(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788970
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】円環状レンズ軸角度を測定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20150917BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/04
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-508011(P2013-508011)
(86)(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公表番号】特表2013-525858(P2013-525858A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】US2011032660
(87)【国際公開番号】WO2011136947
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年2月4日
(31)【優先権主張番号】12/769,015
(32)【優先日】2010年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008847
【氏名又は名称】ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】トレバー エフ.オニール
【審査官】
居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−501876(JP,A)
【文献】
特表2002−522249(JP,A)
【文献】
特表2005−512041(JP,A)
【文献】
特表2009−525151(JP,A)
【文献】
特開2004−148147(JP,A)
【文献】
特開昭57−98324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C13/00
G02C7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒軸を有する後部円環状中央領域、及び、選択される回転角度で前記円筒軸からズレている配向軸を有するバラストを形成している前部レンズ表面を含む円環状コンタクトレンズを作製するために使用されるモールド部分の間の軸角度の測定方法であって、
(a)それぞれ前部モールドキャビティー画定表面及び後部モールドキャビティー画定表面を含む前部モールド部分及び後部モールド部分を提供すること、ここで、前記後部モールドキャビティー画定表面は円環状中央領域を含み、前記前部モールドキャビティー画定表面は前記バラストを提供するような形状となっており、前記前部および後部モールド部分は複数の回転位置で整列可能である、
(b)円環軸及びバラスト軸に関して所定の角度位置で前部モールド部分及び後部モールド部分の各々の上に検知可能な特徴部を提供すること、
(c)前記前部モールド部分に所定の量の重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を装填すること、
(d)前記前部モールド部分の検知可能な特徴部に対して所定の位置に前記後部モールド部分の検知可能な特徴部を回転すること、ここで、前記前部モールド部分の検知可能な特徴部はゼロ基準であり、前記後部モールド部分の検知可能な特徴部の回転が、前記前部モールド部分に前記所定の量の重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を装填した後に行われる、
(e)対応する回転位置を維持しながら、前記前部モールド部分及び後部モールド部分を組み合わせること、及び、
(f)前記前部モールド部分の検知可能な特徴部に対して前記後部モールド部分の検知可能な特徴部の軸角度を測定すること、ここで、前記軸角度の測定が、前記重合可能なレンズ形成性モノマー混合物の硬化の前に行われる、
を含む、方法。
【請求項2】
前記前部および後部モールド部分の各々にある少なくとも1つの検知可能な特徴部は前記前部および後部モールド部分の各々にある他のいかなる検知可能な特徴部とも識別可能に区別される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記後部モールド部分及び前部モールド部分の検知可能な特徴部はフランジである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記前部および後部モールド部分は重合可能なレンズ形成性モノマー混合物の硬化の全体にわたって、対応する回転位置に維持されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記前部および後部モールド部分は約5°又は10°の増分だけ増加して変化する回転位置でのみ整列可能である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記前部および後部モールド部分は任意の回転位置で整列可能である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記前部モールドキャビティー画定表面は球状中央領域をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記前部モールドキャビティー画定表面は多焦点中央領域をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
円筒軸を有する後部円環状中央領域、及び、選択される回転角度で前記円筒軸からズレている配向軸を有するバラストを形成している前部レンズ表面を含む円環状コンタクトレンズを作製するために使用されるモールド部分の間の軸角度を自動測定するための装置であって、
(a)レンズの前部光学表面を成形するための前部モールド表面を有する前部モールド部分、ここで、前記前部モールド部分はその外壁上にありかつ円環軸及びバラスト軸のいずれかに対して前部モールド部分上の所定の位置にある検知可能な特徴部を有する、
(b)レンズの後部光学面を成形するための後部モールド表面を有する後部モールド部分、ここで、前記後部モールド部分はその外壁上にありかつバラスト軸及び円環軸のいずれかに対して後部モールド上の所定の位置にある検知可能な特徴部を有する、
(c)互いに対して所定の角度位置で前部モールド部分及び後部モールド部分の各々の検知可能な特徴部を検知しそして配置するための手段、ここで、前記前部モールド部分の検知可能な特徴部はゼロ基準にある、
(d)前記後部モールド部分の検知可能な特徴部が前記所定の角度位置になるまで前記後部モールド部分を回転するための手段、
(e)前記前部モールド表面中に測定済みの量の重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を堆積させるための手段、ここで、前記後部モールド部分の検知可能な特徴部を回転する手段が、該検知可能な特徴部を、前記前部モールド部分に所定の量の重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を堆積した後に回転する、
(f)前記後部モールド部分及び前部モールド部分を組み合わせて、前記重合可能なレンズ形成性モノマー混合物が配置されているモールドキャビティーを形成するための手段、及び、
(g)前記前部モールド部分の検知可能な特徴部に対して前記後部モールド部分の検知可能な特徴部の軸角度を測定するための手段、
を含む、装置。
【請求項10】
前記前部および後部モールド部分の各々にある少なくとも1つの検知可能な特徴部は前記前部および後部モールド部分の各々にある他のいかなる検知可能な特徴部とも識別可能に区別される、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記後部モールド部分及び前部モールド部分の検知可能な特徴部はフランジである、請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記前部および後部モールド部分は重合可能なレンズ形成性モノマー混合物の硬化の全体にわたって、対応する回転位置に維持されている、請求項9記載の装置。
【請求項13】
前記前部および後部モールド部分は任意の回転位置で整列可能である、請求項9記載の装置。
【請求項14】
軸角度を測定するための手段は前記前部および後部モールド部分の一方の周囲を計算し、その中心を決定し、周囲にある検知可能な特徴部を特定し、そしてその間の角度を測定するための手段を含む、請求項9記載の装置。
【請求項15】
円環状レンズの少なくとも1つの製造運転にわたって、前部モールド部分及び後部モールド部分の検知可能な特徴部に対して所定の角度位置で選択するためのインプット手段をさらに含み、該所定の角度位置は製造運転の間で選択的に変更可能である、請求項9記載の装置。
【請求項16】
前記インプット手段は装置に接続されたコンピュータである、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を円環状レンズへと硬化させるための手段をさらに含む、請求項9記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般に、レンズをモールドから取り出す前に円環状レンズの軸角度を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
円環状光学領域を有するコンタクトレンズ(一般に、「円環状コンタクトレンズ」と呼ばれる)を用いて、乱視に関連する目の屈折異常を補正する。円環状光学領域は乱視を補償する円筒補正を提供する。視力補正を要求する乱視は、通常、近視(近眼)又は遠視(遠眼)などのその他の屈折異常を伴うので、円環状コンタクトレンズは、一般に、近視性乱視又は遠視性乱視を補正するための球状補正とともに処方される。現在、後方円環状レンズ(後部レンズ表面に形成された円環状表面を有する)及び前方円環状レンズ(前部レンズ表面に形成された円環状表面を有する)の両方が入手可能である。
【0003】
球状コンタクトレンズは目の上で自由に回転することができるが、円環状コンタクトレンズは円環状領域の円筒軸が乱視の軸とほぼ整列しているように、目の上でレンズの回転を抑制するバラストを有する。例えば、レンズ周囲の部分は他の部分よりも厚く(又は薄く)なっており、それにより、バラストが提供されうる。円環状コンタクトレンズは円環状光学領域の円筒軸とバラストの向きとの間に特定の関係(又はズレ)を伴って製造される。この関係は円筒軸がバラストの配向軸からズレている角度の数値(回転角)として表現される。
【0004】
円環状コンタクトレンズは、球状コンタクトレンズと同様に、通常、幾つかの異なるベースカーブ、レンズの適合特性に関連するレンズパラメータ及び幾つかの異なる球面度数で提供される。しかしながら、円環状コンタクトレンズは円環状光学領域及びバラストを含むだけでなく、レンズはある範囲の円筒軸配向をもって提供され、それにより、異なる乱視状態の患者に適応させる。例えば、所与のベースカーブ及び球面度数では、円筒軸は0°〜180°の範囲で5又は10°の増分で与えられてよい。通常、円環状レンズは底で、すなわち、180°でより厚く、目が瞬きするときに自己整列を補助する「バラスト」を形成するであろう。このように、円環状レンズを製造するときに、軸角度はレンズが所与の患者の乱視を補正するために適切な形状を有することを確保するように正確に測定されねばならない。
【0005】
円環状レンズ処方はそれぞれレンズの後部(目に接触している)表面及び前部表面の円環軸及びバラスト軸の間の軸のズレ(度(°)で表現する)を特定する。このように、異なる円環状処方は異なる軸ズレを有する。
【0006】
通常、このようなレンズを形成するために使用される前部モールド部分及び後部モールド部分のバラスト及び円環状特徴の間の回転ズレはこのようなモールドを収容しそして完全な製造サイクルを通過させる装置のプログラマー又はオペレータにより選択されてよく、それにより、任意の所望の回転ズレの円環状レンズを形成することができる。このような機械は、通常、機械の操作を制御するようにプログラムされたコンピュータに接続されている。オペレータは前部モールド部分と後部モールド部分との間の所望の回転ズレを選択しそしてインプットし、その後、モールド部分の整列を制御する適切な機械部分に送信する。前部モールド部分及び後部モールド部分を装置に対して垂直に向けられたチューブ対を通して又はパレット上で機械に送付されうる。リシ−ビングプレートは垂直に向けられたチューブの直下に又はパレットに隣接して配置されていることができ、そして後部モールド部分及び後部モールド部分を受け入れるようになっていることができる。
【0007】
リシ−ビングプレートは、その後、装置内の所定の位置に後部モールド部分を配置することができる。後部モールド堆積ロッドは後部モールド部分の上方で下げられ、また、それを上方に上昇させることができる。堆積プレートは、その後、前部モールド堆積ロッドの上部末端表面上に前部モールド部分を配置し、前部ロッド及び後部ロッドは軸的に整列される。その後、軸整列ツールを、後部モールド部分と前部モールド部分との間の位置に用いることができる。この形態で、後部モールド堆積ロッドを下げて、後部モールド部分を軸整列ツールの最上部と係合させ、そして前部モールド部分が軸整列ツールの最下部と係合するまで前部モールド堆積ロッドを垂直に上げる。ここで、後部ロッド及び前部ロッドを共通垂直軸に関して回転させ、レンズに所望の円環状特徴及びバラスト特徴を得ることができる。
【0008】
特定の量の液体モノマーを前部モールド部分の中に射出し、そして前部モールド及び後部モールドが所定の圧力で係合するまで後部モールドを前部モールドに向けて移動させることができる。その後、モノマーを硬化してレンズを形成するためにモールド部分を移動させることができる。一旦、レンズが形成されると、レンズをモールドから取り出しそして検査して、所望の軸角度が得られたことを確認する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、現在まで、円環状レンズの軸角度を測定するにはレンズ自体に対して軸角度を測定することが要求されている。しかしながら、このことは生産の間に余計な工程を要求し、サイクル時間を増加している。サイクル時間の増加は最も高速の自動化環境での機械生産を妥協させ、さらに装置の効率を妥協させることになる可能性がある。このように、円環状レンズの軸角度を測定するときに、この非効率を低減することが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本発明の第一の実施形態によると、円筒軸を有する後部円環状中央領域、及び、選択される回転角度で前記円筒軸からズレている配向軸を有するバラストを形成する前部レンズ表面を含む円環状コンタクトレンズの軸角度の測定方法であって、
(a)それぞれ前部モールドキャビティー画定表面及び後部モールドキャビティー画定表面を含む前部モールド部分及び後部モールド部分を提供すること、ここで、前記後部モールドキャビティー画定表面は円環状中央領域を含み、前記前部モールドキャビティー画定表面は前記バラストを提供するような形状となっており、前記モールド部分は複数の回転位置で整列可能である、
(b)円環軸及びバラスト軸に関して所定の角度位置で前部モールド部分及び後部モールド部分の各々の外壁上に検知可能な特徴部を提供すること、
(c)前記前部モールド部分に所定の量の重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を装填すること、
(d)前記前部モールド部分の検知可能な特徴部に対して所定の位置に前記後部モールド部分の検知可能な特徴部を回転すること、ここで、前記前部モールド部分は検知可能な特徴部はゼロ基準である、
(e)対応する回転位置を維持しながら、前記前部モールド部分及び後部モールド部分を組み合わせること、及び、
(f)前記前部モールド部分の検知可能な特徴部に対して前記後部モールド部分の検知可能な特徴部の軸角度を測定すること、
を含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の第二の実施形態によると、円筒軸を有する後部円環状中央領域、及び、選択される回転角度で前記円筒軸からズレている配向軸を有するバラストを形成する前部レンズを含む円環状コンタクトレンズの軸角度を自動測定するための装置であって、
(a)レンズの前部光学表面を成形するための前部モールド表面を有する前部モールド部分、ここで、前記前部モールド部分はその外壁上にありかつ円環軸及びバラスト軸のいずれかに対して前部モールド部分上の所定の位置に配置されている検知可能な特徴部を有する、
(b)レンズの後部光学面を成形するための後部モールド表面を有する後部モールド部分、ここで、前記後部モールド部分はその外壁上にありかつバラスト軸及び円環軸のいずれかに対して後部モールド上の所定の位置に配置されている検知可能な特徴部を有する、
(c)互いに対して所定の角度位置で前部モールド部分及び後部モールド部分の各々の検知可能な特徴部を検知しそして配置するための手段、ここで、前記前部モールド部分の検知可能な特徴部はゼロ基準にある、
(d)前記後部モールド部分の検知可能な特徴部が前記所定の角度位置になるまで前記後部モールド部分を回転するための手段、
(e)前記前部モールド表面中に測定済みの量の重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を堆積させるための手段、
(f)前記後部モールド部分及び前部モールド部分を組み合わせて、前記重合可能なレンズ形成性モノマー混合物が配置されているモールドキャビティーを形成するための手段、及び、
(g)前記前部モールド部分の検知可能な特徴部に対して前記後部モールド部分の検知可能な特徴部の軸角度を測定するための手段、
を含む、装置が提供される。
【0012】
本発明の方法及び装置では、有利なことに、円環状レンズの形成後に、組み合わされた後部及び前部モールドアセンブリで軸整列について測定することができる。このようにして、本発明の方法は、欠陥の検査を同時に行いながらレンズに対する軸整列を測定する必要性を無くし、そのようにして検査活動を分離し、もって検査アルゴリズムサイクル時間を低減することで、単純でコスト効率のよいやり方で行うことができる。それゆえ、本発明の方法により、自動製造装置において独立のステーションで円環軸測定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は円環状コンタクトレンズの模式断面図である。
【
図2】
図2はモールドアセンブリの模式分解図である。
【
図2A】
図2Aはモールドアセンブリの別の実施形態の模式分解図である。
【
図3】
図3は組み合わされたモールドアセンブリの模式断面図である。
【
図4】
図4は組み合わされたモールドアセンブリの模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1はここに製造されうる代表的な円環状コンタクトレンズ1を模式的に示している。後部表面3の中央領域11は円環状であり、すなわち、この領域は所望の円筒補正を提供する円環状表面を有する。後部表面3は、場合により、中央円環状領域11を包囲する少なくとも1つの周囲カーブ12を含んでよい。記載している実施形態では、前部表面4の中央領域21は球面であり、球状カーブは中央領域11と適合し、所望の球面補正をレンズに提供する。前部表面4は、場合により、中央領域21を包囲している少なくとも1つの周囲カーブ22を含んでよい。
【0015】
レンズ1はバラストを備えており、それにより、レンズは目の上で所望の回転配向を維持する。例えば、
図1に模式的に示すとおり、周囲部分51はレンズ周囲の反対側の周囲部分52とは異なる厚さを有することができる。当該技術分野で知られているとおり、バラストは軸に関して配向しており、円環状コンタクトレンズ処方は選択される回転角(通常、度(°)の数値として表現される)により円筒軸からのこの軸のズレを規定している。本明細書中で使用されるときに、用語「ズレ(オフセット)」は円筒軸がバラスト軸と一致している0°又は180°の回転角を含む。
【0016】
本発明の方法のための代表的なモールドアセンブリ25を
図2及び3に示す。モールドアセンブリは後部モールドキャビティー画定表面31(成形レンズの後部表面を形成する)を有する後部モールド30、及び、前部モールドキャビティー画定表面41(成形レンズの前部表面を形成する)を有する前部モールド40を含む。射出成形装置においてプラスチック樹脂からモールド部分の各々に射出成形する。
【0017】
モールド部分を組み合わせたときに、その中で成形されるコンタクトレンズの所望の形状に対応する2つの画定表面の間にモールドキャビティー32は形成される。したがって、後部モールドキャビティー画定表面31は円筒軸を有する円環状中央領域(円環状コンタクトレンズの円環状後部表面を形成するための)を有し、そして前部モールドキャビティー画定表面41はモールドキャビティー32中で成形されるレンズに対してバラストを提供する形態を有する。もちろん、表面31及び41は、また、レンズ上に所望の周囲カーブを形成するためのカーブを含むこともでき、そして表面31及び41の中央領域は成形される円環状レンズに対して所望の球面補正を提供するように設計されうる。
【0018】
本発明によりモールドアセンブリから円環状コンタクトレンズをキャスト成形する際に、前部モールド部分及び後部モールド部分の回転整列は円筒軸及びバラストの間の選択されるズレに対応するように調節され、それにより、モールド部分のランダム相対位置を回避することができる。さらに、同一のタイプの前部モールド部分及び後部モールド部分は複数の回転位置で整列されうる。したがって、同一のタイプの前部モールド部分及び後部モールド部分を用いて、様々な軸ズレをもって円環状レンズを成形することができ、それにより、必要とされる特有のツールの数を有意に低減することができる。
【0019】
図2及び2Aに模式的に示すとおり、重合性モノマーの硬化可能な混合物を前部モールド部分40中に堆積した後に、後部モールド部分30はこのモールド部分の整列を、選択される回転位置で前部モールド部分40に対して調節するまで、軸50に対して回転されうる。その後、モールド部分を合わせ、又は、完全に一緒にして、選択された回転位置を維持しながら、
図3に一般に示す形態を確保する。
【0020】
モールド部分の所望の回転位置を、
図2及び4に例示している実施形態を参照しながら説明する。前部モールド部分40はフランジなどの検知可能な特徴部42を含み、その特徴部はモールド部分40の外壁上に形成されており、そしてゼロ基準に位置し、それにより、前部モールド部分40は既知の位置に整列されうることを確保する。後部モールド部分30はフランジなどの検知可能な特徴部35を含み、その特徴部はモールド部分30の外壁上に形成されており、軸50に対して後部モールド部分30の検知可能な特徴部35の回転を決定することができる。検知可能な特徴部35の整列が選択された回転位置で調節されるまで軸50に対して後部モールド部分30の検知可能な特徴部35を回転した後に、モールド部分30及び40を、選択された回転位置を維持しながら組み合わせる。
【0021】
図2Aに示す別の実施形態において、前部モールド部分40は検知可能な特徴部42aを含み、その特徴部はモールド部分40の外壁上に形成されており、そしてゼロ基準に位置し、それにより、前部モールド部分40は既知の位置に整列されうることを確保する。後部モールド部分30は検知可能な特徴部35aを含み、その特徴部はモールド部分30の外壁上に形成され、それにより、軸50に対する後部モールド部分30の検知可能な特徴部35の回転を決定することができる。検知可能な特徴部35aの整列を選択された回転位置に調節するまで、軸50に対して後部モールド部分30の検知可能な特徴部35aを回転させた後に、モールド部分30及び40を、選択された回転位置を維持しながら組み合わせる。
【0022】
モールド部分を組み合わせる前に、重合可能なレンズ形成性モノマー混合物をモールド部分の中に導入する。モールド部分を組み合わせた後に、重合可能なレンズ形成性モノマー混合物を、UV光又は熱に暴露するなどして重合し、次いで、モールドアセンブリを分離し、そこから成形レンズを取り出す。特定のプロセスにより、レンズ検査及びレンズパッケージングなどの他の処理工程を含むことができる。
【0023】
図4に示すとおり、モールド部分の回転変位の後に、前部モールド部分40の検知可能な特徴部42に対して後部モールド部分30の検知可能な特徴部35の軸角度を測定する。モールド部分の回転変位の後の前部モールド部分40の検知可能な特徴部42に対する後部モールド部分30の検知可能な特徴部35の軸角度は、組み合わされたモールド部分のレンズ形状キャビティー中で重合可能なレンズ形成性混合物を硬化させ、円環状コンタクトレンズを形成する前又は後に測定されうる。軸角度はモールド対の検知可能な特徴部の中心を最初に決定することにより測定される。一般に、これは、米国特許第6,788,399号明細書などの任意の既知の自動視覚システムのツールセットの機能である。通常、周囲を特定し、そして中心を計算する。その後、検知可能な特徴部を周囲にわたって特定し、そしてモールドの中心から延びている水平もしくは垂直基準軸に対する角度を当該技術分野において知られた方法により計算する。
【0024】
本発明の方法のさらなる利点は、より複雑な幾何形状を有する円環状コンタクトレンズ、特に、多焦点円環状コンタクトレンズの実用的かつコスト効率のよいキャスト成形を可能にすることである。
【0025】
この実施形態では、円環状コンタクトレンズは前部多焦点表面を有する。したがって、多焦点光学系及びバラストの両方はレンズの前部表面に「組み込まれる」。
【0026】
例示の目的で、多焦点コンタクトレンズは2つのクラスに分けることができる。
第一に、多焦点コンタクトレンズとしては、同心二焦点コンタクトレンズなどのレンズの直径の周りが半径方向に対称であるレンズが挙げられる。本発明によるこのクラスの円環状多焦点コンタクトレンズをキャスト成形するには、前部モールド部分40のモールド画定表面41はバラストを提供することに加えて多焦点光学表面を提供する形状となっている。前部モールド部分は従来の方法によりこの所望の光学表面を有する射出成形ツールから射出成形される。第二に、多焦点レンズとしては、移行型多焦点コンタクトレンズ又は明確な近視領域及び遠視領域を含むレンズなど、半径方向に対称でないものが挙げられる。このクラスのレンズは、一般に、適切な多焦点視覚を達成するために目の上で特定の配向を維持しなければならない。したがって、このクラスの円環状コンタクトレンズをキャスト成形するために、モールド画定表面41は上記のとおりに所望の多焦点光学表面を備えており、そして表面41は、また、その上の多焦点光学表面が表面41に提供されているバラストに対して配向されているように設計される。多焦点光学系及びバラストの両方が前部モールド部分により提供されるので、後部モールド部分及び前部モールド部分は複数の回転位置で回転的に整列されうるであろう。
【0027】
本明細書中に開示した実施形態に様々な変更がなされてよいことは理解されるであろう。それゆえ、上記の記載は限定するものと解釈されるべきでなく、好ましい実施形態の単なる例示と解釈されるべきである。例えば、モノマー、コポリマー、マトリックス制御拡散ドラッグデリバリー装置ならびにその製造方法及び使用方法を本明細書中に示しそして記載しているが、根底にある発明の概念の範囲及び精神から逸脱することなく様々な変更がなされうることは当業者に明らかであろう。他の装置及び方法は本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者によってなされうる。さらに、当業者は添付の特徴及び利点の範囲及び精神の範囲内で他の変更を想定するであろう。