(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788470
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの取付架台
(51)【国際特許分類】
H02S 20/10 20140101AFI20150910BHJP
【FI】
H02S20/10 C
H02S20/10 F
H02S20/10 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-248202(P2013-248202)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105527(P2015-105527A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2013年11月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591089431
【氏名又は名称】株式会社サニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】西竹 秀騎
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3182262(JP,U)
【文献】
特開2012−172455(JP,A)
【文献】
特開2011−202432(JP,A)
【文献】
特開2012−215067(JP,A)
【文献】
特開2009−97253(JP,A)
【文献】
特開2008−69529(JP,A)
【文献】
特開平8−49337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/10
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールが上部に取り付けられる縦桟と、前記縦桟に傾斜角度を与えて支える支柱と、前記縦桟の中間部と前記支柱の下端部とを連結する斜め材とにより構成され、前記支柱および前記斜め材が圧縮荷重または引張荷重を受けるトラス構造を形成し、前記太陽電池モジュールに傾斜角度を持たせて設置するための太陽電池モジュールの取付架台であって、
前記縦桟は、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼であり、前記太陽電池モジュールの下面に対して直交方向に延びるウェブと、当該ウェブの上下両端から当該ウェブを挟んでそれぞれ反対方向かつ当該ウェブと直交する方向に延びるフランジと、当該フランジの先端からそれぞれ前記ウェブと平行方向にかつ互いに内向きに延びるリップとを有し、前記太陽電池モジュールが上側のフランジに対してボルト・ナットにより締結されるものであり、
前記支柱および前記斜め材は、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼であり、互いに直交する2つのフランジと、前記2つのフランジのそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップとを有し、2つフランジのうち一方のフランジが前記縦桟のウェブに対して前記縦桟の上側のフランジが延びている側の面にボルト・ナットにより締結されたものである太陽電池モジュールの取付架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに傾斜角度を持たせて設置するための太陽電池モジュールの取付架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大陽電池モジュールの設置架台としては、例えば特許文献1に記載のように、太陽電池パネルを搭載するための鉄骨枠を、基礎に固着されたアングル材により支持するものが知られている。また、例えば特許文献2に記載のように、アングル材よりも軽量で座屈変形や曲げ変形に強い断面C字状のリップ溝形鋼で構成されたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−140256号公報
【特許文献2】特開2012−2044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の設置架台では、鋼材同士の接続が、リップ溝形鋼の一対の両側面の外側から通しボルトを使用するものであるため、温度変化による膨張、収縮や風などにより鋼材が振動し、その振動で通しボルトが緩んでしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明においては、部材同士の一辺を確実にボルト締めすることが可能で、熱収縮や振動などによるボルトの緩みに強い安定した構造を有する太陽電池モジュールの取付架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の太陽電池モジュールの取付架台は、太陽電池モジュールを下から斜めに支える縦桟を備え、太陽電池モジュールに傾斜角度を持たせて設置するための太陽電池モジュールの取付架台であって、縦桟に傾斜角度を与えて支える支柱または縦桟と支柱とを相互にトラス状に連結する斜め材のいずれか一方または両方が、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼であり、互いに直交する2つのフランジと、2つのフランジのそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップとを有するものである。
【0007】
縦桟に傾斜角度を与えて支える支柱および縦桟と支柱とを相互にトラス状に連結する斜め材は、風圧荷重などによる圧縮荷重または引張荷重を受け、特に起こりやすいのが座屈変形である。座屈変形を発生させる荷重は、オイラーの座屈荷重によると、π
2EI/L
2(E:縦弾性係数、I:断面二次モーメント、L:部材長さ)であり、断面二次モーメントIが大きい部材ほど大きな座屈荷重に耐えられる。そこで、本発明に係る支柱および斜め材は、互いに直交する2つのフランジと、2つのフランジのそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップとによって、大きな断面二次モーメントを確保しており、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された軽量な形鋼でありながら座屈変形に強いものとなっている。また、本発明に係る支柱および斜め材では、フランジの対面に邪魔になるものがないため、フランジの一辺のみをボルトにより作業性良く固定することができる。
【発明の効果】
【0008】
縦桟に傾斜角度を与えて支える支柱または縦桟と支柱とを相互にトラス状に連結する斜め材のいずれか一方または両方が、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼であり、互いに直交する2つのフランジと、2つのフランジのそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップとを有する構成により、軽量でありながら座屈変形に強く、かつ部材同士の一辺を確実にボルト締めすることが可能で、熱収縮や振動などによるボルトの緩みに強い安定した構造を有する太陽電池モジュールの取付架台が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの取付架台の側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの取付架台の概略正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの取付架台の概略背面図である。
【
図4】(a)は
図1のA−A断面図、(b)は
図3のB−B断面図、(c)は
図1のC−C断面図、(d)は
図3のD−D断面図、(e)は
図3のE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの取付架台の側面図、
図2は概略正面図、
図3は概略背面図である。
図4の(a)は
図1のA−A断面図、(b)は
図3のB−B断面図、(c)は
図1のC−C断面図、(d)は
図3のD−D断面図、(e)は
図3のE−E断面図である。
【0011】
図1〜
図3に示すように、本発明の実施の形態における取付架台1は、太陽電池モジュールMに傾斜角度を持たせて設置するものである。取付架台1は、上部に複数の太陽電池モジュールMが取り付けられて太陽電池モジュールMを下から斜めに支える2本の縦桟2が、縦桟2に傾斜角度を与えて支える支柱3と、縦桟2と支柱3とを相互にトラス状に連結する斜め材4と、基礎接続具5,6とによって支えられたものである。
【0012】
基礎接続具5は、直接基礎7に接続されている。支柱3と斜め材4は、トラス構造を形成するようにそれぞれの下端部が基礎接続具6に留められて、当該基礎接続具6は直接基礎8に接続されている。また、支柱3の背面側には、支柱3に対してトラス構造を形成するように横材9と斜め材10が設けられている。
【0013】
縦桟2は、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼(軽量形鋼)である。
図4(a)に示すように、縦桟2の断面形状は、Z形に近く、それぞれのコーナー部にアールを付けて90°に折り曲げられた形状である。縦桟2は、太陽電池モジュールMの下面に対して直交方向に延びるウェブ20と、ウェブ20の上下両端からウェブ20を挟んでそれぞれ反対方向に延びるフランジ21と、フランジ21の先端からそれぞれウェブ20と平行方向にかつ互いに内向きに延びるリップ22とを有する。太陽電池モジュールMは、縦桟2の上側のフランジ21に対してボルト・ナット11により締結される。
【0014】
支柱3は、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼(軽量形鋼)である。
図4(b)に示すように、支柱3の断面形状は、L形に近く、コーナー部にアールを付けて90°に折り曲げられた形状である。支柱3は、互いに直交する2つのフランジ30と、2つのフランジ30のそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップ31とを有する。支柱3の上端部は、縦桟2のウェブ20に対してボルト・ナット12により締結される。
【0015】
斜め材4,10は、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼(軽量形鋼)である。
図4(c)、(d)に示すように、斜め材4,10の断面形状は、支柱3と同様であり、L形に近く、コーナー部にアールを付けて90°に折り曲げられた形状である。斜め材4は、互いに直交する2つのフランジ40と、2つのフランジ40のそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップ41とを有する。斜め材10も同様に、互いに直交する2つのフランジ100と、2つのフランジ100のそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップ101とを有する。
【0016】
斜め材4の上端部は、縦桟2のウェブ20に対してボルト・ナット13により締結される。また、支柱3と斜め材4は、それぞれの下端部が基礎接続具6にボルト・ナット14により締結される。また、縦桟2と基礎接続具5は、ボルト・ナット15により締結される。
【0017】
横材9は、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼(軽量形鋼)である。
図4(e)に示すように、横材9の断面形状は、L形に近く、コーナー部にアールを付けて90°に折り曲げられた形状である。横材9は、互いに直交する2つのフランジ90と、上側のフランジ90の先端に直交方向にかつ内向きに延びるリップ91とを有する。横材9の左右端部は、支柱3のフランジ30に対してボルト・ナット16により締結される。また、斜め材10の左右端部も同様に、支柱3のフランジ30に対してボルト・ナット17により締結される。
【0018】
上記構成の太陽電池モジュールMの取付架台1では、縦桟2は太陽電池モジュールMを下から斜めに支えるため、風圧荷重などの上下方向の荷重によって、大きな曲げモーメントを受けるが、太陽電池モジュールMの下面に対して直交方向に延びるウェブ20と、ウェブ20の上下両端からウェブ20を挟んでそれぞれ反対方向に延びるフランジ21と、フランジ21の先端からそれぞれウェブ20と平行方向にかつ互いに内向きに延びるリップ22とによって、大きな断面係数を確保できており、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された軽量形鋼でありながら、この大きな曲げモーメントに耐えることが可能である。
【0019】
また、この縦桟2は、太陽電池モジュールMをボルト・ナット11によりフランジ21に固定する際、ウェブ20の下端のフランジ21がウェブ20を挟んで上端のフランジ21と反対方向に延びているため、ウェブ20の下端のフランジ21が邪魔になることがなく、フランジ21の一辺のみをボルト・ナット11により作業性良く固定することができる。また、ウェブ20や下端のフランジ21に対して他の部材をボルト締めにより固定する際も同様に、ウェブ20や下端のフランジ21の対面に邪魔になるものがないため、ウェブ20やフランジ21の一辺のみをボルト締めにより作業性良く固定することができる。
【0020】
このように、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された形鋼であり、太陽電池モジュールMの下面に対して直交方向に延びるウェブ20と、ウェブ20の上下両端からウェブ20を挟んでそれぞれ反対方向に延びるフランジ21と、フランジ21の先端からそれぞれウェブ20と平行方向にかつ互いに内向きに延びるリップ22とを有する縦桟2を用いることで、軽量でありながら曲げ変形に強く、かつ部材同士の一辺を確実にボルト締めすることが可能で、熱収縮や振動などによるボルトの緩みに強い安定した構造を有する太陽電池モジュールの取付架台1が得られる。
【0021】
また、上記構成の太陽電池モジュールMの取付架台1では、縦桟2に傾斜角度を与えて支える支柱3、および縦桟2と支柱3とを相互にトラス状に連結する斜め材4は、風圧荷重などによる圧縮荷重または引張荷重を受け、特に座屈変形が起こりやすいが、互いに直交する2つのフランジ30,40と、2つのフランジ30,40のそれぞれの先端からそれぞれ直交方向にかつ内向きに延びるリップ31,41とによって、大きな断面二次モーメントを確保できており、板厚1.0mm〜2.5mmの鋼板から形成された軽量形鋼でありながら座屈変形に強い。
【0022】
また、支柱3および斜め材4においても、前述の縦桟2と同様に、フランジ30,40の対面に邪魔になるものがないため、フランジ30,40の一辺のみをボルトにより作業性良く固定することが可能となっており、このような支柱3または斜め材4を用いることで、部材同士の一辺を確実にボルト締めすることが可能で、熱収縮や振動などによるボルトの緩みに強い安定した構造を有する太陽電池モジュールの取付架台1が得られる。
【0023】
なお、横材9は、支柱3と斜め材10とでトラス構造を形成する部材であり、支柱3や斜め材10と同じく座屈荷重を受けるが、全長が支柱3や斜め材10より短い分だけ座屈には強く、また、下側のフランジ90の先端にリップを設けると雨水が溜まってしまうため、上側のフランジ90にのみリップ91を設けている。
【0024】
なお、本実施形態においては、ボルト・ナット12,13,14,16,17による留め部の周囲のフランジ30,40,90,100を切り欠いているが、ボルト・ナット12,13,14,16,17の軸方向には邪魔になるウェブやフランジなどがないため、切欠きがなくともボルト・ナット12,13,14,16,17の部分には手や締め付け工具などが届き、容易にボルト締め作業を行うことができる。
【実施例】
【0025】
縦桟2のウェブ20の長さ100mm、フランジ21の長さ50mm、リップ22の長さ20mmで、板厚1.6mmの場合、単位重量は2.88kg/mである。この上側ウェブ20上に太陽電池モジュールを取り付けた場合に発生する曲げ変形に係わる断面係数は11.7cm
3である。一方、等辺山形鋼50mm×50mm、板厚6mmの場合、単位重量は4.43kg/mである。このフランジ上に太陽電池モジュールを取り付けた場合に発生する曲げ変形に係わる断面係数は3.55cm
3であり、縦桟2の方が軽量かつ断面係数が高く、等辺山形鋼よりも上述のような曲げ変形に強い。
【0026】
なお、従来のリップ溝形鋼(ウェブの長さ100mm、フランジの長さ50mm、リップの長さ20mm、板厚1.6mm)のウェブ上に太陽電池モジュールを取り付けた場合に発生する曲げ変形に係わる断面係数は11.7cm
3であり、縦桟2と同じである。しかしながら、地震時に発生する水平方向の荷重による曲げ変形に係わる断面係数は、縦桟2が5.25cm
3に対してリップ溝形鋼は4.47cm
3であり、縦桟2の方がリップ溝型鋼より水平方向の荷重による曲げ変形に強い。
【0027】
また、支柱3および斜め材4について、フランジ30,40の長さ90mm、リップ31,41の長さ20mmで、板厚1.6mmの場合、単位重量は2.7kg/m、最小の断面二次モーメントは16.6cm
4である。一方、従来のリップ溝形鋼(ウェブの長さ100mm、フランジの長さ50mm、リップの長さ20mm、板厚1.6mm)の単位重量は2.88kg/m、最小の断面二次モーメントは14.0cm
4であり、支柱3および斜め材4の方が軽量かつ最小の断面二次モーメントが高く、従来のリップ溝形鋼より座屈変形に強い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の太陽電池モジュールの取付架台は、太陽電池モジュールに傾斜角度を持たせて設置するための架台として有用である。
【符号の説明】
【0029】
M 太陽電池モジュール
1 取付架台
2 縦桟
3 支柱
4,10 斜め材
5,6 基礎接続具
7,8 基礎
9 横材
11,12,13,14,15,16,17 ボルト・ナット
20 ウェブ
21,30,40,90,100 フランジ
22,31,41,91,101 リップ