特許第5788558号(P5788558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788558
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】工具用バッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   H01M2/10 A
   H01M2/10 U
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-89076(P2014-89076)
(22)【出願日】2014年4月23日
(62)【分割の表示】特願2010-184989(P2010-184989)の分割
【原出願日】2010年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-194939(P2014-194939A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2014年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英二
(72)【発明者】
【氏名】小倉 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】田賀 秀行
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−188717(JP,A)
【文献】 特開2001−155700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のセルを収納する上部開放型のハウジング本体部と、
前記ハウジング本体部の上部開口を塞ぐ蓋部と、
前記蓋部の上面で前後方向に延び、電動工具本体との連結に使用されるスライドレールと、
前記蓋部の爪用開口から上方に突出し、前記スライドレールに対する電動工具本体のスライドロックを行うロック爪を備えるフックと、
前記フックを上限位置に保持するバネと、
前記フックの側面形状に合わせてほぼ等しい側面形状で形成されており、前記蓋部とハウジング本体部との内側で前記フックを収納するフック収納部と、
を有する工具用バッテリであって、
前記フック収納部は、前記複数のセルの少なくとも一部上方から覆えるように形成されており、前記フック収納部には、底板部と、前記底板部と一体的に形成されて、その底板部の左右に設けられる側板部と、前記底板部の前端位置で左右の側板部をつなぐ縦板部と、前記底板部の後下端位置で左右の側板部をつなぐ下側部とが設けられていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項2】
請求項1に記載された工具用バッテリであって、
前記フック収納部には上方に突出する第1の突起が形成されており、
前記フックには下方に突出する第2の突起が形成されており、
前記バネが第1の突起と第2の突起との間に装着されていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された工具用バッテリであって、
前記蓋部とハウジング本体部との内側には、前記フック収納部の前側に正電極と負電極とが配置されていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された工具用バッテリであって、
前記フック収納部を構成する縦板部と左右の側板部とが、前記蓋部の内側の対応する位置に形成されたシール部と合わされるように構成されていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された工具用バッテリであって、
前記ハウジング本体部内には、左右の仕切り板と、前側仕切り板と、後縦壁部とにより、前記フック収納部と前記フックの下部が収納される収納室が形成されていることを特徴とする工具用バッテリ。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された工具用バッテリであって、
前記フックは、上面水平部と湾曲部と下側縦壁部とを備え、前記上面水平部の前端位置にロック爪が形成されていることを特徴とする工具用バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具本体に対して一定方向にスライドすることにより連結されるバッテリであり、スライドロック用のフックを備え、バッテリハウジングの爪用開口から前記フックのロック爪が突出可能、かつ前記バッテリハウジングの操作用開口の位置で前記フックのロック解除操作部が露出する構成の工具用バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する工具用バッテリが特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の工具用バッテリ100は、図10(A)(B)に示すように、電動工具本体110のバッテリ連結部112に対してその工具用バッテリ100のスライドレール102の先端(右端)を嵌合させた状態で、図中右方向にスライドさせることにより、その電動工具本体110に連結されるように構成されている。さらに、工具用バッテリ100(バッテリハウジング101)の左端位置には、図10(B)に示すように、その工具用バッテリ100と電動工具本体110とを連結した状態でスライドロック可能なフック105が設けられている。フック105は、バッテリハウジング101の上面の爪用開口101hから上方に突出可能に構成されたロック爪105rと、バッテリハウジング101の左側面に形成された開口101yの位置で露出するロック解除操作部105xとを備えており、コイルバネ106によって常に押上げ力を受けている。これにより、図10(B)に示すように、工具用バッテリ100が電動工具本体110に対して右端位置までスライドすると、フック105のロック爪105rがコイルバネ106の力でバッテリハウジング101の爪用開口101hから上方に突出し、電動工具本体110のロック壁面113と係合する。これにより、電動工具本体110に対する工具用バッテリ100のスライドロックが行なわれる。また、バッテリハウジング101の開口101yからフック105のロック解除操作部105xをコイルバネ106の力に抗して押下げることで、ロック爪105rが爪用開口101hに収納されて工具用バッテリ100のスライドロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−229895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工具用バッテリ100のバッテリハウジング101には、上記したように、フック105のロック爪105rを上方に突出させるための爪用開口101hと、フック105のロック解除操作部105xを操作可能にする開口101yとが設けられている。このため、例えば、工具用バッテリ100が雨等に濡れると、水がバッテリハウジング101の爪用開口101h等から内部に浸入することがある。バッテリハウジング101内には、フック105の収納部分とセル(図示省略)の収納部分とが特に仕切られていないため、バッテリハウジング101内に浸入した水がセル(図示省略)の位置まで流れることがある。水がセルの収納部分まで到達すると、セル間で短絡等が発生して故障の原因になる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、バッテリハウジングの爪用開口等から浸入した水がセルの位置まで到達しないようにして、工具用バッテリの故障防止を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、複数本のセルを収納する上部開放型のハウジング本体部と、前記ハウジング本体部の上部開口を塞ぐ蓋部と、前記蓋部の上面で前後方向に延び、電動工具本体との連結に使用されるスライドレールと、前記蓋部の爪用開口から上方に突出し、前記スライドレールに対する電動工具本体のスライドロックを行うロック爪を備えるフックと、 前記フックを上限位置に保持するバネと、前記フックの側面形状に合わせてほぼ等しい側面形状で形成されており、前記蓋部とハウジング本体部との内側で前記フックを収納するフック収納部とを有する工具用バッテリであって、前記フック収納部は、前記複数のセルの少なくとも一部上方から覆えるように形成されており、前記フック収納部には、底板部と、前記底板部と一体的に形成されて、その底板部の左右に設けられる側板部と、前記底板部の前端位置で左右の側板部をつなぐ縦板部と、前記底板部の後下端位置で左右の側板部をつなぐ下側部とが設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、バッテリハウジング内には、フックのロック爪が爪用開口から突出するロック位置と、そのロック爪が爪用開口の内側に収納されるロック解除位置との間で前記フックが移動できるように、そのフックを収納するフック収納部が設けられている。このため、爪用開口からバッテリハウジング内に入り込んだ水はフック収納部内に導かれる。
【0008】
請求項2の発明によると、フック収納部には上方に突出する第1の突起が形成されており、前記フックには下方に突出する第2の突起が形成されており、前記バネが第1の突起と第2の突起との間に装着されていることを特徴とする。
請求項3の発明によると、蓋部とハウジング本体部との内側には、前記フック収納部の前側に正電極と負電極とが配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明によると、フック収納部を構成する縦板部と左右の側板部とが、蓋部の内側の対応する位置に形成されたシール部と合わされるように構成されていることを特徴とする。
請求項5の発明によると、ハウジング本体部内には、左右の仕切り板と、前側仕切り板と、後縦壁部とにより、前記フック収納部と前記フックの下部が収納される収納室が形成されていることを特徴とする。
請求項6の発明によると、フックは、上面水平部と湾曲部と下側縦壁部とを備え、前記上面水平部の前端位置にロック爪が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、セルに水が付着することによる工具用バッテリの故障防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る工具用バッテリの平面図である。
図2】前記工具用バッテリの縦断面図(図1のII-II矢視断面図)である。
図3】前記工具用バッテリのバッテリハウジングを表す分解斜視図である。
図4】前記バッテリハウジングの蓋及びフック等を表す後面図である。
図5】前記バッテリハウジングの蓋及びフック等を後上方から見た分解斜視図である。
図6】前記バッテリハウジングの蓋及びフック等を下方から見た分解斜視図である。
図7】電動工具本体と工具用バッテリとを連結する様子を表す斜視図である。
図8】電動工具本体と工具用バッテリとを連結する様子を表す縦断面図(図7のVIII-VIII矢視断面図)である。
図9】変更例に係る工具用バッテリのバッテリハウジングの分解斜視図である。
図10】従来の電動工具本体のバッテリ連結部を表す側面図(A図)、電動工具本体と工具用バッテリとの連結状態を表す側面図(B図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図9に基づいて本発明の実施形態1に係る工具用バッテリについて説明する。なお、図中に記載された前後左右及び上下は、工具用バッテリの前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<工具用バッテリ30の概要について>
工具用バッテリ30は、図2図3に示すように、複数本の蓄電池S(以下、セルSという)を収納する上部開放型のハウジング本体部32と、そのハウジング本体部32の上部開口を塞ぐ蓋部34とを備えている。ハウジング本体部32と蓋部34とは平面略角形に形成されており、そのハウジング本体部32に対して蓋部34が周囲8箇所でネジ止め可能に構成されている。即ち、ハウジング本体部32と蓋部34とが本発明のバッテリハウジングに相当する。前記工具用バッテリ30の蓋部34の上面には、図3等に示すように、その左右両側位置に電動工具本体20のバッテリ連結部26(図7図8参照)との連結に使用されるスライドレール36が前後方向に延びるように形成されている。左右のスライドレール36は、レール本体部36mと、そのレール本体部36mの上側面から幅方向外側に一定寸法だけ突出する横方向突条部36tとから構成されている。また、左右のスライドレール36の後端位置には、ストッパ部36uが形成されている。
【0015】
蓋部34の上面後部には、図1図3に示すように、左右のスライドレール36の間に、電動工具本体20の板状のターミナル(図示省略)がそれぞれ前方から挿入可能に構成された左右一対の案内スリット37が前記スライドレール36と平行に形成されている。そして、左右の案内スリット37の内側(蓋部34の内側)に、図1に示すように、工具用バッテリ30の正電極37p、負電極37nが設置されている。また、右側の案内スリット37の横には電動工具本体20の信号ターミナルが前方から挿入可能に構成された短スリット38が形成されており、その短スリット38の内側に工具用バッテリ30の信号電極38sが設置されている。さらに、蓋部34の上面後部には、図3に示すように、左右の案内スリット37の後方にスライドロック用のフック50のロック爪52が突出可能に構成された平面略コ字形の爪用開口39が形成されている。フック50は、後記するように、ロック爪52が前記爪用開口39から上方に突出するようなバネ力を受けた状態で、ハウジング本体部32と蓋部34(バッテリハウジング)の後端部分に収納されている。
【0016】
工具用バッテリ30を電動工具本体20に連結させるには、図7図8に示すように、電動工具本体20のバッテリ連結部26の左右内側に形成された角溝26m(図8参照)の端部に対して工具用バッテリ30の左右に形成された横方向突条部36tの端部を嵌合させる。次に、前記嵌合状態を保持した状態で工具用バッテリ30を電動工具本体20に対して前方(図7において左方向)にスライドさせる。これにより、電動工具本体20と工具用バッテリ30とが機械的に連結されるとともに、電動工具本体20の左右のターミナル(図示省略)等が工具用バッテリ30の正電極37p、負電極37n等にそれぞれ電気的に接続される。そして、工具用バッテリ30が電動工具本体20のバッテリ連結部26に対して限界位置までスライドした段階で、フック50のロック爪52がバネ力で電動工具本体20のロック壁面(図示省略)と係合する。これにより、電動工具本体20に対する工具用バッテリ30のスライドがロックされる。また、後記するように、フック50をバネ力に抗して押下げることで、ロック爪52が爪用開口39に収納されて工具用バッテリ30のスライドロックが解除される。
【0017】
<フック50及びフック収納室について>
フック50は、上記したように、電動工具本体20に対する工具用バッテリ30のスライドロックを行う部材であり、図3等に示すように、上面水平部50uと湾曲部50wと下側縦壁部50dとから構成されている。そして、フック50の上面水平部50uの先端(前端)位置にロック爪52が上方に突出するように形成されている。ロック爪52は、左右の三角形状の爪片52kと、両爪片52kをつなぐ連結縦板52cとから平面略コ字形に形成されている。また、フック50の上面水平部50uには、図3に示すように、ロック爪52の後方中央にガイド孔53が形成されている。さらに、フック50の湾曲部50wと下側縦壁部50dとの境界位置には、スライドロックを解除する際にそのフック50を押下げるためのロック解除操作部54が指を下方からU字形に囲める形状で形成されている。また、フック50の下側縦壁部50dの下端には、図4図5に示すように、コイルバネ56(図2参照)の一端(上端)が嵌め込まれる突起50tが下方に突出するように形成されている。フック50は、上面水平部50uのガイド孔53に蓋部34の後部天井面に形成されたガイド縦ピン34z(図2図6参照)が通されることで、そのガイド縦ピン34zに沿って上下動可能に構成されている。さらに、フック50は上下動が可能な状態で、フック収納室形成部材60に収納されている。
【0018】
フック収納室形成部材60は、図3に示すように、フック50の側面形状に合わせてほぼ等しい側面形状で形成された上部開放型の容器であり、底板部61と左右の側板部62,63と上部縦板部64と下側板部65とから構成されている。そして、フック収納室形成部材60の左右の側板部62,63の間隔が、図5等に示すように、フック50の幅寸法とほぼ等しい値に設定されている。即ち、フック50は、蓋部34のガイド縦ピン34zとフック収納室形成部材60の左右の側板部62,63とにガイドされた状態で上下動できるようになる。さらに、フック収納室形成部材60の下端位置(下側板部65)には、フック50の突起50tと対向する位置にコイルバネ56の他端(下端)が嵌め込まれる突起65tが形成されている。即ち、フック50は、そのフック50の突起50tとフック収納室形成部材60の突起65tとの間に装着されたコイルバネ56(図2参照)のバネ力で常に上方の押圧力を受けるようになる。
即ち、前記下側板部65が本発明の下側部に相当する。
【0019】
フック収納室形成部材60の上部縦板部64と左右の側板部62,63とは、図6に示すように、蓋部34の後部天井面に前記ガイド縦ピン34zを前側と左右の三方から囲むように形成されたシール溝部34mに対して下方から嵌め込まれるように構成されている。さらに、フック収納室形成部材60の底板部61には、上部縦板部64と左右の側板部62,63とが蓋部34の後部天井面のシール溝部34mに嵌め込まれた状態で、その蓋部34のガイド縦ピン34zに対応する位置にネジ孔67が形成されている。なお、蓋部34のガイド縦ピン34zには、前記ネジ孔67と同径の雌ネジ孔(記号省略)が軸方向に形成されている。上記構成により、フック収納室形成部材60を蓋部34の後部天井面のガイド縦ピン34zにネジ止めすることが可能になる。
即ち、シール溝部34mを構成する壁部が本発明のシール部に相当する。
【0020】
即ち、フック50とフック収納室形成部材60とを蓋部34の後部天井面に取付ける場合には、先ず、フック50をフック収納室形成部材60に収納し、そのフック50の突起50tとフック収納室形成部材60の突起65tとの間にコイルバネ56を装着する。次に、蓋部34のガイド縦ピン34zをフック50のガイド孔53に挿通させ、フック50のロック爪52を蓋部34の爪用開口39から突出させる。この状態で、図4に示すように、フック50のロック解除操作部54が蓋部34の後端面に形成された切欠き状の操作用開口34hに嵌め込まれるようになる。
【0021】
次に、フック収納室形成部材60の上部縦板部64と左右の側板部62,63とを蓋部34の後部天井面のシール溝部34mに嵌め込み、図6に示すように、フック収納室形成部材60を蓋部34のガイド縦ピン34zにネジ孔67と雌ネジ孔とを利用してネジB1止めする(図2参照)。これにより、フック収納室形成部材60が蓋部34の後部天井面に固定される。即ち、この状態で、フック50は、図4に示すように、コイルバネ56(図4では省略)のバネ力を受けてロック爪52が蓋部34の爪用開口39から突出し、かつロック解除操作部54が蓋部34の操作用開口34hと嵌合する上限位置(ロック位置)に保持される。なお、フック50のロック解除操作部54をコイルバネ56のバネ力に抗して押下げることで、フック50を下動させてロック爪52を爪用開口39の内側に収納することができる。即ち、フック50をロック解除位置に保持することができる。
【0022】
図4に示すように、フック収納室形成部材60が蓋部34の後部天井面に固定された状態で、フック収納室形成部材60の下半分は蓋部34から下方に突出している。そして、蓋部34から突出しているフック収納室形成部材60の下半分が、図2に示すように、ハウジング本体部32の後部に収納されるようになっている。また、蓋部34から突出しているフック収納室形成部材60の開口縁には、図4図5に示すように、一定幅でフランジ部68が形成されている。ハウジング本体部32の後部には、図3に示すように、フック収納室形成部材60の下半分が収納される収納室が左右の仕切り板32e,32fと、前側仕切り板32xと、ハウジング本体部32の後縦壁部32wとによって形成されている。そして、ハウジング本体部32の後縦壁部32wと左右の仕切り板32e,32fとの境界位置、及びハウジング本体部32の後縦壁部32wと前記収納室の底部32b(図2参照)との境界位置に、フック収納室形成部材60の開口縁のフランジ部68が嵌め込まれるスリット状の溝32mが形成されている。これにより、蓋部34のフック収納室形成部材60の下半分をハウジング本体部32の収納室に収納する過程で、そのフック収納室形成部材60のフランジ部68が前記スリット状の溝32mに嵌め込まれ、フック収納室形成部材60の開口がハウジング本体部32の後縦壁部32wによって塞がれるようになる。即ち、フック50が収納されるフック収納室形成部材60の内側と、ハウジング本体部32のセルSが収納される空間とは、フック収納室形成部材60、前側仕切り板32xによって完全に仕切られるようになる。
【0023】
前記ハウジング本体部32の後縦壁部32wの上端には、図3等に示すように、前記蓋部34の操作用開口34hと連続する位置に切欠き状の操作用開口32hが形成されている。そして、蓋部34の操作用開口34hとハウジング本体部32の操作用開口32hとによって形成される開口部の範囲内でフック50のロック解除操作部54が上下動可能となっている。また、ハウジング本体部32の後縦壁部32wの下端位置には、図3に示すように、フック収納室形成部材60の内側と外部とを連通させるための連通穴32yが形成されている。これにより、フック収納室形成部材60内に入り込んだ水を外部に排出できるようになる。即ち、フック収納室形成部材60と蓋部34の内壁面、及びハウジング本体部32の後縦壁部32wとによって構成される空間が本発明のフック収納室に相当する。また、前記連通穴32yが本発明のフック収納室内に溜まった水を排出するための穴に相当する。
【0024】
<電極収納室について>
蓋部34の天井面には、図3図6に示すように、工具用バッテリ30の正電極37p、負電極37n、及び信号電極38sを収納する電極収納室形成部材40がフック収納室形成部材60の前側に取付け可能に構成されている。電極収納室形成部材40は、図3に示すように、上部と前方が開放された角形容器状に形成されており、底板部42と左右の側板部43,44と後縦板部46とを備えている。そして、電極収納室形成部材40の右側に正電極37p、その左隣に信号電極38sが配置されており、電極収納室形成部材40の左側に負電極37nが配置されている。また、底板部42の後部には、正電極37pと負電極37nの近傍位置に、蓋部34の天井面に突出形成された左右の位置決めピン34p,34p(図6参照)が通される左右のガイド孔部48,48が設けられている。さらに、左右のガイド孔部48,48の間には、雌ネジ孔を備える連結ピン47が形成されている。また、電極収納室形成部材40の前方の開放部分には、電極37p,37n,38sよりも低い突条45が左右方向に延びるように形成されている。
【0025】
蓋部34の天井面には、図6に示すように、電極収納室形成部材40の突条45が嵌合可能に構成された溝部34eが所定位置に形成されており、連結ピン47の雌ネジ孔に対応する位置にネジ孔34f(図3図6参照)が形成されている。これにより、電極収納室形成部材40のガイド孔部48,48に蓋部34の天井面の位置決めピン34p,34pを通し、電極収納室形成部材40の突条45を蓋部34の天井面の溝部34eに嵌合させた状態で、図2に示すように、電極収納室形成部材40を連結ピン47、雌ネジ孔、及びネジ孔34fを利用して蓋部34の天井面にネジB2止め固定することができる。即ち、蓋部34の天井面と電極収納室形成部材40とによって形成される空間が本発明の電極収納室に相当する。
【0026】
<本実施形態に係る工具用バッテリ30の長所について>
本実施形態に係る工具用バッテリ30によると、ハウジング本体部32と蓋部34(バッテリハウジング)内には、フック50のロック爪52が爪用開口39から突出するロック位置と、そのロック爪52が爪用開口39の内側に収納されるロック解除位置との間で前記フック50が移動できるように、そのフック50を収納するフック収納室形成部材60(フック収納室)が設けられている。このため、例えば、爪用開口39及び操作用開口34h,32hから浸入した水はフック収納室形成部材60内(フック収納室内)に溜まるようになる。さらに、前記フック収納室とハウジング本体部32内のセルSの収納部分とはフック収納室形成部材60等によって仕切られているため、フック収納室内に浸入した水がセルSの収納部分まで到達することはない。このため、セルSに水が付着することによる工具用バッテリ30の故障を防止できる。
【0027】
また、フック収納室の下部には、そのフック収納室内に浸入した水を排出する穴(連通穴32y)が形成されているため、フック収納室に入り込んだ水を 速やかに排出できる。また、フック収納室は、バッテリハウジング(蓋部34、ハウジング本体部32)とは別部品であるフック収納室形成部材60をそのバッテリハウジングの内壁面に嵌め合わせることにより中空閉断面状に構成されているため、フック収納室をバッテリハウジングと一体で成形する場合と比較して成形が容易になる。また、電動工具本体20のターミナルが接続される電極37p,37n,38sが収納される電極収納室形成部材40が蓋部34の天井面(バッテリハウジング内)に設けられているため、例えば、蓋部34の案内スリット37等から浸入した水が電極収納室形成部材40内(電極収納室)に溜められて、その水がセルSの収納部分まで到達することがない。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、フック収納室形成部材60と電極収納室形成部材40とを独立して製作する例を示したが、図9に示すように、電極収納室形成部材40からフック収納室形成部材60に水が流れるような連通路49を電極収納室形成部材40の後端位置に形成することも可能である。これにより、電極収納室形成部材40に浸入した水をフック収納室形成部材60に浸入した水と共に連通穴32yから排出できるようになる。また、フック収納室形成部材60と蓋部34の接続部や、電極収納室形成部材40と蓋部34の接続部等にパッキン等を設けることによって、セルSの収納部分に対して水の浸入を防ぐようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
20・・・・電動工具本体
30・・・・工具用バッテリ
32・・・・ハウジング本体部
32y・・・連通穴(水を排出する穴)
32h・・・操作用開口
34h・・・操作用開口
37p・・・正電極
37n・・・負電極
39・・・・爪用開口
40・・・・電極収納室形成部材
49・・・・連通路
50・・・・フック
52・・・・ロック爪
54・・・・ロック解除操作部
60・・・・フック収納室形成部材
S・・・・・セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10