特許第5788849号(P5788849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788849筐体用材料及び筐体、並びに、筐体用材料の製造方法及び筐体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788849
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】筐体用材料及び筐体、並びに、筐体用材料の製造方法及び筐体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/18 20060101AFI20150917BHJP
   B29C 69/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B32B3/18
   B29C69/00
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-213863(P2012-213863)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-65274(P2014-65274A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】溝口 文武
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲男
(72)【発明者】
【氏名】大谷 哲也
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−258201(JP,A)
【文献】 特開2007−038519(JP,A)
【文献】 特開平07−052291(JP,A)
【文献】 特開2002−212311(JP,A)
【文献】 特開平06−099431(JP,A)
【文献】 実開昭61−022385(JP,U)
【文献】 国際公開第01/099483(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0254104(US,A1)
【文献】 特開昭60−018319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/18
B29C 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン系の樹脂に炭素繊維のフィラーを混入したスタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に該凹凸を補強するリブを設けた内側シートと、
該内側シートの裏側に接合した外側シートと
を備えたことを特徴とする筐体用材料。
【請求項2】
スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に該凹凸を補強するリブを設けた内側シートと、
前記内側シートよりも大きな外形で構成され、該内側シートの裏側に接合した外側シートと
を備えた筐体用材料を底部とし、その周囲に形成された前記外側シートの内側シートからの突出部分に壁部を樹脂成形したことを特徴とする筐体。
【請求項3】
前記スタンパブルシートは、ナイロン系の樹脂に炭素繊維のフィラーを混入したものであることを特徴とする請求項2に記載の筐体。
【請求項4】
前記壁部は、ガラス繊維を混入した樹脂で樹脂成型したことを特徴とする請求項2又は3に記載の筐体。
【請求項5】
スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートを製造するプレス工程と、
前記内側シートの裏側に外側シートを接合する接合工程と
を有することを特徴とする筐体用材料の製造方法。
【請求項6】
スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートを製造するプレス工程と、
前記内側シートの裏側に外側シートを接合することにより、内側シートの裏側に外側シートを接合した筐体用材料を製造する接合工程と、
前記筐体用材料を底部とし、その周囲に壁部を樹脂成形する成型工程と
を有することを特徴とする筐体用の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体用材料及び筐体、並びに、筐体用材料の製造方法及び筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型のパソコン、ノート型のパソコンなどの電子機器は、軽量で、かつ、堅牢なものが好まれ、力学特性を確保しつつ軽量性を高めた材料(筐体用材料)が提案されている。具体的には、ハニカム構造、島状構造が形成された芯材と、その両面に配置された、連続した繊維強化材とマトリックス樹脂で構成される繊維強化材からなるサンドイッチ構造体であって、最大厚みが0.3〜2.0のものが提案されている。芯材は、芯材の厚み方向に貫通したセル(小部屋)を持つハニカム構造や、島状に独立した島をもつ島状構造を有している。これは、空間を区切るセル壁や芯材壁が上下に連続して形成されることで、力学特性を確保しつつ軽量性を高めることができるからである(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−230235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ノート型のパソコンなどの電子機器は、筐体に収容する収容物(たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やODD(Optical Disk Drive)などのコンポーネント)ごとに、その厚みが異なるから、筐体の内側形状を筐体に収容する収容物の厚みに合わせて形成すると、力学特性はさらに優れたものになる。
【0005】
しかしながら、単に、筐体の内側形状を筐体に収容する収容物の厚みに合わせて形成すると、筐体の重量が重くなり、軽量性を損なうことになる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、力学特性と軽量性に優れた筐体用材料及び筐体、並びに、筐体用材料の製造方法及び筐体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に該凹凸を補強するリブを設けた内側シートと、該内側シートの裏側に接合した外側シートとを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記スタンパブルシートが、ナイロン系の樹脂に炭素繊維のフィラーを混入したものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に該凹凸を補強するリブを設けた内側シートと、前記内側シートよりも大きな外形で構成され、該内側シートの裏側に接合した外側シートとを備えた筐体用材料を底部とし、その周囲に形成された前記外側シートの内側シートからの突出部分に壁部を樹脂成形したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記壁部は、ガラス繊維を混入した樹脂で樹脂成型したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートを製造するプレス工程と、前記内側シートの裏側に外側シートを接合する接合工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートを製造するプレス工程と、前記内側シートの裏側に外側シートを接合することにより、内側シートの裏側に外側シートを接合した筐体用材料を製造する接合工程と、前記筐体用材料を底部とし、その周囲に壁部を樹脂成形する成型工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる筐体用材料は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートと、内側シートの裏側に接合した外側シートを有するので、力学特性と軽量性に優れたものになる。
【0014】
本発明にかかる筐体は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するととともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートと、内側シートの裏側に接合した外側シートとを備えた筐体用材料を底部とし、その周囲に壁部を樹脂成形したので、力学特性と軽量性に優れたものになる。
【0015】
本発明にかかる筐体用材料の製造方法は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートを製造する工程と、内側シートの裏側に外側シートを接合する工程とを有するので、力学特性と軽量性に優れた筐体用材料を効率的に製造できる。
【0016】
本発明にかかる筐体の製造方法は、スタンパブルシートをプレス成形することにより、片面に筐体に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸を形成するとともに、その裏側に凹凸を補強するリブを設けた内側シートを製造するプレス工程と、内側シートの裏側に外側シートを接合することにより、内側シートの裏側に外側シートを接合した筐体用材料を製造する接合工程と、筐体用材料を底部とし、その周囲に壁部を樹脂成形する成型工程とを有するので、力学特性と軽量性に優れた筐体を効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態である筐体を採用したノート型のパソコンを示す斜視図であって、パソコン本体に対して蓋体を開いた状態を示す図である。
図2図2は、図1に示したノート型のパソコンを示す斜視図であって、パソコン本体に対して蓋体を閉じた状態を示す図である。
図3図3は、図1および図2に示したパソコン本体に用いる筐体を示す斜視図である。
図4図4は、図3に示した筐体の構造を示す断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態である筐体用材料の製造方法を説明する説明図である。
図6図6は、本発明の実施の形態である筐体の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる筐体用材料及び筐体、並びに、筐体用材料の製造方法及び筐体の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、ノート型のパソコンのパソコン本体に用いる筐体、筐体に用いる筐体用材料を例に説明するが、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
図1および図2は、本発明の実施の形態である筐体を採用したノート型のパソコンを示す斜視図であって、図1は、パソコン本体に対して蓋体を開いた状態を示す図、図2は、パソコン本体に対して蓋体を閉じた状態を示す図である。図1および図2に示すように、ノート型のパソコン1は、パソコン本体2と、パソコン本体2に対して開閉可能に支持された蓋体3とを備えている。パソコン本体2の上面には、各種情報を入力するための操作キー21、タッチパッド22などの入力装置が設けてある。これら入力装置は、パソコン本体2に対して蓋体3を閉じた場合に蓋体3によって覆われる(図2参照)。また、蓋体3の前面には、各種情報を表示出力するための液晶ディスプレイ31が設けてある。液晶ディスプレイ31は、パソコン本体2に対して蓋体3を閉じた場合にパソコン本体2によって覆われる(図2参照)。
【0020】
図3は、図1および図2に示したパソコン本体に用いる筐体を示す斜視図である。図4は、図3に示した筐体の構造を示す断面図である。図3および図4に示すように、本発明の実施の形態である筐体23は、二層構造の筐体用材料4を底部231とし、その周囲に壁部232を樹脂成形したものである。筐体用材料4は、内側シート41と外側シート42とからなり、内側シート41と外側シートとの間には空間が設けてある。内側シート41は、スタンパブルシート40(図5参照)をプレス成形することにより、筐体23の内側面となる片面に、筐体23に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸41Aを形成するとともに、該凹凸の裏側(裏面)に、該凹凸41Aを補強するとともに、外側シート42との間に空間を画成するリブ41Bを設けたものである。スタンパブルシート40は、ナイロン系の樹脂に炭素繊維のフィラーを混入したもので、プレス成形により、さまざまな形状や強度分布の成形品を自由に造ることが可能である。なお、スタンパブルシート40をプレス成形するのは、射出成形では得られない厚み(たとえば、0.3mm)が得られるからである。筐体23に収容する収容物は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)5やODD(Optical Disk Drive)6などのコンポーネントであり、ここでは、HDD5よりも厚みが大きいODD6を基準として、HDD5の厚みに合わせて内壁面を嵩上げしてある。リブ41Bは、凹凸41Aの裏側から凹凸41Aを補強するとともに、外側シート42との間に空間を画成するものであれば、格子構造、蜂の巣構造(ハニカム構造)、島構造など、各種の構造が採用可能であるが、本実施の形態では格子構造を採用する。また、壁部232を構成する樹脂7は、ガラス繊維を混入した樹脂を採用する。
【0021】
図5は、本発明の実施の形態である筐体用材料の製造方法を説明する説明図である。筐体用材料4を製造する場合には、まず、内側シート41となるスタンパブルシート40をプレス加工する。具体的には、図5(a)に示すスタンパブルシート40を図5(b)に示すように、金型(雌型D1と雄型D2)Dとの間に挟んでプレスすることにより、内側シート41の片面に、筐体23に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸41Aを形成するとともに、該凹凸41Aの裏側(裏面)に、該凹凸41Aを補強するとともに、外側シート42との間に空間を画成するリブ41Bを形成する。
【0022】
つぎに、図5(c)に示すように、金型Dから内側シート41を取り出し、内側シート41の裏面側に外側シート42を接合する(図5(d)参照)。接合は、接着剤によるものでもよいし、熱溶着によるものでもよい。なお、このように製造した筐体用材料4は、その周囲に壁部232を樹脂成形するので、樹脂成形に適するように、内側シート41よりも大きな外側シート42とすることができる(図5(d)参照)。これにより、筐体用材料4が完成する。
【0023】
図6は、本発明の実施の形態である筐体の製造方法を説明する説明図である。筐体23を製造する場合には、筐体用材料4を底部231とし、その周囲に壁部232を樹脂成形する。具体的には、アウトサート成型などの樹脂成形により、図6(a)に示す筐体用材料4を底部231とし、その周囲に壁部232を設ける(図6(b)参照)。これにより、筐体23が完成する。
【0024】
上述した本発明の実施の形態である筐体用材料4は、スタンパブルシート40をプレス成形することにより、片面に筐体23に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸41Aを形成するとともに、該凹凸の裏側に、該凹凸41Aを補強するとともに、外側シート42との間に空間を画成するリブ41Bを設けた内側シート41と、内側シート41の裏側に接合した外側シート42を有するので、力学特性と軽量性に優れたものになる。
【0025】
また、本発明の実施の形態である筐体23は、スタンパブルシート40をプレス成形することにより、片面に筐体23に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸41Aを形成するとともに、該凹凸41Aの裏側に、該凹凸41Aを補強するとともに、外側シート42との間に空間を画成するリブ41Bを設けた内側シート41と、内側シート41の裏側に接合した外側シート42とを備えた筐体用材料4を底部231とし、その周囲に壁部232を樹脂成形したので、力学特性と軽量性に優れたものになる。
【0026】
また、本発明の実施の形態である筐体用材料4の製造方法は、スタンパブルシート40をプレス成形することにより(図5(b))、片面に筐体23に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸41Aを形成するとともに、その裏側に凹凸41Aを補強するするとともに、外側シート42との間に空間を画成するリブ41Bを設けた内側シート41を製造する工程(図5(c))と、内側シート41の裏側に外側シート42を接合する工程(図5(d))とを有するので、力学特性と軽量性に優れた筐体用材料を効率的に製造できる。
【0027】
また、本発明の実施の形態である筐体23の製造方法は、スタンパブルシート40をプレス成形することにより(図5(b))、片面に筐体23に収容する収容物の厚みに合わせて凹凸41Aを形成するとともに、その裏側に凹凸41Aを補強するとともに、外側シート42との間に空間を画成するリブ41Bを設けた内側シート41を製造するプレス工程(図5(c))と、内側シート41の裏側に外側シート42を接合することにより、内側シート41の裏側に外側シート42を接合した筐体用材料4を製造する接合工程(図5(d))と、筐体用材料4を底部231とし、その周囲に壁部232を樹脂成形する成型工程(図6(b))とを有するので、力学特性と軽量性に優れた筐体を効率的に製造できる。
【符号の説明】
【0028】
1 ノート型のパソコン
2 パソコン本体
21 操作キー
22 タッチパッド
23 筐体
231 底部
232 壁部
3 蓋体
31 液晶ディスプレイ
4 筐体用材料
40 スタンパブルシート
41 内側シート
41A 凹凸
41B リブ
42 外側シート
5 HDD
6 ODD
7 樹脂
D 金型
D1 雌型
D2 雄型
図1
図2
図3
図4
図5
図6