(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788904
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】関節リウマチの検査方法及び関節リウマチ検査用キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20150917BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-548684(P2012-548684)
(86)(22)【出願日】2011年6月14日
(86)【国際出願番号】JP2011063563
(87)【国際公開番号】WO2012081271
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年1月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-279005(P2010-279005)
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510180946
【氏名又は名称】株式会社ケイティーバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】津坂 憲政
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−510464(JP,A)
【文献】
特開2003−024099(JP,A)
【文献】
特開2004−012447(JP,A)
【文献】
特開2005−127754(JP,A)
【文献】
特開2010−071833(JP,A)
【文献】
国際公開第03/072827(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/089152(WO,A1)
【文献】
Li tianwang et al.,Distinct proteomic profile in Ankylosing spondylitis patient: Talin1 is anew valuable biomarker for diagnosis and treatment,Arthritis & Rheumatism,2008年 9月,Vol.58,No.9,P.s350-s351
【文献】
吉藤元 ほか,カルパイン・カルパスタチンと関節リウマチ,臨床リウマチ,2005年 9月30日,Vol.17,No.3 ,P.160-165
【文献】
Martin Schulz et al.,Proteomic Analysis of Peripheral Blood Mononuclear Cells: SelectiveProtein Processing Observed in Patients with Rheumatoid Arthritis,J. Proteome Res.,2007年 9月 1日,Vol.6,No.9,p.3752-3759
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検動物の血漿中又は血清中におけるタリン量を測定する工程を含む関節リウマチの検査方法。
【請求項2】
前記被検動物より採取された血液から血漿又は血清を得る工程をさらに含む請求項1記載の関節リウマチの検査方法。
【請求項3】
タリンに結合する抗体を用いて、前記血漿中又は血清中のタリン量を測定する請求項1又は2記載の関節リウマチの検査方法。
【請求項4】
前記被検動物がヒトである請求項1から3のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法。
【請求項5】
関節リウマチの診断又は関節リウマチ治療薬の治療効果の判定のために行われる請求項1から4のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法。
【請求項6】
タリン量が、関節リウマチに罹患していない対照動物よりも多い場合に関節リウマチに罹患していると判断することを含む、請求項1から5のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法。
【請求項7】
関節リウマチ治療薬の投与後におけるタリン量が、投与前におけるタリン量よりも低下していれば、前記治療薬が有効であると判定することを含む、請求項1から5のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法。
【請求項8】
タリンに結合する抗体を含む、
請求項1から7のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法に使用するための関節リウマチ検査用キット。
【請求項9】
前記抗体は、固相担体に固着させている、請求項8記載の関節リウマチ検査用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチの検査方法、及びそのような検査方法に使用される関節リウマチ検査用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は、関節の滑膜組織を病変の主座とする慢性炎症性疾患であり、有病率が人口の約1%を占める疾患である。関節リウマチは、その初期には滑膜炎を来し、次第に軟骨や骨が侵され、進行すると関節が破壊され変形する。また、症状の経過は、関節炎の寛解・再燃を繰り返し、完治する例や急速に進行する例など多彩である。
【0003】
関節リウマチの診断は主に症状によってなされるが、近年、患者の血清中に含まれる自己抗体をマーカーとした診断方法が注目されている。そのような自己抗体としては、リウマトイド因子(変性IgGに対する自己抗体)、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)等が知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、これまでの報告では、リウマトイド因子の感度は75〜80%、特異度は50〜70%、抗CCP抗体の感度は50〜75%、特異度は85〜95%であり、必ずしも満足のいくものではなかった(非特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Martinus A. M. et al., Arthritis Res. Ther., 4: 87−93, 2002
【非特許文献2】Avouac J. et al., Ann. Rheum. Dis. 65: 845−851, 2006
【非特許文献3】van Venrooij WJ. et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. 1143: 268−285, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、これまでに知られていない新規マーカーの探索を行い、見出された新規マーカーをもとに関節リウマチの検査方法及び関節リウマチ検査用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
関節リウマチ患者では、血中のリンパ球が活性化されて血管内皮細胞との細胞接着が亢進するのと同時にリンパ球遊走も亢進する結果、血管外にリンパ球が浸潤し、この浸潤リンパ球が様々な炎症を引き起こすことが知られている。そこで本件発明者は、新規マーカーの探索を行うにあたり、細胞と基質とが接着する領域、特にリンパ球内では細胞接着領域に主に集中して発現される高分子細胞骨格タンパク質であるタリン(Talin)に着目した。
【0008】
タリンは、FERM領域を含む分子量47kDaのN末端領域と、一束のαヘリックスからなる分子量190kDaのC末端領域とから構成されるタンパク質である。FERM領域はさらに、N末端側からF1ドメイン、F2ドメイン、F3ドメインの3つのサブ領域に分けられている。生体内では、カルパイン(Calpain)によって切断されたN末端領域のポリペプチド、その中でもF3ドメインがインテグリンβサブユニットに結合し、インテグリンの細胞内から細胞外へのシグナル伝達を増強させ、細胞接着や細胞遊走を亢進することが知られている。
【0009】
本件発明者は、関節リウマチ患者の血漿又は血清中におけるタリンの存在について検討した。その結果、意外にも、関節リウマチ患者においてはタリンが血漿又は血清中に優位に存在することを見出した。また、関節リウマチ治療薬によって関節リウマチが低疾患活動性又は寛解に至った場合には、タリン量が有意に低下することを見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、具体的には以下のとおりである。
【0010】
(1) 被検動物の血漿中又は血清中におけるタリン量を測定する工程を含む関節リウマチの検査方法。
(2) 上記被検動物より採取された血液から血漿又は血清を得る工程をさらに含む上記(1)記載の関節リウマチの検査方法。
(3) タリンに結合する抗体を用いて、上記血漿中又は血清中のタリン量を測定する上記(1)又は(2)記載の関節リウマチの検査方法。
(4) 上記被検動物がヒトである上記(1)から(3)のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法。
(5) 関節リウマチの診断又は関節リウマチ治療薬の治療効果の判定のために行われる上記(1)から(4)のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法。
(6) 上記(1)から(5)のいずれか1項記載の関節リウマチの検査方法に使用するための関節リウマチ検査用キット。
(7) タリンに結合する抗体を固着させた固相担体を含む上記(6)記載の関節リウマチ検査用キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新規な関節リウマチの検査方法、及びそのような検査方法に使用される関節リウマチ検査用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】H−18抗体及びH−300抗体を用いたサンドイッチELISA法による関節リウマチ診断(実施例1)のROC曲線を示す図である。
【
図2】H−18抗体及びM54246M抗体を用いたサンドイッチELISA法による関節リウマチ診断(実施例2)のROC曲線を示す図である。
【
図3】抗CCP抗体を用いた関節リウマチ診断(比較例1)のROC曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<関節リウマチの検査方法>
本発明に係る関節リウマチの検査方法は、被検動物の血漿中又は血清中におけるタリン量を測定する工程を含むものである。この検査方法は、被検動物より採取された血液から血漿又は血清を得る工程をさらに含んでいてもよい。
【0014】
被検動物としては、関節リウマチに罹患し得る動物であれば特に制限はなく、目的に応じて選択することができる。例えば、ヒト、ラット、マウス、イヌ、ウシ、ネコ、ウサギ、モルモット等が挙げられるが、その中でもヒトが好ましい。
【0015】
また、血漿及び血清の取得方法は特に限定されず、従来公知の方法、例えば血液から臨床検査用検体として取得する血漿、血清の分離方法に準じることができる。例えば、血液をEDTA管やヘパリン管等に採り、遠心分離することにより、血漿を得ることができる。また、血液を試験管等に採り、遠心分離することにより、血清を得ることができる。
【0016】
本発明に係る関節リウマチの検査方法では、このようにして得られた血漿中又は血清中におけるタリン量を測定する。ここで、「タリン量」とは、タリンのタンパク質量を意味する。タリンが複数のアイソフォームを有する場合、そのいずれを測定してもよい。例えばヒトの場合、タリン1、タリン2の2種類のアイソフォームが存在する。タリン1のmRNA配列、アミノ酸配列をそれぞれ配列番号1,2に示す。また、タリン2のmRNA配列、アミノ酸配列をそれぞれ配列番号3,4に示す。
【0017】
被検動物の血漿中又は血清中におけるタリン量は、タリンに結合する抗体を用いて、免疫化学的方法により測定することができる。
【0018】
タリンに結合する抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、場合によっては、抗体のフラグメント、例えばFab’、Fab、F(ab’)
2を用いることができる。これらの抗体は、従来公知の方法により作製することができる。
市販品としては、H−18抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー社)、H−300抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー社)、TA205抗体(アブカム社)、M54246M抗体(バイオデザイン社)等が挙げられる。
【0019】
タリン量の測定は、公知のエンザイムイムノアッセイ(EIA)、ケミルミネッセントイムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フルオロイムノアッセイ、ラテックス凝集法等の方法を採用して実施できる。具体的には、例えば、抗体及び標識抗原を用いる競合法、抗原に対する認識部位が異なる2種類のモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体(あるいはモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体)を組み合わせて用いるサンドイッチEIA法、抗体を固着させたラテックス粒子を用いるラテックス凝集法等が挙げられる。
【0020】
これら測定法においては、必要に応じて、抗原又は抗体を適当な固相担体に固着させることができる。固相担体としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂等の合成樹脂、セルロース、アガロース等の多糖類、ガラス、金属等が挙げられる。この固相担体は、マイクロプレート状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、試験管等の種々の形状とすることができる。
【0021】
上述のような免疫化学的方法において、抗体や抗原は必要に応じて標識したものが使用される。このような標識としては、酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、発光物質(アクリジニウムエステル、イソルミノール、ルシフェリン等)のほか、放射性同位元素(
124I、
14C、
3H)、蛍光物質(フルオレッセインイソチオシアネート等)等が挙げられる。このほか、ビオチン標識とストレプトアビジンとを組み合わせて用いる方法も採用できる。
【0022】
以上のようにして被検動物の血漿中又は血清中におけるタリン量を測定・定量することにより、関節リウマチへの罹患を簡便に診断することができる。すなわち、血漿中又は血清中におけるタリン量が所定の閾値よりも多い場合には、関節リウマチに罹患していると判断することができる。この所定の閾値は、例えば、関節リウマチに罹患していない対照動物の血漿又は血清における平均値等に基づいて設定することができる。
【0023】
また、関節リウマチ治療薬の投与前後におけるタリン量を測定・定量することにより、該治療薬による治療効果を簡便に判定することができる。すなわち、関節リウマチ治療薬の投与後におけるタリン量が投与前におけるタリン量よりも有意に低下していれば、その治療薬が有効であると判定することができる。
【0024】
ここで、関節リウマチ治療薬としては、従来公知の治療薬及び今後開発される全ての治療薬を含めることができる。従来公知の関節リウマチ治療薬としては、例えば生物学的製剤、非ステロイド性抗炎症薬(消炎鎮痛薬)、ステロイド薬、免疫抑制剤等が挙げられる。
生物学的製剤としては、キメラ型抗TNF−α抗体製剤、可溶性TNFレセプターや、完全ヒト型抗TNF−α抗体製剤、抗IL−6レセプター抗体製剤等が挙げられる。非ステロイド性抗炎症薬としては、プロスタグランジン産生抑制剤が挙げられ、関節の痛みや腫れを軽減化させることはできるが、疾患自体の進行や骨・関節の破壊を抑制することは困難といわれている。ステロイド薬は、優れた抗炎症効果により、関節リウマチの特効薬として利用されているが、その副作用も問題である。免疫抑制剤は、関節リウマチ患者の免疫異常を改善させることにより関節リウマチの炎症を抑制し、寛解導入を目的とするものであり、関節リウマチの進行を阻止する可能性があることから、疾患修飾性抗リウマチ薬ともいわれている。効果発現までに時間を要することから遅効性抗リウマチ薬とも呼ばれている。
上記のように、関節リウマチ治療薬は多種類存在するが、治療薬の効果の程度を判定し、最も効果的な治療薬を選択するためにも、本発明に係る検査方法は有用である。
【0025】
<関節リウマチ検査用キット>
本発明に係る関節リウマチ検査用キットは、本発明に係る関節リウマチの検査方法に使用するためのものである。この診断用キットには、例えば、タリンに結合する抗体を固着させた固相担体が含まれる。また、標識された2次抗体や発色基質等が含まれていてもよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって何ら限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例1,2、比較例1では、関節リウマチ患者(RA患者)17例、コントロール14例(変形性関節症患者8例、全身性エリテマトーデス患者1例、糖尿病患者1例、健常者4例)を被検者とした。また、以下の実施例3では、RA患者5例を被検者とした。
【0027】
<実施例1>
各被検者の血液をEDTA管に採り、室温で10分間、2500rpmで遠心分離することにより血漿を得た。
【0028】
この血漿中におけるタリン量をサンドイッチELISA法により測定した。
まず、タリンのN末端を認識するH−18抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー社)を1μg/mLとなるようにリン酸緩衝液(PBS)で希釈し、100μL/wellとなるように96穴マイクロプレートに加え、4℃で一晩インキュベートした後、200μL/wellの洗浄液で3回洗浄した。次いで、各被検者の血漿を100μL/wellとなるように96穴マイクロプレートに加え、25℃で1時間インキュベートした後、200μL/wellの洗浄液で3回洗浄した。次いで、一次抗体としてタリンのN末端を認識するH−300抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー社)を2μg/mLとなるようにPBSで希釈し、100μL/wellとなるように96穴マイクロプレートに加え、25℃で1時間インキュベートした後、200μL/wellの洗浄液で3回洗浄した。次いで、二次抗体としてHRP標識抗ヤギIgG抗体(KPL社)を2μg/mLとなるようにPBSで希釈し、100μL/wellとなるように96穴マイクロプレートに加え、25℃で1時間インキュベートした後、200μL/wellの洗浄液で3回洗浄した。
次いで、基質を100μL/wellとなるように96穴マイクロプレートに加え、25℃で15分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダーを用いて波長630nmのOD値を測定した。
【0029】
実施例1におけるROC曲線を
図1に示す。ROC解析の結果、
図1についてのROC曲線下面積(AUC)は0.954であった。また、OD=0.20をカットオフ値とした場合の陽性、陰性の別を下記表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
この結果から、H−18抗体及びH−300抗体を用いたサンドイッチELISA法による関節リウマチ診断は、感度が14/17×100=82.4%、特異度が14/14×100=100%であった。
【0032】
<実施例2>
一次抗体としてタリンのC末端を認識するM54246M抗体(バイオデザイン社)を用いたほかは実施例1と同様にして、血漿中におけるタリン量をサンドイッチELISA法により測定した。
実施例2におけるROC曲線を
図2に示す。ROC解析の結果、
図2についてのROC曲線下面積(AUC)は0.819であった。また、OD=0.05をカットオフ値とした場合の陽性、陰性の別を下記表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
この結果から、H−18抗体及びM54246M抗体を用いたサンドイッチELISA法による関節リウマチ診断は、感度が15/17×100=88.2%、特異度が11/14×100=78.6%であった。
【0035】
<比較例1>
各被検者の血液を血清用採血管に採り、室温で10分間、2,500rpmで遠心分離することにより血清を得た。この血清中における抗CCP抗体価を、市販キット(メサカップCCP、MBL社)を用いて測定した。
比較例1におけるROC曲線を
図3に示す。ROC解析の結果、
図3についてのROC曲線下面積(AUC)は0.838であった。また、抗体価=6.60をカットオフ値とした場合の陽性、陰性の別を下記表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
この結果から、抗CCP抗体を用いた関節リウマチ診断は、感度が11/17×100=64.7%、特異度が13/14×100=92.9%であった。
【0038】
以上の結果から分かるように、RA患者の血中にはタリンが優位に存在し、したがって、血中のタリン量を測定することにより、関節リウマチへの罹患を簡便に検査することが可能である。しかも、その検査方法は、抗CCP抗体を用いた既存の方法よりも感度に優れたものである。
【0039】
<実施例3>
5名のRA患者に対する関節リウマチ治療薬の治療効果を、タリン量の測定により確認した。タリン量の測定は、実施例1と同様に、H−18抗体及びH−300抗体を用いたサンドイッチELISA法によりOD値を測定することにより行った。また、通常の臨床検査と同手法により、CRP量、MMP−3量の測定も行った。さらに、ヨーロッパリウマチ連盟(EULAR)が推奨するDAS(Disease Activity Score)28のスコアも算出した。DAS28のスコアは、5.1以上が高疾患活動性、3.2以上5.1未満が中疾患活動性、3.2未満が低疾患活動性と判断される。結果を下記表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
症例1は、MTX(メトトレキサート)を用いた治療にADA(アダリムマブ)を併用することによって、EULARの反応性基準に当てはめたときにgood responder(DAS28:5.43→2.62)であった一例である。タリン量は、MTXのみの場合には高値(OD値:0.568)であったが、ADAを併用することによって正常値(OD値:0.139)となっていた。一方、MMP−3量は、ADAの併用によっても有意な低下を示さず、関節リウマチの病態を反映していなかった。
【0042】
症例2は、SASP(サラゾスフファピリジン)を用いた治療によっても、EULARの反応性基準に当てはめたときにnone responder(DAS28:5.12→4.21)であった一例である。タリン量は、SASP治療によっても高値のまま(OD値:0.258→0.294)であった。一方、CRP量はSASP治療後に正常値(0.19mg/dL)となっており、関節リウマチの病態を反映していなかった。
【0043】
症例3は、MTX(メトトレキサート)を用いた治療にIFX(インフリキシマブ)を併用したにも関わらず、none responder(DAS28:4.87→3.95)であった一例である。タリン量は、IFXの併用によっても高値のまま(OD値:0.205→0.223)であった。
【0044】
症例4は、BUC(ブシラミン)を用いた治療にADA(アダリムマブ)を併用することによって、good responder(DAS28:4.55→2.45)であった一例である。タリン量は、BUCのみの場合には高値(OD値:0.258)であったが、ADAを併用することによって正常値(OD値:0.164)となっていた。
【0045】
症例5は、TCZ(トシリズマブ)を用いた治療によっても、none responder(DAS28:5.09→4.50)であった一例である。タリン量は、TCZ治療によっても高値のまま(OD値:2.093→1.787)であった。
【0046】
以上の結果から分かるように、血中のタリン量は、関節リウマチの病態と相関しており、しかも、CRPやMMP−3といった他の因子よりも関節リウマチの病態を正確に反映していた。したがって、血中のタリン量を測定することにより、関節リウマチ治療薬による治療効果を簡便且つ正確に判定することができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]