(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788706
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】指針構造
(51)【国際特許分類】
G01D 13/22 20060101AFI20150917BHJP
G01D 11/28 20060101ALI20150917BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
G01D13/22 101
G01D11/28 P
B60K35/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-101734(P2011-101734)
(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公開番号】特開2012-233762(P2012-233762A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】佐野 将晃
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−196995(JP,A)
【文献】
特表2007−514145(JP,A)
【文献】
特開2004−205295(JP,A)
【文献】
特開平9−72762(JP,A)
【文献】
実開平6−12994(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D11/00−13/28
B60K35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の指針と光源と反射面とを備える指針構造であって、
前記光源と前記反射面との間に導光部を設け、
前記光源の光は前記導光部を透過して前記反射面に導かれ、
前記指針には、前記指針の前方に位置する第1発光部と前記指針の後方に位置する第2発光部とから成る発光部が備えられ、
前記第1発光部に向かって前記光源の光を反射させる第1反射面と、前記第2発光部に向かって前記光源の光を反射させる第2反射面と、が前記指針に設けられ、
前記第1反射面と前記第2反射面とは、前記光源から前記指針に向かう線上に対して位置が異なることを特徴とする指針構造。
【請求項2】
前記第1反射面と前記第2反射面は、前記光源から前記指針に向かう線上と直交する方向に対して位置が異なり、
前記第1反射面が前記第2発光部側に、前記第2反射面が前記第1発光部側に、それぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載した指針構造。
【請求項3】
前記指針における前記第1発光部と前記第2発光部との間には幅広の拡張部が備えられ、
前記拡張部に前記第1反射面と前記第2反射面とが配置されていることを特徴とする請求項2に記載した指針構造。
【請求項4】
前記指針の底面には、前記第2反射面で反射した光を前記第2発光部に向けて反射させる第3反射面が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載した指針構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の速度計やタコメータ等の計器類内に取り付けられる指針構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や船舶や飛行機等(以後まとめて車両等と言う)、の乗り物に搭載される計器の指針構造は知られている。この種の指針構造の一例を
図5(A)〜
図5(C)に示す(特許文献1参照)。
【0003】
図5(A)は従来の指針構造を取り付けた計器の正面図、
図5(B)は
図5(A)の指針の正面図、
図5(C)は
図5(B)のA−A線の断面図である。従来の指針構造100は、目盛610や数字620が設けられた文字板600を備えるスピードメータに取り付けられ、先細平板状に形成された指針200を備えている。スピードメータの中央部にあるカバー部材700Sは、指針200内に光を投射する光源(図示されていない)および指針200の回転軸周辺を覆うために設けられている。
【0004】
文字板600上を回動する指針200の側面には、発光部250が設けられている。発光部250は、傾斜面と成っており表面を粗く仕上げてある。昼間は、外来光により発光部250が乱反射し指針200の輪郭として視認され、夜間は
図5(B)の矢印で示す通り指針200の側部から(図面右側)光源光が指針200内に入射し、発光部250で乱反射し発光部250が指針200の輪郭として視認される。また、指針200は、アクリル等の導光性を有する透明な部材で形成されていることが開示されている。
【0005】
中空状の指針を備える指針構造は知られている。この種の指針構造の一例を
図6(A)〜
図6(C)に示す(特許文献2参照)。
【0006】
図6(A)は従来の指針構造を取り付けた計器の正面図、
図6(B)は
図6(A)の指針の正面斜視図、
図6(C)は指針構造の断面図である。従来の指針構造100Aは、目盛610Aや数字620Aが設けられた文字板600Aを備えるスピードメータに取り付けられ、中空状の指針200Aを備えている。指針構造100Aは、更に、光源300Aを備え、指針200Aには、光源300Aの光を指針200A内に導くための複数の反射面210A、220Aが設けられていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−196995号公報
【特許文献2】特表2007−514145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のとおり、従来の指針構造100においては、指針200全体で光源光を受光し、発光部250の乱反射を利用して指針200を光輝させるため、発光効率が悪く指針200の適切な視認に不具合を生じていた。また、指針200の受光範囲が大きいためカバー部材700Sも大きく成り、指針構造100のデザインに制約があるという欠点があった。
【0009】
特許文献2に記載される指針構造100Aにおいては、中空の指針200Aを用いているため、特許文献1に記載される指針構造100の指針200の受光範囲が大きいという欠点はある程度解消されている。しかしながら、指針200Aの先端に向かって光源300Aの光を導光させる必要があるが、光源300Aの光を単に反射面210A、220Aに向けて出射させ、一般的な反射面210A、220Aを設けただけの構造では、発光効率の向上に繋がらない欠点があった。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反射面形状を工夫して光源の光を指針内に効率よく導き、均一性のある指針発光および車両等の夜間走行中の安全に繋がる指針構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る指針構造は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 中空の指針と光源と反射面とを備える指針構造であって、
前記光源と前記反射面との間に導光部を設け、
前記光源の光は前記導光部を透過して前記反射面に導かれ、
前記指針には、前記指針の前方に位置する第1発光部と前記指針の後方に位置する第2発光部とから成る発光部が備えられ、
前記第1発光部に向かって前記光源の光を反射させる第1反射面と、前記第2発光部に向かって前記光源の光を反射させる第2反射面と、が前記指針に設けられ、
前記第1反射面と前記第2反射面とは、前記光源から前記指針に向かう線上に対して位置が異なること。
(2) 上記(1)の構成の指針構造において、
前記第1反射面と前記第2反射面は、前記光源から前記指針に向かう線上と直交する方向に対して位置が異なり、
前記第1反射面が前記第2発光部側に、前記第2反射面が前記第1発光部側に、それぞれ配置されていること。
(3) 上記(2)の構成の指針構造において、
前記指針
における前記第1発光部と前記第2発光部との間には幅広の拡張部が備えられ、
前記拡張部に前記第1反射面と前記第2反射面とが配置されていること。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの構成の指針構造において、
前記指針の底面には、前記第2反射面で反射した光を前記第2発光部に向けて反射させる第3反射面が設けられていること。
【0012】
上記(1)の構成では、光源から発した光がロスすることなく確実に第1反射面および第2反射面に到達し、それぞれの反射面で反射した光が有効に発光部に入射し、光の有効効率が向上する。また、それぞれの反射面の反射面積が広く取れるため発光部の先端まで光が伝搬され、指針全体の均一な光輝が可能となる。
上記(2)の構成では、スペースの小さな空間を有効利用した第1反射面および第2反射面が形成できる。
上記(3)の構成では、第1反射面および第2反射面の有効な反射面積がさらに確保できる。
上記(4)の構成では、第2反射面からの反射光を有効に利用し、特に、第2発光部の視認性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光源光を効率よく指針内に設けられた反射面に導き、利用効率の高い反射面を形成させて指針内全体に光が伝搬する構成とし、発光効率を向上させた指針構造を提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る指針構造の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1に係る指針を示し、
図2(A)は正面図、
図2(B)は
図2(A)のA−A線の断面図、
図2(C)は指針内の光の導光を示す正面図である。
【
図4】本発明に係る指針構造を取り付けたスピードメータの正面図である。
【
図5】従来の指針構造を取り付けた計器を示し、
図5(A)は計器の正面図、
図5(B)は
図5(A)の指針の正面図、
図5(C)は
図5(B)のA−A線の断面図である。
【
図6】従来の指針構造を取り付けた計器を示し、
図6(A)は計器の正面図、
図6(B)は
図6(A)の指針の正面斜視図、
図6(C)は指針構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に基づいて、本発明の一実施形態である指針構造10を説明する。
【0018】
図1は、指針構造10を示す断面図である。指針構造10は、アクリル等の導光性のある透過な合成樹脂から成る指針20と、LED等の光源30と、光源30の発光方向に配置される導光部40と、導光部40を透過した光を指針20の回転軸X−Xより前方または後方に反射させる第1反射面21と第2反射面22とを備えている。
図1の実施形態では、第1反射面21が前方に、第2反射面が後方に向かって光を反射している。
【0019】
導光部40は、光源30からの光を効率よく第1反射面21または第2反射面22に導くために、光源30と第1反射面21(または第2反射面22)との間に配置され、支持部50と保持部51とによって固定されている。また、導光部40は、アクリル等の導光性のある透過な合成樹脂から成形されているが、中空状で内面にアルミ蒸着等の反射面を備えていても良い。
【0020】
第1反射面21と第2反射面22との位置は、光源30から指針20の表面に向かう線上において異なる。具体的には、第1反射面21の位置が指針20の表面に近く、第2反射面22の位置が光源30に近い関係にある。一方、第1反射面21と第2反射面22とは、光源30から指針20の表面に向かう線上と直交する方向に対しても位置が異なる。即ち、回転軸X−Xに対して後方寄りに第1反射面21が配置され、前方寄りに第2反射面22が配置されている。換言すれば、左右上下方向に位置が異なることになり、スペースの小さな空間を最大限に有効利用して第1反射面21と第2反射面22の反射面積を確保している。
【0021】
指針20の底面には、上述の第1反射面21および第2反射面22とは別に、第2反射面22で反射した光を有効利用するため、指針20の表面に向けて反射させる凸状(または凹状)の第3反射面23が設けられている。指針20の上部は発光部25が設けられ、指針20の前方(図面上左側)に向けて指針の肉厚が薄くなるように傾斜している傾斜面20Sが設けられている。指針20の底部には光漏れを防止する指針袴26が取り付けられ、指針20は回転軸X−Xを中心として文字板60上を回動する。
【0022】
発光部25は回転軸X−Xを挟んで、前方に第1発光部25S、後方に第2発光部25Tを備えている。光源30から出射した光は、導光部40内で光の方向をコントロールされ第1反射面21および第2反射面に無駄なく進行する。第1反射面21で反射した光は、第1発光部25Sに向かって反射し、第1発光部25Sで指針20外方に発光する。指針20には傾斜面20Sが設けられているため、この傾斜面20Sで反射光が屈折し外方に出射することができる。一方、第2反射面22で反射した光は、指針20の後方に向かって反射し、第3反射面23で第2発光部25Tに向かって反射し、第2発光部25Tで指針20外方に発光する。
【0023】
図2は、本発明に係る指針20を示し、
図2(A)は正面図、
図2(B)は
図2(A)のA−A線の断面図、
図2(C)は指針20内の光の導光を示す正面図である。
【0024】
指針20は正面から見て、中央が開口された中空状を成し、細幅の発光部25を備え、全体として細長の略菱形状を成している。指針20は、中央部が左右(指針20の長手方向と直交する方向)に幅広の拡張部20Vを備え、拡張部20Vに第1反射面21と第2反射面22とを配置させている。この配置により、第1反射面21と第2反射面22との反射面積が大きく取れる利点がある。
図2(A)〜
図2(C)に示される本発明の一実施形態である指針20の発光部25は、拡張部20Vにおいて指針20の中心軸Y−Yの両側に略平行に配置され、拡張部20Vから第1発光部25Sおよび第2発光部25Tの先端に向かって合流する先細形状と成っている。
【0025】
第1反射面21、第2反射面22共、「く」の字状を成し、指針20の中心軸Y−Yから発光部25に向かって、第1反射面21は前方に、第2反射面22は後方に延在している。即ち、第1反射面21、第2反射面22共、中心軸Y−Yに対して対称に屈曲し、同時に、2つの反射面がそれぞれ存在し、合計4つの反射面を備えている。更に、第1反射面21と第2反射面22とが位置が異なることにより、各反射面の面積が大きく取れる利点も相乗効果としてある。尚、第1反射面21、第2反射面22の形状を、「く」の字状と表現したが湾曲状または円弧状であっても良い。
【0026】
図2(C)に示される通り、第1反射面21と第2反射面22とで反射した利用効率の高い光は、指針20の発光部25の内面で繰り返し反射して、第1発光部25S及び第2発光部25Tの先端まで有効に導かれ、指針20の均一性のある光輝に寄与している。即ち、夜間走行等に於いて、計器類に置かれた指針20が運転者にとって的確に視認できることは、安全走行にも繋がる。
【0027】
図3は、本発明に係る指針20を示し、
図3(A)は正面図、
図3(B)は
図3(A)のA−A線の断面図である。
【0028】
指針20の中央にキャップ70が取り付けられている。このキャップ70は、第1反射面21と第2反射面22との上部(発光部25側)に取り付けられ、光源30からの光を遮蔽し不必要な光漏れを防止すると共に、導光部40等の各部品を覆い隠すためのものである。本発明に係る指針20は、第1反射面21や第2反射面22の位置関係や反射面積を光学的観点、即ち光の利用効率向上、から工夫されているため、キャップ70の形状もコンパクト化できる。
【0029】
図4は、本発明に係る指針構造10を取り付けたスピードメータの正面図である。スピードメータには、文字板60の周縁沿って目盛61と文字62が配列されている。本発明の指針構造10はコンパクトな構造であるため、スピードメータ等の計器類のデザイン形状に適合しやすい。
【0030】
本発明の指針構造10は、取り付けられる計器類の大きさから判断しても分かる通り、かなり小型な部品である。本発明に係る指針構造10は、小型形状に於ける光効率向上を、導光部40と第1反射面21と第2反射面22の位置関係で基本的に達成している。
【0031】
以上、本発明の指針構造10では、光源30と第1反射面21(または第2反射面22)との間に導光部40を設け、指針20には、指針20の前方に位置する第1発光部25Sと指針20の後方に位置する第2発光部25Tとから成る発光部25を備え、第1反射面21の反射光を第1発光部25Sに、第2反射面22の反射光を第2発光部25Tに、向けて反射させ、第1反射面21と第2反射面22とは、光源30から指針20に向かう線上に対して位置が異なることを特徴としている。
【0032】
この構成により、光源30から発した光がロスすることなく確実に第1反射面21および第2反射面22に到達し、それぞれの反射面21、22で反射した光が有効に発光部25に入射し、光の有効効率が向上する。また、それぞれの反射面21、22の反射面積が広く取れるため発光部25の先端まで光が伝搬され、指針20全体の均一な光輝が可能となる。
【0033】
また、本発明の指針構造10では、第1反射面21と第2反射面22は、光源30から指針20に向かう線上と直交する方向に対して位置が異なり、第1反射面21が第2発光部25T側に、第2反射面22が第1発光部25S側に、それぞれ配置されている。この構成により、スペースの小さな空間を有効利用した第1反射面21および第2反射面22が形成できる。
【0034】
更に、本発明の指針構造10では、指針20の中央部には幅広の拡張部20Vが備えられ、拡張部20Vに第1反射面21と第2反射面22とが配置されている。この構成により、第1反射面21および第2反射面22の有効な反射面積がさらに確保できる。
【0035】
そして、本発明の指針構造10では、指針20の底面には、第2反射面22で反射した光を第2発光部25Tに向けて反射させる第3反射面23が設けられている。この構成により、第2反射面22からの反射光を有効に利用し、特に、第2発光部25Tの視認性が向上する。
【0036】
第1反射面からの反射光が直接第1発光部に入射することを説明したが、他の追加の反射面を設けても良く、指針20の底面に点刻等の小さな反射面を設けることも可能である。
【0037】
本発明に係る指針構造10の利用例についてスピードメータを説明したが、タコメータ等、指針20を用いる指針計器に広く応用できる。
【0038】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0039】
10 指針構造
20 指針
20S 傾斜面
21 第1反射面
22 第2反射面
23 第3反射面
25 発光部
25S 第1発光部
25T 第2発光部
30 光源
40 導光部
60 文字板