(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の線路エレメント(51)及び第2の線路エレメント(52)を有するデータ伝送線路(50)上で伝送される無線周波数信号をデカップリングするための、又は干渉電圧をデカップリングするための装置(10)であって、
タッピングモジュール(20)と、
電流プローブモジュール(30)とを備え、
前記タッピングモジュール(20)は、前記無線周波数信号及び干渉電圧をデカップリングする目的で、前記データ伝送線路(50)の第1のタッピング部位(61)で前記第1及び第2の線路エレメント(51、52)に接続され、
前記無線周波数信号をデカップリングする場合、前記電流プローブモジュール(30)は、前記データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で前記第1の線路エレメント(51)に結合され、
前記干渉電圧をデカップリングする場合、前記電流プローブモジュール(30)は、前記データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で前記第1及び第2の線路エレメント(51、52)に結合され、
前記装置(10)は出力部(14)を有し、
前記出力部は、前記出力部(14)に接続される機器の様々な入力インピーダンスに整合させることができる、装置(10)。
前記干渉電圧をデカップリングする場合に、前記電流プローブモジュール(30)は、前記電流プローブモジュール(30)が前記第1及び第2の線路エレメント(51、52)を同じ観点で包囲するような形で、前記第1及び第2の線路エレメント(51、52)に結合されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(10)。
前記タッピングモジュール(20)は、第1のタッピングエレメント(21)及び第2のタッピングエレメント(22)を有する感知ヘッドとして具現化されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置(10)。
前記装置(10)は、前記第1及び第2のタッピング部位(61、62)が相互に2cm〜200cm、好ましくは5cm〜50cm、特に好ましくは8cm〜15cm、とりわけ好ましくは10cm離れた間隔になるような態様で構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置(10)。
前記装置(10)は、チェンジオーバースイッチ(11)を備えており、前記チェンジオーバースイッチ(11)は、前記タッピングモジュール(20)のタッピングエレメント(21、22)に回路機構の入れ替えを実施させるものであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置(10)。
前記装置(10)は、30kHz〜30MHzにおいて、40dB+/−0.1dBのデカップリング減衰を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置(10)。
前記データ伝送線路(50)は、前記測定が実施されているときに前記データ伝送を行うために、中断させることなく使用可能なようになされていることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
前記データ伝送線路(50)上で伝送される前記無線周波数信号の電力スペクトル密度を測定するためのスペクトラムアナライザ(40)が、前記装置(10)に接続されることを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の方法。
無線周波数信号を伝送するために設けられた、第1の線路エレメント(51)及び第2の線路エレメント(52)を有するデータ伝送線路(50)上で測定を行うための方法であって、
前記無線周波数信号をデカップリングするための装置(10)は、
タッピングモジュール(20)と、
電流プローブモジュール(30)とを備え、
前記タッピングモジュール(20)は、前記無線周波数信号をデカップリングする目的で、前記データ伝送線路(50)の第1のタッピング部位(61)で前記第1及び第2の線路エレメント(51、52)に接続され、
前記無線周波数信号をデカップリングする場合、前記電流プローブモジュール(30)は、前記データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で前記第1の線路エレメント(51)に結合され、
干渉電圧をデカップリングする場合、前記電流プローブモジュール(30)は、前記データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で前記第1及び第2の線路エレメント(51、52)に結合され、
前記データ伝送線路(50)上で伝送される前記無線周波数信号の電力スペクトル密度を測定するためのスペクトラムアナライザ(40)が、前記装置(10)に接続され、
前記装置(10)の出力部(14)は、前記スペクトラムアナライザ(40)の様々な入力インピーダンスに整合される、方法。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、データ伝送線路上で伝送される無線周波数信号をデカップリングするための、又は干渉電圧をデカップリングするための装置を提供するという目的に基づいている。この装置は、従来技術の不利益を回避し、又は少なくとも低減するものであって、簡単に且つ高い費用効率で製造できるように構成されており、実際の試験において、簡単且つ効率的な態様で使用することができる。
【0004】
この目的は、第1の線路エレメント及び第2の線路エレメントを有するデータ伝送線路上で伝送される無線周波数信号をデカップリングするための装置であって、タッピングモジュール(tapping module)と、電流プローブモジュールとを備えた装置によって達成される。この場合、上記タッピングモジュールは、無線周波数信号をデカップリングする目的で、データ伝送線路の第1のタッピング部位で第1及び第2の線路エレメントに接続され、上記電流プローブモジュールは、無線周波数信号をデカップリングする目的で、データ伝送線路の第2のタッピング部位で第1の線路エレメントに結合される。更に、上記目的は、第1の線路エレメント(51)及び第2の線路エレメント(52)を有するデータ伝送線路(50)上で伝送される無線周波数信号をデカップリングするための、又は干渉電圧をデカップリングするための装置によって達成される。この場合、その装置(10)は、タッピングモジュール(20)と、電流プローブモジュール(30)とを備えている。タッピングモジュール(20)は、無線周波数信号及び干渉電圧をデカップリングする目的で、データ伝送線路(50)の第1のタッピング部位(61)で第1及び第2の線路エレメント(51、52)に接続される。
−− 無線周波数信号をデカップリングする場合、電流プローブモジュール(30)は、データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で第1の線路エレメント(51)に結合され、
−− 干渉電圧をデカップリングする場合、電流プローブモジュール(30)は、データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で第1及び第2の線路エレメント(51、52)に結合される。
【0005】
本発明に係る装置は、通常の閉構造方向性結合器とは異なり、中断せずにデータ伝送線路を測定できるという利点を有する。これは、第一に、測定を行うのに、測定対象のデータ伝送線路を中断し、後で再接続する必要がないという利点を有する。このようなことを行えば、結果的に、測定実施後に、異なる(整合)構成(未測定)が出現しかねない。これは更に、中断及び再接続という処置が不要であるという利点も有する。したがって、測定は、第一に、より正確に行われ(というのは、例えば再接続に起因して測定後に誤差原因が生じることが、回避されるからである)、第二に、より簡単且つより迅速であり、より短い作業時間で行うことができる。本発明によれば、本装置は、データ伝送線路において、無線周波数信号の測定及び干渉電圧(又は不規則な干渉信号)の測定の両方に使用することができる。この場合、本装置は、無線周波数信号をデカップリングする目的では、いわゆる差動モードで動作し、干渉電圧をデカップリングする目的では、いわゆるコモンモードで動作する。それら2つの動作モード又はタッピングモードは、取り扱いが異なる又はタッピングが異なるという点で実質的に異なっているに過ぎない。データ伝送線路上で伝送される無線周波数信号(即ち、xDSL信号)のような有用な信号は、導体対として具現化されたデータ伝送線路上で、第1の線路エレメントと第2の線路エレメントとの間に、差動モード電圧又は差動電圧を発生する。これらの無線周波数信号を測定するために、本発明に係る装置は、差動モード動作で使用される。この測定を活用して、結合によってケーブルに導入されるxDSL伝送電力をできるだけ正確に測定することが、主に意図されている。1つの好適な実施形態では、方向性結合効果により、スイッチを用いてxDSL信号の信号方向を決定することができる。様々な原因により、無用な干渉電圧も、種々の干渉経路を介した結合によって、全般的にコモンモードとして遠距離通信ケーブルに導入される。その場合、その干渉電圧は、データ伝送線路(一般に導体対、即ち銅製の導体対)と接地又はケーブルシースとの間に現れる。したがって、データ伝送線路の接地に対する両線路エレメントの干渉ポテンシャルは、同一である。コモンモードでは、データ伝送線路は、単一の線路とみなすことができる(又は2つの線路エレメントを単一の線路とみなすことができる)。これらの干渉変数、即ち干渉電圧を測定するのに、コモンモード動作が使用される。スイッチを用いた好適な実施形態では、干渉伝送部を局所化するために、干渉信号の基本的に未知の信号方向を決定することが、主に意図されている。コモンモード動作の装置も、差動モード動作の装置と同等の大きさの測定精度を保証することが可能であるが、絶対測定精度は、干渉源の位置を特定する際に、あまり重要な役割は果たさない。
【0006】
本発明に係る装置は、方向性結合器として使用されるものであり、概ね恒久的に設置されたデータ伝送線路上で伝送される無線周波数信号をデカップリングする目的、又は干渉電圧をデカップリングする目的で、データ伝送線路に接続される。但し、この場合、測定が進行中であるため、予め定められたデータ伝送の設置構成には何も変更を加えない。この目的のために、本発明に係る装置は、モジュール、即ち測定モジュールを2つ備えている。これらのモジュールは、好ましいことに、互いに連係して動作し、測定対象の信号伝送線路上で伝送される無線周波数信号のデカップリングを協働して実現する。本発明は、第1の線路エレメント及び第2の線路エレメントを有するデータ伝送線路上の無線周波数信号又は干渉電圧をデカップリングする例に主に基づいて、特にデータ伝送線路としての銅製の導線対(銅製導体対)を基本にして、例示されている。但し、本発明は、例えば3以上の線路エレメントを備えたデータ伝送線路及び/又は他の線路材料を備えたデータ伝送線路のような、他のタイプのデータ伝送線路にも適用することができる。
【0007】
本発明に係る装置の中の上記2つのモジュール、即ち測定モジュールは、タッピングモジュール及び電流プローブモジュールである。上記タッピングモジュールは、
−− 無線周波数信号をデカップリングする場合は(差動モード動作)、データ伝送線路の第1の線路エレメントと第2の線路エレメントとの間、
−− 干渉電圧をデカップリングする場合は(コモンモード動作)、データ伝送線路の線路エレメントを一方とし、接地を他方とする両者相互間、
をタッピング、即ち電圧タッピングする働きをする。このタッピングは、データ伝送線路全体に沿った第1のタッピング部位で実施される。上記電流プローブモジュールは、正確に言うと、
−− 無線周波数信号をデカップリングする場合は、電流プローブモジュールをデータ伝送線路の第1の線路エレメントに結合することによって、
−− 干渉電圧をデカップリングする場合は、電流プローブモジュールをデータ伝送線路の第1及び第2の線路エレメントに結合することによって、
データ伝送線路全体に沿った第2のタッピング部位で結合を行う働きをする。
【0008】
本装置は特に、データ伝送線路の電力スペクトル密度を測定する役割、又は干渉源の場所を特定するための測定を行う役割を果たす。この場合特に、実現されることには、本発明に係る装置の出力部に、かかる測定を完全に実施するための別の機器が接続される。特に、最初に電力スペクトル密度の実際の測定を行ういわゆるスペクトラムアナライザが、かかる別の機器に適している。しかしながら、その測定信号は、本発明に係る装置によって、かかるスペクトラムアナライザにとって利用可能になるのである。即ち、実施される測定の測定精度は、本発明に係る装置によって敏感に変わる。この装置は、かかる測定構成の場合、スペクトラムアナライザ用の測定ヘッドの働きをし、したがって、本明細書では、付設電力測定ヘッドとも称される。
【0009】
本発明によれば、電流プローブモジュールは、分割トロイダルコア磁石を有することが好ましい。それによって、有利な態様で、データ伝送線路の第1の線路エレメントを流れる電流を極めて簡単且つ正確に測定することが可能になる。
【0010】
更に、本発明によれば、一層好ましいことに、干渉電圧をデカップリングする場合に、電流プローブモジュール(30)は、電流プローブモジュール(30)が第1及び第2の線路エレメント(51、52)を同じ観点で包囲するような態様で、第1及び第2の線路エレメント(51、52)に結合される。
【0011】
その結果、本発明によれば、好都合なことに、簡単なタッピングによって、又は簡単な結合で電流プローブモジュールを第1及び第2の線路エレメントに結合することによって、干渉電圧を簡単に測定できるようになる。
【0012】
本発明によれば、第1のタッピングエレメント及び第2のタッピングエレメントを有する感知ヘッドとしてタッピングモジュールを具現化することは、更に好ましいことである。それによって、有利な態様で、測定を迅速且つ簡単に実施することが可能になる。
【0013】
更に、第1及び第2のタッピング部位が相互に2cm〜200cm、好ましくは5cm〜50cm、特に好ましくは8cm〜15cm、とりわけ好ましくは10cm離れた間隔になるような態様で本装置が構成されれば、それは極めて好ましいことである。第1のタッピング部位と第2のタッピング部位との間のこの間隔は、特にデータ伝送線路全体に沿ったタッピング部位相互間の間隔を指す。
【0014】
更に、本発明によれば、本装置が、タッピングモジュールのタッピングエレメントに回路機構の入れ替えを実施させるチェンジオーバースイッチ(changeover switch)を備えることも、好ましいことである。これは次のことを意味する。即ち、(タッピングモジュールの)第1のタッピングエレメントが第1の線路エレメントに導電状態に接続され、第2のタッピングエレメントが第2のエレメントに導電状態に接続されている場合に(無線周波数信号をデカップリングする場合、即ち、本装置が差動モード動作で動作する場合)、チェンジオーバースイッチが切り替わると、データ伝送線路の線路エレメントに対する本装置の接続構成が、まるで第1のタッピングエレメントが第2の線路エレメントと導電状態に接続し、第2のタッピングエレメントが第1の線路エレメントと導電状態に接続するかのような態様になる。同様に、(タッピングモジュールの)第1のタッピングエレメントが第1及び第2の線路エレメントに導電状態に接続され、第2のタッピングエレメントが(データ伝送線路の)接地に導電状態に接続されている場合に(干渉電圧をデカップリングする場合、即ち、本装置がコモンモード動作で動作する場合)、チェンジオーバースイッチが切り替わると、データ伝送線路の線路エレメントに対する本装置の接続構成が、まるで第1のタッピングエレメントが接地と導電状態に接続し、第2のタッピングエレメントが第1及び第2の線路エレメントと導電状態に接続するかのような態様になる。結果として、本発明によれば、両方の場合、即ち両動作モードにおいて、第一に、本装置を極めて簡単且つ迅速に、測定対象のデータ伝送線路のインピーダンス関係に対し、良好に連係させ、又は整合させることができる。第二に、それによって、測定を行う際に、極性の誤りのためにデータ伝送線路上のタッピングモジュールのタッピングに変更を加える必要もなければ、電流プローブモジュールの結合に変更を加える必要もないようにするための支出を最小限に抑え、チェンジオーバースイッチさえ動作させれば足りるようにすることができる。これにより、測定性能が増進し、更に測定精度も向上する。というのは、同じタッピング構成を使用するため(即ち、可能性として、インピーダンス関係に対する整合が良好なため)、第1及び第2の線路エレメント上のタッピングを入れ替えることが不要な状態で測定を行うことも可能となるからである。
【0015】
本発明によれば、同じく好適に更に実現されることには、本装置は、30kHz〜30MHzにおいて、40dB+/−0.1dBのデカップリング減衰を有する。それによって、本発明によれば、好ましいことに、接続されたスペクトラムアナライザがオーバードライブされないことも可能である。本発明によれば、例えばZ=135Ω+/−20Ω(+/−15%)といった通常の銅製導体対インピーダンスで、30kHz〜30MHzの周波数範囲において、本発明に係る装置の線形性が+/−0.1dBといった具合に高くなっているため、スペクトラムアナライザの測定結果を評価する際に、単に40dBのレベル補正を実施すれば足りる。
【0016】
本発明の更に別の好適な実施形態によれば、実現されることには、本装置は、そこに接続される機器の様々な入力インピーダンスに整合できる出力部を有する。それによって、データ伝送線路上での測定において、非常に正確で弾力性のある測定結果を有利な態様で得ることができる。
【0017】
本発明によれば、特に好適に実現されることには、本装置は、135Ωなる普通の平均インピーダンスを有する銅製導体対ネットワーク(即ち、本発明の意味する範囲内において、データ伝送線路として、銅製の導線対又は銅製導体対を備えたネットワーク)での測定において、市販の適切な(且つ十分に正確な)、全般的に可搬型の、再充電可能電池で動作するスペクトラムアナライザであって、約100Ω〜約150Ωの入力インピーダンス又は測定インピーダンスR
mを有する対称受信機入力を具備したスペクトラムアナライザと一緒に動作する。但し、本発明に係る装置は、単なる例として紹介した上記の周波数範囲又はインピーダンス関係(ドイツテレコムの遠距離通信ネットワーク(主にドイツ国内に設置されている)の典型的インピーダンス関係の例に基づく)以外の周波数範囲又はインピーダンス関係に対しても、最適化し又は整合させることができる。これは、本発明のものと同じ利点、即ち、簡単且つ迅速であるという利点を実現し、同時に比較的高精度の線路測定を実現するためである。
【0018】
本発明の更に別の主題は、本発明に係る装置を使用して、(概ね恒久的に設置された)データ伝送線路上で測定を行うことに関する。
【0019】
この場合、特に好適なことに、測定を実施しながらデータ伝送線路を使用して、中断させることなくデータを伝送することができる。これは本質的な利点であり、これにより、本方法の性能が、より簡単且つより迅速になるのみならず、同時に、より正確にもなる。というのは、データ伝送にも使用される線路構成と同一の(又は変更していない)線路構成において測定が実施されるからである。
【0020】
データ伝送線路として、銅製の導線対、好ましくは銅製導線のツイストペア(twisted pair)が使用されること、及び/又はデータ伝送線路上で伝送される無線周波数信号の電力スペクトル密度を測定するための、若しくは干渉電圧を測定するためのスペクトラムアナライザが、本装置に接続されること、及び/又はそのスペクトラムアナライザの様々な入力インピーダンスに本装置が整合されることは、一層好ましいことである。
【0021】
本発明の更に別の主題は、無線周波数信号を伝送するために設けられた、第1の線路エレメント及び第2の線路エレメントを有するデータ伝送線路上で測定を行うための方法に関する。この場合、無線周波数信号をデカップリングするための装置は、タッピングモジュールと、電流プローブモジュールとを備えている。上記タッピングモジュールは、無線周波数信号をデカップリングする目的で、データ伝送線路の第1のタッピング部位で第1及び第2の線路エレメントに接続され、上記電流プローブモジュールは、無線周波数信号をデカップリングする目的で、データ伝送線路の第2のタッピング部位で第1の線路エレメントに結合される。本発明の更に別の主題は、無線周波数信号を伝送するために設けられた、第1の線路エレメント(51)及び第2の線路エレメント(52)を有するデータ伝送線路(50)上で測定を行うための方法に関する。この場合、無線周波数信号をデカップリングするための装置(10)は、タッピングモジュール(20)と、電流プローブモジュール(30)とを備えている。タッピングモジュール(20)は、無線周波数信号をデカップリングする目的で、データ伝送線路(50)の第1のタッピング部位(61)で第1及び第2の線路エレメント(51、52)に接続され、
−− 無線周波数信号をデカップリングする場合、電流プローブモジュール(30)は、データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で第1の線路エレメント(51)に結合され、
−− 干渉電圧をデカップリングする場合、電流プローブモジュール(30)は、データ伝送線路(50)の第2のタッピング部位(62)で第1及び第2の線路エレメント(51、52)に結合される。
【0022】
この場合、特に好適なことに、データ伝送線路上で伝送される無線周波数信号の電力スペクトル密度を測定するためのスペクトラムアナライザが本装置に接続され、本装置の出力部は、そのスペクトラムアナライザの様々な入力インピーダンスに整合される。
【0023】
本発明の代表的実施形態を図面で例示するとともに、後掲の説明書で更に詳細に解説する。それらの図面は、本発明の全体的概念を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明に係る、データ伝送線路50上で伝送される無線周波数信号をデカップリングするための装置10を、ブロック図で概略的に示している。言うまでもないことであるが、データ伝送線路50のうちの例示している部分は、全体として、データ伝送線路50全体のうちのほんの(小さな)一部を表したものである。装置10は、タッピングモジュール20と、電流プローブモジュール30とを備えている。タッピングモジュール20は、第1のタッピング部位61でデータ伝送線路50に接続されている。電流プローブモジュール30は、第2のタッピング部位62でデータ伝送線路50に接続されている。データ伝送線路50は、第1の線路エレメント51と、第2の線路エレメント52とを有している。これらのエレメントは、銅製の導線対(又は銅製の導体対)を撚り合わせた線路エレメント51、52として設けられることが好ましい。第1のタッピング部位61と第2のタッピング部位62との間に、データ伝送線路50全体沿いに間隔が設けられている。前記間隔は、
図1に両矢印で示している。本発明によれば、第1のタッピング部位61と第2のタッピング部位62との間の間隔は、好ましくは約2cm〜約200cm、特に好ましくは約5cm〜約50cm、とりわけ好ましくは約8cm〜約15cm、更に好ましくは約10cmである。
【0026】
図2は、本発明に係る装置10の、無線周波数信号をデカップリングするための動作(即ち差動モード動作)を例示しており、
図4は、本発明に係る装置10の、干渉信号又は干渉電圧をデカップリングするための動作(即ちコモンモード動作)を例示している。
【0027】
図2は、本発明に係る、無線周波数をデカップリングするための装置10を、
図1よりも詳細に表した概略図を示している。タッピングモジュール20と、電流プローブモジュール30とを備えた装置10を再度図示している。データ伝送線路50のうちの例示している部分は、ここでもやはり、単にデータ伝送線路50全体のうちの(小さな)一部に対応しているだけである。タッピングモジュール20は、第1のタッピングエレメント21と、第2のタッピングエレメント22とを有していることが好ましい。タッピングエレメント21及び22を用いれば、第1のタッピング部位61で線路エレメント51、52に導電状態に接続(測定電極の意味で)することを実現することができる。電流プローブモジュール30は、トロイダルコア磁石31を有することが好ましい。これによって(磁束を測定することによって)、データ伝送線路50の線路エレメント51、52のうちの一方を流れる電流を測定することができる。第2のタッピング部位62において、電流プローブモジュール30のトロイダルコア磁石31は、線路エレメント51、52のうちの一方を包囲している。
【0028】
図示した接続例において、電流プローブモジュール30は、第1の線路エレメント51に、又は第1の線路エレメント51と結合されている(第2のタッピング部位62において)。第1のタッピングエレメント21は第1の線路エレメント51に接続され、第2のタッピングエレメント22は第2の線路52に接続されている(第1のタッピング部位61において)。本発明に係る装置10は出力部14を備えており、好ましいことに、特にデータ伝送線路50上で伝送される無線周波数信号の電力スペクトル密度を測定する意向である場合に、そこにスペクトラムアナライザ40を接続することができる。
【0029】
特に可能性として相互に作用し合っている(例えばクロストークの結果として)異なるプロバイダからの複数のデータ伝送線路が利用される場合には、電力スペクトル密度を正確に判定することが不可欠であり、且つ結合により信号を(特に諸プロバイダのうちの1つによる1つ又は複数のかかるデータ伝送線路に)加えることが(法律上の又は規制上の)技術規定に反しないことを、法的に明確に保証する必要がある。このためには、特に電力スペクトル密度を判定する際に、高い精度が必要となる。
【0030】
図2において、無線周波数信号は、伝搬方向55に従って(即ち、図の左から右に)伝搬する。この場合、第1の線路エレメント51は、データ伝送線路50のa−導体に対応する。第2の線路エレメント52は、データ伝送線路50のb−導体に対応する。例として紹介すると、(図示されていない信号供給機器によって)結合によってデータ伝送線路50に導入される電力P
0(又は電力スペクトル密度)が測定対象である。第1の線路エレメント51を流れる電流I
0は、電流プローブモジュール30を用いて測定される。この目的のために、電流プローブモジュール30は、トロイダルコア磁石31の断面の周囲に二次巻線32を有していることが好ましい。そうすれば、電流I
S(電流プローブモジュール電流)は、前記二次巻線によって生成される。即ち、電流I
Sは、前記二次巻線中に誘導される。線路エレメント51、52相互間の電圧U
0は、タッピングモジュール20を用いて、タッピングによって取り出される。前記電圧によって、装置10に電流I
T(タッピングモジュール電流)が生じる。本発明に係る装置10の方向性結合器機能のおかげで、左から来る無線周波数信号(伝送信号)は、装置10の出力部14に結合される。この場合、I
S及びI
Tは、相互に増幅し合う(補強干渉)。右から来る無線周波数信号は、大幅に抑圧される(I
S及びI
Tの相殺干渉)。タッピングエレメント21、22を入れ替えれば、この状況は逆転する。
【0031】
データ伝送線路50は、インピーダンスZを有する。装置10の出力部14に測定電圧U
M、測定電流I
M、及び電力P
Mが現れ、スペクトラムアナライザ40によって更に処理される。この場合、測定電流I
Mは、I
S及びI
Tの(複素数加算)に対応する。本発明によれば、装置10が、タッピングモジュール20のタッピングエレメント21、22に回路機構の入れ替えを実施させるチェンジオーバースイッチ11(
図3参照)を備えることは、好ましいことである。これは、次のことを意味する。即ち、第1のタッピングエレメント21が第1の線路エレメント51に接続されている場合、及び第2のタッピングエレメント22が第2のエレメント52に接続されている場合に、チェンジオーバースイッチ11が切り替わると、データ伝送線路50の線路エレメント51、52に対する装置10の接続構成が、まるで第1のタッピングエレメント21が第2の線路エレメント52に接続され、第2のタッピングエレメント22が第1の線路エレメント51に接続されているかのような態様になる。それによって、U
0、したがってI
Tの符号を切り替えることができる。タッピングモジュール20と電流プローブモジュール30との間が最適に整合している場合(チェンジオーバースイッチ11がしかるべく設定されているものとして)、I
T及びI
Sは、互いに完全に相殺し合う(即ち、それらは弱め合う形で干渉する)。タッピングモジュール20が電流プローブモジュール30と正確に連係すると、装置10は、方向性結合器の機能を発生する。
【0032】
測定動作において(即ち、チェンジオーバースイッチ11切り替え後)、補強干渉、即ち重ね合わせが起こり、I
MはI
S及びI
Tの和に対応する。
【0033】
図3は、本発明に係る装置10の等価回路図であって、
図2に従って使用する場合の等価回路図を概略的に示している。例えば電流プローブモジュール30に一体化された(例えば、電流プローブモジュールのハンドルに適応された態様で、前記ハンドルは、トロイダル磁石31の開閉の時に使用される)プリント基板又は回路基板(独立した形では図示も指定も行っていない)は、種々の回路エレメントを有している。これらについては、後で詳細に説明する。二次巻線32は、例えばN=15ターンを有し、例えば、I
S0=U
0/(N×Z)としてI
S0がもたらされる。即ち、U
Tは、二次巻線32のターン数(又は一次巻線及び二次巻線31、32のターン比)とインピーダンスZの積でU
0を除したものに対応する。分圧器P1(例えば500Ω)は、電流プローブモジュール電流I
Sを、正確にタッピングモジュール電流I
T(これは感知ヘッド電流とも称される)と均衡させる働きをする。信号方向(又はデータ伝送線路50における無線周波数信号の伝搬方向)を逆転させると、又はチェンジオーバースイッチ11を切り替えると、電流プローブモジュール電流I
S及びタッピングモジュール電流I
Tの相殺干渉が起こる。別の分圧器P2(例えば5kΩ)は、測定電圧U
Mを、特に40dBデカップリング減衰まで均衡させる働きをする。測定電圧U
Mは、スペクトラムアナライザ40の入力抵抗R
M(例えば135Ω)の両端で降下している。チェンジオーバースイッチ11を
図3に例示しているが、これは、感知ヘッド電流I
Tの(又はタッピングモジュール電流の)極性を入れ替える働きをする。タッピングモジュールケーブル25(感知ヘッドケーブルとも呼ばれる)は、例えば40cmの長さを有し、電流プローブモジュール電流I
Sを主としてスペクトラムアナライザ40の入力抵抗R
Mを経由させて流すために、非常に高い特性インピーダンスを有している。タッピングモジュール20は、タッピングモジュールケーブル25と、R1、C1、及びC2の各コンポーネント並びに試験用先端部を有するタッピングモジュールユニット26とを備えていることが好ましい。タッピングモジュールユニット26は、タッピングモジュールケーブル25に固定して接続されることが好ましい。この場合、容量C1は、タッピングモジュール電流I
TをDC的にデカップリングする働きをする。感知ヘッド抵抗R1(例えば、いずれの場合も(即ち2倍の)9300Ω)は、(データ伝送線路50の)電力インピーダンスZ両端のU0に高抵抗で接続する働きをする。このインピーダンスは、平均すると例えば135Ωである。約1〜4cmの長さにわたって絶縁された導線を撚り合わせることによって可変となっている容量C2(例えば0〜2pF)は、可能性として必要とされる移相をもたらし、2つの電流I
S及びI
Tの両位相を更に均衡させる(その結果、良好に均衡するため、I
SとI
Tとの間の差は概ね消失する、即ち、概ね0に等しくなる)。本発明によれば、C2は、例えばタッピングモジュールケーブル25の長さ(例えば40cm)並びに第1及び第2のタッピング部位61、62相互間の間隔(例えば10cm)と連係して働く。一般に、トリミングキャパシタを利用しても、C2を所望の大きさに設定することはできない。というのは、それの最小の大きさは、多くの場合、高すぎるからである(例えば、1.5〜5.5pF)。
【0034】
本発明によれば、好都合なことに、本発明に係る装置10によって、特に比較的高いデカップリング減衰によって、スペクトラムアナライザ40でのオーバードライブ、及び相互変調歪みの発生を回避することができる。これは、接続されたスペクトラムアナライザ40の測定を行う際の精度を高める働きも果たしている。
【0035】
本発明によれば、トロイダルコア磁石31は、特に、電流プローブモジュール30のやっとこ35(
図2参照)を作動させることによって開けることができる、ちょうつがい付きのトロイダルコア磁石である。
【0036】
図4は、本発明に係る、干渉電圧をデカップリングするための装置10の概略図を表している。タッピングモジュール20と、電流プローブモジュール30とを備えた装置10を再度図示している。データ伝送線路50のうちの例示している部分は、ここでもやはり、データ伝送線路50全体のうちの(小さな)一部に対応しているに過ぎない。タッピングモジュール20は、第1のタッピングエレメント21と、第2のタッピングエレメント22とを有していることが好ましい。タッピングエレメント21、22を用いれば、第1のタッピング部位61で、一方では線路エレメント51、52に導電状態に接続し(測定電極の意味で)、他方ではデータ伝送線路50の接地に導電状態に接続することを実現することができる。電流プローブモジュール30は、トロイダルコア磁石31を有することが好ましい。これによって(磁束を測定することによって)、データ伝送線路50の線路エレメント51、52の両方を流れる電流を測定することができる。この場合、それら2つの線路エレメント51、52は、第2のタッピング部位62において、トロイダルコア磁石31によって、同じ観点で包囲されている。
【0037】
図示した接続例において、第1のタッピングエレメント21は、データ伝送線路50の接地に接続され、第2のタッピングエレメント22は、第1及び第2の線路エレメント51、52に接続されている(第1のタッピング部位61において)。本発明に係る装置10は出力部14を有しており、好ましいことに、特にデータ伝送線路50上の干渉信号を測定する意向である場合に、そこにスペクトラムアナライザ40を接続することができる。
【0038】
図4において、干渉信号又は干渉電圧は、伝搬方向55に従って(即ち、図の左から右に)伝搬する。この場合、第1の線路エレメント51は、データ伝送線路50のa−導体に対応する。第2の線路エレメント52は、データ伝送線路50のb−導体に対応する。電流プローブモジュール30によって、第1及び第2の線路エレメント51、52を流れる電流から生じる電流I
CMが測定される。この目的のために、電流プローブモジュール30は、トロイダルコア磁石31の断面の周囲に二次巻線32を有していることが好ましい。前記二次巻線によって電流I
S(電流プローブモジュール電流)が発生する。或いは、前記二次巻線中に電流I
Sが誘導される。2つの線路エレメント51、52を一方とし、データ伝送線路50の接地を他方とする両者相互間の電圧U
CMが、タッピングモジュール20を使って、タッピングによって取り出される。前記電圧によって、装置10に電流I
T(タッピングモジュール電流)が生じる。本発明に係る装置10の方向性結合器機能のおかげで、左から来る干渉電圧信号は、装置10の出力部14に結合される。この場合、I
S及びI
Tは、相互に増幅し合う(補強干渉)。右から来る無線周波数信号は、大幅に抑圧される(I
S及びI
Tの相殺干渉)。タッピングエレメント21、22を入れ替えれば、この状況は逆転する。
【0039】
データ伝送線路50は、インピーダンスZを有する。装置10の出力14に測定電圧U
M、測定電流I
M、及び電力P
Mが現れ、スペクトラムアナライザ40によって更に処理される。この場合、測定電流I
Mは、I
S及びI
Tの(複素数加算)に対応する。本発明によれば、装置10が、タッピングモジュール20のタッピングエレメント21、22に回路機構の入れ替えを実施させるチェンジオーバースイッチ11(
図5参照)を備えることは、好ましいことである。これは、次のことを意味する。即ち、第1のタッピングエレメント21がデータ伝送線路50の接地に接続され、第2のタッピングエレメント22が第1及び第2の線路エレメント51、52に接続されている場合に、チェンジオーバースイッチ11が切り替わると、データ伝送線路50の線路エレメント51、52に対する装置10の接続構成が、まるで第1のタッピングエレメント21が第1及び第2の線路エレメント51、52に接続され、第2のタッピングエレメント22がデータ伝送線路50の接地に接続されているかのような態様になる。それによって、U
CM、したがってI
Tの符号を切り替えることができる。タッピングモジュール20と電流プローブモジュール30との間が最適に整合している場合(チェンジオーバースイッチ11がしかるべく設定されているものとして)、I
T及びI
Sは、互いに完全に相殺し合う(即ち、それらは弱め合う形で干渉する)。タッピングモジュール20が電流プローブモジュール30と正確に連係すると、装置10は、方向性結合器の機能を発生する。
【0040】
測定動作において(即ち、チェンジオーバースイッチ11切り替え後)、補強干渉、即ち重ね合わせが起こり、I
MはI
S及びI
Tの和に対応する。
【0041】
図5は、本発明に係る装置10の等価回路図であって、
図4に従って使用する場合の等価回路図を概略的に示している。例えば電流プローブモジュール30に一体化された(例えば、電流プローブモジュールのハンドルに適応された態様で、前記ハンドルは、トロイダル磁石31の開閉の時に使用される)プリント基板又は回路基板(独立した形では図示も指定も行っていない)は、
図3の記述に係る回路エレメントに対応する種々の回路エレメントを有している。以下で、異なる部分だけを詳細に説明する。
【0042】
タッピングモジュール20は、タッピングモジュールケーブル25と、R1、R1/2、C1、及びL1の各コンポーネント並びに試験用先端部を有するタッピングモジュールユニット26とを備えていることが好ましい。タッピングモジュールユニット26は、タッピングモジュールケーブル25に固定して接続されることが好ましい。この場合、容量C1は、タッピングモジュール電流I
TをDC的にデカップリングする働きをする。感知ヘッド抵抗R1(例えば、いずれの場合も(即ち2倍の)9300Ω)は、(データ伝送線路50の)線路特性インピーダンスZ
CM両端のU
CMに高抵抗で接続する働きをする。このインピーダンスは、平均すると例えば55〜60Ωである。インダクタンスL1は、コモンモード電流I
CM用のバイファイラ型(bifilar)であるが、第1の線路エレメント51と第2の線路エレメント52との間に基本的に存在する差動電流の流れを抑圧する。L1は他にも、2つの抵抗R1に直列に接続されている。抵抗R1/2は、例えば4650Ωなる値に対応する。
【0043】
本発明によれば、トロイダルコア磁石31は、特に、電流プローブモジュール30のやっとこ35(
図2参照)を作動させることによって開けることができる、ちょうつがい付きのトロイダルコア磁石である。