(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶装置に記憶された前記道路マップデータは、前記領域のうちの前記第1の領域と、前記領域のうちの前記第2の領域と、前記領域のうちの第3の領域とを区別し、前記領域のうちの前記第2の領域は、前記車両の前記移動方向とは反対方向において移動する交通用の前記道路の一部分からなり、前記領域のうちの前記第3の領域は、前記道路と接するエリアからなり、前記確率密度関数は、前記領域のうちの前記第1、前記第2、および前記第3の領域と関連する確率密度の総計を定義し、前記データプロセッサは、前記領域のうちの前記第2の領域と関連する確率密度の前記総計と、前記領域のうちの前記第3の領域と関連する確率密度の前記総計とに応じて、前記補正因子を増加させるように構成されている、請求項2に記載のシステム。
前記データプロセッサは、式F=(1-C2*P2)/P1によって前記補正因子Fを計算するように構成されており、P1、およびP2は、前記領域のうちの前記第1、および前記第2の領域とそれぞれ関連する前記確率密度の前記総計であり、C2は、1より小さく、ゼロより大きい値の係数である、請求項2に記載のシステム。
前記データプロセッサは、式F=(1-C2*P2-C3*P3)/P1によって前記補正因子Fを計算するように構成されており、P1、P2、およびP3は、前記領域のうちの前記第1、前記第2、および前記第3の領域とそれぞれ関連する前記確率密度の前記総計であり、C2、およびC3は、1より小さく、ゼロより大きい値の係数であり、C3は、C2より小さい、請求項3に記載のシステム。
出力装置を備え、前記データプロセッサは、補正された確率密度関数が、衝突する位置に対する確率の閾値量よりも大きく割り当てることを検出すると、前記出力装置によって警報信号の発生をトリガするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
ステアリングコントローラ、および/またはスピードコントローラを備え、前記データプロセッサは、補正された確率密度関数が、衝突する位置に対する確率の閾値量よりも大きくなったことを検出すると、前記ステアリングコントローラ、および/または前記スピードコントローラをアクティブにするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記道路上の別の車両を検出するように構成されている物体検出器を備え、前記データプロセッサは、他の車両の検出された状態を使用して、前記他の車両のさらなる確率密度関数を計算するとともに、前記補正因子によって補正された前記さらなる確率密度関数と前記確率密度関数との重なりから、衝突確率を計算するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
前記記憶装置に記憶された前記道路マップデータは、一車線道路と二車線道路とを区別し、前記データプロセッサは、前記道路マップデータが、前記車両は一車線道路、または二車線道路に存在することを示すかどうかに応じて、設定を選択するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2003/55563号に、車両および別の道路ユーザの位置について時間依存性の確率密度の予測を伴う衝突回避の方法が記載されている。観測された現在の位置および速度と、加速度の確率分布とを使用して、未来位置について確率密度を計算する。その確率密度から、車両が、他の道路ユーザと同じある場所で、同じある時間に存在するであろう確率が計算される。この確率に基づいて、警報信号を運転者に対して発生させる、または自動的にブレーキをかけるなどの動作がトリガされる。
【0003】
衝突回避に確率密度関数を使用することについてはまた、J. Janssonらによるいくつかの文献、例えば2008年Automatica、2347〜2351頁における「A framework and automotive application of collision avoidance decision making」と題された文献、または2004年American Control Conferenceの議事録、3435〜3440頁における「Model based statistical tracking and decision making for collision avoidance application」に記載されている。
【0004】
米国特許出願公開第2003/55563号には、車両の位置の2次元座標を含む状態ベクトルの値に関する正規分布として、また正規分布のパラメータ、すなわち状態ベクトル平均および共分散を計算することによって時間の関数として、確率密度が示されている。状態ベクトルは、車両の2次元座標を示す成分、車両の2次元速度および車両の方向変更率を含む。拡張カルマンフィルタを使用して、正規分布のパラメータを計算する。
【0005】
衝突回避が考えらえる時間スケールがより大きくなると、精度は低下する。衝突回避のこの種類の有効性は、確率密度の精度に強く依存している。特定の場所についての確率密度が過大に推定された場合、これにより、誤認警報が生じることがあり得、それは正当な警報への信頼を落とすことになる。一方、特定の場所についての確率密度が過小に推定された場合、警報を発生させることができないことが起こり得る。
【0006】
既知の衝突回避は、車両運動の力学モデルのみを使用して、確率密度関数を予測する。これらのモデルは、運転者行動の影響や、ガードレールの存在など、道路構造の態様を無視する。ガードレールは、確率密度の空間分布の境界を画定し得るが、他の手法でも実確率密度関数に影響を与える可能性がある。運転者行動がほとんど影響しない短い時間スケール、および運転者が変化を起こすとは全く予想されないわずかに長めの時間スケールでは、力学モデリングは正確である可能性がある。しかし、非常に長めの時間スケールでは、力学的に予測できない運転者行動にそれが強く左右されるという理由から、確率密度は全く推定不可能である。
【0007】
従来、確率密度は、時間スケールにおいてのみ使用され、道路構造の態様や運転者行動による不正確さは無視されてよい。この場合に関して、力学モデルは十分である。より長めの時間スケールにおいて、確率密度の予測は非常にランダムに不正確であると考えられるので、衝突防止に対して用いる事が出来ない場合がある。しかし、運転者行動を明らかにすることができないことは、系統的な誤認警報を引き起こす可能性、または警報を発することができないことを引き起こす可能性があるということも分かっている。例えば、車両は通常、道路上をわずかに逸脱する。このような逸脱運動の最中に車両方向を機械的に外挿した場合、誤認警報を引き起こす可能性がある。なぜならば、機械的外挿法は、車両がその車線を離れるずっと前に、運転者が逸脱運動をほとんど無意識のうちに変更するであろうこと、またはガードレールがこれを防ぐであろうことを無視しているからである。
【0008】
これらの種類のエラーを減少させる確率密度の現実的決定が望まれることになる。しかし、これには運転者行動および道路構造を明らかにすることが必要なので、そうするために利用可能な単純な力学モデルがない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
衝突回避システムは、完全に車両に搭載されて実装されても、または車両の外側に構成要素を備えてもよい。したがって、例えば、道路側の物体または他の車両についての情報の供給、確率密度などの計算は、車両内ではなく、道路側の機器によって実行可能である。例として、車両の内側の実装形態を説明することにする。
【0023】
図1は、物体検出器10、データプロセッサ12、マップ記憶装置14、位置検出器16、スピード検出器18、および警報信号発生器19を備える、自動車など、車両における衝突回避システムの実施形態を示す。データプロセッサ12は、物体検出器10と、マップ記憶装置14と、位置検出器16と、スピード検出器18と、警報信号発生器19とに結合されている。
【0024】
物体検出器10は、他の車両の位置および速度を検出し、互いの車両のタイプ分類を決定するようにも構成可能である。物体検出器10は、位置をレーダ波の移動時間および/またはレーダ波の方向から、速度をドップラー偏移から、ならびに分類を反射振幅から決定することが可能な、例えばレーダ装置であってよい。代替として、物体検出器10は、他の車両におけるトランスポンダから信号を得るための送受信機を含むことが可能である。
【0025】
位置検出器16は、GPS受信機とGPSプロセッサとを含むGPSユニットであってよい。GPSプロセッサは、データプロセッサ12の一部であってよい。スピード検出器18は、車両の車輪の回転速度を感知するために取り付けられた車輪センサと、進路検出器とを含むことが可能である。代替として、スピード検出器18は、GPSユニットを使用してスピードを測定するために、部分的に実装されても、または全体的に実装されてもよい。
【0026】
図2は、衝突回避システムが取り付けられている車両20を含む道路の形状の例を示す。例として、別の車両22も同様に示す。道路の左側および右側に対する道路以外のエリア24、26と、互いに両方向に移動する通行用の道路の部分28a、28bとを表す。矢印は、車両20、22の走行方向を表す。本明細書において用いられる場合、用語「道路」は、より長い道路がそこから前方または後方へ続いている、より長い道路の区分を示すことが可能である。
【0027】
動作中、データプロセッサ12は、車両20がある未来時点「t」において道路上の異なる位置「r」における領域内に存在するであろう確率を定義する確率密度関数p
0(r;t)を示す情報を保持することが可能である。位置rは、例えば、道路面の2次元座標x、yによって示すことが可能である。データプロセッサ12は、他の車両22、および任意選択で、さらなる車両(図示せず)について1つまたは複数のさらなる確率密度関数p
i(r;t)を示すさらなる情報を保持する。一実施形態において、情報は、道路上の網目状の点においてサンプル化された確率密度関数の値のそれぞれの組、またはこれらの点と関連する位置範囲についての確率を用いて、各確率密度関数を示すことが可能である。
【0028】
別の実施形態において、分割表示が使用可能であり、ただし情報は、位置の空間の1区画ついての確率密度関数を正規分布関数N(r)=A*exp(-(r-r
0)*C*(r-r
0)/2)など、その区画についての所定の分布関数のパラメータを用いて示すことが可能である。本明細書において、r
0はモード位置値であり、Cは逆共分散行列であり、Aは規格化因子である。
【0029】
車両力学に基づいて確率密度関数を示す情報の値を計算する方法はそれ自体、知られている。知られている手法は、車両20の状態値のベクトル「S」に対して運動仕様を与えることである。ベクトルは、車両の位置rに加えて、その配向phi、その速度「v」、およびこれらの値の1つまたは複数の時間導関数などの他の成分を含む。現在時における状態ベクトルSの正確な値を仮定すると、運動仕様は、すべての未来時についての状態ベクトルS(t)を予測することを可能にする。
【0030】
確率密度関数が計算される実施形態において、現在時における状態ベクトルSの初期確率密度が定義される。初期確率密度は、車両の位置rなど、状態ベクトルSのいくつかの成分だけに正確な値を与えることが可能であり、一方、加速度などの他の成分について可能な値の分布を定義する。この実施形態において、未来時についての確率分布は、初期確率密度によって異なる状態ベクトルから開始することによって得られる予想された状態ベクトルの総計から得られる。
【0031】
運動モデリング
運動仕様は、未来の状態を定義し、それに対して種々の状態が時の経過とともに進展することになる。運動が、微分方程式に関して指定されても、または各未来状態値の表が、選択された時間増分について所与の開始状態値のために提供されてもよい。
【0032】
決定論的運動仕様が使用されてよい。一例において、運動仕様は、ベクトルの各成分の変化率を、導関数を示す1つまたは複数の他の成分と関連付け、ここで最高次数導関数を示す成分の変化率は、ゼロに設定される。そうではなく、非決定論的運動仕様が使用されてもよく、ただし、状態値の変化は、所定の確率分布によるランダムパラメータを含むいくつかの少なくとも部分的にランダムな関数によって変化するようにモデリングされる。この場合、最高次数導関数のような初期状態成分は省略可能である。オフセット位置または固定回転に対する運動仕様の不変性など、ダイナミックスの不変性を使用して、1つの表項目を用いて状態ベクトル値の組についての未来状態値を定義することが可能である。
【0033】
状態ベクトルの成分の数は、運動仕様によって表されるように、人がモデリングしたいと望む効果によって選択可能である。一例において、状態ベクトルが、成分(x, y, v, phi)とともに使用可能であり、運動仕様は、微分方程式を用いて指定可能である。
dx/dt=v*cos(phi)、dy/dt=v*sin(phi)、
dv/dt=0、dphi/dt=0
このモデルにおいて、速度(v)および進路(phi)は一定であると解釈されるが、それらの値は、一定でない状態であってもよく、速度および進路について初期確率密度によってのみ説明される。任意選択で、これらの初期確率密度のパラメータは、センサ入力データに依存してよい。対照的に、道路上の車両の位置の座標xおよびyの値は、確定初期値を有すると解釈可能であるが、代替として、測定不確実性による初期確率分布もまた、これらのために使用可能である。別の例において、状態ベクトルは、成分(x, y, v, phi, a, k)とともに使用可能であり、運動の方程式は、微分方程式を用いて指定される。
dx/dt=v*cos(phi)、dy/dt=v*sin(phi)、
dv/dt=a、dphi/dt=k*v、
da/dt=0、
dk/dt=0
この例において、確定でない値は、例えば「a」および「k」について定義される必要はなく、初期確率密度のみがこれらのパラメータの値について定義される。x、y、v、phiの値は、確定初期値を有する、また初期確率分布によって説明されると解釈可能である。これらは、モデルのうちのほんの例に過ぎないことを理解すべきである。種々の状態ベクトルおよび/または運動の種々の方程式とともに他のモデルも、求められる精度に応じて、使用可能である。
【0034】
確率密度の初期計算
運動の一次方程式では、未来時についての確率密度関数のパラメータに分析的表現を提供することが可能であり得る。例えば、状態ベクトル(x, y, v, phi)を有する第1の例の場合、xおよびyの確率密度は、時間の積に比例的に増えるモーダル値および分散と、vおよびphiによって定義される分布のモーダル値および分散とを有する。
【0035】
分析的表現を用いるのではなく、未来時についての確率密度関数を示す情報は、モンテカルロ法を用いて得ることが可能である。これは、例えば、初期確率密度による分布により初期状態ベクトルの組をランダムに選択することによって、これらの初期状態ベクトルのそれぞれ毎に未来時についての状態ベクトルを計算することによって、および計算された状態ベクトルから未来時についての確率密度関数のパラメータを推定することによって行われてよい。同様に、初期状態ベクトルの空間のシステマティックサンプリングを使用して、状態ベクトル値の関数として未来状態ベクトルの密度を推定可能である。代替として、反復計算が使用可能であり、ただし、連続的時点についての確率密度分布はそれぞれ、先行する時点についての確率密度分布から計算され、運動仕様は、1つの時点から次の時点に状態ベクトル値のマッピングを定義する。モンテカルロ手法は、非決定論的運動仕様が使用される場合にも使用可能である。
【0036】
それぞれの場合、確率密度関数の決定は、初期状態ベクトルの成分について、センサデータを集めることを含む。このセンサデータから、初期確率は決定され、初期確率密度から、未来時についての確率密度関数を示す情報が計算される。
【0037】
図3は、衝突回避の方法の実施形態のフローチャートを示す。第1のステップ31において、データプロセッサ12は、位置検出器16およびスピード検出器18から車両センサデータをキャプチャする。データプロセッサ12は、車両の進路から、および/または検出された位置の変更の履歴から、車両の移動方向を決定する。第2のステップ32において、データプロセッサ12は、初期確率密度および/または車両センサデータから決定される初期値から未来時点「t」について第1の確率密度関数を計算する。この計算はそれ自体、例えば、モンテカルロ法によってか、または確率密度関数のパラメータについての分析的表現を用いて知られているやり方で実行可能である。
【0038】
マップデータを使用する補正
第3のステップ33において、データプロセッサ12はまず、マップ記憶装置14からマップデータによって定義される位置の組について第1の確率密度関数によって定義される確率の総計を計算する。ある実施形態において、マップデータは、車両の移動方向と非明示的または明示的に関連する道路の部分を画定する。道路の幅が2つの部分に分けられる場合、移動方向で見られる最右部分は、その方向における移動と非明示的に関連可能であり、最左部分は、反対方向における移動と関連可能である。これは、車両が右側を走行する国々についての動作のモードに適用する。他の国々においては、左側および右側の役割が交換する動作のモードが使用可能である。
【0039】
第3のステップ33において、データプロセッサ12は、検出された移動方向を使用して、移動方向と関連する道路の部分を選択する。データプロセッサ12は、車両が走行している方向と関連する道路の部分上にある位置の組に関して総計された第2のステップ32において計算された初期確率密度からの総計確率P1と、反対の移動方向についての位置の組に関して類似する総計確率PLと、道路の外側にある位置の組に関しての総計確率PRとをそれぞれ計算する。位置の組は、それらがすべての可能な位置をカバーするように選択可能であり、その場合、確率のこれらの総計の合計は1に等しくなるべきである。そうである場合、確率の総計は、これらの組の2つについてのみ直接計算すべき必要性があり得る。
【0040】
ある実施形態において、P1と、合計PL+PRである量とだけが使用され、その実施形態においては、総計されるもののみが計算すべき必要性があり得る。別の実施形態において、PLは、車両が走行している方向と関連する部分の第1の側の位置の組についての総計として計算可能であり、第1の側は、反対の移動用の部分を含む。この実施形態において、PRは、第1の側とは反対の部分の第2の側の位置の組についての総計として計算可能である。
【0041】
その後、第3のステップ33において、データプロセッサ12は、車両が走行している方向と関連する道路の部分に適用する第1の確率密度関数の一部に適用するための補正因子Fを決定する。ある実施形態において、補正因子Fは、
F=(1-CL*PL)/P1
によって計算される。より一般的には、補正因子Fは、
F=(1-CL*PL-CR*PR)/P1
によって計算可能である。
【0042】
本明細書において、CLおよびCRは、1より小さく、車両が走行している方向について道路部の左側および右側に対する位置に適用する確率密度の部分を効果的に減らす規格化因子である。式F=(1-CL*PL)/P1において、CRは、ゼロに設定されている。CLは、例えば、0.3に設定可能である。対応する補正因子F'は、F'=CLによって、車両が走行している方向について道路部の左側に対する確率密度関数の部分に関して決定可能である。
【0043】
衝突確率の計算への適用
補正因子F、または補正因子F、F'を使用して、衝突確率を計算することになる。例として、車両22など、別の道路ユーザによる衝突確率の計算を説明することにする。しかし、代替として、固定された物体または車両以外の移動物体との衝突の確率が計算可能であることを理解すべきである。
【0044】
第4のステップ34において、データプロセッサ12は、物体検出器10からのデータを読み取って、車両22など、別の道路ユーザが道路上に存在するかどうか、または少なくとも物体検出器10からの所定の距離内に存在するかどうかを検出する。そうである場合、データプロセッサ12は、検出器信号からの物体位置およびスピードなど、他の道路ユーザについての状態パラメータを決定する。物体検出器10が、例えばレーダユニットである場合、物体位置は、反射が受け取られる方向、および反射が受け取られる遅延から得られる。物体検出器10の方向におけるスピードは、ドップラー偏移から決定可能である。他の道路ユーザがトランスポンダを装備し、衝突回避システムがトランスポンダデータを得るために送受信機を有する場合、トランスポンダデータは、このような情報を提供することが可能である。
【0045】
第5のステップ35および第6のステップ36において、データプロセッサ12は、検出された他の道路ユーザについて、第2のステップ32および第3のステップ33と類似する計算を実行する。しかし、第5のステップ35および第6のステップ36において使用される状態ベクトルおよび運動仕様は、衝突回避システムを有する車両20に、および他の道路ユーザに利用可能なセンサデータのタイプの差に応じて、第2のステップ32および第3のステップ33において使用されるものとは異なってよい。確率密度関数と、補正因子Fiは、未来時点「t」における他の道路ユーザについて計算される。任意選択で、他の車両が走行している方向について道路部の左側に対する確率密度関数の部分に関する補正因子Fi'が決定可能である。
【0046】
第4のステップ34、第5のステップ35、および第6のステップ36は、それぞれの他の道路ユーザについて確率密度関数および補正因子Fiを決定するために、異なる道路ユーザに対して繰返し可能である。通常は、少数の車両のみについて確率密度関数が使用可能であり、例えば、反対方向から最接近している車両について1が、および同じ方向で正面の最も近い車両について1が使用可能である。実施形態は、車両について説明しているが、第4のステップ34および続くステップは、概して、歩行者を含む他の道路ユーザに適用可能になることを理解すべきである。
【0047】
第6のステップ36の後、または第4のステップ34から第6のステップ36の繰返しの後、データプロセッサ12は、第7のステップ37を実行し、それは、衝突回避システムを有する車両が、未来時点「t」において別の車両と同じ位置を占める同時確率を計算する。このために、(他の車両の走行方向に応じて)補正因子FおよびFi'またはFiの積、ならびに車両20および他の車両22についての確率は、車両20が走行している方向について道路部における1つまたは複数の衝突エリアに関して計算される。これらの確率は、衝突エリア全体にわたる車両および他の車両の確率密度の積分の近似として計算可能である。類似する積が、(他の車両の走行方向に応じて)補正因子F'およびFiまたはFi'と、車両20、および車両20が走行している方向とは反対方向について道路部における他の車両22に関しての確率とから計算可能である。
【0048】
計算された衝突確率に対する応答
第8のステップ38において、データプロセッサ12は、未来時点について第7のステップ37からの積または種々の衝突エリアに関しての積の合計を閾値と比較し、その比較の結果に応じて衝突回避動作を実行する。衝突回避動作は、警報信号発生器19をトリガして、車両20における警報信号、例えば、警報信号発生器19におけるラウドスピーカ(図示せず)上の音響信号をレンダリングすること、またはブレーキ(図示せず)をアクティブ化する、(例えば、ガスまたは電気の供給を制御することによって)駆動ユニット(図示せず)を制御して駆動パワーを抑えること、もしくはステアリングユニットを制御して車両ステアリングを調整することなどの積極的介入を含むことが可能である。動作は、積が閾値を超える衝突エリアの場所に応じて適合可能であり、例えば、そのエリアが、車両が走行し、その他の形でステアリングしている方向について車両車線内にある場合、遮断を使用する。種々の衝突回避動作が、種々の閾値との比較に応じてとられてよい。
【0049】
因子が確率に適用され、所定の閾値が使用されている第7のステップ37および第8のステップ38の例を説明してきたが、代替として、閾値が因子に反比例して適合可能であることを理解すべきである。どんな組合せが使用されても、判定は、閾値と、確率および因子の積との比率の値によって決まる。
【0050】
任意選択で、第2のステップ32〜第8のステップ38は、衝突確率がすべての時点についての閾値を下回ることがわかるまで、または衝突回避動作をとる判定がとられるまで、いくつかの異なる未来時点について、例えば、所定の最大時間距離まで次第に離れている未来時点について繰返し可能である。異なる時点についての閾値および動作は異なってよい。
【0051】
確率密度を計算するために使用される情報
ある実施形態において、マップデータは、道路側ステーションから衝突回避システムに供給可能である。この実施形態において、衝突回避システムは、そのようなデータを受け取る受信機を備えることが可能である。ある実施形態において、例えば路線計画のために使用されるなど、マップデータは、道路ネットワークについて事前に記憶されたデータベースから配信可能である。この場合、位置検出器16を使用して、道路ネットワークの画定された道路に対する車両20の位置R1および道路縁部の座標Re〜R1の定義を決定し、また、車両に対する異なる方向についての道路部間の分離部を、道路縁部座標Reから得ることが可能である。
【0052】
代替の実施形態において、物体検出器10を使用して、実行時におけるマップデータを決定することが可能である。例えば、レーダユニットが使用される場合、任意選択で、このような物体の位置を、異なる走行方向についての道路縁部および道路部間の分離部の位置に関連付ける道路ネットワークについてのデータベースとの組合せで、ガードレール、停車中の車、またはランタンなどの一列の静止物体(車両の測定されたスピードと同じスピードで、しかし反対方向において移動する物体)からの検出された反射を使用して、道路の縁部を識別することが可能である。このような識別された縁部および分離部により動的に決定された道路マップを、その後、第3のステップ33および第6のステップ36において使用して、補正因子を決定することが可能である。この場合、位置検出器16は、必要でなくてもよい。
【0053】
追加のセンサまたは他のセンサを使用して、初期状態ベクトルおよび/または初期確率密度の精度を高めることが可能である。したがって、例えば、衝突回避システムは、配向センサまたは加速度センサを備えることが可能である。
【0054】
データプロセッサ12は、衝突エリアの位置が道路の十字路または一車線の道路に位置することをマップデータが示す場合、補正因子F、Fiの使用を非アクティブにするように構成可能である。衝突エリアについての確率の計算後に、因子F、Fiが適用される実施形態を説明してきたが、そうではなく、因子が確率密度関数の表現に適用可能であることを理解すべきである。
【0055】
第3のステップ33および第6のステップ36における補正因子計算の唯一可能な実施形態を示していることを理解すべきである。補正因子を使用して、状態および運動仕様によって示されるモデルの不正確さの影響を抑える。このようなモデルが唯一、運転者行動を明らかにする可能性を制限している。数分の時間スケールにおいて、運転者行動は、運動の純粋な機械的方程式から得られることになる道路上の位置の予測可能性を完全に覆すことが明らかである。運転者がいずれの変更も加えないであろうと予想されるかなり短めの時間スケールでは、衝突回避は、運転者行動をモデリングすることなく実行可能である。
【0056】
しかし、著しい影響を及ぼす運転者によってなされる変更が起きる時間スケールに対して、衝突回避がそれにおいて効果的である時間スケールを延長することが望ましい。これは、純粋な力学モデルが不十分であるとき、問題を示す。一方、全体的にランダムな運転者行動の仮定が、多くの誤った警報につながる可能性がある。したがって、分別のある運転者行動を明らかにするために、別のやり方が必要とされる。
【0057】
第3のステップ33および第6のステップ36における補正因子は、分別のある運転者行動を明らかにする近似的やり方を提供する。分別のある運転者は、車両が道路を多少でも逸脱しないようにすることはできないが、運転者は、車両が、道路の外側に、または反対方向からの通行用の車線に行ってしまうことになる極端な逸脱をほとんど無意識のうちに補正することになる。この行動の補正が起きなければ、より長い時間スケールの計算は、適切な走行方向における道路上の位置についての確率密度を構造的に過小推定することになる。第3のステップ33および第6のステップ36における補正因子は、車線以外の位置について計算された総計確率密度に応じて、衝突回避のために使用される適切な方向の部分確率密度関数を効果的に上げることによってこれを補正する。後者は、逸脱補正を明らかにすることができない影響に対する方策としてとられる。
【0058】
正確なやり方でこの影響を明らかにすることが不可欠でないことを理解すべきである。この影響を少なくとも部分的に説明するいずれの補正も、衝突回避の信頼性を向上させる。しかし、もちろん、衝突回避の信頼性のさらなる向上は、逸脱補正を明らかにすることができないことに対して、より優れた補正を使用することによって実現可能である。
【0059】
単純な実施形態において、車両20の走行方向についての道路部分の外側のすべての確率密度が逸脱補正を明らかにすることができないことよるものであると仮定して、補正因子Fは計算可能になる。この実施形態において、補正因子は、
F=1/P1
になる。しかし、正面衝突の回避が論点である場合、これは、潜在的な衝突を検出することができないことにつながる可能性がある。別の実施形態において、これは、車両がその車線から逸脱してしまう確率があるという仮定を課すことによって改良可能である。これは、
F=(1-CL*PL)/P1
を使用することによって明らかにされる。本明細書においては、CLは、逸脱補正を説明することができないことによるエラーを明らかにするためにゼロと1との間にある。例えばCL=0.3が使用可能であるが、例えば、0.1〜0.5の範囲から他の値もまた、改良パフォーマンスのために提供することが可能である。
【0060】
ある実施形態において、異なる因子CLの値が、確率密度関数のために使用可能であり、その値は、未来における異なる時間に適用し、未来におけるより小さい時間にはより大きい値をとり、未来におけるさらなる時間にはより小さい値をとる。例えば、因子CL=1は、未来における0.2秒まで使用可能であり、運転者がそれほど迅速に応答することはないということが分かり、因子CL=0.3は、未来におけるより長い時間に使用可能である。因子CLの逐次的により小さい値は、例えば、1から0.3に次第に低下する、未来における逐次的なさらなる時間に使用可能である。
【0061】
別の実施形態において、最大値は確率PLに従ってよい。この場合、CLは、PLが閾値Tより小さい場合、効果的には、1に等しくなり、そうでなければ、CLは、CL=T/PLに設定される。この場合、逸脱補正を明らかにすることができない影響に対する補正は、大量の潜在的なエラーが検出された場合のみトリガされる。この場合、関数CL=g(PL)は、x<Tではg(x)=l、およびx>Tではg(x)=T/xとともに効果的に使用される。そうではなく、g(x)=l/(l+x/T)など、他の関数も使用可能である。
【0062】
別の実施形態において、双方ともにゼロと1との間のCLおよびCRを用いて、補正因子
F=(1-CL*PL-CR*PR)/P1
を使用することが可能である。このようにして、道路から右側に移動する小さい確率の影響の説明が解釈可能である。
【0063】
理解されるように、計算は、移動方向に見られる道路の右側部を交通が使用するという仮定に対応して、左側と右側との間の非対称を導入することが可能である。交通ルールによって左側走行を義務づけられている国々においては、左側および右側の役割は、交換すべきである。データプロセッサ12は、このような異なるタイプの走行ルールについて、左側および右側の互いに交換される役割を有する第1のモードおよび第2のモードを支持するように構成可能である。ある実施形態において、マップ記憶装置14が、左側または右側を走行する位置をリンクさせる情報を記憶し、データプロセッサ12は、位置検出器16からの検出された位置を使用して、この情報を取り出し、現在位置について取り出された情報に応じて第1のモードまたは第2のモードに切り替えることを制御するように構成されている。
【0064】
ある実施形態において、確率密度関数は、先行する時間についての確率密度関数から、未来におけるそれぞれの逐次的な時間毎に、反復的に計算可能である。原理上は、補正因子は、それぞれの反復において適用可能であり、次の反復を計算するために使用可能である。しかし、計算はまず、このような補正なしに、すべての時間についての確率密度関数を計算することによって迅速化可能である。これは、運動仕様が、単調に変化する位置値に対して提供するために使用される場合、その結果に影響を及ぼさない。
【0065】
ある実施形態において、衝突回避システムの構成要素はすべて、車両20内に取り付けられており、そのため、衝突回避がもたらされる。代替として、構成要素の一部は、例えば、車両とこれらの構成要素との間の無線通信チャネルが設けられる場合、車両の外側にあってもよい。したがって、例えば、物体検出器10、データプロセッサ12、マップ記憶装置14、位置センサ16、および/または速度センサ18はすべて、車両20の外側に設置可能である。道路側物体検出器10、位置センサ16、および/または速度センサ18は、例えば車両内データプロセッサ12と通信して使用可能である。
【0066】
データプロセッサ12は、プログラム可能プロセッサを備える制御回路として、およびデータプロセッサ12について説明した動作をプログラム可能プロセッサに実行させるように、プログラムを含むプログラムメモリとして実装可能である。代替として、制御回路は、複数のプログラム可能プロセッサと、データプロセッサ12について説明した動作をプログラム可能プロセッサの組合せに実行させるように、分散型プログラムについて1つまたは複数のプログラムメモリとを備えることが可能である。さらなる実施形態において、これらのプロセッサの一部またはすべては、これらの動作を実行するように設計された専用回路として実装可能である。本明細書において使用される場合、データプロセッサ12がこれらの動作を実行するように構成されているという記述は、代替の実装形態としてこれらの実施形態のそれぞれを示す。
【0067】
ある実施形態において、システム全体は、車両に搭載されて実装可能である。他の実施形態において、システムの一部またはすべては、例えば、道路側の機器内の他所に実装可能である。したがって、例えば、道路ユーザを検出し、道路ユーザのそれぞれ毎について確率密度関数を計算する道路側機器が使用可能であり、道路ユーザの少なくとも一部について、例えば、自動車について補正因子を計算し、適用する。歩行者または自転車に乗っている人など、道路ユーザの他のタイプでは、他の計算を使用して確率密度を計算可能である。このような道路ユーザのスピードが自動車のスピードよりも一般に低速であるとき、これらの道路ユーザについて、それほど正確でない局所的な確率密度を計算すれば十分であり得る。
【0068】
このような道路側システムの場合、システムがアクティブである道路区分について、制限された量のマップデータを記憶すれば十分であり得る。このマップは、衝突など、道路事象を、または雨もしくは氷など、変化する道路条件を明らかにするように動的に更新可能である。システムは、確率密度関数および補正因子から計算される衝突確率に応じて、道路ユーザに警告信号を送る送信機が設けられていてよい。代替として、または加えて、システムは、確率密度関数および補正因子から計算された衝突確率に応じて、交通灯または警告灯など、道路側装置を制御するように構成可能である。別の実施形態において、道路側・車両内混合型システムが使用可能である。マップデータおよび/または他の車両についての情報は、例えば、システムの道路側部から車両に送信可能である。