特許第5788639号(P5788639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788639
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】アンテナ装置、およびレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/12 20060101AFI20150917BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20150917BHJP
   H01P 1/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01P3/12
   G01S7/03 210
   G01S7/03 230
   H01P1/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-60184(P2010-60184)
(22)【出願日】2010年3月17日
(65)【公開番号】特開2011-193421(P2011-193421A)
(43)【公開日】2011年9月29日
【審査請求日】2012年11月13日
【審判番号】不服2014-23354(P2014-23354/J1)
【審判請求日】2014年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 哲也
【合議体】
【審判長】 大塚 良平
【審判官】 新川 圭二
【審判官】 山中 実
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−322101(JP,A)
【文献】 特開2007−53514(JP,A)
【文献】 特開2006−332757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/12
G01S 7/03
H01P 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を放射するスロット導波管と、
前記電磁波の放射方向に垂直な管軸の導波部を両端部に有し、一方の端部側において前記スロット導波管に接続され前記電磁波を導波する給電用導波管と、を備え、
前記給電用導波管の他方の端部側を、管軸回りに前記給電用導波管を回転させる回転機構を介して固定台に接続する、アンテナ装置であって、
前記給電用導波管は、前記一方の端部側における該給電用導波管の前記スロット導波管に接続される部分の第1管軸が、前記他方の端部側における前記回転機構を介して固定台に接続される部分の第2管軸を挟み、前記放射方向と反対側に位置するとともに、前記放射方向と反対側に位置する前記スロット導波管の背面側で、このスロット導波管に接続され
前記第2管軸は、前記回転機構の回転中心と一致している、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記回転機構は、前記固定台に対して、前記給電用導波管を前記第2管軸回りに回転可能に支持するロータリジョイントである、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1、または2に記載のアンテナ装置において、
前記給電用導波管は、前記固定台に接続される部分と前記スロット導波管に接続される部分の間に屈曲部を有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1、または2に記載のアンテナ装置において、
前記給電用導波管は、前記固定台に接続される部分と前記スロット導波管に接続される部分の間に、
前記放射方向に平行する方向に向かって垂直に屈曲した第1のコーナー部と、
前記直交する方向に向かって垂直に屈曲した第2のコーナー部と、をそれぞれ交互に複数段階に接続した屈曲部を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1、または2に記載のアンテナ装置において、
前記給電用導波管は、前記固定台に接続される部分と前記スロット導波管に接続される部分の間に、前記放射方向に平行する方向に向かって垂直に曲げられた複数のコーナー部をクランク状に接続した屈曲部を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアンテナ装置において、
前記屈曲部の前記放射方向に平行する方向の長さが、管内波長の1/4以下であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記給電用導波管は、磁界面が前記電磁波放射方向に向けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記給電用導波管は、電界面が前記電磁波放射方向に向けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置が放射した電磁波のエコー信号を受信する受信回路と、
を備えたレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁波を放射するアンテナ装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶用のアンテナ装置の構造としては、導波管スロットアンテナが知られている(特許文献1を参照)。特許文献1に記載されているように、導波管スロットアンテナは、スロット導波管の下方に給電用導波管が配置される。
【0003】
しかし、アンテナ装置は、回転時の風圧を抑えるために、全体の高さ(レドームを含む全高)を抑えることが望まれている。
【0004】
アンテナ全体の高さを抑えるためには、例えば、図1に示すように、電磁波放射のスロット導波管51の後方に給電用の導波管52を配置することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−73212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、給電用導波管をスロット導波管の後方に配置すると、アンテナの回転中心軸が後方側に位置することになり、アンテナ全体の重心位置と大きく離れ、機械的負荷が高くなる。
【0007】
そこで、この発明は、従来のアンテナ装置よりも小型化しながら、機械的負荷を低減したアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンテナ装置は、電磁波を放射するスロット導波管と、前記電磁波の放射方向に垂直な管軸の導波部を両端部に有し、一方の端部側において前記スロット導波管に接続され前記電磁波を導波する給電用導波管と、を備え、前記給電用導波管の他方の端部側を、管軸回りに前記給電用導波管を回転させる回転機構を介して固定台に接続している。給電用導波管は、前記一方の端部側における該給電用導波管の前記スロット導波管に接続される部分の第1管軸が、前記他方の端部側における前記回転機構を介して固定台に接続される部分の第2管軸を挟み、前記放射方向と反対側に位置する。また、給電用導波管は、前記放射方向と反対側に位置する前記スロット導波管の背面側で、このスロット導波管に接続されているとともに、前記第2管軸は、前記回転機構の回転中心と一致している。
回転機構は、例えば、固定台に対して、給電用導波管を第2管軸回りに回転可能に支持するロータリジョイントで構成される。
【0009】
このように、本発明のアンテナ装置は、スロット導波管と接続される部分における給電用導波管の第1管軸が、反対側(後方)に位置する。給電用導波管は、第2管軸回りに給電用導波管を回転させる回転機構を介して固定台に接続している。給電用導波管の固定台との接続箇所(回転機構を介した接続箇所)が正面方向にオフセットされているため、アンテナ装置の回転中心位置がアンテナ装置全体の重心位置に近づくことになる。そのため、給電用導波管を後方に配置してアンテナ装置の高さを抑えながらも、給電用導波管と固定台との接続に用いる回転機構(ロータリジョイント等)の各種部品に懸かる機械的負荷を抑えることができる。
【0010】
また、給電用導波管は、前記固定台に接続される部分と前記スロット導波管に接続される部分の間に屈曲部を有する。屈曲部の構造は、種々の態様が考えられるが、電磁波放射方向に平行する方向に向かって垂直に曲げられた複数のコーナー部をクランク状に接続した構造であることがより好ましい。
【0011】
この場合、屈曲部の長さ(管軸方向における長さ)は、斜め方向に曲げるよりも短くなるため、アンテナ装置と固定台との距離が短くなり、機械強度的にもより好ましく、外観上も好ましい。また、形状も簡易であるため、加工も容易である。
【0012】
なお、一般的に、導波管を平面状に90度曲げた場合、整合が取れないことが知られているが、オフセットする長さをλg/4(λg:管内波長)以下とすることで、2つの直角コーナーにおける互いのリアクタンス成分を打ち消すことにより、実用的なレベルまで低反射とすることが可能となる。例えば、周波数が9.41GHzであれば、波長は約11mmであるため、オフセット量を10mm程度とすれば、大きな反射は生じない(−30dB以下となる)。
【0013】
なお、給電用導波管は、電界面(E面)側がオフセットされる態様であっても、磁界面(H面)側がオフセットされる態様であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、従来よりも小型化し、機械的負荷を低減したアンテナ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来のアンテナ装置の構造を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置1の構造を示す図である。
図3】従来のアンテナ装置と第1の実施形態に係るアンテナ装置の比較図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る屈曲部121の反射特性を示した図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置2の構造を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る屈曲部221の反射特性を示した図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置3の構造を示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る屈曲部321の反射特性を示した図である。
図9図9(A)は、オフセット量と屈曲長さの関係を示した図であり、同図(B)は、周波数と各係数の関係を示した図である。
図10図10(A)は、E面オフセットを行う場合の導波管の構造を示した図であり、同図(B)は反射特性を示した図である。
図11図11(A)は、E面オフセットを行う場合のオフセット量と屈曲長さの関係を示した図であり、同図(B)は、周波数と各係数の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図2は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置1の構造を示す図である。同図(A)は横断面図であり、同図(B)は、アンテナ装置1における給電用導波管を模式的に示した斜視図である。同図(A)の横断面図においては、電磁波放射方向である紙面右方向をX方向(正面方向)とし、アンテナ装置の上面方向である紙面上方向をY方向、電磁波放射方向に対して右側方向となる紙面手前方向をZ方向とする。なお、本実施形態においては、アンテナ装置の一例として導波管スロットアンテナについて説明するが、パッチアンテナ等の他の態様であってもよい。
【0017】
アンテナ装置1は、電磁波放射源となるスロット導波管11、給電用導波管12、およびレドーム13を備えている。スロット導波管11の全体と、給電用導波管12の一部は、レドーム13に覆われている。
【0018】
スロット導波管11は、Z方向および−Z方向に向かって長軸が配置された方形導波管であり、狭面の一方に複数のスロットが設けられている。他方の狭面は、長軸方向の中心位置(または端部)において給電用導波管12に接続されている。
【0019】
スロット導波管11は、これら複数のスロットから電磁波を放射し、物標で反射したエコー信号を受信する。スロット導波管11の前方には、図示は省略しているが、垂直方向の指向性を形成するためのホーン、または誘電体が配置される。そのため、アンテナ装置1の全体としての重心位置は、正面方向側に寄っていることになる。
【0020】
給電用導波管12は、スロット導波管11の背面方向(−X方向)に配置され、スロット導波管11に給電を行う。給電用導波管12は、下面方向(−Y方向)に向かって長軸が配置された方形導波管である。スロット導波管11の端部から給電を行う場合には、スロット導波管11の背面位置から、さらにZ方向および−Z方向に向かって方形導波管が延びるものとする。給電用導波管12は、壁の肉厚が位置によって異なり、例えばレドーム13との接続箇所は肉厚が厚くなっており、レドーム13を上下方向から挟みこむようになっている。なお、図示は省略しているが、給電用導波管12は、レドーム13との接続箇所で上面側の部品と下面側の部品に分かれ、レドーム13を挟んでネジ止めされ、固定されている。
【0021】
なお、同図(A)において、給電用導波管12は、狭面を正面方向(X方向)および背面方向(−X方向)に配置しているが、広面をX方向および−X方向に配置してもよい。
【0022】
このように、アンテナ装置1は、給電用導波管12をスロット導波管11の後方に配置することで、スロット導波管11の下方に配置する場合に比べ、全体の高さ(Y方向の長さ)を抑えることができる構造となっている。
【0023】
給電用導波管12の下端は、ロータリジョイント(図示は省略している。)を介して固定台14に接続される。固定台14は、船舶等の筐体に取り付けられ、当該筐体に固定されている。これにより、給電用導波管12は、アンテナ装置1全体を回転可能に固定台14に支持する。
【0024】
給電用導波管12は、上記ロータリジョイントを介して、図示しないサーキュレータやマグネトロン、受信回路(信号処理回路)等に接続されており、このマグネトロン等から供給された電磁波をスロット導波管11に伝送し、スロット導波管11で受信したエコー信号を信号処理回路に伝送する機能を有する。給電用導波管12は、スロット導波管11の接続箇所から下面側に向かって延びる途中で正面方向側に斜めに曲げられて斜め正面下面方向側に延び、その後さらに背面側に曲げられ、最終的に下面方向に向かって延び、固定台14に接続されるようになっている。つまり、給電用導波管12は、当該導波管のアンテナ(スロット導波管11)に接続される部分の管軸が、固定台14に接続される部分の管軸を挟んで放射方向と反対側に位置することになり、管軸方向が長軸の途中でX方向側にずらされ(オフセットされ)、固定台14との接続位置が、スロット導波管11との接続位置よりも正面側にオフセットされている。このオフセットされた長さをX1とし、給電用導波管12の曲げられた部分である屈曲部121のY方向の長さをY1とする。なお、屈曲部121は、内面が平面状に折れ曲がる態様を示しているが、曲面状に滑らかに曲げられる態様であってもよい。
【0025】
給電用導波管12は、固定台14との接続箇所が正面方向にX1だけオフセットされているため、アンテナ装置1の回転中心位置は、アンテナ装置全体の重心位置に近づくことになる。そのため、本実施形態に示すアンテナ装置1の構造であれば、給電用導波管12を後方に配置してアンテナ装置の高さを抑えながらも、ロータリジョイント等の各種部品に懸かる機械的負荷を抑えることができる。
【0026】
さらに、図3に示すように、本実施形態のアンテナ装置では、従来のアンテナ装置よりも固定台との接続箇所が正面方向にオフセットされていることから、レドーム13内の後方の空間に給電用導波管を配置することができ、アンテナの全長をオフセット量X1の長さだけ短くすることができる。例えば、従来のアンテナ装置における全長Lが180mm程度とすると、第1の実施形態におけるアンテナ装置の全長L1は、オフセット量X1を10mm程度とすれば170mm程度となり、大幅な小型化を実現することができる。
【0027】
屈曲部121は、実用的なレベルまで低反射となるように緩やかな角度で曲げられている。屈曲部長さY1は、伝送する電磁波の周波数によって決まる。例えば、伝送する電磁波の周波数が9.41GHzであり、オフセット量X1を10mm程度とする場合、屈曲部長さY1を26mm程度とすれば大きな反射は生じない。
【0028】
図4は、屈曲部121の周波数特性図(反射特性)を示す図である。同図に示すグラフの横軸は周波数、縦軸は反射レベル(dB)である。同図に示すように、9.41GHzにおける反射レベルは−40dB未満となっており、−30dBにおける帯域幅も十分に取れている。したがって、上記のオフセット量X1および屈曲部長さY1であれば、十分に整合が取れていることがわかる。
【0029】
<第2実施形態>
次に、図5は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置2の構造を示す図である。同図(A)は横断面図であり、同図(B)は、アンテナ装置2における給電用導波管を模式的に示した斜視図である。同図(A)においては、電磁波放射方向である紙面右方向をX方向(正面方向)とし、アンテナ装置の上面方向である紙面上方向をY方向、電磁波放射方向に対して右側方向となる紙面手前方向をZ方向とする。なお、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0030】
アンテナ装置2は、電磁波放射源となるスロット導波管11、給電用導波管22、およびレドーム13を備えている。スロット導波管11と、給電用導波管22の一部は、レドーム13に覆われている。
【0031】
給電用導波管22は、スロット導波管11の背面方向(−X方向)に配置され、スロット導波管11に給電を行う。給電用導波管22は、下面方向(−Y方向)に向かって長軸が配置された方形導波管である。スロット導波管11の端部から給電を行う場合には、スロット導波管11の背面位置から、さらにZ方向および−Z方向に向かって方形導波管が延びるものとする。給電用導波管22は、壁の肉厚が位置によって異なり、例えばレドーム13との接続箇所は肉厚が厚くなっており、レドーム13を挟みこむようになっている。なお、図示は省略しているが、給電用導波管22についても、レドーム13との接続箇所で上面側の部品と下面側の部品に分かれ、レドーム13を挟んでネジ止めされ、固定されている。
【0032】
なお、給電用導波管22についても、狭面を正面方向(X方向)および背面方向(−X方向)に配置しているが、広面をX方向および−X方向に配置してもよい。このように、アンテナ装置2についても、給電用導波管22をスロット導波管11の後方に配置することで、全体の高さ(Y方向の長さ)を抑えることができる構造となっている。
【0033】
給電用導波管22の下端は、ロータリジョイント(図示は省略している。)を介して固定台14に接続される。これにより、給電用導波管22は、アンテナ装置2全体を回転可能に固定台14に支持する。
【0034】
給電用導波管22は、上記ロータリジョイントを介して、図示しないサーキュレータやマグネトロン、信号処理回路等に接続されており、このマグネトロン等から供給された電磁波をスロット導波管11に伝送し、スロット導波管11で受信したエコー信号を信号処理回路に伝送する機能を有する。給電用導波管22についても、管軸方向が長軸の途中でX方向側にオフセットされ、固定台14との接続位置が、スロット導波管11との接続位置よりも正面側にオフセットされている。
【0035】
具体的には、給電用導波管22は、スロット導波管11の接続箇所から下面側に向かって延びる途中で多段階に微少な長さで90度曲げられる。すなわち、下面側に向かって延びる途中で、まずは正面方向に向かって90度曲げられたコーナー部(第1のコーナー部)を形成し、微少な長さだけ当該正面方向に延ばされた後、下面方向に向かって90度曲げられたコーナー部(第2のコーナー部)を形成し、その後さらに微少な長さだけ下面方向に延ばされた後、正面方向に向かって90度曲げられたコーナー部(第1のコーナー部)を有し、同じく微少な長さだけ延ばされた後、下面方向に90度曲げられたコーナー部(第2のコーナー部)を形成し、最終的に下面方向に向かって延び、固定台14に接続されるようになっている。
【0036】
このオフセットされた長さは、第1実施形態の給電用導波管12と同様にX1であるが、給電用導波管22の曲げられた部分である屈曲部221のY方向の長さはY2となる。屈曲部長さY2は、伝送する電磁波の周波数によって決まる。例えば、伝送する電磁波の周波数が9.41GHzであり、オフセット量X1を10mm程度とする場合、屈曲部長さY2を22.5mm程度とすれば大きな反射は生じない(屈曲部121よりも短くなる)。なお、屈曲部221においても、内面が平面状に折れ曲がる態様を示しているが、曲面状に滑らかに曲げられる態様であってもよい。
【0037】
第2実施形態の屈曲部221は、多段階に微少な長さで導波管を曲げることで、角部分をテーパ状に切り取った様な構造(第1の実施形態の様な構造)を近似するものである。したがって、この場合も実用的なレベルまで低反射となる構造となっている。
【0038】
図6は、屈曲部221の周波数特性図(反射特性)を示す図である。同図に示すグラフの横軸は周波数、縦軸は反射レベル(dB)である。同図に示すように、9.41GHzにおける反射レベルは−40dB未満となっており、−30dBにおける帯域幅も十分に取れている。したがって、上記のオフセット量X1および屈曲部長さY2であれば、屈曲部221の構造であっても十分に整合が取れていることがわかる。
【0039】
なお、第2実施形態のアンテナ装置2においても、図3に示した例と同様に、レドーム内の後方空間に給電用導波管22を配置することができるため、従来のアンテナ装置に比べ、全長をオフセット量の分だけ短くすることができる。
【0040】
<第3実施形態>
次に、図7は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置3の構造を示す図である。同図(A)は横断面図であり、同図(B)は、アンテナ装置3における給電用導波管を模式的に示した斜視図である。同図(A)においては、電磁波放射方向である紙面右方向をX方向(正面方向)とし、アンテナ装置の上面方向である紙面上方向をY方向、電磁波放射方向に対して右側方向となる紙面手前方向をZ方向とする。なお、第1および第2の実施形態と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
アンテナ装置3は、電磁波放射源となるスロット導波管11、給電用導波管32、およびレドーム13を備えている。スロット導波管11と、給電用導波管32の一部は、レドーム13に覆われている。
【0042】
給電用導波管32は、スロット導波管11の背面方向(−X方向)に配置され、スロット導波管11に給電を行う。給電用導波管32は、下面方向(−Y方向)に向かって長軸が配置された方形導波管である。スロット導波管11の端部から給電を行う場合には、スロット導波管11の背面位置から、さらにZ方向および−Z方向に向かって方形導波管が延びるものとする。給電用導波管32は、壁の肉厚が位置によって異なり、例えばレドーム13との接続箇所は肉厚が厚くなっており、レドーム13を挟みこむようになっている。なお、図示は省略しているが、給電用導波管32についても、レドーム13との接続箇所で上面側の部品と下面側の部品に分かれ、レドーム13を挟んでネジ止めされ、固定されている。
【0043】
なお、給電用導波管32についても、狭面を正面方向(X方向)および背面方向(−X方向)に配置しているが、広面をX方向および−X方向に配置してもよい。このように、アンテナ装置3についても、給電用導波管32をスロット導波管11の後方に配置することで、全体の高さ(Y方向の長さ)を抑えることができる構造となっている。
【0044】
給電用導波管32の下端は、ロータリジョイント(図示は省略している。)を介して固定台14に接続される。これにより、給電用導波管32は、アンテナ装置2全体を回転可能に固定台14に支持する。
【0045】
給電用導波管32は、上記ロータリジョイントを介して、図示しないサーキュレータやマグネトロン、信号処理回路等に接続されており、このマグネトロン等から供給された電磁波をスロット導波管11に伝送し、スロット導波管11で受信したエコー信号を信号処理回路に伝送する機能を有する。給電用導波管32についても、管軸方向が長軸の途中でX方向側にオフセットされ、固定台14との接続位置が、スロット導波管11との接続位置よりも正面側にオフセットされている。
【0046】
具体的には、給電用導波管32は、スロット導波管11の接続箇所から下面側に向かって延びる途中で正面方向側に90度曲げられた後、オフセット量X1だけ正面方向に延ばされ、さらに下面方向に90度曲げられ、最終的に下面方向に向かって延び、固定台14に接続されるようになっている。すなわち、2つの直角コーナーをクランク状につなげた構造となっている。
【0047】
このオフセットされた長さは、第2の実施形態の給電用導波管22と同様にX1であるが、給電用導波管32の曲げられた部分である屈曲部321のY方向の長さはY3となる。屈曲部長さY3は、伝送する電磁波の周波数によって決まる。例えば、伝送する電磁波の周波数が9.41GHzであり、オフセット量X1を10mm程度とする場合、屈曲部長さY2を17.8mm程度とすれば大きな反射は生じない(屈曲部221よりもさらに短くなる)。オフセット量X1と屈曲部長さY3の関係については後に詳しく述べる。
【0048】
一般的に、導波管を平面状に90度曲げた場合、整合が取れないことが知られているが、第3の実施形態の屈曲部321は、オフセット量X1の長さをλg/4(λg:管内波長)以下とすることで、2つの直角コーナーにおける互いのリアクタンス成分を打ち消すことにより、実用的なレベルまで低反射となるような構造となっている。例えば、周波数が9.41GHzであれば、波長は約11mmであるため、オフセット量X1を10mm程度とすればλg/4未満となり、大きな反射は生じない。
【0049】
図8は、屈曲部321の周波数特性図(反射特性)を示す図である。同図に示すグラフの横軸は周波数、縦軸は反射レベル(dB)である。同図に示すように、屈曲部321においても、9.41GHzにおける反射レベルは−40dB未満となっており、−30dBにおける帯域幅も十分に取れている。したがって、上記のオフセット量X1であれば、屈曲部321の構造であっても十分に整合が取れていることがわかる。
【0050】
なお、第3実施形態のアンテナ装置3においても、図3に示した例と同様に、レドーム内の後方空間に給電用導波管32を配置することができるため、従来のアンテナ装置に比べ、全長をオフセット量の分だけ短くすることができる。
【0051】
次に、第3の実施形態における屈曲部321について、オフセット量X1と屈曲部長さY3の関係について説明する。図9(A)は、オフセット量X1を変化させたときに、実用的なレベルまで低反射となる場合の屈曲部長さY3の値を示す図である。同図(A)に示すグラフのように、屈曲部長さY3は、オフセット量X1に比例する値を示す。すなわち、屈曲部長さY3は、単純な比例式であるY3=a*X1+bで表される。
【0052】
また、図9(A)に示すように、オフセット量X1と屈曲部長さY3の関係は、周波数によって異なる。すなわち、図9(B)に示すように、上記Y3=a*X1+bで示される係数aおよび係数bは、周波数によって異なる。同図(B)に示すように、係数aおよび係数bも周波数に比例する。
【0053】
したがって、第3の実施形態の屈曲部321では、その構造を設計することが非常に容易である。また、第2実施形態の屈曲部221に比べ、形状が簡易であるため、加工も容易である。さらに、第3の実施形態の屈曲部321では、上述した様に、第1実施形態や第2実施形態に比べ、屈曲部長さが短くなるため、アンテナ装置と固定台との距離が短くなり、機械強度的にもより好ましく、外観上も好ましい。
【0054】
なお、本発明のアンテナ装置は、上述の第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態に示した構造に限らず、回転中心位置を電磁波放射方向側にオフセットする構造であればどの様な構造であってもよい。例えば、第3の実施形態に示した屈曲部321において、内壁面を90度曲げるではなく、45度の傾斜をつけたテーパ状のコーナーとすることも可能である。
【0055】
<応用例>
図10(A)は、応用例に係る給電用導波管42の構造を模式的に示した斜視図である。給電用導波管42は、管軸方向を広面側に長さX2だけオフセットした構造である。すなわち、給電用導波管42における屈曲部421は、第3の実施形態における屈曲部321と同様に、2つの直角コーナーをクランク状につなげた構造となっているが、曲げられる方向がH面側ではなくE面側になっているものである。オフセット量X2は、第3の実施形態に示した屈曲部321と同様に、λg/4(λg:管内波長)以下となっている。オフセット量X2をλg/4以下とすることで、やはり2つの直角コーナーにおける互いのリアクタンス成分を打ち消すことにより、実用的なレベルまで低反射となるような構造となっている。例えば、周波数が9.41GHzであれば、波長は約11mmであるため、オフセット量X1を10mm程度とすればλg/4未満となり、大きな反射は生じない。
【0056】
この場合においても、同図(B)に示すように、9.41GHzにおける反射レベルは−40dB未満となっており、−30dBにおける帯域幅も十分に取れている。したがって、広面側にオフセットした場合であっても十分に整合が取れていることがわかる。
【0057】
また、屈曲部421の屈曲部長さY4は、伝送する電磁波の周波数によって決まる。例えば、伝送する電磁波の周波数が9.41GHzであり、オフセット量X2を10mm程度とする場合、屈曲部長さY4を8.5mm程度とすれば大きな反射は生じない。
【0058】
図11(A)は、オフセット量X2を変化させたときに、実用的なレベルまで低反射となる場合の屈曲部長さY4の値を示す図である。同図(A)に示すグラフのように、屈曲部長さY4も、オフセット量X2に比例する値を示す。すなわち、屈曲部長さY4は、第3の実施形態と同様に、単純な比例式であるY4=a*X2+bで表される。
【0059】
また、オフセット量X2と屈曲部長さY4の関係は、周波数によって異なる。すなわち、図11(B)に示すように、上記Y4=a*X2+bで示される係数aおよび係数bは、周波数によって異なる。同図(B)に示すように、係数aおよび係数bも周波数に比例する。
【0060】
したがって、応用例に示すような広面側にオフセットした屈曲部421においても、その構造を設計することが非常に容易であり、形状が簡易であるため、加工も容易である。
【0061】
なお、第1の実施形態および第2の実施形態で示した構造においても、狭面側にオフセットする屈曲部の構造とする態様が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…アンテナ装置
11…スロット導波管
12…給電用導波管
13…レドーム
14…固定台
121…屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11