(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースには、前記回転軸の先端に組み付けられた指針を引き抜く際に前記回転軸が引き上げられることを阻止するように前記ギア本体の上面に端面が接触する、該ケースの内面の前記別の一部側から前記ギア本体の上面に向けて突設されたストッパ部材が形成され、
前記ストッパ部材の前記端面は、前記制動バネに接触する前記バネ押当部材の端面から、前記ギア本体の上面の前記凹部の深さ未満の距離だけ、前記ギアから離れる方向に位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載の計器ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のような構成のメータ装置の回転軸支持構造にあっては、板バネ102がギア103に対して下方(下ケース101B側)に設置されている。このような構造では、板バネ102を設置するためにその板バネ102に接触するボス104Aを付設する必要があるなどの事情から、ケース101の厚さ方向について比較的大きな設置スペースを必要としている。
【0010】
特に、モータから回転軸まで回転力を伝達する各種ギアを、横に並設させるのではなく縦列にまとめて積層させるような構造とした場合には、上述のボスの他にさらにこれらのギアが積み重なるので、ケースの厚さが一層増大する。このような構造は、メータ装置の小型化や薄型化の要請が高まっている近年では、特に小型化や薄型化には不向きである。
【0011】
また、上述のような構成のメータ装置の回転軸支持構造は、弾性力で押圧される回転軸104や指針軸105も軸方向に大きく変位可能な状態となっており、位置が不安定となり易い。その結果、指針の回動動作も円滑性に欠け、非常に不安定な指針動作となる虞がある。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷重バネの安定した制動動作により回転軸の安定した回動動作、延いては指針の滑らかな回転動作が得られる計器ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る計器ユニットは、下記(1)〜
(3)を特徴としている。
【0014】
(1) ステップモータと、
前記ステップモータの回転力が伝達されて回転するギア本体と、前記ギア本体の上面および下面から突出する、該ギア本体のギア軸と軸心を一にする回転軸と、を有するギアと、
前記ギアに荷重を上下方向に作用させる制動バネと、
前記ステップモータ、前記制動バネ、前記ギア、および指針が組み付けられる先端を除く前記回転軸を、内部に収容するケースと、
を備え、
前記制動バネは、前記ギア本体の上面から突出する前記回転軸が中心部を貫通可能で、かつ、互いに直交する二軸方向の長さが長短異なるとともに前記長短各軸方向についてそれぞれ線対称な形状であり、
前記ギア本体の上面には、該ギア本体の上面から突出する前記回転軸が貫通される前記制動バネを収容する凹部が形成され、
前記ケースの内面は、一部側が、前記ギア本体の下面を支持するとともに、別の一部側が前記制動バネの上面を押圧する形状
であり、
前記制動バネは、前記回転軸によって貫通される孔が形成された小判状若しくは楕円状の形状であり、
前記制動バネの上面を押圧する前記ケースの前記別の一部側は、該ケースの内面から前記制動バネの上面に向けて突設され、その端面が前記制動バネの上面に接触するバネ押当部材であり、
前記制動バネは、前記長軸方向に沿った断面が前記ケース内面の前記一部側に向けて前記回転軸を囲むように略逆U状に湾曲した形状であるとともに、前記短軸方向に沿った断面が前記回転軸を囲むように前記別の一部側に向けて略U状に湾曲し、かつ、前記長軸方向の両端側が前記ギア本体の上面の前記凹部から離間する前記別の一部側の方向に反った折曲形状を有する板バネである、こと。
(2) 上記(1)の構成の計器ユニットにおいて、
前記ケースには、前記回転軸の先端に組み付けられた指針を引き抜く際に前記回転軸が引き上げられることを阻止するように前記ギア本体の上面に端面が接触する、該ケースの内面の前記別の一部側から前記ギア本体の上面に向けて突設されたストッパ部材が形成され、
前記ストッパ部材の前記端面は、前記制動バネに接触する前記バネ押当部材の端面から、前記ギア本体の上面の前記凹部の深さ未満の距離だけ、前記ギアから離れる方向に位置している、こと。
(3) 上記(1)または(2)の構成の計器ユニットにおいて、
前記ケースの内面の、前記ギア本体の下面を支持する前記一部は、前記ギア本体の下面から突出する前記回転軸を支持する軸受けであり、
前記ケースの内面の、前記制動バネの上面を押圧する前記別の一部は、前記ギア本体の上面から突出する前記回転軸を支持する軸孔である、こと。
【0015】
上記(1)の構成の計器ユニットによれば、安定した制動動作を有する荷重バネが得られるので回転軸および指針のスムースな回動動作が得られ、延いては指針の滑らかな回転動作が実現できる。さらに、導光兼用タイプの回転軸を備えたものにあっては、導光性能を損なうことのないものが得られる。
上記
(1)の構成の計器ユニットによれば、制動バネの少なくとも一部にバネ押当部材が絶えず接触していることにより、制動バネがこれを収容するギアや回転軸と一体に回転する場合に、バネ押当部材の押圧動作によって制動バネにギアへの荷重を常に発生させることができる。この結果、回転軸の回動動作を安定化させることができる。
上記
(1)の構成の計器ユニットによれば、制動バネの湾曲した形状を利用してこれを掴む把持動作が確実に行えるので、ギアの凹部への配置作業が簡単になる。しかも、制動バネの長軸方向の両端側が凹部から離間する方向に折曲形状を有するので、この折曲形状部分での凹所に対する滑動機能を高めることができ、制動バネが押圧されて撓むときに滑らかなスライド動作が実現可能となる。
上記
(2)の構成の計器ユニットによれば、指針を取り外す際につまり、回転軸の先端から指針を引き抜く際に、指針を組付けていたギア及び回転軸も一緒に、例えば所定範囲以上に引き上げられてしまう、といった事態になることを、ストッパ部材がつっかい棒のような作用を果たすことで回避できる。これにより、ケースとギアに挟持された制動バネが、必要以上に押圧されて扁平状態となり、その弾性力が消失してしまうことを阻止できる。
上記
(3)の構成の計器ユニットによれば、従来の計器ユニットのケースに設けられている軸受けおよび軸孔をわずかに改良することで、本発明を実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の計器ユニットによれば、回転軸には常時安定した荷重バネが作用するとともに回転軸のスムースな回動動作が得られ、延いては指針の滑らかな回転動作が得られる。しかも、導光性能を損なうことがなく、さらに計器ユニットのケースの小型化や薄型化にも好適である。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(A)、
図1(B)及び
図2は、本発明の実施形態に係る計器ユニット1を示すものである。
計器ユニット1は、ステップモータ5、減速ギア列、及び回転軸8などのムーブメント部品がモータケース4に収容されたものである。
【0020】
計器ユニット1が装着されるメータ装置は、
図3に示す基板2上に実装された光源3と、この光源3が搭載された領域を含む基板2上の所定場所に取付けられた計器ユニット1と、この計器ユニット1の上部に設置された、図示しない指針によって数字、文字、記号など、車自体或いは車周辺の環境などに関する必要情報を表示する図示外の表示板と、を有する。
【0021】
本実施形態の計器ユニット1が適用されるメータ装置は、図示外のコンビネーションメータの一部を構成しており、表面側を形成する表示板が全面に亘って嵌め込まれて見返し板を構成している。また、この表示板には、計器ユニット1を含む各種計器類を設置するための各種表示窓を開口させており、側面及び背面側を構成するコンビネーションメータケースと一体化されている。更に、この表示板は、黒色系などの透明な図示外のカバーガラスで上部が覆われている。
【0022】
なお、計器ユニット1が適用されるメータ装置は、例えば本実施形態の場合には速度計を構成している。この場合、図示しないセンサによって検出された現在速度に対応したセンサ信号に基づき、後述の指針を所定角度だけ回動させ、図示外の表示板に形成された特定の数字を指し示すことによって現在速度をアナログ表示する。
【0023】
本実施形態の光源3は、所定波長(λ)の可視光を出射する例えばLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)で構成されており、後述する回転軸8の下側の端面8Aに正対するような状態でその直下の基板2に実装されている。本実施形態の光源3であるLEDは、光軸が基板2の上面に対して垂直なZ方向に設定されており、このLEDからの主要な大部分の光(以下、「照明光」とよぶ)が直上の回転軸8の下側の端面8Aに向けて出射される。なお、この回転軸8の下側の端面8Aから入射した照明光は、モータケース4の上部から突出した回転軸8の上側の先端まで導光され、この上端に圧入された図示外の指針が発光照明されるように構成されている。
【0024】
モータケース(以下、ケースとよぶ)4は、基板2に固設される下ケース4Aと、この下ケース4Aに重ねられた状態で一体に組付ける上ケース4Bとで構成されている。このモータケース4の内部には、ステップモータ5と、中間ギア6と、出力ギア7と、この出力ギア7と一体の回転軸(但し、上側の先端は除く)8と、を収容している。
【0025】
また、さらに、このケース4の内部には、後に詳細に説明する板バネ(以下、「制動バネ9」とよぶ)が出力ギア7と上ケース4Bとの間に組付けられた状態で出力ギア7に収容されている。具体的には、制動バネ9が、出力ギア7側の一面(以下、「上面7A」とよぶ)の中央部側に設けた凹部72に収容されているが、これについては後に詳述する。なお、回転軸8の上側の先端は、ケース4の外部に突出しており、この上側の端面に図示外の指針が圧入された状態で嵌合されている。
【0026】
下ケース4Aは、上方が開口された略箱型形状を呈している。また、この下ケース4Aには、その側面に、下方(−Z方向)に向けて突出する円筒突起Pを左右両側面に設けており、これらの円筒突起Pが基板2上に開口された図示外の固定孔にそれぞれ嵌入されている。
【0027】
また、下ケース4Aの内部には、下面に形成された
図3に示す凹部41の中央部から上方(上ケース4B方向)に向けて円筒状に突出する、別言すれば内面(床面4C)側から上ケース4Bの天井面4Dに向けて突出する軸受け42Aが形成されている。さらに、この下ケース4Aの床面4Cには、
図2に示すように、上ケース4B方向に向けて僅かに突出した円筒状の軸受け42B、軸受け42Cがそれぞれ所定位置に形成されている。
【0028】
下ケース4Aの軸受け42Aは、出力ギア7の上面7Aとは反対面である他面(以下、「下面7B」とよぶ)を回転自在に支持する支持手段(つまり、下部軸受)としても機能している。なお、出力ギア7の下面7Bに対する支持手段としては、本実施形態のような回転軸8の下側を軸支するケース床面側の軸受け42Aで兼用させなくてもよい。例えば、出力ギア7の凹部72に対向する下面を支持する略円筒状の専用部材を、床面4C側から別に独立させて立設するようにしてもよい。
【0029】
一方、上ケース4Bには、下ケース4Aの凹部41(
図3参照)の中心部と同心状に設けた軸受け42Aに対応して、その直上部分の軸受け43Aに軸孔43を穿設している。この軸孔43には、回転軸8の上側の端部が回転可能な状態で貫通している。さらに、この上ケース4Bには、下ケース4Aの軸受け42B、軸受け42Cに対応してその直上部分の内面、つまり天井面4Dに、図示外の軸受けがそれぞれ形成されている。
【0030】
また、この上ケース4Bの天井面4Dの、出力ギア7の上面7A側の凹部72に対向する部分には、
図3に示すようにバネ押当部材44を、天井面4Dから下方に向けて所定長さ突出させた状態で一体に設けてある。
【0031】
このバネ押当部材44は、下端側が開口した略円筒形状を有する。そして、出力ギア7の凹部72に制動バネ9が収容され、最終的に上ケース4Bが下ケース4Aと一体に組付けられたときに、バネ押当部材44が制動バネ9の上面を押下する。
【0032】
即ち、このバネ押当部材44は、該制動バネ9が凹部72に収容されるまで、つまり制動バネ9の高さが凹部72の深さよりも小さくなるまで制動バネ9を押圧し、バネ押当部材44と出力ギア7の凹部72との間に制動バネ9が挟持される。このとき、バネ押当部材44の先端面(以下、「下端面44A」とよぶ)の少なくとも何れか一部の領域が常に制動バネ9の上面に当接する。
【0033】
さらに、上ケース4Bの天井面4Dには、
図3に示すように、ストッパ部材45が一体に形成されている。このストッパ部材45は、回転軸8の先端に組み付けられた指針を引き抜く際に回転軸8が一緒に引き上げられるのを阻止するためのものであり、上ケース4Bの内面から出力ギア7の上面7Aに向けて突設されている。
【0034】
このストッパ部材45は、ケース4に回転軸8を収納している場合に、出力ギア7の上面7Aとの間に所定距離bだけ隙間を有しており、指針を引き抜く際に指針の引き抜き力で一体に引き上げられると、出力ギア7の上面7Aがストッパ部材45の下端面45Aに接触することで、出力ギア7及び回転軸8がそれ以上上方に移動しようとするのを阻止する。
【0035】
なお、この隙間bは、上下に変位可能な制動バネ9を介して出力ギア7が、回転軸8の軸方向に所定の遊びの範囲内で揺動動作を行うことを可能とするためのものである。この隙間bは、ストッパ部材45の下端面45Aを出力ギア7上面から所要距離離間させることで形成されている。
【0036】
本実施形態のストッパ部材45は、回転軸8が所定の遊びの範囲を越えて指針と一緒に引き上げられようとすると、その遊びの範囲の最大部位まで移動したところで、出力ギア7の上面7Aにストッパ部材45の先端面、つまり下端面45Aが押し当る。これにより、回転軸8がそれ以上に上方へ移動するのを阻む。
【0037】
ステップモータ5は、図示外の指針を回動させるためのものであり、減速ギア列、即ち中間ギア6及び出力ギア7(特にこれらのギア列ではなく、単一のギアで減速させる構成でもよい)を介して減速させながら回転軸8を回動させる。そして、この回転軸8を回動させることにより、これと一体の指針を表示板の表面に沿って回動させ、必要な各種情報を指し示す。本実施形態のステップモータ5は、
図2に示すように、ステータ51と、このステータ51の開口された中央部に配設するロータ軸52Aに取り付けられたロータ52と、を備えており、ステップモータを構成している。
【0038】
なお、本実施形態の減速ギア列を構成するロータギア53、中間ギア6及び出力ギア7にあっては、回転面(X−Y)方向については、隣のギアどうしが互い違いに入り込むように一部が積層された状態で、かつ、厚さ(Z)方向については隣のギアと僅かな隙間を隔てて積層配置された状態で、並設されている。このため、Z方向の高さを嵩上げしなくても、減速ギア列の一部を上下方向で接触しないような状態で重層配置させている分、X−Y方向の設置スペースが削減可能となっている。その結果、ケース4自体も、小型化、薄型化に好都合となっている。
【0039】
ステータ51は、下ケース4Aに固定されているとともに、ステータ51の開口された中央部に向けて磁極となる磁芯51Bが突設されており、この磁芯51Bにはボビンに巻装されたコイル51Aが装着されている。
【0040】
ロータ52は、適宜の磁性材料で略円筒形状に形成されてステータ51の開口された中央部に回転自在に設置されており、上部には歯数の少ない小径のロータギア53が同芯状に固設されているとともに、外周面には図示しないマグネットを複数固着させている。なお、ロータ52を取付けたロータ軸52Aは、
図2に示すように、下ケース4Aに設けた軸受け42Bと上ケース4Bに設けた図示外の軸受けとの間に回転自在に軸支されている。
【0041】
中間ギア6は、支軸6Aに固着されており、この支軸6Aが下ケース4Aに設けた軸受け42Cと上ケース4Bに設けた軸受けとの間に回転自在に軸支されている。この中間ギア6は、外周に設けた歯数の多い大歯61が、ロータ52の上部に固着した小歯のロータギア53に噛合しており、ロータ52からの回転速度が減速されて伝達される。また、この中間ギア6の下面には、歯数の少ない小径のピニオン62が支軸6Aと一体に同軸的に固着されている。
【0042】
出力ギア7は、中間ギア6のピニオン62からの回転力を回転軸8に伝達するため、回転軸8の中間部付近においてこの回転軸8と一体に設けられている。なお、本実施形態の出力ギア7は、適宜の透明樹脂材料により、後述する回転軸8と一体成形されている。
【0043】
この出力ギア7は、外周に設けた歯数の多い大歯71が、中間ギア6の下面に設けたピニオン62に噛合しており、中間ギア6の回転速度がさらに減速されて出力ギア7へ伝達され回転する。
図3に示すように、回転軸8は、大歯71が側面に設けられた円盤状のギア本体を構成する出力ギア7の上面および下面から、出力ギア7のギア軸と軸心を一にするように突出して出力ギア7に設けられている。このため、回転軸8は、大幅に減速された出力ギア7と同一の角速度で一体に回動し、高い精度で図示外の指針を回動させることができる。
【0044】
また、
図3及び
図4に示すように、出力ギア7には、この上面中央から突出する回転軸8が貫通された制動バネ9を収容する凹部72が、上面に回転軸8を囲むように穿たれている。本実施形態の凹部72は、後述する制動バネ9と同じ略小判型の形状を有しているが、制動バネ9の外形よりもごく僅か大きい形状である。なお、ここで、「小判型」とは、直交する二軸に沿った2(X,Y)方向の長さの比が異なる、換言すれば長辺及び短辺を有する概略矩形形状のものであって、特に、短辺部分は略円弧状、長辺部分は直線状を呈する形状を有しているものとする。
【0045】
出力ギア7の凹部72は、
図7(A)及び
図7(B)に示す制動バネ9の自然状態での高さcより若干小さな(若しくはほぼ同等の)深さを有している。また、この凹部72は、
図4に示すように中央部に回転軸8が突出しているが、この回転軸8を取り囲む角隅部分に近い4か所には凹部72の底面から僅かな高さh(但し、h≪H)だけ突出した台座73を設けている。そして、
図5に示すように、この台座73に制動バネ9の短辺側が搭載される。
【0046】
詳細は後述するが、本発明の回転軸8は、出力ギア7の凹部72に配置された制動バネ9の弾性力(バネ力)で下方に押下されながら、この軸線(Z)方向に沿って前述した所定の遊びの範囲内で移動可能となるように設置されている。一方、出力ギア7の大歯71と噛合する本発明のピニオン62についても、これに対応させるため、つまり上記移動可能な範囲内で出力ギア7の大歯71と常時噛合させるようにするため、このピニオン62の歯は軸線(Z)方向に沿って長めに形成されている。
【0047】
換言すれば、ピニオン62は、軸線方向にスライド可能な出力ギア7の大歯71に対して、回転力伝達手段であるだけでなく、遊びの範囲内で出力ギア7及び回転軸8を軸線(Z)方向に対して移動可能とする、スライド手段を兼用しているわけである。
【0048】
因みに、出力ギア7及び回転軸8は、普段は制動バネ9に押下されて最下位置で安定しているので、ここから上方へ遊びの範囲内で移動可能である。
【0049】
回転軸8は、図示しない指針の回転動作を行わせるための手段であるのと同時に、光源3からの照明光を指針へ導光させるための導光手段を兼ねている。そのため、この回転軸8は、導光性に優れた適宜の透光性の樹脂材料で出力ギア7と一体に成形されており、特に軸線方向が出力ギア7の回転面に対して垂直方向に向かうような状態で一体成形されている。本実施形態の回転軸8は、光源3からの照明光を指針まで導光させるために略円柱形状を有しているが、所要の通過光量を確保するため、導光機能を持たない回転軸に比べて外径を太くしている。
【0050】
また、この回転軸8は、上述したように、上側が上ケース4Bの軸孔43からケース4の外部に突出しており、表示板の表面側まで突出する上端部分に指針が圧入されて組付けられている。前述したように、回転軸8は、上部が上ケース4B側の軸孔43に回転自在に挿通されて軸支されており、また下部が下ケース4Aに設けた軸受け42Aに回転自在に挿通されて軸支されている。
【0051】
また回転軸8は、前述したように、下側の端面8Aが光源3の直上に設置されて正対している。従って、光源3からの照明光がこの端面8Aに入射すると、その照明光の大部分が回転軸8の内部の外周面との界面部分で反射(例えば、全反射或いは正反射等)を繰り返しながら導光され、上側の端面へ向けて伝搬していく。
【0052】
また、この回転軸8は、後述する制動バネ9で下方へ向けて付勢されているため、
図3に示すように、普段は、出力ギアの下面7Bが軸受け42Aの上面42Dに突き当たり、遊びの範囲の最下位置まで降下した状態で収容されている。従って、この回転軸8と一体成形された出力ギア7の大歯71は、軸方向に長めに形成されているピニオン62に対して、その軸線方向に沿って変位可能な状態で噛合できるようになっている。
【0053】
制動バネ9は、
図6に示すように、可撓性を有する金属性の適宜の薄板を、直交する二軸(X,Y)方向の長さが長短異なる各軸方向に関してそれぞれ線対称な固有形状、特に本実施形態では略小判型(若しくは楕円形)に切断したものである。本発明の制動バネ9は、中央部に後述する孔91を開口した平坦面92と、これから両長軸方向に向けて下(−Z)方向に向け断面略U字状に延びる翼部93と、この翼部93の先の両長軸(±Y)方向の端部を上方に向け折曲させた折返部94と、を有する2軸対称な略小判型形状を呈している。このような形状の翼部93により、湾曲する厚さ(Z)方向の変位量Δc(=c−c´;
図7(A)及び
図7(B)参照)に応じた大きさのバネ力(弾性力)を発生する。
【0054】
制動バネ9の孔91は、少なくとも回転軸8の外径寸法よりも若干大きな開口寸法を有する真円形状、若しくは制動バネ9の変位に対応可能とするためにやや長円形状に開口されており、回転軸8の上側部分がこの孔91を貫通する。
【0055】
また、制動バネ9の翼部93は、
図7(A)及び
図8(B)に示すように、外力が付与されない自然状態のときに、凹部72の底面に向けて断面略U字状に波打った曲面形状を有している。即ち、制動バネ9が自然状態のときには、長軸(Y)方向に沿って断面山型状を有する翼部93の厚さ(Z)方向における高低差(c)が大きくなっており、出力ギア7の上下動に伴う制動バネ9の変位量を十分に確保させることができるようになっている。また同様に、自然状態のときには、短軸(X)方向に沿った断面が略U字形状を有する翼部93は、その厚さ(Z)方向における湾曲深さ(d)も大きくなっている(
図8(B)参照)。
【0056】
なお、この制動バネ9では、
図5に示すように、翼部93と折返部94との境界部分の最下部の面(以下、最下面9Bとよぶ)が出力ギア7の凹部72の底面に向けた台座73に支承された状態で載置される。即ち、本実施形態の制動バネ9は、出力ギア7の上面7Aの凹部72の底面四隅近傍に形成した台座73に、2か所の最下面9Bで接触する(線接触又は面接触)ような状態に収容される。
【0057】
また、翼部93の短軸方向の両縁部、つまり一対の長辺部9Aが上ケース4B内部の天井面4D側に設けたバネ押当部材44の下端面44Aに接触し、出力ギア7の回転動作に伴って長辺部9Aと下端面44Aの間で摺動動作を行う。即ち、孔91を臨む両翼部93の長辺部9Aが、
図3に示すように、上ケース4B内部の天井面4D側に設けたバネ押当部材44から出力ギア7の凹部72に向けて下(−Z)方向に押付力が作用する。その結果、出力ギア7を介して回転軸8に対して鉛直下(−X)方向に向かう弾性力(バネ力)を生じることで、回転軸8の安定的な回転動作を確保する。
【0058】
なお、翼部93の短軸方向の長さ(
図6に示す横幅w)は、出力ギア7の凹部72の幅寸法(
図5に示す短辺幅w
0)の大きさに対応してほぼ一致させており、双方の間に隙間の発生をなくして出力ギア7回転時の制動バネ9のがたつきを抑えるようにしてある。
【0059】
折返部94は、端面がエッジのないR加工、あるいは面取り加工された形状を呈しており、各端部を上方に向け折曲させることで台座73や凹部72の周壁面などにエッジが引掛かるのを回避させている。また、この折返部94では、折曲形状とすることで最下面9Bでの滑動機能を高め、制動バネ9が撓むときに台座73上を滑らかにスライドできるようにしている。なお、この制動バネ9は加重安定のために金属製が好ましい。
【0060】
ここで、本実施形態の計器ユニット1では、少なくとも、バネ押当部材44の下端面44Aと出力ギア7の凹部72の底面の台座73との間の間隔a(
図3参照)、ストッパ部材45の先端面45Aと出力ギア7の上面7Aとの間の間隔b(
図3参照)、及び制動バネ9の自然状態での最大高さ(つまり自然長での高低差)c(
図8(A)及び
図8(B)参照)との間には、次式、
c>a>b ・・・(1)
の関係が成立している。
なお、このような関係を有するように構成したのは、以下の理由からである。
【0061】
即ち、c>aの不等号関係については、制動バネ9が所要の弾性力を発揮できるような状態に配置させるため、その制動バネ9が配置されるべき上下方向での隙間の大きさを要件として数式化したものである。
【0062】
一方、a>bの不等号関係については、指針を回転軸8から引き抜く際にこれにつられて回転軸8も引っ張られようとする場合に、制動バネ9が完全な扁平状態にならなくて済むようにするための要件である。つまり、挟持されている隙間の大きさがゼロとならない必要最小限の大きさを確保することを要件として数式化したものである。
【0063】
これによって、制動バネ9が大きく押し潰されて永久変形を起こすことにより、制動バネ9の弾性力が損なわれるといった不都合が生じるのを回避させることができる。その結果、再び指針を取り付け直して使用するようなときに、制動バネ9が所要の弾性力を再び発揮できるので、必要な制動力(バネ荷重)を再度確保できる。
【0064】
式(1)を満たすようにバネ押当部材44およびストッパ部材45を設計すると、ストッパ部材45の下端面45Aは、制動バネ9に接触するバネ押当部材44の下端面44Aから、凹部72の深さ未満の距離だけ、出力ギア7から離れる上方向に位置していることになる。
【0065】
ここで、制動バネ9の作用について、説明する。
出力ギア7を一体に設けた回転軸8及び制動バネ9が上下のケース4A,4B間に組付けられると、
図3に示すように、上ケース4Bの天井面4Dから垂下したバネ押当部材44が、出力ギア7の凹部72に搭載された制動バネ9を押下する。即ち、バネ押当部材44の下端面44Aが制動バネ9の長辺部9Aに線接触(出力ギア7が最大上昇したときには面接触状態となる場合もある)の状態で上から押し当たる。
【0066】
可撓性を有する制動バネ9は、自然状態である湾曲形状に戻ろうとするような弾性変形を起こす。この結果、
図3に示すように、凹部72の台座73が制動バネ9の最下面9Bに面接触(又は線接触)状態で当接する出力ギア7、及びこれと一体の回転軸8は、この回転軸8の軸線方向の下方(−Z方向)に向けて弾性力が付勢される。つまり、回転軸8は、常時、制動バネ9によって弾性的に制動される。
【0067】
このようにして、制動バネ9により回転軸8の微小な振れなどを防止できるわけである。また、このように回転軸8が光源3のある下方に向けて押下されるので、回転軸8の下端側の端面8Aと光源3との間の距離S(
図3参照)は、常時、接近する状態が保持されることとなる。その結果、光源3からの出射する照明光の外部への漏れを最小限に抑制しながら、その照明光を端面8Aから回転軸8へ取込むことができるので、その分、導光性能が高まる。
【0068】
上述した本実施形態に係る計器ユニット1が導光性能に優れていることを説明するために、従来の回転軸支持構造から想定され得る計器ユニット(比較例)と比較する。
図12は、従来の回転軸支持構造から想定され得る計器ユニットの断面図である。尚、
図12に示す比較例の計器ユニットにおいて、本実施形態に係る計器ユニット1と同一の符号が付与されている部材は、既に説明した部材であるためその説明を省略する。
【0069】
上述のような従来の回転軸支持構造から想定され得る計器ユニットは、本実施形態の制動バネ9と略同様な機能を有する制動バネ9´が出力ギア7に対して下方(下ケース4A側)に設置されている。このため、制動バネ9´の弾性力が、出力ギア7に対して上方に作用する。これに伴い、出力ギア7と一体に回転軸8が設けられている場合、この回転軸8もまた、指針を設けた先端方向に付勢される。
【0070】
従って、前述したような導光兼用タイプのものにあっては、回転軸8の下側の端面8Aがこれに対面する光源3と距離が離れる傾向となる(
図12では、回転軸8の下側の端面8Aと光源3が距離S´だけ離れている。)。その結果、光源から離れる分だけ、光源から出射される光を漏らすこととなり、効果的な導光が発揮できず、導光効率の低下をもたらす。
【0071】
一方、本発明の実施形態に係る計器ユニット1は、回転軸8が光源3のある下方に向けて押下されるので、回転軸8の下端側の端面8Aと光源3との間の距離Sは、常時、接近する状態が保持されることとなる。その結果、光源3からの出射する照明光の外部への漏れを最小限に抑制しながら、その照明光を端面8Aから回転軸8へ取込むことができる。この結果、導光性能が高まるわけである。
【0072】
なお、上述したように、バネ押当部材44と出力ギア7の凹部72との間で挟持された状態に組付けられた制動バネ9により、バネ押当部材44は、制動バネ9の翼部93の長辺部9Aの上面部分に下端面44Aの少なくともいずれか一部領域が常に当接している。一方、制動バネ9は、ステップモータ5側からの回転力が伝達されて出力ギア7が回動中には、この出力ギア7と一体に回動する。なお、制動バネ9の最下面9Bと凹部72の台座73上面との間の静止摩擦力の方が、制動バネ9の長辺部9Aの上面とバネ押当部材44の下端面44Aとの間の動摩擦力より大きければ、制動バネ9は凹部72内で僅かであるが引きずられてがたつく状態が回避できる。
【0073】
従って、制動バネ9が出力ギア7と一体となって回動するときには、円筒形状のバネ押当部材44の下端面44Aのうち360度いずれかの方向の2か所の部位が制動バネ9の上面の長辺部9Aと常に摺動することとなる。また、出力ギア7を下方で支持している軸受け42Aの上面42Dが出力ギア7の下面7Bを下側から支持しているので、出力ギア7が回動中には、出力ギア7が上方へ変位しない限り、軸受け42Aの上面もこの出力ギア7の下面7Bと常に摺動することとなる。
【0074】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば、ステップモータ5自身に微小な振れが生じたり、回転軸8の軸受部分などにがたつきなどを生じて回転軸8が振動を発生しようとしても、安定したバネ荷重を有する制動バネ9がこれらの振動を効果的に吸収できる。従って、回転軸8の微小な振れなどを防止できる。
【0075】
また、例えば運転中に何らかの衝撃が車体側に作用し、基板2などを介してモータケース4の下ケース4A(上ケース4Bでも同様)にもその衝撃が及ぶような場合、その衝撃力が下ケース4Aの内面(床面)側の下部軸受を構成している軸受け42Aから出力ギア7及びこの出力ギア7の凹部72に収容した制動バネ9に伝搬する。
【0076】
すると、この制動バネ9が弾性変形することでその衝撃力を吸収・制振する。また、必要に応じこの弾性変位に合わせて、出力ギア7は、これに噛合する中間ギア6の軸方向に長めに形成されたピニオン62に対して、所要の遊びの範囲内で軸方向にスライドする。
【0077】
このようにして、出力ギア7と一体化された回転軸8へ衝撃が伝搬するのを効果的に抑制する。その結果、外部などからの衝撃が車体などに作用しても、回転軸8及びこの上部に取り付けた指針などの揺れや微小な振れなどが確実に抑制できる。
【0078】
次に、本実施形態に係る計器ユニット1の図示しない指針を上(Z)方向に引き上げて回転軸8の先端から引き抜こうとするとき、の作用について説明していく。
【0079】
指針を上(Z)方向に引き上げて回転軸8の先端から引き抜こうとするとき、指針を圧入させている回転軸8も同時に上方向に引き上げられることがある。この場合には、下ケース4A床面4C側の軸受け42Aの上面42Dと出力ギア7の凹部72直下である下面7B部分とが離間する。
【0080】
また、出力ギア7の大歯71がピニオン62と噛み合いながら、先述の遊びの範囲で上昇移動することとなる。即ち、指針を回転軸8から引き抜く際に、これに引きずられて回転軸8と一体の出力ギア7も上方へ大きく移動しようとする。そのため、制動バネ9がバネ押当部材44と凹部72の台座73によって扁平状態となる方向に押圧される。極端な場合には、押し潰されてしまうわけである。ところが、本実施形態では、ストッパ部材45が設置されているので、制動バネ9が扁平状態になるところまで出力ギア7が上昇移動されるのを阻止している。
【0081】
つまり、ストッパ部材45を設置することで、制動バネ9が凹部72の底面の台座73とバネ押当部材44の下端面44Aとの間に強く挟み付けられるのを阻止できる。そのため、弾性限界以上の応力が制動バネ9に作用して押し潰された状態となって、制動バネ9が塑性変形するといった事態がもたらされるのを回避できる。つまり、所要の弾性特性を維持できなくなってしまい、弾性特性が変化したり、極端な場合には弾性力が消失するといったトラブルを回避できるわけである。これにより、制動バネ9の弾性不良に伴う新しい制動バネ9への交換作業が不要となる。因みに、本実施形態によれば、制動バネ9の湾曲した形状を利用してこれを掴む把持動作が確実に行えるので、出力ギア7の凹部72への制動バネ9の配置作業は簡単になる。
【0082】
従って、本実施形態によれば、下ケース4Aの内部において、
図2で示すステップモータ5、中間ギア6、そして出力ギア7及びこれと一体の回転軸8、さらに制動バネ9などを所定位置に組付けて収容させる。その後に、この下ケース4Aの上から上ケース4Bを一体に嵌合させて組み立てを完成させれば、要部が
図3に示す組付け状態となる。すなわち、制動バネ9の最下面9B及び長辺部9Aが、それぞれ、出力ギア7に設けた凹部72の底面部分の台座73及びバネ押当部材44の下端面44Aに当接した状態で上下方向から挟持される。また、ストッパ部材45の下端面45Aと出力ギア7の上面7Aとの間に所定の隙間、つまり遊びを有する状態になる。
【0083】
この状態のとき、出力ギア7は中間ギア6のピニオン62とセレーション係合された状態である。従って、遊びの範囲内で制動バネ9が上下方向の厚さを変化させるように弾性変形することで、その長めのピニオン62の軸線方向に沿って出力ギア7が上下に変位可能となる。これにより、回転軸8の微小な振れを吸収させることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、制動バネ9の翼部93が断面略U字形状を有することによって、
図3に示すように、バネ押当部材44の下端面44Aは制動バネ9の長辺部9Aに対して線状(又は面状)に接触できる。その結果、最小限の接触状態、別言すれば最小限に摩擦力を抑えることができる。従って、出力ギア7は、これと一体に回転動作するように構成された制動バネ9がバネ押当部材44に接触し摺動しながら回転運動していても、制動バネ9と一体に回転する出力ギア7については、その回転の妨げとならずに円滑な回動動作が得られる。
【0085】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【0086】
例えば、出力ギア7を下方から支持する支持手段には、回転軸8の下側を軸支する下ケース4A床面4C側の軸受け42Aで兼用しなくてもよい。即ち、出力ギア7の凹部72に対応する下面7Bを支持する部材を、床面から別に立ち上げるようにしても、代替可能である。
【0087】
さらに、本実施形態では、制動バネ9には金属製の薄板で構成しているが、同様の効果が得られるようであればこれに限られない。
【0088】
また、本発明の計器ユニットは、例えば、燃料計部、タコメータ部、スピードメータ部、及び水温計等の各種計器類などのメータ装置への適用が可能である。