【実施例1】
【0020】
図1(a)は、本発明の連続仕切り構造体の一部を長手方向において分解した斜視図を示している。連続仕切り構造体1は、長手方向に連続して設置されるコンクリートブロック2、2a、…、該コンクリートブロック2、2a、…間に設置される乾式目地部材(以下、支圧板という)3、…、該コンクリートブロック2、2a、…にはシース孔4、4a、…が形成され、該支圧板3、…には貫通孔5、…が形成され、複数のコンクリートブロック2、2a、…及び複数の支圧板3、…の該シース孔4、4a、…及び該貫通孔5、…の孔内に挿通緊張されるPC鋼材6、…とより構成されている。
【0021】
該連続仕切り構造体1は、例えば高速道路等の各種の通行路線間の仕切り構造体として構築されるコンクリート防護柵のように、車両が接触又は衝突することにより大きな外的エネルギーが付加されても、その衝撃に対抗でき、該車両が所定の通行路線より逸脱することを防止することのできる十分な強度を有しているものである。
【0022】
上記大きな外的エネルギーに対抗するためには、コンクリートブロック2の単体のみでは十分ではなく、コンクリートブロック2、2a、…相互を長手方向にPC鋼材を挿通し、それを緊張することによってつなぎ合わせ、強固に連続構築し、複数のコンクリートブロック2、2a、…が一体の構築物となるようにし、大きな質量と強度のある構造体とする必要がある。
【0023】
上記要求に応えるためには、コンクリートブロック2の断面形状を
図1(b)、(c)に示すように、下方部を左右方向に突出した突出安定部7、7′を形成し、上方部は厚みのある立設部8として形成することにより十分な安定性と質量が得られるものとしている。
【0024】
支圧板3、…の材料は、鋼板、プラスチック板、硬質ゴム板、その他適宜な材料よりなる板状のもの又はそれらを積層或いは混合した複合板、或いはそれらの板を施工現場において順次重ね設置することによって完成時に積層体となる支圧板等のコンクリートブロック2、2a、…に付着することなく、該コンクリートブロック2、2a、…から容易に分離することが可能な材料で形成する。
【0025】
図2(a)に示すものは、鋼板、プラスチック板等の硬質板の両面にゴム又はウレタン等の弾力性を有する材料を積層したもので、該積層材を支圧板3、…として使用した実施例である。また、(b)に示すものは、コンクリートブロック2、2a、…間に鋼板、プラスチック板等の硬質板の両面側に軟質材を介在させたもので、施工現場において積層体が完成されるように各々は分離されて形成されている実施例である。該コンクリートブロック2、2a、…の端縁部には、その製造上の誤差として若干の凹凸が形成されており、支圧板3に弾力性を有する材料を使用することにより該コンクリートブロック2、2a、…と支圧板3との密着性が向上して摩擦抵抗が大きくなりズレが生じにくくなる。また、支圧板3には弾力性があるので摩擦抵抗は更に大きくなる。
【0026】
また、
図2(c)に示すように、コンクリートブロック2、2a、…の端縁部側にゴムやウレタン等の支圧板3との密着性が良好でコンクリートブロック2、2a、…とは剥離の容易な溶液を塗着することにより再利用を容易とする支圧板を形成することもできる。また、移設することのない場合には、剥離しない溶液を塗着してもよい。
【0027】
上記各材料は、上記のものに限定されるものではなく、コンクリートブロック2、2a、…に変形が生じた場合或いはPC鋼材6、…に緊張が付与されても十分に耐えることができ、且つ車両の接触や衝突時のような大きな外的エネルギーが付加されても十分耐えることのできる材料であれば様々なものが選択可能である。
【0028】
本実施例の支圧板3、…の形状は、
図2(d)に示すように、該コンクリートブロック2、2a、…の断面形状と一致した形状のもの、また、
図2(e)に示すように、コンクリートブロック2、2a、…の間隙の上方部のみに設置される台形状のもの、その他多角形状、円形状、楕円形状等の支圧板としての機能を十分に達成することのできる様々な形状のものを採用することができる。また、その取着位置と個数も、目地としての所定の機能が達成される限りにおいて限定されるものではない。
【0029】
なお、再設置後において、移動や撤去する予定がないことが想定される場合は、部分的に設置した支圧板、例えば
図2(e)のような場合、下部に生じる隙間にモルタルや無収縮モルタル等を充填し、永久構造物とすることも可能である。
【0030】
該支圧板3、…の厚さは、数mm乃至数cmのもの、例えば1cm程度のものが採用され、適宜箇所にPC鋼材6、6′、6″を貫通させるための貫通孔5、5′、5″が形成されている。
図2(d)のものは、上方部に1箇所、下方部の左右の突出安定部7、7′側に一致する位置に各々1箇所の貫通孔5、5′、5″を設けている。該コンクリートブロック2、2a、…及び該支圧板3、…の設置後において、車両等による振動、接触、衝撃等によって該コンクリートブロック2、2a、…と該支圧板3、…との間にずれが生じたりして、該貫通孔5、5′、5″を貫通するPC鋼材6、6′、6″とそれらとが接触して両者に損傷が生じることがないように設置される。
【0031】
シース孔4、4a、…及び貫通孔5、…は、PC鋼材6、6′、6″を挿通するための孔で、端部側のPC鋼材定着のための取着凹部を設けた定着用コンクリートブロック2を除き、一般コンクリートブロック2a、…本体の長手方向を貫通し、支圧板3、…を貫通して形成され、各々の孔が一致する位置に該コンクリートブロック2、2a、…及び支圧板3、…を設置し、そのシース孔4、4a、…及び貫通孔5、…にPC鋼材が挿通されることになる。
図1(a)、
図2(d)やその他の実施例において、各々3箇所のシース孔4、4a、…及び貫通孔5、…のものを示しているが、
図1(c)に示すように、上部側の1箇所のみでも対応することが可能である。
【0032】
該支圧板3は、コンクリートブロック2、2a、…の一端縁部に簡易な接着手段等の張り付けやボルトによる固定、該コンクリートブロック2、2a、…の端縁部に形成した段部やその他の各種係止手段、端縁部に埋設した部材等の様々な手段により仮取着又は取着やズレ止めを達成することが可能になる。
図2(f)に示す実施例は、コンクリートブロック2、2a、…の端縁部に凹部を設け、支圧板3、…の対向面に凸部を設け、両者を嵌合することにより取着及びズレ止めを達成することができると共に、想定エネルギーよりも大きな衝突エネルギーが加わってPC鋼材の連結力だけではブロック相互の連結性が損なわれるような場合に、ブロック相互のズレ止めの役割も果たすことができる。
図2(f)では凹凸部による嵌合手段を示しているが、嵌合手段の他に様々な係合手段を採用することも可能である。
【0033】
上記コンクリートブロック2、2a、…、支圧板3、…の適宜数を施工現場の所定位置に設置後、該コンクリートブロック2、2a、…のシース孔4、4a、…及び支圧板3、…の貫通孔5、5′、5″に一端部側からPC鋼材6、6′、6″を挿通し、緊張固定する。PC鋼材6の緊張固定は、
図1(a)に示す一方の端部側のコンクリートブロック2と最終設置されるコンクリートブロック2xに形成した各々の定着凹部においてセンターホールジャッキ等を用いて緊張し、専用の定着金物(楔金物等)を用いて行う。また、PC鋼材6′、6″が鋼棒のような場合には、
図1(a)に示したコンクリートブロック2xの側壁部や突出安定部7、7′に設けた切欠部においてボルト等により固定することができる。
【0034】
上記コンクリートブロック2、2a、…及び支圧板3、…を連続して施工するにあたっては、各々の所定数を長手方向に延設することになるが、最初に設置したPC鋼材定着用コンクリートブロックと1又は複数個の非定着用となる一般コンクリートブロック及び支圧板を介し、
図4に示すように、最終設置されたPC鋼材定着用コンクリートブロック2xの端部間相互に渡って挿通したPC鋼材6を緊張することによって固定することができる。次に連続させる1又は複数個のコンクリートブロックと支圧板とは、先に最終設置されたコンクリートブロック2xを次のPC鋼材定着用コンクリートブロックとし、厚さ方向で位置をずらしたシース管と貫通孔とを利用して1又は複数個の非定着用コンクリートブロックとをPC鋼材を挿通緊張することにより、先に固定したコンクリートブロック群に連続して仕切り構造体を施工することが可能となる。
【0035】
上記連続仕切り構造体1のコンクリートブロック2、2a、…の形状は、
図1に示した形状以外、
図3に示すコンクリートブロック2′のように、突出部のない断面台形形状のもの、その他断面非対称形状のもの等、安定性及び所定の強度の得られる形状であれば様々な形状のものを採用することができる。また、地盤Gとの関係において、地盤G上に設置される態様や、
図3に示すように、その下方の一部が地盤G中に埋設される態様のもの等様々な設置態様が考えられる。
【0036】
PC鋼材6、6′、6″は、PC鋼製撚り線、被覆式のPC鋼製撚り線、鋼棒等の他、炭素系の材料やそれらの繊維を束ねた材料等、所定の引張強度が得られる材料であれば様々な材料を選択使用することが可能である。
【0037】
上記連続仕切り構造体1及びその構築方法は、新しいコンクリートブロック2、2a、…や新しい支圧板3、…を採用することができることはもちろんのこと、一度設置したコンクリートブロック2、2a、…や支圧板3、…を別の場所に移設したり、何等かの事情により一旦撤去し、再設置する場合等においても、該コンクリートブロック2、2a、…の端縁部に支圧板3、…が付着することがないので、該コンクリートブロック2、2a、…から支圧板3、…によって生じた付着物を取り除く作業をすることなくそのまま再利用することができ、該コンクリートブロックの損傷を少なくすることが可能となった。
【実施例2】
【0038】
図5(a)、(b)に示す実施例は、上記実施例1の連続仕切り構造体に併用することのできる連続仕切り構造体及びその構築方法を示すもので、実施例1の構成に加え、想定エネルギーよりも大きな衝撃力が加わって、PC鋼材の連結力だけではブロック相互にズレやPC鋼材の破断が生じかねない場合のコンクリートブロックの連結性を強固に維持する働きをし、コンクリートブロック9、支圧板11、コンクリートブロック9a、支圧板11a、…をより強固に連結できる実施例である。
【0039】
コンクリートブロック9、9a、…の両端部側となる側壁部の左右に連結部10、10a、…を形成し、該コンクリートブロック9の連結部10と隣接するコンクリートブロック9aの連結部10a間に、支圧板11を介して両者に跨って鋼板プレート12を掛け渡し、PC鋼材の緊張と、該鋼板プレート12の隣接コンクリートブロック9、9a、…相互への掛け渡し固定とをすることにより該コンクリートブロック9、9a、…及び支圧板11、11a、…をより強固に連結することが可能となる。
【0040】
上記固定手段により、施工時において生じるコンクリートブロック9、9a、…と支圧板11、11a、…との隙間を極力小さくすることができ、PC鋼材の緊張時におけるコンクリートブロックの移動を抑えながら強固に連結することが可能となる。PC鋼材の緊張と鋼板プレート12の固定とのタイミングはどちらが先でも良いし同時でも良い。
【0041】
連結部10、10a、…は、
図5(a)、(b)に示すように、コンクリートブロック9、9a、…に切り欠きを設け、鋼板プレート12が該コンクリートブロック9、9a、…の表面より突出しないようにすることができるが、特に切り欠きを設けなくてもコンクリートブロック相互を強固に連結することは可能である。また、その位置は、
図5(a)、(b)にあっては突出安定部13側に近接した立設部14の側壁に設けているが、この位置に限定されるものではなく、点線で示したように様々な箇所で可能である。また、支圧板11の形状がコンクリートブロック9の形状と一致し、且つ切り欠き部とした場合は、該支圧板11にも該コンクリートブロック9の切り欠き部と同一の位置に同様の切欠部15を設けることになる。
【実施例3】
【0042】
図6(a)、(b)は、上記実施例2と同様、連続仕切り構造体に併用することのできる連続仕切り構造体及びその構築方法を示す他の実施例で、実施例1の構成に加え、想定エネルギーよりも大きな衝撃力が加わって、PC鋼材の連結力だけではブロック相互にズレやPC鋼材の破断が生じかねない場合のコンクリートブロックの連結性を強固に維持する働きをし、コンクリートブロック16をより強固に連結できるものである。
【0043】
図6(a)は、コンクリートブロック16、16a、…の端部側となる側壁部の左右に溝部17、17a、…を形成し、該溝部17、17a、…の側壁から各々の端縁部側に向けてボルト孔18、18a、…が貫通形成されている。隣接するコンクリートブロック16、16a間に該コンクリートブロック16の溝部17のボルト孔18と同一の位置に同様のボルト孔20を設けた支圧板19を介して該ボルト孔18、20、18a、…へボルト21、21a、…を挿通し、PC鋼材の緊張と両端部をナット締め付け固定とをすることにより、コンクリートブロック16、16a、…及び支圧板19、…をより強固に連結することができる。PC鋼材の緊張とナット締め付け固定とのタイミングはどちらが先でも良いし同時でも良い。
【0044】
また、
図6(b)に示すように、溝部17、17a、…に替えて箱型鋼材22、22a、…を埋め込み、そのフランジを利用して相互連結してもよい。
【0045】
上記溝部17、17a、…及び箱型鋼材22、22a、…の位置は、
図6(a)、(b)にあっては立設部23の左右側壁部に設けているが、この位置に限定されるものではない。また、支圧板19の形状がコンクリートブロック16の形状と異なり、該溝部17、17a、…の位置に支圧板が存在しない場合は、該支圧板にボルト孔を設けることはない。
【0046】
本発明の連続仕切り構造体及びその構築方法は、上記実施例に限定されることなく、それらの実施例の組み合わせやそれらから派生する構成をも含むものであることは言うまでもない。