特許第5788668号(P5788668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788668コク味が増強されたコーヒー含有飲料又は茶飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788668
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】コク味が増強されたコーヒー含有飲料又は茶飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20150917BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   A23F5/24
   A23F3/16
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-270840(P2010-270840)
(22)【出願日】2010年12月3日
(65)【公開番号】特開2012-115247(P2012-115247A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康陽
(72)【発明者】
【氏名】細見 知広
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−007200(JP,A)
【文献】 国際公開第89/008988(WO,A1)
【文献】 特開2009−219416(JP,A)
【文献】 特開2010−011781(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/005107(WO,A1)
【文献】 特開平05−304890(JP,A)
【文献】 特開昭59−021346(JP,A)
【文献】 特開昭60−210949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00−2/84
A23F 3/00−5/50
Food Science and Tech Abst(FSTA)/Foodline Science(ProQuest Dialog)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類含量が2.5w/v%以下であり、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを0.001質量%以上0.2質量%未満含有する、コーヒー含有飲料又は茶飲料。
【請求項2】
更に、高甘味度甘味料を含有する、請求項1に記載のコーヒー含有飲料又は茶飲料。
【請求項3】
高甘味度甘味料がスクラロース及び/又はアセスルファムカリウムである、請求項2に記載のコーヒー含有飲料又は茶飲料。
【請求項4】
糖類含量が2.5w/v%以下であるコーヒー含有飲料又は茶飲料に、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを0.001質量%以上0.2質量%未満添加することを特徴とする、コーヒー含有飲料又は茶飲料のコク味増強方法。
【請求項5】
高甘味度甘味料を含有し、糖類含量が2.5w/v%以下であるコーヒー含有飲料又は茶飲料に、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを0.001質量%以上0.2質量%未満添加することを特徴とする、飲料中の高甘味度甘味料の後引き改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類が低減されつつも十分なコク味が付与された、低糖若しくは無糖のコーヒー含有飲料及び茶飲料に関する。具体的には、本発明は、糖類含量が2.5w/v%以下に低減されたコーヒー含有飲料、並びに紅茶や緑茶等の茶飲料でありながら、糖類含量が2.5w/v%よりも高い飲料と遜色ない十分なコク味が付与され、かつコーヒー含有飲料や茶飲料自体の香味立ちに優れた飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー含有飲料や茶飲料といった、いわゆる嗜好性飲料は飲料市場の約4割弱を占める市場であり、朝専用コーヒーやノンカフェインタイプのコーヒー、カテキン含量を高めた緑茶等、バラエティに富んだ製品が市場で流通している。
特に近年人気を博しているのが低カロリーや無糖、低糖を謳った数々の商品であるが、水分含量が高い飲料において糖類含量を低減することはコクの低減に直結し、従前の製品に比べて物足りなさを感じる需要者も多い。
【0003】
特許文献1には、サイクロデキストリンを添加して飲料のコクを増強すると同時に、酸味、苦味、渋味、甘味などのカドをとり、のど越しのマイルドな飲料を製造する技術が開示されている。特許文献1の実施例にはコーヒーにサイクロデキストリンを添加することによりコクが増し、マイルドな風味の優れたものが得られたことが記載されている。
しかし、サイクロデキストリンは環状構造中に物質を包接する機能を有するため、コーヒーや茶飲料の香味発現を抑制し、香味立ちが極端に悪化するといった問題を抱えていた。
【0004】
特許文献2には、460nm〜520nmにヨード呈色を有する澱粉加水分解物が茶飲料に0.5〜4質量%含まれるように、茶抽出物に添加することを特徴とする茶飲料の製造方法が開示されている。特許文献2に開示された発明は、茶飲料の乳濁(クリームダウン)の防止を目的としており、茶飲料のコク味増強について何ら記載されていないどころか、DE10程度以下のデキストリン溶液は特殊なものを除き老化し易く、水溶液を長期保存すると、それ自体が白濁化することが明示されている。また、特許文献2に開示されたDE9以上のデキストリンを用いても、茶飲料に十分なコク味を付与することはできなかった。
【0005】
特許文献3には、可溶性コーヒー粉末1重量部に対し、5重量部以下の水溶性の難消化性デキストリンを混合した機能性コーヒーが開示されている。難消化性デキストリンは、一種の食物繊維として各種機能を有するが、コーヒーや茶飲料等に添加してコク味を増強するためには、1%を超える高い添加量での使用が必要であり、それによって飲料の香味立ちの悪化や飲み口の変化を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−145268号公報
【特許文献2】特開2003−145号公報
【特許文献3】特開2000−316478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術に鑑み、本発明では、糖類含量を2.5w/v%以下に低減しつつも、コク味が十分に付与された、コーヒー含有飲料及び茶飲料を提供することを特徴とする。
飲料中における糖類は、甘味の付与に加えて、固形分として飲料に飲みごたえを付与する役割を果たしており、糖類含量の低減に伴い、飲料のコク味は大きく減少し、糖類含量を2.5w/v%以下に低減させた、いわゆる低糖飲料、無糖飲料等の低カロリー飲料は、どうしても水っぽく薄い味となりやすい。
一方、糖類含量を低減することにより、コーヒーや茶葉本来の香味立ちは良好となるが、従来のデキストリンを用いた場合、十分なコク味を付与するために必要な添加量を加えると、かえって香味立ちがマスキングされ、糖類含量が高い飲料に劣ってしまう、飲料の水っぽい味に加え、デキストリン自体の味が飲料の呈味に直接影響を与えてしまうといった課題を抱えていた。
かかる課題にも鑑み、本発明では、糖類含量を2.5w/v%以下に低減させたコーヒー含有飲料や茶飲料自体の呈味や香味立ちに影響を与えることなく、十分なコク味が付与され、かつ良好な香り立ちを有する飲料を提供することを目的とする。
【0008】
また、コーヒー含有飲料、茶飲料のカロリー低減手段の一つとして、高甘味度甘味料の使用が挙げられるが、高甘味度甘味料は特有の甘味の後引き(残存感)を有し、消費者に敬遠される場合もある。本発明では、糖類含量を低減させた場合のコク味増強効果に加え、高甘味度甘味料を用いた場合に生じる甘味の後引きをも改善した飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、糖類含量が2.5w/v%以下であるコーヒー含有飲料又は茶飲料に対して、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満のデキストリンを添加することにより、コーヒー含有飲料や茶飲料本来の呈味や香味立ちに影響を与えることなく、十分なコク味が付与されたコーヒー含有飲料及び茶飲料を提供できることを見出した。更に、得られたコーヒー含有飲料及び茶飲料は、糖類含量が2.5w/v%より高いコーヒー含有飲料及び茶飲料に比べ、意外にもコーヒーや茶葉本来の香味立ちが良好であり、コク味及び香味立ちが優れた飲料を提供できることを見出した。
【0010】
本発明は以下の態様を有するコーヒー含有飲料及び茶飲料に関する;
項1.糖類含量が2.5w/v%以下であり、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを含有する、コーヒー含有飲料又は茶飲料。
項2.上記デキストリン含量が、0.2質量%未満である、項1に記載のコーヒー含有飲料又は茶飲料。
項3.更に、高甘味度甘味料を含有する、項1又は2に記載のコーヒー含有飲料又は茶飲料。
項4.高甘味度甘味料がスクラロース及び/又はアセスルファムカリウムである、項3に記載のコーヒー含有飲料又は茶飲料。
項5.糖類含量が2.5w/v%以下であるコーヒー含有飲料又は茶飲料に、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを添加することを特徴とする、コーヒー含有飲料又は茶飲料のコク味増強方法。
項6.高甘味度甘味料を含有し、糖類含量が2.5w/v%以下であるコーヒー含有飲料又は茶飲料に、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを添加することを特徴とする、飲料中の高甘味度甘味料の後引き改善方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、コーヒーや茶葉本来の香味立ちが優れ、かつ糖類含量が2.5w/v%以下に低減されているにも関わらず、糖類含量が2.5w/v%より高い飲料と遜色ない十分なコク味が付与されたコーヒー含有飲料、茶飲料を提供することができる。
更に、本発明によれば、糖類含量低減を目的として、高甘味度甘味料を添加したコーヒー含有飲料、茶飲料において、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きをも改善することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、糖類含量が2.5w/v%以下であるコーヒー含有飲料又は茶飲料に対して、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満のデキストリンを添加することを特徴とする。
【0013】
本発明で用いるデキストリンは馬鈴薯を由来原料とし、原料中に含有される澱粉を加水分解して得ることができる。現在市販されているデキストリンの原料は馬鈴薯、コーン、ワキシーコーン、小麦、米、もち米、タピオカ等が存在するが、馬鈴薯以外を由来澱粉とするデキストリンを用いた場合は、後述のように、十分なコク味を付与できなかったり、喉越しの悪化を招く等、十分なコク味と香味立ちを兼ね備えたコーヒー含有飲料、茶飲料を提供することができない。
【0014】
本発明のデキストリンは、更に、DEが2以上5未満、好ましくは3以上5未満、更に好ましくは3.5以上4.5以下の範囲であることを特徴とする。
【0015】
DEとは、一般には澱粉の分解程度を還元糖の割合で示すものである。全ての還元糖をぶどう糖(dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する重量%で表わしたものである。DE値が大きい程、還元糖の含有量が多く、逆にDE値が小さい程、還元糖の含有量が少ないことを意味する。本発明ではDEが2以上5未満の範囲であるデキストリンを用いることを特徴とするが、DEが5以上であるデキストリンを用いた場合は、十分なコク味を付与することができず、また、DEが2以上5未満のデキストリンであっても、馬鈴薯以外の原料を由来とする場合は、十分なコク味を付与することができない事に加え、由来でん粉の風味が影響し、飲料の風味や香味立ちに悪影響を与えてしまう。また、馬鈴薯由来のDEが2未満のデキストリンを用いた場合、澱粉の風味と糊っぽい食感が影響し、飲料の清涼感、キレやフレーバーリリースに悪影響を与えてしまう。
【0016】
上記性質を有するデキストリンは、原料となる馬鈴薯を加水分解することによって調製できる。加水分解は酵素処理、酸処理等を用いて実施することができ、DEを指標として分解の程度を調整可能である。また、本デキストリンは商業上入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の「スマートテイスト[商標]」を挙げることができる。
【0017】
本発明が対象とするコーヒー含有飲料は、コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物などを加えた飲料であり、コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料水および乳飲料を含む。茶飲料は、不発酵茶である緑茶に限らず、半発酵茶(烏龍茶)、発酵茶(紅茶)等の各種茶葉から抽出された抽出物を原料とした飲料をいう。
【0018】
本発明のコーヒー含有飲料及び茶飲料は、糖類含量が2.5w/v%以下であることを特徴とする。本発明において糖類含量とは、飲料中に含有される単糖類および二糖類の合計含有量の割合(W/V%)を指し、具体的には、単糖類としてグルコースやフルクトースなど、二糖類としてスクロースやラクトースなどが挙げられる。
【0019】
飲料中における糖類は、甘味の付与に加えて固形分として、飲料に飲みごたえを付与する役割を果たしているため、糖類含量の低減に伴い、飲料のコク味は大きく減少する。現在、市場規模が拡大している低糖(糖類含量2.5w/v%以下(栄養成分表示基準より))、無糖(0.5w/v%以下(栄養成分表示基準より))を目的としたコーヒー含有飲料、茶飲料は、例えば、一般的なコーヒー含有飲料の糖類含量が7.5w/v%程度であるのに対し、糖類含量を大幅に低減しているため、どうしても水っぽく薄い味となりやすい。しかし、本発明では、糖類含量を2.5w/v%以下に低減させた場合であっても、馬鈴薯由来で、DEが2以上5未満であるデキストリンを用いることにより、糖類含量が2.5w/v%より高い飲料と遜色ないコク味及び良好な香味立ちを兼ね備えた飲料を提供することができる。また、本発明のデキストリンを用いることにより、更には糖類含量を0.5w/v%以下に低減した場合や、乳固形分を3質量%未満に低減させた場合であっても、十分なコク味及び良好な香味立ちを兼ね備えたコーヒー含有飲料、茶飲料を提供可能である。
【0020】
コーヒー含有飲料及び茶飲料の糖類含量を2.5w/v%以下に低減させるためには、単糖類及び二糖類の含量を低減させれば良いが、近年では、糖類に代えて高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム等)を使用する方法が挙げられる。特に、砂糖に比べて数十倍〜数千倍と高い甘味度を有する高甘味度甘味料は、糖類含量を低減する場合に有用性が高いが、一方で高甘味度甘味料特有の甘味の後引きが飲料の呈味に影響を与えるといった課題も抱えていた。
特に、糖類含量を低減させたコーヒー含有飲料、茶飲料は、固形含量が低いため、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きが飲料に与える影響は大きい。しかし、本発明では、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを用いることにより、飲料のコク味増強効果に加え、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きも改善でき、呈味に優れた飲料を提供できる利点を有する。
【0021】
コーヒー含有飲料、茶飲料に対する本発明のデキストリンの添加量は、例えば0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜0.5質量%、更に好ましくは0.01質量%以上0.2質量%未満である。
デキストリンの添加量が5質量%を上回ると香味立ちや喉越しの悪化が生じる場合があり、一方で添加量が0.001質量%を下回ると十分なコク味増強効果が得られない場合がある。
【0022】
本発明のコーヒー含有飲料若しくは茶飲料は、上記デキストリンを添加する以外は常法に従って製造可能である。
【0023】
本発明はまた、糖類含量が2.5w/v%以下であるコーヒー含有飲料又は茶飲料に、馬鈴薯由来であり、DEが2以上5未満であるデキストリンを添加することを特徴とする、コーヒー含有飲料又は茶飲料のコク味増強方法を提供するものである。更には、本発明は、糖類含量が2.5w/v%以下であり、高甘味度甘味料を含有するコーヒー含有飲料又は茶飲料に、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを添加することを特徴とする、高甘味度甘味料の甘味の後引き改善方法を提供するものである。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0025】
実験例1 コーヒー含有飲料の調製(無糖)
表1の処方に基づき、各種デキストリンを用いてコーヒー含有飲料を調製した。具体的には、各種デキストリン、砂糖、スクラロース及び乳化剤の粉体混合物を水に加え、75℃で10分間加熱溶解後、室温まで冷却し、牛乳、コーヒー抽出液(コーヒーエキス)を添加した。さらに炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して、混合液のpHを6.8に調整した。水にて全量補正後、75℃まで加温し、150kgf/cmの圧力にて均質化処理後、香料を添加した。缶に充填してレトルト殺菌(123℃20分間)を行い、コーヒー含有飲料を調製した。
【0026】
【表1】
【0027】
注1)「αシクロデキストリン」(株式会社シクロケム製)
注2)「ファイバーソル2」(松谷化学工業株式会社製)
注3)スクラロースは砂糖の600倍の甘味倍率を有するため、飲料全体の甘味が同等となる添加量を使用した。
【0028】
得られたコーヒー含有飲料について、パネラー3名で、(1)コク味増強効果、(2)香味立ち、及び(3)高甘味度甘味料の甘味の後引き改善効果を評価した。結果を表2に示す。
(1)コク味増強効果:コク味増強効果が高いものを5、効果がないものを1として5段階で評価した。
(2)香味立ちが良好なものを5、香味立ちが悪いものを1として5段階で評価した。
(3)甘味の後引き改善効果が高いものを5、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きを感じるものを1として5段階で評価した。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例1及び2のコーヒー含有飲料は、糖類含量が0.48%と極めて低い無糖コーヒーにも関わらず、馬鈴薯由来でDEが3.5であるデキストリンを、0.05、0.15質量%と少量添加するのみで、糖類含量が6.48%のコーヒー含有飲料(比較例1)と遜色ない十分なコク味を有していた。更には、糖類含量が6.48%と高いコーヒー含有飲料では実現できなかった、コーヒーの良好な香味立ちも実現でき、十分なコク味及び良好な香味立ちを兼ね備えたコーヒー含有飲料であった。また、実施例1及び2のコーヒー含有飲料は、高甘味度甘味料(スクラロース)を含有しているにも関わらず、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きも改善され、キレのよい甘味を有するコーヒー含有飲料であった。
【0031】
一方、シクロデキストリン(比較例2)や、難消化性デキストリン(比較例3)を用いたコーヒー含有飲料や、馬鈴薯由来であってもDEが5以上のデキストリン(比較例4)、DEが3であってもコーン由来のデキストリン(比較例5)を用いたコーヒー含有飲料は、0.5質量%と実施例1、2に比べて約3〜10倍のデキストリンを用いているにも関わらず、無糖コーヒーにコク味を付与することはできなかった。更には、比較例2〜5のコーヒー含有飲料は香味立ちや、高甘味度甘味料の甘味の後引き改善効果も不十分であった。
【0032】
実験例2 コーヒー含有飲料の調製(低糖)
表3の処方に基づき、低糖タイプのコーヒー含有飲料を調製した。具体的には、デキストリン、砂糖、スクラロース及び乳化剤の粉体混合物を水に加え、75℃で10分間加熱溶解後、室温まで冷却し、牛乳、コーヒー抽出液を添加した。炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して、混合液のpHを6.8に調整した。水にて全量補正後、75℃まで加温し、150kgf/cmの圧力にて均質化処理後、香料を添加した。缶に充填してレトルト殺菌(123℃20分間)を行い、コーヒー含有飲料(実施例3、比較例6)を調製した。
【0033】
【表3】
【0034】
馬鈴薯由来、DE4のデキストリンを用いた実施例3のコーヒー含有飲料は、糖類含量が2.1%と低いにも関わらず、十分なコク味と良好な香味立ちを兼ね備えたコーヒー含有飲料であった。更に、実施例3のコーヒー含有飲料は、高甘味度甘味料(スクラロース)を使用しているにも関わらず、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きも改善され、味にキレのあるコーヒー含有飲料であった。
一方、デキストリン不使用である比較例6のコーヒー含有飲料は、水っぽく薄い味である上、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きが残存する飲料であった。
【0035】
実験例3 コーヒー含有飲料の調製(低糖)
表4の処方に基づき、低糖タイプのコーヒー含有飲料を調製した。具体的には、デキストリン、砂糖及び乳化剤の粉体混合物を水に加え、75℃で10分間加熱溶解後、室温まで冷却し、牛乳、コーヒー抽出液を添加した。炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して、混合液のpHを6.8に調整した。水にて全量補正後、75℃まで加温し、150kgf/cmの圧力にて均質化処理後、香料を添加した。缶に充填してレトルト殺菌(123℃20分間)を行い、コーヒー含有飲料(実施例4、比較例7)を調製した。
【0036】
【表4】
【0037】
馬鈴薯由来、DE4.5のデキストリンを用いた実施例4のコーヒー含有飲料は、糖類含量が2.2%と低いにも関わらず、十分なコク味を有するコーヒー含有飲料であった。
一方、デキストリンを使用しなかった比較例7のコーヒー含有飲料は、コク味が不十分であった。
【0038】
実験例4 コーヒー含有飲料の調製(無糖)
表5の処方に基づき、無糖タイプのコーヒー含有飲料を調製した。具体的には、デキストリン、スクラロースの粉体混合物を水に加えて溶解後、コーヒー抽出液を添加した。水にて全量補正後、香料を添加し、缶に充填してレトルト殺菌(121℃5分間)を行い、コーヒー含有飲料(実施例5、比較例8)を調製した。
【0039】
【表5】
【0040】
馬鈴薯由来、DE4のデキストリンを用いた実施例5のコーヒー含有飲料(無糖、ブラックコーヒー)は、糖類を含まないにも関わらず、比較例8に比べて、十分なコク味を有するコーヒー含有飲料であった。更に、比較例8のコーヒー含有飲料は高甘味度甘味料(スクラロース)の甘味の後引きがコーヒーの呈味に影響を与えていたが、実施例5のコーヒー含有飲料は甘味の後引きもが改善され、キレのあるコーヒー含有飲料であった。
【0041】
実験例5 茶飲料の調製(紅茶飲料(低糖))
表6の処方に基づいて紅茶飲料を調製した。具体的には、デキストリン、砂糖、スクラロース及び乳化剤を粉体混合し、得られた粉体混合物を水に加えて、80℃で10分間加熱溶解した。当該溶液を室温まで冷却して、牛乳、紅茶エキス及びアスコルビン酸ナトリウムを添加した。水にて全量を補正した後に70℃まで加温し、1段目100kgf/cm、2段目50kgf/cmの圧力にて均質化処理を行い、香料を添加した。容器に充填後、レトルト殺菌(123℃20分間)を行い、紅茶飲料を調製した。
得られた紅茶飲料について、(1)コク味増強効果、(2)香味立ち、及び(3)高甘味度甘味料(スクラロース)の甘味の後引き改善効果を、実験例1と同様にして評価した。結果を表7に示す。
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
実施例6の紅茶飲料は、比較例9から糖類含量を半分以上も低減しているにも関わらず、比較例9と遜色ない、十分なコク味が付与された紅茶飲料であった。更には、比較例9にはない良好な香味立ちを有しており、十分なコク味及び良好な香味立ちを兼ね備えた紅茶飲料である上、スクラロース特有の甘味の後引きも改善された飲料であった。一方、デキストリン無添加区の比較例10は、コク味が不十分である上、スクラロース特有の甘味の後引きを改善することもできなかった。
【0045】
実験例6 茶飲料の調製(紅茶飲料(無糖))
表8の処方に基づいて紅茶飲料を調製した。具体的には、デキストリン、砂糖及びスクラロースを粉体混合し、得られた粉体混合物を水に加えて、80℃で10分間加熱溶解した。当該溶液を室温まで冷却して、紅茶エキス及びアスコルビン酸ナトリウムを添加した。水にて全量を補正した後に、香料を添加した。容器に充填し、レトルト殺菌(121℃5分間)を行い、紅茶飲料を調製した。
得られた紅茶飲料について、(1)コク味増強効果、(2)香味立ち、及び(3)高甘味度甘味料の甘味の後引き改善効果を、実験例1と同様にして評価した。結果を表9に示す。
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
実施例7の紅茶飲料は、糖類含量が0%にも関わらず、また、デキストリン添加量が0.1%と低添加量にも関わらず、糖類含量が3%である紅茶飲料と遜色ないコク味を有していた。更には、茶葉の香り立ちも良好である上、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きも改善され、キレのよい呈味を有する紅茶飲料であった。
一方、デキストリン無添加区である比較例12の紅茶飲料は、コク味が不十分であり水っぽい呈味を有する上、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きを改善することもできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
糖類含量が2.5w/v%以下に低減されつつも、糖類含量が2.5w/v%より高いものと遜色ないコク味が十分に付与され、良好な香味立ちを有する、低糖若しくは無糖のコーヒー含有飲料及び茶飲料を提供できる。更には、高甘味度甘味料を含有するコーヒー含有飲料や茶飲料における、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きを改善することが可能である。