(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表札保持部材は、前記表札が取り付けられる表札保持部と、前記表札保持部との間に前記基台部材を挟持可能な挟持部を有する板ばね部と、を備え、前記表札保持部と前記挟持部とで前記基台部材を挟むことによって、前記基台部材に対して着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の表札取付具。
前記壁面への取付状態において、前記基台部材、前記スペーサー及び前記表札保持部材を前記壁面に投影した投影面積が、前記表札保持部材を介して前記基台部材に取り付けた前記表札を前記壁面に投影した投影面積よりも小さいことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の表札取付具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の表札取付具は、外壁に凹凸がある場合などには、表札取付具を挿入するためのパネルが水平または垂直に対して傾いたりねじれたりした状態で壁面に固定されてしまうおそれがある。そして、このような状態でパネルが壁面に固定されると、このパネルに取り付けられる表札も傾いたりねじれたりした状態になってしまう、という課題がある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、壁面に取り付ける表札の傾きやねじれを抑制することができる表札取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する表札取付具は、壁面への挿入深さを調整可能な固定部材によって壁面に取り付けられる基台部材と、前記基台部材と前記壁面との間に配置される弾性変形可能な材料からなるスペーサーと、表札を保持した状態で前記基台部材に取り付けられる表札保持部材と、を備え、前記基台部材は、前記固定部材を挿通可能であって、同一直線上に無
い3つの挿通孔を有し、前記固定部材の挿入深さを変化させることで前記壁面と前記基台部材との距離を調整可能であるとともに、前記3つの挿通孔のうちの1つを基準孔とするとともに、前記3つの挿通孔のうちの2つを調整孔とすると、前記2つの調整孔は、前記基準孔よりも開口面積が広く、前記基準孔からの距離が等しい位置に配置される長孔であることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、基台部材を壁面に取り付ける際に、同一直線上に無い3つの挿通孔に固定部材を挿通することによって、スペーサーを介して各挿通孔の壁面に対する距離を調整することができる。そして、このように同一直線上に無い3点を支点として基台部材の位置を調整することにより、重力方向と、水平方向と、重力方向及び水平方向の双方に直交する奥行き方向と、の3方向に対して3次元で基台部材を変位させることができる。そのため、壁面に凹凸がある場合にも、基台部材の位置を三次元で調整することにより、表札保持部材を介して基台部材に取り付けられる表札の水平及び垂直に対する傾きやねじれを補正することができる。したがって、壁面に取り付ける表札の傾きやねじれを抑制することができる。
【0009】
さらに、この構成によれば、2つの調整孔は、基準孔よりも開口面積が広く、基準孔からの距離が等しい位置に配置される長孔であるので、基準孔に挿通した固定部材を回動軸として、2つの調整孔に挿通された固定部材と長孔である調整孔との隙間の範囲内で、基台部材の回動が許容される。したがって、基台部材を固定部材で壁面に取り付けるときに、基準孔に挿通した固定部材を中心に基台部材を回動させて位置を調整することで、表札保持部材を介して基台部材に取り付けられる表札の傾きを抑制することができる。
【0010】
上記構成の表札取付具において、前記表札保持部材は、前記表札が取り付けられる表札保持部と、前記表札保持部との間に前記基台部材を挟持可能な挟持部を有する板ばね部と、を備え、前記表札保持部と前記挟持部とで前記基台部材を挟むことによって、前記基台部材に対して着脱可能に取り付けられることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、表札が取り付けられた表札保持部材は、表札保持部と挟持部とで基台部材を挟むことによって基台部材に対して着脱可能に取り付けられるので、表札の設置及び交換を容易かつ速やかに行うことができる。また、表札保持部材の挟持部は板ばね部を構成するので、板ばね部の付勢力によって、表札を基台部材に保持させることができる。
【0012】
上記構成の表札取付具において、前記表札保持部材の前記表札保持部には、先端に係止突部を有する係合ピンが突設され、前記基台部材は、前記係止突部を挿通可能な挿通部と、前記係止突部を係止可能な係止部と、基端が前記挿通部に接続されるとともに先端が前記係止部に接続される案内部と、を有し、前記係止部は、前記案内部の屈曲した先端部に設けられることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、前記表札保持部材を基台部材に取り付けるときに、表札保持部材の表札保持部に突設された係合ピンの係止突部を基台部材の挿通部に挿通し、係合ピンを案内部の基端側から先端側に移動させて、案内部の先端部にある係止部に係止突部を係止させることができる。そして、係止部は案内部の屈曲した先端部に設けられるので、係止突部と係止部との係合の解除を抑制することができる。これにより、表札保持部材を基台部材に対して確実に係合させて、表札を保持する表札保持部材の基台部材からの脱落を抑制することができる。
【0014】
上記構成の表札取付具は、前記壁面への取付状態において、前記基台部材、前記スペーサー及び前記表札保持部材を前記壁面に投影した投影面積が、前記表札保持部材を介して前記基台部材に取り付けた前記表札を前記壁面に投影した投影面積よりも小さいことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、壁面への取付状態において、基台部材、スペーサー及び表札保持部材の壁面への投影面積が表札の壁面への投影面積よりも小さいので、表札の裏側に表札取付具を隠して、視認されにくい状態にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記表札取付具によれば、壁面に取り付ける表札の傾きやねじれを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、壁面に表札を取り付けるための表札取付具の一実施形態を
図1〜
図5に基づいて説明する。なお、
図1〜
図5においては、表札取付具を壁面に取り付けた場合に、鉛直下方(重力方向)となる方向を下方向Z、水平となる方向を幅方向Xとするとともに、下方向Z及び幅方向Xと直交する方向を奥行き方向Yとして図示している。
【0019】
図1に示すように、表札取付具11は、固定部材12によって住宅の外壁や門柱などの壁面13に取り付けられる基台部材20と、基台部材20と壁面13との間に配置されるスペーサー30と、表札15を保持した状態で基台部材20に取り付けられる表札保持部材40と、を備える。なお、以降の説明において、基台部材20、スペーサー30及び表札保持部材40等の部材に対して「正面視」という場合には、壁面13と対面する位置から、壁面13への取付状態における各部材を奥行き方向Yに見る場合を示す。
【0020】
固定部材12は、例えばねじやボルトなど、軸部12aの基端に軸部12aよりも直径の大きい頭部12bが設けられたピン状をなすことが好ましい。なお、固定部材12は、軸部12aを備え、別体の頭部12bを軸部12aに取り付けて用いるものであってもよい。
【0021】
固定部材12の軸部12aを挿通するために、基台部材20及びスペーサー30は平板状であることが好ましい。また、基台部材20の外形は、壁面13に取り付けられた場合に鉛直上端及び鉛直下端となる一対の長辺が幅方向Xに沿うとともに、同じく鉛直上端及び鉛直下端と直交(交差)する2つの側端となる一対の短辺が下方向Zに沿う正面視略矩形状をなすことが好ましい。
【0022】
基台部材20は、同一直線上に無い少なくとも3つ(本実施形態では3つ)の挿通孔21(21C,21R,21L)と、正面視略L字状をなす案内孔25とを有している。すなわち、3つの挿通孔21は、正面視において三角形の3つの頂点に位置するように、非直線状に配置される。なお、3つの挿通孔21は、固定部材12の軸部12aを挿通可能である一方で、頭部12bを挿通不能な大きさに形成される。また、3つの挿通孔21は、基台部材20において同一方向(奥行き方向Y)に延びるように形成されることが好ましい。
【0023】
基台部材20において、壁面13への取付時にスペーサー30と対面する面を裏面、表札保持部材40と対面する面を表面とすると、挿通孔21は、裏面側から表面側に向かうに連れて挿通孔21の開口面積が次第に大きくなる円錐面等で構成されるテーパー面22を孔内面に有することが好ましい。このようにすれば、挿通孔21に固定部材12の軸部12aを挿通したときに、テーパー面22が形成する空間に固定部材12の頭部12bを収容することが可能になる。
【0024】
本実施形態において、3つの挿通孔21のうちの1つは基準孔21Cであり、3つの挿通孔21のうちの残る2つは調整孔21R,21Lである。2つの調整孔21R,21Lは、基準孔21Cよりも開口面積が広く、基準孔21Cからの距離が等しい位置に配置される長孔であることが好ましい。さらに、2つの調整孔21R,21Lは、基準孔21Cの中心からの距離が等しい点の集合からなる円弧を描いた場合に、同円弧に沿うように延びる長孔であることが好ましい。本実施形態では、このような調整孔21R,21Lの一例として、上記円弧の接線方向に伸びる長孔を例示している。
【0025】
3つの挿通孔21は、基台部材20において、互いに可能な限り離れた位置に配置することが好ましい。また、2つの調整孔21R,21Lは、壁面13への基台部材20の取付状態において水平方向に並ぶように配置することが好ましい。このような条件を考慮して、本実施形態では、幅方向Xにおいて2つの調整孔21R,21Lの間に案内孔25を配置しているとともに、案内孔25の下方向Zに基準孔21Cを配置している。
【0026】
基台部材20に設けられた案内孔25は、正面視略円状の挿通部26と、挿通部26に接続される案内部27と、を含む。案内部27は、挿通部26に接続される基端側から下方向Zに延びて、先端部が幅方向X(
図2では右方)に屈曲している。なお、本実施形態において、案内部27の先端部における屈曲角度α(
図3参照)は略90度であるが、この屈曲角度αは任意に変更することができる。また、基台部材20は、案内部27の屈曲した先端部に設けられる係止部28を有している。
【0027】
表札保持部材40は、表札15が取り付けられる正面視矩形状の表札保持部41と、表札保持部41における基台部材20を介した壁面13への取付状態での鉛直上端から延設される板ばね部42と、を備えることが好ましい。板ばね部42は、表札保持部41との間に基台部材20を挟持可能な挟持部43と、表札保持部41と挟持部43とを接続する接続部44とを有する。
【0028】
そして、表札保持部材40は、表札保持部41と挟持部43とで基台部材20を挟むことによって、基台部材20に対して着脱可能に取り付けられる。表札保持部材40は、例えばステンレス鋼などからなるばね材を折り曲げ加工することによって、表札保持部41、接続部44及び挟持部43を形成することができる。
【0029】
表札保持部材40の表札保持部41において、基台部材20への取付時に基台部材20と対面する面を裏面、裏面の反対側の面を表面とすると、表札保持部41の表面には、表札15が粘着テープ、接着剤、またはねじなどによって取り付けられる。
【0030】
表札保持部材40の表札保持部41の裏面には、小径の軸部45の先端に軸部45よりも径が大きい係止突部46を有する係合ピン47が突設されることが好ましい。係合ピン47は、表札保持部材40と一体形成することもできるが、表札保持部41及び板ばね部42を一枚の板材を折り曲げ加工して形成する場合には、別体の係合ピン47を表札保持部41に取り付けることによって形成することもできる。別体の係合ピン47を表札保持部41に取り付ける場合には、表札保持部材40の表札保持部41に係合ピン47の軸部45を取り付けるための取付孔48を形成しておくとよい。
【0031】
基台部材20の案内孔25において、挿通部26は係止突部46を挿通可能な大きさに形成される一方で、案内部27は軸部45を挿通可能であるが係止突部46は挿通不能な大きさに形成される。
【0032】
スペーサー30は、弾性変形可能な材料によって構成することが好ましく、例えばエチレンプロピレンゴム等の合成ゴムからなる多孔質材(スポンジ)を用いて形成することができる。スペーサー30は、基台部材20と壁面13との間に挟まれた場合に、基台部材20の3つの挿通孔21と対応する位置に配置することが好ましい。
【0033】
スペーサー30の外形を基台部材20の外形の一部または全部と一致するように形成すると、壁面13への取付時にスペーサー30と基台部材20との位置あわせを容易に行うことができるため、好ましい。例えば、本実施形態のスペーサー30は、基台部材20と奥行き方向Yに重ねられた場合に、幅方向Xに延びる下端及び同下端と交差する一対の側端が基台部材20と一致する外形を有している。
【0034】
本実施形態のスペーサー30には、壁面13への取付時に基台部材20の3つの挿通孔21と重なる位置に、固定部材12の軸部12aを挿通するための3つの貫通部31(31H,31C)が形成されている。貫通部31は、スペーサー30を奥行き方向Yに貫通する孔31Hであってもよいし、
図1に示すような切り欠き31Cであってもよい。
【0035】
また、本実施形態のスペーサー30には、壁面13への取付時に鉛直上端となる端部に、第1切り欠き部32aと第2切り欠き部32bを含む切り欠き部32が形成されている。第1切り欠き部32a及び第2切り欠き部32bは、基台部材20に取り付けられた表札保持部材40の表札保持部41と壁面13との間に、板ばね部42及び係合ピン47をそれぞれ収容するための隙間を形成する。すなわち、スペーサー30は、挿通孔21の周囲において基台部材20と壁面13との間に介在する一方で、表札保持部41と壁面13との間に板ばね部42及び係合ピン47を配置するための隙間を形成する。
【0036】
図2に示すように、壁面13への取付状態において、基台部材20、スペーサー30及び表札保持部材40を壁面13に投影した投影面積は、表札保持部材40を介して基台部材20に取り付けた表札15を壁面13に投影した投影面積よりも小さいことが好ましい。このようにすれば、壁面13への取付が完了した表札15を正面から見た場合に、表札取付具11が表札15の裏に隠れて見えなくなるため、表札取付具11が美観に与える影響を考慮する必要がない。なお、表札15の形状や大きさは、任意に変更することが可能である。
【0037】
次に、表札取付具11を用いて表札15を壁面13に取り付ける場合の手順について、表札取付具11を構成する各構成部材の作用とともに説明する。
表札取付具11を用いて表札15を壁面13に取り付ける場合には、固定部材12によって基台部材20をスペーサー30とともに壁面13に取り付ける第1取付工程と、表札15を表札保持部材40に取り付ける第2取付工程と、を行ったあと、表札15が取り付けられた表札保持部材40を基台部材20に取り付ける第3取付工程を行う。
【0038】
なお、第1取付工程と第2取付工程を行う順序は、任意に変更することができる。また、第1取付工程及び第3取付工程は壁面13のある現場で行われるが、第2取付工程は、例えば表札15の加工を行う工場など、壁面13のある現場から離れた任意の場所において行うことができる。
【0039】
始めに、基台部材20をスペーサー30とともに壁面13に取り付ける第1取付工程について説明する。
第1取付工程では、壁面13と基台部材20との間にスペーサー30を介在させた状態で、3つの固定部材12を用いて基台部材20を壁面13に固定する。このとき、スペーサー30は、基台部材20の裏面に粘着テープ等を用いて仮止めしておいてもよい。なお、本実施形態において、固定部材12を壁面13に対して差し込む方向、すなわち、基台部材20の壁面13に対する取付方向は、奥行き方向Yとなる。
【0040】
第1取付工程においては、3つの固定部材12の軸部12aを基台部材20の3つの挿通孔21に挿入して壁面13に対する基台部材20の位置を仮決めした後、頭部12bによって基台部材20を移動不能に固定する前に、固定部材12の挿入を一時停止して、基台部材20の位置を調整する。
【0041】
例えば、壁面13がブロックやタイル、サイディングなどによって形成されることによって凹凸を有する場合には、壁面13と3つの挿通孔21との距離が等しくなるように基台部材20を固定すると、基台部材20が水平または垂直に対して傾いたりねじれたりしてしまうおそれがある。
【0042】
そのため、固定部材12の頭部12bを基台部材20の表面側に係止させた状態で軸部12aの壁面13への挿入深さを変化させつつ、各挿通孔21の壁面13に対する距離を調整することによって、基台部材20の傾きやねじれを補正する。このとき、基台部材20と壁面13との間に弾性変形可能なスペーサー30を配置しておくと、スペーサー30が圧縮変形することによって、基台部材20が壁面13に対して傾いたりねじれたりした状態で固定されることが許容される。
【0043】
なお、基台部材20の外形を正面視矩形状にしておくと、基台部材20の上端及び下端が水平をなすとともに、側端が垂直をなすように、基台部材20の向きを調整することができる。ただし、基台部材20の外形が正面視略矩形状でない場合でも、基台部材20の表面に、水平及び垂直の基準となるように直交する2本の線を記しておけば、これら線を目安として、基台部材20の水平位置及び垂直位置を補正することができる。
【0044】
また、
図3に示すように、基台部材20に設けられた2つの調整孔21R,21Lが、基準孔21Cを中心とする円弧(
図3に一点鎖線で示す)に沿って延びる長孔である場合には、基準孔21Cに挿通した固定部材12を中心に基台部材20を回動させることができる。そして、
図3に二点鎖線で示すように基台部材20を回動させることによって、基台部材20の上端及び下端が水平をなすとともに側端が垂直をなすように、基台部材20の傾きを補正することが可能になる。なお、2つの調整孔21R,21Lを幅方向Xに並ぶように配置しておけば、基台部材20の水平に対する傾きの有無を判別しやすい。
【0045】
このようにして、基台部材20の壁面13に対する位置や傾きを補正した後、固定部材12をさらに壁面13に埋め込んで、頭部12bによって基台部材20を移動不能に固定することによって、第1取付工程が完了する。
【0046】
続いて、表札15を表札保持部材40に取り付ける第2取付工程について説明する。
表札15を表札保持部材40に取り付ける前に、まず、係合ピン47を表札保持部材40の表札保持部41に設けた取付孔48に組み付けておく。
【0047】
その後、
図4に示すように、表札保持部材40の表札保持部41の表面(
図4では左面)に、例えば粘着テープ等からなる接着層16を介在させて、名入れが完了した表札15を取り付ける。なお、係合ピン47の軸部45の端部(
図4では左端)が表札保持部41の表面に突出している場合には、接着層16の厚みによってこの突出部分を覆って、平坦な接着層16に表札15が接着されるようにする。
【0048】
次に、表札15が取り付けられた表札保持部材40を基台部材20に取り付ける第3取付工程について説明する。
表札15が取り付けられた表札保持部材40を基台部材20に取り付ける際には、まず、
図4に示すように、表札保持部材40を奥行き方向Yに移動させて、表札保持部材40に取り付けた係合ピン47の係止突部46を基台部材20の挿通部26に挿通する。
【0049】
続いて、係合ピン47の軸部45を案内部27に沿わせつつ、表札保持部材40を鉛直下方に移動させる。そして、係合ピン47の軸部45が案内部27の鉛直方向における途中位置(例えば、中間地点付近)に到達すると、挟持部43の先端(鉛直下端)が基台部材20の裏面に係合する。
【0050】
その位置からさらに表札保持部材40を鉛直下方に移動させると、挟持部43が板ばね部42の付勢力に抗して壁面13に近づく方向に変位して、表札保持部41との間に表札保持部材40を挟む。そして、板ばね部42の接続部44が表札保持部材40の鉛直上端と係合すると、表札保持部材40の鉛直下方への移動が規制される。このとき、係合ピン47の軸部45は案内部27の下端付近に到達する。
【0051】
なお、基台部材20と壁面13との間に切り欠き部32を有するスペーサー30を配置しておくことによって、基台部材20の裏面と壁面13との間に隙間が形成されるので、その隙間において挟持部43の変位や係合ピン47の移動が許容される。
【0052】
ここで、案内部27は基端(鉛直上端)が挿通部26に接続されるとともに先端が係止部28に接続されているので、案内部27の下端付近で表札15及び表札保持部材40の移動方向を案内部27の屈曲方向(
図2では右方)に変化させると、係合ピン47の軸部45は案内部27の屈曲した先端部に設けられる係止部28と係合する。
【0053】
これにより、
図5に示すように、係合ピン47の係止突部46が案内孔25の下端付近に係止され、表札保持部材40の鉛直方向、奥行き方向Yとなる後方向及び後ろ方向の逆方向となる前方向、並びに幅方向X(
図2では右方向)への移動が規制される。
【0054】
また、表札保持部材40は、上端側の変位が板ばね部42によって抑制される一方で、下端側の変位が係止突部46の案内孔25への係止によって抑制されるので、基台部材20からの脱落やがたつきが抑制される。例えば、表札保持部材40が板ばね部42を備える一方で係合ピン47を備えない場合には、表札15の裏面に風が吹き込んだ場合などに下端側が前方に浮き上がるおそれがあるが、係合ピン47が基台部材20に係止されることによって、こうした浮き上がりが抑制される。さらに、表札保持部材40の板ばね部42は鉛直下方に差し込むように基台部材20に取り付けられるので、表札保持部材40は鉛直上方に移動すると基台部材20から外れるが、係合ピン47が案内部27の屈曲した先端部に係止されることによって、鉛直上方への移動が規制される。
【0055】
次に、表札取付具11の作用について説明する。
表札取付具11は、表札15よりも外形を小さくすることによって、壁面13への取り付け時に外部への露出が抑制されるために、壁面13や表札15のデザインを変更した場合にも、美観を損ねることなく使用することが可能である。すなわち、表札取付具11は、表札取付具11自体のデザイン等を変更することなく、任意の形状またはデザインの壁面13または表札15と組み合わせて使用することが可能であるため、汎用性が高い。
【0056】
ただし、基台部材20の外形を表札15よりも小さくすると、壁面13に不陸がある場合(壁面13の表面処理等に起因する凹凸がある場合)の影響が大きくなり、ねじ等の固定部材12で固定した場合に、水平または垂直に対して傾いたりねじれたりしてしまうことがある。その点、本実施形態の基台部材20は、正面視において同一直線上に無い3つの挿通孔21に固定部材12を挿通した状態で基台部材20の位置を重力方向、水平方向及び奥行き方向の3次元で補正することができるので、不陸を調整することができる。なお、3つの挿通孔21を互いに離れた位置に配置しておくと、より効率よく基台部材20の位置調整を行うことができる。
【0057】
また、表札15は、表札保持部材40の板ばね部42による挟持及び係合ピン47による係合によって基台部材20に着脱可能に取り付けられる。そのため、壁面13の完成後、位置調整を要する基台部材20を先に壁面13に取り付けておけば、表札15への名入れなどが遅れた場合にも、表札15が完成した段階で容易かつ速やかに壁面13に取り付けることが可能である。また、後に表札15の表記やデザインを変更した場合にも、新たな表札15を表札保持部材40に取り付ければ、容易かつ速やかに表札15を交換することが可能になる。
【0058】
すなわち、表札保持部材40を幅方向Xの反対方向(
図2では左方向)に移動させて係合ピン47と係止部28との係合を解除した後、係合ピン47を案内部27に沿わせつつ鉛直上方に移動させると、板ばね部42による基台部材20の挟持が解除される。そして、挿通部26を通じて係合ピン47を案内孔25から抜くと、表札保持部材40が基台部材20から取り外される。
【0059】
そのため、別の表札15を取り付けた表札保持部材40を用意すれば、その表札保持部材40を基台部材20に取り付けることによって、壁面13への取付時に位置調整を要する基台部材20及びスペーサー30を壁面13から取り外すことなく、表札15を交換することができる。したがって、例えば住宅の分譲中には住所や地番などを表記した表札15を壁面13に取り付けておき、住宅の分譲後に所有者の名称を表記した表札15に交換する、といったことを容易に行うことができる。
【0060】
さらに、表札15を取り付けた後に表札15の傾きやねじれを発見した場合には、表札15を表札保持部材40とともに基台部材20から取り外して、固定部材12としてのねじを締め直すことによって、基台部材20の位置の再調整を行うことが可能である。そして、基台部材20の位置の再調整を行うことによって、表札15の傾きやねじれを抑制することができる。
【0061】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)基台部材20を壁面13に取り付ける際に、同一直線上に無い3つの挿通孔21に固定部材12を挿通することによって、スペーサー30を介して各挿通孔21の壁面13に対する距離を調整することができる。そして、このように同一直線上に無い3点を支点として基台部材20の位置を調整することにより、重力方向(下方向Z)と、水平方向(幅方向X)と、重力方向及び水平方向の双方に直交する奥行き方向Yと、の3方向に対して3次元で基台部材20を変位させることができる。そのため、壁面13に凹凸がある場合にも、基台部材20の位置を三次元で調整することにより、表札保持部材40を介して基台部材20に取り付けられる表札15の水平及び垂直に対する傾きやねじれを補正することができる。したがって、壁面13に取り付ける表札の傾きやねじれを抑制することができる。
【0062】
(2)2つの調整孔21R,21Lは、基準孔21Cよりも開口面積が広く、基準孔21Cからの距離が等しい位置に配置される長孔であるので、基準孔21Cに挿通した固定部材12を回動軸として、2つの調整孔21R,21Lに挿通された固定部材12と長孔である調整孔21R,21Lとの隙間の範囲内で、基台部材20の回動が許容される。したがって、基台部材20を固定部材12で壁面13に取り付けるときに、基準孔21Cに挿通した固定部材12を中心に基台部材20を回動させて位置を調整することで、表札保持部材40を介して基台部材20に取り付けられる表札15の傾きを抑制することができる。
【0063】
(3)表札15が取り付けられた表札保持部材40は、表札保持部41と挟持部43とで基台部材20を挟むことによって基台部材20に対して着脱可能に取り付けられるので、表札15の設置及び交換を容易かつ速やかに行うことができる。また、表札保持部材40の挟持部43は板ばね部42を構成するので、板ばね部42の付勢力によって、表札15を基台部材20に保持させることができる。
【0064】
(4)表札保持部材40を基台部材20に取り付けるときに、表札保持部材40の表札保持部41に突設された係合ピン47の係止突部46を基台部材20の挿通部26に挿通し、係合ピン47を案内部27の基端側から先端側に移動させて、案内部27の先端部にある係止部28に係止突部46を係止させることができる。そして、係止部28は案内部27の屈曲した先端部に設けられるので、係止突部46と係止部28との係合の解除を抑制することができる。これにより、表札保持部材40を基台部材20に対して確実に係合させて、表札15を保持する表札保持部材40の基台部材20からの脱落を抑制することができる。
【0065】
(5)壁面13への取付状態において、基台部材20、スペーサー30及び表札保持部材40の壁面13への投影面積が表札15の壁面13への投影面積よりも小さいので、表札15の裏側に表札取付具11を隠して、視認されにくい状態にすることができる。
【0066】
(変更例)
上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・基台部材20の形状は、上記実施形態に例示した形状に限らない。例えば、基台部材20の外形を正面視三角形状に変更して、三角形の角部分にそれぞれ挿通孔21を配置するようにしてもよい。あるいは、基台部材20の外形を正面視十字状に変更して、中心部分から突出する4つの部分にそれぞれ挿通孔21及び案内孔25を配置するようにしてもよい。なお、挿通孔21の数は4つ以上に変更することもできる。
【0067】
・基台部材20に形成する調整孔21R,21Lのうちいずれか一方(例えば調整孔21L)を、基準孔21Cと同様の平面視円形の孔にしてもよい。この場合には、基準孔21Cに挿通した固定部材12を中心に、長孔である調整孔21Rに挿通された固定部材12と調整孔21Rとの隙間の範囲内で基台部材20を回動させて傾きを調整した後に、3つの挿通孔21に挿通した固定部材12によって基台部材20の不陸を調整すればよい。
【0068】
・スペーサー30の形状は、上記実施形態に例示した形状に限らない。例えば、固定部材12の軸部12aを挿通するための孔が形成された円環状の3つのスペーサーをそれぞれ基台部材20の挿通孔21と対応する位置に配置して用いることもできる。あるいは、正面視において同一直線上に無い3つの挿通孔21に囲まれる領域(例えば、基台部材20の裏面において、3つの挿通孔21と案内孔25との間となる領域)にスペーサーを配置して用いることもできる。または、正面視において同一直線上に無い3つの挿通孔21と基台部材20の端縁との間となる領域にスペーサーを配置することもできる。すなわち、スペーサー30は、少なくとも、3つの挿通孔21を支点とする基台部材20の3次元での位置調整を行うにあたり、基台部材20の変位を許容可能な位置に配置されていればよい。また、表札保持部材40に板ばね部42を設けない場合には、スペーサー30に第1切り欠き部32aを設けなくてもよいし、表札保持部材40に係合ピン47を設けない場合には、スペーサー30に第2切り欠き部32bを設けなくてもよい。
【0069】
・表札保持部材40の形状は、上記実施形態に例示した形状に限らない。例えば、板ばね部42を表札保持部41とは別体として形成した上で、表札保持部41に対して取り付けるようにしてもよい。このようにすれば、幅方向Xにおける寸法を板ばね部42と表札保持部41とで異ならせることができるので、例えば表札保持部41の外形を表札15よりも大きくして、表札保持部材40の表札保持部41を表札15の枠部材として機能させることもできる。そして、この場合にも、表札保持部材40の表札保持部41の形状やデザインを表札15や壁面13に合わせて変化させる一方で、板ばね部42や基台部材20、スペーサー30などは表札15や壁面13のデザインにかかわらず、共通化させることができる。なお、板ばね部42を表札保持部41と別体に形成する場合には、板ばね部42をワイヤー状の金属線を折り曲げて形成したばね部等に変更することもできる。
【0070】
・表札15を取り付ける壁面13が板材の表面である場合には、固定部材12としてボルトを用いるとともに、同ボルトに板材の裏面からナットを係合(螺合)させて、基台部材20を壁面13に取り付けるようにしてもよい。
【0071】
・表札取付具11によって壁面13に取り付けられる表札15に記載される内容は氏、氏名または社名などの名称に限らず、例えば住所や地番、あるいは様々な情報による案内、図案など、任意に変更することができる。すなわち、表札取付具11は、壁面13に取り付ける表札15を容易に交換することができるので、任意の情報を表示する表札15を壁面13に取り付ける場合に用いることができる。
【解決手段】表札取付具11は、固定部材12によって壁面13に取り付けられる基台部材20と、基台部材20と壁面13との間に配置されるスペーサー30と、表札15を保持した状態で基台部材20に取り付けられる表札保持部材40と、を備え、基台部材20は、固定部材12を挿通可能であって、同一直線上に無い少なくとも3つの挿通孔21を有する。