(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788468
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】駆動部品の摩耗を抑える機能を有するワイヤ放電加工機
(51)【国際特許分類】
B23H 7/02 20060101AFI20150910BHJP
B23H 7/06 20060101ALI20150910BHJP
B23H 7/28 20060101ALI20150910BHJP
B23H 7/10 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
B23H7/02 K
B23H7/06 Z
B23H7/28
B23H7/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-246287(P2013-246287)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-104756(P2015-104756A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2014年12月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】國府田 尚徳
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4712887(JP,B2)
【文献】
国際公開第99/029459(WO,A1)
【文献】
特開平08−021437(JP,A)
【文献】
特許第3541806(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/00 − 7/38
F16C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ電極と、
前記ワイヤ電極を支持するワイヤガイドと、
加工物に対して前記ワイヤ電極を揺動運動させる少なくとも1つの軸駆動部とを備え、
前記ワイヤ電極を前記加工物に対し揺動運動させながら加工を行うワイヤ放電加工機において、
前記ワイヤ電極の揺動回数をカウントする揺動回数カウント手段と、
前記揺動回数が所定回数に達した後に、前記ワイヤ電極による加工を停止する加工停止手段と、
前記加工停止手段による加工停止後に前記軸駆動部の駆動により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させ、その後前記ワイヤ電極を加工を停止した位置に戻して加工を再開する加工再開手段と、
前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させる前に、前記ワイヤ電極を切断し、加工を再開する前に、前記ワイヤ電極を結線する自動結線装置
とを備えたことを特徴とするワイヤ放電加工機。
【請求項2】
前記軸駆動部として、少なくとも前記ワイヤガイドを、前記加工物の載置面に対して垂直な方向に沿って移動させる第1軸駆動部と、前記第1軸駆動部とは異なる方向に前記ワイヤ電極を前記加工物に対し移動させる第2軸駆動部とを備え、
前記第1軸駆動部により前記ワイヤガイドを設定距離移動させた後に、前記第2軸駆動部により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
【請求項3】
前記揺動回数が所定回数に達した時点の加工ブロックの実行が終了した時に、前記軸駆動部の駆動により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一つに記載のワイヤ放電加工機。
【請求項4】
前記揺動回数が所定回数に達した後、加工が停止した時に、前記軸駆動部の駆動により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一つに記載のワイヤ放電加工機。
【請求項5】
前記揺動回数が所定回数に達する前に前記ワイヤ電極が前記加工物に対し加工により所定距離以上動いた場合、前記揺動回数カウント手段による前記揺動回数のカウントをリセットすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のワイヤ放電加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤ放電加工機に関し、特に駆動部品の摩耗を抑える機能を有するワイヤ放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工機は、2つのワイヤガイド間にワイヤ電極を張って架け渡し、ワイヤ電極を移動させながら、2つのワイヤガイド間に配置されたワークとワイヤ電極の間隙に電圧を印加して放電加工を行うものである。
従来のワイヤカット放電加工機では、ワイヤ電極でワークを切断加工している加工溝の幅が、ワークの上下端面に比べ、板厚の中央部が広くなる現象が生じ、ワークの加工形状が太鼓状となる現象が発生し、加工精度の劣化を招いていた。特に、ワークの板厚が厚い場合、ワーク中でワイヤ電極の振動が大きく、この現象が顕著に発生する。
【0003】
このような太鼓形状の発生を抑制するためのワイヤ放電加工機の加工方法として、以下の特許文献1,2に記載されているような技術がある。
特許文献1には、
図6に示されているように、ワイヤ放電加工機におけるワイヤカット放電加工方法において、上ワイヤガイドとワークを左右に互いに異なる方向に揺動させることによって、加工方法に対して垂直な平面内でワイヤ電極を連続的に左右に交互に傾斜させながら加工する技術が開示されている。この例の場合、揺動する軸はY軸及びV軸となる。
【0004】
特許文献2には、
図7(a)に示されているように、ワイヤ放電加工方法において、ワークを左右に揺動させることによって、ワイヤ電極又は工作物を加工進行方向に所定の幅で揺動進行させて工作物を揺動加工を行う技術が開示されている。
図7(b)には、この場合の加工状態が示されており、ワークの加工領域を左右に揺動しながら加工が進められている。この例の場合、揺動する軸はY軸となる。
また、特許文献3には、型彫り放電加工装置において、電極のジャンプ上昇量が、放電加工装置の機械系駆動部品の摺動部分に用いられるボールやころが1回転以上する距離よりも小さい場合には、ボールやころが1回転以上するだけの電極ジャンプ動作を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4712887号公報
【特許文献2】特開2009−233842号公報
【特許文献3】特許第3541806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に開示されている技術は、ワークの厚み方向の真直精度の向上や、加工面の筋目の抑制、加工速度の向上に対して効果を有するが、ワイヤ電極の揺動の際にワイヤ電極を支持しているワイヤガイドもしくはワーク置き台に接続されている、X軸駆動部、Y軸駆動部、U軸駆動部、V軸駆動部の少なくともいずれかの駆動部を揺動駆動させる必要がある。しかしながら、駆動部の揺動距離(振幅)は0.1mm〜0.2mm程度にすぎない。また、加工形状によっては、揺動する軸の揺動中心位置が変わらずに、同じ位置を中心に長時間の揺動を続けてしまうこともある。
そのため、揺動する軸に使用されている、軸受ベアリング、リニアガイド、ボールネジといった駆動部品において、転動体と転動面との間で油膜切れが起き、短期間で摩耗を引き起こすおそれがある。
【0007】
特許文献3に開示されている技術は、型彫り放電加工機における機械系駆動部品の摺動部分に用いられているボールやころの潤滑効果を維持するために、ボールやころが1回転以上するだけの電極ジャンプ動作を行わせているが、電極ジャンプ動作を行わせる際の判定基準が、ジャンプ上昇量の大小によって判断しているために、小さいジャンプ上昇量のものが続いたりした場合などは、必要以上にボールやころを転がすための電極ジャンプ動作が行われることとなり、効率が悪化してしまうおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、揺動運動を伴う加工を行う場合に、効果的に駆動部品の短期間での摩耗を防ぐワイヤ放電加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明では、ワイヤ電極と、前記ワイヤ電極を支持するワイヤガイドと、加工物に対して前記ワイヤ電極を揺動運動させる少なくとも1つの軸駆動部とを備え、前記ワイヤ電極を前記加工物に対し揺動運動させながら加工を行うワイヤ放電加工機において、前記ワイヤ電極の揺動回数をカウントする揺動回数カウント手段と、前記揺動回数が所定回数に達した後に、前記ワイヤ電極による加工を停止する加工停止手段と、前記加工停止手段による加工停止後に前記軸駆動部の駆動により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させ、その後前記ワイヤ電極を加工を停止した位置に戻して加工を再開する加工再開手段
と、前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させる前に、前記ワイヤ電極を切断し、加工を再開する前に、前記ワイヤ電極を結線する自動結線装置
とを備えたことを特徴とするワイヤ放電加工機が提供される。
【0010】
請求項1に係る発明では、ワイヤ電極の揺動回数をカウントして、揺動回数が所定回数に達した後に、軸を所定距離動かして、元の位置に戻すことによって、ベアリング等の転動体と転動面との間に潤滑剤が供給されて、新たな油膜が形成されることで、転動体や転動面の早期摩耗を防止することができる。
また、軸を所定距離移動させる前にワイヤ電極を切断して、その後ワイヤ電極を結線した後に加工を再開するようにすることで、軸を所定距離動かすにあたって、ワイヤ電極とワークが干渉しないようにすることが可能となる。
【0012】
本願の請求項
2に係る発明では、前記軸駆動部として、少なくとも前記ワイヤガイドを、前記加工物の載置面に対して垂直な方向に沿って移動させる第1軸駆動部と、前記第1軸駆動部とは異なる方向に前記ワイヤ電極を前記加工物に対し移動させる第2軸駆動部とを備え、前記第1軸駆動部により前記ワイヤガイドを設定距離移動させた後に、前記第2軸駆動部により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させることを特徴とする請求項
1に記載のワイヤ放電加工機が提供される。
請求項
2に係る発明では、軸を所定距離動かす前に、異なる軸も動かすようにしたことによって、ワイヤガイドとワークや冶具が干渉することを防ぐことができる。
【0013】
本願の請求項
3に係る発明では、前記揺動回数が所定回数に達した時点の加工ブロックの実行が終了した時に、前記軸駆動部の駆動により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させることを特徴とする請求項1
又は2に記載のワイヤ放電加工機が提供される。
本願の請求項
4に係る発明では、前記揺動回数が所定回数に達した後、加工が停止した時に、前記軸駆動部の駆動により前記ワイヤ電極を前記加工物に対し所定距離移動させることを特徴とする請求項1
又は2に記載のワイヤ放電加工機が提供される。
【0014】
請求項
3又は
4に係る発明では、揺動回数が所定回数に達した後の、加工ブロックの実行が終了した時や、加工が停止した時に、軸駆動部を駆動させて軸を所定距離移動させるようにしたことによって、加工途中で加工を停止させて、軸を動かすことによる加工面への影響を低減することが可能となる。
【0015】
本願の請求項
5に係る発明では、前記揺動回数が所定回数に達する前に前記ワイヤ電極が前記加工物に対し加工により所定距離以上動いた場合、前記揺動回数カウント手段による前記揺動回数のカウントをリセットすることを特徴とする請求項1〜
4のいずれか一つに記載のワイヤ放電加工機が提供される。
【0016】
請求項
5に係る発明では、揺動回数が所定回数に達する前に揺動していた軸が加工によって所定距離以上動いた場合は、ベアリング等の転動体と転動面との間に潤滑剤が供給されて新たな油膜が形成されていると判断して、揺動回数カウント手段による揺動回数のカウントをリセットするようにしたことによって、油膜切れが生じていないにもかかわらず、必要のない軸の駆動を行うことを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、揺動運動を伴う加工を行う場合に、効果的に駆動部品の短期間での摩耗を防ぐワイヤ放電加工機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態におけるワイヤ放電加工機の概略構成と動作について説明する図である。
【
図2】各サーボモータの内部構成を示した図である。
【
図3】ベアリング等の駆動部品における転動体と転動面との間の油膜の様子を示した図である。
【
図4】軸を所定距離動かすタイミングを説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】ワイヤ放電加工方法において、上ワイヤガイドとワークを左右に互いに異なる方向に揺動させる加工方法を示した図である。
【
図7】ワイヤ放電加工方法において、ワークを左右に互いに異なる方向に揺動させる加工方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のワイヤ放電加工機の概略構成と動作について説明する図である。40は加工対象となるワークであり、32はワーク40を設置して固定するワーク置き台である。ワーク置き台32は、上面が平坦となった載置面34を有し、加工時にワーク40が、その底面が載置面34に接するようにワーク置き台32に設置され固定される。
【0020】
50はワイヤ電極であり、ワイヤ電極50は、ワーク40に放電加工を施すために、図示しないワイヤ電極送り出しリールから給電ローラ56、上ガイドローラ52、上ワイヤガイド22を経て加工箇所58に供給される。加工時には、ワイヤ電極50は結線操作により上下ワイヤガイド22,24間に張架され、ワイヤ電極50に、ワーク40との間に放電を起こさせるための電圧が印加される。
【0021】
ワイヤ電極50は加工箇所58を経て更に、下ワイヤガイド24、下ガイドローラ54を経て、ワイヤ電極50を所定の張力で引っ張る図示しない巻き取りリールに巻き取られる。なお、巻き取りリールに替えて、図示しないワイヤ回収箱に回収するように構成することもできる。
ワイヤ電極50には、放電加工電源110から給電ローラ56を介して放電加工用の電気エネルギーが供給される。また、加工箇所58には、冷却水が注がれたり、あるいは、ワーク40全体を加工液(例えば、純水)中に浸漬するなどの手法が採用される。
【0022】
通常、ワーク置き台32の載置面34は水平方向(XY平面に平行な面上)に延在し、ワーク置き台32は、X軸駆動用サーボモータ16及びY軸駆動用サーボモータ18により、X軸およびY軸を直交軸とするXY平面に平行な面上で駆動可能となっている。また、上ワイヤガイド22は、U軸駆動用サーボモータ12及びV軸駆動用サーボモータ14により、XY平面に平行な面上で駆動可能である。また、上ワイヤガイド22は、Z軸駆動用サーボモータ10により、XY平面に垂直なZ軸方向に駆動可能となっている。ここで、U軸による移動方向とX軸による移動方向は平行、また、V軸による移動方向とY軸による移動方向は平行である。
【0023】
ワーク40における加工箇所58を変えるには、ワーク40とワイヤ電極50の相対的な位置を変えればよく、数値制御装置100から出力される各軸サーボモータへの指令(X軸駆動指令、Y軸駆動指令、U軸駆動指令、V軸駆動指令、Z軸駆動指令)により行われる。その指令内容は、通常、加工プログラムで規定される。加工プログラムは、ワイヤ電極50の移動指令、つまり、各軸サーボモータへの移動指令などを規定するプログラムであり、前述のXY平面に平行な平面に定義される。
【0024】
図2は、Z軸、X軸、Y軸、U軸、V軸の各サーボモータの内部構成を示した図であり、いずれの軸のサーボモータも同様の構成とされている。サーボモータには、モータ82を備えられており、モータ82とボールネジのネジ軸74とが、カップリング86と軸受ベアリング88とを介して結合され、モータ82の回転運動が、ボールネジのネジ軸74に伝達されるようにされている。また、カップリング86及び軸受ベアリング88は、モータハウジング84により周囲を覆われており、軸受ベアリング88は押さえぶた90によって押さえられている。
【0025】
ボールネジのネジ軸74には、ボールネジのナット72が取り付けられており、ナット72はナットホルダ76によって保持され、ナットホルダ76はヘッド62と接合されている。また、ヘッド62の下部2か所には、内部に図示しないベアリングを有するリニアガイド60を有しており、レール66上に載置されている。
【0026】
これらの構成によって、モータ82の駆動により、ボールネジのネジ軸74が回転し、ネジ軸74の回転によって、ボールネジのナット72が相対的に左右に移動することによって、ヘッド62もレール66上を左右に移動することとなる。図示していないが、ヘッド62に上ワイヤガイド22やワーク置き台32を接続することによって、上ワイヤガイド22をZ軸方向、U軸方向、V軸方向に自由に移動させることが可能となり、ワーク置き台32もX軸方向、Y軸方向に自由に移動させることが可能となる。
【0027】
図3は、ベアリング60等の駆動部品における転動体と転動面との間の油膜の様子を示した図である。
図2に示されている各サーボモータに用いられている、軸受ベアリング88、リニアガイド60内の図示しないベアリング、ボールネジのネジ軸74やナット72の、揺動する軸に使用されている駆動部品は、小さい揺動距離で長時間駆動していると、揺動する軸の揺動中心位置が変わらずに同じ位置を中心に長時間の揺動を続けることとなるため、当初
図3(a)のように、ベアリング60の周囲全体に油膜が形成されていたものが、
図3(b)のように一部油膜切れとなる状態となることがある。このような状態でさらに長時間駆動していると、ベアリング60等の早期摩耗を引き起こすおそれがある。
【0028】
そこで、本実施形態においては、軸ごとに揺動回数をカウントし、揺動回数が所定回数に達した後に、軸を所定距離動かした後に、元の位置に戻すようにする。これにより、例えば
図3(b)に示された状態から、
図3(c)に示された状態となり、ベアリング60等の駆動部品の転動体と転動面との間に潤滑剤が供給されて、油膜切れとなった箇所に新たな油膜が形成されるため、駆動部品の早期摩耗を防止することが可能となる。
【0029】
図4は、軸を所定距離動かすタイミングを説明するための図である。112は加工経路を示している。加工開始時から、軸の揺動回数をカウントする。114は加工経路112において、揺動回数が予め定められた所定回数に到達した地点である。また、116は揺動回数が予め定められた所定回数に到達した時点の加工ブロックが終了する地点である。さらに、118は揺動回数が予め定められた所定回数に到達した後で、加工経路において加工が停止する地点である。軸を所定距離動かすタイミングとしては、これらの地点のいずれかを用いるのが好適である。
【0030】
図5は、本実施形態の動作の流れを示すフローチャートである。以下、ステップ毎に説明する。
・(ステップSA1)軸の揺動回数をカウントする。
・(ステップSA2)カウントした揺動回数が、予め設定した所定回数を超えたかどうかを判定する。超えた場合(YES)には、ステップSA3に進み、超えていない場合(NO)は、ステップSA1に戻って軸の揺動回数のカウントを継続する。
【0031】
・(ステップSA3)位置が、加工ブロックの終点かどうかを判定する。終点の場合(YES)は、ステップSA4に進み、終点でない場合(NO)は、終点に到達するまでステップSA3を繰り返す。
・(ステップSA4)加工を停止する。
・(ステップSA5)ワイヤ電極を切断する。
・(ステップSA6)Z軸駆動用サーボモータを駆動させる。
【0032】
・(ステップSA7)軸を所定距離動かすために、V軸駆動用サーボモータ14、又はV軸駆動用サーボモータ14とY軸駆動用サーボモータ18とを所定距離分駆動する。V軸、Y軸に代えて、U軸、X軸とすることもできる。
・(ステップSA8)Z軸、V軸、Y軸等を、所定距離動かす前の位置に戻す。
・(ステップSA9)ワイヤ電極を結線する。
・(ステップSA10)加工を再開する。
・(ステップSA11)揺動回数を0にリセットし、ステップSA1に戻る。
【0033】
軸を動かす所定距離としては、軸受けベアリング、リニアガイド内のベアリング、ボールネジ等の転動体が1回転以上回転する距離が望ましい。これにより、転動体が転動面と接触して油膜切れを起こしていても、1回転以上回転することによって、再度油膜に覆われるようにすることができる。
また、本実施形態においては、軸を所定距離動かす前に、ワイヤ電極を切断して、軸を所定距離動かした後に、元の位置に戻して再度結線している。このようにすることにより、軸を所定距離動かす際に、ワイヤ電極とワークが干渉しないようにすることが可能であるが、必ずしも軸を所定距離動かす際にワイヤ電極を切断しなければならないものではなく、ワイヤ電極を切断することなしに、軸を所定距離動かすようにすることもできる。
【0034】
本実施形態においては、Z軸駆動用サーボモータを駆動させて、上ワイヤガイドとワーク及び冶具が干渉しないようにしている。しかしながら、Z軸の駆動は必ずしも行わなければならないものではなく、Z軸の駆動を行わずに、V軸やY軸の駆動を行うようにすることも可能である。
また、本実施形態においては、軸の揺動回数が予め定められた所定回数を超えた後に、加工ブロックが終了したタイミングにおいて加工を停止させて、軸を所定の距離移動させるようにしているが、必ずしもこのようにする必要はなく、軸の揺動回数が所定回数を超えた地点において、加工を停止させて軸を所定の距離移動させたり、軸の揺動回数が所定回数を超えた後に、次に加工が停止した地点において、軸を所定の距離移動させるようにすることも可能である。
【0035】
さらに、揺動回数のカウントが所定回数に達する前に、加工動作により軸が所定距離以上動いた場合には、その移動によって転動体の全面に油膜が再度形成されるため、揺動回数のカウントをリセットして、再度カウントをスタートさせるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0036】
10 Z軸駆動用サーボモータ
12 U軸駆動用サーボモータ
14 V軸駆動用サーボモータ
16 X軸駆動用サーボモータ
18 Y軸駆動用サーボモータ
22 上ワイヤガイド
24 下ワイヤガイド
32 ワーク置き台
34 載置面
40 ワーク
50 ワイヤ電極
52 上ガイドローラ
54 下ガイドローラ
56 給電ローラ
58 加工箇所
60 リニアガイドのベアリング
62 ヘッド
66 レール
72 ナット
74 ネジ軸
76 ナットホルダ
82 モータ
84 モータハウジング
86 カップリング
88 軸受ベアリング
90 押さえぶた
100 数値制御装置
110 放電加工電源
112 加工経路
114 加工経路において揺動回数が所定回数に到達した地点
116 揺動回数が所定回数に到達した時点の加工ブロックが終了する地点
118 揺動回数が所定回数に到達した後に、加工経路において加工が停止する地点