(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788544
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】流路を形成した部材を備えた回転テーブル
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/28 20060101AFI20150910BHJP
B23Q 16/10 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
B23Q1/28 C
B23Q16/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-12589(P2014-12589)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-139834(P2015-139834A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年2月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】手塚 博樹
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−074232(JP,U)
【文献】
実開昭63−176050(JP,U)
【文献】
特開昭63−77641(JP,A)
【文献】
特許第4422187(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00−1/76,16/00−16/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、該回転軸の一端に連結されたワーク載置用テーブルと、該ワーク載置用テーブルを停止位置に保持するためのクランプ装置と、前記クランプ装置の切換え動作を行う切換え弁を回転テーブルのケース内に設置する回転テーブルにおいて、
圧力流体供給用の流路を内包し、前記クランプ装置と前記切換え弁の間に取付けられる部材を備え、
前記クランプ装置と前記部材との境界、および、前記部材と前記切り換え弁との境界を気密シールにより気密して前記クランプ装置と前記切換え弁の流路を前記部材の流路を介して連通させることを特徴とした回転テーブル。
【請求項2】
前記部材の流路は、同一部材内に複数設けられていることを特徴とした請求項1に記載の回転テーブル。
【請求項3】
回転軸と、該回転軸の一端に連結されたワーク載置用テーブルと、該ワーク載置用テーブルを停止位置に保持するためのクランプ装置と、前記クランプ装置の切換え動作を行う切換え弁を回転テーブルのケース内に設置する回転テーブルにおいて、
圧力流体供給用の流路を内包し、前記ケースと前記切換え弁の間に取付けられる部材を備え、
前記クランプ装置と前記切換え弁を、前記部材および圧力流体供給用の流路を内包した前記ケースにより連結し、
前記クランプ装置と前記ケースとの境界、前記ケースと前記部材との境界、および、前記部材と前記切換え弁との境界を気密シールにより気密して前記クランプ装置と前記切換え弁の流路を前記ケースの流路および前記部材の流路を介して連通させることを特徴とした回転テーブル。
【請求項4】
前記部材の流路および前記ケースの流路は、それぞれ同一部材内に複数設けられていることを特徴とした請求項3に記載の回転テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械上に搭載する回転テーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の回転テーブルは、割出動作を行った際に、割出角度を保持するためのクランプ(ブレーキ)装置を備えている。クランプ装置内のピストンを回転軸に固定されたブレーキディスクに押圧することにより、ブレーキディスクがクランプ(保持)されてロック状態となり、回転軸の角度が保持される。工作機械の回転テーブルの例としては特許文献1に記載のテーブルが知られている。
【0003】
図5は回転テーブルの基本構造を示す詳細断面図である。回転テーブルのシャフト2aは、ケース1内に主軸受3a、及び支持軸受3bを介して、回転自在に支承されている。
【0004】
モータのステータ4b、ブレーキのシリンダ7b、センサヘッド5b、リッド8はケースに固定され、モータのロータ4a、センサギア5a、ディスク6は何れも回転テーブルと一体的に回転可能な様に、シャフト2aに固定される。
【0005】
ピストン7aは、シール部材7c〜7eを介して、シリンダ7b内に前進及び後退可能なストロークを備えて設置され、クランプ側へピストン7aが移動する方向へ複数のコイルバネ7hによって付勢されると共に、圧縮空気によって移動可能なように、ピストン7aとシリンダ7b間に前進用空気室7fと後退用空気室7gが設けられている。
【0006】
アンクランプ状態(クランプ解除状態)では、
図5に示されていない電磁弁(切換え弁)によって後退用空気室7gへ圧縮空気が送出され、ピストン7aはコイルバネ7hの圧縮力に抗して後退端へ移動した状態となっている。
【0007】
クランプ状態では、前記電磁弁によって、後退用空気室7gから排気すると同時に前進用空気室7fへ圧縮空気が送出され、ピストン7aが前進して、リッド8上の摩擦面8aとの間でディスク6が挟持される。
【0008】
この回転軸のクランプに必要な力を付与するために、圧力流体(空圧もしくは油圧)が使用され、更にクランプ、アンクランプ状態の切換えには、切換え弁が使用される。この切換え弁は、クランプ装置の近くにある程、ピストンの応答性がよくなるため、回転テーブルの内部に設置させる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4422187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
クランプ・アンクランプ動作の切換えに使用する切換え弁は、ピストン7の応答性向上のため、
図6のように回転テーブル内部(ケース1内)に設置される場合が多く、また通常、切換え弁9とクランプ装置10を繋げるための流路は継手13と配管14により行われる。
【0011】
この場合、クランプ装置10と切換え弁9の間に継手13及び配管14を配置する必要があることから、クランプ装置10及び切換え弁9の保守作業時には、お互いを連結している配管14の取付け取外しを行う必要があるため、保守作業に時間がかかる問題があった。また、クランプ装置10と切換え弁9の配置によっては、配管の取付け・取外しのための作業スペースが必要となる場合もあり、回転テーブルの小型化の障害となることもある。
【0012】
そこで本発明の目的は、クランプ装置と切換え弁の間に継手及び配管を使用せずに、流路を形成した部材を固定することにより、クランプ装置と切換え弁の流路を連通させる流路構造を備えた回転テーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る発明は、回転軸と、該回転軸の一端に連結されたワーク載置用テーブルと、該ワーク載置用テーブルを停止位置に保持するためのクランプ装置と、前記クランプ装置の切換え動作を行う切換え弁を回転テーブルのケース内に設置する回転テーブルにおいて、
圧力流体供給用の流路を内包し、前記クランプ装置と前記切換え弁の間に取付けられる部材を備え、前記クランプ装置と前記部材との境界、および、前記部材と前記切り換え弁との境界を気密シールにより気密して前記クランプ装置と前記切換え弁の流路を前記部材の流路を介して連通させることを特徴とした回転テーブルである。
請求項2に係る発明は、前記
部材の流路は、同一部材内に複数設けられていることを特徴とした請求項1に記載の回転テーブルである。
請求項3に係る発明は、回転軸と、該回転軸の一端に連結されたワーク載置用テーブルと、該ワーク載置用テーブルを停止位置に保持するためのクランプ装置と、前記クランプ装置の切換え動作を行う切換え弁を回転テーブルのケース内に設置する回転テーブルにおいて、
圧力流体供給用の流路を内包し、前記ケースと前記切換え弁の間に取付けられる部材を備え、前記クランプ装置と前記切換え弁を、前記部材および圧力流体供給用の流路を内包した前記ケースにより連結し、前記クランプ装置と前記ケースとの境界、前記ケースと前記部材との境界、および、前記部材と前記切換え弁との境界を気密シールにより気密して前記クランプ装置と前記切換え弁の流路を前記ケースの流路および前記部材の流路を介して連通させることを特徴とした回転テーブルである。
請求項4に係る発明は、前記
部材の流路および前記ケースの流路は、それぞれ同一部材内に複数設けられていることを特徴とした請求項3に記載の回転テーブルである。
【発明の効果】
【0014】
クランプ装置と切換え弁の間に継手及び配管を使用しないため、クランプ装置及び切換え弁の保守が容易な回転テーブルを提供できる。また、配管の取り回しのスペースが必要ないため、回転テーブルの小型化に寄与できる可能性もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1の回転テーブルの断面を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1の回転テーブルの断面を示す図である(
図1と異なる断面を示す図)。
【
図3】本発明の実施形態2の回転テーブルの断面を示す図である。
【
図5】回転テーブル内部の構成を示す詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、従来技術と同様または類似する構成は同じ符号を用いて説明する。
【0017】
<実施形態1>
図1は本発明の実施形態1の回転テーブルの断面を示す図である。
図2は本発明の実施形態1の回転テーブルの断面を示す図である(
図1と異なる断面を示す図)である。
図1,
図2に示されるように、クランプ装置10と切換え弁9の間に、流路を形成した部材(マニホールド11)を取付け、クランプ装置10と切換え弁9の流路を連通させた形態である。マニホールド11と切換え弁9との境界、および、マニホールド11とクランプ装置10との境界は、それぞれ、図示しない気密シール(例えば、Oリング)によりシールされている。マニホールド11は回転テーブルを構成する部品と同種の材質の金属製である。その内部に2つの貫通する孔が設けられ流路が形成されている。マニホールド11はボルトなどの図示しない固定手段によりケース1に固定される。なお、マニホールド11に1つの貫通する孔を設け、流路を形成する実施形態も考えられる。
【0018】
本実施形態においても、従来技術と同様に回転テーブル内に前記切換え弁を設置しているが、継手と配管を使用していない構造をとっている。クランプ装置10と切換え弁9の間に継手及び配管を使用しないため、クランプ装置10及び切換え弁9の保守が容易な回転テーブルを提供できる。また、配管の取り回しのスペースが必要ないため、回転テーブルの小型化に寄与できる。
【0019】
<実施形態2>
また、
図3は、クランプ装置10と切換え弁9の間に、第1の流路を形成した部材(マニホールド11)及び第2の流路を形成した部材(ケース1に流路を形成したもの)を用い、クランプ装置10と切換え弁9の流路を連通させた実施形態である。この実施形態は、
図2のようにクランプ装置10に直接、第1の流路を形成した部材(マニホールド11)を取付けることができない場合に、第1の流路を形成した部材(マニホールド11)および第2の流路を形成した部材(ケース1)を介してクランプ装置10と切換え弁9の流路を連通させた実施形態である。
【0020】
マニホールド11と切換え弁9との境界、マニホールド11とケース1との境界、ケース1とクランプ装置10との境界は、それぞれ、図示しない気密シール(例えば、Oリング)によりシールされている。マニホールド11は回転テーブル1を構成する部品と同種の材質の金属製である。その内部に2つの貫通する孔が設けられ流路が形成されている。マニホールド11はボルトなどの図示しない固定手段によりケース1に固定される。同様に、ケース1にも2つの貫通する孔が設けられている。なお、マニホールド11、ケース1に1つの貫通する孔を設け、流路を形成する実施形態も考えられる。
【0021】
図2、
図3の実施形態では、流路を形成した部材にクランプ装置10と切換え弁9を直接固定するために、継手や配管が必要なく、保守時の煩わしい配管の取付け・取外し作業がないため、クランプ装置10及び切換え弁9の保守作業が容易である。また、継手と配管のスペースを用意する必要がないため、回転テーブルを小型化することも可能である。
【0022】
図4は、
図3の具体的な実施形態である。クランプ装置10をケース1に取付け、切換え弁9はマニホールド11に取付けている。また、マニホールド11をケース1に図示しない固定手段により固定することにより、継手及び配管無しにクランプ装置10と切換え弁9の流路を連通可能にしている。更に切換え弁9を回転テーブルの外側に配置することにより、保守を容易にしている。
【符号の説明】
【0023】
1 ケース
2a シャフト(回転軸)
3a 主軸受
3b 支持軸受
4a ロータ(モータ)
4b ステータ(モータ)
5a センサギア
5b センサヘッド
6 ディスク
7a ピストン
7b シリンダ
7c〜7e シール部材
7f 前進用空気室
7g 後退用空気室
7h コイルバネ
8 蓋(リッド)
8a 摩擦面
9 切換え弁
10 クランプ装置
11 マニホールド
12 流路
13 継手
14 配管