(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出器は、前記駆動機構による前記ホルダ及び前記ホルダに保持された前記プローブの上下方向の移動量を検出自在であり、前記移動機構で前記アームを移動させて前記接合ツールを前記ブロック部材に対向させた後、前記駆動機構で前記プローブを保持した前記ホルダを下降させて前記プローブの先端部で前記ブロック部材の上面側を押圧させるまでの前記移動量に基づいて、前記ホルダ及び前記プローブを含む前記部材の前記長さを検出する請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
更に、前記載置部材を支持部材で支持して、前記加工対象部材の上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構を備え、前記補助支持機構は前記アームに装着され、前記ホルダ及び前記プローブを含む前記部材の前記長さ及び前記プローブの前記先端長を検出する際には、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記ブロック部材の前記上面側を押圧させると共に、前記支持部材で前記ブロック部材の下面側を支持する請求項1又は2に記載の摩擦撹拌接合装置。
更に、前記プローブをクリーニングするプローブクリーニング機構を備え、前記プローブクリーニング機構は、粗削り部及び仕上げ研磨部を有し、前記プローブをクリーニングする際には、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記粗削り部に対向させた後、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部を前記粗削り部内に収容させると共に、前記接合ツールを回転させて前記先端部を粗削りし、ついで、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記仕上げ研磨部に対向させた後、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部を前記仕上げ研磨部内に収容させると共に、前記接合ツールを回転させて前記先端部を仕上げる請求項1から3のいずれかに記載の摩擦撹拌接合装置。
前記検出器は、前記駆動機構による前記ホルダ及び前記ホルダに保持された前記プローブの上下方向の移動量を検出自在であり、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記載置部材の前記載置面に対向させた後、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記載置部材の前記載置面を押圧するまでの前記移動量を検出する請求項1から4のいずれかに記載の摩擦撹拌接合装置。
更に、前記載置部材を支持部材で支持して、前記加工対象部材の上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構を備え、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記載置部材の前記載置面に対向させた後に、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記載置部材の前記載置面を押圧するまでの前記移動量を検出する際には、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記載置部材の前記載置面を押圧すると共に、前記支持部材で前記載置部材の前記載置面とは反対側を支持する請求項5に記載の摩擦撹拌接合装置。
更に、前記載置部材に載置された前記加工対象部材を押圧自在な押圧部材、及び載置部材側に固定された変位センサを有する加工部材検出機構を備え、前記押圧部材が前記加工対象部材の上面を押圧する際には、前記変位センサの接触子が前記押圧部材側に接触して移動されることにより前記接触子の変位量が検出される請求項1から6のいずれかに記載の摩擦撹拌接合装置。
前記加工対象部材は、下方部材及び上方部材を有し、前記押圧部材が前記載置部材上に載置された前記下方部材の上面を押圧する際には、前記変位センサの接触子が前記押圧部材側に接触して移動されることにより前記接触子の前記変位量が検出され、前記押圧部材が前記下方部材上に載置された前記上方部材の上面を押圧する際には、前記変位センサの接触子が前記押圧部材側に接触して移動されることにより前記接触子の前記変位量が検出される請求項7に記載の摩擦撹拌接合装置。
前記プローブ検出機構、前記加工部材検出機構、前記プローブクリーニング機構、及び前記載置部材に載置された前記加工対象部材は、前記移動機構による前記アームの移動で規定される前記接合ツールの可動範囲内に配設される請求項1から8のいずれかに記載の摩擦撹拌接合装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1においては、溶接チップが摩耗したときも同様な方法で基準位置を求めて更新することを可能とする構成が開示されているものではあるが、摩擦撹拌接合に用いるプローブの寸法をどのようにして求めるかについては何等の教示がなされていないものである。
【0009】
また、本発明者の検討によれば、特許文献2においては、支持台のたわみ量データと、重合せ部の厚さデータと、を用いて、接合操作開始位置を求める構成が開示されているものではあるが、支持台の面位置自体や重ね合わせ部を構成する各部材の上面位置自体を検出しているものではなく、その検出すべき値の設定に改良の余地があると考えられる。
【0010】
また、本発明者の検討によれば、特許文献3においては、溶接トーチのノズル清掃の清掃を可能とする構成は開示されているが、回転自在なプローブに対してどのようにクリーニングを実行するかについては何等の教示がなされていないものである。
【0011】
従って、現状では、摩擦撹拌接合を実行する上で最適な態様で、プローブを必要に応じてクリーニングしながら、プローブの摩耗量や先端位置、及び載置治具の載置面の位置や載置面に載置された加工対象部材の加工対象側面の位置等を検出して、摩擦撹拌接合時における加工対象部材に対するプローブの侵入位置を最適な位置に制御することが可能である新規な構成の摩擦撹拌接合装置が待望された状況にあるといえる。
【0012】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、摩擦撹拌接合を実行する上で最適な態様で、特にプローブの摩耗量や先端位置を検出して、摩擦撹拌接合時における加工対象部材に対するプローブの侵入位置を最適な位置に制御することが可能である摩擦撹拌接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の目的を達成すべく、本発明の第1の局面における摩擦撹拌接合装置は、加工対象部材を載置する載置部材と、プローブ、前記プローブの熱膨張率よりも大きな熱膨張率を有して、前記プローブを脱着自在に保持するホルダ、前記プローブを保持した前記ホルダを駆動して、前記プローブを、前記加工対象部材の加工対象側面に対して上下移動自在で、かつ前記加工対象部材に対して回転自在な駆動機構、及び前記駆動機構が前記プローブを保持した前記ホルダを下方に移動するに伴って、前記ホルダ及び前記プローブを含む部材の長さを検出自在である検出器を有する接合ツールと、前記接合ツールが装着される装着治具を固定したアームを有して、前記アームを移動して前記接合ツールを前記加工対象部材に対して移動自在な移動機構と、前記駆動機構が前記プローブを保持した前記ホルダを下方に移動するに伴って、前記プローブのみの部材の長さである先端長を検出自在であるプローブ検出機構と、を備え
、前記プローブ検出機構は、その位置が固定されたブロック部材、及び前記ブロック部材側に固定された変位センサを有し、前記プローブの前記先端長を検出する際には、前記移動機構で前記アームを移動させて前記接合ツールを前記ブロック部材に対向させた後、前記駆動機構で前記プローブを保持した前記ホルダを下降させて前記プローブの先端で前記ブロック部材の上面側を押圧させると共に、前記変位センサの接触子が前記接合ツールの当接部材に接触して移動されることにより前記接触子の変位が検出される。
【0015】
また、本発明は、かかる第
1の局面に加え、前記検出器は、前記駆動機構による前記ホルダ及び前記ホルダに保持された前記プローブの上下方向の移動量を検出自在であり、前記移動機構で前記アームを移動させて前記接合ツールを前記ブロック部材に対向させた後、前記駆動機構で前記プローブを保持した前記ホルダを下降させて前記プローブの先端部で前記ブロック部材の上面側を押圧させるまでの前記移動量に基づいて、前記ホルダ及び前記プローブを含む前記部材の前記長さを検出することを第
2の局面とする。
【0016】
また、本発明は、かかる第
1又は第
2の局面に加え、更に、前記載置部材を支持部材で支持して、前記加工対象部材の上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構を備え、前記補助支持機構は前記アームに装着され、前記ホルダ及び前記プローブを含む前記部材の前記長さ及び前記プローブの前記先端長を検出する際には、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記ブロック部材の前記上面側を押圧させると共に、前記支持部材で前記ブロック部材の下面側を支持することを第
3の局面とする。
【0017】
また、本発明は、かかる第1から第
3のいずれかの局面に加え、更に、前記プローブをクリーニングするプローブクリーニング機構を備え、前記プローブクリーニング機構は、粗削り部及び仕上げ研磨部を有し、前記プローブをクリーニングする際には、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記粗削り部に対向させた後、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部を前記粗削り部内に収容させると共に、前記接合ツールを回転させて前記先端部を粗削りし、ついで、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記仕上げ研磨部に対向させた後、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部を前記仕上げ研磨部内に収容させると共に、前記接合ツールを回転させて前記先端部を仕上げることを第
4の局面とする。
【0018】
また、本発明は、かかる第1から第
4のいずれかの局面に加え、前記検出器は、前記駆動機構による前記ホルダ及び前記ホルダに保持された前記プローブの上下方向の移動量を検出自在であり、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記載置部材の前記載置面に対向させた後、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記載置部材の前記載置面を押圧するまでの前記移動量を検出することを第
5の局面とする。
【0019】
また、本発明は、かかる第
5の局面に加え、更に、前記載置部材を支持部材で支持して、前記加工対象部材の上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構を備え、前記移動機構が前記アームを移動して前記接合ツールを前記載置部材の前記載置面に対向させた後に、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記載置部材の前記載置面を押圧するまでの前記移動量を検出する際には、前記接合ツールを下降させて前記プローブの先端部で前記載置部材の前記載置面を押圧すると共に、前記支持部材で前記載置部材の前記載置面とは反対側を支持することを第
6の局面とする。
【0020】
また、本発明は、かかる第1から第
6のいずれかの局面に加え、更に、前記載置部材に載置された前記加工対象部材を押圧自在な押圧部材、及び載置部材側に固定された変位センサを有する加工部材検出機構を備え、前記押圧部材が前記加工対象部材の上面を押圧する際には、前記変位センサの接触子が前記押圧部材側に接触して移動されることにより前記接触子の変位量が検出されることを第
7の局面とする。
【0021】
また、本発明は、かかる第
7の局面に加え、前記加工対象部材は、下方部材及び上方部材を有し、前記押圧部材が前記載置部材上に載置された前記下方部材の上面を押圧する際には、前記変位センサの接触子が前記押圧部材側に接触して移動されることにより前記接触子の前記変位量が検出され、前記押圧部材が前記下方部材上に載置された前記上方部材の上面を押圧する際には、前記変位センサの接触子が前記押圧部材側に接触して移動されることにより前記接触子の前記変位量が検出されることを第
8の局面とする。
【0022】
また、本発明は、かかる第1から第
8のいずれかの局面に加え、前記プローブ検出機構、前記加工部材検出機構、前記プローブクリーニング機構、及び前記載置部材に載置された前記加工対象部材は、前記移動機構による前記アームの移動で規定される前記接合ツールの可動範囲内に配設されることを第
9の局面とする。
【0023】
また、本発明は、かかる第1から第
9のいずれかの局面に加え、前記移動機構は、産業用ロボットであることを第
10の局面とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の局面における構成によれば、駆動機構が、プローブの熱膨張率よりも大きな熱膨張率を有してプローブを保持したホルダを下方に移動するに伴って、検出器が、ホルダ及びプローブを含む部材の長さを検出自在であると共に、プローブ検出機構が、プローブのみの部材の長さである先端長を検出自在であることにより、ホルダ及びプローブを含む部材の長さが、ホルダの熱膨張及びプローブの摩耗を反映するものであるため、摩擦撹拌接合装置を用いて行われる摩擦撹拌接合時の加工対象部材に対するプローブの挿入量の補正を的確に行うことができ、かつ、プローブの先端長が、プローブの摩耗のみを反映するものであるため、プローブの摩耗量が上限を超えた場合には的確にそれを交換することができて、摩擦撹拌接合を実行する上で最適な態様で、特にプローブの摩耗量や先端位置を検出して、摩擦撹拌接合時における加工対象部材に対するプローブの侵入位置を最適な位置に制御することができる。
【0025】
併せて、本発明の第
1の局面における構成によれば、プローブ検出機構が、その位置が固定されたブロック部材、及びブロック部材側に固定された変位センサを有し、プローブの先端長を検出する際には、移動機構でアームを移動させて接合ツールをブロック部材に対向させた後、駆動機構でプローブを保持したホルダを下降させてプローブの先端でブロック部材の上面側を押圧させると共に、変位センサの接触子が接合ツールの当接部材に接触して移動されることで接触子の変位が検出されることにより、簡便な構成により、検出実行時のプローブの位置を確実に固定しながら、確実にプローブの摩耗量や先端位置を検出することができる。
【0026】
また、本発明の第
2の局面における構成によれば、検出器が、駆動機構によるホルダ及びホルダに保持されたプローブの上下方向の移動量を検出自在であり、移動機構でアームを移動させて接合ツールをブロック部材に対向させた後、駆動機構でプローブを保持したホルダを下降させてプローブの先端部でブロック部材の上面側を押圧させるまでの移動量に基づいて、ホルダ及びプローブを含む部材の長さを検出することにより、簡便な構成により、確実にプローブの先端位置を検出することができる。
【0027】
また、本発明の第
3の局面における構成によれば、更に、載置部材を支持部材で支持して、加工対象部材の上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構を備え、補助支持機構はアームに装着され、ホルダ及びプローブを含む部材の長さ及びプローブの先端長を検出する際には、接合ツールを下降させてプローブの先端部でブロック部材の上面側を押圧させると共に、支持部材でブロック部材の下面側を支持することにより、摩擦撹拌接合の実行時にプローブと加工対象部材とをより正確に位置させることができ、プローブと加工対象部材との間の距離を所定の距離に確実に制御しながら摩擦撹拌接合することができると共に、検出実行時のプローブの位置をより確実に固定しながら、より確実にプローブの摩耗量や先端位置を検出することができる。
【0028】
また、本発明の第
4の局面における構成によれば、更に、プローブをクリーニングするプローブクリーニング機構を備え、プローブクリーニング機構が、粗削り部及び仕上げ研磨部を有し、プローブをクリーニングする際には、移動機構がアームを移動して接合ツールを粗削り部に対向させた後、接合ツールを下降させてプローブの先端部を粗削り部内に収容させると共に、接合ツールを回転させて先端部を粗削りし、ついで、移動機構がアームを移動して接合ツールを仕上げ研磨部に対向させた後、接合ツールを下降させてプローブの先端部を仕上げ研磨部内に収容させると共に、接合ツールを回転させて先端部を仕上げることにより、簡便な構成で、プローブの自転を利用して、確実にプローブをクリーニングすることができる。
【0029】
また、本発明の第
5の局面における構成によれば、検出器が、駆動機構によるホルダ及びホルダに保持されたプローブの上下方向の移動量を検出自在であり、移動機構がアームを移動して接合ツールを載置部材の載置面に対向させた後、接合ツールを下降させてプローブの先端部で載置部材の載置面を押圧するまでの移動量を検出することにより、載置部材の載置面を検出するための付加的なセンサを設けることなく、簡便な構成で、確実に載置部材の載置面の面位置を検出することができる。
【0030】
また、本発明の第
6の局面における構成によれば、更に、載置部材を支持部材で支持して、加工対象部材の上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構を備え、移動機構がアームを移動して接合ツールを載置部材の載置面に対向させた後に、接合ツールを下降させてプローブの先端部で載置部材の載置面を押圧するまでの移動量を検出する際には、接合ツールを下降させてプローブの先端部で載置部材の載置面を押圧すると共に、支持部材で載置部材の載置面とは反対側を支持することにより、摩擦撹拌接合の実行時にプローブと加工対象部材とをより正確に位置させることができ、プローブと加工対象部材との間の距離を所定の距離に確実に制御しながら摩擦撹拌接合することができると共に、載置部材の載置面を検出するための付加的なセンサを設けることなく、簡便な構成で、より確実に載置部材の載置面の面位置を検出することができる。
【0031】
また、本発明の第
7の局面における構成によれば、更に、載置部材に載置された加工対象部材を押圧自在な押圧部材、及び載置部材側に固定された変位センサを有する加工部材検出機構を備え、押圧部材が加工対象部材の上面を押圧する際には、変位センサの接触子が押圧部材側に接触して移動されることで接触子の変位量が検出されることにより、更に、載置部材に載置した状態の加工対象部材の面位置を検出できて、摩擦撹拌接合時における加工対象部材に対するプローブの侵入位置を確実に最適な位置に制御することができる。
【0032】
また、本発明の第
8の局面における構成によれば、加工対象部材が、下方部材及び上方部材を有し、押圧部材が載置部材上に載置された下方部材の上面を押圧する際には、変位センサの接触子が押圧部材側に接触して移動されることにより接触子の変位量が検出され、押圧部材が下方部材上に載置された上方部材の上面を押圧する際には、変位センサの接触子が押圧部材側に接触して移動されることで接触子の変位量が検出されることにより、載置部材に載置した状態の加工対象部材の各構成部材の上面位置を各々検出できて、摩擦撹拌接合時における加工対象部材に対するプローブの侵入位置をより確実に最適な位置に制御することができる。
【0033】
また、本発明の第
9の局面における構成によれば、プローブ検出機構、加工部材検出機構、プローブクリーニング機構、及び載置部材に載置された加工対象部材は、移動機構によるアームの移動で規定される接合ツールの可動範囲内に配設されることにより、摩擦撹拌接合装置全体の構成をコンパクトに維持し、かつ構成部品間の位置整合性の高い態様で、プローブを必要に応じてクリーニングしながら、プローブの摩耗量や先端位置、載置部材の載置面の面位置、及び載置部材に載置した状態の加工対象部材の面位置を検出することができる。
【0034】
また、本発明の第
10の局面における構成によれば、移動機構は、産業用ロボットであることにより、より汎用的な構成で、プローブ検出機構、プローブクリーニング機構、及び載置部材に載置された加工対象部材に対して、プローブを正確に移動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における摩擦撹拌接合装置につき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成す。また、x軸及びy軸が成す平面は、水平面に平行な平面であり、z軸の正方向は、上方向であるとする。
【0037】
まず、本の実施形態における摩擦撹拌接合装置の構成につき、
図1から
図7を参照して、詳細に説明する。
【0038】
図1は、本実施形態における摩擦撹拌接合装置の全体構成を示す側面図である。
図2は、本実施形態における摩擦撹拌接合装置の各構成要素の配設範囲を示す模式的な上面図である。
図3は、本実施形態における摩擦撹拌接合装置のプローブ検出機構を示す部分拡大側面図である。
図4は、本実施形態における摩擦撹拌接合装置の加工部材検出機構を示す部分拡大側面図であり、第1部材のみが載置治具に載置された状態を示す。
図5は、本実施形態における摩擦撹拌接合装置の加工部材検出機構を示す部分拡大側面図であり、第1部材及び第2部材の双方が載置治具に載置された状態を示す。
図6は、本実施形態における摩擦撹拌接合装置の接合ツールのプローブが載置治具を押圧した状態を示す部分拡大側面図である。また、
図7は、本実施形態における摩擦撹拌接合装置のプローブクリーニング機構を示す部分拡大側面図である。
【0039】
図1から
図7に示すように、摩擦撹拌接合装置1は、加工対象部材Wを載置すべく床Fに固設された載置台10と、載置台10に固設された加工部材検出機構20と、載置台10の上方で載置台10に対向して配置自在な接合ツール30と、載置台10の下方で載置台10の下面に当接するように配置自在な補助支持機構40と、接合ツール30及び補助支持機構40を装着治具52で保持して床Fに固設されたロボット50と、床Fに固設されたプローブ検出機構60と、床Fに固設されたプローブクリーニング機構80と、を備える。
【0040】
かかる摩擦撹拌接合装置1の該当する各種構成要素は、コントローラCから送出される制御信号を受けて適宜制御され、加工対象部材Wに摩擦撹拌接合を為すように動作するものである。また、コントローラCは、いずれも図示を省略する演算処理装置やメモリ等を
内蔵し、メモリには、摩擦撹拌接合を実行するための制御プログラムそれに必要な各種データやや所定の加工方向に関するデータ等が記憶される。
【0041】
ここで、
図2に示すように、載置台10に載置された加工対象部材W、その加工対象部材Wに対して進退自在に配設された加工部材検出機構20、床Fに固設されたプローブ検出機構60、及び床Fに固設されたプローブクリーニング機構80は、ロボット50のアーム54が移動することにより規定される接合ツール30のプローブ32及び当接部材36が位置し得る限界範囲を示す可動範囲Lに配置される。
【0042】
詳しくは、載置台10は、その載置部10a上に固設されて加工対象部材Wを載置自在な載置治具12と、載置治具12上に配設されて加工対象部材Wを装脱自在に固定する図示を省略する保持部材と、を備え、かかる載置治具12が載置部材であり、その上面が載置面である。加工対象部材Wは、典型的には第1部材W1及び第2部材W2が上下方向に並置されて互いに重なり合った部分を有するアルミニウム材等の金属製の板状部材であり、第1部材W1及び第2部材W2の重なり合った部分の所定の部位が、所定の加工方向に沿って移動されるべき接合ツール30により所定の接合線でもって接合されるものである。載置治具12上における加工対象部材Wの位置は、保持部材で加工対象部材Wの一部を保持することにより、正確に維持される。なお、保持部材を駆動する駆動源としては、モータやエアシリンダ等が挙げられる。もちろん、保持部材は、手動で駆動されてもかまわない。また、かかる保持部材の機能は、加工部材検出機構20の押圧部材22aが兼ねてもかまわない。
【0043】
加工部材検出機構20は、典型的には載置治具12の周囲に複数個設けられるが、ここでは説明の便宜上1個についてのみ説明する。かかる加工部材検出機構20は、特に
図4及び
図5に示すように、載置治具12上に載置された加工対象部材Wの第1部材W1及び第2部材W2の各々の上面を押圧自在な押圧部材22aと、載置台10の載置部10a側に固定されて押圧部材22aを上方位置及び下方位置間で移動自在な駆動力を印加するモータ22bと、押圧部材22aに固設された当接部材24と、当接部材24に当接自在な変位センサ25と、を備える。押圧部材22aを駆動する駆動源としては、モータの他にやエアシリンダ等が挙げられる。
【0044】
押圧部材22aは、充分な強度及び剛性を有する典型的には鉄材等の金属製の厚板状部材である。かかる押圧部材22aは、それとモータ22bとの間を連結するシャフト22cに軸支されて装着されると共に、充分な強度及び剛性を有する典型的には鉄材等の金属製の支持部材22eに装着される。モータ22bは、載置台10の載置部10a上に固設された基体22dの下面に固定される。支持部材22eは、押圧部材22aを軸支する回動軸22fと、基体22dに軸支される回動軸22gと、を備えて、押圧部材22aを上方位置及び下方位置間で移動自在に支持する。また、基体22dには、共にそれから当接部材24の設けられている側(例えば、当接部材24が押圧部材22aのy軸の負方向側に設けられていれば、y軸の負方向側)に各々突設された一対の保護部材22h1、22h2を有する保護部22hが設けられる。
【0045】
また、変位センサ25は、典型的には接触式の変位検出センサであり、固定部材26aで基体22dに固設されるセンサ本体26と、センサ本体26に連絡する接触子28aと、接触子28aを挿通してその端部以外を覆うベローズ28bと、を備える。かかる接触子28aは、図示を省略するコイルスプリング等の付勢部材により、センサ本体26に対して上方に付勢された付勢力を与えられて、センサ本体26に装着されている。変位センサ25は、接触子28aの上端が当接部材24の下端に当接した状態で、かかる接触子28aが、当接部材24によりセンサ本体26内に付勢力に抗して押し込まれながら下方に移動された際の変位量を検出して、押圧部材22aが加工対象部材Wの第1部材W1及び
第2部材W2の各々の上面を所定荷重で押圧している場合のそれらの上面位置を検出自在とする検出信号をコントローラCに送出する。なお、摩擦撹拌接合時には、かかる上面は、プローブ32の進入側の面である。
【0046】
つまり、かかる加工部材検出機構20においては、載置治具12上に加工対象部材Wの第1部材W1及び第2部材W2が載置された際、又は載置治具12上に加工対象部材Wの第2部材W2のみが載置された際に、モータ22bが駆動されてシャフト22cが上下方向に移動することにより、押圧部材22aが支持部材22eに画成された回動軸22f、22gの周りに回動し、これに対応して押圧部材22aは、
図1に示す上方位置と
図4及び
図5に示す下方位置との間で移動して第1部材W1及び第2部材W2に対して進退自在である。ここで、押圧部材22aが
図4及び
図5に示す下方位置にあって第1部材W1又は第2部材W2の上面を所定荷重で押圧している際には、当接部材24の下端が接触子28aの上端に当接して、接触子28aがセンサ本体26内に付勢力に抗して押し込まれながら下方に移動されており、変位センサ25は、その変位量を検出して、加工対象部材Wの第1部材W1及び第2部材W2の上面位置を検出自在とする検出信号をコントローラCに送出する。
【0047】
ここで、変位センサ25を用いて、接触子28aの変位量に応じ、加工対象部材Wの第1部材W1及び第2部材W2の上面位置を各々検出するには、例えば、変位センサ25が、変位センサ25に与えられる第1部材W1及び第2部材W2の各々の所定の基準位置と接触子28aの移動された位置との差を検出してその検出信号をコントローラCに送出し、コントローラCが、予めそのメモリに記憶したテーブル形式や計算式等のデータを参照して、その差に対応する各々の上面位置を算出すればよい。また、この際、当接部材24は、一対の保護部材22h1、22h2の間を通過する軌道を通ると共に、それらで他の部材の不要な接触等から保護される。なお、一対の保護部材22h1、22h2は、当接部材24の軌道が何等かの事情によりずれた場合に、当接部材24が一対の保護部材22h1、22h2の対応するものに当接してそれらの間に案内され得るように構成してもよい。
【0048】
接合ツール30は、典型的には上下方向に延在する耐熱合金等の金属製の円柱部材であって、z軸と平行な中心軸Zの周りに回転自在であると共に上下移動自在であるプローブ32と、プローブ32の熱膨張率よりも大きな熱膨張率を有して、プローブ32を装脱自在に保持するホルダ34と、プローブ32に対して相対回転自在にホルダ34に保持されてプローブ32よりも大径の当接部材36と、ホルダ34に保持されたプローブ32を上下移動させると共に、かかるプローブ32を中心軸Zの周りに回転させる駆動機構38と、を備える。また、駆動機構38は、その筐体38a内に、いずれも図示を省略する駆動力源であるモータやそれとホルダ34とを連結するシャフト等を内蔵する。また、プローブ32の中心軸Zの方向が、摩擦撹拌接合時にプローブ32を回転して加工対象部材Wを押圧する押圧方向である。なお、当接部材36は、プローブ32に対して、相対回転自在であるが、上下方向(プローブ32の中心軸Zの方向)には相対移動はしないものである。また、かかる当接部材36は、典型的には、プローブ32に嵌装されて中心軸Zに回転自在なベアリング部材36a、及びその下部に固設されてベアリング部材36aを抜け止めするワッシャ36bを有し、詳細は後述する変位センサ70の接触子74aの上端部が、ワッシャ36bの下面に当接し得るものである。また、摩擦撹拌接合装置1を用いた摩擦撹拌接合時には、プローブ32に発生する熱膨張量は、実質発生しないと評価できる程度の無視し得るレベルである。
【0049】
ここで、筐体38aは、各種構成部品を支持しながら装着治具52に固定されるフレーム部材としても機能し、その構造の一例として中空直方体状の形状を有するとものとする。かかる接合ツール30においては、駆動機構38がプローブ32及び当接部材36を保
持するホルダ34を下方に移動させた場合には、プローブ32の下部は、加工対象部材Wに圧入されていき、加工対象部材Wにおいて、第1部材W1を貫通して第2部材W2に侵入する位置まで到達自在であると共に、特に
図3及び
図6に示すように、詳細は後述するプローブ検出機構60のブロック部材68の上面側及び載置治具12の上面(載置面)をも各々所定荷重で押圧自在である。かかる所定荷重は、プローブ32が加工対象部材Wを摩擦撹拌加工する際の加工時荷重よりも小さい値に設定される。載置治具12は、接合ツール30のプローブ32と同等かそれよりも硬い金属等の材料で構成される。なお、加工対象部材Wの第1部材W1における上面を、便宜上、加工対象側面Wsと呼ぶ。
【0050】
また、筐体38aには、駆動機構38によるプローブ32の上下方向の移動量を検出する検出器として、典型的にはロータリエンコーダを含む検出器Dが固設される。検出器Dは、モータとホルダ34とを連結したシャフト等が回転した回数を計数して、その回数に基づいて、ホルダ34が上下方向に移動した距離、つまりそれに保持されたプローブ32の上下方向の移動量を検出自在である。
【0051】
具体的には、プローブ検出機構60のブロック部材68側に対して、駆動機構38でホルダ34に保持されたプローブ32を所定の基準位置から下方に移動させて、プローブ32の下端でブロック部材68の上面側を所定荷重で押圧させる際には、検出器Dは、プローブ32及びそれを保持したホルダ34が所定の基準位置から下降して移動した移動量から、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さ、典型的には、ホルダ34の上下端間の長さと、ホルダ34の下端からプローブ32の下端までのプローブ32の長さと、を足した長さを検出自在である。検出器Dは、かかるホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さを検出したならば、その検出信号をコントローラCに送出する。ここで、このようなホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さには、摩擦撹拌接合時に発生する熱によって主としてホルダ34が熱膨張した長さと、摩擦撹拌接合時に摩耗したプローブ32の摩耗長さと、が反映され得て、かかる長さは、ホルダ34が熱膨張した長さ分だけ長くなり、プローブ32が摩耗した長さだけ短くなる。また、プローブ32の下端、つまり、プローブ32の先端の先端面は、ブロック部材68に対して一定の状態で押圧され得るものであれば、平面に限らず、曲面であっても凹凸等を有するものであってもよい。
【0052】
また、載置治具12の上面に対して、駆動機構38でホルダ34に保持されたプローブ32を所定の基準位置から下方に移動させて、プローブ32の下端で載置治具12の上面を所定荷重で押圧させる際には、検出器Dは、プローブ32及びそれを保持したホルダ34が所定の基準位置から下降して移動した移動量を検出し、その移動量に応じ、載置治具12の上面位置を検出自在とする検出信号をコントローラCに送出する。ここで、検出器Dを用いて、プローブ32及びそれを保持したホルダ34の移動量に応じ、載置治具12の上面位置を検出するには、コントローラCが、予めそのメモリに記憶したテーブル形式や計算式等のデータを参照して、その移動量に対応する載置治具12の上面位置を算出すればよい。なお、載置治具12の上面位置は、検出器D自体がかかる移動量を用いて同様に算出してもよい。
【0053】
補助支持機構40は、載置治具12とは反対側で載置部10aの下面に当接する典型的には鉄材等の金属製のボール部材である補助支持部材42と、補助支持部材42をその中心位置を不動にしながら回転自在に保持するホルダ44と、を備える。かかる補助支持機構40においては、補助支持部材42が加工対象部材Wを挟んでプローブ32の下端と対向した状態で、補助支持部材42が、その上部の1点において載置台10の載置部10aの下面に当接しながら載置台10を補助的に支持自在である。
【0054】
ロボット50は、接合ツール30と、載置台10の載置治具12上に固定された加工対象部材Wと、を相対移動自在な移動機構であり、典型的には産業用ロボットである。具体
的には、ロボット50は、側面視で2股形状を呈した金属製で接合ツール30及び補助支持機構40を対応して装着する上方装着部52a及び下方装着部52bを有する典型的には鋼材の削り出し品である装着治具52と、装着治具52を装着して典型的には多関節を有するマニピュレータであるアーム54と、いずれも図示は省略するがアーム54を移動する駆動機構、演算処理装置及びメモリ等を内蔵するロボット本体56と、を備える。
【0055】
装着治具52の上方装着部52aには、接合ツール30の駆動機構38の筐体38aが装着されて固定される一方で、装着治具52の下方装着部52bには、補助支持機構40のホルダ44が装着されて固定される。アーム54の一端の支持部54aには、装着治具52の上方装着部52a及び下方装着部52b間の結合部が締結等により固定されて装着され、アーム54の他端には、ロボット本体56が連絡する。ロボット本体56の駆動機構が動作することによりアーム54が移動し、対応して、接合ツール30と補助支持機構40との相対的な位置的関係を維持したままで、上下左右等の多自由度でもって接合ツール30及び補助支持機構40を移動自在である。
【0056】
プローブ検出機構60は、特に
図3に示すように、床Fに固設された基台62と、基台62に立設された支柱64と、支柱64に固設された支持部66と、支持部66に固設されたブロック部材68と、ブロック部材68に装着された典型的には1個の変位センサ70と、を備え、基台62、支柱64、支持部66及びブロック部材68は、いずれも充分な強度及び剛性を有する。
【0057】
ブロック部材68の上面には、接合ツール30のプローブ32と同等かそれよりも硬い金属等の材料で構成された受け部材68aが固設される。かかる受け部材68aには、プローブ32の下端が当接して押圧自在である一方で、ブロック部材68の下面には、補助支持機構40の補助支持部材42が当接して押圧自在である。
【0058】
また、変位センサ70は、変位センサ25と同様に、典型的には接触式の変位検出センサであり、固定部材72aでブロック部材68に固設されるセンサ本体72と、センサ本体72に連絡する接触子74aと、接触子74aを挿通してその端部以外を覆うベローズ74bと、を備える。かかる接触子74aは、図示を省略するコイルスプリング等の付勢部材により、センサ本体72に対して上方に付勢された付勢力を与えられて、センサ本体72に装着されている。変位センサ70は、接触子74aの上端が典型的にはワッシャ36bの下面である当接部材36の下面に当接した状態で、かかる接触子74aが、当接部材36によりセンサ本体72内に付勢力に抗して押し込まれながら下方に移動された際の位置に応じて、プローブ32の下端が受け部材68aの上面に当接してそれを所定荷重で押圧し、かつ補助支持部材42がブロック部材68の下面に当接してそれを所定荷重で押圧している場合のプローブ32の先端長を検出自在である。なお、補助支持部材42がブロック部材68の下面に当接してそれを押圧する所定荷重は、プローブ32の下端が受け部材68aの上面を押圧する所定荷重の反力であり、かかる所定荷重は、プローブ32が加工対象部材Wを摩擦撹拌加工する際の加工時荷重よりも小さい値に設定される。
【0059】
かかるプローブ検出機構60においては、
図3に示すように、プローブ32の下端が受け部材68aの上面に当接してそれを所定荷重で押圧し、かつ補助支持部材42がブロック部材68の下面に当接してそれを所定荷重で押圧しているときには、当接部材36の下面が接触子74aの上端に当接して、接触子74aがセンサ本体72内に付勢力に抗して押し込まれながら下方に移動されており、その移動された距離に応じて、変位センサ70は、プローブ32における所定の基準面から、つまり当接部材36の下面から、プローブ32の先端位置を呈する下面までの長さ、つまりプローブ32の先端長を検出自在である。なお、プローブ32の基準面は、接触子74aの上端が当接し得るものであれば、凸部や凹部等の他の形状の基準部に置換可能である。また、プローブ32の先端の先端面は、
前述したように、平面に限らず、曲面であっても凹凸等を有するものであってもよいが、プローブ32の先端長は、当接部材36の下面から、かかる曲面や凹凸等の最先端部までの長さとなる。
【0060】
検出器Dは、かかるプローブ32の先端長を検出したならば、その検出信号をコントローラCに送出する。ここで、プローブ32は、摩擦撹拌接合時に発生する熱によっては実質熱膨張しないため、このようなプローブ32の先端長には、その新品時のものに対して摩擦撹拌接合時に摩耗したプローブ32の摩耗量のみが反映され得て、プローブ32の先端長は、プローブ32が摩耗した長さだけ短くなる。つまり、かかるプローブ32の摩耗量が所定の限界値を超えると、プローブ32を新品に交換することが必要となる。
【0061】
詳しくは、かかるプローブ32の先端長は、プローブ32が最初に使用される新品の場合には摩耗していないため、プローブ32の寸法の誤差を反映しているものであり、プローブ32が使用済み品の場合には摩耗しているため、プローブ32の新品時の寸法誤差に加えその摩耗量をも反映しているものである。かかるプローブ32の摩耗量は、コントローラCがその新品時の先端長からその使用済み品である場合の先端長を差し引く演算をすることにより得られる。プローブ32の新品時の先端長及び使用済み品である場合の先端長は、各々検出器Dにより検出されてメモリに記憶されたものをコントローラCが用いればよい。コントローラCが摩耗量が所定の限界値を超えたと判断した場合には、コントローラCが図示を省略する表示器を点灯する等して、操作者に注意を促すことが好ましい。
【0062】
プローブクリーニング機構80は、特に
図7に示すように、プローブ検出機構60の基台62に立設された支柱84と、支柱84に固設された支持部86と、共に支持部86に固設された粗削り部88a及び仕上げ研磨部88b、とを備え、支柱84及び支持部86は、いずれも充分な強度及び剛性を有する。粗削り部88aは、接合ツール30のプローブ32が回転された状態で、かかるプローブ32の下部をその内部に収容した際に、その内部に固定して設けられた切削刃により、プローブ32の下部に付着した加工屑を削り落とすことが可能である。また、仕上げ研磨部88bは、接合ツール30のプローブ32が回転された状態で、かかるプローブ32の下部をそれに当接した際に、その全面に固定して設けられた仕上げブラシ部材により、粗仕上げ後のプローブ32の下部を摩擦撹拌加工に適用できるように研磨して仕上げることが可能である。
【0063】
また、プローブクリーニング機構80は、特に
図7に示すように、プローブ検出機構60の基台62を共用化して利用しており、プローブ検出機構60に隣接して設けられている。このため、使用後のプローブ32をクリーニングした後で、そのクリーニングしたプローブ32をホルダ34に装着して、直ちにその先端長を検出することが可能となると共に、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さを検出することが可能となる。
【0064】
ここで、コントローラCは、ロボット50のロボット本体56を介してアーム54を移動し、接合ツール30を載置治具12に載置された加工対象部材Wの上方に位置させた後、かかる加工対象部材Wに対して接合ツール30を下降させてプローブ32を加工対象部材Wに圧入させると共に回転させることにより、プローブ32で加工対象部材Wに摩擦熱を発生させながら撹拌すると共に、アーム54でプローブ32と加工対象部材Wとを相対移動して、加工対象部材Wを所定の接合線に沿って摩擦撹拌接合する制御を行う。併せて、コントローラCは、プローブ検出機構60にプローブ32の先端長を検出させる制御、プローブ32にプローブ検出機構60のブロック部材68の上面側を押圧させてホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さを検出する制御、プローブ32に載置治具12の上面を押圧させてその上面位置を検出する制御、加工部材検出機構20に加工対象部材Wの第1部材W1及び第2部材W2の各々の上面位置を検出させる制御、及びプローブクリーニング機構80にプローブ32をクリーニングする制御を各々実行する。
【0065】
ついで、以上の構成の摩擦撹拌接合装置1を用いて、加工対象部材Wに対して摩擦撹拌接合を実行する際に、摩擦撹拌接合装置1で実施される種々の動作につき、以下詳細に説明する。
【0066】
まず、摩擦撹拌接合の今回の一連の工程を開始する前にその準備として、コントローラCの制御の下で、ロボット本体56の駆動機構がアーム54を上下左右等に適宜移動させて、装着治具52の上方装着部52aに装着された接合ツール30のプローブ32を、プローブ検出機構60のブロック部材68の上面に固設された受け部材68aに対してその上方で対向するように配置させる。この際、装着治具52の下方装着部52bに装着された補助支持機構40の補助支持部材42は、ブロック部材68を挟んでブロック部材68の下面に当接して配置されている。
【0067】
このようにプローブ32及び補助支持部材42の各々の位置が実現されたならば、コントローラCの制御の下で、
図3に示すように、接合ツール30の駆動機構38がプローブ32を保持するホルダ34を下方に移動させてプローブ32を下降させ、プローブ32の下端を受け部材68aの上面に当接させた後に更にそれを所定荷重で押圧させる。この際、補助支持部材42の上部の1点は、ブロック部材68の下面に当接された後にそれを所定荷重で押圧する。
【0068】
ここで、当接部材36の下面、つまりワッシャ36bの下面が接触子74aの上端に当接して、変位センサ70の接触子74aがセンサ本体72内に付勢力に抗して押し込まれながら下方に移動されており、変位センサ70は、接触子74a変位量であるそれが移動された距離に応じて、プローブ32における基準面から、つまり当接部材36の下面からプローブ32の下端(先端)の下面(先端面)までの長さ、つまりプローブ32の先端長を検出して、その検出信号をコントローラCに送出する。かかるプローブ32の先端長は、プローブ32が新品の場合には、プローブ32の寸法の誤差を反映しているものであり、プローブ32が使用済み品の場合には、プローブ32の新品時の寸法誤差に加えその摩耗量をも反映しているものであるが、コントローラCは、いずれの場合にもメモリにかかる検出値を保存する。そして、コントローラCは、かかる検出値を読み出して、プローブ32の新品時の先端長からその使用済み品である場合の先端長を差し引く演算をすることにより、プローブ32の摩耗量を算出する。コントローラCが摩耗量が所定の限界値を超えたと判断した場合には、コントローラCが表示器を点灯する。コントローラCが表示器を点灯した場合には、操作者は、プローブ32を新品に交換する。但し、今回の摩擦撹拌接合に用いるプローブ32が新品の場合には、プローブ32の摩耗量の算出処理は必要性がないので行わない。
【0069】
同時に、この際には、検出器Dは、プローブ32及びそれを保持したホルダ34が所定の基準位置から下降して移動した移動量から、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さ、典型的には、ホルダ34の下端から上方のホルダ34の少なくとも一部の長さと、ホルダ34の下端からプローブ32の下端までのプローブ32の長さと、を足した長さを検出して、その検出信号をコントローラCに送出する。ここで、このようなホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さには、摩擦撹拌接合時に発生する熱によって主としてホルダ34が熱膨張した長さと、摩擦撹拌接合時に摩耗したプローブ32の摩耗長さと、が反映され得て、かかる長さは、ホルダ34が熱膨張した長さ分だけ長くなり、プローブ32が摩耗した長さだけ短くなるものであり、コントローラCは、いずれの場合にもメモリにかかる検出値を保存する。
【0070】
つまり、今回の摩擦撹拌接合が前回のものから間隔が空いてプローブ32やホルダ34の温度が常温に下がっている場合には、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さは
、プローブ32が新品であればその寸法誤差を含むのみの基準長さとなり、プローブ32が使用済み品であればその寸法誤差にその摩耗量を含む長さとなる。よって、かかる場合にプローブ32が使用済み品であればその摩耗量分だけ、ホルダ34に保持されたプローブ32の下端(先端)の位置がその新品時の基準位置よりも上方に偏位されるから、ホルダ34に保持されたプローブ32の下端の位置を、その摩耗量分だけ下方に位置するように補正して基準位置に位置させる必要があるため、コントローラCは、かかる検出値を読み出して、プローブ32の下端の位置をその摩耗量分だけ下方に位置させて基準位置に位置させるように補正するための補正量を算出する。但し、今回の摩擦撹拌接合に用いるプローブ32が新品の場合には、プローブ32の下端の位置の補正量の算出処理は必要性がないので行わない。
【0071】
一方で、今回の摩擦撹拌接合が前回のものから間隔が空いておらずプローブ32やホルダ34の温度が高温である場合には、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さは、プローブ32が新品であればその寸法誤差にプローブ32以外のホルダ34等の熱膨張量を含む基準長さとなり、プローブ32が使用済み品であればその寸法誤差にプローブ32以外のホルダ34等の熱膨張量とプローブ32の摩耗量とを含む長さとなる。よって、かかる場合にプローブ32が使用済み品であればその摩耗量分とプローブ32以外のホルダ34等の熱膨張量とを加えた分だけ、ホルダ34に保持されたプローブ32の下端(先端)の位置がその新品時の当初位置よりも偏位されるから、ホルダ34に保持されたプローブ32の下端の位置をその偏位量分を相殺するように補正して基準位置に位置させる必要があるため、コントローラCは、かかる検出値を読み出して、プローブ32の下端の位置を、その偏位量を相殺して基準位置に位置させるように補正するための補正量を算出する。但し、今回の摩擦撹拌接合に用いるプローブ32が新品の場合であっても、今回の摩擦撹拌接合が前回のものから間隔が空いておらずプローブ32やホルダ34の温度が高温である場合には、プローブ32の下端の位置の補正量の算出処理は必要性があるので行うことになる。
【0072】
次に、コントローラCの制御の下で、ロボット本体56の駆動機構がアーム54を上下左右等に適宜移動させて、装着治具52の上方装着部52aに装着された接合ツール30のプローブ32を、載置治具12の上方の所定位置で、載置治具12に対向するように配置させる。この際、装着治具52の下方装着部52bに装着された補助支持機構40の補助支持部材42は、載置台10の載置部10a及びその上に装着された載置治具12を挟んで載置部10aの下面に当接して配置されている。
【0073】
このようにプローブ32及び補助支持部材42の各々の位置が実現されたならば、コントローラCの制御の下で、
図6に示すように、接合ツール30の駆動機構38がプローブ32を保持するホルダ34を下方に移動させてプローブ32を下降させ、プローブ32の下端を載置治具12の上面に当接させた後に更にそれを所定荷重で押圧させる。この際、補助支持部材42の上部の1点は、載置部10aの下面に当接された後にそれを所定荷重で押圧する。
【0074】
ここで、プローブ32の下端が載置治具12の上面を所定荷重で押圧する際には、駆動機構38がホルダ34を下降させているから、プローブ32は下方に移動されており、検出器Dは、プローブ32及びそれを保持したホルダ34が所定の基準位置から下降して移動した移動量を検出して、その検出信号をコントローラCに送出する。ここで、コントローラCは、予めそのメモリに記憶したデータを参照して、その検出信号が示す移動量に対応する載置治具12の上面位置を算出する。かかる載置治具12の上面位置は、載置治具12が最初に使用される新品の場合にはその寸法や取付けの誤差を反映し、載置治具12が使用済み品の場合には加工対象部材Wの塗装の付着等の程度をも反映しているものであるため、コントローラCは、かかる載置治具12の上面位置の誤差や塗装の付着等が基準
よりも大きい場合には、プローブ32の下端の位置の補正量に、かかる載置治具12の上面位置を加味して、新たにプローブ32の下端の位置の補正量を算出する。
【0075】
次に、加工対象部材Wの第2部材W2のみを載置台10の載置治具12上に載置した後、コントローラCの制御の下で、
図4に示すように、加工部材検出機構20のモータ22bを駆動して、押圧部材22aを第2部材W2の上方領域に進入させながら下方に移動して、その下面を第2部材W2の上面に当接させた後に更にそれを所定荷重で押圧させる。
【0076】
ここで、当接部材24の下端が接触子28aの上端に当接して、接触子28aがセンサ本体26内に付勢力に抗して押し込まれながら下方に移動されており、その移動された距離、具体的には第2部材W2の上面位置に関する所定の基準位置とその移動された位置との差である接触子28aの変位量を検出して、その検出信号をコントローラCに送出する。コントローラCは、予めそのメモリに記憶したテーブル形式や計算式等のデータを参照して、その検出信号が示す接触子28aの変位量に対応する第2部材W2の上面位置を算出する。ここで、かかる第2部材W2の上面位置は、その板厚寸法や取付けの誤差を反映しているものであるから、コントローラCは、かかる第2部材W2の上面位置の誤差が基準よりも大きい場合には、プローブ32の下端の位置の補正量に、かかる第2部材W2の上面位置を加味して、新たにプローブ32の下端の位置の補正量を算出する。
【0077】
次に、一旦、コントローラCの制御の下で、モータ22bを駆動して、押圧部材22aを上方に移動して第2部材W2の上方領域から退出させて、載置台10の載置治具12上に載置された加工対象部材Wの第2部材W2の上に第1部材W1をも載置した後、再び、コントローラCの制御の下で、
図5に示すように、モータ22bを駆動して、押圧部材22aを第1部材W1の上方領域に進入させながら下方に移動し、その下面を第1部材W1の上面に当接させた後に更にそれを所定荷重で押圧させる。
【0078】
ここで、当接部材24の下端が接触子28aの上端に当接して、接触子28aがセンサ本体26内に付勢力に抗して押し込まれながら下方に移動されており、その移動された距離、具体的には第1部材W1の上面位置に関する所定の基準位置とその移動された位置との差である接触子28aの変位量を検出して、その検出信号をコントローラCに送出する。コントローラCは、予めそのメモリに記憶したテーブル形式や計算式等のデータを参照して、その検出信号が示す接触子28aの変位量に対応する第1部材W1の上面位置を算出する。ここで、かかる第1部材W1の上面位置は、第2部材W2のものに加え、第1部材W1の板厚寸法や取付けの誤差を反映しているものであるから、コントローラCは、かかる第1部材W1の上面位置の誤差が基準よりも大きい場合には、プローブ32の下端の位置の補正量に、かかる第1部材W1の上面位置を加味して、新たにプローブ32の下端の位置の補正量を算出する
【0079】
次に、コントローラCの制御の下で、
図1に示すように、ロボット本体56の駆動機構がアーム54を上下左右等に適宜移動させて、装着治具52の上方装着部52aに装着された接合ツール30のプローブ32を、加工対象部材Wの上方の所定位置で、加工対象部材Wに対向するように配置すると共に、装着治具52の下方装着部52bに装着された補助支持機構40の補助支持部材42を、加工対象部材Wを挟んでプローブ32の下部と対向するようにその補助支持部材42の上部の1点において載置台10の載置部10aの下面に当接させる。この際、加工対象部材Wの位置は、保持部材で加工対象部材Wの一部を保持することにより、正確に維持される。
【0080】
次に、このようにプローブ32及び補助支持部材42の各々の位置が実現されたならば、コントローラCの制御の下で、接合ツール30の駆動機構38がプローブ32を保持するホルダ34を下方に移動させてプローブ32を下降させ、プローブ32の下部を、加工
対象部材Wにおいて第1部材W1を貫通して第2部材W2に侵入する所定位置まで到達させる。この際、かかるプローブ32が第1部材W1を貫通して第2部材W2に対する侵入深さは、コントローラCが、予め設定された規準の侵入深さを、以上の工程で検出されたプローブ32の先端長、載置治具12の上面位置、第2部材W2の上面位置、及び第1部材W1の上面位置を考慮して算出された補正量で増減する補正をすることにより設定され、摩擦溶融接合の実行時には実質的に一定に維持されるものである。なお、この際、必要に応じて、接合ツール30の駆動機構38は、ホルダ34を介してプローブ32を回転させていてもよい。
【0081】
次に、このようにプローブ32の下部が所定位置に到達したならば、コントローラCの制御の下で、接合ツール30の駆動機構38がプローブ32を継続的に回転させた状態で、ロボット本体56の駆動機構が、プローブ32及び補助支持部材42がこれらの加工対象部材Wに対する位置的な対応関係を維持した状態で所定の加工方向である移動方向に移動されるように、アーム54を移動させる。その結果、第1部材W1と第2部材W2とは、プローブ32の下部の移動した軌跡に対応して、摩擦撹拌接合されていく。併せて、補助支持部材42は、加工対象部材Wを挟んでプローブ32の下部と対向するように補助支持部材42の上部の1点において載置台10の載置部10aの下面に当接した状態でホルダ44内において回転しながら、所定の加工方向の方向に移動されている。
【0082】
次に、このようにアーム54の移動に伴ってプローブ32を摩擦撹拌接合が必要な部位の終点である所定位置まで移動させ終えると、コントローラCの制御の下で、接合ツール30の駆動機構38が、プローブ32の回転を維持したままでプローブ32を上方に移動させて加工対象部材Wから引き抜き、その上方位置まで上昇させた後にその移動を停止させる。そして、ロボット本体56の駆動機構が、アーム54を移動させて、プローブ32及び補助支持部材42を、加工対象部材Wの上下領域から退出させた後にその移動を停止させる。
【0083】
次に、このようにプローブ32及び補助支持部材42を退出させ終わると、コントローラCの制御の下で、モータ22bを駆動して、押圧部材22aを上方に移動して加工対象部材Wの第1部材W1の上方領域から退出させた後にその移動を停止させる。
【0084】
次に、保持部材を外して加工対象部材Wを解放し、加工対象部材Wを載置台10から取り外せば、所定の部位が摩擦撹拌接合された加工品が得られる。
【0085】
更に、プローブ32を交換せずに摩擦撹拌接合の次の一連の工程を開始する場合には、プローブ検出機構60を用いてプローブ32の先端長を検出する前に、プローブ32のクリーニングを行う。もちろん、プローブ32を摩擦撹拌接合時毎に交換する場合には、かかる工程は必要ない。
【0086】
具体的には、コントローラCの制御の下で、ロボット本体56の駆動機構がアーム54を上下左右等に適宜移動させて、装着治具52の上方装着部52aに装着された接合ツール30のプローブ32を、プローブクリーニング機構80の粗削り部88aに対してその上方で対向するように配置させる。この際、装着治具52の下方装着部52bに装着された補助支持機構40の補助支持部材42は、支持部86の下面に当接している必要はない。
【0087】
このようにプローブ32及び補助支持部材42の各々の位置が実現されたならば、コントローラCの制御の下で、
図7に示すように、接合ツール30の駆動機構38がプローブ32を保持するホルダ34を下方に移動させてプローブ32を回転させながら下降させ、プローブ32の下部を粗削り部88aの内部に収容させてそれを所定時間ほど荒削りさせ
る。
【0088】
次に、かかる所定時間が経過したならば、コントローラCの制御の下で、接合ツール30の駆動機構38がプローブ32を保持するホルダ34を上方に移動させてプローブ32を粗削り部88aから引き上げ、ロボット本体56の駆動機構がアーム54を上下左右等に適宜移動させて、装着治具52の上方装着部52aに装着された接合ツール30のプローブ32を、プローブクリーニング機構80の仕上げ研磨部88bに対してその上方で対向するように配置させる。この際、装着治具52の下方装着部52bに装着された補助支持機構40の補助支持部材42は、支持部86の下面に当接している必要はない。
【0089】
このようにプローブ32及び補助支持部材42の各々の位置が実現されたならば、コントローラCの制御の下で、接合ツール30の駆動機構38がプローブ32を保持するホルダ34を下方に移動させてプローブ32を回転させながら下降させ、プローブ32の下部を仕上げ研磨部88bの内部に収容させてそれを所定時間ほど仕上げ研磨させる。
【0090】
そして、かかる所定時間が経過したならば、順次、プローブ検出機構60を用いてプローブ32の先端長を検出し、プローブ32にプローブ検出機構60のブロック部材68の上面側を押圧させてホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さを検出し、プローブ32に載置治具12の上面を押圧させながらその上面位置を検出し、加工部材検出機構20を用いながら加工対象部材Wの第1部材W1及び第2部材W2の各々の上面位置を検出した後、摩擦撹拌接合を実行していけばよい。
【0091】
なお、以上の本実施形態の構成においては、プローブ32に載置治具12の上面を押圧させてその上面位置を検出する工程は、載置治具12の塗装の付着等が無視し得る場合には、その頻度を減らしてもよいし、より工程を簡便化するために省略してもかまわない。
【0092】
また、以上の本実施形態の構成においては、以上の本実施形態の構成においては、補助支持機構40を適用した構成例で説明したが、必要とされる加工精度が相対的に低い場合等では、補助支持機構40は省略してもかまわない。
【0093】
また、以上の本実施形態の構成においては、補助支持機構40の補助支持部材42をボール部材として説明したが、その他の回転等の可動部材も適用できるし、摩擦等が発生しにくい場合には固定部材を用いてもかまわない。
【0094】
以上の本実施形態の構成によれば、駆動機構38が、プローブ32の熱膨張率よりも大きな熱膨張率を有してプローブ32を保持したホルダ34を下方に移動するに伴って、検出器Dが、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さを検出自在であると共に、プローブ検出機構60が、プローブ32のみの部材の長さである先端長を検出自在であることにより、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さが、ホルダ34の熱膨張及びプローブ32の摩耗を反映するものであるため、摩擦撹拌接合装置1を用いて行われる摩擦撹拌接合時の加工対象部材Wに対するプローブ32の挿入量の補正を的確に行うことができ、かつ、プローブ32の先端長が、プローブ32の摩耗のみを反映するものであるため、プローブ32の摩耗量が上限を超えた場合には的確にそれを交換することができて、摩擦撹拌接合を実行する上で最適な態様で、特にプローブ32の摩耗量や先端位置を検出して、摩擦撹拌接合時における加工対象部材Wに対するプローブの侵入位置を最適な位置に制御することができる。
【0095】
また、本実施形態の構成によれば、プローブ検出機構60が、その位置が固定されたブロック部材68、及びブロック部材68側に固定された変位センサ70を有し、プローブ32の先端長を検出する際には、移動機構50でアーム54を移動させて接合ツール30
をブロック部材68に対向させた後、駆動機構38でプローブ32を保持したホルダ34を下降させてプローブ32の先端でブロック部材68の上面側を押圧させると共に、変位センサ70の接触子74aが接合ツール30の当接部材36に接触して移動されることで接触子74aの変位が検出されることにより、簡便な構成により、検出実行時のプローブ32の位置を確実に固定しながら、確実にプローブ32の摩耗量や先端位置を検出することができる。
【0096】
また、本実施形態の構成によれば、検出器Dが、駆動機構38によるホルダ34及びホルダ34に保持されたプローブ32の上下方向の移動量を検出自在であり、移動機構50でアーム54を移動させて接合ツール30をブロック部材68に対向させた後、駆動機構38でプローブ32を保持したホルダ34を下降させてプローブ32の先端部でブロック部材68の上面側を押圧させるまでの移動量に基づいて、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さを検出することにより、簡便な構成により、確実にプローブ32の先端位置を検出することができる。
【0097】
また、本実施形態の構成によれば、更に、載置部材12を支持部材42で支持して、加工対象部材Wの上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構40を備え、補助支持機構40はアーム54に装着され、ホルダ34及びプローブ32を含む部材の長さ及びプローブ32の先端長を検出する際には、接合ツール30を下降させてプローブ32の先端部でブロック部材68の上面側を押圧させると共に、支持部材42でブロック部材68の下面側を支持することにより、摩擦撹拌接合の実行時にプローブ32と加工対象部材Wとをより正確に位置させることができ、プローブ32と加工対象部材Wとの間の距離を所定の距離に確実に制御しながら摩擦撹拌接合することができると共に、検出実行時のプローブ32の位置をより確実に固定しながら、より確実にプローブ32の摩耗量や先端位置を検出することができる。
【0098】
また、本実施形態の構成によれば、更に、プローブ32をクリーニングするプローブクリーニング機構80を備え、プローブクリーニング機構80が、粗削り部88a及び仕上げ研磨部88bを有し、プローブ32をクリーニングする際には、移動機構50がアーム54を移動して接合ツール30を粗削り部88aに対向させた後、接合ツール30を下降させてプローブ32の先端部を粗削り部88a内に収容させると共に、接合ツール30を回転させて先端部を粗削りし、ついで、移動機構50がアーム54を移動して接合ツール30を仕上げ研磨部88bに対向させた後、接合ツール30を下降させてプローブ32の先端部を仕上げ研磨部88b内に収容させると共に、接合ツール30を回転させて先端部を仕上げることにより、簡便な構成により、プローブ32の自転を利用して、確実にプローブ32をクリーニングすることができる。
【0099】
また、本実施形態の構成によれば、検出器Dが、駆動機構38によるホルダ34及びホルダ34に保持されたプローブ32の上下方向の移動量を検出自在であり、移動機構50がアーム54を移動して接合ツール30を載置部材12の載置面に対向させた後、接合ツール30を下降させてプローブ32の先端部で載置部材12の載置面を押圧するまでの移動量を検出することにより、載置部材12の載置面を検出するための付加的なセンサを設けることなく、簡便な構成で、確実に載置部材12の載置面の面位置を検出することができる。
【0100】
また、本実施形態の構成によれば、更に、載置部材12を支持部材42で支持して、加工対象部材Wの上下方向の位置のみを補助的に支持する補助支持機構40を備え、移動機構50がアーム54を移動して接合ツール30を載置部材12の載置面に対向させた後に、接合ツール30を下降させてプローブ32の先端部で載置部材12の載置面を押圧するまでの移動量を検出する際には、接合ツール30を下降させてプローブ32の先端部を載
置部材12の載置面を押圧すると共に、支持部材42で載置部材12の載置面とは反対側を支持することにより、摩擦撹拌接合の実行時にプローブ32と加工対象部材Wとをより正確に位置させることができ、プローブ32と加工対象部材Wとの間の距離を所定の距離に確実に制御しながら摩擦撹拌接合することができると共に、載置部材12の載置面を検出するための付加的なセンサを設けることなく、簡便な構成で、より確実に載置部材12の載置面の面位置を検出することができる。
【0101】
また、本実施形態の構成によれば、更に、更に、載置部材12に載置された加工対象部材Wを押圧自在な押圧部材22a、及び載置部材12側に固定された変位センサ25を有する加工部材検出機構20を備え、押圧部材22aが加工対象部材Wの上面を押圧する際には、変位センサ25の接触子28aが押圧部材22a側に接触して移動されることにより接触子28aの変位量が検出されることにより、更に、載置部材12に載置した状態の加工対象部材Wの面位置を検出できて、摩擦撹拌接合時における加工対象部材Wに対するプローブ32の侵入位置を確実に最適な位置に制御することができる。
【0102】
また、本実施形態の構成によれば、加工対象部材Wが、下方部材W2及び上方部材W1を有し、押圧部材22aが載置部材12上に載置された下方部材W2の上面を押圧する際には、変位センサ25の接触子28aが押圧部材22a側に接触して移動されることにより接触子28aの変位量が検出され、押圧部材22aが下方部材W2上に載置された上方部材W1の上面を押圧する際には、変位センサ25の接触子28aが押圧部材22a側に接触して移動されることで接触子28aの変位量が検出されることにより、載置部材12に載置した状態の加工対象部材Wの各構成部材W1、W2の上面位置を各々検出できて、摩擦撹拌接合時における加工対象部材Wに対するプローブ32の侵入位置をより確実に最適な位置に制御することができる。
【0103】
また、本実施形態の構成によれば、プローブ検出機構60、加工部材検出機構20、プローブクリーニング機構80、及び載置部材12に載置された加工対象部材Wは、移動機構50によるアーム54の移動で規定される接合ツール30の可動範囲内に配設されることにより、摩擦撹拌接合装置1全体の構成をコンパクトに維持し、かつ構成部品間の位置整合性の高い態様で、プローブ32を必要に応じてクリーニングしながら、プローブ32の摩耗量や先端位置、載置部材12の載置面の面位置、及び載置部材12に載置した状態の加工対象部材Wの面位置を検出することができる。
【0104】
また、本実施形態の構成によれば、移動機構50は、産業用ロボットであることにより、より汎用的な構成で、プローブ検出機構60、プローブクリーニング機構80、及び載置部材12に載置された加工対象部材Wに対して、プローブ32を正確に移動することができる。
【0105】
なお、本発明は、部材の形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。