特許第5788655号(P5788655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788655
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】接着剤供給装置及び接着剤供給方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20150917BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20150917BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20150917BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B05C11/10
   B05C5/00 101
   B05D3/02 B
   B05D7/24 301P
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-222906(P2010-222906)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2012-76011(P2012-76011A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】成田 悠
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−303728(JP,A)
【文献】 特開平10−096906(JP,A)
【文献】 特開平10−168417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00−21/00
B05D1/00−7/26
B29C63/00−65/82
B29D9/00
B32B1/00−43/00
C09J1/00−5/10,9/00−201/10
G02F1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶モジュールと、液晶モジュールに貼り合せ対象となるワークのいずれかに対して、温度に応じて粘度が変化する接着剤を供給する接着剤供給装置において、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに対して接着剤を供給する接着剤供給部と、
前記接着剤供給部による接着剤の供給前、供給時及び供給後の少なくともいずれかにおいて、接着剤を加温する第1の加温部と、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに供給され展延した後の接着剤を、貼り合わせ前に冷却する冷却部と、を有し、
前記冷却部は、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の周辺部のみを冷却すること、
を特徴とする接着剤供給装置。
【請求項2】
液晶モジュールと、液晶モジュールに貼り合せ対象となるワークのいずれかに対して、温度に応じて粘度が変化する接着剤を供給する接着剤供給装置において、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに対して接着剤を供給する接着剤供給部と、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークを支持し、前記接着剤供給部により供給された接着剤を加温する第1の加温部と、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに供給され展延した後の接着剤を、貼り合わせ前に冷却する冷却部と、を有し、
前記第1の加温部は、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の塗布領域の中央部のみを加温すること、
を特徴とする接着剤供給装置。
【請求項3】
前記冷却部による冷却後、貼り合せ直前の接着剤を加温する第2の加温部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤供給装置。
【請求項4】
前記第2の加温部は、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の一部のみを加温することを特徴とする請求項3記載の接着剤供給装置。
【請求項5】
液晶モジュールと、液晶モジュールに貼り合せ対象となるワークのいずれかに対して、温度に応じて粘度が変化する接着剤を供給する接着剤供給装置において、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに対して接着剤を供給する接着剤供給部と、
前記接着剤供給部による接着剤の供給前、供給時及び供給後の少なくともいずれかにおいて、接着剤を加温する第1の加温部と、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに供給され展延した後の接着剤を、貼り合わせ前に冷却する冷却部と、
前記冷却部による冷却後、貼り合せ直前の液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の中央部を加温する第2の加温部と、
を有することを特徴とする接着剤供給装置。
【請求項6】
前記第1の加温部は、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の一部のみを加温することを特徴とする請求項2又は5記載の接着剤供給装置。
【請求項7】
前記冷却部は、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の一部のみを冷却することを特徴とする請求項1又は5記載の接着剤供給装置。
【請求項8】
液晶モジュールと、液晶モジュールに貼り合せ対象となるワークのいずれかに対して温度に応じて粘度が変化する接着剤を供給する接着剤供給方法において、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに対する接着剤の供給前、供給中及び供給後の少なくともいずれかで、接着剤を加温し、
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに供給され展延した後の接着剤を、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の周辺部のみ、貼り合わせ前に冷却することを特徴とする接着剤供給方法。
【請求項9】
冷却された接着剤を、貼り合せ直前に加温することを特徴とする請求項8記載の接着剤供給方法。
【請求項10】
液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の一部のみを、貼り合せ直前に加温することを特徴とする請求項9記載の接着剤供給方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、貼り合せられるワークに接着剤を供給する技術に改良を施した接着剤供給装置及び接着剤供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイは、液晶モジュール、操作用のタッチパネル、表面を保護する保護パネル等を積層することにより構成されている。これらの液晶モジュール、タッチパネル、保護パネル等(以下、ワークと呼ぶ)は、液晶パネルの筐体に組み込まれる。
【0003】
このように積層される各ワークの間に空気の層が入ると、外光反射により、液晶の表示面の視認性が低下する。これに対処するため、各ワークを貼り合せる際に、接着剤によって各ワークの間を埋めることにより、接着層を形成することが行われている。
【0004】
このため、液晶ディスプレイの製造には、少なくとも一方のワークに対して接着剤を付着させる接着剤供給装置が必要となる。たとえば、基板に接着剤を塗布する技術として、特許文献1に示すものが提案されている。これは、スリットコート式の塗布装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−5682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液晶の表示面の視認性を均一にするためには、接着層は、厚み等が均一に形成されていることが望ましい。このため、従来技術においては、接着剤を塗布する器具、接着剤を塗布する態様等を工夫することにより、均一な塗布を実現しようとしている。
【0007】
しかし、接着剤は、たとえ均一に塗布できたとしても、その後、貼り合せ前に流動して、ワークからはみ出す可能性がある。これに対処するため、粘度の高い接着剤を用いて、流動を抑制する方法も考えられる。ただし、接着剤の粘度が高いと、逆に、塗布時に均一に広がり難いという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、ワークへの接着剤の均一な供給を実現しつつ、ワークからの流出を防止できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、液晶モジュールと、液晶モジュールに貼り合せ対象となるワークのいずれかに対して、温度に応じて粘度が変化する接着剤を供給する接着剤供給装置において、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに対して接着剤を供給する接着剤供給部と、前記接着剤供給部による接着剤の供給前、供給時及び供給後の少なくともいずれかにおいて、接着剤を加温する第1の加温部と、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークに供給され展延した後の接着剤を、貼り合わせ前に冷却する冷却部と、を有し、前記冷却部は、液晶モジュールあるいは貼り合せ対象となるワークにおける接着剤の周辺部のみを冷却することを特徴とする。
【0010】
以上のような発明では、接着剤が、ワークへの供給前、供給中若しくは供給後に加温されるので、接着剤の粘度が低下して、ワーク上での広がりが促進される。次に、接着剤が冷却されることにより、粘度が高まり、ワークからの流出が抑制され、はみ出しが防止される。
【0011】
他の態様は、前記冷却部による冷却後、貼り合せ前の接着剤を加温する第2の加温部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、冷却後、貼り合せ前の接着剤が加温されることにより、粘度が低下して、貼り合せ時の均一な広がりが可能となる。また、加温により、接着剤のクッション性の維持、粘着性の戻りによる接着ぬれ性の向上を図ることができる。
【0012】
他の態様は、ワークを支持する支持部を有し、前記支持部は、前記第1の加温部、前記冷却部の少なくとも一つであることを特徴とする。
他の態様は、ワークを支持する支持部を有し、前記支持部は、前記第2の加温部であることを特徴とする。
以上のような態様では、支持部によってワークを加温若しくは冷却することにより、接着剤の加温若しくは冷却を実現できる。
【0013】
他の態様は、前記第1の加温部は、ワークにおける接着剤の一部のみを加温することを特徴とする。
他の態様は、前記冷却部は、ワークにおける接着剤の一部のみを冷却することを特徴とする。
他の態様は、前記第2の加温部は、ワークにおける接着剤の一部のみを加温することを特徴とする。
以上のような態様では、ワークの一部のみを加温若しくは冷却とすることにより、流動の抑制とともに、クッション性の維持、粘着性の戻りによる接着ぬれ性の向上を図ることができる。
【0014】
他の態様は、前記第1の加温部は、加温室を有することを特徴とする。
他の態様は、前記冷却部は、冷却室を有することを特徴とする。
他の態様は、前記第2の加温部は、加温室を有することを特徴とする。
以上のような態様では、加温室若しくは冷却室を、ワークが通過することにより、ワーク上の接着剤が加温若しくは冷却される。
【0015】
他の態様は、前記第1の加温部は、接着剤に温風を吹き付ける吹付部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、温風の吹き付けにより接着剤の展延を促すことができる。
【0016】
他の態様は、前記冷却部は、接着剤に冷風を吹き付ける吹付部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、冷風の吹き付けにより、接着剤の流動を抑制して厚みや形状の維持を図ることができる。
【0017】
他の態様は、前記第2の加温部は、接着剤に温風を吹き付ける吹付部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、温風の吹き付けにより接着剤の粘度を低下させつつ、厚みや形状の維持を図ることができる。
【0018】
なお、上記の各発明は、接着剤供給方法の発明としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明によれば、ワークへの接着剤の均一な供給を実現しつつ、ワークからの流出を防止できる接着剤供給装置及び接着剤供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の全体構成を示す説明図であり、(A)は接着剤供給部、(B)は冷却部である。
図2図1の実施形態におけるワーク及び接着剤を示す説明図であり、(A)は供給時、(B)は展延時である。
図3図1の実施形態における貼合部の一例を示す説明図であり、(A)は真空引き時、(B)は貼り合わせ時である。
図4】第2の加温部を追加した実施形態を示す説明図であり、(A)は接着剤供給部、(B)は冷却部、(C)は加温部である。
図5図1の実施形態における加温室及び冷却室の配置例を示す説明図(A)〜(E)である。
図6】吹付部を用いた加温の一例を示す説明図であり、(A)は吹付時、(B)は展延時である。
図7】吹付部を用いた冷却の一例を示す説明図であり、(A)は吹付部単数、(B)は吹付部複数の例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[A.構成]
まず、本実施形態の接着剤供給装置(以下、本装置と呼ぶ)の構成を説明する。本装置は、図1に示すように、接着剤供給部(第1の加温部)1、冷却部2等を有している。貼り合わせの対象となるワークS1、S2は、これらの接着剤供給部1、冷却部2の間を、搬送部4によって移動可能に設けられている。
【0022】
接着剤供給部1は、ワークS1に対して、接着剤Rを供給する供給装置10を有している。供給装置10は、たとえば、図示しないタンクに収容された接着剤Rを、配管を介してワークS1に滴下するノズルを備えている。また、供給装置10は、たとえば、ノズルを走査する走査装置(図示せず)を備えている。
【0023】
そして、ワークS1を載置した載置部11は、熱電素子により構成されている。熱電素子としては、たとえば、ペルチェ素子が考えられるが、加温、冷却可能な素子であればよい。接着剤供給部1におけるワークS1は、載置部11によって加温される。このため、ワークS1に供給される接着剤Rも加温される。
【0024】
冷却部2は、載置部11によって、ワークS1を冷却することにより、ワークS1に供給された接着剤Rを冷却する構成部である。
【0025】
搬送部4は、ワークS1を、接着剤供給部1から冷却部2へと搬送する搬送装置40を有している。搬送装置40としては、たとえば、ターンテーブル、コンベア等及びその駆動機構が考えられる。ただし、上記各部の間でワークを搬送可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。この搬送装置40は、上記の載置部11に載置した状態で、ワークS1を搬送する。
【0026】
なお、冷却部2の後には、図3に示すように、貼合部5を設けることが考えられる。加温部3から貼合部5へのワークS1の搬送は、たとえば、上記の搬送装置40によって行う。この貼合部5は、ワークS1の接着剤Rに対して、ワークS2を貼り合わせる貼合装置50を有している。貼合装置50は、たとえば、真空チャンバ51、押圧装置52等を有している。
【0027】
真空チャンバ51は、貼り合わされるワークS1、S2の周囲を覆い、搬送部4との間を密閉することにより、真空室を構成するチャンバである。真空チャンバ51には、真空源(減圧装置)である減圧ポンプ(図示せず)が、配管を介して接続されている。また、真空チャンバ51は、図示しない昇降機構によって、昇降可能に設けられている。
【0028】
押圧装置52は、ワークS2を押圧することにより、ワークS1に対してワークS2を貼り付ける装置である。この押圧装置52は、たとえば、ワークS2を保持する保持部、保持部を昇降させる昇降機構などにより構成されている。
【0029】
[B.作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、図1〜3を参照して説明する。
【0030】
まず、図1に示すように、搬送装置40は、前工程から載置部11に載置されたワークS1を、接着剤供給部1に搬送する。この載置部11は、あらかじめ加温されている。接着剤供給部1においては、図1(A)に示すように、供給装置10が、ワークS1に対して接着剤Rを供給する。
【0031】
たとえば、ノズルからワークS1に接着剤Rを滴下する。このノズルを、走査装置によって走査することによって、ワークS1の広範な領域に接着剤Rを塗布することができる。たとえば、図2(A)に示すように、連続した曲線状としてもよいが、その他、屈曲線状に滴下しても、独立した複数の線状に滴下しても、散点的に滴下してもよく、その態様は自由である。
【0032】
このようにワークS1に供給された接着剤Rは、あらかじめ加温された載置部11によってワークS1が加温されているので、ワークS1に接触するとともに加温され、粘度が低下する。このため、接着剤Rが流動しやすくなり、図2(B)に示すように、ワークS1の面上に広がる(展延する)。
【0033】
次に、搬送装置40は、接着剤Rが供給されたワークS1を、冷却部2に搬送する。冷却部2においては、図1(B)に示すように、載置部11が、ワークS1を冷却する。これにより、ワークS1の接着剤Rも冷却され、粘度が高くなる。このため、接着剤Rが流動し難くなり、ワークS1から流出することが防止される。その後、搬送装置40は、ワークS1を貼合部5に搬送する。
【0034】
貼合部5においては、図3(A)に示すように、押圧装置52にワークS2を保持した真空チャンバ51が下降して、ワークS1、S2の周囲が密閉される。そして、減圧ポンプが作動することにより、真空チャンバ51内が減圧される。
【0035】
真空引き完了後は、図3(B)に示すように、押圧装置52が下降することにより、ワークS1に対して、ワークS2が押し付けられる。このとき、上記のように接着剤Rは冷却され、粘度が高まっているので、ワークS1、S2からの流出によるはみ出しが防止される。
【0036】
その後、排気路の開放等により真空破壊が行われ、真空チャンバ51が上昇することにより、貼り合わされたワークS1、S2は大気開放される。さらに、搬送装置40が、ワークS1、S2を貼合部5から次工程へと搬出する。たとえば、搬送装置40は、ワークS1、S2を、電磁波の照射により接着剤Rを硬化させる硬化部へと移動させる。
【0037】
[C.効果]
以上のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、接着剤Rの供給時の加温、その後の冷却という過程を経ることにより、接着剤Rの均一な広がりを実現しつつ、ワークS1からの流出によるはみ出しを防止できる。また、貼り合わせ時に、接着剤Rの粘度が高まっているので、押圧によっても厚みや形状が維持されやすく、厚みの均一化が図りやすい。このため、貼り合せ製品の品質を向上させ、歩留まりを向上させることができる。
【0038】
また、接着剤Rの加温と冷却を、ワークS1を載置した載置部11によって行うので、簡素な構成で、安価に製造できる。
【0039】
[D.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記の実施形態では、第1の加温部と冷却部を別に設けていた。しかし、第1の加温部と冷却部とを共通化して、共通の場所で行うように構成してもよい。たとえば、上記の実施形態における接着剤供給部1において、加温後の接着剤Rを冷却してもよい。これは、たとえば、ワークS1を加温していた載置部11を冷却に切替えることによって実現できるが、これに限定されず、後述する加温、冷却態様も適用可能である。
【0040】
このように接着剤が冷却されたワークS1は、たとえば、搬送装置40によって貼合部5に搬送される。この搬送中には、上記のように接着剤Rは冷却されているので、搬送の影響を受けて、塗布厚・形状が維持され、流出によるはみ出しが防止される。
【0041】
また、図4に示すように、接着剤供給部1(図4(A))及び冷却部2(図4(B))の後、貼合部5の手前に、第2の加温部として加温部3を設けてもよい(図4(C))。この加温部3は、載置部11によって、貼り合せ前のワークS1を加温することにより、ワークS1に供給された接着剤Rを加温する。
【0042】
この態様では、ワークS1は、接着剤供給部1において接着剤Rが供給されるとともに加温され(図4(A))、冷却部2において冷却される(図4(B))。その後、ワークS1は、搬送装置40によって加温部3に搬送される。
【0043】
加温部3においては、ワークS1とともに接着剤Rが加温されることにより、接着剤Rの粘度が低下する。この状態で、搬送装置40は、ワークS1を貼合部5に搬送する。貼合部5においては、ワークS1へのワークS2の貼り合せが行われる。この時には、加温により接着剤Rの粘度が低下しているので、均一な広がりの促進や気泡の巻き込み防止が実現できる。
【0044】
また、貼り合わせの直前に加温を行うことにより、粘度を低下させて、貼り合わせ時の均一な広がりの促進や気泡の巻き込み防止を図ってもよい。これは、たとえば、貼合部5において、載置部11がワークS1を加温すること(第2の加温部)によって実現できるが、これに限定されず、後述する加温態様も適用可能である。この場合も、冷却部2からの搬送中には、接着剤は冷却されており、第2の加温部による加温後は搬送を行わずにそのまま貼り合わせることができるので、搬送時に塗布厚・形状が維持され、流出によるはみ出しが防止される。
【0045】
これは、いわば貼合部と第2の加温部とを共通化して、共通の場所で行うように構成したものである。さらに、この態様と、上記の第1の加温部(接着剤供給部と共通化させたものも含む)と冷却部とを共通化した態様とを組み合わせることにより、搬送時には必ず接着剤が冷却されているようにして、加温された状態での搬送を排除できる。これにより、搬送時における塗布厚・形状の維持、流出によるはみ出しの防止を、より確実に実現することができる。
【0046】
また、第1の加温部、冷却部、第2の加温部としては、搬送装置による搬送経路において、接着剤の周囲を加温若しくは冷却する加温室、冷却室を用いることが考えられる。なお、以下の例で、第2の加温部である加温部3を省略することも可能である。
【0047】
まず、図5(A)は、冷却部2に冷却室22を設けた例である。この例は、以下の手順を経る。
(1) 載置部11によって加温したワークS1に対して、接着剤供給部1において接着剤Rを供給することにより、接着剤Rを加温する。
(2) 冷却室22である冷却部2において、ワークS1が通過することにより、接着剤Rが冷却される。
(3) 加温部3において、載置部11によってワークS1とともに接着剤Rが加温される。
【0048】
図5(B)は、接着剤供給部1、加温部3に加温室12、32を設けた例である。この例は、以下の手順を経る。
(1) 加温室12である接着剤供給部1において、接着剤Rを加温しながら供給する。
(2) 冷却部2において、載置部11によってワークS1とともに接着剤Rを冷却する。
(3) 加温室32である加温部3において、ワークS1が通過することにより、接着剤Rを加温する。
【0049】
図5(C)は、接着剤供給部1、加温部3に加温室12、32を設け、冷却部2に冷却室22を設けた例である。この例では、以下の手順を経る。
(1) 加温室12である接着剤供給部1において、接着剤Rを加温しながら供給する。
(2) 冷却室22である冷却部2において、ワークS1が通過することにより、接着剤Rを冷却する。
(3) 加温室32である加温部3において、ワークS1が通過することにより、接着剤Rを加温する。
【0050】
図5(D)は、接着剤供給部1に加温室12を設けた例である。この例では、以下の手順を経る。
(1) 加温室12である接着剤供給部1において、接着剤Rを加温しながら供給する。
(2) 冷却部2において、載置部11によってワークS1とともに接着剤Rを冷却する。
(3) 加温部3において、載置部11によってワークS1とともに接着剤Rを加温する。
【0051】
図5(E)は、加温部3に加温室32を設けた例である。この例では、以下の手順を経る。
(1) 載置部11によって加温したワークS1に対して、接着剤供給部1において接着剤Rを供給することにより、接着剤Rを加温する。
(2) 冷却部2において、載置部11によってワークS1とともに接着剤Rを冷却する。
(3) 加温室32である加温部3において、ワークS1が通過することにより、接着剤Rを加温する。
【0052】
かかる図5に示した例によれば、加温室12、冷却室22、加温室32において、加温、冷却を行う場合に、接着剤Rの表面から加温、冷却することができる。このため、加温と冷却との相互の切り換えを素早く行うことができる。なお、図5に示した例において、加温室12、32、冷却室22を通過する際に、載置部11による加温若しくは冷却を、付加的に行うか否かは自由である。
【0053】
また、加温室における加温、冷却室における冷却をどのような装置によって行うかも自由である。たとえば、オーブンや冷蔵庫のように室内の比較的広い範囲の温度を変えるものも適用可能である。また、ドライヤー、冷風機のように、室内の比較的狭い範囲の温度を変えるものも適用可能である。
【0054】
また、第1の加温部による接着剤の加温は、少なくともワークへの供給前、供給時、供給後(冷却及び貼合前)になされればよい。このため、たとえば、タンクや供給経路等、接着剤の通過する箇所のいずれかに、加温装置を設け、供給前にあらかじめ加温しておくことにより、接着剤を展延しやすくしてもい。また、たとえば、ワークへ接着剤を供給した後、載置部による加温若しくは加温室の通過等、第1の加温部によって、接着剤を加温することにより、接着剤を展延しやすくしてもよい。
【0055】
また、接着剤の加温、冷却は、接着剤の塗布領域の全体であっても、その一部であってもよい。たとえば、接着剤の塗布領域の中央部分のみを加温することにより若しくは周辺部のみを冷却することにより、周辺部は低温として流動を抑制することができる(土手部のような機能を果たす)。また、中央部は均一な厚さとしたり、クッション性の維持、粘着性の戻りによる接着ぬれ性の向上を図ることができる。これは、上記の第1の加温部、冷却部、第2の加温部のいずれに適用してもよい。部分的な加温、冷却は、たとえば、熱電素子を部分的に配置する、後述する吹付部を利用する、赤外線を照射する等の種々の方法が考えられる。
【0056】
さらに、第1の加温部、冷却部、第2の加温部のいずれかにおいて、温風若しくは冷風を吹き付ける吹付部を設けることも可能である。この場合、たとえば、図6(A)に示すように、吹付部6により温風を吹付けることにより、図6(B)に示すように、展延を促すことも可能である。また、たとえば、図7(A)に示すように、吹付部6により、接着剤Rの周囲に冷風を吹付けることにより、接着剤Rの形状位置を図ってもよい。吹付部6は、たとえば、図7(B)に示すように、複数あってもよい。
【0057】
また、ワークへの接着剤の供給、ワークの真空貼り合せ、ワークの搬送についても、現在又は将来において利用可能なあらゆる方法、装置が適用可能である。たとえば、接着剤の供給装置は、ローラによって塗布する装置、スキージによって塗布する装置、スピン塗布する装置等、どのような装置であってもよい。
【0058】
搬送装置も、たとえば、ターンテーブル、コンベア、送り機構等、どのような構造であってもよい。載置部は、たとえば、サセプタ等が考えられるが、ワークを支持できる支持部として機能するものであれば、どのような材質、形状であってもよい。水平方向に支持するものには限らない。支持部が、別の箇所に設けられた加温装置若しくは冷却装置によって、あらかじめ加温若しくは冷却されていて、搬送装置によって搬入された時に、ワークが載置されることにより、加温若しくは冷却されるようにしてもよい。
【0059】
ワークの搬送方法も、載置部に載置される場合には限定されない。移動する台上に、ワークが直接載置されていて、この台を支持部とすることも可能である。この支持部が、加温・冷却装置によって、第1の加温部において加温、冷却部において冷却、第2の加温部において加温される構成としてもよい。
【0060】
貼合部は、少なくとも一対のワークを貼り合わせることができる構成であれば、どのような装置であってもよい。必ずしも真空貼り合わせを行う装置には限定されない。ワークを保持する構造も、たとえば、メカチャック、静電チャック、真空チャック、粘着チャック等、どのような構造であってもよい。真空貼り合わせを行う場合、真空室は、真空とすることが可能な空間を構成するものであればよい。下側の部材が昇降して密閉、開放を行う構造でも、ワークの通路のみが開閉する構造でもよい。
【0061】
さらに、上記の作業の一部を手動により行う方法も考えられる。たとえば、ワークへの接着剤の供給を、作業者が、塗布、滴下等のための用具を用いて行うこともできる。使用する接着剤についても、電磁波の照射により硬化する樹脂が一般的であるが、加温、冷却により粘度が変わるものであればよく、現在又は将来において利用可能なあらゆる接着剤に適用可能である。
【0062】
また、貼り合せ対象となるワークは、カバーパネルと液晶モジュール若しくは液晶モジュールを構成する表示パネルとバックライト等が、典型例である。しかし、本発明の適用対象となる一対のワークは、一対の貼着対象となり得るものであれば、その大きさ、形状、材質等は問わない。たとえば、半導体ウェーハ、光ディスク等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…接着剤供給部
2…冷却部
3…加温部
4…搬送部
5…貼合部
6…吹付部
10…供給装置
11…載置部
12,32…加温室
22…冷却室
40…搬送装置
50…貼合装置
51…真空チャンバ
52…押圧装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7