(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部に保持された被処理物あるいは被処理物を有する基体に液体を供給散布する場合に、前記圧送手段によって前記供給管内の液体に加えられる圧力を前記圧力可変手段によって前記第1の圧力に設定した後に、前記供給管の吐出部から液体を吐出させる第1の動作と、前記圧送手段によって前記供給管内の液体に加えられる圧力を前記圧力可変手段によって前記第1の圧力から前記第2の圧力に設定変更した後に、前記供給管の吐出部から液体を吐出させる第2の動作と行うことにより、当該被処理物あるいは被処理物を有する基体に液体を供給散布する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【背景技術】
【0002】
被処理物に液体を供給散布して処理する液体供給装置は、これまでに数多く知られている。たとえば、リソグラフィの分野で用いられる液体供給装置の一例として、レジスト現像装置が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。レジスト現像装置は、露光または描画(以下、単に「露光」ともいう)を経たレジスト層に現像液を供給散布することで、レジスト層の不要部分を溶解除去して現像(以下、「レジスト現像」ともいう)を行い、レジストパターンを形成する装置である。
【0003】
ところで近年、半導体デバイスの高集積化やパターンドメディアの開発などに伴って、レジストパターンの一層の高解像化が強く望まれている。そして、上記のレジストパターンの形状・品質の劣化を抑え、レジストパターンの解像度の向上を図る技術として、常温よりも低い温度の現像液を用いてレジスト現像する方法(以下、「低温現像法」ともいう)が知られている(たとえば、非特許文献1を参照)。
【0004】
レジスト層を露光した後に形成される溶解部と非溶解部の現像液に対する溶解性(速度)の差が大きいほど、コントラストが高いレジストパターンが得られ、解像性は向上する。一方で、レジスト現像によって、本来全く溶解されてはならないレジストパターン部(非溶解部)も、僅かに溶解される。その結果、レジスト現像後に得られるパターンの断面形状においては、レジストパターンの高さが減少し、かつ、肩部の鉛直形状が丸まり、また、側壁の平滑性が損なわれ、その形状・品質は劣化し、さらには、解像度が低下を招いてしまう。
【0005】
そこで、常温よりも低い温度の現像液を用いてレジスト現像を行うと、現像液に対するレジスト層の溶解性が低下して、特にレジストパターン部(非溶解部)の溶解が抑制される。その結果、レジストパターンの形状・品質は向上して、また、解像度の向上が図られる。
また、現像処理後に必要に応じて実施されるリンス液によるリンス処理についても同様に、常温よりも低い温度に調整制御されたリンス液を用いてリンス処理を行うと、レジスト層に対するリンス液の溶解性が低下して、特にレジストパターン部(現像液による非溶解部)の溶解あるいは膨潤が抑制される。その結果、リンス処理によるレジストパターンの変質等が抑えられ、現像後のレジストパターンの形状・品質が維持されて、また、解像度の維持が図られる。
【0006】
ちなみに、本明細書で記述する「常温」とは、たとえば半導体製造用の無塵室(クリーンルーム)の一般的な設定温度である22.5℃前後をいう。前記無塵室の温度制御の精度は、一般に、設定値±0.1℃から±1℃程度である。したがって、低温現像法で用いる現像液の温度は、たとえば、21.5℃未満となる。また、より良好なレジストパターン形状・品質と高い解像度を得るためには、現像液が凍らない温度範囲(凝固点より高い温度)であって、かつ、液温度の調整制御が実用的に可能な温度を用いることができる。一例を挙げると、非特許文献1に記載の、−10℃、−60℃、等が選定され、現像液、及びリンス液、は当該温度に設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近では、たとえばナノインプリントの分野において、ナノレベルの微細な凹凸パターンの形成が要求されている。こうした微細な凹凸パターンを高精度に形成するには、低温現像法のように、要求されるレジストパターンの解像性及び品質によって、現像液の温度を所望所定の温度(常温より低温)に設定して用いる必要がある。
【0010】
しかしながら、上述のように現像液の温度を常温より低くすると、この現像液に要求される温度と、レジスト現像装置の設置場所等の温度(以下、「環境温度」という)との差が大きくなるため、以下のような不具合が発生するおそれがある。
一般に、レジスト現像装置においては、現像液を貯留部に貯留して一定(所望)の温度に制御し、その貯留部から現像液供給用の配管(以下、「供給管」という)を通してレジスト層(即ち、被処理基板等)に現像液を供給散布する仕組みになっている。そうした場合、貯留部に貯留された現像液を一定の温度に制御保持しても、そこから供給管を通して基体に供給される現像液の温度は、レジスト層に供給散布される時点では、環境温度の影響を受けて所望所定の温度から逸脱する、即ち、環境温度に近づく。その結果、現像液の温度変動によって現像処理の安定性や均一性を損なうおそれがある。具体的には、同一(一つ)の被処理物内では現像のムラ(面内不均一性)を招き、異なる非処理物間では現像の再現精度にバラツキを招くおそれがある。
【0011】
本発明の主たる目的は、液体を前記環境温度とは異なる温度に制御保持して被処理物あるいは被処理物を有する基体に供給散布する場合において、実際に被処理物あるいは被処理物を有する基体に供給される液体の温度変動を抑えて、液体の供給散布を伴う被処理物あるいは被処理物を有する基体の処理を安定的にかつ高い再現精度で行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、
恒温状態に制御された液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された液体を供給散布すべき被処理物あるいは被処理物を有する基体を保持する保持部と、
前記貯留部に貯留された液体を流すための流路を形成するとともに、この流路を流れる液体を吐出する吐出部を有し、この吐出部から液体を吐出することにより、当該液体を被処理物あるいは被処理物を有する基体に供給散布する供給管と、
前記供給管が形成する流路を流すために前記液体を圧送する圧送手段と、
前記圧送手段によって前記供給管内の液体に加えられる圧力を、前記吐出部から吐出させた液体が前記被処理物あるいは被処理物を有する基体以外の場所に到達する条件で設定される第1の圧力と、前記吐出部から吐出させた液体が前記被処理物あるいは被処理物を有する基体に到達する条件で設定される第2の圧力とに切り替え可能な圧力可変手段と
を備えることを特徴とする液体供給装置である。
【0013】
本発明の第2の態様は、
前記保持部に保持された被処理物あるいは被処理物を有する基体に液体を供給散布する場合に、前記圧送手段によって前記供給管内の液体に加えられる圧力を前記圧力可変手段によって前記第1の圧力に設定した後に、前記供給管の吐出部から液体を吐出させる第1の動作と、前記圧送手段によって前記供給管内の液体に加えられる圧力を前記圧力可変手段によって前記第1の圧力から前記第2の圧力に設定変更した後に、前記供給管の吐出部から液体を吐出させる第2の動作と行うことにより、当該被処理物あるいは被処理物を有する基体に液体を供給散布する
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の液体供給装置である。
【0014】
本発明の第3の態様は、
前記第1の動作においては、当該第1の動作前に前記供給管に残留している液体の全量以上を前記供給管の吐出部から吐出させる
ことを特徴とする上記第2の態様に記載の液体供給装置である。
【0015】
本発明の第4の態様は、
前記貯留部は、それぞれに独立して液体を貯留する第1貯留部と第2貯留部とを備え、
前記供給管は、前記第1貯留部から引き出された第1供給管と、前記第2貯留部から引き出された第2供給管と、前記吐出部につながる第3供給管とを備え、
前記圧力可変手段は、前記第1貯留部に貯留された液体を前記第1の圧力で加圧する第1加圧手段と、前記第2貯留部に貯留された液体を前記第2の圧力で加圧する第2加圧手段と、前記第1供給管および前記第2供給管を選択的に前記第3供給管に接続するように前記流路を切り替える弁とを備える
ことを特徴とする上記第1、第2または第3の態様に記載の液体供給装置である。
【0016】
本発明の第5の態様は、
前記供給管の吐出部または一部に温度検出部が設けられている
ことを特徴とする上記第1〜第4の態様のいずれかに記載の液体供給装置である。
【0017】
本発明の第6の態様は、
所望所定のパターンを露光または描画されたレジスト層を主表面に有する被処理基板に現像液を供給して現像処理するレジスト現像装置であって、
恒温状態に制御された現像液を貯留する貯留部と、
前記被処理基板を保持する保持部と、
前記貯留部に貯留された現像液を流すための流路を形成するとともに、この流路を流れる現像液を吐出する吐出部を有し、この吐出部から現像液を吐出することにより、当該現像液を被処理基板に供給散布する供給管と、
前記供給管が形成する流路を流すために前記現像液を圧送する圧送手段と、
前記圧送手段によって前記供給管内の現像液に加えられる圧力を、前記吐出部から吐出させた現像液が前記被処理基板以外の場所に到達する条件で設定される第1の圧力と、前記吐出部から吐出させた現像液が前記被処理基板に到達する条件で設定される第2の圧力とに切り替え可能な圧力可変手段と
を備えることを特徴とするレジスト現像装置である。
【0018】
本発明の第7の態様は、
前記現像液の供給散布対象となる被処理基板が、ナノインプリント法用途のモールド作製用基板である
ことを特徴とする上記第6の態様に記載のレジスト現像装置である。
【0019】
本発明の第8の態様は、
前記貯留部に貯留された現像液を環境温度とは異なる温度に制御する液温制御手段を備える
ことを特徴とする上記第6または第7の態様に記載のレジスト現像装置である。
【0020】
本発明の第9の態様は、
前記貯留部に貯留された現像液を0℃以下の低温に制御する液温制御手段を備える
ことを特徴とする上記第6、第7または第8の態様に記載のレジスト現像装置である。
【0021】
本発明の第10の態様は、
リンス液を貯留するリンス液貯留部と、
前記リンス液貯留部に貯留されたリンス液を流すための流路を形成するとともに、この流路を流れるリンス液を吐出する吐出部を有し、この吐出部からリンス液を吐出することにより、当該リンス液を被処理基板に供給散布する供給管と、をそれぞれ少なくとも一つ備える
ことを特徴とする上記第6〜第9のいずれか一つに記載のレジスト現像装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、液体を前記環境温度とは異なる温度に制御保持して被処理物あるいは被処理物を有する基体に供給散布する場合において、実際に被処理物あるいは被処理物を有する基体に供給散布される液体の温度変動を抑えて、液体の供給散布を伴う被処理物あるいは被処理物を有する基体の処理を安定的にかつ高い再現精度で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る液体供給装置を、たとえばフォトリソグラフィの分野で用いられるレジスト現像装置に適用した場合の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
ただし、本発明に係る液体供給装置は、ここで挙げるレジスト現像装置に限らず、他の分野において、被処理物あるいは被処理物を有する基体を対象に液体を供給散布する液体供給装置全般に広く適用することが可能である。たとえば、被処理物あるいは被処理物を有する基体の装飾や保護を目的として、液状の塗料を噴射し供給する塗装装置にも適用可能である。また、液体を供給散布すべき対象となる被処理物あるいは被処理物を有する基体については、特に構造的に限定されるものではなくさまざまな構造の物体が被処理物あるいは被処理物を有する基体となりうる。たとえば、液体供給装置がレジスト現像装置である場合を想定すると、「露光あるいは描画済みのレジスト層を主表面に有する基板」が「基体」に該当する。
【0025】
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.液体供給装置の一例としてのレジスト現像装置の構成
2.レジスト現像装置の動作
3.実施の形態の効果
4.変形例等
【0026】
<1.レジスト現像装置の構成>
図1は液体供給装置の一例となるレジスト現像装置の構成を示す概略図である。図示したレジスト現像装置1は、大きくは、現像液供給部2と現像処理部3とを備えた構成となっている。現像液供給部2は、現像処理部3での現像処理に必要となる現像液を供給する部分である。現像液供給部2は、少なくとも、現像液を貯留する貯留部4と、現像液を供給(輸送)する供給管5と、を備える。現像処理部3は、露光あるいは描画済みのレジスト層を主表面に有する被処理基板6に現像処理を行う部分である。現像処理部3は、少なくとも、現像処理のための空間を有する処理室7と、この処理室7で前記被処理基板6を保持する保持部8と、この保持部8を回転駆動する回転駆動部9と、を備える。以下、現像液供給部2と現像処理部3の構成について、さらに詳しく説明する。
【0027】
(現像液供給部の構成)
貯留部4は、詳しくは図示しないが、たとえば、上部を開口した槽本体と、この槽本体の上部開口を略閉塞する蓋体とを備え、この蓋体によって槽本体の内部を熱的に略密閉し得る構造になっている。つまり、貯留部4は、略密閉型の槽になっている。貯留部4には、適量の現像液11が収容(貯留)されている。現像液11は、想定している設定温度の範囲で液体であるものが用いられる。貯留部4内において、現像液11の液面よりも上方の空間は、上述した蓋体によって熱的に略密閉された空間(以下、「略密閉空間」と記す)12になっている。
【0028】
貯留部4に貯留された現像液11は、図示しない液温制御手段によって恒温状態に制御される。液温制御手段の具体的な形態としては、図示はしないが、たとえば、貯留部4の槽内に、現像液11に接するように冷媒が流れる冷却管と加熱用のヒーターと攪拌機を配備し、現像液11の温度を予め決められた温度(以下、「設定温度」)に調整維持する、といった形態が考えられる。いずれの形態を採用するにしても、貯留部4内の現像液11の温度は、所望の設定温度(たとえば、−10℃)を中心値とした許容範囲内(たとえば、±0.1℃以内)におさまるように制御される。
【0029】
供給管5は、貯留部4に貯留された現像液11を被処理基板6に向けて供給するものである。被処理基板6は、液体(本形態では現像液)を供給散布すべき対象として、現像処理部3の処理室7内の保持部8に静置される。現像処理の対象となる被処理基板6は、露光または描画済みのレジスト層を有する基板となる。また、被処理基板6の一例として、ナノインプリント法用途のモールド作製用基板を挙げることができる。ナノインプリント法用途のモールド作製用基板(以下、単に「モールド基板」ともいう)は、ナノインプリント法によってパターンの転写を行う場合に用いられるモールド、または、ナノインプリント法によってパターンの転写を行う場合に用いられる複製モールドの元型に相当するマスターモールドの基材となる基板である。
【0030】
供給管5は、たとえば、断面円の細長い中空の管を用いて構成されている。供給管5の一端部は取込部13となっており、同他端部は吐出部14となっている。供給管5の取込部13は、現像液11を管内に取り込むために開口している。供給管5の吐出部14は、被処理基板6に向けて現像液11を吐出するために開口している。吐出部14は、単なる一つの開口になっていてもよいし、複数の小さな開口が設けられたシャワーヘッドのような構造になっていてもよい。また、吐出部14は、現像液11を霧状に噴出するスプレーを生成する構成になっていてもよい。
【0031】
また、供給管5の一部に温度検出器を設ける構成を採用してもよい。温度検出器の一例として熱電対が挙げられる。供給管5の一部としては吐出部に設けることが好ましい。
【0032】
供給管5の取込部13は、現像液供給部2の貯留部4内に現像液11を取り込めるように配置されている。また、供給管5の吐出部14は、現像処理部3の処理室11内に配置されている。そして、供給管5は、取込部13を最上流部とし、吐出部14を最下流部として、それらの間に現像液11の流路を形成するように配管されている。具体的には、供給管5は、略密閉構造の貯留部4の内部から外部へと現像液11を導出するように配管されている。さらに、貯留部4の外部における供給管5の導出部分は、現像処理部3の外壁部分を貫通して処理室7内に進出し、かつ、処理室7内で保持部8に臨む位置まで配管されている。保持部8に臨む位置とは、供給管5の吐出部14から吐出させた現像液11を、保持部8に保持された被処理基板6に供給散布し得る位置をいう。図例においては、供給管5の最下流に位置する吐出部14が、保持部8に保持される被処理基板6の直上から外れた位置であって、かつ、保持部8に支持される被処理基板6の斜め上方に位置するように配置されている。このように配置する理由は、供給管5の吐出部14から垂れ落ちた現像液11の液滴が被処理基板6の表面(上面)に付着することを避けるためである。また、もう一つの理由として、後述する第一の圧力で現像液11を吐出した場合に、被処理基板6に現像液11が供給されることを避けるためでもある。
【0033】
また、供給管5の配管途中には、開閉弁15とポンプ16が設けられている。ポンプ16は、貯留部4の外部に配置されている。開閉弁15とポンプ16は、いずれも供給管5における現像液11の流れを制御するための機能を構成する。
【0034】
すなわち、開閉弁15は、供給管5の管路を開状態とすることにより、現像液11が吐出部14から吐出される状態とする。また、供給管5の管路を閉状態とすることにより、現像液11が吐出部14から吐出されるのを阻止する。開閉弁15は、現像液11の供給を開始または停止する機能を果たす。
【0035】
ポンプ16は、供給管5を通して現像液11を供給するにあたって、現像液11の吸引および移送のための圧力を現像液11に付与する。すなわち、ポンプ16は、貯留部4に貯留された現像液11を供給管5内に吸引するとともに、吸引した現像液11を供給管5を通じて吐出部14に移送する駆動源となる。ポンプ16の駆動を開始または継続した状態で、かつ、開閉弁15が開状態にあるとき、供給管5の内部に現像液11の流れが形成されることになる。開閉弁15の開閉状態やポンプ16の駆動(オン、オフ)状態は、たとえば、図示しないレジスト現像装置の主制御部により制御可能となっている。
【0036】
貯留部4の外部に導出された供給管5は保温ジャケット17によって覆われている。保温ジャケット17は、温度調整部の一例として、供給管5の一部に設けられている。保温ジャケット17は、供給管5とその周囲の外気(大気)との間に介在して温度調整機能をなすものであり、さらに好ましくは、供給管5の周囲に熱媒体を流してこれを循環させることにより、供給管5内に滞留する現像液11を、あるいは、供給配管5内を移動する現像液11を、貯留部4内と同じ温度(設定温度)に保つ機能(保温機能)を有するものである。保温ジャケット17は、たとえば、供給管5を中心とした多重管構造(二重管構造を含む)になっている。
【0037】
一例を挙げると、保温ジャケット17は、
図2に示すように、供給管5を内包する三重管構造になっている。供給管5は、最も内側に位置する管となっており、その外側に供給管5よりも大径の第2の管18が配置され、さらにその外側(つまり、最も外側)に第2の管18よりも大径の第3の管19が配置されている。この三重管構造の保温ジャケット17において、供給管5の外周面と第2の管18の内周面との間には、そこに熱媒体の流路18aを形成すべく、たとえば冷却液が循環するようになっている。また、第2の管18の外周面と第3の管19の内周面との間には、断熱層19aを形成すべく、たとえば空気を充填する、あるいは好ましくは、真空密閉構造となっている。
【0038】
保温ジャケット17は、供給管5の長さ方向において、貯留部4から現像処理部3の処理室7に至る配管部分と、処理室7内で保持部8に臨む吐出部14に至る配管部分とに連続するかたちで、供給管5を覆う状態に設けられている。また、保温ジャケット17は、上記の貯留部4から現像処理部3の処理室7に至る配管部分で、開閉弁15の取付部位とポンプ16の取付部位を除いて、供給管5を覆う状態に設けられている。また、処理室7の内部では、開閉弁15の取付部位を終端位置として保温ジャケット17が設けられている。
【0039】
ところで、ポンプ16には、圧力調整装置20が接続されている。圧力調整装置20は、ポンプ16のポンプ圧を調整する機能を有するものである。
【0040】
さらに詳述すると、ポンプ16は、供給管5を通して被処理基板6に現像液11を供給散布する場合に、現像液11を圧送する圧送手段の一例として設けられている。ここで、圧力調整装置20は、ポンプ16のポンプ圧を調整することにより、ポンプ16によって供給管5内の現像液11に加えられる圧力を、予め設定された第1の圧力と第2の圧力とに切り替え可能な圧力可変手段の一例として設けられている。
【0041】
ここで、「第1の圧力」と「第2の圧力」について記述する。
第1の圧力は、供給管5の吐出部14から吐出させた現像液11が被処理基板6以外の場所に到達する条件で設定される圧力である。これに対して、第2の圧力は、吐出部14から吐出させた現像液11が被処理基板6に到達する条件で設定される圧力である。
【0042】
本実施の形態においては、保持部8に保持される被処理基板6と平行な面内において、吐出部14から吐出させた現像液11の飛距離変えられるよう、第1の圧力と第2の圧力とに十分かつ適度な差をもたせるようにしている。具体的には、第1の圧力については、これを相対的に低く設定することにより、意図的に現像液11の飛距離を短くし、被処理基板6に現像液11が到達しないようにしている。また、第2の圧力については、これを相対的に高く設定することにより、意図的に現像液11の飛距離を長くし、被処理基板6に現像液11が到達するようにしている。
【0043】
(現像処理部の構成)
現像処理部3は、上述したように処理室7、保持部8および回転駆動部9を備えるものである。このうち、保持部8は、被処理基板6を固定状態に支持するテーブル21と、このテーブル21に連結されたスピンドル軸22から構成されている。
【0044】
テーブル21は、被処理基板6を下面側から水平に支持するものである。テーブル21による被処理基板6の支持構造は、たとえば、ピン等を用いた突き当て方式などでよい。
【0045】
スピンドル軸22は、回転駆動部9の駆動力をもってテーブル21を回転駆動される軸である。スピンドル軸22は、箱状の壁で区画された処理室7の底壁を貫通する状態で配置されている。また、処理室7の底壁におけるスピンドル軸22の貫通部分には、シール部材23が設けられている。シール部材23は、スピンドル軸22の回転を許容しつつ、スピンドル軸22の貫通部分から処理室7外への液体(現像液11を含む)の漏出を防止するものである。回転駆動部9は、処理室7とは壁で仕切られた下部室24に配置されている。回転駆動部9は、図示はしないが、たとえば、回転の駆動源となるモータと、このモータの駆動力をスピンドル軸22に伝達する駆動力伝達機構(歯車列等)とを用いて構成されている。
【0046】
なお、
図1には示していないが、レジスト現像装置1は、付加的な機能部として、リンス液供給部を備えている。リンス液供給部は、現像処理を終えた被処理基板6にリンス液を供給してリンス処理するための機能部である。
【0047】
ここで、現像液11の液温度を前記環境温度と異なる温度に設定するのと同様な目的で、リンス液の温度を前記環境温度と異なる温度に設定制御して用いてもよい。即ち、リンス液の温度を現像液11の設定温度と同じくしても、あるいは、現像液11の設定温度と異なってもよい。この場合、リンス液供給部は、前記現像液供給部2と全く同様な構成を用いてよい。
【0048】
さらにまた、レジスト現像装置1は、付加的な機能部として、第2のリンス液供給部を備えてよい。第2のリンス液供給部は、前記リンス処理を終えた被処理基板6に第2のリンス液を供給してリンス処理するための機能部である。第2のリンス液供給部は、前記現像液供給部2と全く同様な構成を用いて良い。ここで、第2のリンス液の温度は、前記環境温度と同じ温度か、または、前記環境温度とその湿度から決定される露点温度より高い温度、に設定するのが好ましい。当該リンス処理に続く乾燥処理に際し、リンス液の温度が前記露点以下に設定されている場合、被処理基板6に対するリンス液の供給散布が停止したと同時に、被処理基板6は結露を生じ、前記乾燥処理によって、結露水の蒸発乾燥時にレジストパターン間に生じる毛管力により、レジストパターンの倒壊を生じる。第2のリンス液の温度を前記露点温度より高い温度に設定するのは、このレジストパターンの倒壊、及び、結露による汚れの発生を防止するためである。
【0049】
以上、現像液11の設定温度及び第1のリンス液の設定温度が、環境温度及び湿度から決定される露点温度より低く、かつ、乾燥工程直前の第2のリンス処理に用いるリンス液の設定温度を前記露点温度より高い温度に設定する例について説明した。ここでは、上記の組み合わせに限定されることなく、たとえば第1のリンス処理に用いるリンス液の温度を露点より高く設定して、続いて、乾燥処理を行ってもよい。あるいは、第1、第2のリンス処理に用いるリンス液の温度を前記露点より低い温度に設定し、乾燥工程直前の第3のリンス液に用いるリンス液の温度を前記露点より高い温度に設定してもよい。現像液の供給を停止した直後に、現像液よりも高い温度のリンス液を用いると、現像不良を起こす場合があるが、このように温度が異なるリンス液を現像液と同程度の低い温度から段階的に用いると、現像不良を防止することができる。
【0050】
あるいはまた、乾燥工程の直前及び乾燥工程中に、前記露点より高い温度に設定したリンス液を用いる代わりに、前記露点より高い温度に設定した水を含まない気体(乾燥窒素ガス、乾燥空気等)を被処理基板6に供給散布してもよい。
【0051】
<2.レジスト現像装置の動作>
次に、上記構成からなるレジスト現像装置1の動作について説明する。レジスト現像装置1の動作は、上述した主制御部からの制御指令に基づいて行われる。
【0052】
まず、現像液供給部2については、貯留部4に貯留された現像液11の温度を液温制御手段(不図示)によって制御することにより、貯留部4内の現像液11を所望の設定温度(たとえば、−10℃)に維持する。
【0053】
一方、現像処理部3については、保持部8のテーブル21上に、前記第1及び第2の圧力を決定するための試験用の被処理基板6を載せた後、固定して支持する。次に、回転駆動部9を駆動してスピンドル軸22を回転させる。これにより、被処理基板6を支持しているテーブル21がスピンドル軸22と一体に回転する。
【0054】
このような状態のもとで、ポンプ16を駆動し、それと同時またはその直後に供給管5上の開閉弁15を開状態とすることにより、貯留部4内の現像液11を空であった供給管5内に取り込むとともに、この供給管5を通して現像液11を吐出部14側に送り出す。そうすると、供給管5の最下流に位置する吐出部14から現像液11が吐出する。
【0055】
このとき、ポンプ16によって供給管5内の現像液11に加えられる圧力を、供給管5の吐出部14から吐出した現像液11が回転中の被処理基板6の表面(レジスト層)に到達するよう、圧力調整装置20によって調整し、第2の圧力を設定する。このとき、被処理基板6の面内においては、少なくとも被処理基板6の中心部を含む領域に現像液11が到達するよう、第2の圧力を設定する。そうすると、被処理基板6の回転に伴う遠心力によって、被処理基板6全体に現像液11が満遍なく供給され、被処理基板6表面のレジスト層は現像処理される。
【0056】
ちなみに、被処理基板6に対するレジスト膜の成膜および露光に際して、ネガ型のレジストを用いてレジスト層を形成した場合は、その後露光あるいは描画された部位が不溶解部となって、レジストパターンとなる。これに対して、ポジ型のレジストを用いてレジスト層を形成した場合は、その後露光された部位が可溶部となって、レジストパターンとなる。
【0057】
上記の通りに第2の圧力を決定した後には、開閉弁15を開状態に維持し、かつ、ポンプ16を稼働させたまま、吐出部14から現像液11が吐出するのを継続させる。そして、ポンプ16によって供給管5内の現像液11に加えられる圧力を、供給管5の吐出部14から吐出した現像液11が回転中の被処理基板6の表面(レジスト層)に到達しないように、圧力調整装置20によって調整し、第1の圧力を設定する。第2及び第1の圧力を決定した後は、開閉弁15を開状態から閉状態に切り替えて、吐出部14からの現像液11の供給散布を停止し、それと同時またはその直後にポンプ16の駆動を停止しておく。
【0058】
次に、図示しないリンス液供給部(単数または複数)において、現像液供給部2と全く同様な手順で、第2の圧力及び第1の圧力を調整して設定する。また、乾燥工程の直前に行うリンス処理のためのリンス液供給部(現像処理の直後のリンス処理の場合、あるいは、単数または複数のリンス処理を経た後のリンス処理である場合、を含む)において、現像液供給部2と全く同様な手順で、第2の圧力に相当する圧力を調整して設定する。
第2及び第1の圧力を決定した後は、開閉弁15を開状態から閉状態に切り替えて、吐出部14からのリンス液の供給散布を停止し、それと同時またはその直後にポンプの駆動を停止しておく。
【0059】
次に、全てのリンス液供給部における第2の圧力及び第1の圧力の設定を終えたら、試験用被処理基板6に対して乾燥処理を行い、その後、回転駆動部9の駆動を停止する。これにより、スピンドル軸22とテーブル21、即ち試験用被処理基板6の回転が停止する。
【0060】
上述の、現像液11及び単数または複数のリンス液について、第2及び第1の圧力を決定する作業を終えてから、実際に露光または描画を経てレジストパターンを形成する被処理基板6の1枚目の現像処理を開始するまでの間は、現像液11(リンス液を含む)の吐出散布が開閉弁15によって停止した状態に維持される。このため、その間は供給管5の内部に現像液11が残留する。そして、1枚目の被処理基板6の現像処理を開始するときに、それまで供給管5内に残留していた現像液11が、供給管5の吐出部14から吐出される。
【0061】
ここで、供給管5に残留する現像液11(リンス液を含む)の温度は、保温ジャケット17によって貯留部4内の現像液11と略同等に保たれる。このため、現像処理の再開によって供給管5の吐出部14から吐出する現像液11の温度は、貯留部4内の現像液11と同等の温度となるはずである。
【0062】
ところが実際には、保温ジャケット17で覆いきれていない部位、即ち、開閉弁15やその下流側の供給管5の配管部分、あるいはまたポンプ16では、保温ジャケット17で覆われている部位に対比して、前記環境温度の影響を強く受ける。そのため、供給管5内に滞留した現像液11(リンス液を含む)の一部は、前記所望の設定温度から逸脱して、前記環境温度に近づく。また、供給管5内に滞留した現像液11(リンス液を含む)が全量吐出部14から排出された後であっても、即ち、液温度が設定値に十分安定している新たな現像液11が貯留部4から供給管5に導入されたとしても、前記の保温ジャケット17で覆いきれていない供給官5の一部または開閉弁15あるいはポンプ16等は、その温度が環境温度に近づいている。従って、前記新たな現像液11が、これらの部位を通過すると、その液温度は、設定値から逸脱してしまう。
また、現像液11の供給管5での残留時間が長くなると、即ち次の被処理基板6の処理までの間隔があくと、それだけ現像液11の温度の逸脱の度合いが大きくなる。また特に、開閉弁15の取付部位よりも下流側の供給管5内に現像液11が残留しない場合(空の状態)、当該供給管5の温度が環境温度により急速に近づくために、そこを通過する現像液11の温度が適温範囲を大きく超える場合がありうる。また、供給管5の配管部分をすべてジャケット17で被覆するとなると、設備が非常に大がかりになって設備コストがかさんでしまう。
【0063】
ここで、上記の「適温範囲」とは、現像処理によって所望の解像度を満たすパターンを得るにあたって、実際に被処理基板6に供給される現像液11に求められる適切な温度範囲をいう。
【0064】
現像液11の温度が適温範囲を超えて変動する場合への対応として、レジスト現像装置1の主制御部は、以下に記述する第1の動作と第2の動作とを行うように、レジスト現像装置1の動作を制御する。
すなわち、主制御部は、保持部8に保持された被処理基板6に現像液11を供給する場合に、第1の動作として、ポンプ16によって供給管5内の現像液11に加えられる圧力を圧力調整装置20によって第1の圧力に設定した状態で、供給管5の吐出部14から現像液11を吐出させる動作を行わせる。また、主制御部は、この第1の動作の後の、第2の動作として、ポンプ16によって供給管5内の現像液11に加えられる圧力を圧力調整装置20によって第1の圧力から第2の圧力に設定変更した状態で、供給管5の吐出部14から現像液11を吐出させる動作を行わせる。
【0065】
上述した主制御部による動作制御は、保持部8で保持する被処理基板6を入れ替えるたびに行う。
【0066】
上記の動作制御を適用する場合、より具体的には以下のような手順で第1の動作と第2の動作が行われる。なお、ここでは、供給管5の配管方向において、開閉弁15の取付部位よりも下流側の配管部分に現像液11が残留する場合を想定してレジスト現像装置1の動作を記述する。
【0067】
まず、次の被処理基板6の現像処理を行うのに先立って、ポンプ16により供給管5内の現像液11に加えられる圧力を圧力調整装置20によって第1の圧力に設定する。つまり、供給管5内の現像液11に加える圧力を低くする。この状態で、開閉弁15を閉状態から開状態に切り替えると、供給管5の吐出部14から現像液11が吐出されても、
図3(A)に示すように、吐出部14から吐出した現像液11が、被処理基板6に到達することなく、その手前の空間を流れ落ちる。したがって、液温度が設定温度を逸脱した現像液11が被処理基板6に供給されることがない。これが第1の動作となる。
【0068】
上記第1の動作においては、この第1の動作の開始前に供給管5に残留している現像液(以下、「残留現像液」ともいう)11の全量より大きな液量を供給管5の吐出部14から吐出させることが好ましい。具体的には、上記第1の動作においては、供給管5内を流れる現像液11との熱交換により、前記保温ジャケット17で覆われていない部位の温度が、貯留部4内の現像液11の温度と略同等に達するまでに要する量の現像液11を吐出させることが好ましい。
【0069】
その後、残留現像液を含む所定量の現像液11を供給管5から吐出させた段階で、ポンプ16により供給管5内の現像液11に加えられる圧力を圧力調整装置20によって第1の圧力から第2の圧力に設定変更する。つまり、供給管5内の現像液11に加える圧力を高くする。そうすると、圧力の上昇に伴って現像液11の飛距離が伸びる。このため、
図3(B)に示すように、吐出部14から吐出した現像液11が被処理基板6に到達する。つまり、被処理基板6に現像液11が供給される。これが第2の動作となる。この場合、被処理基板6に供給される現像液11は、残留現像液を含まない、貯留部4で恒温制御された状態の現像液となる。
【0070】
また、供給管5の一部に温度検出器を設ける構成を採用した場合、現像液11の温度が所定の値に達していない場合、もしくは所定の値に達しても液温の変動が温度検出器の精度より大きい場合は第1の圧力に、一方、現像液11の温度が所定の値に達し、液温の変動が温度検出器より小さくなった場合は第2の圧力に切り替わる機構としておく。上記構成により、より温度制御された液体を被処理基板に供給散布することが可能となる。
【0071】
<3.実施の形態の効果>
本発明の実施の形態に係るレジスト現像装置によれば、次のような効果が得られる。
【0072】
すなわち、ポンプ16によって供給管5内の現像液11に加えられる圧力を、圧力調整装置20によって第1の圧力と第2の圧力とに切り替え可能とし、この圧力の切り替えによって、所望の設定温度に精密に制御さえた現像液11だけを被処理基板6に供給し得る構成になっている。このため、供給管5の配管途中に残留する現像液11の温度や、保温ジャケット17で覆われない供給管5の温度が、前記環境温度の影響を受けて前記設定温度から逸脱する場合であっても、被処理基板6に対して液温度が設定温度で安定し、かつ、温度変動のない現像液11を供給することができる。したがって、現像液11の温度変動に起因した現像時の溶解ムラ等を抑えることができる。よって、安定して再現精度の高いレジストパターン形成が可能であり、果たして、所望の解像度を安定維持してレジストパターンを形成することが可能となる。
【0073】
特に、直前の被処理基板6の現像処理から、次の被処理基板6を現像処理するまでの時間(以下、「処理中断時間」という)が、一定間隔でない場合において、上述した第1の動作と第2の動作とを順に行うことにより、液温度の逸脱、あるいは、温度変動が大きい吐出初期の現像液11を被処理基板6に供給散布せずに現像処理することができる。このため、複数の被処理基板6において、現像処理を安定的に再現精度良く行うことが可能となる。
【0074】
処理中断時間が許容時間よりも長くなる状況としては、たとえば、製造ロット等の切り替えや段取り替え等が必要になった場合、あるいはレジスト現像装置1のメンテナンス等が必要になった場合などが考えられる。
【0075】
また特に、被処理基板6がナノインプリント法用途のモールド製造用基板である場合は、被処理基板6に供給散布される現像液11の温度変動が小さくなることにより、微細な凹凸パターンを高解像度で、かつ、再現精度良く、形成することが可能となる。その理由は、ナノインプリント法用途のモールド製造用基板に形成されるパターンは、その大きさがナノオーダー(例えば10nm程度あるいはそれ以下)であって、レジスト自体の解像能力の限界に近く、極僅かな現像液の温度の変動がレジストの解像能力に直結するからである。
特に、現像液の温度を前記環境温度(常温)から大きく引き離すほど、例えば0℃以下に設定して現像処理を行った場合、その効果は顕著に現れる。そのような状況においては、上記のレジスト現像装置1の構成を採用すれば、吐出部14から吐出される現像液11の温度が0℃以下の所望所定の低温に確実に到達した後に、被処理基板6に供給することができる。このため、ナノインプリント法用途のモールド製造用基板を被処理基板6としてレジスト現像する場合には、ナノレベルの極微細な凹凸パターンの形成を、高解像度で、かつ、再現精度良く、実現することが可能となる。
【0076】
<4.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0077】
たとえば、上記実施の形態においては、ポンプ16によって供給管5内の現像液11に加えられる圧力を相対的に低く設定した場合に、吐出部14から吐出する現像液11が被処理基板6の手前を流れ落ちることで、被処理基板6に現像液11が供給されない構成としたが、本発明はこれに限らない。すなわち、供給管5内の現像液11に加えられる圧力を相対的に高く設定した場合に、吐出部14から吐出する現像液11が被処理基板6を飛び越えることで、当該被処理基板6に現像液11が供給されない構成としてもよい。ただしこの場合、現像液11が被処理基板6を飛び越える際に、被処理基板6に現像液11が全く供給散布されないようにするための補助機構を必要とする。補助機構の一例としては、現像液11の圧力を相対的に高くした場合(つまり、現像液11が被処理基板6を飛び越える圧力に設定された場合)に、現像液が被処理基板に供給散布されることを遮蔽する板が被処理基板の上方に配置される機構が挙げられる。ところで、吐出部14から吐出させた現像液11が被処理基板6以外の場所に到達する条件を満たせば、そのときの圧力が、実際に被処理基板6に現像液11を供給するときの圧力に比べて、低くても高くてもかまわない。
【0078】
また、上記実施の形態においては、圧力可変手段を構成するものとして、ポンプ16のポンプ圧を調整する圧力調整装置20を例示したが、これ以外にも、たとえば、供給管5の途中に絞り弁を設け、この絞り弁の開度を調整することにより、供給管5内の現像液11に加えられる圧力を、第1の圧力と第2の圧力とに切り替え可能な構成を採用してもよい。この構成を採用した場合は、第1の動作に際して、絞り弁の開度を相対的に小さくすることにより、供給管5内の現像液11に加える圧力を相対的に低く設定する。また、第2の動作に際して、絞り弁の開度を相対的に大きくすることにより、供給管5内の現像液11に加える圧力を相対的に高く設定する。これにより、仮にポンプ16のポンプ圧を同一に設定した場合でも、第1の動作においては、絞り弁の開度が小さく開放されることで現像液11の飛距離が短くなり、第2の動作においては、絞り弁の開度が大きくなることで現像液11の飛距離が長くなる。したがって、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0079】
また、上記実施の形態においては、圧力可変手段を構成するものとして、ポンプ16のポンプ圧を調整する圧力調整装置20を例示したが、これ以外にも、たとえば、貯留部4を密閉した加圧容器として、ポンプ16に代えて、貯留部4に加圧手段を設け、この加圧圧力を調整することで、供給管5内の現像液11に加えられる圧力を、第1の圧力と第2の圧力とに切り替え可能な構成を採用してもよい。この構成を採用した場合は、第1の動作に際して、貯留部4の加圧圧送手段の圧力を相対的に小さくすることにより、供給管5内の現像液11に加える圧力を相対的に低く設定する。また、第2の動作に際して、貯留部4の加圧圧送手段の圧力を相対的に大きくすることにより、供給管5内の現像液11に加える圧力を相対的に高く設定する。これにより、第1の動作においては、加圧圧送圧力が小さく抑えられることで現像液11の飛距離が短くなり、第2の動作においては、加圧圧送圧力が大きくなることで現像液11の飛距離が長くなる。したがって、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0080】
さらにまた、上記の変形例では、圧力可変手段を構成するものとして、一つの貯留部4に加圧圧送手段を一つ設け、加圧圧送手段の圧力を調整する例示したが、これ以外にも、たとえば
図4に示すような例も考えられる。すなわち、2つの貯留部41,42を密閉した加圧容器として、それぞれの貯留部41,42に、第1の加圧手段43と第2の加圧手段44によって第1の圧力と第2の圧力を加えておく。そして、それぞれの貯留部41,42から引き出された供給管5A,5Bと、吐出部14につながる供給管5Cとを、たとえば三方弁等からなる弁45に接続する。かかる構成において、弁45は、供給管5Aおよび供給管5Bを選択的に供給管5Cに接続するように流路を切り替える。このような機構により、供給管5内の現像液11に加えられる圧力を、第1の圧力と第2の圧力とに切り替え可能な構成を採用してもよい。この構成を採用した場合は、第1の動作に際して、加圧圧送手段の圧力を相対的に小さくした第1の貯留部41から引き出された供給管5Aと、吐出部14につながる供給管5Cとを連通させることにより、供給管5内の現像液11に加える圧力を相対的に低く設定する。また、第2の動作に際して、加圧圧送手段の圧力を相対的に大きくした第2の貯留部42から引き出された供給管5Bと、吐出部14につながる供給管5Cとを連通させることにより、供給管5内の現像液11に加える圧力を相対的に高く設定する。これにより、第1の動作においては、加圧圧送圧力が小さく抑えられることで現像液11の飛距離が短くなり、第2の動作においては、加圧圧送圧力が大きくなることで現像液11の飛距離が長くなる。したがって、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0081】
さらに上記構成では次の効果が得られる。予め貯留部4を二つ用意し、それぞれに第1の圧力と第2の圧力が常時加えられているため、弁の開閉に対する現像液の吐出の応答が迅速となる。つまり、圧力の異なる現像液の吐出の切り替えが迅速となり、液の飛距離の変更が迅速に行われるため、切り替えが遅い場合に発生する被処理基板の面内の不均一な処理を防止することができる。
【0082】
また、本発明に係る液体供給装置は、上記の現像液11のように、一定温度に冷却され、前記環境温度より低温に設定された液体に限らず、一定温度に加熱され、前記環境温度より高い温度に設定された液体、あるいは常温(または環境温度)の範囲内で一定温度になるように制御された液体を、それぞれに対象とする基体に供給する液体供給装置に広く適用することが可能である。
【0083】
また、本発明に係る液体供給装置(レジスト現像装置を含む)は、より上位の概念でとらえると、供給管の吐出部から吐出する液体(現像液を含む)を基体(被処理基板を含む)に到達させない第1の動作と、供給管の吐出部から吐出する液体を基体に到達させる第2の動作とを実行可能な装置である。そして、かかる動作を実現する手段の一例として、吐出する液体の圧力可変手段を具備するものである。