(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788405
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】成体幹細胞誘発の訓化培地および/または腫瘍疾患の治療にて用いるための成体幹細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/074 20100101AFI20150910BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20150910BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20150910BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
C12N5/00 202D
A61K35/12
A61P35/00
A61K37/02
【請求項の数】20
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-542512(P2012-542512)
(86)(22)【出願日】2010年12月7日
(65)【公表番号】特表2013-513366(P2013-513366A)
(43)【公表日】2013年4月22日
(86)【国際出願番号】EP2010069049
(87)【国際公開番号】WO2011070001
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】09425504.9
(32)【優先日】2009年12月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156100
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 満
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ベアトリス・エレラ・サンチェス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティーナ・フォンサト
(72)【発明者】
【氏名】チーロ・テッタ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・カムッシ
【審査官】
名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/020815(WO,A1)
【文献】
Lancet Oncol.,2008,9(4),p.376-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00−5/28
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
Thomson Innovation
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が分泌する複数の蛋白を含み、複数の分化細胞型への分化能を有する成体非楕円肝臓幹細胞を液体細胞培地にて培養することで得られる、腫瘍の治療にて用いるための、訓化培地。
【請求項2】
それから訓化培地を得ることができる成体非楕円肝臓幹細胞からなる細胞フラクションを含む、請求項1に記載の訓化培地。
【請求項3】
無細胞である、請求項1に記載の訓化培地。
【請求項4】
(i)複数の分化細胞型への分化能を有する成体非楕円肝臓幹細胞を液体細胞培地にて所定の時間培養する工程、および
(ii)細胞フラクションを該液体細胞培地から取り出し、それにより細胞が分泌する複数の蛋白を含む無細胞の訓化培地を得る工程
を含む方法により得ることができる、請求項3に記載の訓化培地。
【請求項5】
細胞フラクションを液体細胞培地より遠心分離または濾過により取り出す、請求項4に記載の訓化培地。
【請求項6】
液体細胞培地が付加的に、約20000ないし300000g、好ましくは約80000ないし200000gのG力で、超遠心分離に供される、請求項5に記載の訓化培地。
【請求項7】
方法がさらに、(iii)無細胞の訓化培地より、公称分子量が3kDaより低い物質のフラクションを除去する、工程を含む、請求項4ないし6のいずれかに記載の訓化培地。
【請求項8】
公称分子量が3kDaより低い物質のフラクションが無細胞の訓化培地より限外濾過により除去される、請求項7記載の訓化培地。
【請求項9】
方法がさらに工程(ii)にてまたは工程(iii)にて得られる無細胞の訓化培地をRNaseで処理する工程を含む、請求項4ないし8のいずれかに記載の訓化培地。
【請求項10】
非楕円肝臓幹細胞が成熟肝細胞、インスリン産生細胞、骨形成原細胞および上皮細胞への分化能を有する、請求項1ないし9のいずれかに記載の訓化培地。
【請求項11】
複数の分化細胞型への分化能を有する成体非楕円肝臓幹細胞がヒト細胞である、請求項1ないし10のいずれかに記載の訓化培地。
【請求項12】
腫瘍の治療にて用いるための、複数の分化細胞型への分化能を有する成体非楕円肝臓幹細胞。
【請求項13】
請求項10に記載される、請求項12に記載の成体非楕円肝臓幹細胞。
【請求項14】
腫瘍が充実性腫瘍である、請求項1ないし11のいずれかに記載の訓化培地または請求項12または13に記載の成体非楕円肝臓幹細胞。
【請求項15】
腫瘍が、肝腫瘍、上皮腫瘍、乳房の腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍、胃腫瘍および結腸腫瘍からなる群より選択される、請求項14に記載の訓化培地または成体非楕円肝臓幹細胞。
【請求項16】
腫瘍が肝臓癌、カポシ肉腫および乳腺腺癌からなる群より選択される、請求項15に記載の訓化培地または成体非楕円肝臓幹細胞。
【請求項17】
請求項1ないし11のいずれかに記載の訓化培地または請求項12または13に記載の成体幹細胞の、腫瘍の治療にて用いるための医薬を製造するための使用。
【請求項18】
腫瘍が請求項14ないし16のいずれかに記載されるとおりである、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
医薬が局所または全身投与用のものである、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
医薬が注射により投与されるための、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は腫瘍疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
転移性癌細胞は、幹細胞と、その自己複製能および多様な子孫の産生能などの多くの特徴点を共有する。さらには、幹細胞と癌細胞の表現型は微
小環境により大いに影響を受ける。同時に、胚微
小環境は種々の癌細胞系の腫瘍原性を阻害することが判明した。嚢胚形成の前に、転移性黒色腫細胞の胚ゼブラフィッシュ微
小環境への暴露が
、その
非腫瘍原性表現型への再プログラム化をもたらすことが証明された(Cucina Aら、(2006). Zebrafish embryo proteins induce apotosis in human colon cancer cells (Caco2). Apoptosis 11:1615-1628;Lee LMら (2005). The fate of human malignant melanoma cells transplanted into Zebrafish embryos: Assessment of migration and cell division in the absence of tumor formation. Dev Dyn 233:1560-1570)。加えて、成長過程にある鶏胚に移された転移性黒色腫細胞は、神経堤移動経路に沿って進み、腫瘍原性の喪失および神経堤様表現型の獲得をもたらしうる。最近の研究は、ヒト胚幹細胞(hESC)微
小環境が、具体的に、胚モルホゲンノダル(Nodal)の転移性黒色腫および乳癌細胞における発現を中和し、それらをあまり攻撃的でない表現型に再プログラム化することを示した(Postovit LMら(2008). Human embryonic stem cell microenvironment suppresses the tumorigenic phenotype of aggressive cancer cells. PNAS 105: 4329-4334)。Postovit LMらは、
Nodalシグナル伝達の阻害因子である、hESC
により分泌
されるレフティ(Lefty)
を、これら現象の重要な伝達物質の一つとして
発見した。これらの研究は、胚幹細胞の微
小環境が、攻撃的な腫瘍細胞にて異常に発現された胚性因子の制御のための、以前には言及されなかった治療的存在を提供する
ことを立証する。
【0003】
Giuffrida D
et al. Human embryonic stem cells secrete soluble factors that inhibit cancer cell growth. Cell Prolif. 2009 Sep 1 にて、ヒト上皮癌細胞株の増殖の阻害はhESCにより産生される可溶性因子により媒介されること
が示された。著者らはG(1)相の癌細胞の割合がhESC CM治療により増加し、SおよびG(2)
/M相における細胞の減少を伴
うことを見いだし、これらの因子が細胞周期阻害により癌細胞の進行の速度を落とすことを示唆
している。
【0004】
しかしながら、かかる結果は、胚幹細胞を得るのに胚の破壊が必要とされる点において、
獲得することが困難であり、倫理的および方法論的関心の両方
を生じさせ
る、胚幹細胞により達成された。さらには、胚幹細胞はインビボでの移植において増殖が制御できないかもしれない。
【0005】
間葉細胞および胚幹細胞の両方のマーカーを発現し、多能性分化能および再生特性を有するヒト成体非楕円(non-oval)肝幹/前駆細胞(HLSC)は、本願発明者らによって、WO2006/126219として公開される国際特許出願にて開示された。
【0006】
WO2006/126219にて、HLSCは「多能性前駆細胞」と定義され
たが、「前駆細胞」および「幹細胞」の語は共に、
自己再生能および特殊化した(すなわち、分化した)細胞型
への分化能を有する細胞をいう。
【0007】
さらには、「多能性
」および「多分化能」なる語は、その両方が幹/前駆細胞の複数の特殊化した(分化した)細胞型に分化する能力をいう点で、本願明細書の中で相互変換可能であると考えられる。
この文脈で、「複数」なる語は、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の特殊化した(分化した)細胞型を意味する。
【0008】
本願明細書の記載にて、「成体幹細胞」なる語は、胚盤胞の内部細胞塊より単離される「胚幹細胞」とは異なり、成体組織から単離される幹細胞を意味する。成体幹細胞はまた「体幹細胞」としても知られている。
【0009】
WO2006/126236に開示のヒト非楕円肝多能性前駆/幹細胞は、種々の組織細胞型(すなわち、成熟肝細胞、上皮細胞、インスリン産生細胞および骨形成原細胞)への分化を受け、器官再生効果を発揮することが示された。かかる細胞は、肝細胞マーカーを発現する非楕円ヒト肝多能性前駆細胞株より誘導される。かかる細胞は:
(i) 成体肝由来のヒト成熟肝細胞を、成熟肝細胞が死亡し、類上皮形態を有する生存細胞の集団を選択するまで、細胞培地にて培養し;
(ii)類上皮形態を有する生存細胞の集団を、血清含有の、グルコース含有の、hEGF(ヒト上皮成長因子)およびbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)を補足し、通常の無機塩、アミノ酸および哺乳動物細胞の成長に不可欠なビタミンを含む培地にて培養することで拡張する、
特に、成熟肝細胞を抗凍結剤の存在下にて血清含有の培地にて凍結させ、ついで工程(i)の培養の前に解凍させる工程を含む、方法により単離される。
【0010】
WO2006/126236に開示のヒト非楕円肝幹/前駆細胞の特徴付けおよびその製造法を出典明示により本願発明の一部とする。
【0011】
間葉細胞幹細胞(MSC)の製剤はある組織にて再生効果を発揮することも知られている。例えば、骨髄誘導MSCは、必然的に、可溶性細胞外マトリックス糖蛋白、サイトカインおよび成長因子を含む、多数の栄養分子を分泌することで造血作用を支持することが知られている。
【0012】
しかしながら、ある幹細胞製剤は投与されると免疫反応を惹起する主たる欠点を有する。ある幹細胞製剤は癌を惹起する可能性さえある。
【0013】
本願発明者らは、この度、液体細胞培地にて、複数の分化細胞型を生じさせる能力のある十分に分化されていない成体幹細胞を培養することで得られた訓化培地(CM)が、意外にも、後記する本願明細書の実験セクションにて示されるインビトロおよびインビボの実験にて明らかにされるように効果的な抗腫瘍活性を示すことを見出した。
【0014】
本願発明の抗腫瘍の治療用途での使用に適する訓化培地 (CM)は、複数の分子および生体分子、複数の蛋白、より具体的には培養の間に幹細胞によって分泌されるサイトカインを含む。
【0015】
かくして、本願発明の第一の態様は、細胞が分泌する複数の蛋白を含み、
複数の分
化細胞型への分化能を有する
成体幹細胞を
液体細胞培地にて培養することで得られる、腫瘍の治療にて用いるための、訓化培地である。
【0016】
好ましい実施態様において、訓化培地は無細胞である。もう一つ別の実施態様において、訓化培地は、そこから訓化培地を得ることができる、成体幹細胞のみからなる細胞フラクションを含む。また、上記した成体幹細胞そのものは腫瘍の治療に用いられる。
【0017】
本願発明のもう一つ別の態様は、細胞が分泌する複数の蛋白を含み、
複数の分
化細胞型への分化能を有する成体幹細胞を
液体細胞培地にて培養することにより得ることができ
る訓化培地を
、腫瘍の治療用医薬を製造するために用いることである。無細胞または細胞フラクション含有の訓化培地のいずれ
も腫瘍の治療に用いるのに適している。しかしながら、無細胞訓化培地が好ましい。
【0018】
本願発明の好ましい実施態様の腫瘍の治療に用いるのに適する無細胞訓化培地は、例えば、
(i)
複数の分
化細胞型への分化能を有する成体幹細胞を液体細胞培地にて所定の時間培養し、および
(ii)細胞フラクションを該液体細胞培地から取り出し、それにより細胞が分泌する複数の蛋白を含む無細胞の訓化培地を得る
ことを含む、方法により得ることができる。
【0019】
腫瘍を治療するのに有用な訓化培地を得るのに適する液体細胞培地は、本願明細書に記載の実験セクションに開示されている。
【0020】
しかしながら、哺乳動物の幹または前駆細胞、好ましくはヒト幹または前駆細胞を培養するのに適する液体細胞培地は、本願発明の細胞培地を得るのに用いることができると理解すべきである。以下に示す別の培地は、
非限定
的な例として挙げられる:Dulbecco's Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(DMEM/F-12)、Roswell Park Memorial Institute medium(RPMI-1640)、Minimum Essential Medium(MEM)Alpha Medium(α-MEM)、Medium 199およびIscove's Modified Dulbecco's Medium(IMDM
)。
【0021】
例えば、培地を産生するのに使用される特定の型の幹細胞に応じて、適当な培地の選択および使用は、十分に当業者の知識および能力の範囲内にある。
【0022】
好ましい実施態様において、細胞フラクションは所定の期間培養され、ついでそれを遠心分離または濾過により液体細胞培地より取り出す。適当な所定の期間は、例えば、6ないし48時間から、好ましくは12ないし24時間から構成される。
非分化条件下での成体幹/前駆動物またはヒト細胞、好ましくは哺乳動物細胞の培養に適する培地は
、液体細胞培地として使用するのに適する。
【0023】
細胞フラクションを取り出した後、それにより得られた無細胞訓化培地は、所望により、さらなる精製工程に付されてもよく、例えば超遠心分離により精製されてもよい。超遠心分離は、通常、約20000ないし300000g、好ましくは約80000ないし200000gで、約1時間、室温より低い温度で、例えば約4℃で実施される。
【0024】
さらなる任意の精製工程は、例えば、超遠心分離により、および/または訓化培地内に含有される可能性のある遊離RNAを分解するために、RNaseで処理することにより実施される、公称分子量(NMW)が約3KDaより小さな物質のフラクションを取り除くことである。
【0025】
胚幹細胞と対照的に、
複数の分
化細胞型に分化する能力を有し、成体組織より単離される幹細胞/前駆細胞は、本願発明の治療用途に有用な訓化培地を産生するのに適している。好ましい実施態様において、成体幹細胞は、肝臓幹細胞、腎臓幹細胞、脂肪幹細胞、間葉細胞幹細胞、血管周囲多能性前駆細胞、歯髄幹細胞、上皮幹細胞、造血幹細胞、剥脱した脱落歯からの幹細胞および臍帯幹細胞からなる群より選択される。成体幹細胞は動物幹細胞またはヒト幹細胞のいずれ
でもよい。ヒト幹細胞は、治療剤がヒト患者に投与されるべきである場合に好ましい。
【0026】
好ましい実施態様において、成体幹細胞は非楕円幹細胞、好ましくはWO2006/126236に開示
の非楕円ヒト肝臓多能性前駆細胞(HLSC)である。
【0027】
しかしながら、腫瘍疾患の治療に効果的な訓化培地はまた、上記した段落に記載される方法などの、他の幹細胞からも得られる。
【0028】
本願明細書の実験セクションに記載の「比較例」は、HLSC−CMおよびMSC−CMは共にHepG2細胞のアポトーシスの増加に有効であるが、HSLC−CMがMSC−CMよりもより効果的である
ことを示す。比較例はまた、両方の訓化培地(HSLC−CMおよびMSC−CM)の両方がTGF−β単独よりも効果的であることを示す。
【0029】
以下の、非楕円肝臓幹細胞、好ましくはWO2006/126236に開示される非楕円ヒト肝臓多能性前駆細胞は、「TLSC−CM」と称されるであろう。HLSC−CMは無細胞であることが好ましい。
【0030】
好ましい実施態様において、HLSCは、WO2006/126236の第7頁の
表Iに要約される特徴を有し(その中で該細胞は「HuHEP」と称される)、そこでは、FACSおよび免疫蛍光分析による特徴付けを説明する。かかる分析の結果を本願明細書にて以下に説明する。
【0031】
【表1】
【0032】
WO2006/126236に開示の非楕円ヒト肝臓多能性前駆細胞より得られるHLSC−CMの組成物
は、国際特許出願PCT/EP2009/057232に
おいて特徴付けられ、開示されている。かかる特徴は出典明示により本願明細書の一部とする。
【0033】
一例として、無細胞HLSC−CMは、WO2006/126236に開示されるHLSCを、当業者に知られているGMP条件下で、またはこれも当業者に公知であるBAL(BioArtificial Liver)システムの下で培養することで得られる。
【0034】
肝臓多能性前駆/幹細胞を増殖し、その無細胞訓化培地(CM)を収集するGMP条件の一例は次のとおりである。
【0035】
肝臓多能性前駆/幹細胞はWO2006/126236に開示される方法により単離され、その中で拡張工程は、前駆幹細胞をウシ胎仔血清(FCS)
(好ましくは約10%の濃度で
)、hEGF(ヒト上皮成長因子)およびbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)の存在下で培養することで行われる。FCS、bFGFおよびhEGFは、好ましくは、GMPグレード、例えばInvitrogenにより製造されるものである。
【0036】
GMP条件の訓化培地を集めるために、FCSを培養基より除去する。というのも、ヒトへの注入に適しない異質蛋白だからである。最後に、細胞を洗浄し、例えば、GMPグレードのヒトアルブミンを補足したアルファ−MEMを含む収集培地にて24時間培養する。アルブミンは約0.05%の濃度であることが好ましい。また、アルファ−MEMは単独で、または2%FCSを補足したアルファ−MEMを用いてもよい。次に、無細胞訓化培地を遠心分離または濾過により集める。
【0037】
本願発明の一の実施態様によれば、腫瘍は充実性腫瘍である。好ましくは、腫瘍は、肝腫瘍、上皮腫瘍、乳房の腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍、胃腫瘍および結腸腫瘍からなる群より選択される。より好ましくは、腫瘍は肝臓癌、カポシ肉腫または乳腺腺癌である。
【0038】
無細胞訓化培地は、それ自体が使用されるか、濃縮した形態で使用されるかのいずれかである。濃縮形態は、例えば、少なくとも約5倍に、好ましくは少なくとも約10倍に、より好ましくは少なくとも約20倍に、その上より好ましくは約25倍に濃縮される。無細胞訓化培地は局所的または全身的のいずれかで投与される。局所および全身投与の両方に適する医薬剤形は注射可能な剤形である。一例として、無細胞CMは、腫瘍が充実性腫瘍である場合、局所的な腫瘍内(i.t.)注射により、転移の場合には静脈内注射により投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本願発明のさらなる目的および利点は、純粋に発明の説明のために設けられている、以下の実験セクションよりさらに明らかとなるであろう。該実験セクションにおいては、次の図面に言及する:
【0040】
【
図1】HepG2細胞を異なる用量の25x濃縮したHLSC−CMと一緒に48時間インキュベートすることで実施されたインビトロ増殖アッセイの結果を示すグラフである。HepG2の増殖はインキュベーションの48時間後にBrdU取り込みアッセイにより評価した。HepG2を、DMEM単独で、または0.5;2;8または16%の25x濃縮したCMを補足したDMEM中で培養した。48時間後、HepG2の増殖をBrdU取り込みアッセイを用いて定量した。該実験を四重重複して行った。図示されているデータは8回の実験の平均値±標準偏差である(P<0.05)。
【
図2】HepG2細胞を異なる用量の25x濃縮したHLSC−CMと一緒に4日間インキュベートすることで実施されたインビトロ増殖アッセイの結果を示すグラフである。HepG2の増殖はインキュベーションの4日後にBrdU取り込みアッセイにより評価した。HepG2を、DMEM単独で、または1;8または16%の25x濃縮したHLSC−CMを補足したDMEM中で4日間培養した。該実験を四重重複して行った。図示されているデータは8回の実験の平均値±標準偏差である(P<0.05)。
【
図3】HepG2、MCF−7およびカポシ細胞(KS)を25x濃縮したHLSC−CMの2種の異なる調製物と一緒にインキュベートすることにより実施されたインビトロ増殖アッセイの結果を示すグラフである。HepG2、MCF−7およびカポシ細胞(KS)の増殖は16%の25x濃縮したHLSC6bから、およびHLSC2から由来のCMと一緒に48時間インキュベートした後にBrdU取り込みアッセイにより評価した。該実験を二重重複して行った。図示されているデータは4回の実験の平均値±標準偏差である(P<0.05)。
【
図4】HepG2細胞を25x濃縮したHLSC−CMと一緒にインキュベートすることにより実施されたインビトロアポトーシスアッセイの結果を示すグラフである。HepG2のアポトーシスは、異なる用量のCM(0.5;2;6および16%の25x濃縮したCM)と一緒に24時間インキュベーションした後のアポトーシス細胞の割合としてTUNELアッセイにより評価した。アポトーシス誘発の陽性対照として、ビクリスチンおよびドキソルビシンを用い;陰性対照において、HepG2をビヒクル単独で処理した。結果を3種の異なる実験の平均値±SDとして表す。
【
図5】HepG2、MCF−7およびKS細胞を25x濃縮したHLSC−CMと一緒にインキュベートすることで実施されたインビトロアポトーシスアッセイの結果を示すグラフである。HepG2、MCF−7およびKS細胞のアポトーシスは16%の25x濃縮した2種の異なる細胞調製物(HLSC−6bおよびHLSC−2)から由来のCMと一緒に72時間インキュベートした後のアポトーシス細胞の割合としてTUNELアッセイにより評価した。アポトーシス誘発の陽性対照として、ビクリスチンを用い;陰性対照において、該細胞をビヒクル単独で処理した。結果を3種の異なる実験の平均値±SDとして表す(P<0.05)。
【
図6】HepG2を移植されたSCIDマウスに腫瘍内(i.t.)投与されたHLSC−CMの抗腫瘍活性を示すグラフである。腫瘍の体積は、毎週、移植片の2本の直交した直径をキャリパーで測定することにより決定された。
【
図7】CM−HLSC(n=6)またはビヒクル(n=6)で腫瘍内処理した後、マウスを殺す際に、回収されたHepG2腫瘍の腫瘍体積を測定することで得られたデータを示すグラフである。腫瘍の体積は、毎週、移植片の2本の直交した直径をキャリパーで測定することにより決定された。
【
図8】CM−HLSC(n=6)またはビヒクル(n=6)で腫瘍内処理した後、マウスを殺す際に、回収されたHepG2腫瘍の腫瘍重量を測定することで得られたデータを示すグラフである。
【
図9】HLSC−CM処理による腫瘍増殖のインビボ阻害および腫瘍内アポトーシスの誘発を示す顕微鏡写真である(A)。CM処理したマウスおよび処理していないマウスから由来の、4週間後に回収されたHepG2腫瘍の代表的顕微鏡写真。B
)CM−処理した、または処理していない
HepG2腫瘍のヘマトキシリン−エオジン染色
およびPCNA染色(C)。D)
回収されたビヒクル単独で処理し
たHepG2腫瘍、またはHLSCからのCMで処理したHepG2腫瘍
のアポトーシスを示す代表的な顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0042】
細胞培養
ヒト肝臓癌細胞株、HepG2を、10%ウシ胎仔血清、100μg/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したDMEMにて培養し、インキュベーター中、5%CO
2の湿気のある環境下、37℃で維持した。
【0043】
ヒト肝臓幹細胞(HLSC)を、10%ウシ胎仔血清、100μg/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したα−MEM/EBM(3:1)にて培養した。EBMをhEGF(ヒト上皮成長因子)、ヒドロコルチゾン、GA(ゲンタマイシン)、BBE(脳ウシエキス)で復元した。
【0044】
MCF−7乳腺癌細胞株をアメリカンタイプカルチャコレクション(VA、マナッサス)より入手し、10%のFCS、100μg/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したDMEMにて培養し、インキュベーター中、5%CO
2の湿気のある環境下、37℃で維持した。
【0045】
カポシ肉腫細胞(KS細胞)の一次培養を、免疫抑制療法の下で腎臓同種移植片を担持する患者の皮膚病変より入手し、10%のFCS、100μg/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したRPMI1640培地にて培養した。
【0046】
HLSC細胞からの訓化培地(CM)の精製
HLSCからの無細胞訓化培地(CM)を、培養した24時間後に遠心分離に付すことにより細胞培地より集めることで調製した。実験を2x10
6の細胞集団で行った。培地を超遠心分離に付し、3kDaの分子量をカットオフする限外濾過装置(Amicon Ultra-PL 3)を用いて、2700gで75分間遠心分離に付すことで約25倍に濃縮した。合計250μlの容量の濃縮された訓化培地を得た。インビトロ実験に使用される濃縮されたCMの蛋白濃度はCM=4.8mg/mlであった。選択された実験において、無細胞CMを1U/mlのRNaseで37℃で1時間処理した。該反応は10U/mlのRNase阻害剤を添加することで停止された。
【0047】
Raybio(登録商標)Biotin Label-Based Antibody ArrayによるCM組成分析
HLSC−CMから由来の507ヒト標的蛋白の発現レベルが同時に検出された。蛋白アレイプロトコルに記載されるように、0.2%のFCSを補足したαMEMの存在下で1x10
6細胞を48時間培養した後でCMを集めた。分子パネルは、細胞培養上澄中に、サイトカイン、ケモカイン、アジポカイン、成長因子、血管新生因子、プロテアーゼ、可溶性受容体、可溶性接着分子および他の蛋白を包含した。
【0048】
HLSC−CMを調製するのに、細胞を100mmの組織培養皿に1x10
6細胞/皿の密度で置いた。ついで、細胞を完全培地で24−48時間培養した。その後で、培地を低血清(0.2%FCS)と置き換え、ついで該細胞を再びもう一度48時間培養した。CMを集め、1000gで遠心分離に付した。ビオチン標識化工程の前にCMを透析した。サンプリング工程を介して、該サンプル中の蛋白の第一アミンをビオチニル化し、続いて透析し、遊離ビオチンを取り除いた。ここから、新たにビオチニル化されたサンプルをアレイ膜上に加え、室温でインキュベートした。HRP−ストレプトアビジンと一緒にインキュベーションした後、化学発光によりシグナルを可視化した。このアレイにて、ビオチン標識および抗体アレイを含む全行程をモニター観察するのに内部対照を用いた。結果をRaybio Biotin Label-Based Antibody Arrayの分析用に具体的に設計されたプログラムであるRayBio Analysis Toolを用いて解析した。このアッセイのさらなる詳細は、RayBio(登録商標)Biotin Label-based Human Antibody Array I User Manualに見られる。
【0049】
RayBio Biotin Label-based Antibody Arrayアッセイの結果をすべて次の表に要約する。
【0050】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0051】
HLSC−HepG2共培養実験
HLSCが癌細胞の悪性表現型を反転させ得るかどうかを調査するために、肝細胞株HepG2を、トランスウェルチャンバー中、HLSCと一緒に共培養した。実験の最後に、HepG2の増殖を評価した。下部のコンパートメントにHepG2(2.5x10
4細胞)を播種した。上部のコンパートメントにHLSC(1x10
5)を播種した。共培養を4日間維持した。4日後、培地を取り出し、HepG2を10%ホルマリンで固定し、H&Eで染色した。
【0052】
細胞増殖
種々の濃度のCMを用い、FCSを与えないDMEM(Sigma)中、96−ウェルのプレートにてHepG2を8000細胞/ウェルで播種した。HLSCから由来のCMが異なる腫瘍からの細胞株においてもその抗腫瘍活性を発揮するかどうかを調査するために、MCF−7乳腺腺癌およびカポジ肉腫を用い、その抗腫瘍作用をHepG2で観察される作用と比較した。培養して48時間経過した後、5−ブロモ−2’−デオキシ−ウリジン(BrdU)の細胞DNAへの取り込みとして、DNA合成が検出された。ついで、細胞を0.5Mのエタノール/HClで固定し、ヌクレアーゼと一緒にインキュベートし、DNAを消化した。DNAに取り込まれたBrdUを、
抗BrdUペルオキシダーゼ
結合モノクローナル抗体(mAb)を用いて検出し、可溶性発色基質で可視化した。光学密度をELISA読み取り装置を用いて405nmで測定した。
【0053】
アポトーシスアッセイ
HepG2、MCF−7およびKS細胞を、10%FCSを補足した低グルコースDMEM(Sigma)中、ドキソルビシン(100ng/ml、Sigma)またはビンクリスチン(50ng/ml、Sigma)あるいは異なる濃度のCM(0.5;1;2;8;16%の25x濃縮したCM)の存在下にて、
96−ウェルプレートに、8000細胞/ウェルで播種した。アポトーシスをTUNELアッセイ(ApopTag Oncor、Gaithersburg、MD、USA)で評価した。
【0054】
インビボ実験設計
雄の4ないし5週齢のSCIDマウスをCharles River Laboratoriesより入手した。マウスを全て透明な施設で保護し、1週間慣れるように維持した。0日目に、マトリゲル基底膜マトリックスを1:1の割合で含む、無血清DMEMに懸濁させた3x10
6のHepG2腫瘍細胞を投与した。HepG2を0.2mlの総容量にてSCIDマウスの左右の鼠径部に注射した。マウスを無作為に2つの処理群:試験群、20μlの25x濃縮したCMを腫瘍内(i.t.)注射(n=3)により投与した群、および対照群、20μlのPBS(n=3)を注射した群に分けた。腫瘍は10日目でそれ以後は触診可能となった。腫瘍を移植した10日後に、3回のi.t.注射でCM処理を開始した。3回合計で20μlのCMを成長した各腫瘍に投与した。腫瘍が約15mm
3の体積に達した場合に処理を開始した。動物を活性および生理的状態について毎日モニター観察し、体重の決定および腫瘍の体積の測定を各処理で行った。
【0055】
腫瘍をキャリパーで測定した。腫瘍の体積は移植された腫瘍の2本の直交した直径を測定することにより決定され、式:1/2axb2(式中、aは長径であり、bは短径である)を用いて計算した。
【0056】
形態学的実験
顕微鏡試験用に、腫瘍を10%緩衝剤処理の中性ホルマリンに固定し、慣用的に処理し、パラフィンに埋め込み、5μmで切断し、H&Eで染色した。増殖の検出用の免疫組織化学を抗−PCNAモノクローナル抗体を用いて行った。断片を遮断し、抗マウスHRP第二抗体(1:300希釈)で標識した。第一抗体の削除または非免疫マウスIgGとの置換を対照として用いた。アポトーシスをTUNELによりパラフィンに埋め込んだ腫瘍断片にて評価した。10個の非連続的断片をアポトーシスの陽性腫瘍細胞について630Xの倍率で計数した。ヘキスト33258色素を加えて核を染色した。
【0057】
統計分析
種々の実験操作のデータをすべて平均+SDで表す。統計分析は、適当ならば、Newmann-Keulsの複数の比較試験を用いるANOVAにより行われた。
【0058】
結果
腫瘍細胞に対するHLSC−CMのインビトロ生物学的作用
HLSCより由来のCMはHepG2細胞のインビトロ増殖を阻害する
【0059】
ヒトHLSCより由来のCMの抗腫瘍活性を、HepG2細胞株の増殖を阻害するその能力を測定することでインビトロにて評価した。
【0060】
HepG2を異なる用量のCMと一緒に48時間(
図1)および4日間(
図2)インキュベートすることで、ビヒクル単独でインキュベートした対照細胞と比べて増殖が顕著に阻害される。
【0061】
HLSCから由来のCMはMCF−7およびKS細胞のインビトロ増殖を阻害する
組織内在の幹細胞の抗腫瘍作用が同じ組織を起源とする腫瘍に対して特異的であるかどうかを調査するのに、HLSC−CMの関連しない器官の腫瘍からの癌細胞、例えば乳腺腺癌およびカポシ肉腫に対する作用を評価した。MCF−7乳腺腺癌とカポシ肉腫の細胞をHLSCの2種の調製物(HLSC−6BおよびHLSC−2)から由来の16%のCM(
図3)と一緒にインキュベートすることで、ビヒクル単独でインキュベートした対照細胞と比べて増殖が顕著に阻害される。
【0062】
HLSCより由来のCMはHepG2細胞のインビトロアポトーシスを誘発した
HepG2をHLSC−CMと一緒に24時間インキュベートすることで、ビヒクル単独でインキュベートした対照と比べて、およびドキソルビシンまたはビンクリスチン刺激(アポトーシス分子;陽性対照と考えられる)と比べて、アポトーシスが顕著に促進された(
図4)。
【0063】
HLSCより由来のCMはMCF−7およびKS細胞のインビトロアポトーシスを促進した
MCF−7乳腺腺癌およびカポシ肉腫の細胞をHLSC−6Bから由来の16%のCM(
図5)と一緒にインキュベートすることで、ビヒクル単独でインキュベートした対照細胞と比べて、化学療法剤であるビンクリスチンの作用と同様の作用で、アポトーシスが顕著に誘発された。
【0064】
HEPG2腫瘍増殖に対するCMのインビボ生物学的作用
結果
SCIDマウスでの肝細胞癌異種移植片実験にて、腫瘍成長および増殖
がHLSCより由来のCMにより阻害された
【0065】
HLSCより由来のCMのインビボにおける腫瘍成長に対する作用を測定するために、SCIDマウスにヒト肝細胞癌細胞株、HepG2を皮下に埋め込んだ。HepG2を注入した10日後で、腫瘍の体積が約15mm
3である場合に、CMを最大20μlの容量にて腫瘍内注射することでマウスを処理した。対照マウスでは、腫瘍に20μlのPBSを注射した。HepG2を注入した10日後に、すべての腫瘍を回収し、分析した。この異種移植片実験にて、CMの腫瘍内注射(
図6;
図9、パネルA)は腫瘍成長に対する阻害作用を示した。加えて、組織学的分析はCMで処理した腫瘍にて壊死の領域を示し(
図9、パネルB)、PCNA染色法を用いて抗増殖作用が観察された(
図9、パネルC)。CMの腫瘍内アポトーシスにおける作用を測定するのに、CMで処理した腫瘍のパラフィン切片をTUNELで分析した。CM処理はビヒクル単独で処理した腫瘍(
図9、パネルD)と比べて、アポトーシスを誘発した(
図9、パネルB)。殺すその時に、腫瘍の体積(
図7)および腫瘍の重量(
図8)を測定した。
【0066】
Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路は胚形成および発癌と関連することが知られている。臨床実験はWnt/β−カテニン経路の異常な活性化が肝細胞癌発生にて頻繁に生じていることを報告した。Wnt−1リガンドは、HCCを含む種々のヒト癌にて異常に発現されると報告されている。
【0067】
いずれの理論に拘束されるものでもないが、本願発明者らは、上記した該発明者らによって試験された幹細胞由来の訓化培地の抗腫瘍作用の、場合によっては、根底にある作用機序の一つが、Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路を阻害することであると、仮定する。
【0068】
比較例
材料および方法
HepG2を10%ウシ胎仔血清、100μg/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したDMEMにて培養し、インキュベーター中、5%CO
2の湿気のある環境下、37℃で維持した。
【0069】
HLSCを10%ウシ胎仔血清を補足したα−MEM/EBM(3:1)にて培養した。HLSC CMを集める前の日に、EBM培地に含まれる成長因子を取り除くために、HLSCを10%ウシ胎仔血清を補足したα−MEMだけと一緒にインキュベートした。この培地の変換は実施される各実験の前に行われた。
【0070】
アポトーシスアッセイ
HepG2を、10%FCSを含む低グルコースDMEM(Sigma)中、16%の25x濃縮したHLSCまたはMSCより得られたCMの存在下、あるいは3ng/mlのTGF−βの存在下、96−ウェルプレートに8000細胞/ウェルで播種した。24時間後、アポトーシスをTUNELアッセイで評価した。
【0071】
統計分析はNewmann-Keulsの複数の比較試験によるANOVAにより行われた。
【0072】
結果
HepG2のHLSC−CMとの24時間にわたるインキュベーションは、ビヒクル単独でインキュベートされた対照と比べてアポトーシスを顕著に促進した。MSC−CMもまた、
TGF−βと同様に、HLSC−CMに関するほど顕著ではないが、HepG
2のアポトーシスを促進した。
【0074】
図10はHepG2を25x倍濃縮したHLSC−CM(16%)またはMSC−CM(16%)と一緒に、あるいはTGF−β(3ng/ml)と一緒にインキュベートすることで実施されたインビトロにおけるアポトーシスアッセイの24時間後の結果を示すグラフである。HepG2のアポトーシスをアポトーシス細胞の割合として評価する。結果は二重重複して実施された実験の平均±SDとして表される。*:HLSC−CM(16%)またはMSC−CM(16%)で、またはTGF−β(3ng/ml)で処理されたHepG2 vs 処理されなかったHepG2(p<0.05);§:HLSC−CM(16%)で処理されたHepG2 vs MSC−CM(16%)で、またはTGF−β(3ng/ml)で処理されたHepG2(p<0.005)