特許第5788910号(P5788910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788910
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】多層材とそれに関する製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/10 20060101AFI20150917BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20150917BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20150917BHJP
   A44C 11/00 20060101ALI20150917BHJP
   A47B 96/20 20060101ALI20150917BHJP
   B27D 1/04 20060101ALI20150917BHJP
   B27M 3/24 20060101ALI20150917BHJP
   G02C 5/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B32B15/10
   A44C5/02 E
   A44C5/02 F
   A44C5/00 502A
   A44C11/00
   A47B96/20 C
   B27D1/04 F
   B27M3/24 Z
   G02C5/00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-553411(P2012-553411)
(86)(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公表番号】特表2013-520331(P2013-520331A)
(43)【公表日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】IB2011000342
(87)【国際公開番号】WO2011101735
(87)【国際公開日】20110825
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】UD2010A000032
(32)【優先日】2010年2月22日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512216414
【氏名又は名称】マッテローネ エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】MATTELLONE SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100117042
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 正志
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】マッテローネ ドリアーノ
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−106707(JP,A)
【文献】 実開昭63−43723(JP,U)
【文献】 特公昭30−6695(JP,B1)
【文献】 実開昭49−79679(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
A44C 1/00−27/00
A47B 96/00−97/08
B27D 1/00−1/10
B27M 3/00−3/38
G02C 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層材であって、
複数の木質系薄板(14)と、
少なくとも2つの前記木質系薄板(14)の間に介在する少なくとも1つの金属材の層(11、12)と備え
前記木質系薄板(14)、前記多層材の表面に配置される外部木質系薄板(14a)と、前記外部木質系薄板(14a)の内部に配置される1つ以上の内部木質系薄板(14b、114b)と、有し
少なくとも1つの前記内部木質系薄板(114b)は、その端部が隣接する前記内部木質系薄板と前記外部木質系薄板(14a)の端よりも上流位置するように、その厚さが端部に向かって緩やかに減少し、前記多層材の総厚さがこれに対応して緩やかに変化ることを特徴とする多層材。
【請求項2】
少なくとも2つの前記金属材の層(11、12)を有し、そのうち第1層(11)は少なくとも2つの前記木質系薄板(14)の間に介在しており、第2層(12)は、同様に、少なくとも2つの前記木質系薄板(14)の間に介在していることを特徴とする請求項1に記載の多層材。
【請求項3】
少なくとも2つの前記金属材の層(11、12)を有し、そのうち第1層(11)は少なくとも2つの前記木質系薄板(14)の間に介在し、第2層(12)は前記木質系薄板(14)の1つの外側に配設されることを特徴とする請求項1に記載の多層材。
【請求項4】
少なくとも1つの前記金属材の層(11、12)は、その端部が少なくとも1つの前記外部木質系薄板(14a)の端よりも上流位置するように、その厚さが端部に向かって緩やかに減少し、前記多層材の総厚さがこれに対応して緩やかに変化
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層材。
【請求項5】
少なくとも1つのプラスチックまたはアセテート材で作製された内部層を含み、
前記少なくとも1つのプラスチックまたはアセテート材で作製された内部層は、その端部が前記外部木質系薄板(14a)またはそれに隣接する少なくとも1つの前記金属層(11、12)の端よりも上流位置するように、その厚みが端部に向かって緩やかに減少し、前記多層材の総厚さがこれに対応して緩やかに変化
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層材。
【請求項6】
前記少なくとも1つの金属材の層(11、12)は、箱、缶またはブリキ缶の、錫またはアルミニウム容器に由来するリサイクル材から作製されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層材。
【請求項7】
前記少なくとも1つの金属材の層(11、12)は、工業製品である薄板またはロールの金属材の、工業的工程に由来する新しい金属材から作成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層材。
【請求項8】
少なくとも1つの外側表面に配設される少なくとも1つのカバー薄板を含む
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層材(10)で作成された、家具装飾品、家用付属品、ガジェットまたは人用装飾品の物品。
【請求項10】
複数の木質系薄板(14)を有する多層材(10)を作製する方法であって、
複数の木質系薄板(14)を配置する工程と、
2つの前記木質系薄板(14)の間に少なくとも1つの金属材の層(11、12)を介在させる工程と、
隣接する前記木質系薄板(14)の間および前記金属層(11、12)と隣接する前記木質系薄板(14)の間に適切な接着剤(15)を介在させる工程と、
このように構成された前記木質系薄板(14)および前記金属材の層(11、12)に適切な圧力を印加し、それらの相互接着を得る工程と、を備え
前記複数の木質系薄板(14)は、前記多層材の表面に配置される外部木質系薄板(14a)と、前記外部木質系薄板(14a)に対する1つ以上の内部木質系薄板(14b、114b)と、を有し、
前記内部木質系薄板(14b、114b)のうち少なくとも1つ(114b)その端部が隣接する前記内部木質系薄板および前記外部木質系薄板(14a)の端よりも上流位置するように、その厚さが端部に向かって緩やかに減少し、前記多層材の総厚さがこれに対応して緩やかに変化
ことを特徴とする多層材の作製方法。
【請求項11】
前記金属材の層(11、12)のうち2つを配設する工程であって、第1層(11)は少なくとも2つの前記木質系薄板(14)の間に介在させ、第2層(12)は同様に少なくとも2つの前記木質系薄板(14)の間に介在させる工程を有する
ことを特徴とする請求項10に記載の多層材の作製方法。
【請求項12】
前記金属材の層(11、12)のうち2つを配設する工程であって、
第1層(11)は2つの前記木質系薄板(14)の間に介在させ、第2層(12)は前記木質系薄板(14)の1つの外側に配設する工程を有する
ことを特徴とする請求項10に記載の多層材の作製方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの金属材の層(11、12)その端部が隣接する前記内部木質系薄板および前記外部木質系薄板(14a)の端よりも上流位置するように、その厚みが端部に向かって緩やかに減少し、前記多層材の総厚さがこれに対応して緩やかに変化
ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の多層材の作製方法。
【請求項14】
プラスチックまたはアセテート材で作製された少なくとも1つの層を、2つの前記木質系薄板(14)の間に介在させる、及び/または、前記木質系薄板(14)と前記金属材の層(11、12)との間に介在させる工程と、
前記プラスチックまたはアセテート材で作製された層と、前記木質系薄板(14)及び/または前記金属材の層(11、12)との間に適切な接着剤(15)を介在させる工程と、をさらに備え、
前記相互接着を得る工程は、前記木質系薄板(14)と、前記金属材の層(11、12)と、前記プラスチックまたはアセテート材で作製された層と、によって構成された多層材に適切な圧力を印加し、それらの相互接着を得るものであり、
前記プラスチックまたはアセテート材で作製された層は、その端部が隣接する前記内部木質系薄板および前記外部木質系薄板(14a)の端よりも上流位置するように、その厚みが端部に向かって緩やかに減少し、前記多層材の総厚さがこれに対応して緩やかに変化
ことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の多層材の作製方法。
【請求項15】
少なくとも1つの前記金属材の層(11、12)が、適当な寸法の錫またはアルミニウムの容器を切削または平坦化することで直接得られる
ことを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載の多層材の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層タイプ多層材を作製する方法と、同方法を用いて作製された多層材と、に関する。
【0002】
本発明は、それには限られないが、様々な形状(複雑かつ形作られている場合も)かつ限られた寸法の製品を作製するのに有益に用いられることができる。例えば、家具装飾品、家用付属品、ガジェット(小物)、個人または服飾のため装飾品、例えば、眼鏡のフレーム、時計用ストラップ、ブレスレット他である。
【背景技術】
【0003】
多層材は、様々な種類の材料の複数の層または薄板(層毎に異なる種類の場合も)を接着剤で接着させて共に組み立てることで得られることが知られている。
【0004】
例えば、積層多層材は、高価でない木材または木材代替材の複数の薄板から作製されており、それら複数の薄板は接着剤で共に接着され、少なくとも一つの側面が外側から強化層で覆われている。
【0005】
通常、強化層は合成樹脂または金属箔で作製されており、それらは得られる仕上げに応じて選ばれる。
【0006】
しかし、合成樹脂の強化層を有する積層多層材は手頃な価格で得ることができる一方で、金属製の強化層を有する積層多層材は遥かに高価であり、主に家具分野で用いられている。それらは、贈答品および小物分野、または、個人用装飾品またはガジェットにはめったに用いられない。
【0007】
特許番号IT−B−1370285(本願と同出願人)は、木材材料または木材代替の内部層および1つまたは2つの強化層、または、その1つまたはそれ以上の内部層の外側にあるカバー層、を備えた多層材に関して記載する。外部層は、箱、缶またはブリキ缶などの錫またはアルミニウム容器に由来するリサイクル材、または工業的に製造された材料から作製することができる。
【0008】
金属層と木材の層とが互いに組み入れられている多層材の他例が、US−A−5,026,593、GB−A−2,306,389、およびUS−A1−2003/0009976に記されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
公知の多層材の一つの欠点は、すべての層が同じ厚さを有しているので、所望の曲線形状や小さな寸法を有する異なる製品を得るために容易に変形するように機能しないことである。つまり、多層材の全体的な厚さが不変である場合、例えば眼鏡のフレームの場合のように、湾曲および複雑な形を有する製品を得るための、容易な曲げおよび成形作業を許容しない。実際、材料に与えられた過剰な湾曲は、内部層内に亀裂および/または破損を引き起こし得る。さらに、強化層は、強化層に伴う内部層に対する接着性を経時的に失い得る。これは、最も強い力と応力が集中する、湾曲区域でより起こりやすい。
【0010】
本発明の目的は、容易で経済的な方法により、同材内の破損または亀裂の生成を防止しつつ、永久的に変形可能な強化層を有する積層多層材を達成することである。
【0011】
本出願人は、従来技術のこれらの欠点を克服し、上述のまたは他の利点を得るために、本発明を考案し、実験し、具体化した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、独立項で述べられ明らかにされているとともに、従属項では本発明の他の革新的な特徴が記載されている。
【0013】
上述の目的に対し、本発明に基づく多層材は複数の木質系薄板を備える。木質系薄板とは、例えば、天然木材、または、コルク、チップ他またはメラミン樹脂積層板等の木材代替材である。
【0014】
本発明で用いられる多層材は、2つの木質系薄板の間に介在する少なくとも1つの金属材の層を備える。
【0015】
このように、少なくとも1つの金属材の層(例えば金属箔)を2つの木質系薄板の間に挿入することで、多層材を少なくとも部分的に湾曲させることを許容しつつ、かつ破損および/または亀裂の可能性を下げつつ、多層材の全体的な弾性と変形可能性とを増加させることができる。
【0016】
変形例によると、多層材は少なくとも2層の金属材を備える。第1層は少なくとも2つの木質系薄板の間に介在させられる。金属材の第2層は同様に少なくとも2つの他の木質系薄板の間に介在させられる。
【0017】
このように、様々な曲線形状を有する製品を作製できるよう、多層材の変形可能性を更に増加させることが可能である。さらに、多層材は外側に配置された少なくとも1枚の木質系薄板を有するため、本発明に基づく多層材で作製された製品に所望の美しい外見を与えることが可能である。
【0018】
他の変形例によると、多層材は少なくとも2層の金属材を備える。その金属材のうち、第1層は少なくとも2枚の木質系薄板の間に介在され、第2層は前記木質系薄板の1枚の外側に配設される。
【0019】
本発明によると、多層材は、他の外部木質系薄板に対して一枚またはそれ以上の内部木質系薄板を備える。少なくとも1つの内部木質系薄板は、他の隣接し得る内部木質系薄板および外部木質系薄板の端よりも上流で消滅する位置まで漸進的に厚さが薄くなっていく。その結果、上述の少なくとも1つの内部木質系薄板のより短い厚さが、多層材の総厚さを漸進的に変化させかつ対応する変化を決定する。
【0020】
変形例によると、少なくとも1つの金属材の層は、他の隣接し得る内部木質系薄板と外部木質系薄板の端よりも上流の位置において消滅するまで、漸進的に厚さが減少していく。
このようにして、多層材の総厚さの漸進的かつ対応する変化を決定する。
【0021】
また、本発明の範囲に含まれるものとして、木質系薄板または少なくともそれに隣接する金属層の長さに対して短い長さを有する、多層材内のプラスチックまたはアセテート材の層を提供することがある。同層は、それらの端の上流において消滅するまで、厚さが減少していき、その結果、多層材の厚さの対応する変化を決定する。
【0022】
変形および曲げへの耐性の局所的な変化を決定する、多層材の厚さの変動は、たとえ複雑な場合であっても、異なる種類および形状の製品を作製することを可能にする。例えば、文具製品、製品用容器、名刺たて、または私用の製品、例えば、眼鏡のフレームで、厚さが異なりまたは変化する部分を備えるものであり、たとえば、厚さが変化する部分を備えるフレームを持つ眼鏡である。
【0023】
さらに、1つまたはそれ以上の木質系薄板の厚さを減少させることは、多層材の曲げ加工(特に、所望の曲線外形の方向における)を容易にする。
【0024】
製造の観点からは極めて簡易で経済的なやり方で、厚さを減らすことができる。多層材内に挿入する長さの異なる薄板を準備することだけが必要である。
【0025】
さらに、多層材の内部層を加工することで、厚さを減らすことができる。その結果、製品の外的な美しさが損なわれることは全くない。
【0026】
本発明のある実施形態によれば、少なくとも1つの金属材の層は、ブリキ缶または缶などの、錫またはアルミニウム容器に由来するリサイクル材の薄箔によって形成されている。
【0027】
本発明の他の実施形態によると、少なくとも1つの金属材の層は、工業的な加工に由来する新しい金属材から作製されている。
【0028】
本発明の変形例によると、多層材は、それの外側表面に配設された、少なくとも1つのカバー薄板を備える。カバー薄板は、例えば、アセテート材他の薄板である。これにより、所望の美しい外見を与えるように、カバー層を形成することが可能になる。それは、例えば、色付けられていても、不透明であっても、また部分的に透明であっても良い。
【0029】
また、本発明は、上述の多層材を用いて作製される物品に関する。例えば、家具装飾品、家用付属品、ガジェット、個人用の装飾品、例えば、眼鏡のフレーム、ブレスレット、時計用ストラップ他である。
【0030】
本発明に基づく多層材を製造する方法は、少なくとも以下の工程を含む。
-複数の木質系薄板を用意する工程
-2つの木質系薄板の間に少なくとも1つの金属材の層を介在させる工程
-隣接する木質系薄板の間および金属材の層と隣接する木質系薄板との間に適切な接着剤を介在させる工程
-このように構成された木質系薄板および金属材の層に適切な圧力を印加し、それらの相互接着を得る工程
【0031】
変化例によると、前記方法は、2つの前記金属材の層を配置させる工程を備える。そのうち、第1層は、少なくとも2つの木質系薄板の間に介在させられ、第2層は同様に少なくとも2つの木質系薄板の間に介在させられる。
【0032】
他の変形例によると、前記方法は、2つの前記金属材の層を配置させる工程を備える。そのうち、第1層は、少なくとも2つの木質系薄板の間に介在させられ、第2層は前記木質系薄板のうちの1つの外側に配設される。
【0033】
本発明では、1つまたはそれ以上の内部木質系薄板を他の外部木質系薄板に対して配置させる。少なくとも1つの内部木質系薄板は、隣接し得る内部木質系薄板の長さおよび外部木質系薄板の長さよりも短い長さを有する。これにより多層材の厚さにおける対応する変化が決定される。
【0034】
本発明の変形例によると、少なくとも1つの金属材の層は、隣接する木質系薄板の長さよりも短い長さを有して作製されている。これにより多層材の厚さにおける対応する変化が決定される。
【0035】
多層材の内部に、プラスチックまたはアセテート材の層を設けることも本発明の範囲に入る。このプラスチックまたはアセテート材の層は、木質系薄板または少なくともそれに隣接する金属層の線形外形に対して小さい線形外形を有して作製され、多層材の厚さの対応する変化を決定するために、厚さの漸進的変化を有するものである。
【0036】
本発明によると、薄板および多層材の層に及ぼされる圧縮の大きさおよび時間は、1つまたはそれ以上のパラメータに関連する。例えば、個々の薄板および層の厚さ、得られる多層材の総厚さ、薄板の組成、使用される接着剤の種類である。
【0037】
変形例によると、前記方法は他の仕上げ工程を含む。例えば、薄板または外部層のつや出しまたはニス掛けである。
【0038】
本発明の好ましい解決では、金属材の層は、適当な寸法の錫またはアルミニウムの容器を切削または平坦化することで直接得られる。
【0039】
他の解決では、金属材の層は、新しい金属材の鋼帯またはロールから得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明のこれらおよび他の特徴は、以下の好ましい実施形態における記載および添付の図面を参照することにより、明らかにされる。なお、好ましい実施形態における記載は、それに限定しない例として挙げられている。
図1図1は、本発明に基づく多層材の一部箇所の三次元図。
図2図2は、図1の多層材の断面図。
図3図3は所定の曲線構造の本発明に基づく多層材の斜視図。
図4図4は、図3を上から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付図面を参照すると、参照番号10は本発明に基づく多層材を指す。多層材10は、第1層11と第2層12とを備え、それらは共に金属材(例えばアルミニウム)で作製されている。多層材は、接着剤15によって相互にくっつくように作製された、複数の木材薄板14(ここでは、図1および2に示されているように5枚)をも備える。薄板14はそれぞれ外部薄板14aと内部薄板14bおよび114bとを備える。第1層11、第2層12、および薄板14は、サンドウィッチ構成を規定するために、互いに重なり合って接着剤で接着されて配置される。
【0042】
特に、第1金属層11および第2金属層12の両方は、相対的に外側にある木材薄板14aと内部木材薄板14bの間に介在するので、上述のサンドウィッチ構成は木材で作製された可視表面を有する。
【0043】
木材の層14の内側に配置された金属層が存在することにより、本発明に基づく多層材10の変形可能性と弾性とを改善することが可能になる。その結果、曲線形状を有する製品(例えば、ガジェットまたは私用製品)を作製するために、多層材10に適切な曲げプロセスを及ぼすことが可能になる。
【0044】
一実施形態では、内部木材薄板14bおよび114bは、それらの繊維または木目が隣接薄板14bおよび114bの繊維または木目と交差するように配置される。
【0045】
他の実施形態では、木材薄板14bおよび114bは、それらの繊維または木目が実質的に平行になるように、配置される。
【0046】
他の実施形態によると、薄板14bおよび114bは一塊の薄板に共にまとめられることができる。各塊では、薄板14bおよび114bは繊維または木目が実質的に平行となるように配置されている。その後、塊は、対応する薄板14bおよび114bの繊維または木目が、隣接する塊の薄板14bおよび114bの繊維に横断的に配置されるように、配置される。
【0047】
薄板の繊維または木目の配置は、木質系薄板の種類またはその特有の特性次第では、上述と異なるようにしてもよいことを理解されたい。例えば、薄板14または薄板14の塊の繊維の交互配置は、用いられる特徴的な木材または薄板14が作製された樹幹の切り方に応じて変えることが可能である。
【0048】
薄板14は、0.4mmから0.6mmの厚さを有する。一実施形態では、約0.5mmの厚さを有する。薄板14の数および厚さは、多層材10の用途に応じて変えることができる。
【0049】
第1金属層11および第2金属層12は、0.1mmから0.3mmの厚さを有する。一実施形態では、0.2mmの厚さを有する。
【0050】
ある実施形態では、第1金属層11および第2金属層12は、ブリキ缶または缶他の、錫またはアルミニウム容器から得られたリサイクル材から作製される。
【0051】
他の実施形態では、第1金属層11および第2金属層12は、工業的に製造された金属材の鋼帯またはロールから作製される。
【0052】
薄板14を互いに接着させるためと、薄板14と第1金属層11および第2金属層12とを接着させるためと、に用いられる接着剤15は、任意の適切な種類のものである。例えば、アクリル系、ユリア系、ポリウレタン、または、メラミン接着剤他である。
【0053】
本発明に基づく多層材10は、図1および2に示すように、実質的に平面状な構成で作製することができる。そして、多層材10には、多層材10の一部が途中のまたは最終の形状に一致するように、さらに加工(例えば、曲げ加工)が及ぼされる。
【0054】
実際、図3および4を参照すると、多層材10は、曲線状予備成形品20を作製するように形作られており、ここでは、図3に破線で示されている1つの眼鏡の形状を規定する横断的な外形を有する。そして、そこでは、予備成形品20の曲線外形に沿うように多層材の層が配置されている。
【0055】
予備成形品20は、最終製品を得るために、実質的に公知の方法で後に加工される。ここでは、単一の部材として作製されたフレームを規定するためにそれを切削する。
【0056】
ある実施形態では、予備成形品20は、前部22および2つの側方部24を備える。前部22は、フレームの前の部位に対応する。側方部24は、前部22に交わり、フレームの腕部に対応し、所望の部分的に湾曲した長手の外形を有する。また、予備成形品20は、フレームのラグに対応する、2つの接続部26を備える。
【0057】
ここで示されている場合において、予備成形品20は図1に示されるたのと同様の多層材10の塊から、総厚さが変化するように作製される。実際、少なくとも一つまたはそれ以上の内部薄板114b(図4)は、隣接薄板14bの長さ、つまり多層材10の塊の長さLよりも短い長さ、を有する。さらに、多層材10の長さ方向の端部において、木材薄板114bは錐体形状、つまり、先細り形状または厚さが漸進的に減少する形状、を有する。
【0058】
錐体形状は、他の隣接薄板の端の上流の位置であって対応する薄板が消滅する箇所を定める。このようにして、錐体形状は多層材10の対応する厚さの減少を規定する。これにより、異なる部分そして最終形状の製品内で得られる湾曲に応じて、多層材10の厚さを修正することが可能になる。
【0059】
図4に示す例では、より大きな厚さを有する前部22に関する拡大図に示されるように、多層材10は、5つの内部木材薄板14b、114b、2つの外部木材薄板14a、第1金属層11および第2金属層12を備える。第1金属層11および第2金属層12の各々は、外部層14aと内部層14bおよび114bとの間に介在している。
【0060】
3つの内部木材薄板114bは、それらの端部に向かって厚さが漸進的に減少しており、関連する拡大図に示されるように、接続部26に実質的に対応して局在している。
【0061】
これにより、ある好ましい実施形態では、枠の腕部が得られる側方部24の近くにある多層材10の厚さ、すなわち予備成形品20の厚さが、対応して徐々に減少する。実際、予備成形品20の側方部24に対応する関連拡大図に示されるように、多層材10は前部22よりも少ない厚さを有する。側方部24では、2つの外部薄板14a、2つの内部薄板14b、そして介在する第1(11)および第2金属層12のみしか備えないからである。
【0062】
側方部24またはより一般的にはより小さい厚さを有する部分に対応して、1つの内部薄板14bまたは2つ以上の内部薄板14bを有するために、より大きい数の錐体型薄板を配置することができることを理解されたい。
【0063】
ある実施形態では、多層材は、それの外側表面に配設された、1つまたは2つのカバー薄板を備えることができる。カバー薄板は、例えば、アセテート材他で作製されている。一実施形態では、アセテート薄板は0.2mmから2mmの厚さを有することができる。他の実施形態では、カバー薄板は、少なくとも一部が透明である。他の実施形態では、アセテート材の薄板は不透明である。
【0064】
本発明に基づく多層材10は、以下に記される極めて迅速で簡易な方法で作製される。
【0065】
最初に、薄板14は、第1金属層11および第2金属層12の間に介在させながら、一枚が他の一枚の上に置かれる。その結果、木材の薄板14は常に外部に向かって配設される。木材薄板14と第1金属層11と第2金属層との間には、必要に応じて適量の接着剤15が堆積される。
【0066】
上述のように、薄板14の相互堆積が達成される。その結果、隣接薄板の繊維または木目は、例えば実質的に平行または横断的または隣接薄板が横断的な繊維を有する塊と平行な木目を有する薄板の塊との組み合わせによる。
【0067】
第1(11)および第2金属層12に塗布するために用いられる接着剤15は、薄板14の間に介在させられるものと同じ、または異なる種類の接着材であってよい。
【0068】
この様に得られたサンドウィッチ構成には、実質的に従来型のプレス加工(例えば、静式の水圧プレス)によって、好ましい時間の間、適度な圧力が及ぼされる。それにより、薄板14は互いにかつ第1(11)および第2金属層12に接着される。
【0069】
圧力の大きさや時間は、異なる要因次第で変えることができる。異なる要因とは、例えば、薄板14および金属層11および12の組成および/または厚さ、多層材10の総厚さ”S”、および/または使用される接着剤の種類である。
【0070】
接着作業は熱く、サンドウィッチ構成を温度60〜70℃に加熱し、サンドウィッチ構成に2から10バールの圧力を加えながら、おおよそ5から10分間行われる。
【0071】
変形例に基づくと、接着作業のために、一成分または二成分タイプのポリウレタン接着材料15が用いられる。接着圧力が、15〜45分間、周囲温度で印加される。
【0072】
ポリウレタン接着剤15を使用することで、サンドウィッチ構造に組み立てられたときに、薄板14にその弾性を移すことが可能になる。実際、熱接着工程の間に、ポリウレタン粘着材15は薄板14を通過し、多層材10の弾性を増加させることを可能にする。
【0073】
さらに、ポリウレタン粘着材15は、不可逆的な重合がなされる。これは、ビニルタイプ接着剤に起こることとは反対のものである。
【0074】
最後に、このように得られた多層材10には、ニス掛けまたはつや出し等、外部薄板14aの仕上げ処理を行うことができる。
図1
図2
図3
図4