(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、一端が前記1つの発光画素に接続され、他端が前記電圧測定部に接続された、前記少なくとも1つの電源線を介して前記1つの発光画素に供給される電圧を伝達するためのモニタ線を備える
請求項1記載の表示装置。
前記電圧調整部は、前記第1分布と前記第2分布とを前記複数の発光画素に対応して合計することにより、前記第1電源線に生じる電圧降下量と前記第2電源線に生じる電圧降下量との和である総電圧降下量の分布を算出し、算出した総電圧降下量の分布の最大値を用いて前記第1電圧及び前記第2電圧を調整する
請求項6記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照して説明する。
【0042】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る表示装置は、二次元状に配置された複数の発光画素を有する表示部を備える表示装置であって、表示部に供給電圧を供給する電圧源と、複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データに応じて、電圧源が出力する供給電圧を調整する電圧調整部とを備え、表示部は、さらに、複数の発光画素及び電圧源に接続され、電圧源から供給電圧が供給される少なくとも1つの電源線を有し、表示装置は、さらに、複数の発光画素のうち予め定められた1つの発光画素に少なくとも1つの電源線を介して供給される電圧を測定する電圧測定部を備え、電圧調整部は、映像データから少なくとも1つの電源線に生じる電圧降下量の分布を算出し、算出した電圧降下量の分布から1つの発光画素における少なくとも1つの電源線の電圧を計算し、計算結果と電圧測定部で測定された電圧とに基づき、供給電圧を調整する。
【0043】
これにより、本実施の形態に係る表示装置は、経時的な変化に適切に対応でき、かつ、高い消費電力低減効果を奏する。
【0044】
図1は、本実施の形態に係る表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【0045】
同図に示す表示装置100は、有機EL表示部110と、データ線駆動回路120と、書込走査駆動回路130と、制御回路140と、電圧降下量演算回路150と、メモリ155と、信号処理回路160と、可変電圧源170と、電圧測定部180と、モニタ用配線190とを備える。
【0046】
図2に、水平1920画素、垂直1080画素を有する有機EL表示部110における陽極側電源線網のモデル図を示す。
【0047】
各画素(発光画素)は水平抵抗成分Rahと垂直抵抗成分Ravによって上下左右の隣接画素と各々接続されており、周縁部は外部印加電圧が加えられる陽極側電極に接続される。
【0048】
図3は、有機EL表示部110の構成を模式的に示す斜視図である。なお、図中下方が表示面側である。
【0049】
同図に示すように、有機EL表示部110は、複数の発光画素111と、陽極側電源線網112と、陰極側電源線網113とを有する。
【0050】
発光画素111は、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113に接続され、当該発光画素111に流れる画素電流ipixに応じた輝度で発光する。複数の発光画素111のうち、予め定められた1つの発光画素は、モニタ箇所Mでモニタ用配線190に接続されている。以降、モニタ用配線190に 直接接続された発光画素111をモニタ用の発光画素111Mと記載する。モニタ用の発光画素111Mは、有機EL表示部110の中央付近に配置されている。なお、中央付近とは、中央とその周辺部とを含む。
【0051】
陽極側電源線網112は、例えば、網目状に形成されている。一方、陰極側電源線網113は、有機EL表示部110にベタ膜状に形成され、有機EL表示部110の周縁部から可変電圧源170により出力された電圧が印加される。
図3においては、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113の抵抗成分を示すために、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113を模式的にメッシュ状に図示している。なお、陰極側電源線網113は、例えばグランド線であり、有機EL表示部110の周縁部で表示装置100の共通接地電位に接地されていてもよい。
【0052】
陽極側電源線網112には、水平抵抗成分Rahと垂直抵抗成分Ravが存在する。陰極側電源線網113には、水平抵抗成分Rchと垂直抵抗成分Rcvとが存在する。なお、図示されていないが、発光画素111は、書込走査駆動回路130及びデータ線駆動回路120に接続され、発光画素111を発光及び消光するタイミングを制御するための走査線と、発光画素111の発光輝度に対応する信号電圧を供給するためのデータ線とも接続されている。
【0053】
図4は、発光画素111の具体的な構成の一例を示す回路図である。なお、同図には、モニタ用の発光画素111Mの構成が示されている。モニタ用の発光画素111M以外の発光画素111は、
図4に示すモニタ用の発光画素111Mと比較して、モニタ用配線190が接続されていない点のみが異なる。
【0054】
同図に示すモニタ用の発光画素111Mは、駆動素子と発光素子とを含み、駆動素子は、ソース電極及びドレイン電極を含み、発光素子は、第1の電極及び第2の電極を含み、当該第1の電極が前記駆動素子のソース電極及びドレイン電極の一方に接続され、ソース電極及びドレイン電極の他方と第2の電極との一方に高電圧側の電圧(陽極側電圧)が印加され、ソース電極及びドレイン電極の他方と第2の電極との他方に低電圧側の電圧(陰極側電圧)が印加される。具体的には、発光画素111は、有機EL素子121と、データ線122と、走査線123と、スイッチトランジスタ124と、駆動トランジスタ125と、保持容量126とを有する。発光画素111は、有機EL表示部110に、例えば二次元状に配置されている。
【0055】
有機EL素子121は、発光素子の一例であって、アノードが駆動トランジスタ125のドレインに接続され、カソードが陰極側電源線網113に接続され、アノードとカソードとの間に流れる電流値に応じた輝度で発光する。この有機EL素子121のカソード側の電極は、複数の発光画素111に共通して設けられた共通電極の一部を構成しており、該共通電極は、その周縁部から電圧が印加されるように、可変電圧源170と電気的に接続されている。つまり、共通電極が有機EL表示部110における陰極側電源線網113として機能する。また、カソード側の電極は、金属酸化物からなる透明導電性材料で形成されている。なお、有機EL素子121のアノード側の電極は第1の電極の一例であり、有機EL素子121のカソード側の電極は第2の電極の一例である。また、陰極側電源線網113は第2電源線網の一例である。
【0056】
データ線122は、データ線駆動回路120と、スイッチトランジスタ124のソース及びドレインの一方に接続され、データ線駆動回路120により映像信号(映像データ)に対応する信号電圧が印加される。
【0057】
走査線123は、書込走査駆動回路130と、スイッチトランジスタ124のゲートに接続され、書込走査駆動回路130により印加される電圧に応じて、スイッチトランジスタ124をオン及びオフする。
【0058】
スイッチトランジスタ124は、ソース及びドレインの一方がデータ線122に接続され、ソース及びドレインの他方が駆動トランジスタ125のゲート及び保持容量126の一端に接続された、例えば、P型薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0059】
駆動トランジスタ125は、駆動素子の一例であって、ソースが陽極側電源線網112に接続され、ドレインが有機EL素子121のアノードに接続され、ゲートが保持容量126の一端及びスイッチトランジスタ124のソース及びドレインの他方に接続された、例えば、P型TFTである。これにより、駆動トランジスタ125は、保持容量126に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子121に供給する。なお、陽極側電源線網112は、第1電源線の一例である。また、モニタ用の発光画素111Mにおいて、駆動トランジスタ125のソースは、モニタ用配線190と接続されている。
【0060】
保持容量126は、一端がスイッチトランジスタ124のソース及びドレインの他方に接続され、他端が陽極側電源線網112に接続され、スイッチトランジスタ124がオフされたときの陽極側電源線網112の電位と駆動トランジスタ125のゲートの電位との電位差を保持する。つまり、信号電圧に対応する電圧を保持する。
【0061】
データ線駆動回路120は、映像信号に対応する信号電圧を、データ線122を介して発光画素111に出力する。
【0062】
書込走査駆動回路130は、複数の走査線123に走査信号を出力することで、複数の発光画素111を順に走査する。具体的には、スイッチトランジスタ124を行単位でオン及びオフする。これにより、書込走査駆動回路130により選択されている行の複数の発光画素111に、複数のデータ線122に出力された信号電圧が印加される。よって、発光画素111が映像信号に応じた輝度で発光する。
【0063】
制御回路140は、データ線駆動回路120及び書込走査駆動回路130のそれぞれに、駆動タイミングを指示する。
【0064】
メモリ155は、
図2及び
図3で説明した陽極側電源線網112の水平抵抗成分Rah及び垂直抵抗成分Rav、ならびに、陰極側電源線網113の水平抵抗成分Rch及び垂直抵抗成分Rcvの数値データが予め格納された記憶部である。
【0065】
電圧降下量演算回路150は、表示装置100に入力された映像信号と、メモリ155から読み出された水平抵抗成分Rah、垂直抵抗成分Rav、水平抵抗成分Rch及び垂直抵抗成分Rcvとから、陽極側電源線網112に生じる電圧の降下量の分布及び陰極側電源線網113に生じる電圧の降下量の分布を算出し、算出した陽極側電源線網112の電圧の降下量の分布及び陰極側電源線網113の電圧の降下量の分布を示す信号を信号処理回路160に出力する。
【0066】
信号処理回路160は、電圧降下量演算回路150で算出された陽極側電源線網112の電圧の降下量の分布及び陰極側電源線網113の電圧の降下量の分布からモニタ用の発光画素111Mにおける陽極側電源線網112の電圧(モニタ箇所Mの電圧)を計算し、計算結果と、電圧測定部180で測定されたモニタ箇所Mの電圧とに基づき、可変電圧源170を制御する。具体的には、信号処理回路160は、陽極側電源線網112の電圧の降下量の分布及び陰極側電源線網113の電圧の降下量の分布から、有機EL表示部110内の最大電圧降下量を算出する。この最大電圧降下量は、陽極側電源線網112の電圧の降下量の分布と陰極側電源線網113の電圧の降下量の分布とを、発光画素111毎に対応して合計することにより算出される電圧の降下量の分布である総電圧降下量の分布の最大値である。
【0067】
なお、本実施の形態において、電圧降下量演算回路150及び信号処理回路160は、電圧調整部の一例である。
【0068】
可変電圧源170は、電圧源の一例であり、有機EL表示部110に陽極側電圧及び陰極側電圧を有機EL表示部110の電源電圧として供給する。この可変電圧源170は、信号処理回路160から指示される電圧に応じて供給電圧の一例である外部印加電圧(陽極側電圧及び陰極側電圧)を変更する、電圧可変型の電源である。なお、可変電圧源170の詳細な構成については後述する。
【0069】
電圧測定部180は、電圧測定部の一例であり、モニタ箇所Mの電圧を測定する。
【0070】
以上のように構成された本実施の形態に係る表示装置100は、入力された映像信号から陽極側電源線網112に生じる電圧の降下量の分布及び陰極側電源線網113に生じる電圧の降下量の分布を算出し、算出した電圧降下量の分布からモニタ箇所Mの電圧を計算し、計算結果と電圧測定部180で測定された電圧とに基づき、可変電圧源170から出力される外部印加電圧を調整する。
【0071】
次に、本発明の表示装置100の動作について説明する。
【0072】
従来の表示装置では、入力された映像信号から、例えばフレームごとのピーク信号を抽出し、当該ピーク信号に応じた駆動素子及び有機EL素子の駆動に必要な電圧を設定して電源電圧を調節するという制御を行っているのに対し、本発明の表示装置100では、上記映像信号に加えて、予めメモリ155に格納された電源線網の水平抵抗成分(Rah、Rch)及び垂直抵抗成分(Rav、Rcv)を使った演算処理を行うことにより電圧降下量を求める。
【0073】
図5は、本実施の形態に係る表示装置100の動作を示すフローチャートである。
【0074】
まず、電圧降下量演算回路150は、予め設定される映像信号と画素電流の変換式もしくは変換テーブルを用いて、映像信号から発光画素毎に流れる電流を算出する(ステップS11)。具体的には、電圧降下量演算回路150は、表示装置100に入力された1フレーム期間の映像信号を取得し、取得した映像信号から、各発光画素111に流れる画素電流を算出する。ここで、電圧降下量演算回路150は、映像信号と、当該映像信号に対応する発光輝度で発光画素111が発光した場合の画素電流とを対応付ける変換式もしくは変換テーブルを有する。この変換式もしくは変換テーブルを用いて、電圧降下量演算回路150は、表示装置100に入力された1フレーム期間の映像信号から、各発光画素111に流れる画素電流を算出する。
【0075】
次に、電圧降下量演算回路150は、メモリ155から陽極側電源線網112の水平抵抗成分Rah及び垂直抵抗成分Ravを取得する(ステップS12)。
【0076】
次に、電圧降下量演算回路150は、陽極側電源線網112の電圧分布を計算する(ステップS14)。具体的には、画素座標(h,v)における陽極側電源線網112の電圧の降下量をva(h,v)、画素電流をi(h,v)とおくと、画素座標(h,v)における電流i(h,v)に関して次の式1が導出される。
【0077】
Rah×{va(h−1,v)−va(h,v)}+Rah×{va(h+1,v)−va(h,v)}+Rav×{va(h,v−1)−va(h,v)}+Rav×{va(h,v+1)−va(h,v)}=i(h,v)・・・(式1)
【0078】
ただし、hは1から1920までの整数であり、vは1から1080までの整数である。
【0079】
また、va(0,v)およびva(1921,v)、va(h,0)、va(h,1081)は可変電圧源170から有機EL表示部110までの配線で生じる電圧降下量であり十分小さいので0と近似できる。また、上述したように、Rahは陽極側電源線網112の水平抵抗成分(アドミッタンス)、Ravは陽極側電源線網112の垂直抵抗成分(アドミッタンス)である。
【0080】
式1を各発光画素111において導出すると1920×1080個の未知の変数va(h,v)に対する1920×1080個の1次連立方程式が得られる。よって、この1次連立方程式を解くことで各発光画素111における陽極側電源線網112の電圧の降下量va(h,v)を得ることができる。
【0081】
図6Aは、有機EL表示部110に表示される画像の一例を模式的に示す図である。
【0082】
同図に示す画像Aは、有機EL表示部110の中心部が白く、当該中心部以外が黒くなっている。
【0083】
図6Bは、画像Aを示す映像信号から計算された陽極側電源線網112の電圧分布を示すグラフである。
【0084】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。具体的には、画素座標(0,v)はx軸に対応し、画素座標(h,0)はy軸に対応する。
【0085】
電圧降下量演算回路150は、画像Aを示す映像信号が入力された場合に、上記式1より画素座標(h,v)毎に電圧降下量va(h,v)を算出し、算出結果から、
図6Bに示すような陽極側電源線網112の電圧分布を計算する。ここで、陽極側電源線網112は、
図2及び
図3に示した垂直抵抗成分Ravが実質的に無限大の1次元配線を想定している。つまり、異なる行の発光画素111に対応して設けられた複数の陽極側電源線網112は、水平方向(行方向)に平行に配置されている。これにより、画像Aのうち白い領域に対応する行の陽極側電源線網112の電圧降下量は、画面中央に向かって徐々に大きくなる。一方、画像Aのうち白い領域に対応する行以外の陽極側電源線網112の電圧降下量は、実質的に0となる。
【0086】
同様にして、電圧降下量演算回路150は、ステップS11の後、メモリ155から陰極側電源線網113の水平抵抗成分Rch及び垂直抵抗成分Rcvを取得する(ステップS13)。
【0087】
次に、電圧降下量演算回路150は、陰極側電源線網113の電圧分布を計算する(ステップS15)。具体的には、画素座標(h,v)において、上記の式1と同様に陰極側電源線網113に対して連立方程式を得てこれを解くことで、画素座標(h,v)における陰極側電源線網113の電圧の降下(上昇)量vc(h,v)を得ることができる。
【0088】
図6Cは、画像Aを示す映像信号から計算された陰極側電源線網113の電圧分布を示すグラフである。
【0089】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。
【0090】
電圧降下量演算回路150は、陽極側電源線網112の電圧降下量の算出と同様に、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量を算出する。ここで、陰極側電源線網113はベタ膜状に形成されている。よって、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量vc(h,v)は、有機EL表示部110の中心、つまり画素座標(960,540)において、最も大きくなる。なお、陽極側電源線網112の電圧分布を計算する処理(ステップS14)及び陰極側電源線網113の電圧分布を計算する処理(ステップS15)のそれぞれは、第1算出ステップの一例である。
【0091】
次に、信号処理回路160は、陽極側電源線網112の電圧降下量va(h,v)と、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量vc(h,v)とから、モニタ箇所Mの電圧を計算する(ステップS16)。具体的には、本実施の形態ではモニタ箇所Mが陽極側電源線網112に存在するので、信号処理回路160は、陽極側電源線網112の電圧降下量va(960,540)をモニタ箇所Mの電圧降下量とする。そして、信号処理回路160は、可変電圧源170が出力している陽極側電圧から、モニタ箇所Mの電圧降下量va(960,540)を減算することにより、モニタ箇所Mの電圧を計算する。言い換えると、有機EL素子121に必要な電圧をVEL、駆動トランジスタ125に必要な電圧をVTFTとすると、VEL+VTFTに映像信号から計算されたモニタ箇所Mの電圧降下量va(960,540)を加算した電圧であるVEL+VTFT+va(960,540)をモニタ箇所Mの電圧とする。以降、上記の手順により計算されたモニタ箇所Mの電圧をvcalcと記載する場合がある。なお、このモニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)は、第2算出ステップの一例である。
【0092】
一方、電圧測定部180は、モニタ用配線190を介してモニタ箇所Mの電圧を測定する(ステップS17)。なお、このモニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)は、測定ステップの一例である。
【0093】
次に、信号処理回路160は、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)で計算されたモニタ箇所Mの電圧と、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)で測定されたモニタ箇所Mの電圧とに基づき、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する(ステップS18)。具体的には、信号処理回路160は、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)で計算されたモニタ箇所Mの電圧と、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)で測定されたモニタ箇所Mの電圧と、算出した差分と総電圧降下量の分布の最大値とから、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する。
【0094】
ここで、総電圧降下量とは、各発光画素における陽極側電源線網112の電圧降下(上昇)量va(h,v)と、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量vc(h,v)との和 |va(h,v)|+|vc(h,v)| である。つまり、信号処理回路160は、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布と、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量の分布とを、画素座標(h,v)に対応して合計することにより、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布と陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量の分布との和である総電圧降下量の分布を算出する。そして、算出した総電圧降下量の分布が最大となる面内の電圧降下の最大値vmaxを計算する。
【0095】
ところで、画像Aを示す映像信号とは異なる映像信号が表示装置100に入力された場合の陽極側電源線網112の電圧分布及び陰極側電源線網113の電圧分布について説明する。
【0096】
図7Aは、有機EL表示部に表示される画像の他の一例を模式的に示す図である。
【0097】
同図に示す画像Bは、
図6Aに記載された画像Aの白領域と同じ大きさの白領域であって、画像Aの白領域とは表示位置の異なる白領域を含む。具体的には、画像Bは、画素座標(1,1)を含む領域が白領域となっている。
【0098】
図7Bは、画像Bを示す映像信号から計算された陽極側電源線網112の電圧分布を示すグラフである。
【0099】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。
【0100】
同図に示す陽極側電源線網112の電圧分布は、
図6Bに示した陽極側電源線網112の電圧分布と比較して、分布のピークが左側(画素座標(h,0)側)にずれると共にピーク電圧が低くなっている。具体的には、
図6Bに示した陽極側電源線網112の電圧分布の最大値は7〜8Vであるが、
図7Bに示す陽極側電源線網112の電圧分布の最大値は4〜5Vであり、3V程度低下している。
【0101】
図7Cは、画像Bを示す映像信号から計算された陰極側電源線網113の電圧分布を示すグラフである。
【0102】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。
【0103】
同図に示す陰極側電源線網113の電圧分布は、
図6Cに示した陰極側電源線網113の電圧分布と比較して、
図7B同様、分布のピークが左側にずれると共にピーク電圧が低くなっている。具体的には、
図6Cに示した陰極側電源線網113の電圧分布の最大値は5〜6Vであるが、
図7Cに示す陰極側電源線網113の電圧分布の最大値は3〜4Vであり、2V程度低下している。
【0104】
また、上記ステップS14及びS15では、電圧降下量演算回路150は、映像信号が入力された場合に、画素毎に電圧降下量を算出し、当該算出結果から、電源線網の電圧分布を算出するが、当該算出は、1フレームごとになされることに限定されない。
【0105】
図8は、本実施の形態に係る表示装置100の動作の一例を詳細に示すフローチャートである。同図は、
図5に記載された動作フローチャートの一例を詳細に説明したものであり、ステップS14及びS15における電源線網の電圧分布算出が、1フレームごとでなく画素行単位でなされていることを示す図である。
図8の左側には、
図6Aに記載された画像Aを表示する状態aから、
図7Aに記載された画像Bを表示する状態eへの画像変遷が描かれている。つまり、状態aから状態eまでの期間が、1フレーム期間に相当する。以下では、状態bでの電源線網の電圧分布算出を例にして、上記動作の説明をする。
【0106】
まず、電圧降下量演算回路150は、状態a〜状態bの間に更新される1画素行の映像信号を入力する。
【0107】
次に、電圧降下量演算回路150は、保持している映像信号のマトリクスを更新する。具体的には、
図8の右側に表されている映像信号マトリクスデータ201において、状態aから状態bの間に、1行目の画素行の階調データが更新されている。
【0108】
次に、電圧降下量演算回路150は、更新された映像信号のマトリクスと画素電流の変換式もしくは変換テーブルとを用いて、画素電流マトリクスを作成する。具体的には、
図8の右側に表されている画素電流マトリクスデータ202において、状態aから状態bの間に、1行目の画素行の画素電流データが更新されている。
【0109】
次に、電圧降下量演算回路150は、
図5にて説明したステップS12及びステップS13を実行する。
【0110】
次に、電圧降下量演算回路150は、
図5にて説明したステップS14及びステップS15を実行する。具体的には、
図8の右側に表されている陽極側電源線網の電圧分布データ203Aと陰極側電源線網の電圧分布データ203Bとを作成する。
【0111】
次に、信号処理回路160は、陽極側電源線網の電圧分布データ203Aと陰極側電源線網の電圧分布データ203Bとからモニタ箇所Mの電圧を計算する(ステップS16)。このとき、信号処理回路160は、陽極側電源線網の電圧分布データ203A及び陰極側電源線網の電圧分布データ203Bのそれぞれおからモニタ箇所Mの電圧を抽出し減算する。なお、信号処理回路160は、陽極側電源線網の電圧分布データ203Aと陰極側電源線網の電圧分布データ203Bとを単純に減算加算した電圧降下量マトリクスデータを作成して、作成した電圧降下量マトリクスデータからモニタ箇所Mの電圧降下量を抽出してもよい。
【0112】
その後、電圧測定部180は、モニタ用配線190を介してモニタ箇所Mの電圧を測定する(ステップS17)。
【0113】
さらに、信号処理回路160は、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)で計算されたモニタ箇所Mの電圧と、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)で測定されたモニタ箇所Mの電圧とに基づき、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する(ステップS18)。
【0114】
上述した状態bに対応した電源電圧制御の処理を1単位として、1画素行の映像信号データが更新される度に、上記処理を実行する。
【0115】
なお、
図8において、1画素行ごとに上記処理が実行されるのではなく、状態aにおける上記処理の後には、状態eにおける上記処理がなされる場合は、1フレームごとの上記処理が実行される場合に相当する。
【0116】
また、
図8において、1画素行ごとに上記処理が実行されるのではなく、複数の画素行を1単位として上記処理が実行されてもよい。
【0117】
1フレームごとに上記処理が実行される態様では、処理時間を確保できるという利点を有するのに対し、1画素行ごとに上記処理が実行される態様では、高速な処理が要求されるが、電源電圧設定精度が向上するという利点を有する。
【0118】
次に、印加電圧を制御する処理(ステップS18)の具体的な処理について説明する。
【0119】
図9は、印加電圧を制御する処理(ステップS18)の具体的な処理の流れを示すフローチャートである。なお、同図に示す処理は、信号処理回路160により実行される。
【0120】
まず、面内の最大電圧降下量を検出する(ステップS21)。つまり、面内の電圧降下の最大値vmaxを計算する。
【0121】
図6Aに示す画像Aと
図7Aに示す画像Bとで、電圧降下の最大値vmaxを比較すると、画像Aではvmaxが12〜14Vとなるが、画像Bではvmaxが7〜9Vとなる。つまり、最大電圧降下量を検出する処理(ステップS21)で計算される電圧降下の最大値vmaxは、画像に応じて異なる値となる。特に、画像Aと画像Bとでは、白い領域の大きさは同じであるにも関わらず、白い領域が表示される位置が異なるために、電圧降下の最大値vmaxも異なる値となる。
【0122】
次に、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)で計算されたモニタ箇所Mの電圧と、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)で測定されたモニタ箇所Mの電圧との差分を算出する(ステップS22)。つまり、モニタ箇所Mの計算結果の電圧と、モニタ箇所Mの測定結果の電圧との差分を算出する。この差分は、有機EL表示部110の経時的な変化に相当し、例えば、有機EL素子121の経時変化に相当する。モニタ箇所Mの測定結果の電圧をvmmとすると、vcalc−vmmが差分として算出される。
【0123】
次に、最大電圧降下量を検出する処理(ステップS21)で検出された電圧降下の最大値vmaxと、差分を算出する処理(ステップS22)で算出された差分の電圧vcalc−vmmとから、可変電圧源170から出力される外部印加電圧の電圧マージンを決定する(ステップS23)。具体的には、電圧降下の最大値vmaxと、差分の電圧vcalc−vmmとを加算したvmax+vcalc−vmmを電圧マージンと決定する。つまり、本実施の形態に係る表示装置100は、有機EL表示部110の経時的な変化に相当する差分を考慮して電圧マージンを決定する。よって、経時的な変化に応じて外部印加電圧を調整できる。
【0124】
また、電圧降下の最大値vmaxに応じて、可変電圧源170から有機EL表示部110へ供給する電圧を増加させることにより、映像に応じて必要最小限の外部印加電圧を設定して消費電力を低減することができる。具体的には、画像Aを示す映像信号が入力された場合には、vmax=12〜14Vとし、画像Bを示す映像信号が入力された場合には、vmax=7〜9Vとする。言い換えると、画像Aと画像Bとは、映像信号のピーク値が同じであっても、異なる外部印加電圧が供給される。言い換えると、画像Bが入力された場合は、画像Aが入力された場合よりも陽極側電源線網112に供給する電圧を低くできる。つまり、消費電力を低減できる。
【0125】
最後に、電圧マージンvmax+vcalc−vmmに基づき、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を決定する(ステップS24)。具体的には、信号処理回路160は、有機EL素子121に必要な電圧をVEL、駆動トランジスタ125に必要な電圧をVTFTとすると、VEL+VTFTに電圧マージンを加算した電圧を外部印加電圧として決定する。言い換えると、外部印加電圧をVEL+VTFT+vmax+vcalc−vmmと決定する。そして、決定した外部印加電圧を可変電圧源170に指示する。それにより、可変電圧源170は電圧マージンを加算した電圧を有機EL表示部110へ供給する。
【0126】
ここで、可変電圧源170の詳細な構成について簡単に説明しながら、信号処理回路160から指示される電圧に応じて可変電圧源170が出力する外部印加電圧が変化する理由を述べる。
【0127】
図10は、可変電圧源の具体的な構成の一例を示すブロック図である。なお、同図には可変電圧源に接続されている有機EL表示部110及び信号処理回路160も示されている。
【0128】
同図に示す可変電圧源170は、比較回路181と、PWM(Pulse Width Modulation)回路182と、ドライブ回路183と、スイッチング素子SWと、ダイオードDと、インダクタLと、コンデンサCと、出力端子184とを有し、入力電圧Vinを第1基準電圧Vref1に応じた外部印加電圧Voutに変換し、出力端子184から外部印加電圧Voutを出力する。なお、図示していないが、入力電圧Vinが入力される入力端子の前段には、AC−DC変換器が挿入され、例えば、AC100VからDC20Vへの変換が済んでいるものとする。ここで、第1基準電圧Vref1は、信号処理回路160から指示された電圧、つまり、有機EL素子121に必要な電圧をVEL、駆動トランジスタ125に必要な電圧をVTFTとすると、VEL+VTFTに電圧マージンを加算した電圧であるVEL+VTFT+vmax+vcalc−vmmである。この第1基準電圧Vref1は、例えば、可変電圧源170の接地端子を基準とする電圧である。
【0129】
比較回路181は、出力検出部185及び誤差増幅器186を有し、外部印加電圧Voutと第1基準電圧Vref1との差分に応じた電圧をPWM回路182に出力する。
【0130】
出力検出部185は、出力端子184と、接地電位との間に挿入された2つの抵抗R1及びR2を有し、外部印加電圧Voutを抵抗R1及びR2の抵抗比に応じて分圧し、分圧された外部印加電圧Voutを誤差増幅器186へ出力する。
【0131】
誤差増幅器186は、出力検出部185で分圧されたVoutと、信号処理回路160から出力された第1基準電圧Vref1とを比較し、その比較結果に応じた電圧をPWM回路182へ出力する。具体的には、誤差増幅器186は、オペアンプ187と、抵抗R3及びR4とを有する。オペアンプ187は、反転入力端子が抵抗R3を介して出力検出部185に接続され、非反転入力端子が信号処理回路160に接続され、出力端子がPWM回路182と接続されている。また、オペアンプ187の出力端子は、抵抗R4を介して反転入力端子と接続されている。これにより、誤差増幅器186は、出力検出部185から入力された電圧と信号処理回路160から入力された第1基準電圧Vref1との電位差に応じた電圧をPWM回路182へ出力する。言い換えると、外部印加電圧Voutと第1基準電圧Vref1との電位差に応じた電圧をPWM回路182へ出力する。
【0132】
PWM回路182は、比較回路181から出力された電圧に応じてデューティの異なるパルス波形をドライブ回路183に出力する。具体的には、PWM回路182は、比較回路181から出力された電圧が大きい場合オンデューティの長いパルス波形を出力し、出力された電圧が小さい場合オンデューティの短いパルス波形を出力する。言い換えると、外部印加電圧Voutと第1基準電圧Vref1との電位差が大きい場合オンデューティの長いパルス波形を出力し、出力電圧Voutと第1基準電圧Vref1との電位差が小さい場合オンデューティの短いパルス波形を出力する。なお、パルス波形のオンの期間とは、パルス波形がアクティブの期間である。
【0133】
ドライブ回路183は、PWM回路182から出力されたパルス波形がアクティブの期間にスイッチング素子SWをオンし、PWM回路182から出力されたパルス波形が非アクティブの期間にスイッチング素子SWをオフする。
【0134】
スイッチング素子SWは、ドライブ回路183によりオン及びオフする。スイッチング素子SWがオンの間だけ、入力電圧VinがインダクタL及びコンデンサCを介して、出力端子184に外部印加電圧Voutとして出力される。よって、外部印加電圧Voutは0Vから徐々に20V(Vin)に近づいていく。この時、インダクタL及びコンデンサCに充電がなされる。インダクタLの両端には電圧が印加されている(充電されている)ので、その分だけ外部印加電圧Voutは入力電圧Vinより低い電位となる。
【0135】
外部印加電圧Voutが第1基準電圧Vref1に近づくにつれて、PWM回路182に入力される電圧は小さくなり、PWM回路182が出力するパルス信号のオンデューティは短くなる。
【0136】
するとスイッチング素子SWがオンする時間も短くなり、外部印加電圧Voutは緩やかに第1基準電圧Vref1に収束してゆく。
【0137】
最終的に、Vout=Vref1付近の電位でわずかに電圧変動しながら外部印加電圧Voutの電位が確定する。
【0138】
このように、可変電圧源170は、信号処理回路160から出力された第1基準電圧Vref1となるような外部印加電圧Voutを生成し、有機EL表示部110へ供給する。
【0139】
以上のように、vmax+vcalc−vmmを電圧降下分を補う電圧降下マージンとして、可変電圧源170から有機EL表示部110へ供給する外部印加電圧を増加させることにより、映像に応じて必要最小限の外部印加電圧を設定して消費電力を低減することができる。
【0140】
また、映像信号から算出した陽極側電源線網112の電圧分布から計算したモニタ箇所Mの電圧と、モニタ用配線190を介して電圧測定部180で測定されたモニタ箇所Mの電圧との差分を電圧マージンとして考慮することで、有機EL表示部110の経時的な変化に対応して電圧マージンを経時的に変更できる。よって、経時的な変化に対応して、消費電力を削減できる。
【0141】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置100は、二次元状に配置された複数の発光画素111を有する有機EL表示部110を備える表示装置であって、有機EL表示部110に陽極側電圧及び陰極側電圧を供給する可変電圧源170と、複数の発光画素111のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像信号に応じて、可変電圧源170が出力する陽極側電圧及び陰極側電圧を調整する電圧調整部(電圧降下量演算回路150及び信号処理回路160)とを備え、有機EL表示部110は、さらに、複数の発光画素111及び可変電圧源170に接続され、可変電圧源170から陽極側電圧及び陰極側電圧が供給される陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113を有し、表示装置100は、さらに、モニタ用の発光画素111Mに陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113を介して供給される電圧を測定する電圧測定部180を備え、電圧調整部(電圧降下量演算回路150及び信号処理回路160)は、映像信号から陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113に生じる電圧降下量の分布を算出し、算出した電圧降下量の分布からモニタ用の発光画素111Mにおける陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113の電圧を計算し、計算結果と電圧測定部180で測定された電圧とに基づき、陽極側電圧及び陰極側電圧を調整する。
【0142】
これにより、映像信号に応じて可変電圧源170から供給される陽極側電圧及び陰極側電圧を調整するので、高い消費電力低減効果を実現できる。例えば、
図6Aに示すように黒背景の中央に白窓が表示されている場合と、
図7Aに示すように黒背景の隅に白窓が表示されている場合とを比較すると、黒背景の隅に白窓が表示されている場合には、電圧降下量に伴う電圧上昇分のマージンを低く抑えることができる。つまり、有機EL表示部110内での電圧降下量の分布に基づき電圧を調整することにより、映像信号のピーク値が同じ、かつ、異なる画像の2つの映像信号が入力された場合にも、それぞれの映像信号に応じて外部印加電圧を調整する。よって、消費電力を削減できる。
【0143】
また、モニタ用の発光画素111Mに、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113を介して供給される陽極側電圧及び陰極側電圧を測定し、その測定結果と信号処理回路160での計算結果とに基づき外部印加電圧を調整するので、有機EL表示部110の経時的な変化に適切に対応することが可能となる。例えば、測定結果と計算結果とが実質的に等しい場合は、経時変化がないとみなし、測定結果及び計算結果のいずれかに基づき電圧を調整する。一方、測定結果と計算結果とが異なる場合は、経時変化があるとみなし、測定結果と計算結果とに対応する経時変化に基づき外部印加電圧を調整する。
【0144】
このように、本実施の形態に係る表示装置100は、経時的な変化に対応でき、かつ、消費電力を低減できる。
【0145】
また、本実施の形態に係る表示装置100は消費電力を削減できることにより発熱が抑えられるので、有機EL素子121の劣化を抑制できる。
【0146】
また、本実施の形態に係る表示装置100は、総電圧降下量の分布から、面内の発光画素111毎の電圧降下の最大値vmaxを計算し、計算した総電圧降下量の最大値vmaxを用いて、外部印加電圧を調整する。
【0147】
これにより、電圧不足による発光画素111の輝度の低下を防止できる。
【0148】
(実施の形態1の第1の変形例)
なお、本発明の表示装置において、温度変化に対応した電圧マージンの調整がなされることが望ましい。具体的には、有機EL表示部に温度センサが配置され、当該温度センサのモニタ値(計測温度)に応じて、例えば、電圧降下量演算回路が映像信号−画素電流間の変換テーブル(または変換式)を更新する。以下、温度変化を考慮した場合の表示装置について説明する。
【0149】
ます、実施の形態1に係る表示装置において、温度変化が生じた場合に想定される問題点について説明する。有機EL表示部の温度が変化すると、駆動トランジスタの移動度及び閾値電圧が変化し、また、有機EL素子の抵抗が変化する。例えば、温度が高くなると、駆動トランジスタの移動度が高くなり電流が流れやすくなる。また、有機EL素子も抵抗が低くなって電流が流れやすくなる。そうすると、電圧降下量演算回路が、映像信号を画素電流に変換する際に温度の影響を受けてエラーが発生する。例えば、有機EL表示部の温度が25℃で128階調という映像信号に対しては画素電流は1μAと変換されるが、当該温度が60℃では、同じ128階調でも、実際に流れる画素電流は1.2μAとなる。
【0150】
この温度による画素電流の変化を考慮せずに、以降の電圧降下計算フローに移行すると、実際には想定した以上の電流(約1.2倍)が流れているにもかかわらず、電圧降下量演算回路による画素電流算出フローでは25℃での電流値を算出してしまう。これにより、電圧降下量演算回路により算出された電圧降下量は、実際よりも低く見積られることになる(例えば、実際には2.4V電圧降下しているのに対し、上記算出フローでは2.0Vと算出される)。このとき、初期設定の電圧マージンが5Vであるとすると、電圧降下量の算出フローにて電圧降下量を2Vと算出していることから、表示装置は3V(5V−2V)の分、電源電圧を下げようと調整する。ところが、実際には2.4Vの電圧降下が発生しているので、3Vも電源電圧を下げると、0.4V分電源電圧を低く設定することとなり、結果的に駆動トランジスタの線形領域に突入してしまい、表示エラーが発生してしまう。本発明の表示装置は、上記問題を解消すべく、温度変化を考慮した構成を備え、温度変化を補償する動作を含ませることが可能である。
【0151】
図11は、本発明の実施の形態1の第1の変形例に係る表示装置の動作を示すフローチャートである。同図に記載された実施の形態1の第1の変形例に係るフローチャートは、
図8に記載された実施の形態1の具体例を示すフローチャートと比較して、ステップS11の動作のみが異なる。以下、
図8に記載されたフローチャートと同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0152】
まず、電圧降下量演算回路150は、状態a〜状態bの間に更新される1画素行の映像信号を入力する。
【0153】
次に、電圧降下量演算回路150は、保持している映像信号のマトリクスを更新する。
【0154】
次に、電圧降下量演算回路150は、表示装置100が備える温度センサの計測温度データを取得する(ステップS111)。
【0155】
次に、電圧降下量演算回路150は、取得した計測温度データに応じて、映像信号−画素電流間の変換テーブル(または変換式)を更新する(ステップS112)。つまり、電圧降下量演算回路150は、変換テーブル(または変換式)を、計測温度での駆動トランジスタの移動度及び閾値電圧及び有機EL素子の抵抗に対応した変換テーブル(または変換式)へと変更する。
【0156】
次に、電圧降下量演算回路150は、更新された映像信号のマトリクスと画素電流の変換式もしくは変換テーブルとを用いて、画素電流マトリクスを作成する。
【0157】
以上の動作フローにより、本発明の表示装置は、温度変化に影響されない高精度な電圧マージンの設定をすることが可能となる。
【0158】
また、本発明の実施の形態1に係る表示装置は、
図5及び
図8に記載された動作フローチャートに従い、映像信号マトリクス→画素電流マトリクス→電源線網の電圧分布→電圧降下量マトリクス作成→電圧マージン設定→可変電圧源の電源電圧調整、を実行するが、当該電圧マージンの設定精度を高めるために、画素電流マトリクス作成から電圧降下量マトリクス作成までの動作フローを複数回繰り返してもよい。
【0159】
(実施の形態1の第2の変形例)
上記実施の形態1では、信号処理回路160は、陽極側電源線網112の電圧分布及び陰極側電源線網113の電圧分布から計算したモニタ箇所Mの電圧と、電圧測定部180で測定されたモニタ箇所Mの電圧との差分を用いて、外部印加電圧を調整したが、外部印加電圧の調整はこれに限らない。例えば、信号処理回路160は、陽極側電源線網112の電圧分布及び陰極側電源線網113の電圧分布から計算したモニタ箇所Mの電圧と、電圧測定部180で測定されたモニタ箇所Mの電圧との比を用いて、外部印加電圧を調整してもよい。
【0160】
図12は、本変形例における、印加電圧を制御する処理(ステップS18)の具体的な処理の流れを示すフローチャートである。なお、同図に示す処理は、信号処理回路160により実行される。
【0161】
まず、面内の最大電圧降下量を検出し(ステップS31)する。この処理は、
図9で説明した面内の最大電圧降下量を検出する処理(ステップS21)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0162】
次に、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)で計算されたモニタ箇所Mの電圧と、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)で測定されたモニタ箇所Mの電圧との比を算出する(ステップS32)。具体的には、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)で測定されたモニタ箇所Mの電圧を、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)で計算されたモニタ箇所Mの電圧で割った値であるvmm/vcalcが比として算出される。
【0163】
次に、最大電圧降下量を検出する処理(ステップS31)で検出された電圧降下の最大値vmaxと、比を算出する処理(ステップS32)で算出された比vmm/vcalcとから、可変電圧源170から出力される外部印加電圧の電圧マージンを決定する(ステップS33)。具体的には、電圧降下の最大値vmaxを、比vmm/vcalcで割った値である、vmax/(vmm/vcalc)を電圧マージンと決定する。つまり、本実施の形態に係る表示装置100は、有機EL表示部110の経時的な変化に相当する差分を考慮して電圧マージンを決定する。よって、本変形例に係る表示装置も、実施の形態1に係る表示装置100と同様に、経時的な変化に応じて外部印加電圧を調整できる。
【0164】
最後に、決定した電圧マージンvmax/(vmm/vcalc)に基づき、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を決定する(ステップS34)。具体的には、信号処理回路160は、外部印加電圧をVEL+VTFT+vmax/(vmm/vcalc)と決定する。そして、決定した外部印加電圧を可変電圧源170に指示する。それにより、可変電圧源170は電圧マージンを加算した電圧を有機EL表示部110へ供給する。
【0165】
このように、本変形例に係る表示装置は、陽極側電源線網112の電圧分布及び陰極側電源線網113の電圧分布から計算したモニタ箇所Mの電圧と、電圧測定部180で測定されたモニタ箇所Mの電圧との比を用いて、外部印加電圧を調整する。
【0166】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態1において、映像に応じた電圧降下量を計算することで必要最小限の外部印加電圧を設定して消費電力を低減することができる方式を示したが、例えば水平1920画素、垂直1080画素を有する有機ELディスプレイの場合には、1920×1080個の1次連立方程式を陽極側と陰極側で各々解く必要があるために、計算回路が非常に大きくなりコスト高である課題がある。
【0167】
本発明の実施の形態2では、本課題を鑑みて各画素をブロック化して計算量を大幅に低減する方式について説明する。具体的には、本実施の形態では、電圧調整部は、複数の発光画素を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られる複数の発光画素からなるブロック毎に電圧降下量の分布を算出する。
【0168】
なお、本実施の形態に係る表示装置の構成は、実施の形態1に係る表示装置100の構成とほぼ同じであり、電圧降下量演算回路の機能が異なる。
【0169】
図13は、本実施の形態に係る表示装置の動作を示すフローチャートである。
【0170】
まず、電圧降下量演算回路150は、予め設定される映像信号の画素電流の変換式もしくは変換テーブルを用いて、映像信号から発光画素毎に流れる電流を算出する(ステップS41)。なお、この発光画素毎に流れる電流を算出する処理(ステップS41)は、実施の形態1で説明した発光画素毎に流れる電流を算出する処理(ステップS11)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0171】
次に、電圧降下量演算回路150は、メモリ155からブロック化した陽極側電源線網112の水平抵抗成分Rah1及び垂直抵抗成分Rav1、ならびに、陰極側電源線網113の水平抵抗成分Rch1及び垂直抵抗成分Rcv1を取得する(ステップS42)。
【0172】
次に、電圧降下量演算回路150は、ブロック化したブロック毎にブロック電流を計算して、抵抗線網モデルを作成する(ステップS43)。ここで、ブロック化した場合の抵抗線網のモデルについて説明する。
【0173】
図14は、水平1920画素、垂直1080画素を有する有機EL表示部110において、水平120画素、垂直120画素を1ブロックとした場合の陽極側電源線網112のモデルを模式的に示す図である。
【0174】
各ブロックは水平抵抗成分Rah1と垂直抵抗成分Rav1とによって上下左右の隣接ブロックと各々接続されており、周縁部は外部印加電圧が加えられる陽極側電極に接続される。言い換えると、水平抵抗成分Rah1と垂直抵抗成分Rav1との交点に、1ブロック(120×120画素)が配置されているとみなす。
【0175】
次に、電圧降下量演算回路150は、
図14に示すようにブロック化した陽極側電源線網112の電圧分布を計算する(ステップS44)。
【0176】
ここで、ブロック化した陽極側電源線網112の電圧分布の計算手順について説明する。
【0177】
まず、電圧降下量演算回路150は、各ブロック毎に画素電流を合計してブロック電流を計算する。
【0178】
次にブロック座標(h,v)における陽極側電源線電圧の降下量をva1(h,v)、ブロック電流をi1(h,v)とおくと、ブロック座標(h,v)における電流に関して次の式2が導出される。
【0179】
Rah1×{va1(h−1,v)−va1(h,v)}+Rah1×{va1(h+1,v)−va1(h,v)}+Rav1×{va1(h,v−1)−va1(h,v)}+Rav1×{va1(h,v+1)−va1(h,v)}=i1(h,v)・・・(式2)
【0180】
ただし、hは1から16までの整数であり、vは1から9までの整数である。また、va1(0,v)およびva1(17,v)、va1(h,0)、va1(h,10)は可変電圧源170から有機EL表示部110までの配線で生じる電圧降下量であり十分小さいので0と近似できる。また、Rah1はブロック化した陽極側電源線網112の水平抵抗成分(アドミッタンス)、Rav1はブロック化した陽極側電源線網112の垂直抵抗成分(アドミッタンス)である。
【0181】
式2を各ブロックにおいて導出すると16×9個の未知の変数va1(h,v)に対する16×9個の1次連立方程式が得られる。よって、この1次連立方程式を解くことで、水平120画素、垂直120画素を1ブロックとしてモデル化した場合の、各ブロックにおける陽極側電源線網112の電圧の降下量va1(h,v)を得ることができる。つまり、ブロック化したブロック(水平120画素、垂直120画素)毎に陽極側電源線網112の電圧分布を算出できる。
【0182】
同様に、陰極側電源線網113に対して連立方程式を得てこれを解くことで、水平120画素、垂直120画素を1ブロックとしてモデル化した場合の、各ブロックにおける陰極側電源線網113の電圧の降下量vc1(h,v)を得ることができる。つまり、ブロック化したブロック毎(水平120画素、垂直120画素)毎に陰極側電源線網113の電圧分布を計算する(ステップS45)。
【0183】
次に、信号処理回路160は、陽極側電源線網112の電圧降下量va1(h,v)と、陰極側電源線網113の電圧降下量vc1(h,v)とから、モニタ箇所Mの電圧を計算する(ステップS46)。具体的には、本実施の形態ではモニタ箇所Mが属するブロックの電圧を計算する。つまり、ブロック座標(8,5)の電圧を計算する。そして、信号処理回路160は、可変電圧源170が出力している陽極側電圧から、モニタ箇所Mが属するブロックの電圧降下量va1(8,5)を減算することにより、モニタ箇所Mの電圧を計算する。言い換えると、有機EL素子121に必要な電圧をVEL、駆動トランジスタ125に必要な電圧をVTFTとすると、VEL+VTFTに映像信号から計算されたモニタ箇所Mが属するブロックの電圧降下量va1(8,5)を加算した電圧であるVEL+VTFT+va1(8,5)をモニタ箇所Mの電圧とする。
【0184】
一方、電圧測定部180は、モニタ用配線190を介してモニタ箇所Mの電圧を測定する(ステップS47)。
【0185】
最後に、信号処理回路160は、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS46)で計算されたモニタ箇所Mの電圧と、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS47)で測定されたモニタ箇所Mの電圧とに基づき、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する(ステップS48)。具体的には、信号処理回路160は、モニタ箇所Mの電圧を計算する処理(ステップS16)で計算されたモニタ箇所Mの電圧と、モニタ箇所Mの電圧を測定する処理(ステップS17)で測定されたモニタ箇所Mの電圧と、算出した差分と総電圧降下量の分布の最大値とから、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する。
【0186】
なお、この印加電圧を制御する処理(ステップS48)の詳細な処理は、
図9で説明した処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、実施の形態1の変形例と同様、陽極側電源線網112の電圧分布及び陰極側電源線網113の電圧分布から計算したモニタ箇所Mが属するブロックの電圧と、電圧測定部180で測定されたモニタ箇所Mの電圧との比を用いて、外部印加電圧を調整してもよい。
【0187】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置と比較して、複数の発光画素111を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られる複数の発光画素111からなるブロック毎に電圧降下量の分布を算出する点が異なる。
【0188】
これにより、本実施の形態に係る表示装置は、計算量を大幅に低減することができるので、計算回路を省スペースで設計でき、低コスト化できる。
【0189】
なお、上記実施の形態では、1ブロックを水平120画素、垂直120画素としたが、1ブロックに含まれる発光画素111の数はこれに限らず、例えば水平60画素、垂直60画素でもよい。
【0190】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置100とほぼ同じであるが、電圧測定部180を備えず、モニタ箇所Mの電圧が可変電圧源に入力される点が異なる。これにより、本実施の形態に係る表示装置は、電圧降下量に応じてリアルタイムに可変電圧源の外部印加電圧Voutを調整できるので、実施の形態1と比較して、画素輝度の一時的な低下を防止できる。また、信号処理回路での計算量を低減することができるので、計算回路を省スペースで設計でき、低コスト化できる。
【0191】
図15は、本実施の形態に係る表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【0192】
同図に示す本実施の形態に係る表示装置300は、
図1に示した実施の形態1に係る表示装置100と比較して、電圧測定部180を備えず、モニタ用配線190に代わりモニタ用配線390を備え、信号処理回路160に代わり信号処理回路360を備え、可変電圧源170に代わり可変電圧源370を備える点が異なる。
【0193】
信号処理回路360は、電圧降下量演算回路150から出力された陽極側電源線網112の電圧降下分布及び陰極側電源線網113の電圧降下分布から、可変電圧源370に出力する第2基準電圧Vref2の電圧を決定する。具体的には、信号処理回路360は、有機EL素子121に必要な電圧をVEL、駆動トランジスタ125に必要な電圧をVTFTとすると、VEL+VTFTに映像信号から計算されたモニタ箇所Mの電圧降下量va(960,540)を加算した電圧であるVEL+VTFT+va(960,540)を第2基準電圧Vref2の電圧とする。つまり、計算により得られたモニタ箇所Mの電圧vcalを第2基準電圧Vref2とする。
【0194】
このように、本実施の形態に係る表示装置300の信号処理回路360が可変電圧源370に出力する第2基準電圧Vref2は、実施の形態1に係る表示装置100の信号処理回路160が可変電圧源170に出力する第1基準電圧Vref1と異なり、映像信号のみに対応して決定される電圧である。つまり、第2基準電圧Vref2は、実際のモニタ箇所Mの電圧Vmmに依存しない。
【0195】
可変電圧源370は、モニタ用の発光画素111Mに印加される陽極側電源線網112の電圧を、モニタ用配線390を介して測定する。つまり、モニタ箇所Mの電圧を測定する。そして、測定したモニタ箇所Mの電圧と、信号処理回路360から出力された第2基準電圧Vref2とに応じて、外部印加電圧Voutを調整する。
【0196】
モニタ用配線390は、一端がモニタ箇所Mに接続され、他端が可変電圧源370に接続され、モニタ箇所Mの電圧を可変電圧源370に伝達する。
【0197】
図16は、可変電圧源370の具体的な構成の一例を示すブロック図である。なお、同図には可変電圧源370に接続されている有機EL表示部110及び信号処理回路360も示されている。
【0198】
同図に示す可変電圧源370は、
図10に示した可変電圧源170の構成とほぼ同じであるが、比較回路181に代わり、モニタ箇所Mの電圧と第2基準電圧Vref2とを比較する比較回路281を備える点が異なる。
【0199】
ここで、モニタ箇所Mの電圧の実測値をVmmとすると、比較回路281はVref2とVmmとを比較している。上述したように、Vref2=vcalcなので、比較回路281はvcalcとvmmとを比較していると言える。モニタ箇所Mの電圧の実測値Vmm及び第2基準電圧Vref2は、例えば、可変電圧源170の接地端子を基準とする電圧である。
【0200】
一方、実施の形態1において、比較回路181はVref1とVoutとを比較している。上述したようにVref1=VEL+VTFT+vmax+vcalc−vmmであり、VoutはVEL+VTFT+vmaxとみなせるので、実施の形態1において、比較回路181はVEL+VTFT+vmax+vcalc−vmmとVEL+VTFT+vmaxとを比較していると言える。
【0201】
よって、比較回路281は、比較回路181と比較対象が異なるが、比較結果は同じである。つまり、実施の形態1と実施の形態3とで、可変電圧源370の出力端子184からモニタ箇所Mまでの電圧降下量が等しい場合、比較回路181がPWM回路に出力する電圧と、比較回路281がPWM回路に出力する電圧とは同じである。その結果、可変電圧源170の外部印加電圧Voutと可変電圧源370の外部印加電圧Voutとは等しくなる。
【0202】
つまり、本実施の形態に係る表示装置300は、映像信号から算出した陽極側電源線網112の電圧分布から計算したモニタ箇所Mの電圧と、モニタ用配線390を介して出力検出部185で測定されたモニタ箇所Mの電圧との差分を電圧マージンとして考慮することで、有機EL表示部110の経時的な変化に対応して電圧マージンを経時的に変更できる。よって、本実施の形態に係る表示装置300は、実施の形態1に係る表示装置100と同様に、経時的な変化に対応して、消費電力を削減できるという効果を奏する。
【0203】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置300は、実施の形態1に係る表示装置100とほぼ同じであるが、電圧測定部180を備えず、モニタ箇所Mの電圧が可変電圧源に入力される点が異なる。これにより、本実施の形態に係る表示装置300は、電圧降下量に応じてリアルタイムに可変電圧源370の外部印加電圧Voutを調整できるので、実施の形態1と比較して、画素輝度の一時的な低下を防止できる。また、信号処理回路360での計算量を低減することができるので、計算回路を省スペースで設計でき、低コスト化できる。
【0204】
なお、本実施の形態において、電圧降下量演算回路150と、信号処理回路360と、可変電圧源370が有するPWM回路182、ドライブ回路183及び誤差増幅器186は、電圧調整部の一例である。また、スイッチング素子SW、ダイオードD、インダクタL及びコンデンサCは電圧源の一例である、出力検出部185は電圧測定部の一例である。
【0205】
以上、本発明に係る表示装置について実施の形態及び変形例に基づき説明したが、本発明に係る表示装置は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではない。実施の形態1〜3及び実施の形態1の変形例に対して、本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る表示装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0206】
例えば、本発明に係る表示装置は、
図17に記載されたような薄型フラットTVに内蔵される。本発明に係る表示装置が内蔵されることにより、映像信号を反映した高精度な画像表示が可能な薄型フラットTVが実現される。
【0207】
また、上記各実施の形態では、陽極側電源線網112の発光画素111毎の電圧降下量と、陰極側電源線網113の発光画素111毎の電圧降下量とを、複数の発光画素111に対応して合計し、合計した総電圧降下量の最大値vmaxを用いて外部印加電圧を調整した。これに対し、陽極側電源線網112の発光画素111毎の電圧降下量の最大値と、陰極側電源線網113の発光画素111毎の電圧降下量の最大値とそれぞれ算出し、算出した陽極側電源線網112の電圧降下量の最大値と陰極側電源線網113の電圧降下量の最大値との合計値を用いて、外部印加電圧を調整してもよい。
【0208】
これにより、複数の電源線(陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113)を含む場合にも、電圧不足による発光画素111の輝度の低下を防止できる。
【0209】
言い換えると、陽極側電源線網112の発光画素111毎の電圧降下量の最大値をvamaxと、陰極側電源線網113の発光画素111毎の電圧降下量の最大値をvcmaxとは、総電圧降下量の最大値vmaxと比較して、vmax≦|vamax|+|vcmax|の関係が成り立つ。これにより、陽極側電源線網112の電圧降下量の最大値vamaxと陰極側電源線網113の電圧降下量の最大値vcmaxとを用いて外部印加電圧を調整しても、電圧降下量を過少に見積ることはないので、表示画像に弊害は生じない。
【0210】
また、上記実施の形態2では、1つのブロックに含まれる複数の発光画素111は、水平方向(列方向)と垂直方向(行方向)とで同数であったが、水平方向の発光画素111の数と垂直方向の発光画素111の数とが異なっていてもよい。
【0211】
また、上記各実施の形態では、可変電圧源から出力される陽極側電圧及び陰極側電圧のいずれも調整したが、いずれか一方の電圧を調整してもよい。
【0212】
また、上記各実施の形態では、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布と陰極側電源線網113の電圧降下量の分布とを推定して外部印加電圧を調整したが、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布及び陰極側電源線網113の電圧降下量の分布の一方を推定し、推定した一方の電圧降下量の分布に基づき外部印加電圧を調整してもよい。
【0213】
また、上記実施の形態においては、モニタ箇所Mは陽極側電源線網112にあったが、陰極側電源線網113にあってもよいし、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113の両方にあってもよい。
【0214】
また、上記実施の形態においては、スイッチトランジスタ124及び駆動トランジスタ125をP型トランジスタとして記載したが、これらをN型トランジスタで構成してもよい。
【0215】
また、スイッチトランジスタ124及び駆動トランジスタ125は、TFTであるとしたが、その他の電界効果トランジスタであってもよい。
【0216】
また、上記実施の形態に係る表示装置に含まれる処理部は、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。なお、表示装置100に含まれる処理部の一部を、有機EL表示部110と同一の基板上に集積することも可能である。また、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0217】
また、本発明の実施の形態に係る表示装置に含まれるデータ線駆動回路、書込走査駆動回路、制御回路、電圧降下量演算回路、信号処理回路の機能の一部を、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。また、本発明は、表示装置100が備える各処理部により実現される特徴的なステップを含む表示装置の駆動方法として実現してもよい。
【0218】
また、上記説明では、表示装置がアクティブマトリクス型の有機EL表示装置である場合を例に述べたが、本発明を、アクティブマトリクス型以外の有機EL表示装置に適用してもよいし、電流駆動型の発光素子を用いた有機EL表示装置以外の表示装置、例えば液晶表示装置に適用してもよい。
【0219】
また、実施の形態1では、電圧降下量演算回路150が陽極側電源線網112の電圧の降下量の分布と陰極側電源線網113の電圧の降下量の分布とを算出し、信号処理回路160がこれらの降下量の分布からモニタ箇所Mの電圧降下量及び最大電圧降下量を算出したが、これは電圧降下量演算回路150が算出してもよい。