(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1及び/又は第2の吸収ゾーンを出、そして前記気体反応体又は気体副生物の少なくとも一部を吸収している液体の少なくとも一部を、前記反応ゾーンに戻すことを更に含む請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に定義しない限り、本明細書中で使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で使用する用語「第1」、「第2」などは、順序、量又は重要性を意味せず、1つの要素を別の要素と区別するのに使用する。また、用語「a」及び「an」は数量の限定を意味せず、言及した品目又は項目の少なくとも1つの存在を意味し、また用語「前部」、「背部」、「底部」及び/又は「頂部(top)」は、特に明記しない限り、説明の便宜上使用するにすぎず、1つの位置又は空間配置に限定するものではない。範囲を開示する場合、同一の成分又は性質を対象とする任意の範囲の端点は包含され、独立して組合せることができる(例えば「約25重量%以下又はより具体的には約5〜約20重量%」の範囲は、「約5〜約25重量%」の範囲などの端点と全ての中間の値とを含む)。数量に関連して使用する修飾語「約」は、記載された値を含み、状況によって規定される意味を有する(例えば個々の数量の測定に関連する誤差の程度を含む)。
【0012】
本明細書中で使用する接尾語「(単数又は複数)(s)」は、これが修飾する用語の単数と複数の両方を含むことを意図し、従ってその用語の1つ又はそれ以上を含む(例えば、「液体流(単数又は複数)」は1つ又はそれ以上の液体流を含むことができる)。明細書全体を通じて「一態様」、「別の態様」、「態様」などへの言及は、その態様に関連して記載した特定の要素(例えば構成、構造及び/又は特性)が本明細書中に記載した少なくとも1つの態様に含まれること並びにそれが他の態様に存在していても存在していなくてもよいことを意味する。更に、記載した本発明の特徴は、種々の態様において任意の好適な方法で組合せることができることを理解されたい。
【0013】
本明細書中で使用する用語「反応ゾーン」は、所望の反応の大部分が典型的に起こり得る空間を示すものである。所望の反応及びその他が、一方又は両方の吸収ゾーンを含む、他の空間でも起こり得ることを理解されたい。
【0014】
本発明が提供する方法及び集成装置は、それらが適用される又はそこで実施される液相反応の反応動力学を改良し又は実質的に保持することができると記載されている。反応動力学の改良により、特定の生成速度に対する反応器集成装置のサイズの縮小及びコストの削減が可能になり、又は所与の反応器の生成速度が増大すると考えられる。本明細書中に記載した改善された方法及び集成装置による反応動力学の改善によれば、より大きいエネルギー量を用い、より大きい製造空間を必要とし又は熱交換器、熱交換溶媒などの追加装置を必要とする可能性がある、反応動力学を改良する従来の手段のコストを削減し又は完全に排除することができる。また、反応動力学も実質的に保持でき、その場合には、本明細書中に記載した原理の適用によって、有利なことにより少量の反応体の使用又はより純粋な反応生成物の生成が可能となる。
【0015】
本発明が提供するのは、液相反応の反応動力学を改良するか又は少なくとも実質的に保持するための改良された方法及び集成装置である。より具体的には、この方法及び集成装置は、液相反応の気体生成物流から気体の反応体及び反応副生物の少なくとも一部を除去できる。このような分離は、従来の方法によって又は従来の集成装置を用いて実施する場合には、反応条件に悪影響を及ぼし、コストがかかると考えられ、回収反応体の再利用ではなく、廃棄はプロセスの全コストを不所望に増大するおそれがある。
【0016】
本発明の方法及び集成装置は2つ又はそれ以上の吸収ゾーンへの反応液体の2つ又はそれ以上の供給を含み、液体は、温度及び/又は供給速度の調節後に、2つ又はそれ以上の吸収ゾーンの少なくとも1つに導入する。液体の温度及び供給速度の調節は、1つのゾーンでは、気体反応生成物流からの気体反応体及び副生成物の少なくとも一部の吸収を最適化するように独立して行い、別のゾーンでは、反応ゾーンの条件を最適化するように行う。このようにして、反応動力学を改良するか又は実質的に保持することができ、任意の所与の反応器サイズにおいて生成量の増加を実現できる。後者の態様において、吸収性能は、反応体を有利には節約でき且つより純粋な気体生成物を生成できるように、改善することができる。
【0017】
当業者ならば承知していることであるが、気体は典型的には冷却された液体中により溶けやすいと考えられる。気体生成物流から気体の反応体又は副生物を除去する従来の方法及び集成装置の多くは、循還反応液体流を使用する場合があり、循還される、このような反応液体流は、典型的には、可能な限り多くの気体反応体及び/又は反応副生成物を気体反応生成物から除去するために、冷却される。しかし、従来の1つだけの吸収ゾーンの使用に関連する、生成物流から所望の最大量の反応体及び副生物を液体に吸収させるのに必要な循還反応液体の広範な冷却は、液体を反応器に戻す際に、反応環境の温度を不所望に低下させる。従って、このような従来の方法及び集成装置における反応動力学は低下する。
【0018】
これに対して、本発明の方法は、少なくとも2つの吸収ゾーン中で、液相反応によって発生した又は液相反応で使用した液体を用いて、気体の反応体又は副生物を吸収する。1つのゾーン中では、循還液体は、反応ゾーン内で生成された又は使用されたのと実質的に同じ温度で(即ち実質的に反応温度で)又はごくわずかに低温で且つそれが反応ゾーンから出ていくのと実質的に同じ供給速度で、使用できる。別のゾーンでは、循還反応液体は、第1ゾーンよりも大幅に冷却し又は第1ゾーンとは異なる供給速度で送り出して、その循還反応液体への気体反応体又は反応副生物の溶解度を増大させることができる。このようにして、反応ゾーンの著しい冷却を可能な限り抑えることができる。更に、気体生成物の純度、プロセスの収率及び/又はプロセスのコスト効率を向上させることができる。
【0019】
一部のプロセスにおいて、液体は、望ましくは1つ若しくはそれ以上の吸収ゾーンで使用するために、加熱し、1つ若しくはそれ以上の吸収ゾーンで冷却し、又は1つ若しくはそれ以上の吸収ゾーンで実質的に反応温度において使用できることを理解されたい。また液体は、反応ゾーンから出ていくのと同じ速度で、又はそれより遅い若しくは速い速度で、送り出すことができる。本明細書中に開示した方法及び集成装置の発明概念は、特定の態様又は組合せに限定せず、反応動力学の改良が望ましいと考えられる液相反応のための任意の方法又は集成装置に、特に、気体反応体又は副生物を望ましくは気体生成物流から除去し且つ循還させる、任意の、このような反応にまで及ぶ。必要なのは、方法及び/又は集成装置が、1つの吸収ゾーンでは液体の温度及び/又は供給速度が気体反応体又は反応副生物の除去に対して最適化され且つもう1つのゾーンでは液体の温度及び/又は供給速度が反応ゾーン内の反応条件を実質的に保持するように最適化される少なくとも2つの吸収ゾーンを使用し又は備えていることだけである。
【0020】
各吸収ゾーンの個々の条件、例えば温度、圧力などは、望ましくは気体生成物流から除去される個々の気体の反応体及び副生物並びに液体への反応体及び/又は反応副生物の溶解度によって異なるであろう。この情報に基づき、当業者は、各段階に適切な条件、即ち一例では反応体/副生物の溶解度を最適化すると考えられ、別の例では、反応ゾーン内の所望の運転条件に悪影響を及ぼすことなく、より限定的であるが、かなり大きい溶解度をもたらすと考えられる条件を実施できるであろう。
【0021】
例示の目的のみに限るが、1つの吸収ゾーンでは、反応ゾーン内の所望の反応条件を依然として保持しながら、液体を、反応器内で使用又は発生した実質的にその温度及び/又は供給速度で使用して、気体の反応体及び副生物のバルク吸収に影響を与えることができる。メタノールの液相塩化水素化の例示的な反応の場合、使用若しくは発生した液体の温度は、例えば約50℃〜約200℃であることもできるし、又はごくわずかに冷却することもできる、例えば使用又は発生した温度より約0℃〜50℃低い温度まで冷却することもできる。別の吸収ゾーンでは、液体は、凝固点直前から反応ゾーンの温度より約5℃低い温度までのより低い温度に冷却し、若しくは異なる供給速度で送り出し、又はこれらをいずれも実施して、反応体の及び副生物の溶解度を増大させることができる。
【0022】
2つの吸収ゾーンの代表的な温度範囲は重複するが、1つの吸収ゾーンに供給する液体の冷却は、一般に、もしあれば、他方の吸収ゾーンの冷却よりも低温とすべきであると考えられる。このように、より低い温度及び/又はより速い流速を有するゾーンは、望ましくは吸収される気体の反応体及び副生物の溶解度を増大させるであろう。他方のゾーンの温度及び/又は供給速度はまた、望ましくは吸収される気体の反応体及び副生物のかなり大きい溶解度を可能にすると同時に、反応ゾーン内の望ましい反応条件の保持に役立つであろう。望ましくは、反応ゾーン内の望ましい反応条件の保持に役立つことができるゾーンは反応ゾーンの近くに
操作可能なように配置し、より低い温度及び/又はより速い供給速度を有する吸収ゾーンは反応ゾーンの遠くに
操作可能なように配置する。
【0023】
本明細書中に記載した原理が有益と考えられる反応の一例は、アルカノールの塩化水素化による、対応するハロゲン化アルキル、特に炭素数1〜4のハロゲン化アルキルの生成である。このような液相塩化水素化反応は、気体又は液体の反応体供給材料を用いて、触媒の存在下に、又は触媒を用いずに、実施できる。本明細書中に記載した原理は、これらのいずれか、又はこれらのいずれかの組合せに適用できる。
【0024】
このような反応において、気体反応生成物流は目的生成物、即ちハロゲン化アルキルだけでなく、アルカノール、水蒸気及びハロゲン化水素を含み、反応液体はその中にハロゲン化水素の大部分が解離した状態である以外は本質的に同じ成分を含む。
【0025】
従来のアルカノール塩化水素化プロセスのいくつかは、循還された反応液体供給材料を使用して、気体生成物流から気体の反応体及び副生物を吸収する場合があるが、反応体及び反応副生物の溶解度を最大にするために、任意のこのような循環反応液体は、典型的には、例えば反応温度よりかなり低いが凝固点より高い温度まで冷却される。結果として、また、所望の量の気体の反応体及び副生物を充分に吸収するのに多量の冷却水が必要であるので、冷却反応液体の反応ゾーンへの再導入は、典型的には、反応ゾーンの著しい冷却をもたらす。従って、反応速度が遅くなる。
【0026】
これに対して、本明細書中に開示した原理を塩化水素化反応に適用し且つ少なくとも2つの吸収ゾーンを使用する場合には、反応ゾーンの近くの第1の吸収ゾーンでは、実質的に反応温度において、例えば約50℃〜約200℃において、そして反応液体が反応ゾーンから出ていくのと実質的に同じ流速で反応液体を使用して、反応ゾーン内の反応条件に有害な影響を与えることなく、必要な吸収の一部を実施できる。第2の吸収ゾーンでは、反応温度よりかなり低い温度で、例えば凝固点直前から約150℃までの温度で液体を使用し、且つ/又は反応器から出ていく速度とは異なる速度に供給速度を変更して、液体を送り出して、メタノール、塩化水素及び/又は水蒸気の更なる吸収を促進できる。
【0027】
このような態様において、そして前記の任意の液相反応の場合には、吸収ゾーン/プロセスの配列又は実施は直列であっても並列であってもよい。望ましくは、複数の吸収ゾーンの配列又は吸収の実施は、気体流に関して直列である。
【0028】
第1の吸収ゾーンにおいては、液体は、実質的にそれが発生した温度及び/又は供給速度で使用し、即ち外部加熱手段も外部冷却手段もほとんど又は全く適用しない。冷却を適用するか又は供給速度を変更するとしても、マルチゾーンシステム中の次の吸収ゾーンに適用するよりも、冷却レベルが低いか又は変更される供給速度の程度が少ない。結果として、反応ゾーンの温度を依然としてそれほど低下させずに、塩化水素及びメタノールのバルク吸収が起こる。
【0029】
第2の吸収ゾーンにおいては、反応液体は、望ましくは、例えば反応温度より約1℃低い温度から液体の凝固点の直前まで冷却することができ、且つ/又は液体の流速を変更することができる。メタノール及び塩化水素のバルク吸収は第1の吸収ゾーンで既に実施されているので、気体生成物中の反応体及び反応副生物の所望の減少を達成するのに必要な冷却反応液体の供給速度がより遅いか又は冷却反応液体の総量がより少ないと予想される。単一の吸収ゾーンのみを用いるシステムと比較して、反応ゾーンの全体的な冷却を減少させることができ、また、塩化メチルを依然として望ましい純度及び望ましい収率で生成させることができる。更に、気体生物流に更なる分離又は乾燥技術を適用する必要が減少するか、又はなくなると考えられる。
【0030】
従って、本明細書中に開示した方法はコストをかなり削減でき、反応体の効率及び再使用を増大でき、更なる分離又は乾燥工程の使用をなくすか、又は減少させることができる。一部の態様においては、単一の反応器内に吸収ゾーンの1つ又は両方を設けることによって、これらのコスト削減を更に推進できる。このように、追加装置の駆動に必要なエネルギー消費及び追加装置に必要な製造フットプリント(footprint)を減少させることができる。従って、本発明の開示は、気体生成物流を生成する液相反応のための集成装置も提供する。
【0031】
典型的には、このような集成装置は、任意の上流反応器又は供給材料処理操作からの反応体及び任意の生成物又は副生物のための複数の供給路を含む。これらは、これまで記載した任意の反応体又は生成物と、メタノールの例示的な液相塩化水素化反応の場合には所望の反応の副生物となり得るジアルキルエーテル及びアルカンを含むことができる。供給は、反応の開始又は継続に必要な水などのキャリアを含む場合もある。
【0032】
望ましくは、塩化水素化反応においては、例えば液体又は気体として投入できるメタノール及び気体又は水溶液として投入できる塩化水素を含むことができる反応体の供給を少なくとも設ける。システムへの任意の供給は、任意の構成で配列でき、また、反応器又は吸収段階の任意の位置から入ることができる。
【0033】
反応ゾーンは、所望の液相反応の実施に適切な任意の型の反応器を備えることができる。このような反応器は、典型的には、断熱的にもしくは加熱して且つ栓流(プラグフロー)若しくは完全混合装置として操作される沸騰床又は充填塔或いは中間の任意の構成を含むことができる。反応ゾーン及び集成装置を、望ましくは、例えば塩化メチルの製造に使用する態様において、反応器は望ましくは、より長い液体滞留時間を実現するように底部に液溜め(liquid reservoir)を有する又は有さない向流吸収塔を備えることができ、メタノール及び塩化水素の供給路は、このような向流を供給できるように適切に構成できる。反応器中への気体供給材料の投入に関連する吸収装置は、吸収ゾーンに使用する使用する吸収装置と同一であってもよいし、或いは別個のゾーンを供給材料の吸収専用に設けることもできる。
【0034】
液相反応は液相で起こり、液相反応によって発生した又は液相反応において使用した液体は、典型的には、反応器の底部で収集できる。反応ゾーン及び/又は反応器底部と各吸収ゾーンとを接続するために、少なくとも1つの導管を設けることができる。この少なくとも1つの導管は、吸収ゾーンへの個別の供給を形成するように分割してもよいし、或いは各吸収ゾーンに別個の導管を設けてもよい。望ましくは、温度調節機構及び/又は流速調節機構を、少なくとも1つの導管に対して
操作可能なように配置することによって、導管内の液体の温度及び/又は流速を、導管内の反応体及び/若しくは反応副生物を吸収する能力を最適化するように又は調節された液体の温度及び/若しくは流速が反応ゾーン内の望ましい反応条件の保持に役立つように、調節できる。
【0035】
本発明による集成装置100の一態様を、
図1に示す。図に示すように、集成装置100は、反応ゾーン110、第1の吸収ゾーン101、第2の吸収ゾーン102、気体生成物ライン103、液体副生物ライン104、供給105、液体導管106、ポンプ107、第1の吸収ゾーンの導管108、第2の吸収装置の導管109及び冷却装置111を備えることができる。集成装置の操作を、特にメタノールの塩化水素化に関して記載するが、本発明はそのように限定するものではなく、集成装置及び方法は、気体生成物流を生成する任意の液相反応に関して使用できることを理解されたい。
【0036】
運転中に、所望の供給材料、例えば塩化水素、メタノール及び、場合によっては、前の反応器又はプロセスからの生成物流が反応ゾーン110に入る。反応ゾーン110は、0〜500℃の入口温度並びに約80℃〜200℃の温度及び約20psig〜約200psigの圧力を含む反応ゾーン条件を有する。液相反応は反応ゾーン110内、並びにそれほどではないが、吸収ゾーン101及び102の液相内で起こる。反応によって発生した又は反応において使用した液体は、例えば水、塩化水素、メタノール、塩化メチル及びジメチルエーテルを含み、反応ゾーン110の底部で収集される。ポンプ107で駆動される導管106は、反応ゾーン110から第1の吸収ゾーン101及び第2の吸収ゾーン102まで液体を循環させる。
【0037】
より詳細には、図示した態様において、第1の吸収ゾーン導管108は、条件を実質的に変更することなく、第1の吸収ゾーン101に反応液体を供給する。第1の吸収ゾーン101は、液体中への気体の反応体及び/又は副生物の少なくとも一部の吸収を促進できる任意の装置を含むことができる。液体は、第1の吸収ゾーン101を通過したら、反応ゾーン110に再び集まる。
【0038】
第2の吸収ゾーン導管109は、液体を、反応ゾーン110の底部から液体循環導管106を経て第2の吸収ゾーン102まで、ポンプ107の力を借りて供給する。より詳細には、液体循環導管106は、第1の吸収ゾーンの導管108と第2の吸収ゾーンの導管109とに分岐している。第2の吸収ゾーンの導管109には、それに対して
操作可能なように配置された冷却装置111が設けられている。冷却装置111は、第2の吸収ゾーン導管109内の液体の温度を、反応液体の概ね凝固点から反応ゾーン110中の液体の温度より約5℃低い温度までの温度に低下させ、それによって第2の供給ゾーン内における反応体又は反応副生成物の吸収を促進する。冷却装置111がポンプ107以外の第2のポンプ(図示せず)と置換可能なこと、及び第2の吸収ゾーン導管109が、更に、冷却装置111に加えて、第2のポンプを備えることができることを、理解されたい。気体生成物ライン103からは、メタノール約0〜約5重量%、HCl約0〜約5重量%及び水の蒸気約0〜約5重量%を含む塩化メチルが放出される。
【0039】
メタノール、HClなどを吸収している液体は、第2の吸収ゾーン102通過して、第1の吸収のゾーンに入り、第1の吸収ゾーン101に供給され且つ更に吸収に使用される液体と一緒にすることができる。第2の吸収ゾーン102において望ましい量の吸収に影響を及ぼすのに必要な冷却液体の量は、第1の吸収ゾーン101で行われるバルク吸収によって最小限に抑えることができる。従って、望ましくは、反応ゾーン110は、望ましい反応条件に、例えば塩化水素化反応の場合は、運転圧力に応じて約50℃〜約200℃の温度に、実質的に保持されるであろう。
【0040】
本明細書中に開示した反応器の一部の態様は、気体反応生成物の分離若しくは乾燥、反応体の前処理又は反応ゾーン110からの液体副生物からの反応体回収のために、更なる処理装置を使用するニーズ又は要求を減らすか又はなくすことができるが、一部の態様では、このような追加装置の使用が望ましいか又は必要な場合がある。従って、更なる態様において、集成装置は更なる処理装置を備えることができる。
【0041】
設けられる更なる処理装置は、実施する液相反応及びそれによって生成する気体生成物の目的用途によって異なり、従って、気体反応生成物を更に精製又は乾燥することができるか、又は反応生成物を目的用途に望ましい構成で提供できる任意の個数の処理装置を含むことができる。或いは、更なる処理装置は、反応体のいずれかを前処理する装置を含むことができ、又は追加の液相若しくは気相反応器を備えて、それによって生成された生成物流が本明細書中に開示された集成装置中に供給されるようにすることもできる。更なる処理装置は、反応において形成された液体副生物流、例えば水から有用な反応体をストリッピング及び循還する装置を含むこともできる。
【実施例】
【0042】
本発明の原理の一部を更に説明するために、網羅的ではないが、以下の例を示す。
【0043】
例1−比較例
1つの反応ゾーン及び単一の吸収ゾーンを含む反応器集成装置を用意した。吸収ゾーンは、気体生成物流をスクラビングして、水、メタノール及びHClを除去する充填セクションとした。吸収ゾーンは、冷却装置を具備する導管中を流れる反応ゾーンからの液体を受けるように配管したので、液体の温度は約35℃であった。
【0044】
反応器集成装置への供給材料は、HCl、塩化メチル及び水を含む(少量のジメチルエーテル及び未反応メタノールも含む)触媒反応器からの気体であり、反応ゾーンと吸収ゾーンとの間の蒸気空間に供給した。触媒反応器に供給する過剰のHClの量は、反応ゾーン底部に含まれる液体中のHCl濃度を18〜22%に保持するように、変更した。液体メタノールを、反応器集成装置に更に供給した。反応ゾーン底部の液体容量に対する反応器集成装置に供給するメタノールの比は、560Kg/Hr/m
3とした。反応ゾーンからの冷却液体を169gpmの速度で吸収ゾーンに供給して、吸収ゾーンから出ていく気体の温度を45℃未満に保持した。これらの条件において、反応ゾーンは、温度が106℃で、メタノール濃度が10重量%であった。
【0045】
例2−実施例
用意した集成装置が1つの反応ゾーンと2つの吸収ゾーンを備えていることを除いて、例1の条件を繰り返した。第1の吸収ゾーンは、第2の吸収ゾーンの下方に設け、気体生成物流から水、メタノール及びHClをスクラビングするための、反応ゾーンからの液体を受けるように配管された充填セクションを含んでいた。液体220gpmを、反応ゾーンから第1の吸収ゾーンの充填物に供給した。この液体の冷却は、最小限の約14℃だけに留めた。
【0046】
第2の吸収ゾーンは、気体生成物流を更にスクラビングして水、メタノール及びHClを除去する充填セクションとした。第2の吸収ゾーンは、冷却装置を具備する導管中を流れる反応ゾーンからの液体を受けるように配管したので、第2の吸収ゾーンに供給される液体の温度は約35℃であった。これらの条件において、第2吸収ゾーンから出ていく気体の温度を45℃未満に保持するのに必要な、第2吸収ゾーンへの冷却液体の供給量は90gpmであった。反応ゾーン中の液体は、温度が115℃で、メタノール濃度が5重量%であった。
【0047】
これらの例によって示されるように、本明細書中に記載した方法及び集成装置の使用により、反応ゾーン内の温度は、一段の冷却吸収のみを用いる例よりも9℃高く保持された。より高い温度によってもたらされるより好ましい反応動力学により、反応液体中のメタノール(即ち、反応体)濃度が約10%から5%まで低下した。
【0048】
本発明の種々の態様を本明細書中に示し且つ説明したが、このような態様は単に例として記載するのであって、限定のために記載するのではない。当業者ならば、本発明の教示から逸脱することのない多くの変形形態、変更形態及び置換形態が思い浮かぶであろう。従って、本発明は、添付した「特許請求の範囲」の最大限の精神及び範囲内で解釈されることを意図するものである。
【0049】
以下に
本発明の関連態様を記載する。
態様1.液相反応の反応動力学を改良し、液相反応に使用する反応体を保存し且つ/又は液相反応のより純粋な気体生成物流を生成させる方法であって、
反応ゾーン並びに少なくとも第1及び第2の吸収ゾーンを設け;
反応からの液体の一部を少なくとも第1の流れ及び第2の流れに分流し、且つその少なくとも1つの流れの温度及び/又は流速を調節し;そして
第1の液体流を第1の吸収ゾーンに方向付け、且つ第2の液体流を第2の吸収ゾーンに方向付け;
第1の吸収ゾーン内で前記気体生成物流の少なくとも一部と第1の流れの少なくとも一部とを接触させ且つ第2の吸収ゾーン内で前記気体生成物流の少なくとも一部と第2の流れの少なくとも一部とを接触させる
ことを含んでなり、前記気体反応流内の気体反応体又は気体副生成物の少なくとも一部を、反応からの液体中に吸収させる方法。
態様2.前記方法が、更に、前記反応ゾーン内の所望の反応条件が実質的に保持されるようにする態様1に記載の方法。
態様3.第2の流れの温度を低下させるが、第1の流れの温度を低下させないか又はそれほど低下させない態様1に記載の方法。
態様4.第1の吸収ゾーンが前記反応ゾーンの近くにあり、且つ第2の吸収ゾーンが前記反応ゾーンの遠くにある態様3に記載の方法。
態様5.前記気体反応体又は気体副生物の少なくとも一部を吸収している液体の少なくとも一部を、前記反応ゾーンに戻すことを更に含む態様1に記載の方法。
態様6.前記気体生成物流中に残留している気体状反応体又は副生物の少なくとも一部を除去する追加工程を更に含む態様1に記載の方法。
態様7.塩化メチルを含む気体生成物流を生成させるメタノールの液相塩化水素化反応の反応動力学を改良し、前記反応に使用する反応体を保存し且つ/又は前記反応のより純粋な反応生成物を生成させる方法であって、
反応ゾーン並びに少なくとも第1及び第2の吸収ゾーンを設け;
反応からの液体の一部を少なくとも第1の流れ及び第2の流れに分流し、且つその少なくとも1つの流れの温度及び/又は流速を調節し;そして
第1の液体流を第1の吸収ゾーンに方向付け、且つ第2の液体流を第2の吸収ゾーンに方向付け;
第1の吸収ゾーン内で前記気体生成物流の少なくとも一部と第1の流れの少なくとも一部とを接触させ且つ第2の吸収ゾーン内で前記気体生成物流の少なくとも一部と第2の流れの少なくとも一部とを接触させる
ことを含んでなり、前記気体反応流内のメタノール、塩化水素及び/又は水の少なくとも一部を、反応からの液体中に吸収させる方法。
態様8.第2の流れの温度は低下させ、そして第1の流れの温度はそれより少なく低下させる態様7に記載の方法。
態様9.第1の吸収ゾーンが前記反応ゾーンの近くにあり、且つ第2の吸収ゾーンが前記反応ゾーンの遠くにある態様8に記載の方法。
態様10.メタノール、塩化水素及び/又は水の少なくとも一部を吸収している液体の少なくとも一部を、前記反応ゾーンに戻すことを更に含む態様7に記載の方法。
態様11.液体反応ゾーン;少なくとも2つの吸収ゾーン;及び前記反応ゾーンと各吸収ゾーンとを接続する1つ又はそれ以上の導管を備え、前記導管の少なくとも1つが、それに対して
操作可能なように配置された温度調節機構及び/又は流速調節機構を有する気体生成物流を生成させる液相反応用集成装置。
態様12.各吸収ゾーンと接続するように分割された1つの導管を備える態様11に記載の集成装置。
態様13.各吸収ゾーンに対して別の導管を備える、態様11に記載の集成装置。
態様14.前記温度調節機構が冷却装置を含む態様11に記載の集成装置。
態様15.前記吸収ゾーンが直列に配置されている態様11に記載の集成装置。
態様16.前記吸収ゾーンの少なくとも1つが1つ若しくはそれ以上の気泡塔、充填塔又はこれらの組合せを含む態様11に記載の集成装置。
態様17.前記反応ゾーン及び少なくとも2つの吸収ゾーンが単一の容器内に組み込まれている態様11に記載の集成装置。
態様18.液体副生物流からの反応体の分離を促進する更なる処理装置を備え、その更なる処理装置が1つ又はそれ以上のストリッパーを含む態様11に記載の集成装置。
態様19.少なくとも1つの予備反応器を備え、その予備反応器が液相反応器又は気相不均一触媒反応器を更に含む態様11に記載の集成装置。
態様20.気体生成物からの気体の反応体及び副生成物の分離を促進する更なる処理装置を更に含み、その更なる処理装置が1つ若しくはそれ以上の、ストリッパー、スクラバー、反応器又はこれらの組合せを含む態様11に記載の集成装置。