(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
聴取領域に向けた、前記聴取領域に対して前方に位置し、左外側スピーカ、左内側スピーカ、右内側スピーカ、および右外側スピーカを含む複数のスピーカ上でのサラウンドサウンド生成のための、1つまたは複数の低域効果音オーディオ信号と、フロントベース左方傾斜、フロントベース右方傾斜、リアベース左方傾斜、リアベース右方傾斜、およびセンターベースである1つまたは複数のオーディオ信号とを含むマルチチャンネルオーディオ信号とを処理するための方法であって、
(a)リアベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号を生成するステップと、
(b)リアベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号を生成するステップと、
(c)リアベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号を生成するステップと、
(d)リアベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号を生成するステップと、
(e)前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された左後方信号、およびフロントベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号をフィルタリングするステップであり、フィルタリングされる前記信号の高周波数成分を減衰させることを含む前記ステップと、
(f)前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された右後方信号、およびフロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号をフィルタリングするステップであり、フィルタリングされる前記信号の高周波数成分を減衰させることを含む前記ステップと、
(g)前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された左後方信号、およびフロントベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相を調整して、それぞれに時間遅延を導入するステップと、
(h)前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された右後方信号、およびフロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相を調整して、それぞれに時間遅延を導入するステップと、
(i)フロントベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号、リアベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号、およびステップ(g)における前記すべての調整された信号を前記左外側スピーカへ送るステップと、
(j)フロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号、リアベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号、およびステップ(h)における前記すべての調整された信号を前記右外側スピーカへ送るステップと、
(k)センターベースである前記1つまたは複数のオーディオ信号、およびステップ(e)における前記すべてのフィルタリングされた信号を前記左内側スピーカへ送るステップと、
(l)センターベースである前記1つまたは複数のオーディオ信号、およびステップ(f)における前記すべてのフィルタリングされた信号を前記右内側スピーカへ送るステップと
を含む方法。
フロントベース左方傾斜およびフロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を、0.5から1の範囲内の第3の倍率で調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
聴取領域に向けた、前記聴取領域に対して前方に位置し、左外側スピーカ、左内側スピーカ、右内側スピーカ、および右外側スピーカを含む複数のスピーカ上でのサラウンドサウンド生成のための、1つまたは複数の低域効果音オーディオ信号と、フロントベース左方傾斜、フロントベース右方傾斜、リアベース左方傾斜、リアベース右方傾斜、およびセンターベースである1つまたは複数のオーディオ信号とを含むマルチチャンネルオーディオ信号とを処理するためのオーディオシステムであって、
リアベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号を生成する第1の調整手段と、
リアベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号を生成する第2の調整手段と、
リアベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号を生成する第1のスケーリング手段と、
リアベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号を生成する第2のスケーリング手段と、
前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された左後方信号、およびフロントベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号をフィルタリングし、前記信号の高周波数成分を減衰させる第1のフィルタリング手段と、
前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された右後方信号、およびフロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号をフィルタリングし、前記信号の高周波数成分を減衰させる第2のフィルタリング手段と、
前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された左後方信号、およびフロントベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相を調整して、それぞれに時間遅延を導入する第1の位相調整手段と、
前記1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号、前記1つまたは複数の振幅調整された右後方信号、およびフロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の位相を調整して、それぞれに時間遅延を導入する第2の位相調整手段と
を備え、
前記左外側スピーカが、フロントベース左方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号、リアベース左方傾斜である前記1つまたは複数の信号、および前記第1の位相調整手段によって調整された前記すべての信号を受け取り、
前記右外側スピーカが、フロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号、リアベース右方傾斜である前記1つまたは複数の信号、および前記第2の位相調整手段によって調整された前記すべての信号を受け取り、
前記左内側スピーカが、センターベースである前記1つまたは複数のオーディオ信号、および前記第1のフィルタリング手段によって調整された前記すべての信号を受け取り、 前記右内側スピーカが、センターベースである前記1つまたは複数のオーディオ信号、および前記第2のフィルタリング手段によって調整された前記すべての信号を受け取る
オーディオシステム。
フロントベース左方傾斜およびフロントベース右方傾斜である前記1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を、0.5から1の範囲内の第3の倍率で調整する第3のスケーリング手段をさらに備える、請求項10に記載のオーディオシステム。
前記左外側スピーカ、前記左内側スピーカ、前記右外側スピーカ、および前記右内側スピーカが、前記聴取領域に面し、前記各スピーカの左外側、左内側、右内側、および右外側の各位置を通る線として定義されるスピーカ軸に沿って間隔をおいて配置されている、請求項10に記載のオーディオシステム。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に、本発明の一例示的実施形態のオーディオシステム100の上面図を示す。オーディオシステム100は、聴取領域102に向けた、4台のスピーカ104、106、108、110上と、サブウーファ126上とでのサラウンドサウンド生成のためのマルチチャンネルオーディオ信号を処理する。一般に、本発明の例示的実施形態は、有利には、単純な回路を使用して実施し、しかも、いくつかの従来のオーディオシステムによって生成される鋭角的で狭い音像とは対照的な、4台のスピーカ102、104、106、108における広く拡散した音像の生成を特徴とする良好なサラウンドサウンド品質を提供することができる方式でマルチチャンネルオーディオ信号を処理する。
図1Bに、広く拡散した音像がどのようにして2台のスピーカによって生成され得るかを示す。
【0034】
オーディオシステム100は4台のスピーカ104、106、108、110と1台のサブウーファ126とを示しているが、スピーカの台数は、本発明の別の例示的実施形態では4台以上とすることもできるはずであることが理解される。また1台以上のサブウーファを置くこともできるはずである。
図1には例示のために、聴取領域102の中央にいる聴取者118が含まれている。
【0035】
例示的実施形態において、4台のスピーカ104、106、108、110と、サブウーファ126とは、単一の筐体内に含まれており、単一の筐体は、この事例では、細長い長方形の立体124である。4台のスピーカ104、106、108、110とサブウーファ126とは、聴取領域102に面し、4台のスピーカの左外側、左内側、右内側、および右外側の各位置を通る線として定義されるスピーカ軸116に沿って間隔をおいて配置されている。4台のスピーカ104、106、108、110は、2対のスピーカからなり(スピーカ104と106とが1対であり、スピーカ108と110とがもう1対である)、各対は、細長い長方形の立体124の左側と右側とにそれぞれ対称に配置されている。4台のスピーカとは、すなわち、左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110である。サブウーファ126は、左内側スピーカ106と右内側スピーカ108との間に位置決めされている。
【0036】
図1では、サブウーファ126を含めて、4台のスピーカ104、106、108、110すべてが、例示のために可視的に表示されている。これらのスピーカは、細長い長方形の立体124のシャーシによって覆われるはずであるため、実際の実施態様の上面からは見えない。各スピーカ104、106、108、110、または126は、電気アナログ音響信号を音響へと変換するのに適する音響変換器といった1台または複数の電気機械装置を有する。これらのスピーカ104、106、108、110、126によって生成される音響は、全可聴周波数範囲、または少なくとも可聴周波数範囲の大部分をカバーし得る。
【0037】
例示的実施形態では、左外側スピーカ104が細長い長方形の立体124上に取り付けられている第1の平面128は、左内側スピーカ106が細長い長方形の立体124上に取り付けられている第2の平面130に対して約135度の角度120をなしている。同様に、右外側スピーカ110が細長い長方形の立体124上に取り付けられている第3の平面132も、右内側スピーカ108が細長い長方形の立体124上に取り付けられている第2の平面130に対して約135度の角度122をなしている。
図1の各矢印は音響出力の方向を示す。角度120および角度122は、それぞれ、左外側スピーカ104および右外側スピーカ110の指向性によって決まる。角度120および角度122の値の適切な範囲はおおよそ90度から約180度である。スピーカの指向性とは、聴取領域102の特定の方向に個々のスピーカによって生成される音像によってカバーされる領域のサイズをいう。指向性が良好である、すなわち、スピーカの音響分散が広い領域をカバーする場合、角度122は135度より小さい値とすることができる。指向性が不良である、すなわち、スピーカの音響分散が狭い領域をカバーする場合、角度122は135度より大きい値を有するはずである。
【0038】
スピーカ対間の距離は、本実施形態では左内側スピーカ106と右内側スピーカ108との距離を指し、サラウンドサウンド効果の広さを決定する。左内側スピーカ106と右内側スピーカ108との距離は、様々なサイズの聴取領域102に適するように調整される。図を参照して本明細書で説明する実施形態では、この距離についての好ましい値は、約500mmから約1500mmまでの範囲に及ぶ。
【0039】
別の例示的実施形態では、第2の平面130に対する第1の平面128の角度120、および第2の平面130に対する第3の平面132の角度122は、どちらも、90度から180度の範囲と異なる可能性もあることが理解される。
【0040】
4台のスピーカ104、106、108、110上とサブウーファ126上とにおけるサラウンドサウンド生成のために
図1のオーディオシステム100によって処理されるマルチチャンネルオーディオ信号は、1つまたは複数の低域効果音オーディオ信号と、フロントベース左方傾斜、フロントベース右方傾斜、リアベース左方傾斜、リアベース右方傾斜、およびセンターベースである1つまたは複数のオーディオ信号とを含み得る。
【0041】
例示的実施形態の例では、
図1のオーディオシステム100によって処理されるマルチチャンネルオーディオ信号は、具体的には、5.1オーディオチャンネル入力であり、これは、離散左前方オーディオ信号(FL)、離散右前方オーディオ信号(FR)、離散中央オーディオ信号(C)、離散左後方オーディオ信号(RL)、離散右後方オーディオ信号(RR)、および離散低域効果音信号(LFE)からなる。これらの離散信号はそれぞれ1つのオーディオチャンネルと一致する。
【0042】
図2、6、8、11を組み合わせて、ディジタル信号プロセッサが使用されない場合の
図1のオーディオシステム100の回路ブロック
図200の一例を示す。オーディオシステム100の回路は、例示をより明確にするために、4つの別個の図に分割されている。実際の実施態様では、オーディオシステム100の回路ブロック
図200は、
図2、6、8、および11に示されるすべての回路構成要素を含むはずである。
【0043】
前述のように、オーディオシステム100は、聴取領域(
図1の102)に向けて、4台のスピーカ104、106、108、110上とサブウーファ126上とにおけるサラウンドサウンド生成のための、マルチチャンネルオーディオ信号、特に、5.1オーディオチャンネル入力信号を処理する。例示的実施形態では、サブウーファ126は、音響信号の低周波数成分を低減するのに使用される。4台のスピーカ104、106、108、110は、音響信号の高周波数成分を生成するのに使用される。サブウーファ126がなく、4台のスピーカ104、106、108、110だけを有する本発明の例示的実施形態では、4台のスピーカ104、106、108、110は、音響信号の低周波数成分と高周波数成分の両方を生成するのに使用されるはずであることが理解される。例示的実施形態によっては、サブウーファ126は、もっぱら、5.1チャンネルオーディオ信号の離散低域効果音信号(LFE)の音響信号だけを生成し得る。
【0044】
図2に、5.1チャンネルオーディオ信号の離散左前方オーディオ信号(FL)222と離散右前方オーディオ信号(FR)224とをそれぞれ処理するためのオーディオシステム100の電子構成部品を示す。
図2の矢印は信号フローの方向を示す。
【0045】
離散左前方オーディオ信号(FL)222は、離散左前方オーディオ信号(FL)222の低周波数成分を除去するために第1の高域フィルタ202へ送られる。第1の高域フィルタ202を使用した離散左前方オーディオ信号(FL)222のフィルタリングは、サブウーファ126なしの例示的実施形態では不要であることが理解される。というのは、サブウーファ126がない場合、左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110は、音響信号の高周波数成分と低周波数成分の両方を生成することになるからである。
【0046】
別の信号路において、離散左前方オーディオ信号(FL)222は第1の帯域フィルタ204へ送られ、続いて第1のインバータ210へ送られる。第1の帯域フィルタ204は、おおよそ0.5KHzから20KHzの範囲内の離散左前方オーディオ信号(FL)222の高周波数成分を減衰させることにより、左外側スピーカ104および左内側スピーカ106の音源位置を、左外側スピーカ104のさらに左方の距離のところにある位置(
図3の302)へ仮想化するように離散左前方オーディオ信号(FL)222を調整する。この減衰は図
5に示されている。また第1の帯域フィルタ204は、サブウーファ126だけが低周波数成分を有する音響信号を生成することになるように、離散左前方オーディオ信号(FL)222の低周波数成分も除去する。インバータ210は、減衰された離散左前方オーディオ信号(FL)222に時間遅延(すなわち、位相シフト)を導入する。時間遅延は、両耳間クロストークを遅延させて聴取領域(
図1の102)において聴取者(
図1の118)によって知覚される音像を広げるために導入される。
【0047】
仮想化音源位置(
図3の302および318)を作り出す理由は、聴取領域(
図1の102)において聴取者(
図1の118)に聞こえる広いステレオ音像効果を生み出すためである。
【0048】
離散左前方オーディオ信号(FL)222が第1の帯域フィルタ204によって処理され、続いて第1のインバータ210によって処理された後で、第1のインバータ210からの出力信号は、g1倍にスケーリングされ、g1は0.5から1の範囲内である。例示的実施形態では、この時点におけるg1値は、第1のインバータ210の下流側(すなわち、信号が第1のインバータ210から出た後)に位置する第1の増幅器(図には示されていない)によって与えられる利得係数である。別の例示的実施形態では、この第1の増幅器は、第1のインバータ210の回路に組み込まれていてもよいことが理解される。またこの第1の増幅器は、演算増幅器の形、分圧器の形などとすることもできる。
【0049】
第1の高域フィルタ202からのフィルタリングされた出力信号は、g1にスケーリングされた、第
2のインバータ21
2からの、帯域フィルタに通され、位相シフトされた出力信号と一緒に、続いて、音響生成のために左外側スピーカ104へ送られる前に、信号増幅のために第2の増幅器214へ送られる。
【0050】
さらに、帯域フィルタに通された出力離散左前方オーディオ信号(FL)222が、音響生成のために左内側スピーカ106へ送られる前に、信号増幅のために第1の帯域フィルタ204から第3の増幅器216へ直接送られる別の信号路も存在する。
【0051】
離散左前方オーディオ信号(FL)222の処理を忠実に反映して、離散右前方オーディオ信号(FR)224は、離散右前方オーディオ信号(FR)224の低周波数成分を除去するために、第1の高域フィルタ202と同じ設計を有する第2の高域フィルタ208へ送られる。この場合も同様に、サブウーファ126なしの例示的実施形態では、第2の高域フィルタ208を使用した離散
右前方オーディオ信号(FR)224のフィルタリングは不要であることも理解される。というのは、サブウーファ126がない場合、左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110は音響信号の高周波数成分と低周波数成分の両方を生成することになるからである。
【0052】
別の信号路において、離散右前方オーディオ信号(FR)224は第2の帯域フィルタ206へ送られ、続いて第2のインバータ212へ送られる。第2の帯域フィルタ206は、おおよそ0.5KHzから20KHzの範囲内の離散右前方オーディオ信号(FR)224の高周波数成分を減衰させることにより、右外側スピーカ110および右内側スピーカ108の音源位置を、右外側スピーカ108のさらに
右方の距離のところにある位置(
図3の318)へ仮想化するように離散右前方オーディオ信号(FR)224を調整する。この減衰も同様には図
5に示されている。また第2の帯域フィルタ206は、サブウーファ126だけが低周波数成分を有する音響信号を生成することになるように、離散右前方オーディオ信号(FR)224の低周波数成分も除去する。第2のインバータ212は、減衰された離散右前方オーディオ信号(FR)224に時間遅延(すなわち、位相シフト)を導入する。時間遅延は、両耳間クロストークを遅延させて聴取領域(
図1の102)において聴取者(
図1の118)によって知覚される音像を広げるために導入される。
【0053】
離散右前方オーディオ信号(FR)224が第2の帯域フィルタ206によって処理され、続いて第2のインバータ212によって処理された後で、第2のインバータ212からの出力信号はg1倍にスケーリングされる。例示的実施形態では、この時点におけるg1値は、第2のインバータ212の下流側(すなわち、信号が第2のインバータ212から出た後)に位置する第4の増幅器(図には示されていない)によって与えられる利得係数である。別の例示的実施形態では、第4の増幅器は、第2のインバータ212の回路に組み込まれていてもよいことが理解される。また第4の増幅器は、演算増幅器の形、分圧器の形などとすることもできる。
【0054】
第2の高域フィルタ208からのフィルタリングされた出力信号は、g1にスケーリングされた、第
1のインバータ21
0からの、帯域フィルタに通され、位相シフトされた出力信号と一緒に、続いて、音響生成のために右外側スピーカ110へ送られる前に、信号増幅のために第5の増幅器220へ送られる。
【0055】
さらに、第2の帯域フィルタ206からの帯域フィルタに通された出力離散右前方オーディオ信号(FR)224が、音響生成のために左内側スピーカ106へ送られる前に、信号増幅のために第6の増幅器218へ送られる別の信号路も存在する。
【0056】
前述のg1値は、前方傾斜音の広さに影響を及ぼし、より低いg1は、音響効果をより狭いものとして知覚させる(すなわち、音源が、聴取者118には、聴取領域102の中央により近いものに聞こえる)ことになり、より高いg1は、音響効果をより広いものとして知覚させる(すなわち、音源が、聴取者118には、中央から来るのではなく、聴取領域102のさらに左方およびさらに右方から来るものに聞こえる)ことになる。
【0057】
第2の増幅器214、第3の増幅器216、第5の増幅器220、および第6の増幅器218によって実行される信号増幅が必要とされるのは、4台のスピーカ104、106、108、110によって十分に大きい音響信号を生成するためである。信号増幅前の個々の信号の強度は、典型的には、最大2ボルト(二乗平均)である。非増幅信号が直接、例えば、4オームのスピーカへ送られる場合には、せいぜい1ワットの音響しか生成されず、これは容認できないと考えられる。典型的な15ワット4オームのスピーカが容認できる音響出力レベルを生成するためには、信号強度は、約7.7ボルト(二乗平均)以上まで増幅される必要がある。
【0058】
第1の帯域フィルタ204および第2の帯域フィルタ206それぞれの高域フィルタリング成分は、サブウーファ126なしの例示的実施形態では除外することができることが理解される。というのは、サブウーファ126がない場合、左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110は高周波数成分と低周波数成分の両方を生成することになるからである。
【0059】
左外側スピーカ104および左内側スピーカ106の仮想化音響出力位置302が
図3に示されている。
図3を参照すると、音響出力a2 314は、左外側スピーカ104と左内側スピーカ106とからの音響出力が仮想化されない場合に、聴取領域102の中央に位置する聴取者118の右耳306まで進む音の軌跡を示す。音響出力a2 314は聴取者の顔によってわずかに妨げられる。音響出力b2 312は、左外側スピーカ104と左内側スピーカ106とからの音響出力が仮想化音響出力位置302へと仮想化される場合に、聴取者118の右耳306まで進む音の軌跡を示す。仮想化音響出力b2 312の軌跡は、音響出力a2 314の場合と比べて、聴取者の顔によってより多く妨げられる。よって、非仮想化音響出力a2 314の場合と比べて、仮想化音響出力b2 312が聴取者の右耳306に到達するにはより多くの時間遅延が生じ、聴取者の右耳306によって拾われる音響信号はより少ない。したがって、仮想化音響出力b2 312を生成するために、
図2の第1の帯域フィルタ204を使用して、おおよそ0.5KHzから20KHzの範囲内の
図2の離散左前方オーディオ信号(FL)222の高周波数成分が減衰され、
図2の第1のインバータ210を使用して、減衰された
図2の離散左前方オーディオ信号(FL)222に時間遅延が導入される。
【0060】
同様に、音響出力a1 308は、左外側スピーカ104と左内側スピーカ106とからの音響出力が仮想化されない場合に、聴取者118の左耳304まで進む音の軌跡を示す。音響出力b1 310は、左外側スピーカ104と左内側スピーカ106とからの音響出力が仮想化音響出力位置302へと仮想化される場合に、聴取者118の左耳304まで進む音の軌跡を示す。a1 308とb1 310とを比較すると、b1 310は聴取者の左耳304までずっと遠く、そのため、非仮想化音響出力a1 308と比べて、音が聴取者の左耳304に到達するのにより多くの時間遅延が生じ、聴取者の左耳304によって拾われる音響信号はより少ない。したがって、仮想化b1 310を生成するために、時間遅延を導入する必要があり、これは
図2の第1のインバータ210を使用して行うことができ、音響信号を減衰させる必要があり、これは
図2の第1の帯域フィルタ204を使用して行うことができる。
【0061】
第2のインバータ212および第2の帯域フィルタ206は、それぞれ、第1のインバータ210および第1の帯域フィルタ204と同様に、右外側スピーカ110および右内側スピーカ108の仮想化音響出力の生成のために使用されることが理解される。
図3を参照して書かれている前述の説明は、右外側スピーカ110および右内側スピーカ108が仮想化音源位置318の知覚音響信号を作成することを可能にするための第2のインバータ212および第2の帯域フィルタ206の使用を説明するのに同様に適用することができるはずである。
【0062】
第1の高域フィルタ202および第2の高域フィルタ208の同一周波数応答のグラフが
図4に示されている。
図1および
図2の参照番号を参照すると、おおよそ2KHzから20KHzまでの信号増幅部分402は、聴取者118に聞こえる音響信号の降下を補償するものである。というのは、左外側スピーカ104と右外側スピーカ110とがそれぞれ取り付けられている細長い長方形の立体124の第1の平面128と第3の平面132とは、左内側スピーカ106と右内側スピーカ108とが取り付けられている細長い長方形の立体124の第2の平面130に対して、それぞれ、角度120と角度122、すなわち135度をなしているからである。信号増幅部分402の設定は、角度120および角度122によって決まる。おおよそ2
0Hzから2KHzまでの高域フィルタリング部分404は、サブウーファ126がもっぱらすべての音響信号の低周波数成分を生成するためだけに使用されるように、離散左前方オーディオ信号(FL)222および離散右前方オーディオ信号(FR)224の高周波数成分を抽出するためのものである。
【0063】
第1の帯域フィルタ204および第2の帯域フィルタ206の同一周波数応答のグラフが
図5に示されている。おおよそ0.5KHzから20KHzまでの信号の減衰部分502は、非仮想化音源位置の聴取者の耳からの距離と比べてより遠く離れた距離のところにある
図3の音源位置302および318の仮想化を示している。
図1、2および3の参照番号を参照すると、より遠い距離は、聴取者118に聞こえる音響信号が弱められることを意味し、よって、音源位置302および318の仮想化のためには減衰が行われる必要がある。おおよそ2
0Hzから0.5KHzまでの高域フィルタリング部分504は、サブウーファ126がもっぱらすべての音響信号の低周波数成分を生成するためだけに使用されるように、離散左前方オーディオ信号(FL)222および離散右前方オーディオ信号(FR)224の高周波数成分を抽出するためのものである。
【0064】
図6に、5.1チャンネルオーディオ信号の離散中央オーディオ信号(C)604を処理するためのオーディオシステム100の必須電子構成部品を示す。
図6の矢印は信号フローの方向を示す。
【0065】
図6において、離散中央オーディオ信号(C)604は第3の高域フィルタ602へ送られ、第3の高域フィルタ602は、フィルタリングされ、スケーリングされた信号を、信号を増幅するためと、左内側スピーカ106と右内側スピーカ1
08とにそれぞれ送るために第3の増幅器216と第6の増幅器218とにそれぞれ渡す前に、離散中央オーディオ信号(C)604の低周波数成分を除去し、倍率g2でスケーリングする。離散中央オーディオ信号(C)604が2台のスピーカ106および108において再生される際に、その音量は、左外側スピーカ104および右外側スピーカ110によって生成される左方傾斜信号および右方傾斜信号の音量と比べてより大きく聞こえるはずである。g2の値は、センターベースの音の音量が左右の傾斜信号の音量と釣り合うように、センターベースの音の音響信号強度を故意に下げるために−3デシベルとして設定される。例示的実施形態では、この時点におけるg2値は、第3の高域フィルタ602の下流側(すなわち、信号が第3の高域フィルタ602から出た後)に位置する第7の増幅器(図には示されていない)によって与えられる利得係数である。別の例示的実施形態では、第7の増幅器は第3の高域フィルタ602の回路に組み込まれていてもよいことが理解される。また第7の増幅器は、演算増幅器の形、分圧器の形などとすることもできる。
【0066】
第3の高域フィルタ602の周波数応答のグラフ702が
図7に示されている。サブウーファ126がすべての音響信号の低周波数成分を生成し、4台のスピーカ104、106、108、110がすべての音響信号の高周波数成分を生成するように、第3の高域フィルタ602によって、離散中央オーディオ信号(C)604の高周波数成分を抽出するための高域フィルタリングが行われる。
【0067】
図8に、5.1チャンネルオーディオ信号の離散左後方オーディオ信号(RL)824および離散右後方オーディオ信号(RR)826を処理するためのオーディオシステム100の電子構成部品を示す。
図8の矢印は信号フローの方向を示す。
【0068】
図8において、離散左後方オーディオ信号(RL)824は、離散左後方オーディオ信号(RL)824の低周波数成分を除去するために第4の高域フィルタ806へ送られる。第4の高域フィルタ806も離散左後方オーディオ信号(RL)824を、5KHz前後の周波数範囲において減衰させる。サブウーファ126なしの例示的実施形態では、第4の高域フィルタ806を使用した離散左後方オーディオ信号(RL)824のフィルタリングは不要であることが理解される。というのは、サブウーファ126がない場合、左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110はすべての音響信号の高周波数成分と低周波数成分の両方を生成することになるからである。
【0069】
別の信号路において、離散左後方オーディオ信号(RL)824は、0.35から0.75の範囲内にある倍率g4でスケーリングされ、第3のインバータ802に通される。例示的実施形態では、この時点におけるg4値は、第3のインバータ802の上流側(すなわち、信号が第3のインバータ802に入る前)に位置する第8の増幅器(図には示されていない)によって与えられる利得係数である。別の例示的実施形態では、第8の増幅器は、第3のインバータ802の回路に組み込まれていてもよいことが理解される。また第8の増幅器は、演算増幅器の形、分圧器の形などとすることもできる。続いて、第3のインバータ802からの信号は第2の帯域フィルタ206へ送られ、続いて第2のインバータ212へ送られる。
【0070】
第3のインバータ802は、倍率g4でスケーリングされた離散左後方オーディオ信号(RL)824に時間遅延(すなわち位相シフト)を導入する。例示的実施形態では、インバータ802は、両耳間クロストークを打ち消して位相ずれ音響効果を生成するのを助長し、位相ずれ音響効果は、聴取者によって、識別方向のない、環境の至る所から聞こえる音として知覚される。
【0071】
第2の帯域フィルタ206は、おおよそ1KHzから7KHzの範囲内の離散左後方オーディオ信号(RL)824の高周波数成分を減衰させることにより、左外側スピーカ104および左内側スピーカ106の音源位置を、聴取者118の左後方の位置のところにある位置(
図9の906)へ仮想化するように離散左後方オーディオ信号(RL)824を調整する。この減衰は
図10に示されている。このように、左後方サラウンドサウンド効果が生成される。また第2の帯域フィルタ206は、サブウーファ126だけが低周波数成分を有する音響信号を生成するように離散左後方オーディオ信号(RL)824の低周波数成分の除去も行う。
【0072】
第2のインバータ212は、帯域フィルタ206によってフィルタリングされた減衰離散左後方オーディオ信号(RL)824に時間遅延(すなわち位相シフト)を導入する。この時間遅延を導入する理由は、後で
図9を参照して論じる。
【0073】
第4の高域フィルタ806からのフィルタリングされた出力信号と、第2のインバータ212からの、帯域フィルタに通され、g4倍され、位相シフトされた出力信号は、続いて、音響生成のために左外側スピーカ104へ送られる前に、信号増幅のために第2の増幅器214へ送られる。
【0074】
離散左後方オーディオ信号(RL)824が、0.7から1.5の範囲内の倍率g3でスケーリングされ、第1の帯域フィルタ204へ送られる別の信号路が存在する。例示的実施形態では、この時点におけるg3値は、第1の帯域フィルタ204の上流側(すなわち、信号が第1の帯域フィルタ204に入る前)に位置する第9の増幅器(図には示されていない)によって与えられる利得係数である。別の例示的実施形態では、第9の増幅器は、第1の帯域フィルタ204の回路に組み込まれていてもよいことが理解される。また第9の増幅器は、演算増幅器の形、分圧器の形などとすることもできる。
【0075】
続いて、第1の帯域フィルタ204からのg3でスケーリングされた出力信号は、音響生成のために左内側スピーカ108へ送られる前に第3の増幅器216へ送られる。第3の増幅器216へ送る目的は、聴取領域102において聴取者によって知覚される後方音像を広げるためである。
【0076】
離散左後方オーディオ信号(RL)824の処理を忠実に反映して、離散右後方オーディオ信号(RR)826は、離散右後方オーディオ信号(RR)826の低周波数成分を除去するために、第4の高域フィルタ806と設計が同じである第5の高域フィルタ812へ送られる。第5の高域フィルタ812は、5KHz前後の周波数範囲において離散右後方オーディオ信号(RR)826を減衰させる。第5の高域フィルタ812を使用した離散右後方オーディオ信号(RR)826のフィルタリングは、サブウーファ126なしの例示的実施形態では不要であることが理解される。というのは、サブウーファ126がない場合、左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110はすべての音響信号の高周波数成分と低周波数成分の両方を生成することになるからである。
【0077】
別の信号路において、離散右後方オーディオ信号(RR)826は、倍率g4でスケーリングされ、第4のインバータ804に通される。例示的実施形態では、この時点におけるg4値は、第4のインバータ804の上流側(すなわち、信号が第4のインバータ804に入る前)に位置する第10の増幅器(図には示されていない)によって与えられる利得係数である。別の例示的実施形態では、第10の増幅器は、第4のインバータ804の回路に組み込まれていてもよいことが理解される。また第10の増幅器は、演算増幅器の形、分圧器の形などとすることもできる。続いて、第4のインバータ804からの出力信号は第1の帯域フィルタ204へ送られ、続いて第1のインバータ210へ送られる。
【0078】
第4のインバータ804は、倍率g4でスケーリングされた離散右後方オーディオ信号(RR)826に時間遅延を導入する。例示的実施形態では、第4のインバータ804は、両耳間クロストークを打ち消して位相ずれ音響効果を生成するのを助長し、位相ずれ音響効果は、聴取領域(
図1の102)において聴取者によって、識別方向のない、環境の至る所から聞こえる音として知覚される。
【0079】
第1の帯域フィルタ204は、おおよそ1KHzから7KHzの範囲内の離散右後方オーディオ信号(RR)826の高周波数成分を減衰させることにより、右外側スピーカ110および右内側スピーカ108の音源位置を、聴取者(
図11の118)の右後方にある位置(
図9の908)へ仮想化するように離散右後方オーディオ信号(RR)826を調整する。この減衰は
図10に示されている。このように、右後方サラウンドサウンド効果が生成される。また第1の帯域フィルタ204は、サブウーファ126だけが低周波数成分を有する音響信号を生成するように離散右後方オーディオ信号(RR)の低周波数成分の除去も行う。
【0080】
第1のインバータ210は、減衰された離散左後方オーディオ信号(RR)826に時間遅延を導入する。この時間遅延を導入する理由は、後で
図9を参照して論じる。
【0081】
第5の高域フィルタ812からのフィルタリングされた出力信号と、第
1のインバータ
210からの、帯域フィルタに通され、g4倍され、位相シフトされた出力信号は、続いて、音響生成のために右外側スピーカ1
10へ送られる前に、信号増幅のために第5の増幅器220へ送られる。
【0082】
離散右後方オーディオ信号(RR)826が、倍率g3でスケーリングされ、第2の帯域フィルタ206へ送られる別の信号路が存在する。例示的実施形態では、この時点におけるg3値は、第2の帯域フィルタ206の上流側(すなわち、信号が第2の帯域フィルタ206に入る前)に位置する第11の増幅器(図には示されていない)によって与えられる利得係数である。別の例示的実施形態では、第11の増幅器は、第2の帯域フィルタ206の回路に組み込まれていてもよいことが理解される。また第11の増幅器は、演算増幅器の形、分圧器の形などとすることもできる。
【0083】
続いて、第2の帯域フィルタ206からのg3でスケーリングされた出力信号は、音響生成のために
右内側スピーカ10
8へ送られる前に第6の増幅器218へ送られる。第6の増幅器218へ送る目的は、聴取領域102において聴取者によって知覚される後方音像を広げるためである。
【0084】
g3の値は、複数のスピーカ104、106、108、110によって生成される後方サラウンドサウンド効果の重みに影響を及ぼす。低いg3は弱い後方サラウンドサウンド効果につながり、高いg3は強い後方サラウンドサウンド効果につながる。
【0085】
例示的実施形態では、g3:g4が2:1の比に維持される。この比は、聴取領域102内の聴取者118の左耳または右耳のそれぞれに最も近い後方位置からの知覚音が、聴取者118の左耳または右耳のそれぞれからより離れた後方位置からの知覚音と比べて強くなるようにする。例えば、聴取者118の左耳には、聴取者118の左後方位置(すなわち
図9の906)からより強い仮想化音が聞こえるはずであり、聴取者118の右耳には、聴取者118の右後方位置(すなわち
図9の908)からより強い仮想化音が聞こえるはずである。
【0086】
サブウーファ126なしの例示的実施形態では、第1の帯域フィルタ204および第2の帯域フィルタ206の高域成分を除外することができることが理解される。というのは、サブウーファ126がない場合、左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110はすべての音響信号の高周波数成分と低周波数成分の両方を生成することになるからである。
【0087】
左外側スピーカ104および左内側スピーカ106の仮想化された後方音響出力位置906が
図9に示されている。
図9を参照すると、音響出力a3 910は、左外側スピーカ104と左内側スピーカ106とからの音響出力が仮想化される場合に、聴取領域102の中央に位置する聴取者118の左耳304まで進む音の軌跡を示す。音響出力a4 912は、左外側スピーカ104と左内側スピーカ106とからの音響出力が仮想化音響出力位置906へと仮想化される場合に、聴取者118の右耳306まで進む音の軌跡を示す。仮想化音響出力a4 912の軌跡は聴取者の頭によって妨げられ、よって、音が聴取者の右耳306に到達するのに時間遅延が生じ、聴取者の右耳306によって拾われる音響信号がより少ない。仮想化音響出力a4 912を生成するために、
図8の第2の帯域フィルタ206を使用して、おおよそ1KHzから7KHzの範囲内の処理された離散左後方オーディオ信号(RL)824の高周波数成分が減衰され、
図8の第2のインバータ412を使用して、処理された離散左後方オーディオ信号(RL)824の減衰された高周波数成分に時間遅延が導入される。
【0088】
第1のインバータ
210および第1の帯域フィルタ204は、それぞれ、第2のインバータ
212および第2の帯域フィルタ206と同様に使用されることが理解される。したがって、
図9を参照して書かれている前述の説明は、仮想化音源位置908の知覚音響信号を作成するための第1のインバータ
210および第1の帯域フィルタ204の使用を説明するのに同様に適用することができるはずである。
【0089】
加えて、
図9には、作成された仮想左後方サラウンド効果と仮想右後方サラウンド効果の環境音効果も示されている。聴取者118には、仮想左後方サラウンド効果は、破線円902で示される領域を取り囲むように思われ、仮想右後方サラウンド効果は破線円904で示される領域を取り囲むように思われる。
【0090】
第4の高域フィルタ806および第5の高域フィルタ812の同一周波数応答のグラフが
図10に示されている。5KHz前後のところの信号降下部分1002は、聴取者118の両耳の耳介の後方音を妨げる効果に起因する聴取者118に聞こえる音響信号の降下を作り出すものである。
【0091】
図11に、すべての5.1チャンネルオーディオ信号、すなわち、離散左前方オーディオ信号(FL)、離散右前方オーディオ信号(FR)、離散左後方オーディオ信号(RL)、離散右後方オーディオ信号(RR)、離散中央オーディオ信号(C)、および低域効果音オーディオ信号(LFE)を低域フィルタに通すためのオーディオシステム100の必須電子構成部品を示す。すべての5.1チャンネルオーディオ信号が、サブウーファ126へ送られる前に、それぞれの倍率s1、s1、s2、s2、s3、およびs4でスケーリングされ、低域フィルタ1102によってフィルタリングされる。例示的実施形態では、これらの倍率s1、s2、s3、およびs4の値は1である。
図11の矢印は信号フローの方向を示す。
【0092】
オーディオシステム100を表す数式は以下の通りである。
OL=FL
H+RL
H−Mix2
B
IL=g2.C
H+Mix1
B
IR=g2.C
H+Mix2
B
OR=FR
H+RR
H−Mix1
B
S’=s1.FL
L+s1.FR
L+s2.RL
L+s2.RR
L+s3.C
L+s4.S
L
Mix1=g1.FL+g3.RL−g4.RR
Mix2=g1.FR+g3.RR−g4.RL
0.5≦g1≦1(g1は0.5から1の範囲内)
g2≒0.707(すなわち、−3dB)
0.7≦g3≦1.5
g4/g3≒0.5(g3:g4の比は2:1)
0.35≦g4≦0.75
s1≒s2≒s3≒s4≒1
式中、
OLは、左外側スピーカ104へ送られる合成オーディオ信号の伝達関数であり、
ILは、左外側スピーカ106へ送られる合成オーディオ信号の伝達関数であり、
IRは、左外側スピーカ108へ送られる合成オーディオ信号の伝達関数であり、
ORは、左外側スピーカ110へ送られる合成オーディオ信号の伝達関数であり、
FLは、オーディオシステム100に入力される離散(5.1チャンネルベースの)左前方オーディオ信号(すなわち
図2の222)の伝達関数であり、
FL
Lは、
図11の低域フィルタ1102によって低域通過された後のFLの伝達関数であり、
FL
Hは、
図2の第1の高域フィルタ202によって高域通過された後のFLの伝達関数であり、
FRは、オーディオシステム100に入力される離散(5.1チャンネルベースの)右前方オーディオ信号(すなわち
図2の224)の伝達関数であり、
FR
Lは、
図11の低域フィルタ1102によって低域通過された後のFRの伝達関数であり、
FR
Hは、
図2の第2の高域フィルタ208によって高域通過された後のFRの伝達関数であり、
RLは、オーディオシステム100に入力される離散(5.1チャンネルベースの)左後方
オーディオ信号(すなわち
図8の824)の伝達関数であり、
RL
Lは、
図11の低域フィルタ1102によって低域通過された後のRLの伝達関数であり、
RL
Hは、
図8の第4の高域フィルタ806によって高域通過された後のRLの伝達関数であり、
RRは、オーディオシステム100に入力される離散(5.1チャンネルベースの)右後方オーディオ信号(すなわち
図8の826)の伝達関数であり、
RR
Lは、
図11の低域フィルタ1102によって低域通過された後のRRの伝達関数であり、
RR
Hは、
図8の第5の高域フィルタ812によって高域通過された後のRRの伝達関数であり、
Cは、オーディオシステム100に入力される離散(5.1チャンネルベースの)中央オーディオ信号(すなわち
図6の604)の伝達関数であり、
C
Lは、
図11の低域フィルタ1102によって低域通過された後のCの伝達関数であり、
C
Hは、
図6の第3の高域フィルタ602によって高域通過された後のCの伝達関数であり、
Sは、オーディオシステム100に入力されるサブウーファオーディオ信号[すなわち低域効果音オーディオ信号(LFE)]の伝達関数であり、
S
Lは、
図11の低域フィルタ1102によって低域通過された後のSubの伝達関数であり、
S’は、サブウーファ126へ送られるオーディオ信号の伝達関数であり、
Mix1
Bは、
図2の第1の帯域フィルタ204によって帯域通過された後のMix1の伝達関数であり、
Mix2
Bは、例えば、
図2の第2の帯域フィルタ206によって帯域通過された後のMix2の伝達関数であり、
数式において前に「−」符号の付いた伝達関数は、それらの伝達関数が位相シフトされ、または時間遅延されていること、より具体的には「位相ずれ」位相調整を意味し、これは、
図2の第1のインバータ210および第2のインバータ212と、
図8の第3のインバータ802および第4のインバータ804とによってそれぞれ実行される。
【0093】
全体として、フロントベース左方傾斜、フロントベース右方傾斜、リアベース左方傾斜、リアベース右方傾斜、およびセンターベースである1つまたは複数のオーディオ信号を処理して、広く拡散した音像を有するサラウンドサウンド効果を生成するために、本発明の例示的実施形態のオーディオシステムによって実行される方法が、
図12のフローチャート1200で示されている。この方法は、ディジタル信号プロセッサ、または前述のオーディオシステム100に類似したシステムによって実行され得る。
【0094】
ステップ1202で、リアベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号[離散左後方オーディオ信号824(RL)など]の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号を生成する。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1202は、Mix2の式における「−g4.RL」に対応する。
【0095】
ステップ1204で、リアベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号[離散右後方オーディオ信826(RR)など]の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号を生成する。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1204は、Mix1の式における「−g4.RR」に対応する。
【0096】
ステップ1206で、リアベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(RLなど)の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号を生成する。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1206は、Mix1の式における「g3.RL」に対応する。
【0097】
ステップ1208で、リアベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(RRなど)の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号を生成する。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1208は、Mix2の式における「g3.RR」に対応する。
【0098】
ステップ1210で、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号(−g4.RRなど)、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号(g3.RLなど)、およびフロントベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(g1.FLなど)をフィルタリングする。ステップ1210におけるフィルタリングは、フィルタリングされるすべての信号の高周波数成分を減衰させることを含む。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1210は、「Mix1
B」を得るためのMix1のフィルタリングに対応する。
【0099】
ステップ1212で、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号(−g4.RLなど)、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号(g3.RRなど)、およびフロントベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(g1.FRなど)をフィルタリングする。ステップ1212におけるフィルタリングは、フィルタリングされるすべての信号の高周波数成分を減衰させることを含む。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1212は、「Mix2
B」を得るためのMix2のフィルタリングに対応する。
【0100】
ステップ1214で、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号(−g4.RRなど)、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号(g3.RLなど)、およびフロントベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(g1.FLなど)の位相を調整して、それぞれに時間遅延を導入する。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1214は、ILおよびORの式において「−Mix1
B」に到達するためにMix1
Bに時間遅延を導入することに対応する。
【0101】
ステップ1216で、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号(−g4.RLなど)、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号(g3.RRなど)、およびフロントベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(g1.FRなど)の位相を調整して、それぞれに時間遅延を導入する。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1216は、OLおよびIRの式において「−Mix2
B」に到達するためにMix2
Bに時間遅延を導入することに対応する。
【0102】
ステップ1218で、フロントベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(FLなど)、リアベース左方傾斜である1つまたは複数の信号(RLなど)、およびステップ1214におけるすべての調整された信号(−Mix2
Bなど)を左外側スピーカ104へ送る。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1218は、式、OL=FL+RL−Mix2
Bで表される信号を、サラウンドサウンド生成のために左外側スピーカ104へ送ることに対応する。
【0103】
ステップ1220で、フロントベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号(FRなど)、リアベース右方傾斜である1つまたは複数の信号(RRなど)、およびステップ1216におけるすべての調整された信号(−Mix1
Bなど)を右外側スピーカ110へ送る。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1220は、式、OR=FR+RR−Mix1
Bで表される信号を、サラウンドサウンド生成のために右外側スピーカ104へ送ることに対応する。
【0104】
ステップ1222で、センターベースである1つまたは複数のオーディオ信号[すなわち離散中央オーディオ信号(C)]およびステップ1210におけるすべてのフィルタリングされた信号(Mix1
Bなど)を左内側スピーカ106へ送る。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1222は、式、IL=g2.C+Mix1
Bで表される信号を、サラウンドサウンド生成のために左内側スピーカ106へ送ることに対応する。
【0105】
ステップ1224で、センターベースである1つまたは複数のオーディオ信号[すなわち離散中央オーディオ信号(C)]、およびステップ1212におけるすべてのフィルタリングされた信号(Mix2
Bなど)を右内側スピーカ108へ送る。前述のオーディオシステム100およびその数式を参照すると、ステップ1224は、式、IR=g2.C+Mix2
Bで表される信号を、サラウンドサウンド生成のために右内側スピーカ108へ送ることに対応する。
【0106】
サブウーファ(
図1、
図11の126など)を有する例示的実施形態では、
図12を参照して説明する方法は、1つまたは複数の低域効果音オーディオ信号を、低音生成のために1台または複数のサブウーファへ送るステップをさらに含むように調整され得る。また方法は、マルチチャンネルオーディオ信号のそれぞれを低域フィルタに通すステップ(
図11の低域フィルタ1102の使用など)、続いて、ステップ1218、1220、1222、および1224の前に、1つまたは複数の低域効果音オーディオ信号[サブウーファオーディオ信号など]を除くマルチチャンネルオーディオ信号のそれぞれを高域フィルタに通すステップ(FL
H、RL
H、FR
H、RR
H、およびC
Hを生成するステップなど)、最後に、低域フィルタに通されたマルチチャンネルオーディオ信号のそれぞれ(S’=s1.FL
L+s1.FR
L+S2.RL
L+s2.RR
L+s3.C
L+s4.S
Lなど)を、低音生成のためにサブウーファに送るステップも含んでもよい。また、サブウーファ(
図1、
図11の126など)を有する例示的実施形態では、方法は、ステップ1210およびステップ1212のフィルタリングが、ステップ1210およびステップ1212でフィルタリングされる信号を高域フィルタに通してさらに処理するための高周波数信号を分離することを含み、すべての低周波数信号がサブウーファに送られるようなものとすることもできる。
【0107】
ステップ1202およびステップ1204で、調整されるすべての信号の振幅は第1の倍率(
図8のg4など)で調整されてもよく、第1の倍率は0.35から0.75の範囲内とすることができる。
【0108】
ステップ1206およびステップ1208で、調整されるすべての信号の振幅は第2の倍率(
図8のg3など)で調整されてもよく、第2の倍率は0.7から1.5の範囲内とすることができる。
【0109】
フロントベース左方傾斜およびフロントベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号の振幅は、第3の倍率(
図2のg1など)で調整されてもよく、第3の倍率は0.5から1の範囲内とすることができる
【0110】
ステップ1222およびステップ1224で、センターベースである1つまたは複数のオーディオ信号[離散センターベースオーディオ信号(C)など]は、−3デシベル(g2≒0.707)でスケーリングされ得る。
【0111】
本発明の例示的実施形態は、5.1オーディオチャンネル入力についてのみならず、2つのオーディオチャンネル入力についてのサラウンドサウンド生成を提供することもできることが理解される。
【0112】
例えば、本発明の例示的実施形態のオーディオシステムは、左チャンネルオーディオ入力と右チャンネルオーディオ入力からなるステレオ(すなわち2)チャンネルオーディオ信号を、4台のスピーカ(
図1の左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、および右外側スピーカ110など)上でのサラウンドサウンド生成のためのオーディオ入力信号へと変換するのに使用することもできる。これは、ステレオ・チャンネル・オーディオ信号の左チャンネルオーディオ信号をマルチチャンネルオーディオ信号のフロントベース左方傾斜オーディオ信号として提供し、ステレオ・チャンネル・オーディオ信号の右チャンネルオーディオ信号をマルチチャンネルオーディオ信号のフロントベース右方傾斜オーディオ信号として提供し、ゼロ信号を、低域効果音オーディオ信号として類別される1つまたは複数のオーディオ信号と、センターベース、リアベース左方傾斜、およびリアベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号のそれぞれとして提供することによって実現することができる。
【0113】
換言すれば、
図1のオーディオシステム100を参照すると、
離散左前方オーディオ信号222(FL)は、ステレオ・チャンネル・オーディオ信号の左チャンネルオーディオ信号で置換され、
離散右前方オーディオ信号224(FR)は、ステレオ・チャンネル・オーディオ信号の右チャンネルオーディオ信号で置換され、
離散中央オーディオ信号604(C)、離散左後方オーディオ信号824(RL)、および離散右後方オーディオ信号826(RR)は、信号処理のために0に設定され、または無視される。
【0114】
適切な信号を0に設定し、上記信号を、オーディオ入力としての左右のチャンネルオーディオ信号で置換した後で、ステレオ・チャンネル・オーディオ信号についての混合および処理を、入力として5.1オーディオチャンネル信号を有するオーディオシステム100の場合において説明したのと同様に実行することができる。結果は、入力としてステレオ・チャンネル・オーディオ信号を用いるオーディオシステム100によるサラウンドサウンド効果の生成になる。
【0115】
5.1より多くのオーディオチャンネル入力を有する例示的実施形態では、フロントベース左方傾斜、フロントベース右方傾斜、リアベース左方傾斜、リアベース右方傾斜、およびセンターベースであるオーディオ信号だけによってカバーされる方向を上回る方向に音を提供することができる離散オーディオ信号が生じるはずである。例えば、7.1オーディオチャンネル入力は、離散左前方オーディオ信号、離散右前方オーディオ信号、離散中央オーディオ信号、離散左サラウンドオーディオ信号、離散右サラウンドオーディオ信号、離散左後方オーディオ信号、離散右後方オーディオ信号、および低域効果音オーディオ信号を有する。カバーされるもう2つの音源方向は、左サラウンド域と右サラウンド域である。
【0116】
本発明の例示的実施形態のオーディオシステムを使用してサラウンドサウンド生成のために7.1オーディオチャンネル入力を変換するには、本発明の例示的実施形態のオーディオシステムによる信号処理が開始される前に、まず、7.1入力を5.1入力にダウンミックスするためのダウンミキシング前置増幅器または回路が必要である。同様に、6.1、8.1、10.2、22.2などといった他のマルチチャンネルオーディオ入力を5.1入力に変換するためにも、本発明の例示的実施形態のオーディオシステムによる信号処理が開始される前に、まず、適切なダウンミキシング増幅器または回路が必要である。4.1入力に関しては、例示的実施形態のオーディオシステムによる信号処理の前に、5.1入力に変換するための適切なアップミキシング増幅器が必要である。
【0117】
一般に、本発明の例示的実施形態は、聴取領域(
図1の102など)に向けた、複数のスピーカ上でのサラウンドサウンド生成のためのマルチチャンネルオーディオ信号を処理するためのオーディオシステム(
図1の100など)に関するものである。複数のスピーカは、全体として、聴取領域(
図1の102など)に対して前方に位置する。複数のスピーカは、左外側スピーカ(
図1の104など)、左内側スピーカ(
図1の106など)、右内側スピーカ(
図1の108など)、および右外側スピーカ(
図1の110など)を含む。マルチチャンネルオーディオ信号は、1つまたは複数の低域効果音オーディオ信号と、フロントベース左方傾斜、フロントベース右方傾斜、リアベース左方傾斜、リアベース右方傾斜、およびセンターベースである1つまたは複数のオーディオ信号とを含む(5.1チャンネルオーディオ信号など)。
【0118】
オーディオシステムは、リアベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号を生成する(すなわち
図12のステップ1202と一致する)第1の調整手段(
図8の802、206、212など)を含む。
【0119】
オーディオシステムは、リアベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号の位相および振幅を調整して、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号を生成する(すなわち
図12のステップ1204と一致する)第2の調整手段(
図8の804、204、210など)を含む。
【0120】
オーディオシステムは、リアベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号を生成する(すなわち
図12のステップ1206と一致する)第1のスケーリング手段(g3スケーリングのための第9および第11の増幅器など)を含む。
【0121】
オーディオシステムは、リアベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号の振幅を調整して、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号を生成する(すなわち
図12のステップ1208と一致する)第2のスケーリング手段(g3スケーリングのための第10および第11の増幅器など)を含む。
【0122】
オーディオシステムは、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号、およびフロントベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号をフィルタリングする(すなわち
図12のステップ1210と一致する)第1のフィルタリング手段(
図2、
図8の204など)を含む。第1のフィルタリング手段によってフィルタリングされる信号の高周波数成分は減衰される(
図10の1KHzから7KHzの減衰や、
図5の0.5KHzから20KHzの減衰など)。
【0123】
オーディオシステムは、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号、およびフロントベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号をフィルタリングする(すなわち
図12のステップ1212と一致する)第2のフィルタリング手段(
図2、
図8の206など)を含む。第2のフィルタリング手段によってフィルタリングされる信号の高周波数成分は減衰される(
図10に示す1KHzから7KHzの減衰や、
図5に示す0.5KHzから20KHzの減衰など)。
【0124】
オーディオシステムは、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された右後方信号、1つまたは複数の振幅調整された左後方信号、およびフロントベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号を調整して、それぞれに時間遅延を導入する(すなわち
図12のステップ1214と一致する)第1の位相調整手段(
図2、
図8の210など)を含む。
【0125】
オーディオシステムは、1つまたは複数の時間遅延され、振幅調整された左後方信号、1つまたは複数の振幅調整された右後方信号、およびフロントベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号を調整して、それぞれに時間遅延を導入する(すなわち
図12のステップ1216と一致する)第2の位相調整手段(
図2、
図8の212など)を含む。
【0126】
前述の信号処理の後で、オーディオシステムの左外側スピーカは、フロントベース左方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号、リアベース左方傾斜である1つまたは複数の信号、および第1の位相調整手段によって調整されたすべての信号を受け取る(すなわち
図12のステップ1218と一致する)。オーディオシステムの右外側スピーカは、フロントベース右方傾斜である1つまたは複数のオーディオ信号、リアベース右方傾斜である1つまたは複数の信号、および第2の位相調整手段によって調整されたすべての信号を受け取る(すなわち
図12のステップ1224と一致する)。オーディオシステムの左内側スピーカは、センターベースである1つまたは複数のオーディオ信号、および第1のフィルタリング手段によって調整されたすべての信号を受け取る(すなわち
図12のステップ1220と一致する)。オーディオシステムの右内側スピーカは、センターベースである1つまたは複数のオーディオ信号、および第2のフィルタリング手段によって調整されたすべての信号を受け取る(すなわち
図12のステップ1222と一致する)。
【0127】
サブウーファ(
図1、
図11の126など)を有するオーディオシステムの例示的実施形態では、オーディオシステムは、マルチチャンネルオーディオ信号のそれぞれをフィルタリングする低域フィルタリング手段(
図11の低域フィルタ1102の使用など)をさらに含んでもよい。また、オーディオシステムは、左外側スピーカ、右外側スピーカ、左内側スピーカ、および右内側スピーカがオーディオ信号を受け取る前に、1つまたは複数の低域効果音オーディオ信号を除くマルチチャンネルオーディオ信号のそれぞれをフィルタリングする高域フィルタリング手段(高域フィルタ202、208、602、806、812や、帯域フィルタ204、206の高域通過部分など)も含んでもよい。サブウーファ(
図1、
図11の126など)は、低音生成のために低域フィルタに通されたマルチチャンネルオーディオ信号のそれぞれを受け取り得る。さらに、第1のフィルタリング手段(
図2、
図8の204など)および第2のフィルタリング手段(
図2、
図8の206など)は、第1のフィルタリング手段(
図2、
図8の206など)および第2のフィルタリング手段(
図2、
図8の206など)によってフィルタリングされた信号の高域フィルタリングを含んでもよい。
【0128】
図13に、
図1を参照して説明したオーディオシステム100の外装設計の様々な例の上面図を示す。いくつかの参照番号は、構成要素の類似性を示すために各例において繰り返し使用されている。
図13に示す例は非網羅的なものであることが理解される。第3の例1306を除く
図13のすべてのスピーカは、例示のために上面図において可視的に表示されている。各スピーカは、各スピーカのシャーシによって覆われることになるため、実際の実施態様の上面からは見えないはずである。
【0129】
図13に示す第1の例1302は、細長い長方形の立体124上にやはり4台のスピーカが設置されているという点で、
図1のオーディオシステム100に類似している。しかし、この場合、左外側スピーカ104が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面は、左内側スピーカ106が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面に対して180度の角度120をなしている。同様に、右外側スピーカ110が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面も、右内側スピーカ108が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面に対して約180度の角度122をなしている。基本的には、これは、4台のスピーカがすべて、聴取領域102に対面する同じ平面に置かれていることを意味する。第1の例1302にはサブウーファ126がないことがわかる。サブウーファなしの本発明の実施形態では、すべての低周波数可聴範囲生成(すなわち低音)は、4台のスピーカによって処理されるはずである。
【0130】
図13の第2の例1304は、左外側スピーカ104が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面が、左内側スピーカ106が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面に対して、約90度の角度120をなしているという点で例1302と異なる。また、右外側スピーカ110が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面も、右内側スピーカ108が細長い長方形の立体124上に取り付けられている平面に対して、約90度の角度122をなしている。左外側スピーカ104および右外側スピーカ110のそのような約90度の配置を、ラテラルファイアリングまたはサイドファイアリングという。さらに、左内側スピーカ106と右内側スピーカ108との間に、1台ではなく2台のサブウーファ1312(S1)および1314(S2)が位置している。より多くのサブウーファを設ければ、より強い低音を提供することができる。
【0131】
図13の第3の例1306では、左外側スピーカ104が細長い長方形の立体124上に取り付けられている第1の平面1332と、右外側スピーカ110が細長い長方形の立体124上に取り付けられている第2の平面1336とが、三角形の形状を有する。左内側スピーカ106と右内側スピーカ108とが細長い長方形の立体124上に取り付けられている第3の平面1334は、台形として形成されている。第3の例1306において各スピーカ104、106、108、110が取り付けられている各平面1332、1334、1336は、第1の例1302および第2の例1304において各スピーカ104、106、108、110が取り付けられている、それぞれ、前方に面しており(すなわち聴取領域102に面しており)、または側方に面している(すなわち第2の例1304のサイドファイアリング構成)平面とは異なり、傾斜し、または勾配がついている。傾斜および勾配により、第1の平面1332と第2の平面1334との角度と、第3の平面1336と第2の平面1334との角度は、第3の例1306の細長い長方形の立体124の高さに従って変動する。第3の例1306は、本発明の一実施形態で、スピーカが、そのような傾斜した、または勾配のついた位置に位置していてもよいことを示している。さらに、別の例示的実施形態では、第3の例1306に1つまたは複数のサブウーファを含めることもできるはずであることも理解される。
【0132】
図13の第4の例1308では、5台の別々のユニット1316、1318、1320、1322、1324がある。左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、右外側スピーカ110、およびサブウーファ126は、それぞれ、別々のユニットに取り付けられている。
【0133】
図13の第5の例1310は、3台の別々のユニット1326、1328、1330になるように配置されている。左外側スピーカ104と左内側スピーカ106とは、1台の個別ユニット1326の同じ前向きの平面上に取り付けられている。右内側スピーカ108と右外側スピーカ110とは、別の個別ユニット1330の同じ前向きの平面上に取り付けられている。サブウーファ126は、さらに別の個別ユニット1328に取り付けられている。
【0134】
第4の例1308および第5の例1310は、本発明の実施形態で、1台または複数のスピーカを、残りのスピーカから分離された1台または複数の個別ユニットに取り付けることもできることを示すためのものである。
【0135】
図14に、
図1を参照して説明したオーディオシステム100の外装設計の第6の例1412の上面図および正面図を示す。構成要素の類似性を示すために前述の参照番号を繰り返し使用する。第6の例412では、5台の個別ユニット1402、1404、1406、1408、1410がある。左外側スピーカ104、左内側スピーカ106、右内側スピーカ108、右外側スピーカ110、およびサブウーファ126はそれぞれ、個別ユニットに取り付けられている。左外側スピーカ104を有するユニット1402は左内側スピーカ106を有するユニット1404の上に積み重ねられており、右外側スピーカ108を有するユニット1408は右内側スピーカ110を有するユニット1410の上に積み重ねられている。さらに、左内側スピーカ106および右内側スピーカ110は前方を向いており、左外側スピーカ104および右外側スピーカ108は、それぞれ、左内側スピーカ106および右内側スピーカ110との前向きの平面に対して角度1414をなして相互に逆方向を向いている。この角度1414は、0から90度の範囲内とすることができる。本発明の別の例示的実施形態では、左外側スピーカ104を有するユニット1402を、左内側スピーカ106を有するユニット1404の下に積み重ねることもでき、右外側スピーカ108を有するユニット1408を、右内側スピーカ110を有するユニット1410の下に積み重ねることもできることが理解される。本明細書で使用する「積み重ねる」という語は、単に接触することを意味するだけではなく、ユニット1402をユニット1404に、ユニット1408をユニット1410に永続的に取り付けることも含む。第6の例1412の利点は、
図13のその他の例と比べて設置空間がより小さくて済むことである。
【0136】
前述の開示と図面との理解を有する当業者によれば、本明細書で説明した、聴取領域に向けた複数のスピーカ上でのサラウンドサウンド生成のためのマルチチャンネルオーディオ信号を処理するための方法およびオーディオシステムに対する多くの改変形態および他の実施形態を実施することが可能である。したがって、聴取領域に向けた複数のスピーカ上でのサラウンドサウンド生成のためのマルチチャンネルオーディオ信号を処理するための方法およびオーディオシステム、ならびにその効用は、本明細書に含まれる前述の説明だけに限定されるべきでなく、本開示の特許請求の範囲には可能な改変が含まれるべきであることを理解すべきである。