(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、8条植え式の乗用型田植機1に適用した場合の図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体2の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0015】
(1).乗用型田植機の概要
まず、
図1及び
図2を参照しながら、乗用型田植機1の概要について説明する。実施形態の乗用型田植機1は、左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とによって支持された走行機体2を備えている。走行機体2の前部にはエンジン5が搭載され、エンジン5からの動力をこの後方のミッションケース6に伝え、前車輪3及び後車輪4を駆動することにより、前後進走行するように構成されている。ミッションケース6の左右側方にフロントアクスルケース7を突出し、フロントアクスルケース7に前車輪3を舵取り可能に配置する。ミッションケース6の後方に筒型フレーム8を突出し、筒型フレーム8の後端側にリヤアクスルケース9を固設し、リヤアクスルケース9に後車輪4を配置する。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、走行機体2の前部及び中央部の上面側には、オペレータ搭乗用の作業ステップ(車体カバー)10が設けられている。作業ステップ10の前部の上方にはフロントボンネット11が配置され、フロントボンネット11の内部にエンジン5を設置している。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後部側方に、足踏み操作用の走行変速ペダル12が配置されている。実施形態では、走行変速ペダル12の踏み込み量に応じた変速電動モータ84の駆動にて、ミッションケース6の油圧無段変速機85から出力される変速動力を調節するように構成されている(
図8参照)。
【0017】
また、フロントボンネット11の後部上面側にある運転操作部13には、操縦ハンドル14と走行主変速レバー15と作業レバー16とが設けられている。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後方には、シートフレーム17を介して操縦座席18が配置されている。なお、フロントボンネット11の左右側方には、作業ステップ10を挟んで左右の予備苗載台24が設けられている。
【0018】
走行機体2の後端部にリンクフレーム19を立設する。リンクフレーム19には、ロワーリンク20及びトップリンク21からなる平行リンク機構22を介して、8条植え用の苗植付装置23が昇降可能に連結されている(
図1参照)。オペレータは、作業ステップ10の側方にある乗降ステップ25から作業ステップ10上に搭乗し、運転操作にて圃場内を移動しながら、苗植付装置23を駆動させて圃場に苗を植え付ける苗植え作業(田植え作業)を実行する。なお、苗植え作業中において、苗植付装置23には、予備苗載台24上の苗マットをオペレータが随時補給する。
【0019】
(2).苗植付装置の構造
次に、従前の図に加えて
図3−
図6も参照しながら、苗植付装置23の構造について説明する。
図3及び
図4に示すように、苗植付装置23は、エンジン5からミッションケース6を経由した動力が伝達される植付入力ケース26と、植付入力ケース26に連結する8条用4組(2条で1組)の植付伝動ケース27と、各植付伝動ケース27の後端側に設けられた苗植機構28と、8条植え用の苗載台29と、各植付伝動ケース27の下面側に配置された田面均平用のフロート32とを備えている。苗植機構28には、1条分2本の植付爪30を有するロータリケース31が設けられている。植付伝動ケース27に2条分のロータリケース31が配置されている。ロータリケース31の1回転によって、2本の植付爪30が各々1株ずつの苗を切り取ってつかみ、フロート32にて整地された田面に植え付けることになる。
【0020】
図示は省略するが、エンジン5からミッションケース6を経由した動力は、前車輪3及び後車輪4に伝達されるだけでなく、苗植付装置23の植付入力ケース26にも伝達される。この場合、ミッションケース6から苗植付装置23に向かう動力は、リヤアクスルケース9の右側上部に設けられた株間変速ケースに一旦伝達され、株間変速ケースから植付入力ケース26に動力伝達される。当該伝達された動力にて、各苗植機構28や苗載台29が駆動する。株間変速ケースには、植え付けられる苗の株間を例えば疎植、標準植又は密植等に切り換える株間変速機構と、苗植付装置23への動力伝達を継断するPTOクラッチ75(
図8参照)とが内蔵されている。PTOクラッチ75は、運転操作部13にある作業レバー16の操作に基づくPTOクラッチモータ76(
図8参照)の駆動によって、入り(動力接続)状態と切り(動力遮断)状態とに切換作動するように構成されている。
【0021】
図2、
図5及び
図6に示すように、苗載台29の上面は苗台リブ33にて仕切られていて、苗載台29の上面に8条分の苗マット載面34が形成されている。苗載台29の各苗マット載面34には苗縦送り機構35が設けられている。苗縦送り機構35は、苗取出し方向に傾斜させた苗載台29の下端側に設けられた左右横長の駆動側ローラ36と、苗載台の中途部に設けられた左右横長の従動側ローラ37と、一部が苗マット載面34側に露出するように駆動側ローラ36及び従動側ローラ37に巻き掛けられた無端帯状の苗縦送りベルト38とを備えている。各苗マット載面34に矩形状の2枚の苗マット39を直列に載せ、苗縦送りベルト38を間欠駆動させることによって、苗マット載面34の苗取出し側(苗載台29の傾斜下端側)に向けて苗マット39が縦送り搬送される。なお、各苗マット載面34に対して苗縦送りベルト38は左右一対配置されている。また、苗縦送りベルト38の苗送り作用面の長さは1枚の苗マット39の長さより長い。
【0022】
図2、
図4及び
図6に示すように、植付入力ケース26の後方には、苗取出し口40を有する苗取出し板41が、略水平横向きに延びるように配置されている。苗載台29における裏面側(苗マット載面34と反対側)の下部に、下レールフレーム42が略水平横向きに延長するように固着されている。苗取出し板41に設けられた下スライドシュー43が下レールフレーム42に摺動可能に下方から嵌め込まれている。一方、苗載台29における裏面側の上部には、上レールフレーム44が略水平横向きに延長するように固着されている。植付入力ケース26に苗台支柱フレーム45が立設され、苗台支柱フレーム45に設けられた上スライドシュー46が上レールフレーム44に摺動可能に下方から嵌め込まれている。すなわち、下レールフレーム42に下スライドシュー43を嵌め込むと共に、上レールフレーム44に上スライドシュー46を嵌め込むことによって、苗載台29は左右幅方向に横送り移動可能に支持されている(
図3及び
図4参照)。
【0023】
図3に示すように、植付入力ケース26には、横送り駆動機構47と苗縦送り駆動機構48とが配置されている。横送り駆動機構47の送り体49は、苗載台29の裏面下部側に連結されていて、下レールフレーム42及び上レールフレーム44に沿った左右幅方向に、苗載台29を横送り移動させる。このため、苗載台29上の苗マット39は連続的に往復で横送り搬送される。一方、苗縦送り駆動機構48の縦送り駆動軸50には一対の縦送り駆動カム51が固着されている。苗載台29が往復移動端(往復移動の折返し点)に到達すると、縦送り駆動軸50による各縦送り駆動カム51の回転駆動にて、苗縦送りベルト38を駆動させ、苗載台29上の苗マット39が間欠的に縦送り搬送される。
【0024】
図2及び
図6に示すように、苗載台29における苗マット載面34の上方に、苗マット押え棒52が配置されている。苗マット押え棒52は、苗マット載面34及び苗縦送りベルト38の上方に苗マット39が浮き上がるのを防止するものである。実施形態では、1つの苗マット載面34に対して2本の苗マット押え棒52を備えている。苗マット押え棒52は苗縦送りベルト38の苗送り作用面より上下に長い形状に形成されている。苗マット押え棒52の中途部は、苗マット載面34に対して略平行で且つ苗縦送りベルト38の長手方向に沿って延びている。苗マット押え棒52の上下両端側は、苗マット載面34から離れる後方側に折り曲げられていて、下端側は下押え棒アーム53に、上端側は上押え棒アーム54に固着されている。苗載台29における苗台リブ33の下端側に下押え棒支持フレーム55が立設され、下押え棒支持フレーム55に下押え棒アーム53が連結されている。一方、苗台リブ33の上端側には上押え棒支持フレーム56が立設され、上押え棒支持フレーム56に上押え棒アーム54が連結されている。
【0025】
図5及び
図6に示すように、実施形態の苗載台29は、6条分の本体側苗載台29aと、2条分の分割側苗載台29bとによって構成され、苗載台29のうち分割側苗載台29bを取り外して、苗載台29全体の左右横幅を6条分の左右横幅に短縮することが可能になっている。この場合、分割側苗載台29bが左側に位置し、本体側苗載台29aが右側に位置している。本体側苗載台29aと分割側苗載台29bとの境界部に位置する苗台リブ33は、本体側苗載台29aの本体側苗台リブ33aと、分割側苗載台29bの分割側苗台リブ33bとに分割して構成されている。本体側苗台リブ33a及び分割側苗台リブ33bは、前記境界部に位置する苗台リブ33を縦方向に略二等分に切断した形状になっている。本体側苗台リブ33aと分割側苗台リブ33bとを突き合わせることによって、前記境界部に位置する苗台リブ33として機能している。
【0026】
図示は省略するが、本体側苗台リブ33aと分割側苗台リブ33bとのうち一方には係合突起を備え、他方には係合突起が嵌る係合穴を有する係合片を備えている。係合片の係合穴と係合突起との嵌り合いによって、本体側苗台リブ33aに分割側苗台リブ33bが当接し、8条分の苗載台29が左右に横並びする。本体側苗載台29aの両レールフレーム42,44に鉤孔体が設けられている一方、分割側苗載台29bの両レールフレーム42,44には、矢尻形尖頭を有するロックアームが設けられている。各ロックアームをこれに対応した鉤孔体に離脱可能に係止することによって、本体側苗載台29aに分割側苗載台29bが取外し可能に連結される。
【0027】
図5及び
図6に示すように、分割側苗載台29bのうち分割側苗台リブ33bと反対側の外側部に、ロックアームを係脱操作するロックレバー62が取り付けられている。オペレータがロックレバー62の操作にて各鉤孔体から各ロックアームを離脱させることによって、分割側苗載台29bが本体側苗載台29aから取り外される。逆に、ロックレバー62の操作にて各鉤孔体に各ロックアームを係止することによって、本体側苗載台29aに分割側苗載台29bが連結される。
【0028】
図5及び
図6に示すように、本体側苗載台29aの苗台リブ33には、パイプ形で左右一対の下部受台フレーム63と、上部係止フレーム64とが立設されている。一方、分割側苗載台29bには、握りアーム65と左右一対の係止突起66とが固着されている。苗載台29全体の左右横幅を6条分の左右横幅に短縮する際は、ロックレバー62の操作にて各鉤孔体から各ロックアームを離脱させた状態で握りアーム65を掴んで分割側苗載台29bを持上げ、下部受台フレーム63に係止突起66を嵌め込んで、分割側苗載台29bの下部を支持させる。そして、本体側苗載台29aの上レールフレーム44に上部係止フレーム64を係止して、分割側苗載台29bの上部を保持する。その結果、本体側苗載台29aの左右横幅内に分割側苗載台29bが収納される。
【0029】
なお、苗植付装置23の左右外側には、苗台支柱フレーム45に回動可能に支持されたサイドマーカ58を備えている。サイドマーカ58は、筋引き用のマーカ輪体59と、マーカ輪体59を回転可能に軸支するマーカアーム60とを有している。サイドマーカ58は、運転操作部13にある作業レバー16の操作に基づき、次工程での基準となる軌跡を田面に着地して形成する作業姿勢と、マーカ輪体59を上昇させて田面から離間させた非作業姿勢とに変更(回動)可能に構成されている。
【0030】
苗植え作業(田植え作業)においては、苗載台29の各苗マット載面34に苗マット39を載せたのち、操縦座席18にオペレータが座乗して乗用型田植機1を圃場内で移動させる。移動の間、横送り駆動機構47にて苗載台29を左右幅方向に横送り移動させながら、苗マット39における苗取出し口40付近の苗1株分を植付爪30にて掻き取り、当該掻き取られた苗1株分をフロート32にて均平に整地された田面(圃場面)に植え付ける。横送り駆動機構47によって苗載台29が横送り移動して往復移動端(左右一方の移動端)に到達すると、苗縦送り駆動機構48によって苗縦送りベルト38を作動させ、苗マット載面34上の苗マット39を苗取出し方向(後方斜め下向き)に搬送する。苗縦送りベルト38の苗縦送り動作が完了して苗縦送りベルト38が停止すると、再び横送り駆動機構47によって、苗載台29が左右他方の移動端に向けて横送り移動する。
【0031】
図3及び
図7に示すように、苗植付装置23の苗台支柱フレーム45には、苗載台29が左右一方の移動端まで到達したか否かを検出する端寄せ検出手段としての接触式の端寄せ検出センサ67が固着されている。端寄せ検出センサ67は上向きに延びる感知体68を有している。上レールフレーム44に固着されたL字状の当接アーム69(
図5参照)の接触にて、感知体68が弾性に抗して逃げ回動すると、端寄せ検出センサ67が入り作動して、左右一方の移動端への苗載台29の到達が検出される。苗載台29の左右他方への横送り移動にて当接アーム69が感知体68から離れると、感知体68が弾性復原力にて戻り回動し、端寄せ検出センサ67が切り作動する。
【0032】
実施形態では、端寄せ検出センサ67が苗台支柱フレーム45の右寄り部位(本体側苗載台29a寄り)に位置し、同様にして、当接アーム69が上レールフレーム44の右寄り部位(本体側苗載台29a寄り)に位置している。端寄せ検出センサ67の感知体68に当接アーム69が接触した状態では、分割側苗載台29bが本体側苗載台29aよりも走行機体2の左右幅中央から大きく離れて、左外側にはみ出すことになる。
【0033】
(3).端寄せモード実行のための構造及びその作動態様
次に、
図8−
図10を参照しながら、苗載台29を左右一方の移動端まで横送りして停止させる端寄せモード実行のための構造及びその作動態様について説明する。走行機体2には、主に苗植付装置23に関連する制御を司る制御手段としての植付作業コントローラ70が搭載されている。図示は省略するが、植付作業コントローラ70は、各種演算処理や制御を実行するCPUのほか、制御プログラムや各種データを記憶したROM、制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM、及び入出力インターフェイス等を有している。
【0034】
図8に示すように、植付作業コントローラ70の入力側には、少なくとも端寄せ検出センサ67と、端寄せモード実行のための端寄せ操作具としての端寄せボタン71と、走行主変速レバー15の操作位置を検出する主変速レバーセンサ72と、作業レバー16の操作方向及び操作回数を検出する作業レバーセンサ73と、PTOクラッチ75の継断状態を検出するPTOクラッチセンサ74と、走行変速ペダル12の踏込み量を検出する変速ポテンショ82とが電気的に接続されている。植付作業コントローラ70の出力側には、少なくともPTOクラッチ75を切換作動させるPTOクラッチモータ76のモータ駆動回路部77と、端寄せモード実行中である旨を知らせる端寄せボタンランプ78と、PTOクラッチ75が動力接続状態である旨を知らせるPTOクラッチランプ79と、ミッションケース6における油圧式無段変速機83の調節部を制御する変速電動モータ84のモータ駆動回路部85とが電気的に接続されている。
【0035】
端寄せボタン71は、運転操作部13のうち操縦ハンドル14のハンドル軸近傍に配置されている(
図9参照)。端寄せボタン71には、1回目の押し操作で端寄せモードを開始し、もう1回の押し操作で端寄せモードを取り止めるという機能を持たせている。主変速レバーセンサ72は、運転操作部13において操縦ハンドル14の左側に配置された走行主変速レバー15の根元部に配置されている。なお、走行主変速レバー15は、運転操作部13に形成されたガイド溝80に沿って操作することによって、乗用型田植機1の走行モードを前進、中立、後進、苗継及び移動の各モードに切換え可能になっている。走行主変速レバー15は、走行機体2の進行方向及び走行速度を操作するための走行変速操作具を構成している。
【0036】
作業レバーセンサ73は、操縦ハンドル14の右側に配置された作業レバー16の根元部に配置されている。なお、作業レバー16は十字方向に操作可能に構成されていて、苗植付装置23の昇降操作、PTOクラッチ75の継断操作及び左右サイドマーカ58の選択操作という複数の操作を単独で担うものである。作業レバー16は、PTOクラッチ75を入り切り操作するクラッチ操作具を構成している。
【0037】
この場合、作業レバー16を1回前傾操作すると苗植付装置23が下降し、もう1回前傾操作するとPTOクラッチ75が入り作動する(動力接続状態になる)。逆に、作業レバー16を1回後傾操作するとPTOクラッチ75が切り作動し(動力遮断状態になり)、もう1回前傾操作すると苗植付装置23が上昇する。苗植付装置23の昇降動作を取り止める場合は、作業レバー16を逆方向に傾動操作する。例えば苗植付装置23の下降動を途中で停止させる場合は作業レバー16を後傾操作すればよい。作業レバー16を1回左へ傾動操作すると左側のサイドマーカ58が作業姿勢となり、もう1回左へ傾動操作すると左側のサイドマーカ58は非作業姿勢に戻る。作業レバー16を1回右へ傾動操作すると右側のサイドマーカ58が作業姿勢となり、もう1回右へ傾動操作すると右側のサイドマーカ58は非作業姿勢に戻る。
【0038】
端寄せボタンランプ78とPTOクラッチランプ79とは、端寄せモード実行中を報知する報知部材を構成している。端寄せボタンランプ78は、端寄せボタン71に内蔵されている。端寄せボタンランプ78は、端寄せボタン71の1回目の押し操作で点灯し、もう1回の押し操作で消灯するように構成されている。PTOクラッチランプ79は、運転操作部13のうち操縦ハンドル14の前方にある液晶パネル81内に配置されている。PTOクラッチランプ79は、通常の苗植え作業時等にPTOクラッチ75が動力接続状態であれば点灯し、端寄せモード実行中にPTOクラッチ75が動力接続状態であれば適宜周期で点滅し、PTOクラッチ75が動力遮断状態であれば消灯するように構成されている。
【0039】
植付作業コントローラ70は、端寄せ検出センサ67の検出結果に基づくPTOクラッチ75の切換作動にて、苗載台29を左右一方の移動端(実施形態では左移動端)まで横送りして停止させる端寄せモードを実行する。この場合、
図10のフローチャートに示すように、走行主変速レバー15が中立位置にあるときは(S1:YES)、PTOクラッチセンサ74の検出値を読み込んで、端寄せモード直前のPTOクラッチ75の継断状態を記憶する(S2)。そして、端寄せボタン71を押し操作すれば(S3:YES)、端寄せモードが開始され、端寄せボタンランプ78が点灯すると共にPTOクラッチランプ79が適宜周期で点滅し(S4)、PTOクラッチモータ76の駆動にてPTOクラッチ75を入り作動させる(S5)。
【0040】
端寄せモードでは、オペレータが走行変速ペダル12を踏み込むと、変速ポテンショ82が踏込み量を検出し、当該踏込み量が所定量以上であれば、変速電動モータ84の駆動にて、油圧式無段変速機83からの変速動力を踏込み量に拘らず一定に保持し、この状態で苗載台29の横送り移動を開始させる。走行変速ペダル12の踏み込みを解除すれば、油圧式無段変速機83からの変速動力がアイドリング状態となるため、苗載台29は横送り移動しなくなる。このように制御すると、走行変速ペダル12の踏込みをトリガーにして、苗載台29の横送り移動開始をオペレータが的確に認識でき、不用意に苗載台29が横送り移動を始めるおそれがない。また、走行変速ペダル12の過剰な踏込み操作によって、苗載台29がオーバーランするおそれも回避できる。
【0041】
端寄せモードの実行中に作業レバー16を1回後傾操作(PTOクラッチ75切り操作)すると(S6:YES)、ステップS10に移行し、PTOクラッチモータ76の駆動にてPTOクラッチ75を切り作動させる。そして、端寄せボタンランプ78及びPTOクラッチランプ79の両方を消灯させ(S11)、端寄せモードを取り止める。
【0042】
端寄せモードの実行中に走行主変速レバー15を中立位置以外に操作した場合(S7:YES)、及び、端寄せボタン71をもう1回押し操作した場合は(S8:YES)、ステップS2の読込み結果がPTOクラッチ75入り切りのどちらであったかを判別する(S12)。ステップS2の読込み結果がPTOクラッチ75切りであれば(S12:切り)、ステップS10に移行し、PTOクラッチモータ76の駆動にてPTOクラッチ75を切り作動させる。そして、端寄せボタンランプ78及びPTOクラッチランプ79の両方を消灯させ(S11)、端寄せモードを取り止める。ステップS2の読込み結果がPTOクラッチ75入りであれば(S12:入り)、端寄せボタンランプ78を消灯させて端寄せモードの取止めを報知する一方、PTOクラッチランプ79を点灯させてPTOクラッチ75は入り状態であることを報知し(S13)、端寄せモードを取り止める。
【0043】
端寄せモードの実行中に端寄せ検出センサ67が入り作動した場合は、苗載台29が左右一方の移動端まで到達しているので、PTOクラッチモータ76の駆動にてPTOクラッチ75を切り作動させ、苗載台29の横送り移動を停止させる(S10)。そして、端寄せボタンランプ78及びPTOクラッチランプ79の両方を消灯させ(S11)、端寄せモードを終了するのである。
【0044】
以上の説明から明らかなように、実施形態では、左右横送り可能な苗載台29及び複数の植付爪30を有し且つ走行機体2に装着された苗植付装置23と、前記苗植付装置23への動力伝達を継断するPTOクラッチ75と、前記苗載台23を左右一方の移動端まで横送りして停止させる端寄せモードを実行するための端寄せボタン71とを備えており、前記端寄せボタン71に、前記端寄せモードを開始する機能と、実行中の前記端寄せモードを取り止める機能とを持たせているから、前記端寄せボタン71を操作するだけで、前記苗載台29を横送り移動させて簡単に端寄せできる。従って、オペレータが後ろ向きになって目視で前記苗載台29の位置を確認しながら、前記PTOクラッチ75を切る操作をする必要がなく、端寄せ作業の作業性を向上できる。その上、前記苗載台29の停止位置の精度も向上する。
【0045】
また、オペレータは、端寄せ作業を行いたい場合に前記端寄せボタン71を押し操作すれば済むことを、運転操作部13にある前記端寄せボタン71を見れば直感的且つ確実に把握できる。このため、ユーザーフレンドリー性に優れている。前記端寄せモードを途中で取り止めたい場合は、前記端寄せボタン71をもう1回押し操作するだけで、前記苗載台29の横送り移動を停止でき、操作手順が分かり易いという利点もある。
【0046】
実施形態では、前記PTOクラッチ75が入り状態で前記端寄せモードを開始した後、前記端寄せボタン71を押し操作した場合は、前記端寄せモードの取止め後も前記PTOクラッチ75を入り状態に維持し、前記PTOクラッチ75が切り状態で前記端寄せモードを開始した後、前記端寄せボタン71を押し操作した場合は、前記端寄せモードの取止めに伴い前記PTOクラッチ75を切りに戻すから、前記端寄せボタン71の押し操作で端寄せ作業を途中で取り止める場合は、前記端寄せモード直前の前記PTOクラッチ75状態にすることになる。すなわち、例えば前記端寄せボタン71を誤操作したため、もう1回前記端寄せボタン71を押し操作して前記端寄せモードをキャンセルすると、誤操作前の元の状態に戻せることになる。従って、苗植え作業のために前記PTOクラッチ75を再度入り操作する必要がなく、オペレータにとって操作状態の連続性が分かり易い(把握し易い)。
【0047】
しかも、前記端寄せモードの実行中にその旨を報知する端寄せボタンランプ78及びPTOクラッチランプ79を備えているから、従来のように後ろ向きになって前記苗載台29を見なくても前記端寄せモードの実行中か否かを判別できる。
【0048】
また、実施形態では、左右横送り可能な苗載台29及び複数の植付爪30を有し且つ走行機体2の後部に装着された苗植付装置23と、前記苗植付装置23への動力伝達を継断するPTOクラッチ75と、前記PTOクラッチ75を入り切り操作するための作業レバー16と、前記苗載台29を左右一方の移動端まで横送りして停止させる端寄せモードを実行するための端寄せボタン71とを備えており、前記作業レバー16には、そのクラッチ切り操作にて実行中の前記端寄せモードを取り止める機能を付加しているから、前記端寄せボタン71以外に前記端寄せモードを取止めできる操作具として、通常はPTOクラッチ75を入り切り操作する前記作業レバー16を利用できることになり、例えば咄嗟の場合であっても、前記端寄せモードの取止めがし易い。
【0049】
更に、前記走行機体2の進行方向及び走行速度を操作するための走行主変速レバー15を備えており、前記走行主変速レバー16が中立位置以外にある場合は、前記端寄せボタン71を操作しても前記端寄せモードを実行しないから、前記端寄せモードを安全に開始できる状態を確保して、前記端寄せモードの実行中に前記走行機体が突然走り出すようなおそれを確実に防止できる。
【0050】
しかも、前記端寄せモードの実行中に前記走行主変速レバー15を中立位置以外に操作した場合も、前記端寄せモードを取り止めるから、前記作業レバー16だけでなく前記走行主変速レバー15の中立位置以外への操作でも、前記端寄せモードを取止めできることになり、咄嗟の場合に前記端寄せモードの取止めがより一層やり易い。
【0051】
その上、前記苗載台29は本体側苗載台29aと分割側苗載台29bとからなり、前記分割側苗載台29bが前記本体側苗載台29aに対して取外し可能であり、前記苗載台29を左右一方の移動端まで横送りして停止させた状態では、前記分割側苗載台29bが前記本体側苗載台29aよりも前記走行機体2の左右幅中央から離れた位置にあるから、前記端寄せボタン71の押し操作で前記苗載台29を左右一方の移動端まで端寄せした後、左右外側にはみ出した前記分割側苗載台29bを取り外して収納できる。このため、前記苗載台29全体の左右横幅を6条分の左右横幅に短縮させ、2トントラック等の運搬車の荷台に乗用型田植機1を載せて運搬する際に、前記分割側苗載台29bの取外し・収納作業の作業性が向上するのである。
【0052】
(4).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、農産物以外の様々な種類の長物物品を搬送・仕分する物品仕分装置として広く適用できる。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。