後の半導体装置SDを示している。
【0014】
図2のように、半導体基板SUBには、開口部(符号不図示)を有する素子分離領域DIRが設けられている。当該開口部には、後述するように、たとえばMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。
【0015】
半導体基板SUBは、たとえばシリコン基板である。素子分離領域DIRは、たとえば、SiO
2である。素子分離領域DIRは、たとえば、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されている。または素子分離領域DIRは、STI(Shallow Trench Isolation)法により形成されていてもよい。
【0016】
半導体基板SUBのうち、平面視で互いに離間した位置に、ソース領域SRおよびドレイン領域DRが設けられている。ソース領域SRに接してソース側のエクステンション領域ERが設けられ、ドレイン領域DRに接してドレイン側のエクステンション領域ERが設けられている。
【0017】
エクステンション領域ERに挟まれた領域の上には、ゲート絶縁層GIが設けられている。ゲート絶縁層GIは、たとえば、SiO
2、SiONである。または、ゲート絶縁層GIは、たとえば、Hfを含む高誘電率膜であってもよい。
【0018】
ゲート絶縁層GI上には、ゲート電極GEが設けられている。ゲート電極GEは、たとえば、ポリシリコンである。または、ゲート電極GEは、たとえば、Ti、Ta、Mo、これらの合金、これらの金属の窒化物、またはこれらの金属とシリコンとの窒化物であってもよい。
【0019】
ゲート絶縁層GIおよびゲート電極GEの側壁には、側壁絶縁膜SWIが設けられている。その他、半導体基板SUB、ゲート電極GEおよび側壁絶縁膜SWI上にライナー絶縁膜(不図示)が設けられていても良い。
【0020】
図2のように、半導体基板SUB、素子分離領域DIR、ゲート電極GE上には、下部絶縁膜ILUが設けられている。下部絶縁膜ILUは、後述する層間絶縁膜IL1と異なる材料により形成されていてもよい。
【0021】
下部絶縁膜ILUには、たとえばソース領域SRまたはドレイン領域DRに接してコンタクトプラグVAUが設けられている。また、図示されていない領域において、下部絶縁膜ILUには、ゲート電極GEに接してコンタクトプラグVAUが設けられている。コンタクトプラグVAUは、たとえば、W(タングステン)を含んでいる。コンタクトプラグVAUの側面および底面には、バリアメタル層(不図示)が設けられていても良い。
【0022】
下部絶縁膜ILU上には、層間絶縁膜IL1が設けられている。層間絶縁膜IL1は、たとえば、後述するSiCOH膜である。層間絶縁膜IL1には、たとえばシングルダマシン法により、配線ICUが設けられている。配線ICUは、コンタクトプラグVAUを介して、ソース領域SR、ドレイン領域DRまたはゲート電極GEに接続されている。配線ICUは、Cu(銅)を含んでいる。
【0023】
層間絶縁膜IL1上には、さらに複数の層間絶縁膜IL1が設けられている。上層の層間絶縁膜IL1には、たとえばデュアルダマシン法により、配線IC1およびビアVAが設けられている。配線IC1およびビアVAは、Cuを含んでいる。配線IC1およびビアVAの側面および底面には、バリアメタル層(不図示)が設けられていても良い。
【0024】
図1のように、半導体基板SUB上には、多層配線層が形成されている。多層配線層は、ローカル配線層LLおよびグローバル配線層GLを備えている。ローカル配線層LLは、回路を形成するための配線層であり、グローバル配線層GLは、電源配線および接地配線を引き回すための配線層である。
【0025】
上述のように、ローカル配線層LLには、層間絶縁膜IL1が設けられている。層間絶縁膜IL1については、詳細を後述する。ローカル配線層LLの層間絶縁膜IL1には、配線IC1またはビア(不図示)が設けられている。
【0026】
ローカル配線層LLの各配線層の間には、拡散防止層BL1が設けられていても良い。拡散防止層BL1は、たとえば、SiCN、SiC、SiON、SiCO、SiCONまたはSiNである。
【0027】
ローカル配線層LLの上方には、グローバル配線層GLが設けられている。グローバル配線層GLには、層間絶縁膜IL2が設けられている。層間絶縁膜IL2は、たとえば層間絶縁膜IL1よりも高密度の材料により形成されている。層間絶縁膜IL2は、たとえば、SiO
2、SiOFである。
【0028】
グローバル配線層GLの層間絶縁膜IL2には、配線IC2またはビア(不図示)が設けられている。配線IC2は、たとえばビアを介してローカル配線層LLの配線IC1に接続されている。グローバル配線層GLの各配線層の間には、拡散防止層BL2が設けられていても良い。
【0029】
グローバル配線層GLのうち、少なくとも最上層よりも下層に位置する配線IC2またはビアは、ダマシン法により形成されている。配線IC2およびビアは、Cuを含んでいる。
【0030】
グローバル配線層GLの最上層には、電極(BE等)に接して金属膜CMLが設けられている。金属膜CMLは、バンプ電極BEの台座としての機能を有している。金属膜CMLは、たとえば、Alを含んでいる。金属膜CMLは、ビアを介して下層に位置する配線IC2に接続している。
【0031】
グローバル配線層GL上には、保護層CPLが設けられている。保護層CPLは、たとえば、ポリイミドである。保護層CPLのうち平面視で金属膜CMLと重なる位置には、開口部(符号不図示)が設けられている。
【0032】
開口部には、アンダーバンプメタル膜UBMが設けられている。アンダーバンプメタル膜UBMは、バンプ電極BEを構成する材料のマイグレーションを抑制する材料により形成されている。具体的には、アンダーバンプメタル膜UBMは、たとえば、Niである。
【0033】
アンダーバンプメタル膜UBM上には、バンプ電極BEが設けられている。バンプ電極BEは、Pbフリーはんだ材料により形成されている。ここでは、バンプ電極BEは、たとえば、SnおよびAgを含んでいる。また、バンプ電極BEの高さは、50μm以上100μm以下である。バンプ電極BEが上記のような構成であることにより、安定的に半導体チップSCを回路基板IPにフリップチップ実装することができる。また、後述する、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜IL1に加わる応力は、バンプ電極BEの材料、またはバンプ電極BEの高さ(または体積)に依存する。発明者らは、少なくともバンプ電極BEが上記のような構成である場合において、層間絶縁膜IL1が後述する組成を有していることにより、層間絶縁膜IL1の不良を抑制できることを確認している。なお、バンプ電極BEの構成は上記に限られるものではなく、上記以外の構成であっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
図3のように、半導体装置SDは、たとえば、BGA(Ball Grid Array)型のパッケージである。半導体チップSCは、たとえばフリップチップ実装により、回路基板IP上に搭載されている。半導体チップSCおよび回路基板IPとの間には、アンダーフィル樹脂UDFが注入されている。
【0035】
回路基板IPおよび半導体チップSC上には、凹部を有するリッドLIDが設けられている。リッドLIDの外周部は、回路基板IPに接している。また、リッドLIDの凹部の内面は、半導体チップSCの上面に接している。リッドLIDと、回路基板IPおよび半導体チップSCとは、接着剤(不図示)を介して、固定されている。また、回路基板IPの下面側には、はんだボールSLBが設けられている。
【0036】
なお、半導体装置SDのパッケージは、BGA型に限られたものではなく、その他のパッケージ形態であってよい。
【0037】
次に、
図4を用い、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚について説明する。
図4は、アンダーバンプメタル膜UBMの厚さと、エレクトロマイグレーション寿命との関係を示した図である。
図4は、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が異なる複数の半導体装置SDに対して、所定の条件で、エレクトロマイグレーション試験を行った結果を示している。
【0038】
図4の横軸は、Niを含むアンダーバンプメタル膜UBMの膜厚を示している。
図4の縦軸は、それぞれの半導体装置SDにおいて、エレクトロマイグレーションによる不良が発生したサンプル数が、試験に投入した総サンプル数の50%となったときの時間(T50)を任意単位(a.u.)で示している。図中の太点線は、所定の製品における信頼性基準を示している。
【0039】
図4のように、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が厚くなるにしたがって、エレクトロマイグレーション寿命(T50)は長くなる傾向にある。アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が薄い場合、試験中にアンダーバンプメタル膜UBMの材料が移動しやすい。その結果、アンダーバンプメタル膜UBMにボイドが発生してしまう。このため、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が薄い場合、エレクトロマイグレーション寿命は短い。これに対して、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が厚い場合、膜厚が薄い場合に比べて体積が大きいため、ボイドの発生に伴う抵抗変化が小さい。したがって、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が厚いほど、エレクトロマイグレーション寿命は長い。
【0040】
ここで、第1の実施形態において、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚は、たとえば1.5μm以上3.0μm以下である。アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が1.5μm以上であることにより、エレクトロマイグレーション寿命を所定の製品における信頼性基準以上とすることができる。アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が3.0μm以下であることにより、バンプ電極BEと、下方に位置する金属膜CMLとの接触抵抗を低くすることができる。
【0041】
一方で、発明者らは、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が厚い場合、バンプ電極BEに印加される応力によって、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜IL1に以下のような不良が発生することを見出した。アンダーバンプメタル膜UBMは、バンプ電極BEよりも硬い材料により形成されている。たとえば実装工程または実装工程後において、バンプ電極BEに応力が印加されたとき、アンダーバンプメタル膜UBMによって、応力が緩和されない。このため、層間絶縁膜IL1にも応力が加わってしまう。このとき、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜IL1において、クラック等の不良が発生する可能性がある。
【0042】
たとえば層間絶縁膜IL1の膜強度が低い場合では、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が1.5μm以上であってもクラックが発生する場合がある。また、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が厚くなるにつれて、層間絶縁膜IL1の不良発生率が上昇する傾向にある。
【0043】
このように、バンプ電極BEを構成する材料のマイグレーションを抑制することと、層間絶縁膜IL1の不良を抑制することとを両立することは困難であるという課題があった。
【0044】
そこで、第1の実施形態では、層間絶縁膜IL1は、後述するようにFTIR法で求められるSi−CH
3/Si−Oの比率とSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率とが所定の範囲内である。これにより、膜強度の高い層間絶縁膜を得ることができる。さらに、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が1.5μm以上3.0μm以下であっても、バンプ電極BEに印加される応力によってバンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜において発生するクラック等の不良発生率を減少させることができる。
【0045】
次に、第1の実施形態に係る層間絶縁膜IL1の特性について、詳細を説明する。層間絶縁膜IL1は、Si(シリコン)、O(酸素)、C(炭素)およびH(水素)を含んでいる。なお、層間絶縁膜IL1は、多孔質膜ではない。以下では、層間絶縁膜IL1として用いられる膜を「SiCOH膜」と表記する。
【0046】
第1の実施形態では、層間絶縁膜IL1として用いられるSiCOH膜の比誘電率は、2.5以上3.2以下である。これにより、配線間容量を低減することが出来る。
【0047】
上記のような比誘電率を有するSiCOH膜を得るためには、C(炭素)原子が層間絶縁膜IL1中に所定の含有量以上に取り込まれている必要がある。発明者らは、上記比誘電率を満たすSiCOH膜は、FTIRスペクトルにおいて、以下のような特性を有することを見出した。具体的には、FTIR法によって求められる、波数1030cm
−1近傍のSi−Oのピーク高さに対する波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さの比率(Si−CH
3/Si−Oの比率)は0.15以上0.27以下である。これにより、比誘電率が2.5以上3.2以下である層間絶縁膜IL1を得ることができる。
【0048】
さらに、発明者らは、FTIRスペクトルにおいて、以下のような範囲において、膜強度(後述する破壊耐圧)が高いSiCOH膜を得ることが出来ることを見出した。具体的には、FTIR法によって求められる、波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さに対する波数1360cm
−1近傍のSi−CH
2−Siのピーク高さの比率(Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率)は0.031以上である。以下、詳細を説明する。
【0049】
ここで、比誘電率が2.5以上3.2以下であるSiCOH膜のうち、膜強度が相対的に低かったものを「比較例」とし、また膜強度が相対的に高かったものを「第1の実施形態」として、説明する。
【0050】
図5から
図7は、単層のSiCOH膜に対して、FTIR測定を行った結果である。
図5は、波数2700cm
−1以上3100cm
−1以下におけるSiCOH膜のFTIRスペクトルを示した図である。
図5のように、波数2950cm
−1近傍にCH
2またはCH
3に起因するピークが検出された。この例では、第1の実施形態におけるCH
2またはCH
3のピーク形状は、比較例とほぼ同一であった。
【0051】
図6は、波数1240cm
−1以上1300cm
−1以下におけるSiCOH膜のFTIRスペクトルを示した図である。
図6のように、波数1270cm
−1近傍にSi−CH
3に起因するピークが検出された。この例では、第1の実施形態におけるSi−CH
3のピーク形状は、比較例とほぼ同一であった。
【0052】
図7は、波数1345cm
−1以上1380cm
−1以下におけるSiCOH膜のFTIRスペクトルを示した図である。
図7のように、波数1360cm
−1近傍にSi−CH
2−Siに起因するピークが検出された。
【0053】
波数1360cm
−1近傍におけるSi−CH
2−Siに起因するピークは、上述した特許文献1(特表2008−530821号公報)に記載の誘電体膜では検出されていない(特許文献1のたとえば
図7を参照)。
【0054】
特にこのSi−CH
2−Siのピークに関して、比較例の膜と第1の実施形態との間で明確な差が生じていた。第1の実施形態のSi−CH
2−Siのピーク高さは、比較例よりも高い。このSi−CH
2−Siのピーク高さがSiCOH膜の膜強度に相関があることが分かった。
【0055】
図8は、Si−CH
3/Si−Oの比率が0.15以上0.27以下であるときのSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率と、SiCOH膜の破壊耐圧との関係を示した図である。
【0056】
図8の横軸は、FTIR法によって求められる、波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さに対する波数1360cm
−1近傍のSi−CH
2−Siのピーク高さの比率(Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率)を示している。なお、FTIRで検出されたスペクトルのうちバックグラウンドを除去した後のスペクトルにおいて、ピーク高さの比率を求めている。ピーク面積比率ではないことに注意が必要である。また、プロットした点に付記している数値は、その点におけるSi−CH
2−Si/Si−CH
3の数値を示している。
【0057】
図8の縦軸は、ナノインデーション法により測定したSiCOH膜の破壊耐圧K
c(単位MPa・m
1/2)を示している。なお、破壊耐圧K
cの測定には、ナノインデンターを用いた。また、単層のSiCOH膜に対して測定を行った。
【0058】
ここで、破壊耐圧K
c(単位MPa・m
1/2)は、以下の式(1)により求めることができる。
【0060】
αは、ナノインデンターの圧子の定数、バーコビッチ圧子の場合0.016である。EはSiCOH膜のヤング率、HはSiCOH膜の硬度、Pは、ナノインデンターの最大荷重、cは、ナノインデンター圧子で押し込んだ後にSiCOH膜に生じたクラック長である。
【0061】
上述の
図5から
図7において比較例として示したSiCOH膜は、
図8においてSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.031未満であった膜の一つである。これに対して、第1の実施形態として示したSiCOH膜は、Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.031以上であった膜の一つである。
【0062】
図8のように、Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が増加するにつれて、SiCOH膜の破壊耐圧も高くなる。Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.031である位置を境にして、破壊耐圧が急激に上昇する。Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.031以上である場合、当該比率が0.031未満である場合よりも破壊耐圧が高い。
【0063】
次に、
図9を用い、Si−CH
2−Siが多いことによって、破壊耐圧が上昇するメカニズムを説明する。
図9は、SiCOH膜中の結合について説明するための模式図である。
図9(a)は、Si−CH
3結合モデルを示している。
図9(b)は、Si−CH
2−Si結合モデルを示している。
【0064】
図9(a)のように、Si−CH
3結合が支配的なSiCOH膜では、たとえばSiの原料に起因したメチル基がSiに配位して終端している。したがって、Si−CH
3結合が支配的なSiCOH膜では、Si同士の結合は弱い。
【0065】
一方、
図9(b)のように、Si−CH
2−Si結合が含まれているSiCOH膜では、隣接するSi原子がCH
2を介して架橋している。これにより、強固で安定なSiCOH膜を得ることができる。したがって、Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.031以上である場合、破壊耐圧が高かったと考えられる。
【0066】
以上のように第1の実施形態によれば、層間絶縁膜IL1として用いられるSiCOH膜に関して、FTIR法によって求められるSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率は0.031以上である。これにより、高い膜強度を有する層間絶縁膜IL1を得ることができる。したがって、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜IL1において発生するクラック等の不良発生率を減少させることができる。
【0067】
なお、半導体装置SDにおいて、少なくともローカル配線層LLの層間絶縁膜IL1が上記したSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率を有していることが好ましい。なお、グローバル配線層GLの層間絶縁膜IL2も上記したSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率を有していてもよい。
【0068】
次に、再度、
図1から
図3を用い、第1の実施形態に係る半導体装置SDの製造方法について説明する。第1の実施形態に係る半導体装置SDの製造方法は、以下の工程を備えている。Si、O、CおよびHを含む層間絶縁膜IL1を形成する(層間絶縁膜形成工程)。層間絶縁膜IL1上に、Niを含むアンダーバンプメタル膜UBMを形成する。アンダーバンプメタル膜UBM上にバンプ電極BEを形成する。層間絶縁膜形成工程において、FTIR法によって求められる、波数1030cm
−1近傍のSi−Oのピーク高さに対する波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さの比率は0.15以上0.27以下であり、波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さに対する波数1360cm
−1近傍のSi−CH
2−Siのピーク高さの比率は0.031以上である層間絶縁膜IL1を形成する。以下、詳細を説明する。
【0069】
まず、
図2のように、半導体基板SUBに開口部を有する素子分離領域DIRを形成する。次いで、半導体基板SUB上に、ゲート絶縁層GIおよびゲート電極GEを形成する。次いで、ゲート絶縁層GIおよびゲート電極GEをマスクとして、イオン注入により、エクステンション領域ERを形成する。次いで、ゲート絶縁層GIおよびゲート電極GEの側壁に側壁絶縁膜SWIを形成する。次いで、側壁絶縁膜SWI、ゲート絶縁層GIおよびゲート電極GEをマスクとして、イオン注入により、ソース領域SRおよびドレイン領域DRを形成する。
【0070】
次いで、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、半導体基板SUB、素子分離領域DIR、側壁絶縁膜SWIおよびゲート電極GE上に、下部絶縁膜ILUを形成する。次いで、下部絶縁膜ILUにコンタクトホール(符号不図示)を形成する。次いで、たとえばCVDにより、コンタクトホール内および下部絶縁膜ILU上にWを含む金属膜を形成する。次いで、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により、下部絶縁膜ILUの上部を平坦化する。これにより、下部絶縁膜ILUにコンタクトプラグVAUを形成する。
【0071】
次いで、
図1のように、配線IC1およびビアを有するローカル配線層LLを形成していく。このとき、以下のようにして、Si、O、CおよびHを含む層間絶縁膜IL1を形成する(層間絶縁膜形成工程)。
【0072】
層間絶縁膜形成工程では、たとえば平行平板型のプラズマCVDにより層間絶縁膜IL1としてSiCOH膜を形成する。Si原料として、たとえばトリメチルシランを用いる。なお、Si原料はこれに限られるものではなく、テトラメチルシラン、TEOS(Tetraethyl Orthosilicate)等であってもよい。
【0073】
層間絶縁膜形成工程における成膜条件は、低圧力または高パワーであることが好ましい。これにより、Si原料に対するパワー効率が向上する。このとき、Si原料の炭化水素基が分解され、Si−CH
2−Si結合が形成される。したがって、低圧力または高パワーで層間絶縁膜IL1を形成することにより、容易にSi−CH
2−Si結合を形成することができる。
【0074】
また、トータルガス流量に対するSi原料の流量比が高いことが好ましい。これにより、C(炭素)原子が取り込まれる確率を上昇させることができる。その他、成膜時に半導体基板SUBを加熱しても良い。
【0075】
層間絶縁膜形成工程における条件を調整することにより、Si−CH
3/Si−Oの比率は0.15以上0.27以下であり、Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率は0.031以上である層間絶縁膜IL1を形成する。
【0076】
次いで、
図1のように、層間絶縁膜IL1にビアホール(不図示)または配線溝(不図示)を形成する。次いで、ビアホールまたは配線溝の側面並びに底面、および層間絶縁膜IL1上に、バリアメタル層(不図示)を形成する。次いで、バリアメタル層上に、たとえばめっき法により、ビア(不図示)または配線IC1を形成する。このようにダマシン法により、配線層を形成する。
【0077】
これらと同様の方法を繰り返すことにより、ローカル配線層LLを形成する。ローカル配線層LLの各配線層の間に、拡散防止層BL1を形成してもよい。
【0078】
次いで、ローカル配線層LLの層間絶縁膜IL1上に、たとえばCVDにより、層間絶縁膜IL2を形成する。ダマシン法により、ビアまたは配線IC2を形成する。これにより、ローカル配線層LLの上方に、グローバル配線層GLを形成する。グローバル配線層GLの各配線層の間に、拡散防止層BL2を形成してもよい。
【0079】
次いで、グローバル配線層GLの最上層に、Alを含む金属膜CMLを形成する。次いで、グローバル配線層GL上に、保護層CPLを形成する。次いで、保護層CPLのうち平面視で金属膜CMLと重なる位置に、開口部(符号不図示)を形成する。
【0080】
次いで、たとえばスパッタにより、開口部に、アンダーバンプメタル膜UBMを形成する。このとき、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚を、たとえば1.5μm以上3.0μm以下で形成する。
【0081】
次いで、たとえばめっき法により、アンダーバンプメタル膜UBM上に、SnおよびAgを含むバンプ電極BEを形成する。なお、印刷法によりバンプ電極BEを形成してもよい。次いで、リフローを行う。これにより、球状のバンプ電極BEを形成する。次いで、半導体基板SUBをダイシングして、分割された半導体チップSCを形成する。
【0082】
次いで、
図3のように、半導体チップSCを回路基板IP上に搭載する(実装工程)。実装工程において、半導体チップSCを回路基板IPに対して加熱圧着する。これにより、半導体チップSCのバンプ電極BEと、回路基板IPの端子(不図示)とを接続する。
【0083】
次いで、半導体チップSCおよび回路基板IPとの間に、アンダーフィル樹脂UDFを注入する。次いで、回路基板IPおよび半導体チップSC上に、凹部を有するリッドLIDを接着させる。次いで、回路基板IPの下面側に、はんだボールSLBを形成する。
【0084】
以上により、第1の実施形態に係る半導体装置SDを得ることができる。
【0085】
次に、比較例と対比しながら、第1の実施形態の効果について説明する。
【0086】
ここで、比較例として、層間絶縁膜IL1の比誘電率は第1の実施形態と等しいが、層間絶縁膜IL1におけるSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.031未満である場合を考える。比較例の場合では、上述のように、破壊耐圧が低い。このため、比較例では、たとえば実装工程において、バンプ電極BEを加熱圧着する際などの荷重によって、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜IL1にクラックが生じる可能性がある。また、実装後において半導体基板SUBと回路基板IPとの熱膨張差を原因として、バンプ電極に熱応力が印加されることによっても、当該クラックは発生する可能性がある。
【0087】
これに対して、第1の実施形態によれば、層間絶縁膜IL1のうち、FTIR法によって求められる、Si−CH
3/Si−Oの比率は0.15以上0.27以下である。また、Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率は0.031以上である。
【0088】
これにより、上述の
図8のように、層間絶縁膜IL1におけるSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.031以上であることにより、破壊耐圧を向上させることができる。したがって、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚によらず、バンプ電極BEに印加される応力を起因とする層間絶縁膜IL1のクラック等の不良発生率を減少させることができる。
【0089】
以上、第1の実施形態によれば、膜強度の高い層間絶縁膜IL1を有する半導体装置SDを提供することができる。
【0090】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、層間絶縁膜IL1のSi−CH
3/Si−Oの比率とSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率とがさらに限定された範囲内である点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0091】
発明者らは、Si−CH
3/Si−Oの比率とSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率とがさらに限定された範囲内であることにより、顕著に膜強度が高い層間絶縁膜IL1を得ることができることを見出した。具体的には、層間絶縁膜IL1のうち、FTIR法によって求められる、波数1030cm
−1近傍のSi−Oのピーク高さに対する波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さの比率は0.16以上0.24以下である。また、波数1270cm
−1近傍のSi−CH
3のピーク高さに対する波数1360cm
−1近傍のSi−CH
2−Siのピーク高さの比率は0.033以上である。以下、詳細を説明する。
【0092】
なお、第2の実施形態では、層間絶縁膜IL1として用いられるSiCOH膜の比誘電率は、2.9以上3.15以下である。
【0093】
図10は、Si−CH
3のSi−Oの比率が0.16以上0.24以下であるときのSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率と、破壊耐圧との関係を示した図である。
図10のように、Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.033以上である場合、当該比率が0.029以下である場合よりも、顕著に破壊耐圧が高い。具体的には、Si−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.033以上である場合の破壊耐圧は、当該比率が0.029以下である場合のおよそ二倍以上である。
【0094】
図11は、アンダーバンプメタル膜UBMの厚さと、層間絶縁膜IL1中に発生した不良発生率との関係を示した図である。
図11の横軸は、半導体装置SDのアンダーバンプメタル膜UBMの膜厚(μm)である。
図11の縦軸は、所定の熱サイクル試験を行った後の層間絶縁膜IL1に生じた不良発生率を示している。当該「不良」とは、上述のように、バンプ電極に熱応力が印加されることによって、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜IL1に生じたクラックのことである。
【0095】
図11において、黒ダイヤ印は、層間絶縁膜IL1のSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.029以下である比較例の半導体装置SDの結果を示している。白抜き四角印は、層間絶縁膜IL1のSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.033以上である第2の実施形態の半導体装置SDの結果を示している。なお、アンダーバンプメタル膜UBMは、Niを含んでいる。
【0096】
図11のように、層間絶縁膜IL1のSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.029以下である比較例の半導体装置SDでは、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が上昇するにつれて、不良発生率が上昇する傾向にある。
【0097】
図4で示したように、エレクトロマイグレーション寿命が所定の製品における信頼性基準を満たすためには、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が1.5μm以上である必要がある。しかし、
図11のように、比較例では、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚が1.5μm以上であるとき、層間絶縁膜IL1にクラックが生じてしまう可能性がある。
【0098】
これに対して、層間絶縁膜IL1のSi−CH
2−Si/Si−CH
3の比率が0.033以上である第2の実施形態の半導体装置SDでは、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚によらず、不良発生率は0である。すなわち、エレクトロマイグレーション寿命が所定の製品における信頼性基準を満たすアンダーバンプメタル膜UBMの膜厚において、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜において、クラック等の不良が発生することがない。したがって、第2の実施形態では、バンプ電極BEを構成する材料のマイグレーションを抑制するとともに、層間絶縁膜IL1の不良を顕著に抑制することができる。
【0099】
第2の実施形態に係る半導体装置SDの製造方法は、層間絶縁膜形成工程における成膜条件がさらに限定された範囲内である点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0100】
第2の実施形態の層間絶縁膜形成工程では、たとえば以下の条件で層間絶縁膜IL1を形成する。具体的には、たとえば、圧力は、2Torr以上4Torr以下である。RFパワーは、500W以上1500W以下である。なお、パワーは装置に依存するため、上記範囲に限られたものではない。トータルガス流量に対するSi原料の流量比は、0.5以上0.7である。また、基板温度は、330℃以上400℃以下である。
【0101】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることが出来る。さらに、第2の実施形態によれば、アンダーバンプメタル膜UBMの膜厚によらず、バンプ電極BEの下方に位置する層間絶縁膜において、クラック等の不良が発生することを顕著に抑制することができる。
【0102】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。