(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の溝が設けられた導電性のベース部材と;誘電体被覆を有し、前記第一の溝内にその誘電体被覆を密着させて互いに平行に配置された2本一対の信号用プローブ材と;前記ベース部材と接触するグランド用プローブ材とを備え、前記信号用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部は前記誘電体被覆を有さず信号用プローブ針を形成し、前記グランド用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部はグランド用プローブ針を形成しており、前記2本一対の信号用プローブは前記誘電体被覆の外周を前記第一の溝の内壁と接触させた状態で前記第一の溝内に配置されているプローブブロック。
前記第二の溝よりも前記第一の溝の深さが深く、前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の長手方向に垂直な断面における中心の前記ベース部材の底面からの高さが、少なくとも前記ベース部材の被測定デバイス側の先端部において同じであり、前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部の長さが同じである請求項1〜3のいずれかに記載のプローブブロック。
前記2本一対の信号用プローブ材がその誘電体被覆を密着させて互いに平行に配置された前記第一の溝を複数備え、前記2本一対の信号用プローブ材の各対間が導電性の前記ベース部材及び/又は導電性の前記カバー部材で隔てられている請求項1〜4のいずれかに記載のプローブブロック。
前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部が、前記ベース部材内にある前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材に対して曲折しており、プローブブロック内における前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の間隔と異なるパッド間隔を有する被測定デバイスに対応している請求項1〜5のいずれかに記載のプローブブロック。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決するために為されたもので、優れた高周波特性を備えるとともにメンテナンスが容易な平衡信号伝送用プローブと、そのようなプローブを備えたプローブカード並びにプローブ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、導電性のベース部材に位置決め用の溝を設け、この溝内に誘電体被覆を有する2本一対のプローブ材をその誘電体被覆を密着させて互いに平行に配置して全体をひとまとまりのプローブブロックとすることによって、優れた高周波特性とメンテナンスの容易性とを両立させた平衡信号伝送用のプローブとすることができることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、第一の溝が設けられた導電性のベース部材と;誘電体被覆を有し、前記第一の溝内にその誘電体被覆を密着させて互いに平行に配置された2本一対の信号用プローブ材と;前記ベース部材と接触するグランド用プローブ材とを備え、前記信号用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部は前記誘電体被覆を有さず信号用プローブ針を形成し、前記グランド用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部はグランド用プローブ針を形成しているプローブブロック、及び、そのようなプローブブロックを1個又は複数個備えているプローブカードを提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0009】
本発明のプローブブロックにおいては、上記のとおり、誘電体で被覆された2本一対の信号用プローブ材が導電性のベース部材に設けられた第一の溝内にその誘電体被覆を密着させて互いに平行に配置されるので、前記2本一対の信号用プローブ材によって平衡伝送路を形成することができる。特に、前記2本一対の信号用プローブ材は、前記第一の溝内に互いに密着かつ平行になるように正確に位置決めされた状態で配置されるので、プローブブロック内では平衡信号間の特性インピーダンスはほぼ一定で、理想的な結合状態を保つことが可能となり、各信号用プローブ材の特性インピーダンスを被測定デバイスの特性インピーダンスに合わせておくことによって、高速信号の伝送をより正確に行うことが可能である。また、2本一対の信号用プローブ材とグランド用プローブ材とが、導電性のベース部材によってひとまとまりのプローブブロックとされているので、プローブブロックを構成するいずれかのプローブ針に交換の必要性が生じた場合には、プローブブロックごと新しいものと交換すれば良く、メンテナンスを容易に行うことが可能である。
【0010】
また、本発明のプローブブロックは、その好ましい一態様において、前記第一の溝内に配置された前記2本一対の信号用プローブ材の上面を覆う導電性のカバー部材を備えている。このように本発明のプローブブロックが導電性のカバー部材を備えている場合には、導電性のベース部材と相俟って、平衡伝送路を形成する前記2本一対の信号用ローブ材のシールドをより完全なものとすることができるという利点が得られる。
【0011】
さらに、本発明のプローブブロックにおいては、前記ベース部材に第二の溝を設け、前記グランド用プローブ材を第二の溝内に配置するのが好ましい。好ましい一態様において、前記第二の溝よりも前記第一の溝の深さが深く、前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の長手方向に垂直な断面における中心の前記ベース部材の底面からの高さが、少なくとも前記ベース部材の被測定デバイス側の先端部において同じであり、前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部の長さが同じである。このように、信号用プローブ材とグランド用プローブ材とが、それぞれ、ベース部材に設けられた第一及び第二の溝内に配置される場合には、導電性のプローブブロックから被測定デバイス側に露出している先端部分の長さを信号用プローブ材とグランド用プローブ材とで同じ長さに揃えることが容易となり、プローブブロックの高周波特性をさらに高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明のプローブブロックは、その好ましい一態様において、前記2本一対の信号用プローブ材がその誘電体被覆を密着させて互いに平行に配置された前記第一の溝を複数備えており、この場合、前記2本一対の信号用プローブ材の各対間が導電性の前記ベース部材及び/又はカバー部材で隔てられ、平衡伝送路を構成する各対間には、グランド電位に接地された導電性のベース部材又は導電性のカバー部材が介在することになるので、各平衡対間のアイソレーションが良好に保たれるという好ましい利点が得られる。
【0013】
また、本発明のプローブブロックは、前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の前記ベース部材よりも被測定デバイス側に突出した先端部を、前記ベース部材内にある前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材に対して曲折させることにより、プローブブロック内における前記信号用プローブ材及び前記グランド用プローブ材の間隔と異なるパッド間隔を有する被測定デバイスに対応することができる。
【0014】
また、本発明は、1個又は複数個の本発明のプローブブロックを備えているプローブカード、並びに本発明のプローブブロックと、当該プローブブロックに接続された高周波用基板及び高周波用コネクタとを備えているプローブ装置を提供することによって上記の課題を解決するものである。本発明のプローブブロックは、通常、その外形寸法が、プローブカードにおける被測定デバイスと対向するプローブ列の幅よりも小さいので、被測定デバイスと対向する複数本のプローブのうちの一部だけを本発明のプローブブロックによって構成し、一枚のプローブカード内に、高速信号の測定に適したプローブと、そうでない通常のプローブとを混在させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプローブブロックによれば、2本一対の信号用プローブ材によって、平衡信号間の特性インピーダンスはほぼ一定で、理想的な結合状態を保つことができ、かつ、隣接する平衡対間のアイソレーションが良いという優れた利点を備えた平衡伝送路を形成することができる。また、本発明のプローブブロックにおいては、2本一対の信号用プローブ材とグランド用プローブ材とが、導電性のベース部材上に互いに平行に位置決めされた状態で配置されるので、プローブ針の進入方向が平行で、プローブ針の狭ピッチ化が容易であるという利点が得られる。さらに、本発明のプローブブロックによれば、複数本のグランド用及び信号用のプローブが1つのプローブブロックにまとめられているので、プローブ針が汚損した場合などにおいては、プローブブロック単位で新しいプローブ針と交換することができ、メンテナンスが容易であるという利点が得られる。
【0016】
また、本発明のプローブブロックを備える本発明のプローブカードによれば、1枚のプローブカードに平衡信号用のプローブとそうでないプローブとを混在させることができるので、高速信号用のパッドとそれ以外のパッドとが混在している半導体デバイスの測定のみならず、平衡信号とそうでない信号とが混在する半導体デバイスの測定にも対応することができるという優れた利点が得られる。また、本発明のプローブブロックを備える本発明のプローブ装置によれば、各種高周波デバイスの測定を容易かつ精度良く行うことが可能になるという利点が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0019】
図1は、本発明のプローブブロックにおける導電性のベース部材の一例を示す斜視図である。
図1において、1は本発明のプローブブロックのベース部材であり、ベース部材1は、例えばニッケル、銅、アルミニウムなどの導電性の材料で構成されている。ベース部材1には、
図1に示すとおり、互いに同形同大の2本の第一の溝2a、2bと、互いに同形同大の3本の第二の溝3a、3b、3cが設けられている。第一の溝2a、2bと第二の溝3a、3b、3cとは互いに平行であり、本例においては、いずれもベース部材1の長手方向の全域にわたって同形同大に設けられている。第一の溝2a、2bの深さは、通常、第二の溝3a、3b、3cの深さよりも深く、第一の溝2a、2bの溝幅は第二の溝3a、3b、3cの溝幅よりも広い。これは、後述するとおり、誘電体被覆を有する信号用プローブ材と、誘電体被覆を有さないグランド用プローブ材とを、その長手方向に垂直な断面における中心のベース部材1の底面からの高さが同じになるように各溝内に配置するためである。なお、
図1に示す第一の溝2a、2b、及び第二の溝3a、3b、3cの本数は、あくまでも一例であって、第一及び第二の溝の本数が図示の例に限られるものではないことは勿論である。
【0020】
図2は、
図1に示すベース部材1の第一の溝及び第二の溝のそれぞれに、信号用プローブ材と、グランド用プローブ材とが収容された状態を示す斜視図である。
図2において、1
Fはベース部材1の被測定デバイス側に位置する先端部であり、1
Bはベース部材1のプローブカードの基板や高周波基板の側に位置する後端部である。
図2に示すとおり、第一の溝2a、2bには、それぞれ各2本の信号用プローブ材4a、4b及び4c、4dが、後述するその誘電体被覆を各溝内壁と接触させた状態で収容配置されており、第二の溝3a、3b、3cには、それぞれ、グランド用プローブ材5a、5b、5cがその外周を各溝内壁と接触させた状態で収容配置されている。第一の溝2a、2b及び第二の溝3a〜3cは互いに平行に設けられているので、各溝に収容されている信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cも、互いに平行に位置決めされた状態で各溝に配置されている。
【0021】
6は信号用プローブ材4a〜4dの外周を被覆する誘電体であり、各信号用プローブ材4a〜4dの少なくともベース部材1と接触する部分を被覆している。これにより、信号用プローブ材4a〜4dとベース部材1との間には誘電体6が介在することになる。また、本例においては、第一の溝2a及び2b内のそれぞれに各2本の信号用プローブ材4a、4b及び4c、4dが配置されており、信号用プローブ材4a、4b及び4c、4dとで、それぞれ平衡対を構成し、平衡伝送路を形成することになる。また、各2本の信号用プローブ材4a、4b及び4c、4dは、位置決め用の溝である第一の溝2a及び2b内に、それぞれの誘電体6による被覆部分を互いに密着させて平衡に配置されるので、平衡対を構成する2本の信号用プローブ材4a、4b間、及び4c、4dの間隔は一定となり、平衡信号間での特性インピーダンスが一定で理想的な結合状態を保つことができる。なお、誘電体6としては、空気よりも比誘電率の高い材料が選ばれ、例えば、フッ素樹脂、ポリイミドなどが用いられる。
【0022】
一方、グランド用プローブ材5a〜5cは、誘電体で被覆されることなく第二の溝3a〜3c内に配置されるので、導電性のベース部材1と接触し、導電性のベース部材1と電気的に接続された状態にある。なお、グランド用プローブ材5a〜5cはベース部材1と接触していれば良く、グランド用プローブ材5a〜5cを収容する第二の溝3a〜3cは必ずしも必要という訳ではないが、ベース部材1に第二の溝3a〜3cを設けてその内部にグランド用プローブ材5a〜5cを配置した方が、グランド用プローブ材5a〜5cのベース部材1に対する固定がより容易となるので好ましい。
【0023】
図2に示すとおり、信号用プローブ材4a〜4dの先端部1
F側の先端部は、ベース部材1の先端部1
Fよりも先端側に突出しており、この先端部は誘電体6による被覆を有しておらず、途中Aで示す箇所で下方に折り曲げられてカンチレバー型のプローブ針を形成している。また、グランド用プローブ材5a〜5cの先端部1
F側の先端部も、ベース部材1の先端部1
Fよりも先端側に突出しており、信号用プローブ材4a〜4dの先端部と同様に、途中Aで示す箇所で下方に折り曲げられてカンチレバー型のプローブ針を形成している。各プローブ材における先端部1
Fよりも突出している先端部の長さ、及び、折り曲げ箇所の位置、及び折り曲げ角度はいずれも同じである。一方、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cの後端部1
B側は、ベース部材1の後端部1
Bよりも後方に突出しており、プローブカードの基板若しくは高周波用基板などに接続される接続端子を形成している。
【0024】
信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cとしては、例えばタングステン合金などの導電性で弾性を有する断面円形の同じ線径を有する線材が用いられる。ただし、信号用プローブ材4a〜4dの第一の溝2a、2b内に配置される部分は、誘電体6による被覆を有しているので、誘電体6による被覆の分だけ、外見上グランド用プローブ材5a〜5cよりも外径が大きいことになる。
【0025】
なお、本例においては、グランド用プローブ材5a〜5cは、いずれも、ベース部材1に設けられた第二の溝3a〜3cの全長にわたって存在し、かつ、先端部1
F側だけでなく、後端部1
B側にも突出しているが、グランド用プローブ材5a〜5cはベース部材1と電気的に接触しているので、必ずしも第二の溝3a〜3cの全長にわたって存在する必要はない。グランド用プローブ材5a〜5cは、少なくとも、先端部1
Fよりも先端側に突出しプローブ針を形成している部分と、第二の溝3a〜3c内に配置されベース部材1と接触している部分とを有していれば良い。グランド用プローブ材5a〜5cが、ベース部材1の後端部1
B側に突出する部分を有しない場合には、適宜の導電体をベース部材1又は後述するカバー部材に電気的に接続して接続端子とすれば良い。
【0026】
図3は、
図2のX−X’断面図であり、便宜上、信号用プローブ材4a及びグランド用プローブ材5aだけを図の右側に取り出して併せて示してある。
図3において、7a、7b、7c、7dは、それぞれ信号用プローブ材4a、4b、4c、4dの長手方向に垂直な断面における中心、8a、8b、8cは、それぞれグランド用プローブ材5a、5b、5cの長手方向に垂直な断面における中心、9はベース部材1の底面である。
【0027】
図3に示すとおり、グランド用プローブ材5a〜5cはその外周を第二の溝3a〜3cの内壁及び底面と接触させた状態で第二の溝3a〜3c内に配置されており、互いに平行かつ直線状に位置決めされた状態にある。また、信号用プローブ材4a〜4dも、互いに平衡対を構成するプローブ材同士で誘電体6による被覆部分を密着させ、かつ、その誘電体6による被覆の外周を第一の溝2a、2bの内壁及び底面と接触させた状態で第一の溝2a、2b内に配置されており、互いに平行かつ直線状に位置決めされた状態にある。
【0028】
d
1は第一の溝2a、2bの深さを示しており、第一の溝2a、2bの深さはいずれもd
1で同じである。また、d
2は第二の溝3a〜3cの深さを示しており、第二の溝3a〜3cの深さはいずれもd
2で同じである。ただし、第一の溝の深さd
1は、第二の溝の深さd
2よりも深く、その関係は、ベース部材1の底面9から各プローブ用材の中心7a〜7d及び8a〜8cまでの距離hが、いずれのプローブ材においても同じになるように選ばれている。本例の場合、信号用プローブ材4a〜4dとグランド用プローブ材5a〜5cとは、
図3の右側に示すとおり、共に断面が円形で線径すなわち外径がD
2の線材で構成されている。また、信号用プローブ材4a〜4dは、その周囲に誘電体6による厚さtの被覆を有しているので、第一の溝2a、2bの深さd
1は、第二の溝3a〜3cの深さd
2よりも、誘電体6による被覆の厚さt分だけ深く、d
1=d
2+tの関係にある。
【0029】
なお、本例の場合、深さd
1及びd
2は、ベース部材1の先端部1
Fから後端部1
Bまで同じであるので、ベース部材1の底面9から各プローブ用材の中心7a〜7c及び8a〜8dまでの距離hは、ベース部材1の長手方向全域にわたって同じであり、また、同じであるのが好ましいが、距離hは、少なくともベース部材1の先端部1
Fにおいて同じであれば良い。
【0030】
また、本例の場合、信号用プローブ材4a〜4dは、第一の溝2a、2b内に収容されたとき、その高さが、誘電体6による被覆を含めてベース部材1の上面と同じになるように第一の溝2a、2bの深さd
1が設定されているので、誘電体6による厚さtの被覆を含めた信号用プローブ材4a〜4dの外径をD
1とすると、深さd
1は外径D
1と等しく、D
1は信号用プローブ材4a〜4dの線径D
2に誘電体6による被覆の厚さtの2倍の長さを加えた長さ、すなわち、D
1=D
2+2tの関係にある。
【0031】
図4は、
図3と同様に、
図2のX−X’断面図である。
図4において、w
1は第一の溝2a、2bの溝幅、w
2は第二の溝3a〜3cの溝幅を示している。第二の溝3a〜3cの溝幅w
2はグランド用プローブ材5a〜5cの線径D
2と同じに設定されており、グランド用プローブ材5a〜5cは、第二の溝3a〜3c内に収容されることにより、その外周を第二の溝3a〜3cの内壁及び底面と密着させて所定の位置に位置決めされることになる。一方、第一の溝2a及び2bの溝幅w
1は、1本の溝に2本の信号用プローブ材を収容することになるので、誘電体6による被覆を含めた信号用プローブ材4a〜4dの外径D
1の2倍、すなわち、w
1=2D
1となるように設定されている。
【0032】
図5は、第一及び第二の溝に配置された各プローブ材の上面を覆うカバー部材をベース部材1に取り付ける様子を示す断面図である。
図5において、10はカバー部材であり、カバー部材10には複数の突起11が設けられている。突起11は、カバー部材10の長手方向の全域にわたって存在するのが好ましいが、必ずしもカバー部材10の長手方向の全域にわたって連続的に存在する必要はなく、断続的に存在しても良い。カバー部材10は、例えば銅、ニッケル、アルミニウムなどの導電性の材料で構成される。また、カバー部材10をベース部材1に取り付ける方法に特段の制限はなく、第一の溝2a、2b内に収容された信号用プローブ材4a〜4dの上面を覆い、上面をシールドすることができる限り、どのような方法でカバー部材10をベース部材1に取り付けても良い。例えば、ベース部材1とカバー部材10とに硬さの異なる導電性の材料を用い、両者を適宜の箇所でかしめることにより、カバー部材10をベース部材1に圧着して取り付けることができる。
【0033】
図6は、ベース部材1にカバー部材10を取り付けた状態の本発明のプローブブロックPBを、その先端部1
F側からみた正面図であり、
図7は本発明のプローブブロックの斜視図である。
図6に示すとおり、カバー部材10をベース部材1に取り付けることによって、第一の溝2a、2b内に収容されている信号用プローブ材4a〜4dの上面はカバー部材10によって覆われることになり、上面もシールドされるので、より完全な伝送構造が実現される。
【0034】
図6及び
図7に示すとおり、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cの先端部は、ベース部材1の先端部1
Fよりも先端部側に突出し、途中で下方に曲げられて、カンチレバー型のプローブ針を形成している。信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cのベース部材1の先端部1
Fよりも先端部側に突出する長さは同じであり、かつ、下方に曲げられた部分の長さLも信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cで同じである。また、本例においては、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cの先端部は平行に突出しているので、隣接する各プローブ針の中心間の距離は、先端部1
Fにおける隣接する各プローブ材の中心間距離と同じである。
【0035】
このように、本発明のプローブブロックPBにおいては、平衡伝送路を形成する2本一対の信号用プローブ材4a、4bと4c、4dとが、それぞれ第一の溝2a及び2b内に、互いの誘電体6による被覆部分を密着させて平行に配置されるので、プローブブロックPB内では、平衡信号間の特性インピーダンスはほぼ一定となり、理想的な結合状態が実現され、より優れた信号伝送特性を得ることができる。また、本発明のプローブブロックPBにおいては、平衡対を構成する信号用プローブ材4a、4bと、4c、4dとの間が導電性のベース部材1によって隔てられているので、各平衡対間のアイソレーションは極めて良く、優れた伝送特性が得られるという利点がある。なお、本例においては、各平衡対間は導電性のベース部材1によって隔てられているが、導電性のカバー部材10によって、さらには、導電性のベース部材1と導電性のカバー部材10の両者によって、各平衡対間を隔てるようにしても良い。
【0036】
また、本発明のプローブブロックPBにおいては、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cが、導電性のベース部材1と導電性のカバー部材10との間に、互いに正確に平行に位置決めされた状態で収容されるので、各プローブ材間の距離を小さくすることが容易であり、プローブ材の狭ピッチ化を容易に達成することができるという利点が得られる。また、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cのベース部材1の先端部1
Fよりも先端部側に突出してプローブ針を形成する部分の長さが同じであるので、各プローブ材における伝送特性を揃えるのが容易であり、優れた高周波特性を実現することが可能である。
【0037】
図8は、本発明のプローブブロックの他の一例を示す斜視図であり、ベース部材1と、信号用プローブ材4a〜4dのみを示してある。また、
図9は、
図8に示したのと同じ本発明のプローブブロックのベース部材1と、信号用プローブ材4a〜4d、及びグランド用プローブ材5a〜5cだけを取り出して示した平面図である。本例においては、第二の溝3aと3cは、両側面をベース部材1で囲まれた完全な溝ではなく、片側面のみにベース部材1が存在し、他側面は解放された片溝として構成されている。また、グランド用プローブ材5a〜5cは、少なくともその一部で導電性のベース部材1と接触していれば良いので、ベース部材1の先端部1
F及び後端部1
Bの近傍と、各端部から突出した部分だけに存在し、ベース部材1の中央部分には存在しない。
【0038】
図10は、
図8及び
図9に示すプローブブロックの組立状態を示す断面図であり、
図11は、組み立てられたプローブブロックの断面図である。
図10、
図11に示すとおり、本例のプローブブロックPBも、先に説明したプローブブロックPBと同様に、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用プローブ材5a〜5cを、それぞれ第一の溝2a、2b及び第二の溝3a〜3cに収容し、その上面を導電性のカバー部材10で覆うことによって組み立てられる。最も外側に位置するグランド用プローブ材5aと5cは、その一方の側面を第二の溝3a、3cの内壁面と接触させた状態で、ベース部材1とカバー部材10とによって上下から狭圧されるので、位置ズレすることなく第二の溝3a、3c内に収容、配置されて、位置決めされることになる。
【0039】
なお、カバー部材10の外側の突起11のさらに外側に、突起11よりもさらに下側に突出した突起部を設け、その突起部で第二の溝3a又は3cの外側の壁面を構成するようにしても良い。
【0040】
図12は、
図8〜
図11に示す本発明のプローブブロックPBの平面図、
図13はその拡大正面図であり、本発明のプローブブロックPBを比較的狭ピッチの電極パッドを有する被測定デバイスに対応させた状態を示している。
図12、
図13に示すとおり、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用ブローブ材5a〜5cのベース部材1の先端部1
Fよりも先端部側に突出した先端部、すなわちプローブ針を形成している部分は、ベース部材1内にある信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用ブローブ材5a〜5cに対して曲折しており、その先端部の間隔がベース部材1からみて逆扇状に狭められている。
【0041】
また、
図14は、
図8〜
図11に示す本発明のプローブブロックPBの部分平面図、
図15はその拡大正面図であり、本発明のプローブブロックPBを比較的広ピッチの電極パッドを有する被測定デバイスに対応させた状態を示している。
図14、
図15に示すとおり、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用ブローブ材5a〜5cのベース部材1の先端部1
Fよりも先端部側に突出した先端部、すなわちプローブ針を形成している部分は、ベース部材1内にある信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用ブローブ材5a〜5cに対して曲折しており、その先端部の間隔がベース部材1からみて扇状に広げられている。
【0042】
このように本発明のプローブブロックPBにおいては、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用ブローブ材5a〜5cのベース部材1の先端部1
Fよりも先端部側に突出した先端部を、ベース部材1内にある信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用ブローブ材5a〜5cに対して曲折させて、プローブ針を形成している先端部の間隔を、ベース部材1からみて扇状に広げるか、逆扇状に狭めることによって、電極パッドの間隔がプローブブロックPBの先端部1
Fにおける各プローブ材の中心間の間隔よりも広い被測定デバイスや、逆に狭い被測定デバイスにも対応することが可能である。また、被測定デバイスにおけるパッド間隔が一様でない場合には、扇状又は逆扇状に曲折させるのではなく、信号用プローブ材4a〜4d及びグランド用ブローブ材5a〜5cの各先端部を、対象とする被測定デバイスにおけるパッド間隔とその配置に合わせて、個々のプローブ材ごとにベース部材1内にある各プローブ材に対して適宜の角度で曲折させれば良い。なお、プローブブロックPBの先端部1
Fにおける各プローブ材の中心間隔が被測定デバイスにおける電極パッドのピッチと一致している場合には、各プローブ材の先端部を曲折させることなく、そのままで使用しても良いことは勿論である。
【0043】
なお、以上の例では、3本のグランド用プローブ材の間に、それぞれ2本一対の信号用プローブ材が配置された構成、すなわち、信号用プローブ材を「S」、グランド用プローブ材を「G」で表すと、「GSSGSSG」という構成のプローブブロックに基づいて本発明を説明したが、本発明のプローブブロックにおける信号用プローブ材とグランド用プローブ材の配置は上記の例に限られない。例えば、2本のグランド用プローブ材の間に、2本一対の平衡対を構成する信号用プローブ材を互いの間に導電性のベース部材1及び/又は導電性のカバー部材10を介在させて2対配置し「GSS SSG」という配置にしたり、平衡対とそうでない信号用プローブ材とを混在させて「GSSGSGSSG」という配置にしても良い。
【0044】
さらに、以上の例はカンチレバー型のプローブに基づいて説明をしたが、本発明のプローブブロックを構成するプローブはカンチレバー型に限られず、例えば、垂直型のプローブ、MEMS型プローブであっても良い。
【0045】
図16は、本発明のプローブブロックPBを備えたプローブカードにおけるプローブ部の平面図である。
図16において、12は本発明のプローブブロックPBを備えたプローブカード、13はプローブカード12に取り付けられているプローブ、14はプローブ固定部材である。
図16に示すとおり、本例のプローブカード12は、被測定デバイスと対向する1辺のプローブ列中に、本発明のプローブブロックPBを3個備えている。すなわち、本発明のプローブブロックPBは、通常、そのベース部材1の幅がプローブカードにおける被測定デバイスと対向する1辺のプローブ列の幅よりも小さいので、被測定デバイスと対向する複数本のプローブ13のうちの一部だけを本発明のプローブブロックPBに置き換えることが可能である。なお、1枚のプローブカード12が備える本発明のプローブブロックPBの数が3個に限られないこと、また、本発明のプローブブロックPBで置き換えられるプローブ13が、プローブカードにおける被測定デバイスと対向する1辺のプローブ列だけに限られないことは勿論である。
【0046】
このように、本発明のプローブブロックPBを備えるプローブカードによれば、一枚のプローブカード内に、本発明のプローブブロックPBを構成する平衡信号の伝送に適したプローブと、そうでない通常のプローブ13とを混在させることができる。したがって、プローブカード12を構成する複数本のプローブ13のうちの一部を本発明のプローブブロックPBに置き換えることによって、平衡信号とそうでない信号とが混在する半導体デバイスの測定にも対応することができる。また、本発明のプローブブロックPBを用いることにより複数本のプローブ材を狭ピッチでプローブカード12にセットすることができるので、多数のプローブ針を同一方向から進入させることが可能となる。このため、本発明のプローブブロックPBを備えるプローブカード12によれば、針立て構造の検討が容易となり、さらには、プローブカード12の製造も容易となるという利点が得られる。さらに、本発明のプローブブロックPBを備えるプローブカード12によれば、仮に、プローブブロックPBを構成する1本又は複数本のプローブが汚損などによって交換しなければならない場合でも、当該プローブを含むプローブブロックをブロック単位で新しいプローブブロックと交換すれば良く、メンテナンスを非常に容易に行うことが可能である。
【0047】
さらに、図示はしないけれども、本発明のプローブブロックPBに高周波用基板と高周波用コネクタを接続することにより、本発明のプローブブロックPBをプローブカード12を構成するプローブとしてだけではなく、単独の独立したプローブ装置として使用することも可能であることはいうまでもない。
【実施例1】
【0048】
下記の材料を用いて、プローブ材間隔が110μmの「GSSGSSG」構造の本発明のプローブブロックを作成し、その伝送特性を従来から使用されている下記同軸プローブを対照として比較した。
【0049】
<本発明のプローブブロック>
<信号用プローブ材>
・プローブ材:タングステン合金(直径0.038mm)
・プローブ全長:25mm
・プローブ先端部の長さ:1.0mm
・誘電体:フッ素樹脂(誘電体外径:0.11mm)
<グランド用プローブ材>
・プローブ材:タングステン合金(直径0.038mm)
・プローブ全長:25mm
・プローブ先端部の長さ:1.0mm
【0050】
<対照の同軸プローブ>
・プローブ材:タングステン合金(直径0.13mm)
・プローブ全長:25mm
・プローブ先端部の長さ:3.2〜3.7mm
・誘電体:フッ素樹脂(誘電体外径:0.42mm)
【0051】
<伝送特性の測定>
下記測定装置を用いて、下記要領で、インサーションロス(S21)を測定した。
・測定装置:ネットワーク・アナライザ(米国 アジレント テクノロジーズ社(Agilent Technologies)製 型式:E8364B(〜50GHzネットワークアナライザ))
<測定要領>
製作された本発明のプローブブロックを構成する1本の信号用プローブ材(S)の針先と後端部との間のインサーションロス(S21)を測定した。従来から使用されている同軸プローブについては、先端部と後端部間のインサーションロス(S21)を同様に測定した。
【0052】
結果を
図17に示す。
図17に示すとおり、従来の同軸プローブにおいては、信号周波数が増すとともにインサーションロスは大きくなり、信号周波数が3GHzを上回ると、インサーションロスが−3dBを超え、信号エネルギーの約1/2が伝送損失となった。これに対し、本発明のプローブブロックにおいては、信号周波数が4GHzとなってもインサーションロスは−1dBに止まり、10GHzでも−3dBを未満であった。以上のことから、本発明のプローブブロックは、従来の同軸プローブに比べて極めて優れた高周波伝送特性を有していることが分かる。