(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788960
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】杭圧入機
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20150917BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
E02D7/20
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-264512(P2013-264512)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-121026(P2015-121026A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2014年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】田中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】掛水 翔太
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−027020(JP,A)
【文献】
特開2005−054573(JP,A)
【文献】
特開2001−098548(JP,A)
【文献】
特開2003−253670(JP,A)
【文献】
特開平11−350482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−7/30、11/00、13/00−13/10
E21B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入機であって、
当該杭圧入機は、前記杭と前記オーガ装置のオーガケーシングを掴むチャック装置を備え、
前記チャック装置は、
前記オーガケーシングの外周面に当接する爪部と、
前記オーガケーシングにおける前記爪部が当接する面とは反対側の外周面に倣って変形可能であり、その外周面に沿わせて配置可能な帯状のバンドと、
前記爪部と前記バンドで前記オーガケーシングを挟んだ状態で、前記爪部と前記バンドの少なくとも一方を他方に向けて移動させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする杭圧入機。
【請求項2】
前記チャック装置は、前記爪部と前記バンドで保持されている前記オーガケーシングに向けて移動する可動部を備え、
前記可動部と前記オーガケーシングの間に前記杭を挟み込むことで、前記杭を掴むことを特徴とする請求項1に記載の杭圧入機。
【請求項3】
杭とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入機であって、
当該杭圧入機は、前記杭と前記オーガ装置のオーガケーシングを掴むチャック装置を備え、
前記チャック装置は、
前記オーガケーシングの外周面に当接する爪部と、
前記オーガケーシングにおける前記爪部が当接する面とは反対側の外周面に沿わせて配置可能なバンドと、
前記爪部と前記バンドで前記オーガケーシングを挟んだ状態で、前記爪部と前記バンドの少なくとも一方を他方に向けて移動させる駆動部と、を備えるとともに、
さらに前記チャック装置は、前記爪部と前記バンドで保持されている前記オーガケーシングに向けて移動する可動部を備え、前記可動部と前記オーガケーシングの間に前記杭を挟み込むことで、前記杭を掴むことを特徴とする杭圧入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭を地盤に打ち込んで埋設する装置として、既設の杭から反力を取って杭を地中に圧入する杭圧入機が知られている。
杭圧入機は、機械本体の下部に設けられ、既設の杭を掴むクランプ装置と、機械本体の前端部に設けられ、既設の杭に隣接した位置に圧入する杭を挟んで保持するチャック装置とを備えている。この杭圧入機は、クランプ装置で既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取った状態で、杭を把持するチャック装置を降下させるようにして、杭を地中に圧入するようになっている。
そして、杭圧入機を用い、硬質地盤に対して杭の圧入施工を行う場合にオーガ装置を併用することがある。その際にオーガ装置のケーシングをチャック装置で把持するために、チャック装置はケーシングチャックを備えている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
例えば、
図6(a)に示すケーシングチャック50は、ケーシングKに設けられているレールRを爪部50aとの間に挟み込む油圧シリンダCを備えており、この油圧シリンダCの駆動によってケーシングKを把持するようになっている。
また例えば、
図6(b)に示すケーシングチャック51は、ケーシングKに設けられているガイドGと係合する案内溝を有する油圧シリンダCを備えており、その内部に挿通したケーシングKを、油圧シリンダCがケーシングチャック51の内面に付勢することによってケーシングKを把持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3063835号公報
【特許文献2】特許第3263037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の場合、ケーシングチャック50,51はケーシングKの形状に対応した構造を有するため、使用できるオーガ装置が限られてしまう。
また、ケーシングKの外周面に設けられているレールなどの突起が地中障害物に干渉しやすいため、掘削効率の低下を招いてしまうことがあった。さらには、レールなどの突起が設けられた複雑な形状のケーシングKは製作コストが高くなるとともに、重量が増加するために施工時のクレーンが大型化してしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、オーガ装置を併用して好適な施工を行うことができる杭圧入機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
杭とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入機であって、
当該杭圧入機は、前記杭と前記オーガ装置のオーガケーシングを掴むチャック装置を備え、
前記チャック装置は、
前記オーガケーシングの外周面に当接する爪部と、
前記オーガケーシングにおける前記爪部が当接する面とは反対側の外周面に
倣って変形可能であり、その外周面に沿わせて配置可能な
帯状のバンドと、
前記爪部と前記バンドで前記オーガケーシングを挟んだ状態で、前記爪部と前記バンドの少なくとも一方を他方に向けて移動させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の杭圧入機において、
前記チャック装置は、前記爪部と前記バンドで保持されている前記オーガケーシングに向けて移動する可動部を備え、
前記可動部と前記オーガケーシングの間に前記杭を挟み込むことで、前記杭を掴むことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、
杭とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入機であって、
当該杭圧入機は、前記杭と前記オーガ装置のオーガケーシングを掴むチャック装置を備え、
前記チャック装置は、
前記オーガケーシングの外周面に当接する爪部と、
前記オーガケーシングにおける前記爪部が当接する面とは反対側の外周面に沿わせて配置可能なバンドと、
前記爪部と前記バンドで前記オーガケーシングを挟んだ状態で、前記爪部と前記バンドの少なくとも一方を他方に向けて移動させる駆動部と、を備えるとともに、
さらに前記チャック装置は、前記爪部と前記バンドで保持されている前記オーガケーシングに向けて移動する可動部を備え、前記可動部と前記オーガケーシングの間に前記杭を挟み込むことで、前記杭を掴むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オーガ装置を併用した杭圧入機で好適な施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の杭圧入機を側方視して示す概略図である。
【
図2】本実施形態のチャック装置を正面視して示す縦断面図である。
【
図3】
図2のIII−III線における断面図である。
【
図4】本実施形態のチャック装置におけるケーシングチャック部がオーガケーシングを掴む動作を示す説明図である。
【
図6】従来のケーシングチャックを示す説明図(a)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る杭圧入機の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
杭圧入機10は、
図1に示すように、所定の杭P(例えば、鋼矢板など)を地中に圧入する機械であり、既に地中に埋設された既設杭Pの上端側を掴んで支持する複数のクランプ装置11…を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダーマスト14と、リーダーマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、リーダーマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16等を備えている。
【0013】
この杭圧入機10は、硬質地盤に対して鋼矢板Pの圧入施工を行う場合にオーガ装置20を併用することができる。本実施形態では、杭圧入機10がオーガ併用工法による杭圧入施工を行うように、チャック装置15にオーガ装置20が挿通されている。つまり、杭圧入機10は、鋼矢板Pとオーガ装置20を地中に圧入する圧入装置として機能する。
オーガ装置20は、その先端部にオーガヘッドHを交換可能に備えるオーガスクリューSと、オーガスクリューSの周囲を覆う略円筒状のオーガケーシングKと、オーガスクリューSを回転させる駆動モーターM等を備えて構成されている(
図1参照)。なお、オーガ装置20の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0014】
クランプ装置11は、サドル12の下面に設けられている。このクランプ装置11は、例えば、先に圧入された既設の杭Pである鋼矢板の上端側を挟んだ状態で、図示しない油圧シリンダの駆動によりその鋼矢板の上端部を挟持して掴むことができる。つまり、クランプ装置11は、既設杭Pを掴むことで杭圧入機10を既設杭Pの上端部に固定する固定手段として機能する。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設杭Pから反力を取って、杭圧入機10が新たに杭Pを圧入したり、埋設されている杭Pを引き抜いたりすることができるように、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に固定し設置するようになっている。
なお、クランプ装置11が備える固定クランプ爪と可動クランプ爪とからなるクランプ爪や、可動クランプ爪を駆動させる油圧シリンダの構成や、クランプ爪が杭Pを掴む動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0015】
スライドベース13は、サドル12に対し前方に移動して、リーダーマスト14とともにチャック装置15を水平に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設杭Pの先に、新たな2本の杭を前後方向に並べて順次圧入することを可能にする。
【0016】
リーダーマスト14は、スライドベース13と一体的に前後に移動する。
また、リーダーマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回してチャック装置15の向きを変えることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角に曲げたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
【0017】
チャック装置15は、その背面側がリーダーマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダーマスト14とチャック装置15に接続されたメイン油圧シリンダ16により昇降駆動されるようになっている。
このチャック装置15の内部には、
図2に示すように、オーガ装置20のオーガケーシングKを掴むケーシングチャック部1と、杭Pを掴むパイルチャック部2とが設けられている。つまり、チャック装置15は、ケーシングチャック部1とパイルチャック部2とを備えて構成されている。なお、
図2〜
図5において、オーガケーシングK内のオーガスクリューSの図示は省略している。
【0018】
ケーシングチャック部1は、
図2〜
図4に示すように、オーガケーシングKの外周面に当接する爪部1aと、爪部1aを進退させる爪駆動部1bと、オーガケーシングKの外周面に沿わせて配置可能なバンド1cと、バンド1cを移動させるバンド駆動部1dとを備えている。また、このケーシングチャック部1をチャック装置15内で昇降させる油圧シリンダ1eが設けられている。
【0019】
爪部1aは、爪駆動部1bによってオーガケーシングKに向けて押し出されて、オーガケーシングKの外周面に押し付けられるように当接する。この爪部1aがオーガケーシングKに当接する面は、オーガケーシングKの円筒状の外周面と略同じ曲率の曲面に形成されている。また、その曲面には複数の凹凸が設けられておりカーブ状の歯部となっている。
爪駆動部1bは、例えば、油圧シリンダであり、爪部1aを進退移動させる駆動部として機能する。なお、爪駆動部1bは、油圧シリンダを用いることに限らず、例えば、モーター駆動によって爪部1aを進退移動させる駆動部であってもよい。また、ケーシングチャック部本体に螺着された爪部1aをオーガケーシングに向けて螺進させる万力のような構成を備えるものであってもよい。
【0020】
バンド1cは、例えば、強化繊維や樹脂、皮革などからなる帯状部材であり、その両端がバンド駆動部1dに固定されている。このバンド1cは、オーガケーシングKの外周面に密着するように変形可能な柔軟性と、強力な引張りにも耐え得る耐破断性を兼ね備えている。
バンド駆動部1dは、バンド1cを爪部1a側に引き寄せるように移動させる駆動部として機能する。
【0021】
そして、
図4に示すように、オーガケーシングKにおける爪部1aが当接する面とは反対側の外周面にバンド1cを沿わせて配置し、爪部1aとバンド1cとでオーガケーシングKを挟んだ状態で、バンド駆動部1dがバンド1cを爪部1a側に引き寄せることで、オーガケーシングKを爪部1aに引き付けることができる。
つまり、チャック装置15にオーガケーシングKが上下に貫通するように配され、爪部1aとバンド1cとでオーガケーシングKを挟んだ状態で、爪部1aとバンド1cの少なくとも一方を他方に向けて移動させることで、ケーシングチャック部1がオーガケーシングKを把持するようになっている。
【0022】
パイルチャック部2は、
図2、
図5に示すように、対向して配置された可動爪2aと固定爪2bを備えており、可動部である可動爪2aは、図示しないシリンダの駆動により作動して固定爪2b側に移動可能となっている。なお、固定爪2bがオーガケーシングKに当接する面は、オーガケーシングKの円筒状の外周面と略同じ曲率の曲面に形成されており、その曲面は複数の凹凸が設けられたカーブ状の歯部となっている。
そして、チャック装置15にオーガケーシングKと杭Pが上下に貫通するように配された状態でパイルチャック部2を作動させ、パイルチャック部2の可動爪2aをオーガケーシングKおよび杭Pに向けて押し出すことで、可動爪2aとオーガケーシングKの間に杭Pを挟み込み、チャック装置15でオーガケーシングKと杭Pを把持することができる。このときオーガケーシングKはケーシングチャック部1の爪部1aとバンド1cによって保持されている。
なお、チャック装置15に杭Pが挿通されていない状態において、パイルチャック部2は、チャック装置15に挿通されたオーガケーシングKを可動爪2aと固定爪2bとで掴むことが可能になっている。
【0023】
そして、チャック装置15が把持した杭PやオーガケーシングK(オーガ装置)を地中に圧入する際、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、杭PやオーガケーシングKを把持してチャック装置15を下降させることと、杭PやオーガケーシングKを離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、チャック装置15が昇降する1ストローク分ずつ杭PおよびオーガケーシングKを圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭PやオーガケーシングKを地中に圧入することが可能になっている。
【0024】
上記した杭圧入機10は、既設杭Pの先に新たな杭Pをチャック装置15で圧入する動作と、クランプ装置11による既設杭Pの上端部の挟持と解除の動作と、サドル12に対するスライドベース13の前後動の動作と、を組み合わせることで、既設杭Pからなる杭列上を自走し移動することができる。
なお、杭圧入機10が杭列上を自走する動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0025】
以上のように、本実施形態の杭圧入機10のチャック装置15は、爪部1aとバンド1cとでオーガケーシングKを挟むケーシングチャック部1を備えている。
このケーシングチャック部1のバンド1cは、オーガケーシングKの外周面に倣ってその半面側に密着し、オーガケーシングKを強固に保持することができるので、突起のない円筒状のオーガケーシングKであっても、爪部1aとバンド1cとでオーガケーシングKを好適に挟んで掴むことができる。
【0026】
このようなケーシングチャック部1(チャック装置15)によって、円筒状のオーガケーシングKを掴むことができれば、従来技術のようにオーガケーシングKにレールなどの突起を設ける必要がなくなる。
そして、突起のない円筒状のオーガケーシングKを用いることでオーガ装置20による掘削効率を向上させることができ、杭Pを地中に圧入して杭列を施工する施工効率の向上を図ることが可能になる。
また、突起のないシンプルな円筒状のオーガケーシングKであれば、その製作コストを抑えることができるとともに、オーガケーシングKの軽量化を図ることができる。オーガケーシングKを軽量化することで、施工時に用いるクレーンを小型化することができ、施工コストを抑えることができる。また、大型のクレーンを使用できない現場での施工が可能になる。
【0027】
また、バンド1cは、オーガケーシングKの外周面に倣って変形することができるので、ケーシングチャック部1で様々な径のオーガケーシングKを掴むことや、円筒状でないオーガケーシングK(例えば、従来技術のような突起を有するオーガケーシングK)を掴むこともできる。
つまり、このケーシングチャック部1(チャック装置15)を備えた杭圧入機10は、様々なオーガ装置20を併用する施工が可能な、汎用性のある圧入装置として使用することができる。
【0028】
このように、ケーシングチャック部1を有するチャック装置15を備えた杭圧入機10は、オーガ装置20を併用して好適な施工を行うことができる杭圧入機である。
【0029】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 ケーシングチャック部
1a 爪部
1b 爪駆動部(駆動部)
1c バンド
1d バンド駆動部(駆動部)
1e 油圧シリンダ
2 パイルチャック部
2a 可動爪(可動部)
2b 固定爪
10 杭圧入装置
15 チャック装置
20 オーガ装置
K オーガケーシング
P 杭