(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788515
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】高速パルスガス送出のためのシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20150910BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20150910BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 F
H01L21/302 101G
【請求項の数】23
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-531756(P2013-531756)
(86)(22)【出願日】2011年9月28日
(65)【公表番号】特表2013-540201(P2013-540201A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011053614
(87)【国際公開番号】WO2012044658
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年5月14日
(31)【優先権主張番号】12/893,554
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】ディング,ユンフワ
【審査官】
安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−535617(JP,A)
【文献】
特許第4197648(JP,B2)
【文献】
特表2008−536006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバーまたはツールに所望の質量のガスのパルスであって、それぞれが所定の持続時間を有するパルスを送出するためのシステムであって、
ガス送出チャンバーと、
前記ガス送出チャンバー内へのガスの流動を制御するように配置された第1の弁と、
ガスが前記ガス送出チャンバーをパルス状に離れることができるように前記ガス送出チャンバーを離れる前記ガスの流動を制御するように配置された第2の弁であって、選択された質量のそれぞれが、前記ガス送出チャンバー内の前記ガスの初期圧の関数である、第2の弁と、
前記ガス送出チャンバー内へ流入する前記ガスの圧力を制御し、ガスの前記パルスのそれぞれを送出する前に、前記ガス送出チャンバー内の前記ガスを初期始動圧力設定値にまであらかじめ充填するように構成され、配置され、それによって前記ガス送出チャンバー内の前記ガスの始動圧力の変動がガスの前記パルスのそれぞれを送出する前に制御され、よって前記質量送出の再現性を前記パルスのそれぞれの前記持続期間に応じて改善する、圧力制御装置と
を備え、
前記圧力制御装置が副チャンバーを含み、前記副チャンバーが前記ガスを受け取るように構築され、配置され、前記副チャンバー内の圧力を実質的に一定の所定のレベルで維持し、前記第1の弁を介して前記副チャンバーからのガスを前記ガス送出チャンバー内へ供給するように選択的に結合されることにより、ガスの前記パルスのそれぞれを送出する前に、前記ガス送出チャンバー内の前記ガスの前記初期圧の変動を制御する、システム。
【請求項2】
前記ガス送出チャンバー内の圧力に応じて圧力信号を供給するように配置された圧力トランスデューサをさらに含み、前記圧力制御装置が前記圧力信号に応じて前記ガス送出システム内へのガスの流動を制御するためのコントローラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ガス送出チャンバー内のガス温度に応じて温度信号を供給するように配置された温度センサーをさらに含み、前記圧力制御装置が前記温度信号に応じて前記ガス送出システム内へのガスの流動を制御するためのコントローラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記圧力制御装置が前記ガス送出チャンバー内の圧力に応じて前記ガス送出チャンバー内への、および前記ガス送出チャンバーからのガスの流動を制御するように構成され、配置された第1のコントローラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記圧力制御装置が前記第1の弁を制御し、ガスのパルスのパルスガス送出前に前記ガス送出チャンバー内の前記ガスの前記初期始動圧力設定値の変動を制御するように前記副チャンバーから前記ガス送出チャンバーへのガスの流動を制御するようにさらに構成され、配置された、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガス送出チャンバー内の圧力に応じて第1の圧力信号を供給するように配置された第1の圧力トランスデューサ、およびに前記副チャンバー内の圧力に応じて第2の圧力信号を供給するように配置された第2の圧力トランスデューサをさらに含み、前記圧力制御装置が前記第1および第2の圧力信号に応じて前記ガス送出システム内へのガスの流動を制御するためのコントローラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記副チャンバー内への流動を制御するように配置された第3の弁をさらに含み、前記圧力制御装置が前記第3の弁を制御して前記第2の圧力信号に応じて前記副チャンバー内へのガスの流動を制御し、前記第1の弁を制御して前記第1および第2の圧力信号に応じて前記副チャンバーから前記ガス送出チャンバー内への流体の流動を制御し、前記第1の圧力信号に応じて前記ガス送出チャンバーを離れるガスの流動を制御するように構成され、配置された、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラが、前記第1および第2の弁を制御するように構成され、配置された第1のコントローラと、前記第3の弁を制御するように構成され、配置された第2のコントローラと、前記第1および第2のコントローラを制御するように構成され、配置された第3のコントローラとを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記副チャンバーが前記第1の弁を介して前記ガス送出チャンバーを前記ガスで充填するように前記ガス送出チャンバーに選択的に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラが、前記第3の弁を制御して前記副チャンバー内へのガスの流動を制御し、前記副チャンバー内の圧力を選択した圧力で維持するように構成され、配置された、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項11】
前記ガス送出チャンバー内の前記初期始動圧力設定値が送出されるガスの前記パルスのガスタイプおよび前記選択された質量の関数である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
処理チャンバーまたはツールに所望の質量のガスのパルスであって、それぞれが所定の持続時間を有するパルスを送出する方法であって、
第1の弁を用いてガス送出チャンバー内へのガスの流動を制御し、前記ガスが前記ガス送出チャンバーをパルス状に離れることができるように前記ガス送出チャンバーを離れるガスの流動を制御するステップであって、選択された質量のそれぞれが前記ガス送出チャンバー内の前記ガスの初期圧の関数である、ステップと、
ガスの前記パルスのそれぞれを送出する前に前記ガス送出チャンバー内の前記ガスを初期始動圧力設定値にまであらかじめ充填し、それによって前記ガス送出チャンバー内の前記ガスの始動圧力の変動がガスの前記パルスのそれぞれを送出する前に制御され、よって前記質量送出の再現性を前記パルスのそれぞれの前記持続期間に応じて改善する、ステップと
を含み、
副チャンバーが前記ガスを受け取り、前記副チャンバー内の圧力を実質的に一定の所定のレベルで維持し、前記第1の弁を介して前記副チャンバーからのガスを前記ガス送出チャンバー内へ供給するように選択的に結合されることにより、前記初期圧の変動を制御する方法。
【請求項13】
前記ガス送出チャンバー内の圧力に応じて前記ガス送出システム内へのガスの流動を制御するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ガス送出チャンバー内の前記ガスの温度に応じて前記ガス送出システム内へのガスの流動を制御するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ガス送出チャンバー内の前記圧力に応じて前記ガス送出チャンバー内への、および前記ガス送出チャンバーからのガスの流動を制御するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記副チャンバー内のガスの圧力に応じて前記副チャンバー内へのガスの流動を制御するように前記副チャンバーへの入口弁を制御するステップと、前記副チャンバー内の圧力および前記ガス送出チャンバー内の圧力に応じて前記副チャンバーから前記ガス送出チャンバー内へのガスの流動を制御するように前記ガス送出チャンバーへの入口弁を制御するステップと、前記ガス送出チャンバーから出る流体の流動を制御するように出口弁を制御するステップとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記初期始動圧力設定値が送出されるガスの前記パルスのガスタイプおよび前記選択された質量の関数である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
処理チャンバーまたはツール内のウェーハに所望の質量のガスのパルスを送出する請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
処理チャンバーまたはツール内の基板に所望の質量のガスのパルスを送出する請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
半導体ツールに所望の質量のガスのパルスを送出する請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
半導体処理チャンバーに所望の質量のガスのパルスを送出する請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
プラズマエッチングマシンに所望の質量のガスのパルスを送出する請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記圧力制御装置は、前記初期始動圧力設定値に達した時に前記第1の弁を閉じる請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、全体の教示が参照により本明細書に組み込まれる、2010年9月29日に出願された米国特許出願第12/893,554号の利益を主張するものである。
分野
[0002]本開示は一般に、ガス送出機器に関し、より詳細には、高速パルスガス送出の方法およびそのシステムに関する。本明細書で使用されるとき、2つの用語が異なるものと見なされる場合、「ガス(gas)」という用語は、「気体(vapors)」という用語を含む。
【背景技術】
【0002】
概説
[0003]半導体デバイスの製造または組立てでは、しばしば真空処理チャンバーなどの処理ツールへの十数ものガスを注意深く同期させ、送出量を正確に測定することが必要である。様々な製法が製造工程において使用され、半導体デバイスが清浄にされ、研磨され、酸化され、マスクされ、エッチングされ、ドープされ、金属被膜されるなどの、多くの個別の処理ステップが必要とされる場合がある。使用されるステップ、それらの特定のシーケンスおよび関係する材料はすべて、特定のデバイスの作製に寄与する。
【0003】
[0004]より多くのデバイスサイズが90nm未満に縮小するにつれ、原子層堆積、すなわちALD処理が、銅相互接続用のバリアの堆積、タングステン核形成層の作成、および高伝導誘電体の生産などの様々な用途に対し引き続き必要とされている。ALD処理では、2つ以上の前駆体ガスがパルス状に送出され、真空に維持された処理チャンバー内でウェーハ表面上を流動する。2つ以上の前駆体ガスは、交互にまたは連続して流動し、それによってガスがウェーハ表面上のサイトまたは官能基と反応することができる。利用可能なサイトがすべて、前駆体ガスの1つ(例えば、ガスA)で飽和すると、反応は停止し、パージガスが処理チャンバーから過剰な前駆体分子をパージするために使用される。この処理は、ウェーハ表面上に次の前駆体ガス(すなわち、ガスB)が流動すると繰り返される。2つの前駆体ガスを伴う処理について、サイクルは、前駆体Aの1つのパルス、パージ、前駆体Bの1つのパルス、およびパージとして規定され得る。サイクルは、さらなる前駆体ガスのパルス、ならびに1つの前駆体ガスの繰り返しを含み、前駆体ガスの連続するパルス間でパージガスを使用する。このシーケンスは、最終的な厚さに達するまで繰り返される。これらの連続した、自己制御式表面反応により、1サイクル当たり1つの単分子層の堆積膜が得られる。
【0004】
[0005]処理チャンバー内への前駆体ガスのパルスは、それぞれのパルスを用いて処理チャンバー内へ所望量(質量)の前駆体ガスを送出するために所定の期間、単に開いているオン/オフタイプの弁を使用して、通常制御される。別法として、トランスデューサ、制御弁、ならびに、制御および信号処理電子装置を備える自己完結型機器である質量流動コントローラが、短い時間間隔で所定の再現性のある流速で、ある量のガス(質量)を送出するために使用される。どちらの場合も、処理チャンバー内に流れ込む材料の量(質量)は、実際には測定されず、理想気体の法則のパラメータの測定から推測される。
【0005】
[0006]半導体処理チャンバーおよび他の処理ツール内への前駆体ガスのパルス状の質量流動を測定し送出することができる、パルスガス送出(PGD)機器として知られているシステムが開発されている。そうした機器は、原子層堆積(ALD)処理などの半導体製造プロセスで使用するため、再現性のある正確な量(質量)のガスを供給するように設計されている。
【0006】
[0007]PGDは、通常、処理チャンバーまたはツールの上流に、ALD処理中に送出されるガスを収容する送出貯蔵部またはチャンバーを含む。送出チャンバー内のガスの圧力および温度を測定し、送出中にチャンバー内のガスの圧力降下に応じて送出チャンバーからのガスの流動を制御することによって、ALD中に送出されるガスのパルスの質量を、正確に制御することができる。チャンバーからのガスのパルスの流動は、PGDの送出チャンバーとガスを受け取る処理ツールとの間にあるオン/オフタイプの出口弁を用いて制御される。弁が所与の質量のガスのパルスを送出するために開いていることが必要な時間の量は、チャンバー内のガスの始動圧力、および処理チャンバーまたはツールの下流の圧力のさらなる関数である。例えば、送出される必要のある所与の量のガスに対して、質量流動はより高い始動圧力ではより速やかに生じるので、より高い始動圧力にある送出チャンバー内の始動圧力では、より低い始動圧力の場合よりも、弁が開いている時間が短いことが必要である。PGDの充填期間および送出期間は、所定量のガス(複数可)を正確に送出することを保証するために、高速パルスガス送出用途に対しては厳密に制御されるべきである。結果として、PGDの上流の圧力ならびにPGD内の充填圧力が、ALD処理の再現性および精度要求を満たすために厳密に制御されるべきである。
【0007】
[0008]さらに、PGD内の入口弁および出口弁は、各弁がチャンバーを充填またはガスパルスを送出するように命令を受けたときに、ある状態(オン/オフ)から別の状態(オフ/オン)に移行するための有限の応答時間を有する。例えば、ALD用途における気圧式の遮閉弁の典型的な応答時間は、約5〜35ミリ秒の間にある。弁の応答時間は、PGDコントローラによって送られた弁コマンドに対する応答に遅延をもたらす可能性があり、このことによって、
図2で示されるように、PGDチャンバーの過剰充填、または処理チャンバーもしくはツールへのガスパルスの過剰送出を引き起こす。例えば、PGDの充填モードでは、ガスがPGDの送出チャンバーに入るように、出口弁が閉じ、入口弁が開き、PGDコントローラが圧力変化をモニターする。PGDコントローラは、入口弁の応答時間(または遅延)を考慮することによって、送出チャンバーが圧力設定値に達する前に、いち早く入口弁に遮蔽コマンドを送る必要があり、さもないと、送出チャンバーが過剰充填される可能性があり、または送出チャンバーの圧力が設定値を超える。
【0008】
[0009]つい最近、高速パルス処理または時分割多重処理を必要とするある処理が最近開発された。例えば、半導体業界は、ダイとダイおよびウェーハとウェーハを積み重ねるために相互接続することができる先進の3D集積回路のシリコン貫通電極(TSV)を開発している。製造業者は、現在、等しく広範囲のTSVエッチング要求を示す幅広い様々な3D集積化スキームを考えている。メモリデバイスおよびMEMSの生産における深いシリコンエッチングに対して広範囲に使用されているボッシュ(Bosch)処理などのプラズマエッチング技術は、TSV作成によく適している。高速パルスエッチングまたは時分割多重エッチングとしても知られているボッシュ処理は、SF
6を使用してほぼ垂直の構造を実現するモードとC
4F
8を使用して化学的に不活性な保護層の堆積を実現するモードとの2つのモードを、交互に繰り返す。商業的に成功するために必要とされるTSVの目標は、十分な機能性、低コストおよび立証された信頼性である。
【0009】
[0010]現在、ボッシュ処理において高速パルスガスを送出するために2つの従来技術の手法がある。第1の従来技術の手法は、送出パルスガスのガス流動をオンおよびオフするために高速応答の質量流動コントローラ(MFC)を使用することである。この方法は、送出スピードが遅い、再現性が悪く精度が劣るという問題がある。第2の従来技術の手法は、下流の三方弁と結合されたMFCを使用することを含む。MFCは一定の流動を維持し、下流の三方弁は、処理チャンバーにパルスガスを送出するために処理配管と迂回ダンプ配管との間で頻繁に切り替わる。多くのガスが浪費され、このことにより処理コストが増加することは明かである。また、第2の方法は、送出の再現性および精度の問題を抱える。したがって、これらの問題を低減するまたは克服する、TSV作成に使用されるボッシュ処理などの、高速パルス送出用途に対する解決策を提供することが望ましい。
関連技術の説明
[0011]パルス質量流動送出システムの例は、米国特許第7615120号、第7628860号、第7662233号および第7735452号、ならびに米国特許出願第2006/00601139号および第2006/0130755号に見出すことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0012]上で論じたように、送出チャンバーの始動チャンバー圧力は、パルスガス送出の再現性にとって重要である。したがって、パルスガス送出の前に始動チャンバー圧力の変動を厳密に制御することによって、ガスパルス送出の再現性を改善することができる。
【0011】
[0013]したがって、本明細書に記載される教示の一態様によれば、処理チャンバーまたはツールに所望の質量のガスのパルスを送出するためのシステムは、ガス送出チャンバーと、ガス送出チャンバー内へのガスの流動を制御するように配置された第1の弁と、ガスがガス送出チャンバーをパルス状に離れることができるようにガス送出チャンバーを離れるガスの流動を制御するように配置された第2の弁であって、選択された質量のそれぞれがガス送出チャンバー内のガスの初期圧およびそれぞれのパルスの持続期間の関数である、第2の弁と、ガス送出チャンバー内へのガスの流動を制御し、ガスのパルスを送出する前にガス送出チャンバー内のガスを初期圧設定値にまであらかじめ充填するように構成され、配置され、それによってガス送出チャンバー内のガスの始動圧力の変動が、ガスのパルスを送出する前に制御され、質量送出の再現性がパルスのそれぞれの持続期間に応じて改善される、圧力制御装置とを備える。本明細書に記載される教示の別の態様によれば、ツールに所望の質量のガスのパルスを送出する方法は、
ガス送出チャンバー内へのガスの流動を制御し、ガスがガス送出チャンバーをパルス状に離れることができるようにガス送出チャンバーを離れるガスの流動を制御するステップであって、選択された質量のそれぞれがガス送出チャンバー内のガスの初期圧およびそれぞれのパルスの持続期間の関数である、ステップと、ガスのパルスを送出する前にガス送出チャンバー内のガスを初期圧設定値にまであらかじめ充填し、それによってガス送出チャンバー内のガスの始動圧力の変動がガスのパルスを送出する前に制御され、質量送出の再現性がパルスのそれぞれの持続期間に応じて改善される、ステップと
を含む。
【0012】
[0014]ここで、これら、ならびに他の構成要素、ステップ、特徴、目的、恩恵および利点は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明、添付の図面および特許請求の範囲を精査することにより明らかになるであろう。
【0013】
[0015]図面は、例示的な実施形態を開示する。それらは、すべての実施形態を説明するとは限らない。他の実施形態が追加でまたは代わりに使用されることがある。明白である、もしくは不必要である可能性がある詳細は、スペースを節約し、またはより効果的な説明のために省略されることがある。反対に、一部の実施形態は、開示される詳細のすべてがない状態で実行され得る。同一の数字が異なる図面に現われる場合、その数字は、同一のもしくは類似の構成要素またはステップを指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】[0016]高速パルス送出を行うためのガス送出システムの一実施形態のブロック図である。
【
図2】[0017]
図1に示されるPGDのチャンバー内の圧力対送出チャンバーからのガスのパルスの送出中の時間を示すグラフである。
【
図3】[0018]ガスのソースおよび処理ツールに結合されたシステムの使用に関するブロック図である。
【
図4】[0019]
図1に示されるタイプのガス送出システムを組み込んだALDシステムの部分的なブロックの部分的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0020]次に例示的な実施形態について論じる。他の実施形態が、追加でまたは代わりに使用されることがある。明白な、もしくは不必要な可能性がある場合、スペースを節約し、またはより効果的な提示を行うために詳細が省略されることがある。反対に、一部の実施形態は、開示される詳細のすべてがなくても実行され得る。
【0016】
[0021]
図1は、ガスの高速パルス送出を実現するために構築されたシステムの一実施形態のブロック図を示す。システム10およびこのシステムを使用することによって実行される方法は、半導体処理チャンバーまたはプラズマエッチングマシンなどの半導体ツールに、汚染物質なしの、正確に計量された量の処理ガスを送出するように特に意図されている。ガス送出システム10は、半導体ツールに流入する材料の量(質量)を確実に測定し、信頼性のある再現性のある方法で、比較的短い持続期間のパルスでガスの質量の正確な送出を提供する。さらに、システムは、より単純化された動作を用いるが、ガスを迂回させる必要なしに、広範囲の値にわたって所望のモル数のガスの送出を提供し、正確で、信頼性のある、再現性のある結果を達成する。
【0017】
[0022]
図1において、図示されるシステム10は、ガス送出チャンバーまたは貯蔵部12、ガス送出チャンバー12への質量流動を制御する入口弁14、およびチャンバー12からの質量流動を制御する出口弁16を含む。例示された実施形態において、入口弁および出口弁は、比較的高速の遮蔽応答、すなわち、明らかに変わり得るが、約1〜5ミリ秒の開放状態からの閉鎖状態への遷移を有する遮閉弁である。
【0018】
[0023]また、質量流動送出システム10は、チャンバー12内の圧力の測定値を表す信号を供給するための圧力センサーまたはトランスデューサ18、およびチャンバー12上の、またはチャンバー12内の温度の測定値を表す信号を供給するための温度センサー20を有する。本開示の例示的な一実施形態によれば、温度センサー20は、チャンバー12の壁に接触し、チャンバー12の壁の温度の測定値を提供する。
【0019】
[0024]所望の質量流動を表わす信号は、パルス送出コントローラ24の入力部22に供給される。また、コントローラ24は、圧力トランスデューサ18および温度センサー20によってそれぞれ測定された圧力および温度を表す入力を受け取る。また、入力部22は、他の処理命令および様々な状態を表わす信号を受け取ることができる。また、システムは、入口弁14および出口弁16の動作をそれぞれ制御するために使用される制御信号を供給するための1つまたは複数の出力部26および28を含む。以降でより明らかになるように、入口弁14を開けるために使用される制御信号の持続期間は、ガスのパルスを送出する前に送出チャンバー12において所望される圧力のレベルの関数であり、出口弁16を開けるために使用される制御信号の持続期間は、出口弁を介して送出されるガスのパルスの持続期間(これは、送出されるガスの質量と相互に関連する)の関数である。
【0020】
[0025]高速パルスモル送出のためのより包括的な解決策を提供し、送出サイクルを速め、極めて高速のパルスモード送出動作を可能とし、パルスモード送出ドーズ量の範囲および精度を改善し、システムのユーザーにとって操作の複雑さを低減するために、システムは、弁16を介してツールへガスを送出する前に送出チャンバー12内の始動圧力をより制御するように構成された追加の構成要素をさらに含み、それによって、チャンバー12からの測定された流量がより正確で再現性がよくなり、より短いパルスレートでの操作が可能となる。
【0021】
[0026]
図1に例示する実施形態において示されるように、システム10は、入口弁14を介して送出されるガスを保持するためのバッファーチャンバーまたは貯蔵部40をさらに含み、それによってチャンバー12の圧力を、出口弁16を介して1回のドーズ量または一連のドーズ量のガスを送出する前に、所定のレベルにまであらかじめ充填しておくことができる。ガスソース52から副チャンバーまたはバッファーチャンバー40内へのガス、および副チャンバーまたはバッファーチャンバー40から出るガスを制御するために、制御弁42がバッファーチャンバー40の入力部に設けられ、ガスのソースからチャンバー40内へのガスの流動を制御する。入口制御弁42は、チャンバー40内の圧力を実質的に一定の所定のレベルで維持するように制御されるようになされた比例制御弁であってよい。入口制御弁42は、ガスが入口弁14を介してチャンバー40からチャンバー12内へ供給される事前充填ステップ中は開いた状態のままであり、ガスが入口弁14介してチャンバー40からチャンバー12内へ流れると閉じたままとなり得る。さらに、入口制御弁42は、ガスが処理チャンバーに送出されているかどうかにかかわらずチャンバー内の圧力が維持されるように、制御され得る。圧力センサーまたはトランスデューサ44は、チャンバー40内の圧力を表す信号を供給する。圧力を表す信号は、圧力コントローラ46に供給され、圧力測定値に応じて入口弁42に制御信号を供給するように接続される。最後に、主パルスガス送出コントローラ48がシステム全体を制御するために設けられている。
【0022】
[0027]コントローラ48は、コントローラ24および46のそれぞれへのデータおよび命令ならびにコントローラ24および46のそれぞれからのデータおよび命令、さらにユーザーインターフェース50へのデータおよび命令ならびにユーザーインターフェース50からのデータおよび命令を提供するように構成される。ユーザーインターフェース50は、オペレータがこのインターフェースを使用してガス送出システム10を操作することができるように構成された、キーボードおよびモニターを含むコンピュータなどの任意の適切な機器であってよい。3つのプロセッサ24、46および48が示されているが、システムは、3つの例示されたコントローラの機能を実行するために任意の数のコントローラを用いて動作することができることは明らかなはずであり、単一の機器がより効率的である。バッファーチャンバー40は、ソース52から受け取るガスを収容するために容積V
1を有する。チャンバー40内に供給されるガスは、チャンバー12へ供給されるガスの上流圧力P
1を制御するために使用される。したがって、チャンバー12内のガスまたは気体の容積V
2の始動圧力P
2を制御することができる。こうして、各パルスを送出する前に容積V
2の初期充填圧力P
2の変動を最小限にすることができる。バッファーチャンバー40のバッファー容積V
1におけるガスの圧力設定値は、ユーザーインターフェース50を介してユーザーによって確立されるガスタイプ、パルスガス送出量設定値の関数であり、具体的には、
P
1,SP=function1(gas_type, pulse_gas_delivery_setpoint) (1)
式中、P
1,SPは、バッファーチャンバーの圧力設定値であり、gas_typeは、分子量、熱容量、熱伝導率および粘性などの送出されるガスの特性であり、pulse_gas_delivery_setpointは、各ドーズに対するパルスガス送出量の設定値である。
【0023】
[0028]
図2を参照すると、グラフは、チャンバーが1つまたは複数のガスのパルスを送出する前に所定の圧力レベルにまで充填され、次いでパルスの送出中にガスが出口弁16を介して送出チャンバー12から排出されるときの送出チャンバー12内の圧力の変化を示す。
【0024】
[0029]具体的には、時刻t
0の前に、入口弁42は、バッファーチャンバー40内の圧力P
1が式(1)で規定されるような所定のレベルにまで調整されるようにアクティブに制御される。時刻t
0において、出口弁16が閉じられ、入口弁14が開けられ、それによって、ガスが、ユーザーインターフェース50を介して提供される入力に基づいて、パルスガス送出コントローラ48によって確立される所定の圧力P
2,SPになるまでチャンバー12内へ流入する。具体的には、
P
2,SP=function2(gas_type, pulse_gas_delivery_setpoint) (2)
式中、P
2,SPは、送出チャンバーの圧力設定値であり、gas_typeは、分子量、熱容量、熱伝導率および粘性などの送出されるガスの特性であり、pulse_gas_delivery_setpointは、各ドーズに対するパルスガス送出量の設定値である。
【0025】
[0030]所定の圧力P
2,SPに達すると、入口弁14が時刻t
1で閉じられる。
図2でわかるように、過剰充填(または圧力におけるオバーシュート)が時間間隔Δt
1(入口弁が完全に閉じるのにかかる時間)の間に生じると、その時間間隔Δt
1中に、圧力が上昇し、次いで静止レベルにまで降下する。圧力を落ち着かせることができる。こうしてシステムは充填され、出口弁16を介してパルスとして送出される所定のモル量のガスを送出する準備がなされ、この出口弁16が、時刻t
2において所定量の時間開き、プログラムされたモル量が送出されてしまうと時刻t
3において閉じる。
図2でわかるように、出口弁が、時刻t
3で閉じるように命令された場合、完全に閉まるのに有限の時間量Δt
2がかかる。結果として、チャンバー内のガスが図示されるような最終的な圧力P
fに落ち着く前に、ガスのなんらかのオバーシュート(過剰送出)がやはり存在することになる。次いで、サイクルは、繰り返され、バッファーチャンバー40内のガスを使用して次のパルスを送出する前に送出チャンバー12を充填することができる。
【0026】
[0031]
図2におけるt
2とt
2との間に送出されるパルスガスの量Δnは、次式によって解析され得る。
【0028】
式中、Qは、出口弁16を通る流速、
C
vまたはC
v(t)は、弁が開くまたは閉じる時間の関数である弁のコンダクタンス、
C
voは、完全に開いたときの弁のコンダクタンス、
IC
vは、t
3からt
4までの弁が閉じている期間の弁コンダクタンスの積分値、
Pは、送出チャンバー12内の圧力、
P
fは、最終的な送出チャンバーの圧力、
P
dは、送出チャンバー12の下流の圧力である。
【0029】
[0032]図示されているように、IC
v*(P
f−P
d)の項は、モル単位での過剰送出の量を規定する。IC
vは、実際には確率変数である、すなわち、出口弁の閉鎖時間が確率変数であることに留意されたい。システムが、所定の一定圧力P
1,SPを有する(40などの)バッファーチャンバーからのガスによってチャンバー12をあらかじめ充填することが行われない場合、始動送出チャンバー圧力P
2が変動する可能性があり、それによって、P
fの最終的なチャンバー圧力値がサイクル間で変動するため、この誤差量が変動することになる。始動圧力が高いほど、誤差の影響がより大きくなる。チャンバー40のバッファー容積を使用することによって、チャンバー40によって送出チャンバー12へ供給される上流圧力は、チャンバー12内の充填圧力の変動が極めて制御された一定の上流圧力によって最小化されるような圧力である。これによって、確実に、誤差IC
v*(P
f−P
d)がより小さな誤差の範囲に制限される。誤差をより小さな誤差の範囲内になるように制限することによって、再現性のある方法で誤差に対するよりよい補償を行うことが可能となり、それによって、より正確に精度のよいガスの量を送出できる。ガスタイプおよびパルスガス送出設定値の関数として、比較的一定圧力内にある上流の容積を提供することによって、システムにチャンバー12内の充填圧力を厳密に制御させることが可能となる。したがって、充填圧力の変動が最小化され、また、これによって弁の時間の不確実性によって引き起こされるパルスガス送出に対する再現性誤差が最小化された。
【0030】
[0033]パルス送出システムに対する1つの用途は、100で示される半導体ツールに提供されるパルスを制御するために、
図3に10Aで全体的に示されるパルス送出システムを使用することである。
【0031】
[0034]別の用途は、化学気相堆積(CVD)処理に使用される、米国特許第7615120号に記載されるタイプなどの、原子層堆積システム110の2つ以上のパルス送出システム(2つが、
図4の10Bおよび10Cで示されている)を使用することである。例えば、そうしたシステムでは、システム10Aおよび10Bそれぞれが、ALD(原子層堆積)反応器110に供給される前駆体ガスのパルスを制御するために使用される。具体的には、ガスは、システム10Bまたは10Cのどちらかから混合マニホールド112に供給される。混合マニホールド112は、システム10Bおよび10Cからのガスを導入するため2つの入口を有する。キャリアガスは、導入されて、混合マニホールドにおいてその流れが分割される。キャリアガスは、典型的には窒素などの不活性ガスである。示した例において、化学物質Aは、システム10Cによって供給される前駆体であり、化学物質Bは、システム10Bによって供給される前駆体である。キャリアガスおよび前駆体ガスは、混合され、混合ガスのプラズマを形成するためプラズマ形成ゾーン114に供給される。
【0032】
[0035]このプラズマは、ALD反応器110内にガスを分布させるガスディストリビューター116に供給される。ウェーハ118は、ウェーハ支持体120上に配置され、両方ともヒーター122によって加熱される。スロットル弁124およびポンプ126は、反応器110内の真空を制御し、処理中にシステム10Bおよび10Cから供給されるガスを排出するために使用される。
【0033】
[0036]説明したように、ガス送出システム10は、半導体ツールに流入する材料の量(質量)を確実に測定し、信頼性のある再現性のある方法で比較的短い持続期間のパルスでガスの質量の正確な送出を行う。さらに、システムは、より簡略化された動作を用いるが、正確で、信頼性があり、再現性のある結果を達成するためにガスを迂回させる必要なしに、広範囲の値にわたって所望のモル数のガスの送出を提供する。
【0034】
[0037]論じた構成要素、ステップ、特徴、目的、恩恵および利点は、単に例示である。それらのいずれも、または、それらに関する議論は、いかなる方法でも保護の範囲を限定するようには意図されていない。数多くの他の実施形態も考えられる。これらには、追加のおよび/または異なる構成要素、ステップ、特徴、目的、恩恵および利点をわずかしか有さない実施形態が含まれる。また、これらには、構成要素および/またはステップが様々に配置され、および/または順序づけられる実施形態が含まれる。
【0035】
[0038]特に断らない限り、本明細書で説明されて、後に続く特許請求の範囲に含まれるすべての測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズおよび他の仕様は、近似であり、正確ではない。それらは、それらが関連する機能、およびそれらが関係する当技術分野において慣例的なことと一致する合理的な範囲を有することが意図されている。
【0036】
[0039]本開示で引用された論文、特許、特許出願および他の出版物はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
[0040]「のための手段」という語句は、請求項において使用される場合、記載された対応する構造および材料、ならびにそれらの均等物を包含することが意図されており、そのように解釈されるべきである。同様に、「のためのステップ」という語句は、請求項において使用される場合、記載された対応する行為、ならびにそれらの均等物を包含することが意図されており、そのように解釈されるべきである。請求項におけるこれらの語句の欠如は、その請求項が、対応する構造、材料、もしくは行為のいずれか、またはそれらの均等物に限定されることが意図されておらず、そのように解釈されるべきでないことを意味する。
【0037】
[0041]述べられたまたは示されたものはいずれも、いずれの構成要素、ステップ、目的、恩恵、利点、または均等物も、それが特許請求の範囲において列挙されているかどうかにかかわらず、公に開放することが意図されておらず、そのように解釈されるべきでない。
【0038】
[0042]保護の範囲は、もっぱら添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書、および続く出願経過に照らして解釈されたとき、特許請求の範囲において使用される文言の通常の意味と一致しているのと同じくらい広く、かつ構造的な均等物および機能的な均等物をすべて包含することが意図されており、そのように解釈されるべきである。