特許第5788669号(P5788669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788669イオンビーム源及び非導電材料をスパッタリングする装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788669
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】イオンビーム源及び非導電材料をスパッタリングする装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/16 20060101AFI20150917BHJP
   C23C 14/46 20060101ALI20150917BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01J27/16
   C23C14/46 B
   H01J37/08
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-278096(P2010-278096)
(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公開番号】特開2011-129522(P2011-129522A)
(43)【公開日】2011年6月30日
【審査請求日】2013年12月4日
(31)【優先権主張番号】0921791.0
(32)【優先日】2009年12月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510329224
【氏名又は名称】エスピーピー プロセス テクノロジー システムズ ユーケー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マクニール
(72)【発明者】
【氏名】ポール ジョージ ベネット
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−129237(JP,A)
【文献】 特開平05−331634(JP,A)
【文献】 特開平06−165510(JP,A)
【文献】 特開2002−043094(JP,A)
【文献】 特開平10−208651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/08,37/30−37/36
C23C 14/46
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電ターゲットとともにスパッタリングに使用するイオンビーム源であって、
イオンを抽出するグリッドと、
前記イオンを抽出するために前記グリッドにパルス電力を供給する電源であって、前記電源は、前記グリッドに対する電力を切り替えるために、直流電源電圧と接地点との間で前記グリッドを切り替える電源と、
を有し、
直流電源レールと中間点との間に接続された第1のFETと、前記中間点と接地点との間に接続された第2のFETと、互いに直列接続され及び前記第1のFETと前記第2のFETにそれぞれ並列に接続された一対のダイオードと、を有する回路と、
前記中間点に接続され及び前記グリッドに関連したコンデンサに接続されたインダクタと、
前記第1のFET及び前記第2のFETを交互にオンにするパルス発生器と、
を更に備え、
これによって、前記回路は、前記第1のFET及び前記第2のFETの一方がオンに切り替わったときに前記グリッドをレール電圧に十分に保持し、前記第1のFET及び前記第2のFETがオフに切り替わったときに前記グリッドを接地電圧にすることを特徴とするイオンビーム源。
【請求項2】
前記電源は、直流電源と、前記グリッドに対する電力の供給を接続し及び遮断する電源スイッチと、前記電源スイッチの切替を行うためのパルス発生器と、を有する請求項1に記載のイオンビーム源。
【請求項3】
アーク放電が生成する過電流を検出するとともに前記グリッドを一時的に接地電圧に維持するために一時的な禁止信号を生成する検出器を更に有する請求項1又は2に記載のイオンビーム源。
【請求項4】
非導電ターゲットとともにスパッタリングに使用するイオンビーム源であって、
イオンを抽出するグリッドと、
前記イオンを抽出するために前記グリッドにパルス電力を供給する電源と、
アーク放電が生成する過電流を検出するとともに前記グリッドを一時的に接地電圧に維持するために一時的な禁止信号を生成する検出器と、
を有することを特徴とするイオンビーム源。
【請求項5】
前記検出器は、グリッド電源の電流及び/又は電圧の変化率を検出し、それを一つ以上の基準と比較する請求項3又は4に記載のイオンビーム源。
【請求項6】
前記検出器は変圧器を有する請求項に記載のイオンビーム源。
【請求項7】
前記イオンを抽出するグリッドは、複数のグリッドを備え、前記イオンビーム源は、各グリッドに対する電源を更に備え、前記電源は、共通のパルス発生器によって制御される請求項1からのうちのいずれか項に記載のイオンビーム源。
【請求項8】
非導電材料をスパッタリングする装置であって、非導電ターゲットと、請求項1からのうちのいずれか項に記載のイオンビーム源と、を有し、前記電源は、所定の期間のパルスを生成し、前記パルスがオフであるときに前記ターゲットの電荷を十分に放出できるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項9】
非導電材料をスパッタリングする装置であって、非導電ターゲットと、請求項1に記載のイオンビーム源と、を有し、前記電源は、所定の期間のパルスを生成し、前記パルスがオフであるときに前記ターゲットの電荷を十分に放出できるようにし、前記第1のFET及び前記第2のFETは、対のFETによって構成され、前記回路は、過剰な電圧を関連のコンデンサに充電できるようにするとともに各FET対が次にオンになるときに前記コンデンサが放電できるようにすることによって、オフであるときの前記第1のFETと前記第2のFETの各々の両端間の電圧降下を予め決定された値に保持するために一連の安定電圧点を維持する電圧バランサーを更に有することを特徴とする装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビーム源及びそのようなイオンビーム源の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性金属ターゲットが帯電問題又は熱問題を回避する良好な電気経路及び熱経路を提供するので、イオンビーム堆積装置は、金属の堆積に適切である。
【0003】
そのような装置を、絶縁材料の堆積に使用することができるが、ターゲットは、その表面に入射する正のイオン流のために急速に帯電されうる。これによって、典型的にはイオンビーム源内で生じるアーク放電が頻繁に生じる。
【0004】
従来の解決として、熱電子放出を行うホットワイヤーのような2次電子源又はカウフマンセル(Kaufmann cell)、中空電極、誘導結合プラズマ等のプラズマ源を設ける傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような配置が数十年間使用されていたが、多数の問題がある。特に、これらの配置をそれぞれ、イオン源、ターゲット及び基板の操作と連動することができる真空装置内に設置する必要がある。ホットワイヤー技術は、汚染を引き起こすおそれがあり、熱膨張及び収縮のために信頼性がなくなるおそれがあり、不活性真空雰囲気でのみ機能することができる。プラズマ源は全て、コスト、温度管理及び潜在的な汚染の懸案事項がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様から、発明は、非導電ターゲットとともに使用するイオンビーム源であって、イオンを抽出するグリッドと、イオンを抽出するためにグリッドにパルス電力を供給する電源と、を有することを特徴とするイオンビーム源にある。
【0007】
出願人は、ビームをパルス化することによって正のイオン流が短時間停止することが分かった。これは、イオンビーム源及び/又はプラズマチャンバに生成した電子を十分に中和し及び十分に放出するのに十分な時間を提供する。本願の目的のための「十分な放出」は、アーク放電なくスパッタ期間に亘ってターゲットが機能するのを許容するのに必要な放出である。イオンビーム源を出るイオンと実際に操作するためのターゲットとの間に十分な電位差が存在する場合、ターゲット上にある程度の電荷を許容することができる。
【0008】
好適な実施の形態において、電源は、直流電源と、グリッドに対する電力の供給を接続し及び遮断する電源スイッチと、電源スイッチの切替を行うためのパルス発生器と、を有する。代案として、グリッドに対する電力を切り替えるための電源は、直流電源電圧とアースとの間でグリッドを切り替えてもよい。
【0009】
後者の場合、回路は、直流電源レールと中間点との間に接続された第1のFETと、中間点と接地点との間に接続された第2のFETと、互いに接続され及び各FETに並列に接続された一対のダイオードと、中間点に接続され及びグリッドに関連したコンデンサに接続されたインダクタと、FETを交互にオンにするパルス発生器と、を有し、これによって、回路は、FETがオンに切り替わったときにグリッドをレール電圧に十分に保持し、FETがオフに切り替わったときにグリッドを接地電圧にする。
【0010】
アーク放電が生成する過電流を検出するとともにグリッドを一時的に接地電圧に維持するために一時的な禁止信号を生成する検出器を設けることができる。
【0011】
検出器は、グリッド電源の電流の変化及び/又は電圧の変化率を検出し、それを一つ以上の基準と比較することができる。検出器は変圧器の形態を有することができる。
【0012】
さらに、発明は、出力部を有するハーフブリッジ直流電源であって、直流電源レールと中間点との間に接続された第1のFETと、中間点と接地点との間に接続された第2のFETと、互いに直列に接続され及び各FETに並列に接続された一対のダイオードと、中間点に接続され及び出力部に関連したコンデンサに接続されたインダクタと、FETを交互にオンにするパルス発生器と、を有し、これによって、回路は、FETがオンに切り替わったときに出力部をレール電圧に十分に保持し、FETがオフに切り替わったときに出力部を接地電圧にすることを特徴とするハーフブリッジ直流電源を有する。
【0013】
ハーフブリッジ直流電源は、出力部の過電流を検出するとともに出力部を一時的に接地電圧に維持するために一時的な禁止信号を生成する検出器を更に有してもよい。検出器は、出力部の電流の変化及び/又は電圧の変化率を検出し、それを一つ以上の基準と比較することができる。検出器は変圧器を有することができる。
【0014】
発明を上記のように規定したが、発明が上述した又は後述する任意の発明の特徴の組合せを有することを理解すべきである。
【0015】
発明を種々の方法で実施することができ、特定の実施の形態を、添付図面を参照しながら例示として開示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】テスト装置の斜視図である。
図2図1の装置の部分切り取り図である。
図3図1及び図2の装置を用いたSiウェファ上の位置(X軸)に対するÅで示すSiO膜厚(Y軸)のプロットである。
図4】Siウェファ上の位置(X軸)に対するSiO膜のnで示す屈折率の対応するプロットである。
図5】イオンビーム源とともに使用するパルス電源の回路図である。
図6】電源の他の形態の詳細な回路である。
図7図6の電源の電流及び電圧に対するテストプロットである。
図8】イオンビームパルサー回路のブロック回路図である。
図9】電圧ストレスイコライザ(voltage stress equaliser)として構成したハーフブリッジの回路である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2において、一般的に10を付したテスト装置は、真空チャンバ11及びイオン源12を有する。イオン源12を、この場合、イオンのビームをグリッド13から傾斜ターゲット14に放出してターゲット材料を真空チャンバ11の上部のウェファ(図示せず)に堆積させる広ビームイオン源(broad beam ion source)とする。イオン源を、国際公開第2008/009898号パンフレットに記載されたタイプのものとすることができ、その内容は、参照によりここに組み込まれる。この構造において、アクセラレータグリッド13は、四つの個別のグリッドによって形成され、そのうちの一つは、イオン源としての役割を果たすために正電圧に維持され、それに対して、他のグリッドは、生成したイオンをビームで投影するために負電圧又は接地電圧に維持される。
【0018】
図3は、3mmの厚さの絶縁SiOターゲットを有する装置を用いてSi全体に亘って堆積されたSiO層の厚さをÅで示す。言及すべき第1のポイントは、層が厚さを有することである。チャージアップがある場合、ビームは、アーク放電によってほとんど相殺され、堆積が生じない。ポイントによって示される一般的な傾向は、ウェファ上の傾斜した厚さであり、それは、ターゲットの傾斜に対応する。ウェファ全体に亘る厚さの移動の一般的な減少に従わない高いポイントは、ごみに起因する。これは、プロトタイプ装置が「ほこりっぽい」場所に配置され、「清浄な」部屋に配置されていないことが原因であると考えられる。図4において、ウェファ全体に亘る屈折率を示し、これは、ほとんど一貫して1.5付近にあり、堆積された膜に対して適切である。したがって、これらの結果は、任意の2次電子源を必要とすることなく、ターゲット材料の堆積のためにパルス状イオンビームを絶縁ターゲットとともに使用できることを示す。
【0019】
図5は、適切な電源の配置図を示す。GRD1,GRD2,GRD3及びGRD4を付したグリッドは、上記グリッドに対応する。一般的に16を付した各電源は、GRD1,GRD2,GRD3にそれぞれ接続され、それに対して、GRD4は接地される。ビーム制御装置17において、全ての電源を切り離すためにリレー18が設けられる。
【0020】
電力スイッチング装置21を制御するパルス発生器20に応答して接地電圧と電源レール電圧との間の切替を行うことができる他のスイッチのセットを、19を付して示す。
【0021】
検討中のイオン源12を用いることによって、電源スイッチングの設計を慎重に考察する必要がある。その理由は、それが1600Vまで対処できるようにする必要があるからである。
【0022】
したがって、イオンは、最初に誘導結合プラズマで生成される。グリッドは、イオンを抽出し、これらのイオンをビームにする。第1グリッド(GRD1)は、グリッドをフローティングすることによってイオンを抽出し、誘導結合プラズマアッセンブリは、接地電圧に対して+1600Vまで上昇する。したがって、イオンは、グリッドからイオンを引き出すために負の電位となる。次の二つのグリッド(GRD2及びGRD3)は、イオンを更に引き出すために接地電圧に対して負のバイアスがかけられる。最後のグリッド(GRD4)は接地される。全てのビーム電力は、0.5A以上となることができる第1のグリッド電源から来る。1600Vの典型的な最大GRD1電圧において、GRD2及びGRD3はそれぞれ、−350V及び−75Vのバイアスがかけられる。ビームを電流設定点及び固定電圧に調整するために、ICP RF電力は、閉ループ制御系に応じて調整される。これは、電力供給の帰還時にGRD1電流を測定する。
【0023】
図6は、アーク放電検出及び共振遷移(resonant transitions)の手段も有する、GRD1用の基本的なイオンビームパルサー回路を示す。GRD2及びGRD3に関連した低電圧/電力は、共振回路又は抵抗を用いた制限された容量性充電を用いることもできる。一つの配置において、GRD2は共振回路を有し、GRD3を50Ω抵抗とする。図6において、共振回路は、インダクタLとグリッドコンデンサCとの間に形成される。これによって、グリッドは、抵抗性充電P=fCV2の電力損失なしに充電及び放電を有効に行うことができる。
【0024】
FET Q1がオンになると、グリッドコンデンサCは、インダクタンスLを通じて充電される。グリッドのグリッド電圧が電源電圧に到達すると、コンデンサCによる共振動作によって電圧を上昇し続けようとするが、ダイオードD1によってそれが防止される。したがって、電流は、Q1,D1の電圧降下及びその両端間の抵抗によりインダクタンスLに閉じ込められる。したがって、電流は、ピーク充電値に近い状態でゆっくりと減衰する。Q1がオフになると、電流は、更に迅速に減衰することができ、Q1/Q2の接合部は、負に強制され、Q2ボディダイオードによって0Vにクランプされる。この直後、Q2がオンになる。一旦電流が零まで減衰すると、電流が逆転し、グリッドコンデンサの放電を再び開始する。また、共振遷移が生じ、もう一度電流がLに閉じ込められるが、Q2/D2による逆方向のクランプが行われる。Q2がオフになるとともにQ1が再びオンになるとサイクルを継続する。
【0025】
FET Q1及びFET Q2は、パルス入力部22のパルスによってオン及びオフに切り替えられる。FET Q2に到達するパルスは、インバータ23によりFET Q1に到達するパルスと位相が一致しない。
【0026】
回路は、グリッドコンデンサを有効に充放電し、インダクタンスLに蓄積されたエネルギーを再循環させる。グリッドの遷移は、電磁妨害及びD1/D2の速度要求が緩やかになるように「緩やか」である。また、電流は、Q1からQ2において同一装置ボディダイオードからFET(同一)まで流れる。したがって、強制的なダイオードのリカバリーがなく、小さい電磁妨害で十分なスイッチングが行われる。不都合な点は、Q1,Q2,D1,D2及びLがこの回路に対してサイズ指定されるために循環電流が典型的にはビーム電流より大きくなることである。
【0027】
過電流と過度のdV/dtの両方に対する保護が行われる。出力電流は、24を付した変流器によって検知される。変圧器出力は、基準制限と比較される。過電流が検出される場合、モノステーブル(mono-stable)25は、パルスが停止するときにブランク期間を与えるためにトリガがかけられる。これは、パルスをQ1及びQ2にそれぞれ供給するエンドゲート(end gates)の26,27のぞれぞれの入力を変更することによって達成される。Q1とQ2の両方がブランク期間中にオフになる。同様に、過度の降下、例えば、負のdV/dtが検出されると、ブランク期間が開始される。
【0028】
典型的には、アーク放電が生じると、電流が上昇し始める。アーク電流は、異常に高い値まで急速に段階的に上昇する。アーク電流が、Lに蓄積された値を超えると、出力電圧が降下し、グリッドコンデンサが放電される。これは、通常、正常なオフ遷移より速く生じ、dV/dt回路によって検出される。Lの動作は回路からの電流の上昇を制限し、したがって、通常、システムは、過電流が生じる前にアーク放電を検出する。
【0029】
アーク放電が検出されると、Q1がオフになり、Q1/Q2の接合部はQ2ボディダイオードによってクランプされる。その後、Lは、Q2ボディダイオード及びアーク放電を通じて放電を行う。アーク電圧は、100Vの周辺でほぼ一定であり、電流放電は、約12μsで線形的である。アーク放電に伝達されるエネルギーは、グリッドコンデンサに蓄積されたエネルギーとLに蓄積されたエネルギーとの和となる。これらのエネルギーは、共振動作:E=0.5CV2+0.5LI2により、認識できる事象:C=3500pF,L=500μH,V=800V及びI=2Aに対してほぼ等しくなる。したがって、E=1.12+1となり、これは、2mJに等しい。エネルギーは、電流と電圧の両方の2乗に比例し、したがって、1600Vの全システム電圧では、アークエネルギーは約8mJとなる。
【0030】
そのような事象を図7に示す。GRD1電流が、変電器を用いて測定される。したがって、これは、直流レベルを伝達しない。実際のビーム電流は、スイッチング遷移間で設定された二つのレベル間の差となる。これは、ビームが強制的にオフにされるときのイオン電流及び電子電流の正のビームである。電流は、範囲追跡中に約0.5Aとなる。
【0031】
イオンビーム電流の調整は、プラズマ源RF電力の調整と同様に行われる。電流が直流電源で検知される。電源ユニット応答、出力コンデンサ及び回路減結合コンデンサCDは、平均電流を簡単に検知することを意味する。パルスは見えない。さらに、十分に短いアークブランキング時間及び十分に低いアーク速度によって、アーク放電による悪影響が及ぼされない。1Hzのアーク速度の結果、0.01%の堆積時間の損失だけになる。
【0032】
図5の構成19,20及び21に関連した基本構成要素のブロック図を示す図8において、左上の電源は、線形レギュレータを用いて信号電子機器に15V及び5Vを供給する24Vハウスキーピング電源である。フローティングレールコンバータを機能させるために個別の15Vを提供し、これは、ブリッジドライバ及びフローティングGRD1電流モニタに対して8個のフローティングレールを提供する。故障表示が、15Vレギュレータに直列な抵抗の両端間のLEDによって与えられる。スイッチング装置の故障は、必然的に、コンバータの負荷を増大するゲート又は短絡を引き起こし、したがって、LEDを明るくする。コンバータそれ自体は、自己振動ハーフブリッジドライバに基づく。変圧器電圧は、15V電源レールにクランプされ、したがって、出力は準安定化される。半波整流が行われる。4出力は、ほぼ対称な負荷を与えるために他の4出力に対して逆となるように移相される。ブリッジ、ドライバ及び保護論理が中央に存在する。グリッドも図示する。保護のために、GRD1電流が500:1変流器によって検知される。基本的なタイミング機能が、種々の基本クロック周波数を得ることができる8MHz水晶時計モジュールによって提供される。
【0033】
大抵の電力装置の標準的な破壊限界である1200Vより上での安定動作を達成するために、回路は、図9に示すように直列接続された電力トランジスタに対して電圧ストレスバランサーを使用し、この場合、ハーフブリッジは、二つの直列接続されたデバイス(例えば、FET)を組み入れる。Q1〜Q4は、それぞれの「スイッチ位置」に二つのトランジスタQ1/2及びQ3/4を有するハーフブリッジを形成する。したがって、Q1/2が協働し、Q3/4が協働する。バランサーの詳細を示さず、バランサーは、必要に応じてC1,C2,C5及びC6の間で電荷を循環してV1=V2=V3=V4を維持する。
【0034】
Q1/2がオフであるとき、Q1の両端間の電圧は電源電圧の半分を超え、その後、D1’が導通して電荷をC1に蓄積し、したがって、Q1の両端間の電圧を電源レールの半分に制限する。ブリッジの下半分に対応するQ4によるD4’を介したC2への電荷の蓄積に対しても同様である。Q1/2がオフであるとき、Q2の両端間の電圧は電源電圧の半分を超え、C3の両端間の電圧は、電源電圧の半分より上になるように上昇する。Q1及びQ2が次にオンになるとき、C3の両端間の電圧は、D5を介してC3からC5に移される。C5が電源電圧の半分に保持されるので、C3の両端間の電圧及びオフのときのQ2の両端間の電圧も電源電圧の半分になる。D3’,C4,D6’及びC6は、Q3を保護するために相補的な機能(complementary function)を実行する。
【0035】
ブリッジの出力を、方形波、パルス幅変調(PWM)波形又は他の波形とすることができ、この場合、Q1/2及びQ3/4は交互にオン又はオフに切り替わる。平衡電流/エネルギーは、典型的には、主電源が流すものより小さく、したがって、比較的小型かつ廉価な構成要素を適用することができる。
【0036】
上述したように、パルス電源をイオンビーム源に設けるのが特に適しているが、回路は、理想的に高電圧を処理する必要がある場合には特に他の多数のアプリケーションを有することができる。したがって、発明は、回路それ自体、及び、イオンビームスパッタリング用のイオンビーム源に関連した回路の使用を含む。各グリッド又は出力部に対する回路及び共通のクロックパルス源を有することによって3以上の同期パルス出力を容易に提供するために発明の回路を通常使用できることに留意されたい。
【0037】
発明は、非導電ターゲットをスパッタリングする方法であって、イオンビーム源を用いてターゲットを照射するステップ及びパルス電力をイオンビーム源に供給するステップを有する方法も含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9