特許第5788982号(P5788982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788982ベンダムスチンアニオン性−カチオン性シクロポリサッカライド組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788982
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ベンダムスチンアニオン性−カチオン性シクロポリサッカライド組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20150917BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20150917BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150917BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   A61K31/4184
   A61K47/40
   A61P35/02
   A61K47/48
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-520244(P2013-520244)
(86)(22)【出願日】2011年2月23日
(65)【公表番号】特表2013-531060(P2013-531060A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】IB2011003367
(87)【国際公開番号】WO2012127277
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2014年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/399,855
(32)【優先日】2010年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/032,168
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511205068
【氏名又は名称】スプラテック ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アラコフ,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ピエトルチンスキー,グルゼゴルツ
(72)【発明者】
【氏名】パテル,キショア
(72)【発明者】
【氏名】ポペック,トマツ
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特表平04−500229(JP,A)
【文献】 特表2008−523096(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/036702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4184
A61K 47/40
A61K 47/48
A61P 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベンダムスチン(bendamustine);
(b)少なくとも一つの荷電基(charged group)を含む第1の荷電シクロポリサッカライド(cyclpolysaccharide);および
(c)少なくとも一つの荷電基を有し、前記第1の荷電シクロポリサッカライドの電荷とは反対の電荷を有する第2の荷電シクロポリサッカライドである安定化剤:を含む、組成物。
【請求項2】
前記第1の荷電シクロポリサッカライドは、シクロデキストリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の荷電シクロポリサッカライド上の前記少なくとも一つの荷電基は、アニオン性基である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アニオン性基は、硫酸基(sulphate)、スルホニル基(sulphonyl)、およびカルボニル基(carbonyl)からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
構成要素(b)は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、カルボキシメチル化(carboxymethylated)−β−シクロデキストリンナトリウム、O−リン酸化(O-phosphated)−β−シクロデキストリンナトリウム、スクシニル(succinyl)−(2−ヒドロキシ)プロピル−β−シクロデキストリン、スルホプロピル化(sulfopropylated)−β−シクロデキストリンナトリウム、およびO−硫酸化(O-sulfated)−β−シクロデキストリンナトリウムからなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
構成要素(b)は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記安定化剤の前記少なくとも一つの荷電基は、アミン、グアニジンおよび四級アンモニウム(quarternary ammonium)からなる群から選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
構成要素()は、ヘキサキス(6−アミノ−6−デオキシ)α−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリン、オクタキス(6−アミノ−6−デオキシ)γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−グアニジノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリン、オクタキス(6−グアニジノ−6−デオキシ)−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシ−N,N,N−トリメチルプロパンアンモニウム−シクロデキストリンおよび6−デオキシ−6−(3−ヒドロキシ)プロピルアミノβ−シクロデキストリンからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
構成要素()は、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の荷電シクロポリサッカライド上の前記少なくとも一つの荷電基は、カチオン性基である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
前記カチオン性基は、アミン、グアニジンおよび四級アンモニウムからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
構成要素()は、ヘキサキス(6−アミノ−6−デオキシ)α−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリン、オクタキス(6−アミノ−6−デオキシ)γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−グアニジノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリン、オクタキス(6−グアニジノ−6−デオキシ)−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシ−N,N,N−トリメチルプロパンアンモニウム−シクロデキストリンおよび6−デオキシ−6−(3−ヒドロキシ)プロピルアミノβ−シクロデキストリンからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
構成要素()は、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリンである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記安定化剤の前記少なくとも一つの荷電基は、硫酸基(sulphate)、スルホニル基(sulphonyl)、およびカルボニル基(carbonyl)からなる群から選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
構成要素(c)は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、カルボキシメチル化−β−シクロデキストリンナトリウム、O−リン酸化−β−シクロデキストリンナトリウム、スクシニル−(2−ヒドロキシ)プロピル−β−シクロデキストリン、スルホプロピル化−β−シクロデキストリンナトリウム、およびO−硫酸化−β−シクロデキストリンナトリウムからなる群から選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
構成要素(c)は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
(a)ベンダムスチン(bendamustine);
(b)第1の荷電シクロポリサッカライド、ここで、該第1の荷電シクロポリサッカライドは、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである;および
(c)前記第1の荷電シクロポリサッカライドの電荷とは反対の電荷を有する第2の荷電シクロポリサッカライドである安定化剤、ここで、該安定化剤は、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリンである:を含む、組成物。
【請求項18】
前記ベンダムスチンは、ベンダムスチン塩酸塩の形態である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年7月19日に提出された米国仮特許出願第61/399,855号の利益を主張するものであり、当該出願の全体は、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、以下を含む組成物を対象とする:
(a)ベンダムスチン(bendamustine);
(b)少なくとも一つの荷電基(charged group)を含む第1の荷電シクロポリサッカライド(cyclpolysaccharide);および
(c)前記第1の荷電シクロポリサッカライドの電荷とは反対の電荷を有する少なくとも一つの荷電基を有する第2の荷電シクロポリサッカライドである安定化剤。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ベンダムスチン、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸(butanoic acid)は、白血病および特定のリンパ腫の治療において用いられる。しかしながら、当該化合物は血漿中において限られた化学的安定性しか有しておらず、したがって、治療効果を得るために、高用量または反復投与を要する。それ故に、より向上した安定性を示す上記薬剤の製剤への要求がある。
【0004】
高分子材料とベンダムスチンを会合させることにより、ベンダムスチンの安定性を向上させる試みが行われている。しかしながら、かような試みはわずかな成功しか得られていない。したがって、Penchevaらは、ベンダムスチンとポリリン酸エステルとを会合させることにより、ベンダムスチンの安定性を向上させる試みを行った;"HPLC study on the stability of bendamustine hydrochloride immobilized onto polyphosphoesters"; J. Pharma. Biomed. Anal; (2008)。しかしながら、当該論文の図2は、最も安定な会合体ですら、pH7の条件下、約45分間で一桁減少したことを示している。
【0005】
Evjenは、二重(dual)非対称遠心分離を用いて、ベンダムスチンをリポソームに組み込んだ;"Development of Improved Bendamustin-Liposomes"; Masters Thesis; University of Tromso (2007)。表18(79頁)によれば、これらの設計により、フリーなベンダムスチンと比較して、わずかに安定性が増加しただけにすぎない(細胞培地中に分散されたときの、フリーなベンダムスチンが14分の半減期であったのに対し、20分の半減期)。
【0006】
2010年2月24日に出願された“ベンダムスチンシクロポリサッカライド組成物”と題する米国特許出願第12/711,979号は、以下を含む、特定のベンダムスチン組成物を開示している:(a)ベンダムスチン、(b)荷電シクロポリサッカライド、および(c)シクロポリサッカライドの電荷とは反対の電荷を有する安定化剤。かような組成物は、予想外に望ましい抗がん活性に加えて、予想外に望ましい安定性を示し、このような利益は、ベンダムスチンが反応性の環境による影響から保護される構造を形成することにより得られていると考えられる。
【0007】
本発明の組成物は、血漿といった反応性の環境において、予想外に望ましい抗がん活性に加えて、予想外に望ましい安定性を示す。当該組成物は、ベンダムスチンを用いた治療を必要とする患者への注射または点滴に適している。
【発明の概要】
【0008】
発明の要約
本発明は、以下を含む組成物を対象とする:
(a)ベンダムスチン(bendamustine);
(b)少なくとも一つの荷電基(charged group)を含む第1の荷電シクロポリサッカライド(cyclpolysaccharide);および
(c)第1の荷電シクロポリサッカライドの電荷とは反対の電荷を有する少なくとも一つの荷電基を有する第2の荷電シクロポリサッカライドである安定化剤。
【0009】
米国特許出願第12/711,979(“’979出願”)において開示された構造は、ベンダムスチン分子が、当該分子の突起部を分離するための“蓋”として機能する安定化剤を伴ってシクロポリサッカライドの穴に挿入された樽型構造(barrel-like structure)の形成を含むと考えられている。’979出願には、有用である様々な安定化剤が開示されているが、安定化剤として荷電シクロポリサッカライドを使用することは開示されていない。かような分子のドーナツ形状を考えると、当該分子が、第1の荷電シクロポリサッカライドによって作られる“樽”のための効果的な“蓋”として効果的に機能しうることは予想外である。
【0010】
第1の荷電シクロポリサッカライドと効果的に機能しうる安定化剤を供給する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、以下を含む組成物を対象とする:
(a)ベンダムスチン(bendamustine);
(b)少なくとも一つの荷電基(charged group)を含む第1の荷電シクロポリサッカライド(cyclpolysaccharide);および
(c)第1の荷電シクロポリサッカライドの電荷とは反対の電荷を有する少なくとも一つの荷電基を有する第2の荷電シクロポリサッカライドである安定化剤。
【0012】
本明細書中において使用される、“ベンダムスチン”の語は、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸化合物を示し、薬学的に許容されるこれらの塩もまた含み、たとえば、ベンダムスチン塩酸塩が挙げられる。
【0013】
好ましくは、ベンダムスチンと第1の荷電シクロポリサッカライドの比率は、重量比で約1:5000から約1:5であり;より好ましくは約1:1000から約1:8であり;更に好ましくは約1:500から約1:10であり、特に好ましくは約1:100から約1:10である。
【0014】
安定化剤は、通常、第1の荷電シクロポリサッカライドに対して重量比で、約5:1から約1:1000であり;好ましくは約1:4から約1:100である。
【0015】
シクロポリサッカライド
本発明の実施において用いられるシクロポリサッカライドとしては、シクロデキストリン、シクロマンニン、シクロアルトリン、シクロフルクタン等が挙げられる。一般に、6から8の糖単位を含むシクロポリサッカライドが好ましい。
【0016】
シクロポリサッカライドの中でも、シクロデキストリンが好ましい。シクロデキストリンは、少なくとも6つの糖単位を含む環状オリゴ−1−4−α−D−グルコピラノース(glucopiranose)である。最も広く知られているのは、6,7、または8の糖単位を含むシクロデキストリンである。6つの糖単位を含むシクロデキストリンは、α−シクロデキストリンとして知られており、7つの糖単位を含むシクロデキストリンは、β−シクロデキストリンとして知られており、8つの糖単位を含むシクロデキストリンは、γ−シクロデキストリンとして知られている。特に好ましいシクロポリサッカライドは、β−シクロデキストリンである。
【0017】
本発明の実施において用いられるシクロポリサッカライドは、第1のシクロポリサッカライド、または安定化剤としてのいずれで用いられても、荷電シクロポリサッカライドである。“荷電シクロポリサッカライド”の語は、荷電部分で置換された一以上のヒドロキシ基を有するシクロポリサッカライドを示すものである。かような荷電部分は、それ自身が荷電基であってもよいし、また、一以上の荷電部分で置換された有機部分(たとえば、C−CアルキルまたはC−Cアルキルエーテル部分)を含んでいてもよい。
【0018】
第1の荷電シクロポリサッカライドがアニオン性基で置換されている場合、安定化剤はカチオン性のシクロポリサッカライドである。反対に、第1の荷電シクロポリサッカライドがカチオン性基で置換されている場合、安定化剤はアニオン性のシクロポリサッカライドである。
【0019】
アニオン性シクロポリサッカライドは、一以上のアニオン性基を含んでいればよいが、アニオン性シクロポリサッカライドは、カルボキシル基(carboxyl group)、スルホニル基(sulfonyl group)または硫酸基(sulphate group)を含んでいると好ましい。好ましいアニオン性シクロポリサッカライドとしては、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、カルボキシメチル化(carboxymethylated)−β−シクロデキストリンナトリウム、O−リン酸化(O-phosphated)−β−シクロデキストリンナトリウム、スクシニル(succinyl)−(2−ヒドロキシ)プロピル−β−シクロデキストリン、スルホプロピル化(sulfopropylated)−β−シクロデキストリンナトリウム、およびO−硫酸化(O-sulfated)−β−シクロデキストリンナトリウムが挙げられる。スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンが特に好ましい。
【0020】
カチオン性シクロポリサッカライドは、一以上のカチオン性基を含んでいればよいが、カチオン性シクロポリサッカライドは、アミノ基(amino group)、グアニジン基(guanidine group)または四級アンモニウム基(quarternary group)を含んでいると好ましい。用いられうる適当なアミノ−シクロデキストリンは、アミノ−α−シクロデキストリン、アミノ−β−シクロデキストリン、およびアミノ−γ−シクロデキストリンであり、置換度(substitution level)が約4から約10であると好ましい。この形式の好ましいアミノ−シクロデキストリンとしては、ヘキサキス(6−アミノ−6−デオキシ)α−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリン、オクタキス(6−アミノ−6−デオキシ)γ−シクロデキストリンが挙げられる。他に用いられうるカチオン性シクロポリサッカライドとしては、ヘプタキス(6−グアニジノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリンのように、好ましくは置換度が約4から約10であるグアニジノ−シクロデキストリン;6−デオキシ−6−(3−ヒドロキシ)プロピルアミノβ−シクロデキストリンのように、好ましくは置換度が約4から約10であるアルキルアミノ−シクロデキストリン:および、2−ヒドロキシ−N,N,N−トリメチルプロパンアンモニウム−シクロデキストリンのように、好ましくは置換度が4から9であるアルキルアンモニウム−シクロデキストリンが挙げられる。
【0021】
特に好ましいカチオン性ポリサッカライドとしては、ヘキサキス(6−アミノ−6−デオキシ)α−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリン、オクタキス(6−アミノ−6−デオキシ)γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−グアニジノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリン、オクタキス(6−グアニジノ−6−デオキシ)−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシ−N,N,N−トリメチルプロパンアンモニウム−シクロデキストリンおよび6−デオキシ−6−(3−ヒドロキシ)プロピルアミノβ−シクロデキストリンが挙げられる。
【0022】
本発明のある特定の好ましい実施形態において、第1の荷電シクロポリサッカライドは、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、および、ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)β−シクロデキストリンを含む安定化剤を含む。
【0023】
賦形剤
本発明の組成物は、糖、ポリアルコール、可溶性ポリマー、塩および脂質等の薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでいてもよい。
【0024】
用いられうる糖およびポリアルコールとしては、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0025】
用いられうる可溶性ポリマーの実例としては、ポリオキシエチレン、ポロキサマー(poloxamers)、ポリビニルピロリドン、およびテキストランが挙げられる。
【0026】
有用な塩としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
用いられうる脂質としては、脂肪酸エステル、糖脂質、リン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
製造
本発明の組成物は、固体のベンダムスチンを第1の荷電シクロポリサッカライドの水溶液中に溶解させることにより、または、第1の荷電シクロポリサッカライドの水溶液をベンダムスチンの水性貯蔵液(an aqueous stock solution)と混合することによって製造されうる。このようにして得られた混合物は、均質で平衡化された水溶液を得るため、混合され、任意で超音波の作用にさらされる。シクロポリサッカライドがシクロデキストリンである場合、組成物の製造に用いられるシクロデキストリン水溶液は、少なくとも4%のシクロデキストリンを含んでいると好ましく、前記溶液は、少なくとも10%のシクロデキストリンを含んでいるとより好ましい。
【0029】
安定化剤および賦形剤(含まれる場合)は、予め調製され、均質で平衡化されたベンダムスチンと第1の荷電シクロポリサッカライドの水溶液にこれらを添加することにより、前記組成物に好適に導入される。かような物質は固体として添加されてもよいし、水溶液として添加されてもよい。
【0030】
好ましくは、最終組成物は、注射に用いる前に濾過される。
【0031】
組成物を任意でフリーズドライし、その使用前に注射剤中に溶解させるために適した固形物としてもよい。安定化剤としてのアミンを含む組成物は、かような安定化剤の添加前にフリーズドライし、使用する直前、注射液を調製した後の組成物に上記安定化剤を導入すると好ましい。
【0032】
ある実施形態において、本発明の組成物は、上記構成要素を混合し、加熱すること(incubation)により製造される。
【0033】
他の実施形態において、本発明の組成物は、上記構成要素を混合し、混合物に超音波をかけることによって製造される。
【0034】
他の実施形態において、本発明の組成物は、上記構成要素を混合し、加熱し、さらに生成物をフリーズドライすることによって製造される。
【0035】
他の実施形態において、本発明の組成物は、上記構成要素を混合し、混合物に超音波をかけ、さらに生成物をフリーズドライすることによって製造される。
【0036】
本発明の組成物は、イン・ビトロ(in vitro)およびイン・ビボ(in vivo)の両方の条件下において、血漿中に導入された際の安定性が改善されたことが明らかとなった。したがって、かような製剤は、製剤化されていない(non-formulated)ベンダムスチンの半減期と比較して、少なくとも約10%、約25%、約50%あるいは約100%以上で半減期を延ばすことができ、血漿中において長い半減期を示すであろう。
【0037】
加えて、本発明の組成物は、ベンダムスチンおよびシクロポリサッカライドを含む組成物や、ベンダムスチン単独と比較して、予想外に腫瘍に対する活性が改善された。
【0038】
本発明は、さらに、以下の実施例によって説明され、これらの実施例は、単に説明のために包括されるものであって、別に明確な示唆がない限り本発明の範囲を制限するものではないと理解されるべきである。本明細書中の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲に記載されている全ての割合、比率および部分は他に定義がない場合、重量によるものであり、近似である。
【実施例】
【0039】
実施例
実施例1
スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム(SBECD)およびヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ)−β−シクロデキストリン塩酸塩(H6A)を含むベンダムスチン組成物の製造
2.5mg/gのベンダムスチンHCl、20%のSBECDおよび1%のH6Aを含む組成物
すべての操作は、室温で行われた。3917mgの水を1000mgのスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムに添加し、当該混合物を固体が完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に、12.5mgのベンダムスチン塩酸塩および21mgのマンニトールを加え、2時間撹拌した。この溶液に、50mgのH6Aを加え、15分間撹拌した。この生成物の溶液を0.2マイクロメーターのナイロンフィルターでろ過した。
【0040】
2.5mg/gのベンダムスチンHCl、20%SBECDおよび2%H6Aを含む組成物
すべての操作は、室温で行われた。3867mgの水を1000mgのスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムに添加し、当該混合物を固体が完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に、12.5mgのベンダムスチン塩酸塩および21mgのマンニトールを加え、2時間撹拌した。この溶液に、100mgのH6Aを加え、15分間撹拌した。この生成物の溶液を0.2マイクロメーターのナイロンフィルターでろ過した。
【0041】
13mg/gのベンダムスチンHCl、20%SBECDおよび1%H6Aを含む組成物
すべての操作は、室温で行われた。400mgの水を200mgのスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムに添加し、当該混合物を固体が完全に溶解するまで撹拌した。この溶液に、13mgのベンダムスチン塩酸塩および22.1mgのマンニトールを加え、2時間撹拌した。10mgのH6Aを355mgの水に溶解させ、当該H6A溶液を予め調製したSBECD溶液に加え、ベンダムスチンおよびマンニトールを15分間撹拌した。この生成物の溶液を0.2マイクロメーターのナイロンフィルターでろ過した。
【0042】
実施例2
ラットに投与されたスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムおよびヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ-β-シクロデキストリン)を含む組成物中におけるベンダムスチンの薬物動態
試験された組成物:
コントロール:2.5mg/gベンダムスチン塩酸塩、4.25mg/gマンニトールの0.9%NaCl液(in 0.9%NaCl);投与量10mg/kg
組成物1:2.5mg/gベンダムスチン塩酸塩、20%w/wスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウム、1%ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ−β−シクロデキストリン)、4.3mg/gマンニトール液(in water)(実施例1に記載の方法に従って調製した);投与量10mg/kg
組成物2:2.5mg/gのベンダムスチン塩酸塩、20%w/wスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウム、2%ヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ−β−シクロデキストリン)、4.3mg/gマンニトール液(in water)(実施例1に記載の方法に従って調製した);投与量10mg/kg
組成物A:5mg/mLベンダムスチン塩酸塩、20%w/wスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウム、10.2mg/gマンニトール液(in water);投与量10mg/kg。
【0043】
動物:
メスのスプラーグ−ドーリーラット(Sprague-Dawley rats)(250〜350g)。当該動物は、一つのケージあたり3体が管理され、当該ケージは、エアーフィルターカバーを備えており、光(12hの明暗サイクル、6時(06h00)に光点灯)の下に置かれ、22℃±1℃の温度に制御された。動物に対するすべての操作は、滅菌層状フードの下で行った。動物は、ピュリナ(Purina)マウス飼料および水を自由に摂取することができる環境とした。薬剤を投与する前、動物には一晩絶食させ、麻酔をかけた。
【0044】
投与およびサンプリング:
ベンダムスチン組成物およびコントロールを、ラットの尾静脈へ静脈内注射した。注射を行った後、5、15、30、45分、1、1.5、2、3および4時間の間隔をあけて血液サンプルを採取した。ラットは、一般的なイソフルランの吸入により麻酔した。血液サンプルは、ヘパリン化されたチューブを用いて頸静脈から採取し、氷上で保存した。血液を直ちに遠心分離し、血漿を分離した。血漿サンプルを速やかに抽出した。
【0045】
サンプル抽出および分析:
上記血漿サンプル0.100mLをプラスチックチューブへ移した。当該サンプルを、30秒間激しく振動させて0.400mLの100mM HClアセトニトリル溶液で抽出した。このサンプルを10000RPMで5分間遠心分離して、上澄みを分離した。このサンプルをドライアイス中で凍結させ、HPLC分析を行うまで−80℃で保管した。分析のため、20マイクロリットルのサンプルをHPLCに注入した。
【0046】
HPLC条件:
C18逆相カラム50x4.6mm、Symmetry/Shield 3.5マイクロメーター
カラム温度 30℃
流速 1.5mL/分
注入体積 20マイクロリットル
蛍光検出波長:励起327nm、発光420nm
移動相:緩衝液A:5%アセトニトリル0.1%TFA
緩衝液B:90%アセトニトリル0.1%TFA
実行時間:10分
コントロールと比較して、試験した組成物において、ベンダムスチンの薬物動態特性が改善されたことが以下の表1により示されている。
【0047】
【表1】
【0048】
上記データは、本発明の組成物において、薬剤が対象に投与された場合であっても、ベンダムスチンの薬物動態(pharmacokinetics)を非常に長くすることができることを示している。上記データは、さらに、H6Aを添加することにより、薬物動態が増進することもまた示している。
【0049】
実施例3
スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムおよびヘプタキス(6−アミノ−6−デオキシ−β−シクロデキストリン)を含む組成物中のベンダムスチンがBalb/cマウスにおいてヒト乳がんMDA−MB−231細胞の皮下固形腫瘍の成長に与える影響
動物:
生後5〜6週間のBalb/cマウスをCharles River Canada Inc.から購入した。当該動物は、一つのケージあたり5体が管理され、当該ケージは、エアーフィルターカバーを備えており、光(12hの明暗サイクル、6時(06h00)に光点灯)の下、22℃±1℃の温度に制御された環境下におかれた。動物に対するすべての操作は、滅菌層状フードの下で行った。動物は、ピュリナ(Purina)マウス飼料(Pro Lab PMH 4018, Agway, Syracuse, New Yorkの商標)および水を自由に摂取することができる環境とした。これらの動物に関する研究は、“実験動物の管理と使用に関する指針”("Guidelines for Care and Use of Experimental Animals")に従って行った。
【0050】
腫瘍細胞の培養:
ヒト乳がん細胞MDA−MB 231を適切な培地で培養した。当該細胞を、腫瘍の生着を準備するため、対数増殖期に採取した。
【0051】
腫瘍細胞の生着:
30%マトリゲル培地中のMDA−MB−231細胞を、それぞれの動物の脇腹の2側面に皮下接種した(一注射あたり5.0x10細胞)。移植してから9〜10日後、腫瘍の大きさが直径で0.5から0.8cmに達した時点で、これらの動物を一つのグループあたり5体とし、無作為で2つのグループに分けた。1、2、13および14日目に静脈注射による処置を行った。コントロールグループは等張食塩水で処置した。参照グループは、投与量を35mg/kgとしたベンダムスチンHCl液(in water)(7mg/mL)で処置した。試験グループは投与量を60mg/kgとした(参照グループの処置と等毒性の(equitoxic))本発明の組成物で処置した。当該組成物は、13mg/gベンダムスチンHCl、20%SBECDおよび1%H6A、ならびにマンニトールを含み、実施例1で記載された方法に従って調製された。
【0052】
有効性評価:
皮下固形腫瘍の計測は、最初に注射した日、その後は3〜4日ごとに行った。各腫瘍について、直交する最も大きい二つの直径を、キャリパー(calipers)を用いて測定し、腫瘍の大きさを以下の式を用いて推定した。
【0053】
TV=L×W×/2 ここで、TV:腫瘍体積;L:長さ;W:幅
動物の体重も記録した。
【0054】
結果を、以下の表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
この結果によれば、等毒性の(equitoxic)投与量とした、調剤されていないベンダムスチンと比較して、SBECDおよびH6Aを含む本発明の組成物の優れた有効性が示されている。
【0057】
上述の実施形態は、発明の原理の適用を表わす、多くの可能性のある特定の実施形態のうちの一部の例示にすぎないことが理解されるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、数多くの、変更を加えられた他の配列は、これらの原理に従って、当業者により、容易に考案されることが可能である。