【文献】
Guolin Xu et al.,Studies of reforming natural gas with carbon dioxide to produce synthesis gas X. The role of CeO2 an,J. Mol. Catal. A Chem.,1999年,Vol.147, No.1-2,p.47-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コバルトの担持量は前記アルミナ100質量部に対してコバルト原子換算で0.1〜10質量部であり、前記ロジウムの担持量は前記アルミナ100質量部に対してロジウム原子換算で0.01〜3質量部である、請求項1に記載の水素製造用改質触媒。
請求項1〜5のいずれかに記載の水素製造用改質触媒を有する改質部、並びに、当該改質部に、酸素及びスチームから選択される少なくとも1種を含むガスと、炭化水素化合物類が含まれる水素原料とを供給する供給部と、を備え、
部分酸化反応、自己熱改質反応及び水蒸気改質反応から選択される少なくとも1つの反応により前記水素原料から水素を含有する生成物を得る、水素製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0022】
本実施形態の水素製造用改質触媒は、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体と、前記担体に担持されたコバルト及びロジウムと、を備える触媒である。
【0023】
本実施形態の水素製造用改質触媒は、炭化水素などの水素源から水素を得るための改質反応において高い触媒活性を示すことができるとともに、高温でスチームの雰囲気に曝されたときの性能が低下しにくい。
【0024】
触媒の高い活性、及びその性能低下が抑制される効果の原因は明確ではないが、コバルトとロジウムとが同一の上記特定の担体上に存在することによって、(1)ロジウム原子の分散性が高められる、(2)担体アルミナに対してコバルトが強く結合することで、これがアンカー効果となって担体アルミナ表面でのロジウム原子の熱凝集を抑制する、などの作用が理由として考えられる。
【0025】
本実施形態の水素製造用改質触媒における担体は、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体である。
【0026】
アルミナとしては、特に組成や構造による制約を受けるものではないが、α−アルミナ、γ−アルミナ、及びこれらのアルミナと、シリカ、チタニア、ジルコニア等から選ばれる無機金属酸化物との混合物が挙げられる。アルミナのB.E.T.比表面積については特に限定されないが、担持されるロジウムおよびコバルトが十分に分散できるようにB.E.T.比表面積が3〜200m
2/gであることが好ましい。B.E.T.比表面積が3m
2/gより小さいと、ロジウムおよびコバルトが担体表層で十分に分散できず所定の触媒活性や触媒寿命が得られにくくなり、一方、B.E.T.比表面積が200m
2/gより大きいと、表面の空隙比率が高く十分な担体強度が得られにくくなるので好ましくない。
【0027】
希土類金属酸化物としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム及びイッテルビウムなどから選択される1種又は2種以上の希土類金属の酸化物が挙げられる。希土類金属は、特にランタン、セリウムが好ましい。これらの希土類金属の酸化物は、塩化物、硝酸塩、酢酸塩などの希土類金属化合物を前駆体として焼成により得ることができる。
【0028】
希土類金属酸化物の担持量は、アルミナ100質量部に対して2〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましく、10〜18質量部であることがさらにより好ましい。希土類金属酸化物の上記担持量が30質量部より多いと、アルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないので好ましくない。一方、希土類金属酸化物の上記担持量が2質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
【0029】
アルカリ土類金属酸化物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムなどから選択される1種又は2種以上のアルカリ土類金属の酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属は、特にマグネシウム、ストロンチウム、バリウムが好ましい。これらのアルカリ土類金属の酸化物は、塩化物、硝酸塩、酢酸塩などのアルカリ土類金属化合物を前駆体として焼成により得ることができる。
【0030】
アルカリ土類金属酸化物の担持量は、アルミナ100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましく、1〜8質量部であることがさらにより好ましい。アルカリ土類金属酸化物の上記担持量が10質量部より多いと、アルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないので好ましくない。一方、アルカリ土類金属酸化物の上記担持量が1質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
【0031】
本実施形態における希土類金属酸化物に含まれる希土類元素と、アルカリ土類金属酸化物に含まれるアルカリ土類元素の組み合わせは、ストロンチウムとセリウム、マグネシウムとセリウム、バリウムとセリウム、ストロンチウムとランタン、及びバリウムとランタンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。特に好ましくは、ストロンチウムとセリウム、バリウムとセリウムの組み合わせである。
【0032】
コバルトの担持量は、アルミナ100質量部に対してコバルト原子換算で0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましく、0.2〜2質量部であることがさらにより好ましい。コバルトの上記担持量が10質量部より多いと、アルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないので好ましくない。一方、コバルトの上記担持量が0.1質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
【0033】
ロジウムの担持量は、アルミナ100質量部に対してロジウム原子換算で0.01〜3質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましく、0.05〜0.5質量部であることがさらにより好ましい。ロジウムの上記担持量が3質量部より多いと、高価なロジウム金属がアルミナに対して過剰量に存在して、その含有量に比した添加効果が得られないだけでなく、触媒価格が高額になるので好ましくない。一方、ロジウムの上記担持量が0.01質量部よりも少ないと、その添加効果が低くなるので好ましくない。
【0034】
本実施形態の水素製造用改質触媒は、ロジウムのほかに、ルテニウム、パラジウム及び白金などから選択される1種又は2種以上の白金族金属を含有することもできる。この場合、ロジウム以外の白金族金属の担持量は、アルミナ100質量部に対して白金族原子換算で0.01〜3質量部であることが好ましく、0.05〜2質量部であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることがさらにより好ましい。
【0035】
本実施形態の水素製造用改質触媒は、コバルト、ロジウム及び上記白金族金属のほかに、本発明に係る効果を損なわない範囲で、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属など金属を含有することもできる。
【0036】
本実施形態に係る水素製造用改質触媒において、コバルト、ロジウム、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担体に担持させる方法としては、特に制限はなく、通常の含浸法、ポアフィル法など公知の方法を用いることができる。通常、金属塩もしくは金属錯体として水や有機物などを含有する溶媒に溶解させた後、アルミナを含有する担体に含浸させる。含有させる金属塩もしくは金属錯体は、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アセト酢酸塩などを用いることができる。含浸の回数や工程に関しては特に制限はなく、一度又は数度に分けて含有させることができる。コバルト及びロジウムは、同じ溶媒に溶解させた後、同時に触媒に含有させることが好ましい。すなわち、無機複合酸化物担体若しくはその前駆体に、コバルト化合物及びロジウム化合物が含まれる溶液を含浸することが好ましい。コバルト化合物及びロジウム化合物としては、上述した塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アセト酢酸塩を用いることができ、好ましい化合物としては、溶解性の高さによる溶液調製の容易さの点で、硝酸コバルト及び硝酸ロジウムが挙げられる。
【0037】
各金属を含有させた後の乾燥処理は、その条件については特に制限されないが、例えば、空気中、100℃以上で行うことが挙げられる。
【0038】
本実施形態においては、高温焼成処理によって活性金属であるロジウム原子が熱凝集することを抑制する観点から、触媒にコバルト及びロジウムを導入する前、より具体的には、アルミナを含有し、希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を担持した無機複合酸化物担体若しくはその前駆体に、コバルト化合物及びロジウム化合物が含まれる溶液を含浸する前に、当該無機複合酸化物担体若しくはその前駆体を、酸素の存在下で650〜1200℃の温度で予め焼成処理することが好ましい。焼成温度は、700℃以上が好ましく、750℃以上がより好ましく、1000℃以下が好ましく、900℃以下がより好ましい。
【0039】
無機複合酸化物担体の前駆体としては、例えば、アルミナを含む担体に上記希土類金属化合物を含浸したものを酸素の存在下400〜800℃で焼成し、これに上記アルカリ土類金属化合物を含浸したもの、アルミナを含む担体に上記希土類金属化合物及び上記アルカリ土類金属化合物を含浸したものなどが挙げられる。
【0040】
上記の焼成処理を行うことで、後に触媒にコバルトとともに導入されるロジウムが、無機複合酸化物担体の直径方向に対して担体表層に分布しやすくなり、また無機複合酸化物担体のシンタリングが引き金となって生じるロジウムの凝集による触媒性能の減少を抑制することができる。650℃よりも低い温度では、ロジウムを導入した後でロジウムが無機複合酸化物担体の内部方向に分布しやすくなるだけでなく、無機複合酸化物担体に含まれるアルミナの熱凝集が進みやすくなり、それがロジウムの凝集を引き起こし易くなるので好ましくない。一方、1200℃よりも高い温度で焼成処理を行うと、無機複合酸化物担体のB.E.T.比表面積が減少してしまうので好ましくない。
【0041】
コバルト及びロジウムの導入後は、前述の無機複合酸化物担体若しくはその前駆体の焼成処理温度より低い温度で乾燥または焼成処理を行うことで、導入したコバルト及びロジウムが無機複合酸化物担体の表面に分布して固定化される。コバルト及びロジウムの導入後に無機複合酸化物担体の焼成処理温度よりも高い温度で乾燥または焼成処理を行うと、無機複合酸化物担体のシンタリングが引き金となって無機複合酸化物担体の表面に分布するロジウムの凝集が進み、触媒性能の減少が起こるので好ましくない。コバルト及びロジウムの導入後の乾燥または焼成温度は、前述の無機複合酸化物担体若しくはその前駆体の焼成処理温度に基づき設定することができるが、好ましくは100℃以上650℃未満の範囲であり、より好ましくは130〜600℃の範囲である。100℃よりも低い温度では、水分の脱離が不十分となって導入したコバルト及びロジウムが無機複合酸化物担体の表面で固定化されないので好ましくない。
【0042】
本実施形態に係る水素製造用改質触媒は、必要に応じて還元処理や金属固定化処理を行うことができる。処理方法は特に制限はなく、例えば、水素流通下での気相還元処理や液相還元処理を行うことができる。
【0043】
本実施形態に係る水素製造用改質触媒の好適な製造方法としては、例えば、アルミナに対して所定量の希土類金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を導入して無機複合酸化物担体を形成し、空気雰囲気下で650〜1200℃で焼成処理を行った後に、この焼成処理後の無機複合酸化物担体にコバルト及びロジウムを導入し、次いで上述の乾燥または焼成処理を行う方法が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係る水素製造用改質触媒の形態については特に制限はなく、例えば、アルミナを含有する担体の形状をそのまま利用することができる。もしくは、打錠成形し粉砕後所定の範囲で整粒した触媒、粉末あるいは球形、リング状、タブレット状、円筒状などに成形した触媒として用いることができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る水素製造方法について説明する。本実施形態の水素製造方法は、炭化水素化合物類を含有する水素原料を、上述した本実施形態の水素製造用改質触媒で改質して水素を得る方法である。
【0046】
具体的には、例えば、上述の水素製造用改質触媒の存在下に、酸素及びスチームから選択される少なくとも1種を含むガスと、炭化水素化合物類を含有する水素原料とを供給して、部分酸化反応、自己熱改質反応及び水蒸気改質反応から選択される少なくとも1つの水素製造反応により水素原料から水素を含有する生成物を得る方法が挙げられる。
【0047】
水素製造用改質触媒を用いる反応形式としては、固定床式、移動床式、流動床式などが挙げられ、特に制約を受けるものではない。また、水素製造用改質触媒を用いる反応器も特に制約を受けるものではない。
【0048】
水素製造反応において原料となる炭化水素化合物類は、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜6の有機化合物を含有する。具体的には、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などを挙げることができ、また飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素については、鎖状、環状の形状を問わず使用することができる。このような炭化水素化合物類は置換基を含むことができる。置換基としては、鎖状、環状のどちらをも使用でき、例として、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基及びアラルキル基等を挙げることができる。また、これらの炭化水素化合物類はヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基などのヘテロ原子を含有する置換基により置換されていてもよい。
【0049】
炭化水素化合物類の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの鎖状の飽和脂肪族炭化水素とその構造異性体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどの鎖状の不飽和脂肪族炭化水素とその構造異性体、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの環状炭化水素とその構造異性体、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ビフェニルなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。また、これらを単品または混合物として含有する材料を使用することができる。例えば、都市ガス、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油などを挙げることができる。
【0050】
またヘテロ原子を含有する置換基を有する炭化水素化合物類として、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料等を含む原料も使用できる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノールなどを挙げることができ、エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテルなどを挙げることができ、バイオ燃料としては、例えば、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットなどを挙げることができる。
【0051】
また、上記原料に水素、水、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、窒素などを含む原料も使用できる。例えば、原料の前処理として水素化脱硫を実施する場合、反応に用いた水素の残留分を特に分離することなくそのまま使用することもできる。
【0052】
原料として使用する炭化水素化合物に含有される硫黄濃度は、硫黄原子の質量として、好ましくは50質量ppb以下、より好ましくは20質量ppb以下、さらに好ましくは10質量ppb以下である。硫黄濃度が50質量ppbを超えると硫黄による改質触媒の被毒が進み、炭素析出を促すので好ましくない。必要であれば水素製造反応の前処理として、原料を脱硫処理して硫黄濃度を下げることが好ましい。原料の脱硫処理の方法に特に制限はなく、一般に工業的に利用されている水素化脱硫や吸着分離などの公知の技術を単独または複数用いることができる。例えば、所定の脱硫触媒と水素の存在下で水素化脱硫処理を行い、生成した硫化水素を吸収剤で除去する方法などを例示できる。脱硫処理の実施方法にも特に制限はなく、例えば、水素製造反応の直前で実施してもよく、独立の脱硫処理プロセスで予め処理を行った原料を使用してもよい。
【0053】
本実施形態において、水素製造用改質触媒に導入される流通原料の空間速度は、ガス空間速度(以下GHSVと記す)が、好ましくは10〜10,000h
−1、より好ましくは50〜5,000h
−1、さらに好ましくは100〜3,000h
−1の範囲である。GHSVが10,000h
−1よりも高いと、原料と触媒の接触時間が十分に確保できないので反応転化が進まず好ましくない。一方、GHSVが10h
−1よりも低いと、触媒量に対する水素製造量が少なく水素製造効率が低くなるので好ましくない。また液空間速度(以下LHSVと記す)では、好ましくは0.05〜5.0h
−1、より好ましくは0.1〜2.0h
−1、さらに好ましくは0.2〜1.0h
−1の範囲である。LHSVが5.0h
−1よりも高いと、原料と触媒の接触時間が十分に確保できないので反応転化が進まず好ましくない。一方、LHSVが0.05h
−1よりも低いと、触媒量に対する水素製造量が少なく水素製造効率が低くなるので好ましくない。
【0054】
本実施形態の水素製造方法の反応温度は特に限定されるものではないが、好ましくは200〜1000℃、より好ましくは250〜900℃、さらに好ましくは300〜800℃の範囲である。1000℃よりも高い温度では、触媒に含有される金属の凝集が進みやすく触媒の早期性能低下を伴うので好ましくない。一方、200℃よりも低い温度では、水素製造に十分な反応速度を得られないので好ましくない。
【0055】
本実施形態の水素製造方法の反応圧力は特に限定されるものではないが、好ましくは大気圧〜20MPa、より好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜1MPaである。大気圧よりも低い圧力や、20MPaよりも高い圧力でも実施することは可能であるが、その場合は製造設備が減圧および高圧に対応する必要があり、経済的に好ましくない。
【0056】
本実施形態において、水蒸気改質反応を行うに際し、水蒸気改質反応に導入するスチームの量は、原料炭化水素化合物類に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比:以下S/Cと記す)が、好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1.5〜3.5の範囲となるように設定される。S/Cが0.3より小さい場合は水蒸気改質反応に必要なスチームが不足し、また、コーク析出が促進され触媒の性能低下が著しく加速されるので好ましくない。一方、S/Cが10より大きい場合は、スチーム供給に要するエネルギーや余剰スチームの生成・回収に要するコストが大きくなるので好ましくない。
【0057】
また本実施形態においては、本実施形態に係る水素製造用改質触媒を用いることで、部分酸化反応及びオートサーマル反応など酸素が共存する状態においても、水素を効率的に製造できることができる。これらの反応に導入する酸素の量は、原料炭化水素化合物類に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比:以下O
2/Cと記す)が、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。O
2/Cが0.8より大きい場合は、二酸化炭素および水の生成反応が進み、水素の生成量が減少するので好ましくない。
【0058】
本実施形態の水素製造方法によれば、本実施形態に係る水素製造用改質触媒による水素製造反応によって、都市ガス、天然ガス、LPG、ナフサ、灯油等の炭化水素燃料から、水素を主成分として含む改質ガスを得ることができる。また、水素製造反応で得られた水素を含有する混合ガスは、固体酸化物形燃料電池のような場合であれば、そのまま燃料電池用の燃料として用いることができる。また、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池のように、一酸化炭素の除去が必要な場合には、一酸化炭素除去工程を併用することにより燃料電池用の燃料として好適に用いることができる。
【0059】
次に、本実施形態に係る水素製造装置及び燃料電池システムについて説明する。
【0060】
本実施形態の水素製造装置は、上述した本実施形態に係る水素製造用改質触媒を有する改質部、並びに、当該改質部に、酸素及びスチームから選択される少なくとも1種を含むガスと、炭化水素化合物類が含まれる水素原料とを供給する供給部を備え、部分酸化反応、自己熱改質反応及び水蒸気改質反応から選択される少なくとも1つの反応により水素原料から水素を含有する生成物を得るものである。
【0061】
本実施形態に係る燃料電池システムは、上記水素製造装置と燃料電池スタックを備え、例えば、
図1の構成を備える。
図1は本実施形態の燃料電池システムの一例を示す概略図である。
【0062】
図1において、燃料タンク3内の燃料は燃料ポンプ4を経て脱硫器5に流入する。脱硫器5内には例えば銅−亜鉛系あるいはニッケル−亜鉛系の収着剤などを充填することができる。この時、必要であれば改質器7の下流、シフト反応器9の下流及び一酸化炭素選択酸化反応器10の下流、及びアノードオフガスの少なくともいずれかからの水素含有ガスを添加できる。脱硫器5で脱硫された燃料は水タンク1から水ポンプ2を経た水と混合した後、気化器6に導入されて気化され、改質器7に送り込まれる。
【0063】
改質器7の触媒として本実施形態の触媒を用い、改質器7内に充填される。改質器反応管は燃料タンク3からの燃料(炭化水素化合物類が含まれる水素原料)及びアノードオフガスを燃料とするバーナー18により加温され、好ましくは200〜1000℃、より好ましくは300〜900℃、さらに好ましくは400〜800℃の範囲に調節される。
【0064】
本実施形態において、供給部20は、水タンク1、水ポンプ2、燃料タンク3、及び脱硫器5から構成されているが、改質部7に酸素及びスチームから選択される少なくとも1種を含むガスと、炭化水素化合物類が含まれる水素原料とを供給するものであれば、他の構成を有していてもよい。
【0065】
このようにして製造された水素と一酸化炭素を含有する改質ガスは、シフト反応器9、一酸化炭素選択酸化反応器10を順次通過させることで燃料電池の特性に影響を及ぼさない程度まで一酸化炭素濃度が低減される。これらの反応器に用いる触媒の例としては、シフト反応器9には鉄−クロム系触媒および/あるいは銅−亜鉛系触媒、一酸化炭素選択酸化反応器10にはルテニウム系触媒等を挙げることができる。
【0066】
上述した水蒸気改質用触媒、水素製造装置及び燃料電池システムによれば、炭化水素などの水素源を原料とする水素製造において、安価で耐久が高く、幅広い条件で水素を効率的に製造することが可能となる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0068】
[触媒の調製]
<実施例1(触媒A)>
直径2〜3mmの球形に成型されたγ‐アルミナ担体(細孔容積0.43ml/g、B.E.T.比表面積182m
2/g)を空気下150℃で6時間乾燥した後、硝酸セリウムを含む水溶液を含浸して、150℃で4時間乾燥した後、空気下400℃で4時間焼成した。これに、硝酸ストロンチウムを含む水溶液を含浸して、150℃で4時間乾燥させた後、空気下800℃で4時間焼成処理を行って、γ‐アルミナ担体100質量部に対して酸化セリウムの担持量が12質量部、酸化ストロンチウムの担持量が5質量部の割合となる酸化物担体Aを得た。
【0069】
この酸化物担体Aに、硝酸コバルト及び硝酸ロジウムを含む水溶液を含浸して、150℃で4時間乾燥させた後、大気中600℃で3時間焼成処理を行った。その結果、γ−アルミナ100質量部に対して酸化セリウムの担持量が12質量部、酸化ストロンチウムの担持量が5質量部、コバルトの担持量がコバルト原子換算で1質量部、ロジウムの担持量がロジウム原子換算で0.2質量部の割合となる触媒を得た。これを「触媒A」とした。
【0070】
<比較例1(触媒B)>
実施例1と同様にして作製した酸化物担体Aに、硝酸ロジウムを含む水溶液を含浸して、150℃で4時間乾燥した後、空気下600℃で3時間焼成処理を行った。その結果、γ‐アルミナ100質量部に対して酸化セリウムの担持量が12質量部、酸化ストロンチウムの担持量が5質量部、ロジウムの担持量がロジウム原子換算で0.2質量部の割合となる触媒を得た。これを「触媒B」とした。
【0071】
[水蒸気改質反応による触媒活性の評価]
上記の触媒を、固定床のマイクロリアクターを用いて水蒸気改質反応で評価した。触媒1mlを反応管(内径約15mm)に充填して、これを管状電気炉内に設置して、大気圧で反応温度350℃、スチーム/カーボン比(モル比)2.5の条件で、プロパンガスを原料としてGHSV2,200h
−1で導入した。
【0072】
反応生成ガスは、ガスクロマトグラムを用いて組成の分析を行い、反応生成ガスに含まれる炭素成分のモル数を基準に、下記式(1)で求められるプロパン転化率を算出して、原料のプロパン転化率を求めた。これを「初期プロパン転化率」とした。
【0073】
プロパン転化率(%)=(反応生成ガスに含まれるC1化合物のモル数)÷(反応生成ガスに含まれる炭素原子の総モル数)×100 ・・・ 式(1)
なお、式(1)において「C1化合物」とは炭素数1の化合物の総称であり、具体的にはCO、CO
2、CH
4のことを意味する。
【0074】
上記で得られたプロパン転化率に基づき、下記式(2)で求められる反応速度を算出した。これを「初期反応速度」とした。
反応速度(mol/sec/ml)=プロパンの供給モル速度(mol/sec)×プロパン転化率(%)÷100÷触媒量(ml)・・・式(2)
【0075】
この後、反応管内に充填した触媒に対して800℃でスチームを4時間流通して熱劣化処理を行った後で、上記と同様の条件でプロパンガスを導入して、同様にプロパン転化率を求め、反応速度を算出した。これらをそれぞれ「劣化後プロパン転化率」、「劣化後反応速度」とした。
【0076】
[CO吸着による金属分散度測定]
触媒活性の評価を行う前、および熱劣化処理を行った後の評価後の上記の触媒について金属分散度を測定して、「初期金属分散度」及び「劣化後金属分散度」をそれぞれ求めた。
【0077】
金属分散度は、一酸化炭素(CO)を用いたガス吸着分析法(金属分散度測定装置 BEL−METAL−3SP(日本BEL社製)を使用)で触媒に吸着したCO吸着量V
50を測定し、それらの値を用いて下記式(3)に従って算出した。
金属分散度(%)=(触媒1g当たりに吸着したCO分子のモル数÷触媒1g当たりに含まれる貴金属のモル数)×100 ・・・ 式(3)
【0078】
なお、式(3)中の「触媒1g当たりに吸着したCO分子のモル数」は、触媒試料を50ml/分の水素気流下で200℃で60分間、続いて50ml/分のヘリウム気流下で200℃で30分間前処理を行った後、50℃にてヘリウムガス気流下でCOパルスを注入したときのCO吸着量V
50を基に、ロジウムが担体表面に球体として担持されて1個のロジウム原子に1つのCO分子が吸着するとみなして、下記式(4)で求めた。
触媒1g当たりに吸着したCO分子のモル数(mol/g)=V
50/W×(273/(273+t))×(P/102.906)/(22.4×10
3) ・・・ 式(4)
V
50:測定温度50(℃)におけるCO吸着量(ml)
W:触媒の試料量(g)
P:測定時の圧力(kPa)
t:測定温度(℃)
【0079】
これらの結果を表1に示す。表1中の触媒組成の単位は、触媒の全質量を基準とした含有量である。また、触媒A及びBの「初期反応速度」及び「劣化後反応速度」について、触媒Bの初期反応速度を1としたときの反応速度の相対比を
図2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
ロジウムとともにコバルトが添加された触媒Aは初期反応速度及び劣化後反応速度の両方が、コバルトを添加しない触媒Bに比べて約20%反応速度が大きい。この結果は、本発明によって提供される水素製造用改質触媒が、熱劣化処理を与えた後も高い触媒活性を有しており、炭化水素の水蒸気改質反応を効率よく進めることができることを示唆する。