【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成21年8月6日 インターネットアドレス「http://www.jst.go.jp/pr/info/info660/shiryo1.html」に発表
【文献】
BUXTON,G.V. 他,“Critical Review of Rate Constants for Reactions of Hydrated Electrons, Hydrogen Atoms and Hydroxyl,Journal of Physical and Chemical Reference Data,1988年,Volume 17, Issue 2,Pages 513-886 のうち Pages 513-531
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オゾンと、過酸化水素と、水溶性有機物、無機酸、前記無機酸の塩、及び、ヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種以上の添加物質とを純水に溶解させてヒドロキシルラジカル含有水を生成して供給するものであり、オゾンを発生させるオゾン発生装置と、過酸化水素を添加する過酸化水素添加装置と、前記添加物質を添加する薬剤添加装置とを有する生成手段と、
前記生成手段により生成されたヒドロキシルラジカル含有水の1以上の波長での吸光特性を測定することにより、ヒドロキシルラジカル濃度を定量する定量手段と、
前記定量手段によるヒドロキシルラジカル濃度の定量結果に基づいて、前記生成手段により生成するヒドロキシルラジカル含有水のヒドロキシルラジカル濃度を調整する濃度調整手段と、
過酸化水素を添加する前の初期オゾン濃度を測定するオゾン濃度計と、
前記添加物質を添加した後の添加物質濃度を測定する薬剤濃度計と、
過酸化水素を添加した後の最終オゾン濃度を測定するオゾン濃度計と、を備えるヒドロキシルラジカル含有水供給装置であって、
前記濃度調整手段における制御は、前記定量手段によるヒドロキシルラジカル濃度の定量結果が設定値の範囲内でないとき、
前記オゾン濃度計による初期オゾン濃度が、設定範囲内でない場合に、前記オゾン発生装置によるオゾン発生量を調節する制御を行ない、
初期オゾン濃度が設定範囲内の場合には、前記薬剤濃度計による添加物質濃度が設定範囲内でない場合に、前記薬剤添加装置による前記添加物質の添加量を調整する制御を行ない、
前記薬剤濃度計による添加物質濃度が設定範囲内の場合には、前記オゾン濃度計による最終オゾン濃度を設定値と比較して、前記過酸化水素添加装置による過酸化水素の添加量を調節する制御を含むヒドロキシルラジカル含有水供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のTOC成分除去装置は、TOC値を測定しているのであり、ヒドロキシルラジカル濃度は測定していないため、フィードバック制御された結果、所望のヒドロキシルラジカル濃度となっているか否かを直接に知ることはできない。そのため、高精度なヒドロキシルラジカル濃度の制御を期待することはできないといった問題があった。一方、ヒドロキシルラジカル濃度の測定には、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)を利用することができる。しかしながら、ESRにおいては、サンプルを取り出して測定しなければならず、常時、モニタすることはできないばかりか、測定結果をフィードバックさせるシステムに用いるには不適である。さらに、上述したように、半導体材料の製造や食品の殺菌洗浄等の分野においては、洗浄等のために生成したヒドロキシルラジカル含有水の濃度を高精度に測定できることが期待されている。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生成したヒドロキシルラジカル含有水の濃度を高精度にモニタし、好ましくは、濃度制御を精度よく行うことを可能とするヒドロキシルラジカル含有水供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
すなわち、本発明のヒドロキシルラジカル含有水供給装置は、ヒドロキシルラジカル含有水を生成して供給する生成手段と、上記生成手段により生成されたヒドロキシルラジカル含有水の140〜210nmの範囲内における1以上の波長での吸光特性を測定することにより、ヒドロキシルラジカル濃度を定量する定量手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ヒドロキシルラジカル含有水を生成する生成手段により生成されたヒドロキシルラジカル含有水に含まれるヒドロキシルラジカル濃度を、140〜210nmの範囲内における1以上の波長での吸光特性により定量するため、ヒドロキシルラジカル濃度をインラインで直接、且つ、高精度にモニタすることが可能となる。
【0010】
上記構成においては、上記定量手段によるヒドロキシルラジカル濃度の定量結果に基づいて、上記生成手段により生成するヒドロキシルラジカル含有水のヒドロキシルラジカル濃度を調整する濃度調整手段を備えたことが好ましい。ヒドロキシルラジカル濃度の定量結果に基づいて、生成するヒドロキシルラジカル含有水のヒドロキシルラジカル濃度を調整することにより、リアルタイムでヒドロキシルラジカル濃度を所望の値とすることが可能となるからである。
【0011】
上記構成において、上記定量手段は、ヒドロキシルラジカル含有水を収容する収容槽の光学材質からなる壁面の一部に取り付けられた全反射減衰プローブと、上記全反射減衰プローブの界面へ臨界角より大きい入射角で遠紫外光を照射する投光光学系と、上記全反射減衰プローブの界面から全反射する反射光を光検出器で受光する受光光学系とを備え、上記全反射光を測定して、ヒドロキシルラジカル含有水の吸光度を求めることにより、ヒドロキシルラジカル濃度を定量することが好ましい。
【0012】
上記構成においては、被洗浄物が設置され、且つ、ヒドロキシルラジカル含有水が上記被洗浄物のほうに噴射される回転ステージが設けられるとともに、上記定量手段は、上記回転ステージからヒドロキシルラジカル含有水が落ちてくる位置に配置される光学材質の全反射減衰プローブと、光源により発生された遠紫外光を上記全反射減衰プローブの界面へ臨界角より大きい入射角で遠紫外光を照射する投光光学系と、上記全反射減衰プローブの界面から全反射する反射光を光検出器で受光する受光光学系とを備え、上記全反射光を測定して、ヒドロキシルラジカル含有水の吸光度を求めることにより、ヒドロキシルラジカル濃度を定量することも好ましい。
【0013】
上記構成においては、被洗浄物が設置され、且つ、ヒドロキシルラジカル含有水が上記被洗浄物のほうに噴射される回転ステージが設けられるとともに、上記ヒドロキシルラジカル含有水を噴射口に移送する配管が設けられ、上記定量手段は、光学材質からなる上記配管の一部に取り付けられた全反射減衰プローブと、上記全反射減衰プローブの界面へ臨界角より大きい入射角で遠紫外光を照射する投光光学系と、上記全反射減衰プローブの界面から全反射する反射光を光検出器で受光する受光光学系とを備え、上記全反射光を測定して、ヒドロキシルラジカル含有水の吸光度を求めることにより、ヒドロキシルラジカル濃度を定量することも好ましい。
【0014】
上記構成においては、上記投光光学系と上記受光光学系に中空の光ファイバを用い、上記光ファイバの一端を上記全反射減衰プローブの入射面と出射面の近くに位置し、上記光ファイバ内の光路中の空気を、上記遠紫外光を吸収しない気体で置換したことが好ましい。
【0015】
上記構成において、上記光学材質は、遠紫外域の測定波長範囲で、全反射光のエバネッセント波の潜り込み深さが150nm以上になるように選択された屈折率を有することが好ましい。
【0016】
上記構成においては、被洗浄物が設置され、且つ、ヒドロキシルラジカル含有水が前記被洗浄物のほうに噴射される回転ステージと、前記ヒドロキシルラジカル含有水を噴射口に移送する配管と、前記配管の途中に設けられた、前記ヒドロキシルラジカル含有水が通過する測定セルとを備え、前記測定手段は、遠紫外光領域において、前記測定セルを透過した光を測定して、ヒドロキシルラジカル含有水の吸光度を求めることにより、ヒドロキシルラジカル濃度を定量することも好ましい。
【0017】
上記構成において、上記生成手段は、オゾンと、過酸化水素と、水溶性有機物、無機酸、上記無機酸の塩、及び、ヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種以上の添加物質とを純水に溶解させてヒドロキシルラジカル含有水を生成することが好ましい。
【0018】
上記構成においては、上記ヒドロキシルラジカル含有水が、半導体・液晶製造プロセスにおいて用いられる洗浄液として供給されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生成したヒドロキシルラジカル含有水の濃度を高精度にモニタし、好ましくは、濃度制御を精度よく行うことを可能とするヒドロキシルラジカル含有水供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るヒドロキシルラジカル含有水供給装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るヒドロキシルラジカル含有水供給装置120は、ヒドロキシルラジカル含有水(以下、「ラジカル水」ともいう)を、オゾンと、過酸化水素と、特定の薬剤とを純水に溶解させて生成する。そして、生成したラジカル水の濃度をラジカルモニタ136にてモニタし、得られたヒドロキシルラジカル濃度(以下、「ラジカル濃度」ともいう)に応じて、オゾンと、過酸化水素と、ヒドロキシルラジカルの生成反応促進に寄与する特定の薬剤の供給量を調整する。これにより、ヒドロキシルラジカル含有水の濃度をリアルタイム且つ高精度で所望の値とすることができる。
【0022】
図1に示すように、ヒドロキシルラジカル含有水供給装置120は、オゾン発生装置122と、オゾン溶解装置124と、薬剤添加装置126と、過酸化水素添加装置128と、薬剤濃度計130と、オゾン濃度計132と、収容槽134と、ラジカルモニタ136と、制御装置138とを備える。
【0023】
オゾン発生装置122は、図示しない酸素ボンベに接続されており、酸素ボンベからの酸素ガス140をオゾンガスに変換する。オゾン発生装置122としては、例えば、汎用型水冷式オゾン発生器、無声放電方式オゾン発生器等を用いることができる。
【0024】
オゾン溶解装置124は、純水142が移送される配管L1に接続されるとともに、オゾン発生装置122に接続されており、オゾン発生装置122により発生させたオゾンを純水142に溶解させ、オゾン水を生成する。
【0025】
薬剤添加装置126は、オゾン溶解装置124により生成されたオゾン水が移送される配管L2に接続されており、特定の薬剤をオゾン水に添加する。なお、特定の薬剤については、後に説明することとする。
【0026】
過酸化水素添加装置128は、配管L2の薬剤添加装置126よりも下流側に接続されており、薬剤が添加されたオゾン水に、さらに、過酸化水素を添加する。これにより、ヒドロキシルラジカルが発生し、ヒドロキシルラジカル含有水が得られることとなる。そして、配管L2の下流端部に接続された収容槽134には、得られたヒドロキシルラジカル含有水が収容される。収容槽134としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシルラジカル含有水供給装置120を、シリコンウェハの洗浄液(ラジカル水)の供給装置として使用する場合には、洗浄槽であり、TOCの分解液(ラジカル水)の供給装置として使用する場合には、分解槽である。
【0027】
薬剤濃度計130は、配管L2の薬剤添加装置126よりも下流側に接続されており、オゾン水中の薬剤濃度を測定し、測定した薬剤濃度を示すデータを制御装置138に送信する。また、オゾン濃度計132は、配管L2の過酸化水素添加装置128よりも上流側と、過酸化水素添加装置128よりも下流側との2箇所に接続されている。オゾン濃度計132は、過酸化水素添加装置128よりも上流側において、初期オゾン濃度を測定し、下流側において、最終オゾン濃度を測定する。そして、オゾン濃度計132は、これらの初期オゾン濃度を示すデータ、及び、最終オゾン濃度を示すデータを制御装置138に送信する。なお、初期オゾン濃度とは、過酸化水素を添加する前のオゾン濃度をいい、最終オゾン濃度とは、過酸化水素が添加された後、収容槽134に収容される前のオゾン濃度をいう。
【0028】
ラジカルモニタ136は、収容槽134に収容されたヒドロキシルラジカル含有水のヒドロキシルラジカル濃度を測定し、測定したヒドロキシルラジカル濃度を示すデータを制御装置138に送信する。薬剤濃度計130、オゾン濃度計132、及び、ラジカルモニタ136による濃度の測定は、連続的、又は、間欠的に行われ、測定されるごとに、制御装置138に送信される。
【0029】
制御装置138は、中央演算処理装置とメモリとを有するとともに、ラジカルモニタ136、オゾン発生装置122、オゾン溶解装置124、薬剤添加装置126、過酸化水素添加装置128、薬剤濃度計130、及び、オゾン濃度計132が接続されており、これらの装置の動作制御等を行う。例えば、制御装置138は、ラジカルモニタ136、薬剤濃度計130、及び、オゾン濃度計132から受信したデータに基づき、オゾン発生装置122から発生させるオゾンガス量、薬剤添加装置126から添加する薬剤の量、及び、過酸化水素添加装置128から添加する過酸化水素の量を調整する。以下、制御装置が実行する処理について、フローチャートを用いて説明する。
【0030】
図2は、
図1に示した制御装置において行われる制御処理を示すフローチャートである。まず、制御装置138は、ラジカルモニタ136から受信したラジカル濃度値が設定ラジカル濃度値範囲内であるか否かを判断する(ステップS10)。受信したヒドロキシルラジカル濃度値が設定ラジカル濃度値範囲内であると判断した場合(ステップS10:YES)、処理をステップS10に戻す。一方、受信したラジカル濃度値が設定ラジカル濃度値範囲内ではないと判断した場合(ステップS10:NO)、処理をステップS12に移す。
【0031】
ステップS12において、制御装置138は、オゾン濃度計132から受信した初期オゾン濃度値が設定初期オゾン濃度値範囲内であるか否か判断する。受信した初期オゾン濃度値が設定初期オゾン濃度値範囲内であると判断した場合、処理をステップS16に移す。一方、受信した初期オゾン濃度値が設定初期オゾン濃度値範囲内ではないと判断した場合(ステップS12:NO)、制御装置138は、オゾン濃度調整コマンドをオゾン発生装置122に送信することにより、オゾン発生装置122によるオゾン発生量を調整する処理を行う(ステップS14)。ステップS14の処理の後、処理をステップS10に戻す。
【0032】
ステップS16において、制御装置138は、薬剤濃度計130から受信した薬剤濃度値が設定薬剤濃度範囲内であるか否か判断する。受信した薬剤濃度値が設定薬剤濃度値範囲内であると判断した場合、処理をステップS20に移す。一方、受信した初期オゾン濃度値が設定初期オゾン濃度値範囲内ではないと判断した場合(ステップS16:NO)、制御装置138は、薬剤濃度調整コマンドを薬剤濃度計130に送信することにより、薬剤濃度計130による薬剤の添加量を調整する処理を行う(ステップS18)。ステップS18の処理の後、処理をステップS10に戻す。
【0033】
ステップS20において、制御装置138は、オゾン濃度計132から受信した最終オゾン濃度値が設定最終オゾン濃度値よりも大きいか否か判断する。オゾン濃度計132から受信した最終オゾン濃度値が設定最終オゾン濃度値よりも大きくないと判断した場合(ステップS20:NO)、制御装置138は、過酸化水素添加量減少コマンドを過酸化水素添加装置118に送信することにより、過酸化水素の添加量を減少させる(ステップS22)。これにより、オゾンの分解が抑制されることとなる。一方、オゾン濃度計132から受信した最終オゾン濃度値が設定最終オゾン濃度値よりも大きいと判断した場合(ステップS20:YES)、制御装置138は、過酸化水素添加量増加コマンドを過酸化水素添加装置118に送信することにより、過酸化水素の添加量を増加させる(ステップS24)。これにより、オゾンの分解が促進されることとなる。ステップS22又はステップS24の処理の後、処理をステップS10に戻す。
【0034】
このように、ヒドロキシルラジカル含有水供給装置120によれば、ヒドロキシルラジカル濃度が一定の範囲内にない場合には(ステップS10:NO)、初期オゾン濃度、薬剤濃度、最終オゾン濃度が調整され(ステップS14、ステップS18、ステップS22、ステップS24)、ヒドロキシルラジカル濃度をリアルタイム且つ高精度に所望の値とすることができる。
【0035】
オゾン発生装置122、薬剤添加装置116、及び、過酸化水素添加装置118は、本発明の、ヒドロキシルラジカル含有水を生成する生成手段に相当する。また、ラジカルモニタ136は、本発明の定量手段に相当する。また、ステップS14、ステップS18、ステップS22、及び、ステップS24の処理を実行するとき、制御装置138は、本発明の濃度調整手段として機能する。
【0036】
ここで、上述した実施形態におけるラジカル水の生成方法について詳述することとする。上述した実施形態では、ラジカル水は、オゾンと、過酸化水素と、特定の薬剤とを純水に溶解させて生成する。このラジカル水の生成方法は、本発明者らが鋭意研究を行った結果、オゾンと、過酸化水素と、特定の薬剤とを純水に溶解させると、ヒドロキシルラジカルを比較的高効率で生成することができ、しかも、その濃度を数分程度維持できることを見出して、完成させた発明である。この方法によれば、紫外線照射設備等の設備を用いなくても、純水にオゾン、過酸化水素、及び、特定の薬剤を溶解させるだけで、ヒドロキシルラジカルを比較的高効率で生成させることができる。
【0037】
上記特定の薬剤としては、水溶性有機物、無機酸、前記無機酸の塩、及び、ヒドラジンを挙げることができ、これらは、単独で使用してもよく、2種以上を使用することとしてもよい。
【0038】
まず、上記特定の薬剤として水溶性有機物を採用する場合について説明する。水中にオゾンと過酸化水素と水溶性有機物が存在する場合、以下に示す反応式に基づいてヒドロキシルラジカルを生成させるものと考えられる。
まず、オゾンと過酸化水素からヒドロキシルラジカルが生成される(式1)。ヒドロキシルラジカルは寿命が短いためすぐに消滅してしまうが、水溶性有機物が存在する場合はヒドロキシルラジカルが水溶性有機物と連鎖反応を起こす(式2)。
さらに、この連鎖反応によって生じた有機ラジカル(R・)と過酸化水素によってヒドロキシルラジカルが生成される(式3)。
【0039】
反応式;
オゾンと過酸化水素の反応によるヒドロキシルラジカル生成(式1)
O
3+H
2O
2 → OH・+HO
2・+O
2
H
2O
2 ⇔ HO
2−+H
+
O
3+HO
2− → OH・+O
2−・+O
2
有機物による連鎖反応(式2)
RH+OH・ → R・+H
2O
R・+O
2 → RO
2・
RO
2・+RH → ROOH+R・
RO
2・+HO
2・ → RO・+O
2+OH・
過酸化水素の分解による生成(式3)
H
2O
2+R・ → HOR+OH・
【0040】
水溶性有機物は、ヒドロキシルラジカル生成の観点から、オゾン反応速度定数10L/mol/sec以下、特に1.0L/mol/sec以下、好ましくは0.001〜1.0L/mol/secのものが使用される。オゾン反応速度定数はオゾンとの反応時における反応速度定数であり、小さいほどオゾンと反応し難いことを示す。上記のようにオゾン反応速度定数が比較的小さい水溶性有機物を使用することにより、オゾンによるヒドロキシルラジカルの生成を阻害することなく、水溶性有機物によるヒドロキシルラジカルの生成反応の促進に寄与できる。種々の化合物のオゾン反応速度定数は公知の文献より知見でき、例えば、第4回「オゾン・ラジカル殺菌及び脱臭研究会」より発行された「オゾン処理とヒドロキシルラジカル」(中山繁樹著)における表2.2「オゾン及びOHラジカルと化合物の水中での反応速度定数」に記載されている。
【0041】
そのような水溶性有機物として、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトン、酢酸、蟻酸、クエン酸等が挙げられる。
【0042】
上記水溶性有機物の中でも、ラジカル水の電子部品等の洗浄液としての使用の観点からは、沸点が比較的低いものが好ましく使用され、例えば、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。最も好ましい水溶性有機物はiso−プロパノール(イソプロパノール)である。
【0043】
次に、上記特定の薬剤として無機酸を採用する場合について説明する。
上記無機酸又は上記無機酸の塩としては、例えば、塩酸、硫酸、炭酸、炭酸塩、炭酸水素塩、亜硝酸、亜硝酸塩、亜硫酸、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、フッ酸を挙げることができる。なかでも、ラジカル水使用後に炭酸ガスとして揮散させることができることから、炭酸が好ましい。
【0044】
水中にオゾンと過酸化水素と炭酸が存在する場合、以下に示す反応式に基づいてヒドロキシルラジカルを生成させるものと考えられる。
まず、オゾンと過酸化水素とからヒドロキシルラジカルが生成される(式4)。ヒドロキシルラジカルは、寿命が短いためすぐに消滅してしまうが、炭酸が存在する場合はヒドロキシルラジカルが炭酸と連鎖反応を起こす(式5)。
さらに、炭酸と過酸化水素との反応によって生じたヒドロペルキシルラジカル(HO
2・)とオゾンとによってヒドロキシルラジカルが生成される(式6)。
【0045】
反応式;
オゾンと過酸化水素との反応によるヒドロキシルラジカル生成(式4)
O
3+H
2O
2 → OH・+HO
2・+O
2
H
2O
2 ⇔ HO
2−+H
+
O
3+HO
2− → OH・+O
2−・+O
2
炭酸による連鎖反応(式5)
CO
2+H
2O ⇔ HCO
3−+H
+
HCO
3− ⇔ CO
32−+H
+
CO
32−+OH・ → CO
3−・+OH
−
CO
3−・+OH・ → CO
2+HO
2−
O
3+HO
2− → OH・+O
2−・+O
2
炭酸と過酸化水素との反応によって生じたヒドロペルキシルラジカルとオゾンとによるヒドロキシルラジカル生成(式6)
CO
2+H
2O ⇔ HCO
3−+H
+
HCO
3− ⇔ CO
32−+H
+
CO
32−+OH・ → CO
3−・+OH
−
CO
3−・+H
2O
2 → HCO
3−+HO
2・
HO
2・ ⇔ +O
2−・+H
+
O
2−・+O
3 → O
3−・+O
2
O
3−・+H
2O → OH・+O
2+OH
−
【0046】
純水は不純物質が除去された水であり、通常は、電気抵抗率15MΩ・cm以上のものが使用される。電子部品、半導体、液晶関連部品等の部品(以下、電子部品等という)の洗浄液としてラジカル水を使用する観点から、好ましくは電気抵抗率17MΩ・cm以上の超純水が使用される。なお、電気抵抗率は、市販の比抵抗率計を用いて測定することができる。
【0047】
以上、本実施形態に係るラジカル水の生成方法に説明した。なお、本発明においてラジカル水の生成方法は、上述した方法に限定されず、例えば、純水に、オゾンと特定の薬剤を加えたものに、紫外線照射装置を用いて紫外線を照射することにより、ラジカル水を生成する方法を挙げることができる。この場合、オゾン発生装置、薬剤添加装置、及び、紫外線照射装置が本発明の生成手段に相当することとなる。また、ラジカル水の生成方法として、上記以外に、従来公知の方法を採用してもよく、例えば、特定の薬剤を用いずに、単にオゾンに紫外線を照射する方法、過酸化水素に紫外線を照射する方法、次亜塩素酸に紫外線を照射する方法を採用することとしてもよい。
【0048】
上述したラジカルモニタ138には、例えば、本発明者らがこれまでに発明した水溶液の測定方法(特開2005−214863号公報)を利用した測定装置を用いることができる。
【0049】
特開2005−214863号公報に開示した水溶液の測定方法は、遠紫外領域に現れる水の吸収バンド(水分子のn→σ
*遷移吸収バンド)の吸収ピークの高波長側の裾の部分(たとえば170〜210nm)で遠紫外線の吸収を測定する方法である。この吸収スペクトルは、水に溶解している荷電性の溶解成分(例えば、ナトリウムイオンやカリウムイオン等の陽イオンや、塩化物イオンや硝酸イオン等の陰イオン)の濃度と相関しているのであるが、本発明者らは、水に溶解されているヒドロキシルラジカルについても、この吸収スペクトルと、ヒドロキシルラジカル濃度とが相関していることを発見している。そこで、この方法を利用することにより、水溶液中のヒドロキシルラジカルの定量測定を高感度に行うことができる。
【0050】
また、上述したラジカルモニタ138には、本発明者らがこれまでに発明した全反射減衰型遠紫外分光装置(例えば、特開2007−279025号公報や、特開2008−224240号公報に開示した全反射減衰型遠紫外分光装置)を用いることもできる。上記水の吸収バンドは、その吸光度が非常に大きいため、透過スペクトルにて測定する場合には、セル長を可能な限り短くする必要があるが、全反射減衰吸光法を利用した上記全反射減衰型遠紫外分光装置によれば、理論的に波長オーダーのセル長による透過スペクトルと類似の吸収スペクトルを得ることができるため、好ましく利用することができる。
【0051】
ここで全反射減衰吸光についてもう少し説明しておく。屈折率がより高い媒体(たとえば合成石英)と屈折率がより低い媒体(測定対象のサンプル、たとえば水)の間の界面に、屈折率がより高い媒体側から光線が当たると、入射角θが臨界角より大きな場合には光線は全反射される。しかし、光線は、屈折率がより低い媒体にも波長オーダーの一定の距離潜り込み、界面方向に進み、その後、反射される。この屈折率がより低い媒体に潜り込む光線をエバネッセント波という。エバネッセント波の電界強度は反射点で最大であり、界面方向と界面に鉛直な方向に向かってすぐに減衰する。エバネッセント波の電場強度が1/eまで減衰する距離を潜り込み深さ(penetration depth)という。全反射減衰吸光法によれば、光が全反射する際に形成される波長オーダーの光の潜り込み(エバネッセント波)に対する光の吸収を反射光から測定できる。この光の潜り込み深さが通常の透過スペクトルの光路長に対応するので、微少なセル長が実現でき、理論的に波長オーダーのセル長による透過スペクトルと類似の吸収スペクトルを得ることができる。
【0052】
特開2007−279025号公報に開示した減衰全反射型遠紫外分光装置が備える全反射減衰プローブは、遠紫外領域で水のn→σ
*遷移吸収バンドを測定するには、光学プローブ(プリズム)の材質の屈折率がサンプル物質の屈折率よりも大きいという全反射条件と、光学プローブの材質の光透過率が測定波長領域で十分に高いという透過条件とから、特別な構造の全反射減衰プローブを要するという考えの下、3層構造のプローブとして提案したものである。
【0053】
ここで、紫外域での全反射減衰プローブの材質として代表的なサファイアと石英とを比較すると(
図3参照)、サファイアは、全波長範囲で水より屈折率が高い。これに対して、石英は160nm付近の波長範囲では水より屈折率が低くなり全反射が起こらないため、全反射減衰プローブとして使用できない。
【0054】
しかし、半導体洗浄の処理槽内の洗浄液濃度の測定に全反射減衰プローブを用いる場合、全反射減衰プローブの材質はサンプル中に溶出したり侵食されたりしない材質のものでなければならないうえ、測定領域において常にサンプルよりも屈折率が高く、十分な透過率を有するものに限定される。従って、全反射減衰プローブに適用できる材質は高純度の合成石英に限られる。
【0055】
そこで、本発明者らは、全反射減衰吸光法を半導体洗浄プロセスで使用される洗浄液の成分濃度測定に適用するために、合成石英を用いた遠紫外用の全反射減衰プローブについて潜り込み深さの最適化のため測定光の入射角度条件と測定波長領域の選定を試行錯誤で検討し吸光データを得ることに成功した。その結果、上述した特別な構造の全反射減衰プローブを用いなくとも水溶液中の微量な成分濃度の測定が可能となる減衰全反射型遠紫外分光装置を発明するに至ったのである。この衰全反射型遠紫外分光装置では、全反射減衰プローブの材質にその屈折率が測定対象(水溶液)と非常に近い物質を用いて、全反射光のエバネッセント波の潜り込み深さを積極的に拡張して遠紫外吸光測定を行う。このように、以下に示す衰全反射型遠紫外分光装置は、半導体洗浄プロセスで使用する際に、ラジカルモニタ136として、好適に使用することができる。そこで、これについて以下に説明する。
【0056】
全反射減衰プローブ(以下、「ATRプローブ」ともいう)の界面でのエバネッセント波の潜り込み深さd
pは、下記の式(1)のように、波長λ、入射角θ、プローブの材質の屈折率n
1、測定対象(水)の屈折率n
2から計算される。
【0057】
【数1】
全反射は臨界角以上の入射角θで起こる。
【0058】
【数2】
図4は、石英プローブにおける光の測定対象(水)への潜り込み深さの計算結果に示す。ここで、入射角θが68度、70度、72度、74度である場合のデータを示している。
【0059】
石英では160nm付近でその屈折率n
2が水の屈折率n
1より小さくなるため(
図1参照)、入射角度θが75度以上では、168nmより短波長側の光は全反射せずに透過してしまい、測定対象の吸光度を測ることができない。しかし、
図4に示されるように、全反射条件の境となる170nm付近の波長ではエバネッセント波の潜り込み深さが数百nm以上と大きくなる。このため、ATR測定により170nm付近で水の吸収バンドが拡大されて観測される。この170nm付近は、水のn→σ
*遷移吸収バンドの傾斜部分であり、吸光度は、水溶液中に含まれる溶解成分の濃度に依存して変化するため、170nm付近でのATR測定は、水溶液中の成分濃度の定量に利用できる。従来、この全反射条件の境界となる波長領域を積極的に利用して、水の遠紫外吸収スペクトルの裾の部分を拡大して観測するという試みはなされていなかった。しかし、全反射条件を考慮した潜り込み深さの最適化の研究により、水溶液中の溶解成分の定量測定に適用できることが分かったのである。したがって、ATRプローブとして合成石英を用い、水溶液を測定する場合、水の吸収ピークの付近で合成石英の屈折率と水の屈折率とが接近するため、全反射光のエバネッセント波の潜り込み深さを遠紫外域の測定波長範囲で150nm以上として全反射光を測定でき、これにより、吸光度を高感度で測定できる。このとき、測定波長範囲はほぼ170〜175nmの範囲である。
【0060】
また、プローブの材質(石英)と測定対象の屈折率が170nm付近に比べて接近していない175〜300nmの領域でも、その屈折率差がやはり小さいために全反射光の潜り込み深さは100nm程度あり、吸光度は分光測定装置により測定できる。したがって、溶質自体の吸収もこの波長範囲にあれば観測できる。170〜300nmの遠紫外領域における水溶液の吸光係数は非常に大きいため、ATR法を用いても十分な測定感度を得ることができる。従って、特開2005-214863号公報に記載された水溶液の透過測定と同様の測定が、ATRプローブを用いて全反射光について行えるようになる。
【0061】
比較のため、
図5に、サファイアプローブにおける光の水への潜り込み深さの計算結果を、入射角が56度から66度まで範囲の場合に示す。潜り込み深さは遠紫外域で70nm以下である。サファイア材質の場合、プローブの材質と測定対象の間の屈折率差が大きいため、遠紫外波長域の全域でATR測定は可能であるが、潜り込み深さは100nmより小さい。
【0062】
図6は、石英ATRプローブ及びサファイアATRプローブを用いて測定した水の吸光度を示す。本来、水のn→σ
*遷移吸収バンドの吸収のピークは150nm付近にあり、ATRプローブの材質をサファイア等の高屈折率材質とした場合には170nm付近には水の吸収バンドは観測されない。しかし、プローブの材質を合成石英とした場合は、その屈折率が水の屈折率に近接する領域でエバネッセント波の潜り込み深さが非常に大きくなるため、ATR測定であっても170nm付近に水の吸収バンドが拡大されて観測される。
【0063】
図7は、石英プローブ及びサファイアプローブを用いて測定したNaIの水溶液の遠紫外領域での吸光度を示す。なお、図において2つの矢印で囲まれた範囲は、全反射が起こらない波長範囲を示す。ここで、230nm付近のピークは溶質(NaI)による吸収によるピークである。サンプル内のNaIの濃度は、0,20,40,60,80,100mMである。なお、サファイアについては純水の場合のみを示しているが、NaIによる吸収も観測されている。しかし、そのピークは低いため、図示を省略している。
【0064】
なお、以上に、ATRプローブの材質として石英を用いた水溶液の測定を説明したが、一般に、ATRプローブの材質にその屈折率が測定対象の屈折率と非常に近い光学材質を用いて、全反射光のエバネッセント波の潜り込み深さを積極的に拡張して遠紫外分光測定を行うことができる。すなわち、全反射光のエバネッセント波の潜り込み深さは、遠紫外光の波長、サンプルの屈折率、全反射減衰プローブの光学材質の屈折率、および、プローブとサンプルとの界面への紫外光の入射角により定められるが、測定対象の屈折率と非常に近い屈折率をもつ光学材質を使用できる場合、測定対象への潜り込み深さが150nm以上となるように、ATRプローブの光学材質、測定波長及び入射角を選択する。そのような屈折率を有する光学材質で作成した全反射減衰プローブを用い、全反射減衰プローブの界面にサンプルを接触させる。そして、臨界角以上の入射角および上記測定波長で遠紫外光を界面に入射して、その潜り込み深さが150nm以上となるようにする。そして、界面からの全反射光を測定して、サンプルの吸光度を求める。
【0065】
次に、上述の測定方法を半導体洗浄システムのヒドロキシルラジカル濃度の管理に適用した場合について説明する。
図8は、バッチ式洗浄法に用いる洗浄槽1を示す。洗浄槽1は合成石英製であり、ヒドロキシルラジカル含有水である洗浄液7を収容する。この洗浄槽1の中に複数のウエハ2(被洗浄物)が設置され、洗浄液7に浸される。ここで、たとえば4つの濃度測定部3,4,5,6が洗浄槽1の側面に設置される。ATRプローブを含む濃度測定部は洗浄槽1の壁面であればどこにでも設置可能である。これにより、洗浄槽1内の洗浄液7の濃度を、洗浄液を洗浄槽1の外に取り出さずに、リアルタイムでチェックできる。複数箇所への設置により洗浄槽1内の洗浄液7の濃度分布ばらつきをチェックできる。
【0066】
図9は、濃度測定部(衰全反射型遠紫外分光装置)3,4,5,6の内部に設けられる光学測定部を示す。処理槽の壁面22と同じく合成石英からなるATRプローブ21は、洗浄槽の壁面22に直接に固定され、洗浄槽の壁面22と一体化される。紫外光源(たとえば重水素ランプ)23から発生された光は、投光レンズ26で平行光にされ、単色分光器である回折格子24で反射され、さらに投光レンズ27を通ってATRプローブ21に入射する。これらは、ATRプローブ21へ光を照射する投光光学系を構成する。光学プローブ21への入射角は、適当な値に設定する。光学プローブ21からの全反射光は、受光レンズ28をとおり、光検出器(紫外光センサ)25に入射する。これらは、ATRプローブ21から出射する反射光を光検出器25で受光する受光光学系を構成する。また、ATRプローブ21の光入出射端面とその投受光光学系部分の空気を窒素で置換するため光学系を密閉する密閉構造(ハウジング)31を備える。この密封構造において、遠紫外域で吸収を生じない窒素ガスが入口29から導入され、出口30から排出され、こうして光学系内から酸素ガスが排除される。(なお、アルゴンガスによる空気置換を用いてもよいし、空気自体を真空に排気するという方法もとれる。)光検出器25で検出されたスペクトルは、外部の信号処理部(図示しない)で処理され、測定データを基に吸光度が計算される。ここで、複数波長での吸光度に対する公知の多変量解析により検量線を作成できる。また、この検量線を用いて測定はリアルタイムで行える。これにより、この測定装置を用いて洗浄槽22内の洗浄液の濃度を直接測定できる。この測定装置では、プローブ21の材質に処理槽の壁面2と同じく合成石英を用いているので、プロセス中にプローブ21から不純物が溶出したり、プローブ21自体が洗浄液によって侵食されたりする問題も解消できる。また、測定用紫外光が作用するのはプローブの界面に接するごく一部のサンプル物質であるため、実質的に紫外光照射によるサンプル変化を回避できる。
【0067】
図10は、枚葉式の半導体洗浄システムにおけるヒドロキシルラジカル含有水供給装置を示す。枚様式の場合、シリコンウエハの回転ステージ(回転台)の横にATRプローブを設置し、液を噴射した際にウエハから落ちる洗浄液がATRプローブの上に落ちるようにする。具体的には、ウエハ回転ステージ44の上に設置されたウエハ43に対し、ウエハ回転ステージ44の上方に位置される洗浄ノズル41から洗浄液42が噴射される(スプレー)。ウエハ43の方へ噴射された洗浄液46は、ウエハ回転ステージ44の回転による遠心力の作用により、外周方向から外に落ちる。ここで、ウエハ回転ステージ44の側方に、
図9に示した濃度測定部3と同様の構成を有する濃度測定部45が設置されている。濃度測定部45において、ATRプローブ1が洗浄液との界面を上方にして位置されている。ウエハ回転ステージ44から濃度測定部45のATRプローブの上に落ちてきた洗浄液の吸光度が測定される。
【0068】
図11は、枚葉式の半導体洗浄システムにおけるヒドロキシルラジカル含有水供給装置の他の実施形態を示す。
図11に示すヒドロキシルラジカル含有水供給装置においては、
図9に示した濃度測定部3と同様の構成を有する濃度測定部47が、シリコンウエハの回転ステージの横(
図10参照)ではなく、洗浄液を洗浄ノズル41(本発明の噴射口に相当)に移送する配管L3上に設置されている。配管L3は、その一部が上述した光学材質から構成されており、濃度測定部47のATRプローブ21は、配管L3の光学材質部分に直接に固定され、配管L3の壁面と一体化されている。そして、濃度測定部47において、配管L3内を移送される洗浄液の吸光度が測定される。濃測定部47の配管L3上における設置位置は、洗浄ノズル41の直前であることが好ましく、具体的には、噴射口から噴射される0〜300秒前のヒドロキシルラジカル含有水を測定できる位置とすればよく、0〜10秒前のヒドロキシルラジカル含有水を測定できる位置とすることがより好ましく、0.1〜1秒前ヒドロキシルラジカル含有水を測定できる位置とすることがさらに好ましい。噴射口から噴射される0〜300秒前のヒドロキシルラジカル含有水の濃度であれば、使用時(本実施形態では、洗浄時)の濃度と同視し得るからである。なお、配管L3は、本発明のヒドロキシルラジカル含有水を噴射口に移送する配管に相当する。
【0069】
また、たとえば、投受光光学系に中空の光ファイバを用い、光ファイバ内の光路中の空気を窒素あるいはアルゴンで置換してもよい。中空光ファイバを用いるため、
図12と
図13に示すように、光学系を光ファイバで接続される2つの部分に分離できる。
図12と
図13は、散布液を導入する配管の壁面62にATRプローブ61を設ける例を示す。このATRプローブ61は半球状である。中空光ファイバ(投光側)65からの入射光63は、ATRプローブ61の洗浄液との界面に入射し、全反射して反射光として中空光ファイバ(受光側)65’に入る。光ファイバ65,65’は、光の入射角に対応して設置される。一方、光学系の他の部分は、
図13に示される密封構造(ハウジング)の中に設けられる。光源66から発生される遠紫外光は、回折格子67で反射されて、中空光ファイバ(投光側)65に入る。また、中空光ファイバ(受光側)65’からの反射光は、ミラー68で反射されて、光検出器69で検出される。また、密封構造の中に、酸素ガスを排除するため、遠紫外域で吸収を生じない窒素ガスが入口70から導入され、光ファイバ65,65’の中空部分に入る。そして、
図12に示される端部から出ていく。
【0070】
なお、
図9〜
図13に種々の遠紫外測定装置の構造が示されているが、それらに含まれる構成要素は組み合わせることができる。たとえば、
図12と
図13に示す中空光ファイバは、
図9、
図10及び
図11の構造においても使用できる。
【0071】
図14は、枚葉式の半導体洗浄システムにおけるヒドロキシルラジカル含有水供給装置の他の実施形態を示す。このヒドロキシルラジカル含有水供給装置は、本発明者らがこれまでに発明した水溶液の測定方法(特開2005−214863号公報)を利用した装置である。
図14に示すように、洗浄ノズル41に洗浄液を移送するための配管L3の途中には、ヒドロキシルラジカル含有水が通過する透過率測定用セル50が設けられている。また、ヒドロキシルラジカル含有水供給装置には、紫外光源部51、受光部52、及び、信号処理部53が備えられている。紫外光源部41から照射される紫外線は、遠紫外光領域(100nm〜280nm)の波長の少なくとも一部を含んでおり、透過率測定用セル50、及び、その中を通過する洗浄液を透過する。透過率測定用セル50、及び、洗浄液を透過した光は、受光部52に入り、複数の波長に分光される。信号処理部53は、各測定波長での信号を演算して濃度を定量する。この装置としては、190nm〜280nmの波長で測定できる常用の分光装置を使用でき、例えば、島津製作所の紫外・可視分光分析計3100PCを使用することができる。
【0072】
本発明において、得られた吸光度からのラジカル濃度の算出は、ラジカルモニタ136(例えば、上述した全反射減衰型遠紫外分光装置等)が行うこととしてもよく、ラジカルモニタ136から送信された吸光度を示すデータに基づいて、制御装置138が算出することとしてもよい。ラジカルモニタ136がラジカル濃度の算出を行う場合、算出結果がラジカルモニタ136から、制御装置138に送信されることとなる。また、ラジカル濃度を算出することなく、測定したラジカル水の吸光度に基づいて、ラジカル濃度の調整(例えば、オゾン発生装置122から発生させるオゾンガス量の調整、薬剤添加装置126から添加する薬剤量の調整、過酸化水素添加装置128から添加する過酸化水素の調整等)を行うこととしてもよい。この方法も、本発明の、ヒドロキシルラジカル濃度の定量結果に基づいて生成するヒドロキシルラジカル含有水のヒドロキシルラジカル濃度を調整すること、に含まれる。
【0073】
上述した実施形態では、本発明のヒドロキシルラジカル含有水供給装置を半導体洗浄システムに適用した場合について説明したが、本発明のヒドロキシルラジカル含有水供給装置は、この例に限定されず、例えば、フォトエッチング工程等で使用される処理液としてのヒドロキシルラジカル含有水を供給する装置であってもよい。また、本発明のヒドロキシルラジカル含有水供給装置は、上述したような、半導体材料の製造分野に限定されず、液晶表示装置等の製造分野において使用されてもよく、食品の殺菌洗浄、環境汚染物質の分解処理等の分野において使用されるものであってもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、各手段等の具体的構成は、適宜設計変更可能である。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。