(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788958
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】利水ダム用発電装置
(51)【国際特許分類】
E02B 9/00 20060101AFI20150917BHJP
E02B 9/06 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
E02B9/00 Z
E02B9/06 Z
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-255440(P2013-255440)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-86679(P2015-86679A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年2月9日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000246354
【氏名又は名称】有▲吉▼ 一夫
(72)【発明者】
【氏名】有▲吉▼ 一夫
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−161503(JP,A)
【文献】
特開2006−316487(JP,A)
【文献】
特開2012−052409(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/016343(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/00− 9/08
F16L 55/07
F03B 13/00−13/26
F03B 17/00−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムより配設した導水管に発電機を介在して接続し、発電機後部の導水管には、大径で前後をテーパ状に形成した整流管を介在して接続し、発電機の側部には導水管と同径の予備導水管を並設し、該予備導水管の前部は発電機前部の導水管に、後部は整流管の前部テーパ部に接続し、また、導水管と同じ高さの取水口から導水管より小径の補水管を配設し、該補水管を整流管の前部テーパ部に貫通して接続し、該補水管の注水口を整流管の中心から水流方向に向け、発電機前後の導水管、予備導水管、補水管に弁を取り付けた利水ダム用発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利水ダム用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利水ダムは、かんがい、水道、工業用の利用のみで、ダムが有する高圧エネルギーは送水のみにしか利用されてなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ダムより配設した導水管の発電で空隙と羽根の回転でガス(今まで、水に溶解していた空気その他の気体)が発生しても、発電機後部に接続した整流管内でダム水に完全に溶け込ませ、管路全体と弁等の付属機器が腐食しないようにし、また、ガスによる水撃作用を防止し、安価な電力を安定して供給できるようにすることを目的とする。
また、発電後は、従来通り、ダム圧で、利水ダム本来の目的である、かんがい、水道、工業用に送水し、今までの利水ダムを、発電所付き多目ダムとして有効に活用できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そして、本発明は上記目的を達成するため、ダムより配設した導水管に発電機を介在して接続し、発電機後部の導水管には、大径で前後
をテーパ状に形成した整流管を接続し、発電機の側部には導水管と同径の予備導水管を並設し、該予備導水管の前部は発電機前部の導水管に、後部は整流管の前部テーパ部に接続し、また、導水管と同じ高さの取水口(サージタンク等を含む)から導水管より小径の補水管を配設し、該補水管を整流管の前部テーパ部に貫通して接続し、該注水口は整流管中心から小流方向に向け、発電機前後の導水管、予備導水管、補水管に弁を取り付けたものである。
【0005】
上記の課題解決手段による作用は、次の通りである。すなわち、発電する時は、先ず、補水管と発電機前後の弁を全開し、予備導水管の弁を全閉すれば、ダム水が発電機に全量流れ込むので、最高出力の発電をすることができ、発電したダム水は、整流管に入り、発電時に発生したガスをダム水に完全に溶け込ませて、ダム圧で、送水する。
発電機のメンテは、先ず、予備導水管の弁を全開し、次に、発電機前後の弁を全閉し、ダム水を予備導水管側に切換えて行う。なお、
整流管からの送水密度を高めるため、補水管の弁は全開したままにする。
【発明の効果】
【0006】
上述したように、本発明は、今まで送水のみに利用していた導水管で、問題なく発電できるので、きわめて安価な電力を安定して供給することができる。
また、発電後は、問題なく、従来のダム圧で、利水ダム本来の目的であるかんがい、水道、工業用に送水できるので、今までの利水ダムを発電所付き多目的ダムとして有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の正面図 予備導水管と補水管は、導水管と同じように、地面に沿って配設するが、分りやすくするため、上方と下方に表した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を
図1と
図2に基いて説明する。
図において、1はダムより配設した導水管2に介在して接続した発電機、3は大径で前後をテーパ状に形成した整流管で、発電機1後部の導水管2に介在して接続している。4は発電機1に並設し、前部を発電機1前部の導水管2、後部は整流管3の前部テーパ部に接続した導水管2と同径の予備導水管、5は導水管2と同じ高さの取水口から導水管2より小径の補水管で、整流管3の前部テーパ部に貫通して接続し、該注水口6は整流管3の中心から水流方向に向けている。7は弁で、発電機1前後の導水管2、予備導水管4、補水管5に取り付けている。
なお、整流管3は製造しやすくするため、大径のフランジ管にフランジ付きテーパ管を接続して形成してもよい。また、補水管5は取水口から小径であると、管抵抗で減圧されるので、補水管5の弁7から小径にし、水圧を保持した状態で注水するようにした方がよい。
【0009】
以下、上記構成の動作を説明すると、発電は、前述の課題解決手段通り行うが、発電機を通ったダム水は、整流管から導水管に入り、従来通り、用途先に送水される。しかし、送水量は発電機の羽根の抵抗で幾分減じ、導水管全長にわたって空隙状態で流れるためガスが発生し、これに、発電機の羽根の回転で遊離したガスが合体するので、管路や付属機器は腐食すると共に水撃作用が生じるおそれがあり危険である。
【0010】
整流管と補水管は、これ等の障害をなくすために設置したもので、発電したダム水は整流管内で、補水管の注水口から入ったダム水と合流する。特に、注水口は整流管の中心から水流方向に向けたので、効果的に補水することができる。
このとき、補水管からのダム水は、発電機で減じる分だけでよいが、絶対安全を考えて、補水管の弁を全開して余分のダム水を注水し、整流管内を常に
高密度の満水にする。
したがって、整流管にダム水と共に流れこんだガスは、
整流管内で溶け込け込み、更に、ダム水は整流管の後部テーパ部で圧縮されて高密度になるので、例え、末溶解のガスがあっても、ダム水に完全に溶け込んで流れるため、管路や付属機器がガスで腐食することがなく、水撃作用も起こらず安全に送水することができる。
【0011】
以上の理由で、補水管は必要で、発電時も発電機のメンテ時に予備導水管から通水する時も、補水管の弁を全開し、整流管内を常に、
高密度の満水にする。
なお、補水管を取り付けずに、予備導水管の弁で流量を調整することが考えられるが、調整が難しく、絞った弁から、ダム水がほとばしって流れ、
却って多量のガスが発生するので好ましくない。したがって、この観点からも補水管は必要である。
【0012】
なお、本発明に使用する発電機は、ダムの様式、導水管の口径、発電機の設置場所の地形に応じて適切な発電機を設置すれば、効率的な発電をすることができる。
また、本発明の構造簡単であり、既設の導水管に設置でき、発電において何ら問題がないので、きわめて安価な電力を安定して供給でき、従来の利水ダムを発電所付利水ダムとして有効に活用することができる。
【符号の説明】
【0013】
1 発電機
2 導水管
3 整流管
4 予備導水管
5 補水管
6 注水口
7 弁