(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788521
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20150910BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
H04N5/74 G
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-538402(P2013-538402)
(86)(22)【出願日】2011年10月13日
(86)【国際出願番号】JP2011073593
(87)【国際公開番号】WO2013054427
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上岡 和雅
(72)【発明者】
【氏名】乾 真朗
(72)【発明者】
【氏名】小野 長平
(72)【発明者】
【氏名】金子 一臣
【審査官】
田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−344767(JP,A)
【文献】
特開2001−021990(JP,A)
【文献】
特開2008−164917(JP,A)
【文献】
特開2004−062000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00−21/10
21/134−21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子にて形成された映像を投写する投写型映像表示装置において、
光源から出射された光を前記表示素子に照射して映像を形成する光学エンジンと、
該光学エンジンから出射された映像を拡大投写する投写光学系と、
前記光学エンジンと前記投写光学系を一体に保持する共通ベースを備え、
前記光学エンジンと前記投写光学系を前記共通ベースのみを介して当該装置の筐体に取り付ける構成であって、
前記共通ベースには、前記光学エンジンからの映像光を通過し前記投写光学系の入射側を固定するための起立した固定枠を有し、
前記共通ベースの底面を、前記固定枠の脚部近傍に設けた複数の固定部にて前記筐体に取り付けたことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の投写型映像表示装置において、
前記光学エンジンは、前記光源と、該光源からの出射光を3原色に分離する色分離光学系と、前記表示素子にて各色用の映像を形成し各映像を合成する色合成光学系とを有し、
前記投写光学系は、前記色合成光学系から出射された映像を拡大投写する投写レンズと、該投写レンズを保持し投写光の光軸と直交する方向に移動させるレンズシフト機構とを有し、
前記共通ベースには、前記光源と前記色分離光学系を収納する筒状のライトガイドの出射端部と、前記色合成光学系と、前記レンズシフト機構を固定したことを特徴とする投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタなどの投写型映像表示装置は、水銀ランプ等の光源から発せられた光を液晶パネルなどの表示素子に照射し、表示素子で形成された映像を投写レンズにてスクリーンへ拡大投写するものである。装置の光学系の構成は、光源から出射された光を液晶パネルに照射して映像を形成するまでの光学ユニット(以下、光学エンジンと呼ぶ)と、液晶パネルで形成された映像を投写レンズで拡大投写する投写光学系からなる。カラー映像表示装置の光学エンジンでは、表示素子として3原色(RGB)用の3枚の液晶パネルと、照射光の色分離系と各映像色の色合成系が設けられている。また投写光学系には、スクリーン上の映像表示位置を調整するために、投写レンズを光軸と直角方向に移動させるレンズシフト機構が設けられている。
【0003】
光学エンジンと投写光学系は、互いに位置決めして装置の筐体に収納される。従来の収納方法は、例えば特許文献1に記載されるように、光源を含む光学エンジンの各部品は、光学部品用筐体であるライトガイドに収納配置され、ライトガイドは装置筐体に固定される。また投写光学系は、ライトガイドの出射端部に接合固定される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−240024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来の構造では、光学エンジンの各部品は、光学部品用筐体であるライトガイドに収納されて筐体に固定されている。ライトガイドは収納する各光学部品の形状に合わせた複雑な内部構造となっており、一般に合成樹脂材を用いて射出成型等により製造される。従って、ライトガイド自身は金属材と比較して強度的に限界があり変形しやすく、またライトガイドが装置筐体に固定されている結果、筐体が外力を受けて変形した場合にライトガイドにも変形が及ぶことになる。これらの結果、ライトガイドに収納される各光学部品間の位置精度が悪化し、さらに投写光学系との位置関係がずれることで、スクリーンに表示される映像の品質が悪化(輝度むら、色ずれ等が発生)してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、外力を受けても光学エンジンの各部品と投写光学系の位置精度を維持し、表示映像の品質を悪化させない投写型映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表示素子にて形成された映像を投写する投写型映像表示装置において、光源から出射された光を前記表示素子に照射して映像を形成する光学エンジンと、該光学エンジンから出射された映像を拡大投写する投写光学系を備え、前記光学エンジンと前記投写光学系を一体に保持する共通ベースに固定し、該共通ベースを当該装置の筐体に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外力等を受けても各光学部品の位置精度を維持し、表示される映像の品質が悪化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例の投写型映像表示装置の全体構成を示す図。
【
図3】光学エンジンと投写光学系を共通ベースから取り外した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本実施例の投写型映像表示装置の全体構成を示す図であり、表示装置の筐体上蓋を外した内部構成を示している。筐体1には、光源から光を出射し表示素子である液晶パネルに照射して映像を形成する光学エンジン2と、液晶パネルで形成された映像を投写レンズで拡大投写する投写光学系3が収納されている。これ以外に、電源ユニット6と冷却ユニット7、図示しない映像信号回路や制御回路などが収納される。
【0011】
図2と
図3は、光学エンジン2と投写光学系3の構成を示す図である。
図2は、光学エンジン2と投写光学系3を筐体1から取り出した状態を示す図である。光学エンジン2と投写光学系3は、共通ベース4に搭載され固定されている。
また
図3は、光学エンジン2と投写光学系3を共通ベース4から取り外した状態を示す図である。なお、
図3では投写レンズ31を省略している。
【0012】
光学エンジン2は、光源部21、色分離光学系22、色合成光学系23で構成される。これらの部品は、筒状のライトガイド20に収納され所定の位置に固定されている。光源部21には超高圧水銀ランプ等の光源を使用し、略白色光を出射する。色分離光学系22は略白色光をRGBの3原色光に分離し、対応する各液晶パネルに導く。色合成光学系23は、RGBの液晶パネル231とクロスダイクロイックプリズム232を有し、RGB信号に基づく各映像を形成し、これら映像の色合成を行う。
【0013】
投写光学系3は、投写レンズ31とレンズシフト機構32で構成される。色合成光学系23から出射した映像光は、投写レンズ31によって拡大されスクリーン等へ投写される。レンズシフト機構32は、投写レンズ31を保持し光軸(投写方向)に直交する2軸方向に移動させるもので、水平方向(X方向)駆動部32xと垂直方向(Y方向)駆動部32yを有する。レンズシフト機構32のレンズ取り付け面32aには投写レンズ31を固定する。これにより、スクリーン上に投写される画像位置を水平方向と垂直方向に移動調整することができる。
【0014】
本実施例では、光学エンジン2と投写光学系3は、共通ベース4に一体的に固定された状態で筐体1に取り付ける。具体的には、共通ベース4には光学エンジン2の筒状のライトガイド20の出射端部と色合成光学系23を固定し、また投写光学系3のレンズシフト機構32を固定する。
【0015】
図4は、共通ベース4の形状を示す斜視図である。共通ベース4は、中央に起立する固定枠41とその両側に台座部42,43を有し、アルミダイキャスト法等で製造し剛性が高く変形しにくい部材としている。固定枠41には光学エンジン2からの映像光が通過する開口部44を有する。台座部42には光学エンジン2を搭載し、台座部43には投写光学系3のレンズシフト機構32を搭載し、これらを一体的に固定する。
【0016】
詳細に言えば、台座部42に搭載する光学エンジン2については、台座部42に固定するのはライトガイド20の出射端部と色合成光学系23に限定し、固定部51(本実施例では3箇所)にネジ止め固定する。その理由は、光学エンジン2は光源部21から色合成光学系23まで多数の光学部品が存在し、これらを収納するライトガイド20の寸法(光路長)が大きくなる。全体を固定する場合、共通ベース4が大型化し、剛性の確保が困難でありかつ質量が増すため、光学エンジン2(ライトガイド20)全体を台座部42に固定するのは得策ではないからである。
【0017】
また台座部43に搭載する投写光学系3については、レンズシフト機構32の入射側を起立する固定枠41に固定し、投写レンズ31はレンズシフト機構32の出射側のレンズ取り付け面32aで保持する。
【0018】
共通ベース4の底面には、共通ベース4を筐体1に取り付けるための固定部50(
図4の例では5箇所)を有する。これらの固定部50は筐体1の変形が光学エンジン2、色合成光学系23に及ぶことを防止するため
、固定枠41の脚部近傍に設ける。
【0019】
共通ベース4の台座部42には、ライトガイド20の端部を取り付けるための固定部51(
図4の例では3箇所)と、色合成光学系23を取り付けるための固定部52(
図4の例では2箇所)を有する。さらに共通ベース4の固定枠41には、レンズシフト機構32を取り付けるための固定部53(
図4の例では4箇所)を有する。
【0020】
以上の構成によれば、光学エンジン2と投写光学系3は一体的に共通ベース4に固定され、筐体1には共通ベース4のみを取り付ける構成としている。つまり、光学エンジン2と投写光学系3は筐体1に直接固定されていないので、外力により筐体1が変形したとしても、剛性の高い共通ベース4により変形は阻止され、その影響を直接受けることはない。さらに、共通ベース4に固定する光学エンジン2(ライトガイド20)を出射端部に限定したので、ライトガイド20の本体部には外力が印加されにくく、これに収納される各光学部品は所定の位置に所定の精度で保持される。さらに、光学エンジン2と投写光学系3は、剛性の高い共通ベース4に固定されているので、両者の位置関係がずれることはない。従って、本実施例の構成によれば、外力等を受けても各光学部品の位置精度を保持し、表示される映像の品質が悪化(輝度むら、色ずれ等が発生)することを防止することができる。
【符号の説明】
【0021】
1…筐体、
2…光学エンジン、
3…投写光学系、
4…共通ベース、
20…ライトガイド、
21…光源部、
22…色分離光学系、
23…色合成光学系、
231…液晶パネル、
232…クロスダイクロイックプリズム、
31…投写レンズ、
32…レンズシフト機構、
32a…レンズ取り付け面、
41…固定枠、
42,43…台座、
44…開口部、
50〜53…固定部。