特許第5788877号(P5788877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788877トリクロロシランを製造するための設備および方法
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  • 特許5788877-トリクロロシランを製造するための設備および方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788877
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】トリクロロシランを製造するための設備および方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   C01B33/107 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-523311(P2012-523311)
(86)(22)【出願日】2010年8月2日
(65)【公表番号】特表2013-500928(P2013-500928A)
(43)【公表日】2013年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2010061224
(87)【国際公開番号】WO2011015560
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】102009037155.9
(32)【優先日】2009年8月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510261201
【氏名又は名称】シュミット シリコン テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】アドルフ ペトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘム ハーン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュミット
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−194207(JP,A)
【文献】 特開平02−145413(JP,A)
【文献】 特開昭57−017415(JP,A)
【文献】 特開昭57−118017(JP,A)
【文献】 特開2009−007240(JP,A)
【文献】 特開昭57−156318(JP,A)
【文献】 特開昭59−045920(JP,A)
【文献】 特開平09−235114(JP,A)
【文献】 特開平10−029813(JP,A)
【文献】 特表2008−513325(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0047793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリクロロシランを製造するための方法であって、四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素のための少なくとも1つの入口(103)、四塩化ケイ素および水素とともに流動床を形成するシリコン粒子のための少なくとも1つの入口(105)、およびトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口(117)とその前にある特定の最大粒径以下のシリコン粒子のみが選択的に通過することができる少なくとも1つの粒子分離機(118)とを備えている流動床反応器(101)中で、シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素とともに反応されて第1のトリクロロシラン含有生成物ガス流を形成し、前記の最大粒径より大きい粒径を有するシリコン粒子を含むシリコン粒子が粒子分離機(118)なしに少なくとも1つのさらなる出口(109、112)を通って連続的に反応器(101)から排出されて第2の反応器(102)に移され、第2の反応器(102)中でシリコン粒子が第2のトリクロロシラン含有反応生成物ガス流を形成し、第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流が上流の流動床反応器に再循環されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記シリコン粒子が流動床の流動区域から直接取り出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記排出されたシリコン粒子が第2の反応器(102)である第2の流動床反応器に移されて、そこでシリコン粒子が四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素と反応されて第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記排出されたシリコン粒子が反応される第2の反応器(102)での反応条件が、粒子分離機なしに、少なくとも1つのさらなる出口(109、112)を有する上流の流動床反応器(101)中の条件とは異なることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法
【請求項5】
トリクロロシランを製造するための、シリコン粒子と四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素とを反応させて第1のトリクロロシラン含有反応生成物ガス流を与えるための流動床反応器として構成される第1の反応器(101)およびシリコン粒子と四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素とを反応させて第2のトリクロロシラン含有反応生成物ガス流を与えるための第2の反応器(102)を有する設備であって、前記第1の反応器(101)が
・四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素のための少なくとも1つの入口(103)、
・シリコン粒子のための少なくとも1つの入口(105)、
・前記シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素とともに流動床を形成し得る1つの反応空間(106)、
・第1のトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口(117)とその前にある選択的に特定の最大粒径以下のシリコン粒子のみが選択的に通過することができる少なくとも1つの粒子分離機(118)、および
・そのような粒子分離機なしに、前記の最大粒径より大きい粒径を有するシリコン粒子を含むシリコン粒子が反応器(101)から排出され得る少なくとも1つのさらなる出口(109、112)を備えていて、第2の反応器(102)が、
・シリコン粒子のための少なくとも1つの入口(111)、
・前記シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素とともに流動床を形成し得る1つの反応空間、および
・第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口(114)を備えている設備であって、第1の反応器(101)の少なくとも1つのさらなる出口(109、112)と第2の反応器(102)のシリコン粒子のための少なくとも1つの入口(111)との間に接続(110)があり、その接続によって第1の反応器(101)から排出されたシリコン粒子が第2の反応器(102)に移され得て、第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流が上流の流動床反応器に接続管(115)を通って再循環される、前記設備。
【請求項6】
前記少なくとも1つの粒子分離機(118)が1つ以上のサイクロンであることを特徴とする請求項5に記載の設備。
【請求項7】
前記第1の反応器(101)と前記第2の反応器(102)との間に少なくとも1つのさらなる接続(115)があり、この接続を通って第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流を前記第1の反応器(101)に導入できることを特徴とする請求項5又は6に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器中でシリコン粒子とテトラクロロシランおよび水素との好適には触媒反応によるトリクロロシランを製造するための方法およびそのような方法を実施し得る設備に関する。
【0002】
一般的に知られているように、トリクロロシランは太陽電池用途にとってそして半導体技術にとって、そしてまた有機ケイ素化学において必要な高純度シリコンの製造における価値のある中間体である。それゆえ、例えば、いまだに比較的高い比率の不純物を有する金属シリコンをトリクロロシランに変換し、続いてトリクロロシランを水で還元して高純度シリコンができる。そのような方法は、例えばドイツ特許第2919086号により公知である。あるいは、高純度シリコンは例えばドイツ特許第3311650号に記載されているように、モノシランの熱的分解によっても得ることができる。この目的のために必要なモノシランは、今度は特にトリクロロシランの不均化によって得ることができる。
【0003】
トリクロロシランの合成は、特に2つの反応経路、すなわち、金属シリコンの塩化水素との直接反応(塩化水素化変異)と、次に四塩化ケイ素と金属シリコンおよび水素との反応(水素化変異)によって行うことができる。
【0004】
前記の水素化変異は、特に、モノシランを形成するためのトリクロロシランの不均化における副生成物として必須の四塩化ケイ素が必然的に形成される(ポリシリコンを製造するための実質的に全ての方法で見られる)ので、広く行き渡っている。合成鎖:Si+SiCl+H→SiHCl→SiH+SiCl→Siの全収率は、当然ながら不均化で形成された四塩化ケイ素を反応経路にフィードバックすることによって顕著に増加し得る。
【0005】
前記のトリクロロシランを形成する四塩化ケイ素と金属シリコンおよび水素との反応は、好適には流動床反応器中で実施される。適した流動床反応器は、例えばドイツ特許第19647162号により公知である。そのような反応器は、一般的に反応空間に水素ガスおよびガス状四塩化ケイ素を供給し得る分配プレートを反応空間の下層領域を備えた反応空間を有している。シリコン粒子は適した入口を通って反応空間に直接供給され得る。シリコン粒子は水素およびガス状四塩化ケイ素からなる上方流動のガス混合物によって流動状態にされ、そして流動床を形成する。
【0006】
流動床で形成されたトリクロロシラン(そして恐らく他の反応生成物)は一般的に流動床反応器の上層領域中の出口を通って反応器から排出される。ここでの問題は、特に高いガス速度では、微細なシリコン粒子がガスによって流動床から常に運び出され、そしてトリクロロシラン含有生成物ガス流とともに反応器から出るということである。この損失が過度になることを防ぐために、トリクロロシランの合成のための流動床反応器は一般的にサイクロンのような粒子分離機を備えている。適したサイクロンは、一般的にガス入口、ガス出口、粒子重力出口および粒子排出管を有するサイクロン本体を有し、粒子排出管の上部末端はサイクロン本体の粒子重力出口に通じている。通常は、ダストファネルがサイクロンと粒子排出管の間に用いられる。
【0007】
サイクロン本体、ダストファネルおよび粒子排出管は一般的に流動床反応器の反応空間中に、サイクロン本体が反応空間の上方部に、理想的には反応空間中に形成される流動床の上に位置するように配置されている。一方、粒子排出管の下方部は、好適には流動床に突き出ている。
【0008】
そのような流動床反応器の典型的な運転状態において、反応空間に導入されるシリコン粒子の平均粒径は約100〜400μmの範囲内である。しかし、進行中の運転では粒子の粒径が小さくなり、そして例えば10μm未満の粒径を有する粒子が増加する。粒径が特定の粒径(正確な粒径は粒子の密度、流動床反応器中での流速などのようなパラメーターに依存する)未満になるや否や、そのような粒径を有する粒子はトリクロロシラン含有生成物ガス流中に同伴されそしてサイクロンのサイクロン本体に入る。サイクロン本体内では、特定の(一般的に調整可能である)粒径より大きい全てのシリコン粒子は生成物ガス流から分離されそしてサイクロン本体の粒子重力出口を通って粒子排出管に入る。これにより、大きい粒子は流動床に直接再循環され得る。他方、微細な粒子はサイクロンを通過し、そしてフィルター又は他の手段を用いて後の工程でトリクロロシラン含有生成物ガス流から複雑な方法で分離する必要がある。
【0009】
そのような流動床反応器中で起こるさらなる問題は、粒子状で導入される金属シリコンが流動床反応器中での支配的な反応条件下でガス状四塩化ケイ素および水素と反応するとしても非常にゆっくりでのみ反応する一定の割合の「不活性」又は「イナート」シリコン粒子を常に有しているということである。これが、例えばシリコン粒子が四塩化ケイ素および水素の蒸気/ガス混合物から粒子の反応性部分を遮る強く酸化された表面を有する場合の事例である。長期運転においては、流動床におけるそのような粒子の濃度は時とともに増加し、そして用いられる流動床反応器の効率に大きな影響を及ぼす。それゆえ、流動床反応器の運転を一定の間隔で中断しそして存在している前記シリコンの分量を部分的あるいは全部置き換えることが必要である。
【0010】
別の方法として、実際に出ざるを得ない粒子よりも多く且つ大きい粒子が流動床反応器中に設置された粒子分離機によって生成物ガス流とともに反応器から出ることを可能にすることによって、流動床中の不活性粒子の濃度を低く保つための試みがなされた。前述のように、サイクロンのような粒子分離機の選択性は一般的に変え得る。
【0011】
しかしながら、結果として、続いてのトリクロロシラン含有生成物ガス流から粒子を除去する費用が顕著に増加する。さらに、使用した金属シリコンについての全反応収率は当然ながら著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ特許第2919086号公報
【特許文献2】ドイツ特許第3311650号公報
【特許文献3】ドイツ特許第19647162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記問題が起こらないか又は少なくともほとんど避けられるトリクロロシランの製造に対する技術的な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、トリクロロシランを製造するための方法であって、四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素のための少なくとも1つの入口(103)、四塩化ケイ素および水素とともに流動床を形成するシリコン粒子のための少なくとも1つの入口(105)、およびトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口(117)とその前にある特定の最大粒径以下のシリコン粒子のみが選択的に通過することができる少なくとも1つの粒子分離機(118)とを備えている流動床反応器(101)中で、シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素とともに反応されて第1のトリクロロシラン含有生成物ガス流を形成し、前記の最大粒径より大きい粒径を有するシリコン粒子を含むシリコン粒子が粒子分離機(118)なしに少なくとも1つのさらなる出口(109、112)を通って連続的に反応器(101)から排出されて第2の反応器(102)に移され、第2の反応器(102)中でシリコン粒子が第2のトリクロロシラン含有反応生成物ガス流を形成し、前記第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流が上流の流動床反応器に再循環されることを特徴とする、前記方法、および
トリクロロシランを製造するための、シリコン粒子と四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素とを反応させて第1のトリクロロシラン含有反応生成物ガス流を与えるための流動床反応器として構成される第1の反応器(101)およびシリコン粒子と四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素とを反応させて第2のトリクロロシラン含有反応生成物ガス流を与えるための第2の反応器(102)を有する設備であって、前記第1の反応器(101)が
・四塩化ケイ素および水素又は四塩化ケイ素および水素および塩化水素のための少なくとも1つの入口(103)、
・シリコン粒子のための少なくとも1つの入口(105)、
・前記シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素とともに流動床を形成し得る1つの反応空間(106)、
・第1のトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口(117)とその前にある選択的に特定の最大粒径以下のシリコン粒子のみが選択的に通過することができる少なくとも1つの粒子分離機(118)、および
・そのような粒子分離機なしに、前記の最大粒径より大きい粒径を有するシリコン粒子を含むシリコン粒子が反応器(101)から排出され得る少なくとも1つのさらなる出口(109、112)を備えていて、第2の反応器(102)が、
・シリコン粒子のための少なくとも1つの入口(111)、
・前記シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素とともに流動床を形成し得る1つの反応空間、および
・第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口(114)を備えている設備であって、第1の反応器(101)の少なくとも1つのさらなる出口(109、112)と第2の反応器(102)のシリコン粒子のための少なくとも1つの入口(111)との間に接続(110)があり、その接続によって第1の反応器(101)から排出されたシリコン粒子が第2の反応器(102)に移され得て、第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流が上流の流動床反応器に接続管(115)を通って再循環される、前記設備によって達成される。
本発明の方法の好適な実施態様は、従属する請求項2〜4に規定されている。本発明の設備の好適な実施態様は、従属する請求項6および7に規定されている。全ての請求項に係る表現は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1流動床反応器および第2流動床反応器を有する本発明による設備の好適な実施態様の構造を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に言及した一般的な方法のほとんどと同様に、反応器の中でシリコン粒子がテトラクロロシランおよび水素および任意的に塩化水素と反応してトリクロロシラン含有生成物ガス流を形成する流動床反応器を使用する。塩化水素の存在は一般的に必須というわけではないが、特に反応器を始動するときに好ましい効果を有し得る。
【0017】
使用される流動床反応器は特にテトラクロロシランおよび水素からなる2成分の蒸気/ガス混合物、さらに適切な場合に塩化水素のための少なくとも1つの入口とシリコン粒子のための少なくとも1つの入口を有している。テトラクロロシランおよび水素のための少なくとも1つの入口は、好適にはテトラクロロシランおよび水素が流動床反応器内の上方に流れ得るように流動床反応器の底部領域中に配置される。その結果、反応器に導入されるシリコン粒子はテトラクロロシランおよび水素とともに流動床を形成し得る。
【0018】
本発明の方法の好適な実施態様において、シリコン粒子のテトラクロロシランおよび水素および任意に塩化水素との反応は触媒条件下に起こる。可能性がある触媒は、特に鉄および/又は銅含有触媒であり、後者を用いることが好適である。適した鉄含有触媒は、例えば金属鉄であり、そして適した銅含有触媒は金属銅(例えば銅粉末又は銅薄片の形状で)又は銅化合物である。触媒はシリコン粒子と別々に流動床反応器に導入されるか又は前もってシリコン粒子と混合され得る。
【0019】
さらに、使用される流動床反応器は、トリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口を有している。最初に述べたように、そのようなトリクロロシラン含有生成物ガス流は一般的に常に小径のシリコン粒子を含有している。このため、特定の最大粒径以下のシリコン粒子のみが選択的に通過することができる少なくとも1つの粒子分離機が、本発明の目的のために用いられる流動床反応器中、トリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口の上流に取付けられる。この最大粒径は、一般的に使用される粒子分離機に依存し、調整可能である。それゆえ、使用される粒子分離機は、例えば遠心分離機、特にサイクロンであり得る。これらの分離機において、どの粒子が分離されるべきどんな粒径を有しそしてどの粒子が分離機を通過することを許されるかは一般的に正確に設定され得る。
【0020】
特に、本発明による方法は、シリコン粒子が少なくとも1つのさらなる出口を通って、好適には一定間隔であるいは連続的に反応器から排出され、そのような選択的に作動する粒子分離機がこの少なくとも1つのさらなる出口の上流には設置されないということを特徴とする。従って、前記の少なくとも1つのさらなる出口は、上述の最大粒径より大きい粒径を有するシリコン粒子を含むシリコン粒子が通過することを可能とする。
【0021】
最初に述べたように、トリクロロシランを製造するための流動床反応器は、不活性シリコン粒子が反応器内に蓄積しそしてそれゆえ反応器の効率が低下する問題を抱えることが多い。シリコン粒子の的を絞った排出は、一般的にシリコン粒子のための少なくとも1つの入口を通る新たなシリコン粒子によって迅速に置き換えられて、そのような不活性な粒子の蓄積を効果的に防止し得る。
【0022】
シリコン粒子は、特に好適には流動床反応器中の流動床の流動区域から直接取り除かれる。また、本発明によるこの場合、水素および四塩化ケイ素および適切な場合に塩化水素は好適には流動床反応器の底部領域中に供給される。この底部領域より上方では、流動床が形成される。これは一般的に明確な下部境界を有している。上方向では、流動区域が、特に流動床が固定流動床である場合、比較的明白な境界を有し得る。そして、流動床の流動区域は上部境界と下部境界との間の部分である。他方、流動床が循環流動床であると、流動床の流動区域は、水素および四塩化ケイ素と適切な場合に塩化水素の大きな流速のため、明確な上部境界を最早有しないことがしばしばある。
【0023】
本発明の方法の特に好適な実施態様において、排出されたシリコン粒子は、特に好適には第2の流動床反応器である第2の反応器に移される。そこで、シリコン粒子は四塩化ケイ素および水素と任意に塩化水素と再度反応されてトリクロロシラン含有生成物ガス流を形成する。粒子分離機を有する出口を通って反応器から排出されるシリコン粒子とは対照的に、少なくとも1つの更なる出口を通って的を絞った方法で排出される粒子はそれゆえさらに利用される。これは、本発明の方法の全収率にプラスの貢献をもたらす。
【0024】
第2の反応器中で形成されたトリクロロシラン含有生成物ガス流は、原理上精製されそして第1の反応器中で形成された生成物ガス流とは完全に別個にさらに処理され得る。しかしながら、第2の反応器からのトリクロロシラン含有生成物ガス流が上流の(第1の)流動床反応器に再循環されることが特に好適である。これは、構造の観点から第2の反応器を非常に簡易にすることを可能とする。それゆえ、例えば、第2の反応器中には個別の粒子分離機は必要ではない。代わりに、第2の反応器からのトリクロロシラン含有生成物ガス流は、上流の流動床反応器からのトリクロロシラン含有生成物ガス流と混合され得る。次いで、混合された生成物ガス流は、第1の流動床反応器中の少なくとも1つの粒子分離機を通過する。
【0025】
第1の流動床反応器から第2の反応器に移される不活性粒子を再び第2の反応器中で反応させそしてそこで蓄積させないために、排出されたシリコン粒子が第2の反応器中で反応される反応条件は、好適には上流の流動床反応器における反応条件とは異なる。これは温度および/又は圧力の反応パラメーターに関する限り特に当てはまる。前記第2の反応器が第1の反応器よりも高い温度で運転されることが特に好適である。
【0026】
さらに、第2の反応器中で不活性粒子を再び蓄積させないために、並行した第3の反応器および任意にさらなる反応器を第2の反応器に続けることは理論的には考えられる。しかしながら、これはほとんどの場合、実際には必要ではない。
【0027】
本発明によるトリクロロシランを製造するための設備は、シリコン粒子と四塩化ケイ素および水素と任意に塩化水素とを反応させてトリクロロシラン含有生成物ガス流を形成するのに各々適している第1の反応器と第2の反応器、特に2つの流動床反応器を有している。第1の反応器中では、第1のトリクロロシラン含有生成物ガス流が形成され、そして第2の反応器中では、第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流が形成される。
【0028】
第1の反応器は、好適には少なくとも次の構成要素:
・四塩化ケイ素および水素および適切な場合に塩化水素のための少なくとも1つの入口、
・シリコン粒子のための少なくとも1つの入口、
・前記シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素および適切な場合に塩化水素とともに流動床を形成し得る1つの反応空間、
・第1のトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口の前にある選択的に特定の最大粒径以下のシリコン粒子のみが通過することを可能とする少なくとも1つの粒子分離機、および
・そのような粒子分離機なしに、前記の最大粒径より大きい粒径を有するシリコン粒子が反応器から排出され得る少なくとも1つのさらなる出口
を有している。
【0029】
第2の反応器は、少なくとも:
・シリコン粒子のための少なくとも1つの入口、
・前記シリコン粒子が四塩化ケイ素および水素および適切な場合に塩化水素とともに流動床を形成し得る1つの反応空間、および
・第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流のための少なくとも1つの出口
を有している。
【0030】
本発明の設備は、特に、第1の反応器の少なくとも1つのさらなる出口と第2の反応器のシリコン粒子のための少なくとも1つの入口との間に1つの接続があり、その接続によって第1の反応器から排出されたシリコン粒子が第2の反応器に移され得ることを特徴とする。そのような接続は、例えば、各々の反応器の入口又は出口へのバルブ又は蓋のような適当な接続部品によって連結されるパイプであり得る。
【0031】
前記の第1の流動床反応器中に存在する前記少なくとも1つの粒子分離機は好適には1つ以上のサイクロンである。適したサイクロンは当業者に原理的に公知であって且つ本発明の目的のために包括的に説明する必要はない。加えて、この点に関しては、流動床反応器のための適したサイクロンに関する前記詳細が示されている。
【0032】
特に好適な実施態様においては、前記第1の反応器と第2の反応器との間の上述の接続に加えて、さらなる接続によって第2のトリクロロシラン含有生成物ガス流が第1の反応器に導入され得る少なくとも1つのさらなる接続が存在する。これら2つの接続を有する1つの実施態様においては、それゆえ第2の反応器の反応空間は第1の反応器の反応空間に対して「並列に接続されて」いる。第1の反応器から排出されたシリコンは第2の反応器の反応空間中で四塩化ケイ素および水素および任意に塩化水素と反応され、次いで形成されたトリクロロシランは第1の反応器に戻され、それゆえ循環を完了させる。
【0033】
本発明のさらなる特徴は、従属項とともに本発明の設備の好適な実施態様に係る以下の記述から導かれ得る。本明細書では、個々の特徴は、そのようにあるいは本発明の1つの実施態様におけるそれらの複数を組み合わせて実施することが可能である。記載された好適な実施態様は、単に本発明の説明とより良い理解のためのもので、決して制限的に解釈されてはならない。
【0034】
図1は、第1の流動床反応器および第2の流動床反応器を有する本発明による設備の好適な実施態様の構造を概略的に示している。
【0035】
図示されている本発明による好適な実施態様の設備100は、第1の流動床反応器101および第2の流動床反応器102を有する。
【0036】
前記の第1の流動床反応器101は、底部領域に、入口を通って水素およびガス状四塩化ケイ素および任意に塩化水素が反応器に導入され得る入口103を有する。前記反応器101内には、反応器内で均一に分配されたガス流を生じさせることが可能な分配器104がある。反応される金属シリコンは入口105を通って反応器101に導入され得る。このシリコンが、水素および四塩化ケイ素および適切な場合に塩化水素からなる上方に流れるに蒸気/ガス混合物に起因して、流動床反応器101の反応空間106中に流動床を形成する。前記流動床は、好適には固定流動床、すなわち頂上と底部のいずれにも比較的明確な境界を有する流動床である。前記の下部境界は記号107によって示され、そして前記上部境界は記号108によって示される。前記の2つの記号の間には流動床の流動区域がある。これから、シリコン粒子は出口109を通って流動床反応器101から排出され、そして接続ライン110および入口111を通って流動床反応器102に移され得る。さらに、出口112および接続ライン113も示されている。これらは、シリコン粒子を流動床の流動区域の高い区域から取り除くことを可能にする。原理的には、反応器101はまた2つより多いそのような排出機会を有し得る。
【0037】
前記の流動床反応器102において、排出されたシリコン粒子はもう一度水素および四塩化ケイ素および任意に塩化水素とともに流動床を形成し得る(流動床反応器102はこの目的のために水素、四塩化ケイ素および塩化水素のための独自の入口機会を有し得る)。ここで形成されたトリクロロシラン含有反応混合物は出口114および流動床反応器101への接続ライン115を通って再循環され得る。前記混合物は好適には流動床の前記上部境界108より上の反応器101に導入される。そこでは、混合物は反応器101中で形成されたトリクロロシラン含有生成物混合物と混ざり得る。
【0038】
混ぜられたトリクロロシラン含有生成物混合物は出口117および排出ライン(図示せず)を通って反応器から排出され、そしてそのさらなる使用に移り得る。前記粒子分離機118が前記出口117の前にある。これが特定の最大粒径を有するシリコン粒子のみが通過することを可能とする。残部の粒子は分離機118内で分離されそして粒子重力出口119を通って流動床に再循環される。
図1