特許第5788985号(P5788985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5788985集電体、電極構造体、非水電解質電池、蓄電部品、硝化綿系樹脂材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788985
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】集電体、電極構造体、非水電解質電池、蓄電部品、硝化綿系樹脂材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20150917BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20150917BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20150917BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20150917BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20150917BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20150917BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/13
   H01B5/02 A
   H01G11/68
   H01G11/70
   H01G11/28
   H01B1/20 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-526627(P2013-526627)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2011067461
(87)【国際公開番号】WO2013018159
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】000231626
【氏名又は名称】株式会社UACJ製箔
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 聡平
(72)【発明者】
【氏名】本川 幸翁
(72)【発明者】
【氏名】和佐本 充幸
(72)【発明者】
【氏名】角脇 賢一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 次雄
【審査官】 福井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−162787(JP,A)
【文献】 特開2010−278125(JP,A)
【文献】 特開2004−186209(JP,A)
【文献】 特開2010−021203(JP,A)
【文献】 国際公開第00/001021(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/109783(WO,A1)
【文献】 特開2013−030408(JP,A)
【文献】 特開2013−030409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4
H01B 1,5
H01G 11
C09J
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と、この導電性基材の片面又は両面に導電性樹脂層を有する集電体であって、
前記導電性樹脂層は、アクリル系樹脂とポリアセタール系樹脂のうちの少なくとも一種と、メラミン系樹脂と、硝化綿と、導電材を含有する、集電体。
【請求項2】
アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、メラミン系樹脂、及び硝化綿の合計を100質量%としたとき、メラミン系樹脂は、5〜55質量%であり、硝化綿は、40〜90質量%である、請求項に記載の集電体。
【請求項3】
前記導電性樹脂層表面の23℃の恒温室内でθ/2法によって測定した水接触角が80度以上125度以下である、請求項1〜の何れか1つに記載の集電体。
【請求項4】
前記水接触角が90度以上110度以下である、請求項に記載の集電体。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1つに記載の集電体の前記導電性樹脂層上に活物質層又は電極材層を備える、電極構造体。
【請求項6】
請求項1〜の何れか1つに記載の集電体の前記導電性樹脂層が、活物質を含有する、電極構造体。
【請求項7】
請求項又はに記載の電極構造体を備える、非水電解質電池又は蓄電部品。
【請求項8】
アクリル系樹脂とポリアセタール系樹脂のうちの少なくとも一種と、メラミン系樹脂と、硝化綿と、導電材を含有する、集電体用導電性樹脂材料。
【請求項9】
アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、メラミン系樹脂、及び硝化綿の合計を100質量%としたとき、メラミン系樹脂は、5〜55質量%であり、硝化綿は、40〜90質量%である、請求項に記載の導電性樹脂材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流密度での充放電に適した集電体、この集電体を用いた電極構造体、この電極構造体を用いた非水電解質電池、及び蓄電部品(例:電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)、及び集電体用硝化綿系樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池に代表される非水電解質電池に対しては充電時間の短縮の要求があり、そのためには大電流密度で高速に充電できる必要がある。また、自動車用の非水電解質電池に対しては十分な自動車の加速性能を得るために、大電流密度の高出力放電ができることが要求されている。このように大電流密度で充放電する場合において、電池容量が低下しない特性(ハイレート特性)を向上させるためには電池の内部抵抗の低減が重要である。電気二重層キャパシタ・リチウムイオンキャパシタ等の他の非水電解質電池や帯電部品についても全く同様なことがいえる。
【0003】
一般に内部抵抗の原因は、構成材料の電気抵抗、構成要素間の界面抵抗、電解液中の荷電粒子であるイオンの伝導抵抗、電極反応抵抗等があり、内部抵抗の低減にはそれぞれの抵抗を低減する必要がある。この中で特に重要な内部抵抗のひとつがアルミニウム箔や銅箔等の金属箔からなる導電性基材と活物質層との間に生じる界面抵抗であり、この界面抵抗を低減させる方法のひとつとしてこの界面の密着性を向上させることが効果的であることが知られている。
【0004】
集電体と活物質層の密着性を向上させる方法として、例えば、導電性樹脂で集電体を被覆し、その上に活物質層形成用のペーストを塗工することが従来提案されている。特許文献1には導電性フィラーと結着剤としてビニルブチラールと可塑剤としてフタル酸ジブチルを含む導電性塗料を正極集電体に塗布して導電性塗膜を形成させる技術が開示されている。特許文献2には正極集電体の上にポリアクリル酸またはアクリル酸とアクリル酸エステルとの共重合体を主結着剤とし、炭素粉を導電フィラーとして含む導電性塗膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−109256号公報
【特許文献2】特開昭62−160656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの技術では必ずしも十分なハイレート特性が得られず電極寿命も満足できないものであった。導電性基材と導電性樹脂とを具備した集電体と活物質層の界面抵抗を低減させる場合、この集電体の導電性樹脂層と活物質層との高い密着性だけでなく導電性樹脂層そのものの体積固有抵抗が低いことも重要である。ここでいう密着性とは導電性樹脂層と活物質層の界面抵抗や電極寿命に直接関与するものであり、電解液がこの界面に浸潤した状態においても剥離がなく、強固に密着する性質を意味する。さらに非水電解質電池やリチウムイオンキャパシタの正・負極では充放電によって活物質層中の活物質の体積が変化することから活物質が活物質層から剥離しやすくなり、更に活物質層と接着する集電体のとの界面で剥離が起こりやすい。特にハイレートの充放電では活物質の体積変化が急激であることから、集電体の導電性樹脂層と活物質層とは特に強固な密着性が必要であるが、従来の技術では導電性樹脂層と活物質層との密着性が低く、電池寿命において満足できるものではなく、また導電性樹脂層そのものの体積固有抵抗の低減が必ずしも十分ではなかった。
【0007】
本発明の目的は非水電解質電池の内部抵抗を低減でき、リチウムイオン二次電池等の非水電解質電池や電気二重層用キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の蓄電部品に好適に用いることができ、ハイレート特性を向上させることができ、電池寿命を延ばすことができる集電体を提供することである。本発明の集電体は更に活物質層又は電極材層を形成することにより、活物質層又は電極材層との密着性が良好な電極構造体になり得る。また、本発明の集電体に活物質層を形成sした電極構造体を用いた非水電解質電池は、上記特性を有する集電体を有するので、内部抵抗を低減してハイレート特性を向上させることができる。更に、本発明はコピー機や自動車などに用いられる大電流の高速充放電が必要な電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の蓄電部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、リチウムイオン二次電池の正極材に使用される、集電体の構成について検討したところ、活物質層を形成する際の下地となる樹脂層として硝化綿系樹脂と導電材を含むものを用いることによって、ハイレート特性や電極寿命を向上させることができることを見出し、本発明の完成に到った。このような集電体を用いることにより、ハイレート特性向上や電極寿命向上に優れる非水電解質電池、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタを得ることができる。
すなわち、本発明は、導電性基材と、この導電性基材の片面又は両面に導電性樹脂層を有する集電体であって、前記導電性樹脂層は、硝化綿系樹脂と、導電材を含有する集電体を提供する。
以下、種々の実施形態を例示する。以下に例示する実施形態は、互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記硝化綿系樹脂は、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エポキシ系樹脂のうちの少なくとも一種と、硝化綿とを含む上記記載の集電体である。
【0010】
好ましくは、前記硝化綿系樹脂は、アクリル系樹脂とポリアセタール系樹脂のうちの少なくとも一種と、メラミン系樹脂と、硝化綿とを含む上記記載の集電体である。
【0011】
好ましくは、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、メラミン系樹脂、及び硝化綿の合計を100質量%としたとき、メラミン系樹脂は、5〜55質量%であり、硝化綿は、40〜90質量%である、上記記載の集電体である。
【0012】
好ましくは、前記導電性樹脂層表面の23℃の恒温室内でθ/2法によって測定した水接触角が80度以上125度以下、好ましくは90度以上110度以下である、上記記載の集電体である。
【0013】
好ましくは、上記記載の集電体の前記導電性樹脂層上に活物質層又は電極材層を備える、電極構造体である。
【0014】
好ましくは、上記記載の集電体の前記導電性樹脂層が、活物質を含有する、電極構造体である。
【0015】
好ましくは、上記記載の電極構造体を備える、非水電解質電池又は蓄電部品である。
【0016】
好ましくは、硝化綿系樹脂と、導電材を含有する集電体用硝化綿系樹脂材料である。
【0017】
好ましくは、前記硝化綿系樹脂は、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エポキシ系樹脂のうちの少なくとも一種と、硝化綿とを含む上記記載の硝化綿系樹脂材料である。
【0018】
好ましくは、前記硝化綿系樹脂は、アクリル系樹脂とポリアセタール系樹脂のうちの少なくとも一種と、メラミン系樹脂と、硝化綿とを含む上記記載の硝化綿系樹脂材料である。
【0019】
好ましくは、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、メラミン系樹脂、及び硝化綿の合計を100質量%としたとき、メラミン系樹脂は、10〜40質量%であり、硝化綿は、50〜70質量%である、上記記載の硝化綿系樹脂材料である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の集電体は、ハイレート特性に優れ、大電流密度での高速の充放電に適し長寿命化が達成され、また本発明の集電体を具備してなる電極構造体、リチウムイオン電池等の非水電解液電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電部品は、ハイレート特性に優れ、大電流密度での高速の充放電特性に優れ、長寿命化が達成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の集電体は、導電性基材と、この導電性基材の片面又は両面に導電性樹脂層を有する集電体であって、前記導電性樹脂層は、硝化綿系樹脂と、導電材を含有する。
以下、詳細に説明する。
【0022】
<1.導電性基材>
本発明の導電性基材としては、非水電解質電池用、電気二重層キャパシタ用、又はリチウムイオンキャパシタ用の各種金属箔が使用可能である。具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、ステンレス、ニッケルなどが使用可能である。その中でも導電性の高さとコストのバランスからアルミニウム、アルミニウム合金、銅が好ましい。正極としてアルミニウム箔を用いる場合、本発明はハイレート特性の向上を目的としていることから、導電性の高いJIS A1085などの純アルミニウム系を用いることが好ましい。導電性基材の厚さとしては、特に制限されるものではないが、0.5μm以上、50μm以下であることが好ましく、7〜100μmがさらに好ましく、10〜50μmがさらに好ましい。厚さが0.5μmより薄いと箔の強度が不足して樹脂層等の形成が困難になる場合がある。一方、50μmを超えるとその分、その他の構成要素、特に活物質層あるいは電極材層を薄くせざるを得ず、特に非水電解質電池や、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等の蓄電部品とした場合、十分な容量が得られなくなる場合がある。
【0023】
<2.導電性樹脂層>
本発明の導電性樹脂層(以下、単に「樹脂層」とも称する)は、上記導電性基材の片面又は両面に設けられ、硝化綿系樹脂と、導電材を含有する。
<2−1.導電性樹脂>
本発明において、導電性樹脂は、樹脂成分として硝化綿を含む樹脂であり、硝化綿のみからなるものであってもよく、硝化綿と別の樹脂とを含有するものであってもよい。硝化綿はニトロ基を有するセルロースであるが、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の他のセルロース類と比較して、電極に使用する用途としては例示される場合があっても、最適化に対する提案は行われておらず、積極的に使用するための最適化は従来なされていなかった。
【0024】
本発明者らは、この硝化綿に導電材を分散して硝化綿系樹脂組成物を得て、導電性基材上に硝化綿系樹脂と導電材を含有する導電性を有する樹脂層を形成することにより、非水電解質電池のハイレート特性を飛躍的に向上させることができることを知見した。本発明に用いる硝化綿の窒素濃度は10〜13%、特に10.5〜12.5%が好ましい。窒素濃度が低すぎると、導電材の種類によっては十分分散できない場合があり、窒素濃度が高すぎると、硝化綿が化学的に不安定になり、電池に用いるには危険だからである。窒素濃度はニトロ基の数に依存するため、窒素濃度の調整はニトロ基数を調整することによって行うことができる。また、上記硝化綿の粘度は、JIS K−6703に基づく測定値が、通常1〜6.5秒、特に1.0〜6秒、酸分は0.006%以下、特に0.005%以下であることが推奨される。これらの範囲を逸脱すると、導電材の分散性、電池特性が低下する場合がある。
【0025】
本発明の硝化綿系樹脂は、樹脂成分全体を100質量%とした場合、硝化綿を100質量%使用できるが、他の樹脂成分と併用して使用することもでき、併用する場合には少なくとも硝化綿を全樹脂成分に対して40質量部以上、特に50質量部以上、90質量%以下、特に80質量%以下含むことが好ましい。硝化綿の割合は、具体的には例えば、20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90質量%であり、ここで例示した何れか2つの数値の範囲内であってもよい。種々の樹脂に導電材を添加して製造した導電性樹脂層の内部抵抗を調査した結果、硝化綿を50質量%以上含むと樹脂層の抵抗が飛躍的に低減化でき、十分なハイレート特性が得られる上、密着性に優れ、長寿命化が計れることがわかった。一方、硝化綿の配合量が少なすぎると導電材の分散に対する硝化綿の配合による改善効果が得られない場合があり、40質量%以上の硝化綿を添加することにより、樹脂層の抵抗を十分低くできるためと推定される。
【0026】
本発明の硝化綿系樹脂は、上述した硝化綿と併用して種々の樹脂を添加することが可能である。本発明においては、電池性能(キャパシタ性能を含む。以下同じ)を調査した結果、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エポキシ系樹脂を併用添加することが好適であり、樹脂成分として硝化綿を100質量%を使用した場合と同様かそれ以上に電池性能を向上させることができる。以下にそれぞれの樹脂成分について説明する。以下の説明において、数平均分子量又は重量平均分子量は、GPC(ゲル排除クロマトグラフ)によって測定したものを意味する。
【0027】
上記メラミン系樹脂は硝化綿と硬化反応を起こすため、樹脂の硬化性が向上し、導電性基材との密着性も向上することにより、電池性能が向上するものと推定される。添加量は、樹脂成分としての硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、より好ましくは10〜150質量%である。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると硬化が進みすぎて樹脂層が硬くなりすぎ、電池の製造時に剥離しやすくなり、放電レート特性が低下する場合がある。メラミン系樹脂としては、例えば、ブチル化メラミン、イソブチル化メラミン、メチル化メラミンなどを好適に用いることができる。メラミン系樹脂の数平均分子量は、例えば、500〜5万であり、具体的には例えば500,1000,2000,2500,3000,4000,5000,1万,2万,5万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
上記アクリル系樹脂は導電性基材、特にアルミニウム、銅との密着性に優れることから、添加することによりさらに硝化綿系樹脂の導電性基材との密着性が向上させることができる。添加量は、硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、特に10〜150質量%が好ましい。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると導電材の分散に悪影響を及ぼして放電レート特性が低下する場合がある。アクリル系樹脂としてはアクリル酸あるいはメタクリル酸およびそれらの誘導体を主成分とする樹脂、また、これらのモノマを含むアクリル共重合体を好適に用いることができる。具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピルなどやその共重合体である。また、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの極性基含有アクリル系化合物やその共重合体を好適に用いることもできる。アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、3万〜100万であり、具体的には例えば3万,4万,5万,6万,7万,8万,9万,10万,15万,20万,30万,40万,50万,60万,70万,80万,90万,100万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
上記ポリアセタール系樹脂は可撓性、硝化綿との相溶性に優れていることから、樹脂層に適度な柔軟性を与え、活物質層との密着性が向上する。添加量は、硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、特に20〜150質量%が好ましい。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると導電材の分散に悪影響を及ぼして放電レート特性が低下する場合がある。ポリアセタール系樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリアセトアセタール、ポリビニルアセトアセタールなどが好適に使用可能である。ポリアセタール系樹脂の重量平均分子量は、例えば、1万〜50万であり、具体的には例えば1万,2万,3万,4万,5万,6万,7万,8万,9万,10万,15万,20万,50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
上記エポキシ系樹脂は導電性基材との密着性に優れることから、添加することによりさらに導電性基材との密着性が向上する。添加量は、硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、特に10〜150質量%が好ましい。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると導電材の分散に悪影響を及ぼして放電レート特性が低下する場合がある。エポキシ系樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型といったグリシジルエーテル型樹脂が好ましい。エポキシ系樹脂の重量平均分子量は、例えば、300〜5万であり、具体的には例えば300,500,1000,2000,3000,4000,5000,1万,2万,5万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
本発明において、硝化綿系樹脂は、上述したように硝化綿を樹脂成分として100%含むものであってもよいが、上述したアクリル系樹脂とポリアセタール系樹脂のうちの少なくとも一種と、メラミン系樹脂と、硝化綿とを含むことがさらに好ましい。このような組み合わせの場合に、放電レート特性、電池長寿命化特性が特に良好になるからである。
【0032】
また、本発明において、特にアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、メラミン系樹脂、及び硝化綿の合計を100質量%としたとき、メラミン系樹脂が5〜55質量%であり、硝化綿が40〜90質量%であることがさらに好ましい。100質量%からメラミン系樹脂と硝化綿の配合量を引いた残りが、アクリル系樹脂又はポリアセタール系樹脂の配合量である。この場合に、放電レート特性、電池長寿命化特性がさらに良好になるからである。メラミン系樹脂の含有量は、具体的には例えば5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。硝化綿の含有量は、40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
<2−2.導電材>
本発明の導電性樹脂層は、導電性基材と活物質層又は電極材層との間に設けられ、この間を移動する電子の通路となるので、この電子伝導性が必要である。硝化綿系樹脂自体は絶縁性が高いので、電子伝導性を付与するために導電材を配合しなければならない。本発明に用いる導電材としては公知の炭素粉末、金属粉末などが使用可能であるが、その中でも炭素粉末が好ましい。炭素粉末としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブなどが使用可能である。導電材の添加量は、硝化綿系樹脂の樹脂成分(固形分、以下同じ)100質量%に対して40〜100質量%が好ましく、40〜80質量%がさらに好ましい。40質量%未満では形成される導電性樹脂層の体積固有抵抗が高くなり、100質量%を超えると導電性基材との密着性が低下するからである。導電材を硝化綿系樹脂の樹脂成分液に分散するには公知の方法を用いることができ、例えば、プラネタリミキサ、ボールミル、ホモジナイザ等を用いることによって分散することが可能である。
【0034】
<2−3.水接触角>
本発明の導電性樹脂層表面の水接触角は、80度以上125度以下であることが好ましく、90度以上110度以下であることがさらに好ましい。単に硝化綿系樹脂に導電材を添加して樹脂層を形成しても、導電性基材と樹脂層の界面および樹脂層と活物質層の界面あるいは樹脂層と電極材層の界面に十分な密着性が得られない場合がある。これは硝化綿系樹脂であっても樹脂の種類や形成条件によって、樹脂層の状態が変化するためである。特に密着性に影響が大きい表面性状として液体の濡れ性を示す接触角があり、比較的表面張力の大きい水の接触角を測定することにより、集電体とその上に形成する活物質層や電極材層の密着性を評価することができる。この場合、樹脂層の水接触角について一見、水接触角が小さいほど密着性が向上し、放電レートの向上が図れるように見えるが、接触角が小さすぎると、導電性基材との密着性や放電レート特性に悪影響を及ぼす可能性がでてくるため、本発明においては水接触角を規定することが必要になる。なお、この点については後にも述べる。
【0035】
本明細書において、水接触角は、23℃の恒温室内でθ/2法によって測定して得られた値を意味する。水接触角は接触角計を用いて測定することができる。集電体に樹脂層を形成した後、その表面に純水を数μリットルの水滴を付着させて接触角を測定する。温度によって水の表面張力が変化するので、水接触角は、23℃の恒温室内で測定する。
【0036】
種々の条件にて樹脂層を形成して水接触角を測定した結果、110度以下であれば、活物質層や電極材層との密着性が特に良好になることが分かった。また、水接触角の異なる樹脂層を形成して、導電性基材と樹脂層の密着性の関係を調査した結果、樹脂層の表面の水接触角が90度以上であると放電レート特性が特に好ましいことがわかった。原因は明らかではないが、導電性基材と樹脂層の微妙な密着状態の差を検出しているものと推定される。従って、水接触角は、90度以上であることが特に好ましい。以上のように、本発明の水接触角の規定は、硝化綿系樹脂と活物質層又は電極材層との密着性だけでなく、導電性基材と樹脂層との密着性についても考慮したものであり、このように水接触角の規定された本発明の集電体は、特に電極構造体として電池や帯電部品に用いると放電レート特性を良好に付与できる。
【0037】
本発明の集電体において、導電性樹脂層の形成方法は特に限定されないが、硝化綿系樹脂と、導電材を含有する硝化綿系樹脂材料(溶液、分散液、ペースト)を導電性基材上に塗工し、焼付けることによって形成することが好ましい。塗工方法としてはロールコーター、グラビアコーター、スリットダイコーター等が使用可能である。ここで、塗工にて樹脂層を形成する場合、通常、焼付温度は導電性基材の到達温度として100〜250℃、焼付時間は10〜60秒が好ましい。100℃未満では硝化綿系樹脂が十分に硬化せず、250℃を超えると活物質層との密着性が低下する場合がある。また、焼付時間10秒未満で焼付けると樹脂が硬化する前に溶剤が沸騰して樹脂層に欠陥ができる場合があり、60秒を超えると温度によっては箔が軟化して十分な強度が得られなくなる場合があるからである。
一般に焼付温度が高いほど、焼付時間が長いほど、水接触角が大きくなる傾向がある。従って、水接触角を上記範囲内にするには、最初に、ある条件で樹脂層を形成し、形成した樹脂層において水接触角を測定し、測定された水接触角が上記下限値より低ければ、焼付温度を高くするか焼付時間を長くし、測定された水接触角が上記上限値よりも大きければ焼付温度を低くするか焼付時間を短くする等の調整が必要である。従って、硝化綿系樹脂の組成や焼付温度のみでは水接触角の値は決定されないが、上記の方法を用いれば、数回の試行錯誤を行うだけで、水接触角を所望の値に設定することが可能である。
【0038】
本発明の集電体を用いれば、活物質層又は電極材層を形成し電解液が浸潤した状態においても、樹脂層と活物質層あるいは樹脂層と電極材層の界面に十分な密着性が確保できるだけでなく、導電性基材との界面にも十分な密着性の確保を兼ね備えることができる。また、充放電を繰り返した後においても大きな剥離は認められず、十分な密着性と優れた放電レート特性が得られる。
【0039】
樹脂層の厚さは電極の用途に応じて適宜調整することができ、0.1〜5μm、特に0.3〜3μmが好ましい。0.1μm未満では完全には被覆できない部分が発生して、十分な電池特性が得られない場合がある。5μmを超えると電池にする際、その分、活物質層を薄くせざるを得ないことから十分な容量密度が得られない、電池・キャパシタ等の各種小型化に対応できない場合がある。また、角型電池に用いる場合、電極構造体をセパレータと組み合わせて巻回した際、曲率半径が非常に小さい最内巻き部において、樹脂層に亀裂が入り、活物質層と剥離する部分が発生する場合がある。
【0040】
本発明の導電性樹脂層を形成する導電性基材に対しては、導電性基材表面の密着性が向上するように、前処理を実施することも効果的である。基材として圧延にて製造した金属箔を用いる場合、圧延油や磨耗粉が残留している場合があり、脱脂などによって除去することにより、密着性を向上させることができる。また、コロナ放電処理のような乾式活性化処理によっても密着性を向上させることができる。
【0041】
<3.電極構造体>
本発明の電極は、導電性基材の片面又は両面に活物質層又は電極材層を形成することによって、電極構造体を得ることができる。電極材層を形成した蓄電部品用の電極構造体については後述する。
活物質層は、硝化綿系樹脂中に活物質を配合して導電性樹脂層を活物質層とするもの、導電性樹脂層の上に更に新たな層として構成するものでもいずれであってもよい。更に、電極構造体とセパレータ、非水電解液等を用いて非水電解液電池を製造することができる。本発明の非水電池用電極構造体および非水電解液電池において集電体以外の部材は、公知の非水電池用部材を用いることが可能である。
【0042】
本発明において形成される活物質層は従来、非水電解質電池用として提案されているものでよい。例えば、正極としてはアルミニウム箔を用いた本発明の集電体に、活物質としてLiCoO、LiMnO、LiNiO等を用い、導電材としてアセチレンブラック等のカーボンブラックを用い、これらをバインダであるPVDF、CMC(カルボキシメチルセルロース、以下同じ)等に分散したペーストを公知の方法で塗工することにより、本発明の正極構造体を得ることができる。このようなペーストは銅箔又はアルミニウム箔に形成することができ、正極構造体として好適である。
【0043】
負極としては、また、銅箔を用いた本発明の集電体に活物質として例えば黒鉛、グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等を用い、これらを増粘剤であるCMCに分散後、バインダであるSBRと混合したペーストを塗工することにより、本発明の負極構造体を得ることができる。このようなペーストは銅箔又はアルミニウム箔に形成することができ、負極構造体として好適である。
【0044】
<4.電極構造体の用途>
本発明の集電体を用いた電極構造体は、各種電極として種々の用途に用いることができ、例えば、非水電解質電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ及び蓄電部品として使用することができる。
<4−1.非水電解質電池>
前記正極構造体と負極構造体の間に非水電解質を有する非水電解質電池用電解液を含浸させたセパレータで挟むことにより、本発明の非水電解質電池を構成することができる。非水電解質およびセパレータは従来、非水電解質電池用として用いられているものを使用可能である。例えば、電解液は溶媒として、カーボネート類やラクトン類等を用いることができ、例えば、EC(エチレンカーボネイト)とEMC(エチルメチルカーボネイト)の混合液に電解質としてLiPFやLiBFを溶解したものを用いることができる。セパレータとしては例えばポリオレフィン製のマイクロポーラスを有する膜を用いることができる。
【0045】
<4−2.蓄電部品(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等)>
本発明の電極は大電流密度での充放電で長寿命化が求められている電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタにも適応可能であり、公知の方法で製造することができる。この場合、本発明の電気二重層キャパシタ用は、通常、電極材層は正極、負極共、電極材、導電材、バインダよりなるが、本発明の電極とに上述した電極構造体を適宜用いて製造することができ、形成して作製され、この電極構造体とセパレータ、電解液等によって、電気二重層キャパシタを製造することができる。本発明の電気二重層キャパシタ用電極構造体および電気二重層キャパシタにおいて電極以外の部材は、公知の電気二重層キャパシタ用の部材を用いることが可能である。具体的には、電極材には従来、電気二重層キャパシタ用電極材料として用いられているものが使用可能で、ある。例えば、活性炭、黒鉛などの炭素粉末や炭素繊維を用いることができる。導電材としてはアセチレンブラック等のカーボンブラックを用いることができる。バインダとしては、例えば、PVDFやSBRを用いることができる。本発明の電極構造体にセパレータを挟んで固定し、セパレータに電解液を浸透させることによって、電気二重層キャパシタを構成することができる。セパレータとしては例えばポリオレフィン製のマイクロポーラスを有する膜や電気二重層キャパシタ用不織布を用いることができる。電解液は溶媒として例えばカーボネート類やラクトン類を用いることができ、電解質は陽イオンとしてはテトラエチルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩等、陰イオンとしては六フッ化りん酸塩、四フッ化ほう酸塩等を用いることができる。リチウムイオンキャパシタはリチウムイオン電池の負極、電気二重層キャパシタの正極を組み合わせたものである。
【実施例】
【0046】
<1.集電体の製造>
表1に示す樹脂を表1に示す割合で有機溶剤メチルエチルケトンに溶解した樹脂液に、樹脂成分(樹脂の固形分、以下同じ)に対して60質量%のアセチレンブラックを添加し、ボールミルにて8時間分散して塗料とした。この塗料を厚さ20μmのアルミニウム箔(JIS A1085)の片面にバーコータで塗布し、基材到達温度が表1に示す焼付温度になるように30秒間加熱して集電体を作製した。焼付後の樹脂層の厚さは、表1に示す通りであった。
表1において、硝化綿の重量は、固形分の重量である。また、表1で略称している樹脂詳細を表2に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
<2.評価>
<2−1.集電体の樹脂層の抵抗、水接触角測定、基材と樹脂層の密着性の評価>
上記方法で作製した集電体に形成した樹脂層の厚さ、抵抗、水接触角、基材と樹脂層の密着性を評価した結果を表1に示す。
樹脂層の厚さはフィルム厚み測定機 計太郎G(セイコーem製)を用いて、樹脂層形成部と未形成部(アルミ箔のみの部分)の厚みの差から樹脂層の厚さを算出した。
樹脂層の抵抗は、サンプルを塗膜を上面にして定盤の上に置き、その塗膜の上に1辺20mmの立方体の銅製ブロック(塗膜と接する面は鏡面仕上げ)を置き、700gfの荷重をかけた状態で銅製ブロックとアルミ箔の間の電気抵抗を測定した。
水接触角は接触角計(協和界面科学社製Drop Master DM-500)を用い、23℃の恒温室内にて1μリットルの水滴を樹脂層表面に付着させ、2秒後の接触角をθ/2法にて測定した。密着性はニチバン製セロテープを樹脂層表面に貼り付け、一気に引き剥がしたときの、樹脂層の剥離状況にて評価した。
A:剥離なし
B:1/4程度剥離
C:1/2程度剥離
D:3/4程度剥離
E:全面剥離
【0050】
<2−2.リチウムイオン電池の放電レート特性評価、電極寿命評価>
上記方法で作製した集電体を用いてリチウムイオン電池を作製し、以下に示す方法に従って、放電レート特性及び電池寿命の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(リチウムイオン電池の製造方法)
正極には、活物質のLiCoOと導電材のアセチレンブラックをバインダであるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)に分散したペーストを厚さ70μmにて前記各集電体電極に塗工したものを用いた。負極には、活物質の黒鉛をCMC(カルボキシメチルセルロース)に分散後、バインダであるSBR(スチレンブタジエンゴム)と混合したペーストを厚さ20μmの銅箔に厚さ70μmにて塗工したものを用いた。これらの電極構造体にポリプロピレン製マイクロポーラスセパレータを挟んで電池ケースに収め、コイン電池を作製した。電解液としてはEC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)の混合液に1MのLiPF6を添加した電解液を用いた。
【0051】
(放電レート特性評価方法)
充電上限電圧4.2V、充電電流0.2C、放電終了電圧2.8V、温度25℃において、放電電流レート1C、5C、10C、20Cの条件で、これらのリチウムイオン電池の放電容量(0.2C基準、単位%)を測定した。(1Cはその電池の電流容量(Ah)を1時間(h)で取り出すときの電流値(A)である。20Cでは1/20h=3minでその電池の電流容量を取り出すことができる。あるいは充電することができる。)
【0052】
(電極寿命評価の方法)
電解液温度40℃にて、上限電圧4.2V、充電電流20Cで充電した後、終了電圧2.8V、放電電流20Cで放電して、1サイクル目の放電容量に対して、放電容量が60%未満になる回数(最大500回)を測定し、以下の基準で評価した。
A:500回以上
B:450回以上500回未満
C:400回以上450回未満
D:400回未満
【0053】
<2−3.電気二重層キャパシタの放電レート特性評価、電極寿命評価>
上記方法で作製した集電体を用いて電気二重層キャパシタを作製し、以下に示す方法に従って、放電レート特性及び電池寿命の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0054】
(電気二重層キャパシタの製造方法)
電極材の活性炭、導電材のケッチェンブラックをバインダのPVDFに分散したペーストを厚さ80μmにて前記集電体電極に塗工し、正極、負極共同じ電極構造体とした。この電極構造体2枚に電解液を含浸した電気二重層キャパシタ用不織布を挟んで固定し、電気二重層キャパシタを構成した。電解液は溶媒であるプロピレンカーボネートに1.5MのTEMA(トリエチルメチルアンモニウム)と四フッ化ほう酸を添加したものを用いた。
【0055】
(放電レート特性評価方法)
充電上限電圧2.8V、充電電流1C、充電終了条件2h、放電終了電圧0V、温度25℃、放電電流レート100C、300C、500Cの条件で、これらの電気二重層キャパシタの放電容量(1C基準、単位%)を測定した。
【0056】
(電極寿命評価の方法)
電解液温度40℃にて、上限電圧2.8V、充電電流500Cで充電した後、放電電流500Cで終了電圧0Vまで放電して、1サイクル目の放電容量に対して、放電容量が80%未満になる回数(最大5000回)を測定し、以下の基準で評価した。
A:5000回以上
B:4500回以上5000回未満
C:4000回以上4500回未満
D:4000回未満
【0057】
<2−4.まとめ>
表1によると、導電性樹脂層を有する実施例1〜23は、エチルセルロースの樹脂層を有する比較例1〜8に比べて放電レート特性と電池寿命の両方で優れていることが分かった。
また、実施例8〜17とそれ以外の実施例を比較すると、硝化綿系樹脂が、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エポキシ系樹脂のうちの少なくとも一種と、硝化綿を含む場合には、放電レート特性と電池寿命の両方において、特に優れた結果が得られることが分かった。
さらに、樹脂層の水接触角が90度以上110度以下である実施例14及び15では、水接触角が90未満又は110度よりも大きい実施例13及び16よりも放電レート特性において好ましい結果が得られた。