特許第5789002号(P5789002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5789002CIGS太陽電池の背面電極用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789002
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】CIGS太陽電池の背面電極用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20150917BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20150917BHJP
   B22F 3/14 20060101ALI20150917BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20150917BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20150917BHJP
   B22F 5/00 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   B22F1/00 P
   B22F3/14 101A
   C22C1/04 D
   C22C27/04 102
   !B22F5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-557645(P2013-557645)
(86)(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公表番号】特表2014-514438(P2014-514438A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】KR2012001653
(87)【国際公開番号】WO2012121542
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2013年11月5日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0020586
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509328456
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】Korea Institute of Industrial Technology
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オ,イク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョン クク
(72)【発明者】
【氏名】リ,スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジュン モ
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−129389(JP,A)
【文献】 特表2008−511757(JP,A)
【文献】 特開2007−246938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
B22F 1/00
B22F 3/14
C22C 1/04
C22C 27/04
B22F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ア)モリブデン粉末をグラファイト材のモールド内に充填する段階と、
イ)前記モリブデン粉末が充填された前記モールドを放電プラズマ焼結装置のチャンバーの内部に装着する段階と、
ウ)前記チャンバーの内部を真空化する段階と、
エ)前記モールド内の前記モリブデン粉末に一定圧力を維持しつつ設定された昇温パターンによって昇温させながら最終目標温度に到達するまで成形する成形段階と、
オ)前記最終目標温度を1〜10分間さらに維持する段階と、
カ)前記オ)段階後、一定圧力を維持しつつ前記チャンバーの内部を冷却する冷却段階とを含み、
前記最終目標温度は1100〜1300℃であり、
前記エ)段階は、
前記モールド内部の圧力を50〜70MPaに維持し、
エ-1)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して30℃/min〜100℃/minの昇温速度で1次目標温度である600℃まで1次昇温する段階と、
エ-2)前記1次目標温度を1〜3分間維持する段階と、
エ-3)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で2次目標温度である700℃まで2次昇温する段階と、
エ-4)前記2次目標温度を1〜3分間維持する段階と、
エ-5)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で3次目標温度である800℃まで3次昇温する段階と、
エ-6)前記3次目標温度を1〜3分間維持する段階と、
エ-7)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で4次目標温度である900℃まで3次昇温する段階と、
エ-8)前記4次目標温度を1〜3分間維持する段階と、
エ-9)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で5次目標温度である1000℃まで5次昇温する段階と、
エ-10)前記5次目標温度を1〜3分間維持する段階と、
エ-11)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で6次目標温度である1100℃まで6次昇温する段階と、
エ-12)前記6次目標温度を1〜3分間維持する段階と、
エ-13)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で7次最終目標温度である1200℃まで7次昇温する段階と、
エ-14)前記7次最終目標温度を1〜10分間維持する段階とを含むことを特徴とするCIGS太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項2】
前記ア)段階は、前記モリブデン粉末を前記モールド内に充填し、成形プレスを用いて1400〜1600kgfの圧力で予備加圧を行い、1〜10分間維持させる予備加圧過程を含むことを特徴とする請求項に記載のCIGS太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項3】
前記モールド内に電界を印加するための前記チャンバー内の上部電極と前記モールド内に上方向から進む上部パンチの間にはグラファイト材の複数の上部スペーサが前記上部パンチに向かうほど外径が小さく形成されたものが適用され、前記チャンバー内の下部電極と前記モールド内に下方向から進む下部パンチの間にはグラファイト材の複数の下部スペーサが前記下部パンチに向かうほど外径が小さく形成されており、
前記上部スペーサは、前記上部電極から前記上部パンチ方向に円状に形成された第1の上部スペーサと、第2の上部スペーサ及び第3の上部スペーサが設けられており、
前記下部スペーサは前記チャンバー内の下部電極からモールド方向に円形に形成された第1の下部スペーサと、第2の下部スペーサ及び第3の下部スペーサが設けられており、
前記第1の上部スペーサ及び前記第1の下部スペーサは直径が350mm、厚さが30mmであり、前記第2の上部スペーサ及び前記第2の下部スペーサは直径が300mm、厚さが60mmであり、前記第3の上部スペーサ及び前記第3の下部スペーサは直径が200〜250mm、厚さが30〜60mmのものが適用されることを特徴とする請求項に記載のCIGS太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項4】
前記ウ)段階は、
前記モリブデン粉末の酸化及びガスや不純物による第2相の形成を抑えるために1×10Pa〜1×10−3Paで前記チャンバーの内部を真空化し、
前記カ)段階は、前記モールドの内部を50〜70MPaの圧力を維持しつつ冷却させる過程を含むことを特徴とする請求項に記載のCIGS太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池の背面電極用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法に係り、さらに詳しくは放電プラズマ焼結法を用いて高密度の均一な組成を有しつつ高純度の太陽電池の背面電極用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデン(Mo)は、電気的抵抗が53.4nΩ.mであって低い抵抗値を有する素材であり、電気伝導性と熱的安定性が極めて優秀である。この性質によって、現在CIGS(Copper Indium Galium Selenide)太陽電池用背面電極として活発に使われている。
【0003】
スパッタリング技術は、スパッタリングターゲットの原子が基板上に膜として積層されるようにスパッタリングターゲットを打撃するイオンを生成するためにプラズマが用いられる成膜技術である。スパッタリング技術は、特に半導体及び光電産業に用いられる多様な製造工程において金属層を生成するために使われる。スパッタリングの間形成される膜の性質は各結晶のサイズと分布特性を有する2次相の形成のようなスパッタリングターゲット自体の性質と関連している。これにより、スパッタリングターゲットは薄膜の性質を決定づける重要な要素であると言えよう。
【0004】
CIGS系化合物太陽電池は、今まで出荷されている太陽電池のうち最大の光吸収係数を有し(〜10cm−1)、直接遷移型のバンドギャップを有し、熱に対する安定性によって殆ど熱硬化現象を見せない物質として知られている。このCIGS系太陽電池の背面電極としては電気伝導性と熱的安定性に優れたモリブデンが使われている。
【0005】
金属ターゲットの製造技術は、製造方法によって大きく溶解/鋳造法と粉末冶金法とに区分できる。そのうち、溶解/鋳造法は金属ターゲットを製造するための最も一般的な方法であって、大量生産が容易なことから製造コストが削減できる長所を持っているものの、結晶粒制御及び高密度化に限界を持っていて、圧延工程及び熱処理などの多段階の工程が求められる。また、最近ターゲット材の高機能化のために多くの合金ターゲットが開発されているが、溶解/鋳造法の場合、微細組織制御の限界があって均一な物性を有するターゲットの製造が困難である。一方、粉末冶金技術を用いる場合、均質な相分布と微細な結晶粒制御、高純度化や高融点素材の製造が容易であり、組成及び成分比の設計自由度の範囲が大きくて高性能、高機能性ターゲットを製造できる長所があって、最近は溶解/鋳造法の代替工程として活発に適用されている。特に、モリブデンの場合2623℃の高い融点を有していて、溶解/鋳造法をもっては製造し難いことから、粉末冶金法で製造されている状況である。
【0006】
従来の粉末冶金法のうちスパッタリングターゲットの製造方法としては、温度と圧力を同時に加えて比較的に高密度の焼結体が得られるHIP(Hot Isostatic Pressing)とHP(Hot Pressing)方法とが主に広く使われてきたが、長い成形工程時間による結晶粒制御の限界、外部加熱方式による焼結体の内外部間の物性差、工程の高コストなどの理由と、最近IT産業の急激な発展に伴って、高性能・高効率のスパッタリングターゲットの素材が求められていて、新たな工程技術の開発が要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述したような諸問題点を解決するために案出されたもので、その目的は、放電プラズマ焼結法を用いて焼結し、太陽電池用スパッタリングターゲットとして使用されるモリブデン焼結体の粒子成長を調節することができ、かつ単一工程で短時間内に高密度、均一組成及び高純度を有し、HPやHIPより工程のコストを下げる太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明に係る太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法は、ア)モリブデン粉末をグラファイト材のモールド内に充填する段階と、イ)前記モリブデン粉末が充填された前記モールドを放電プラズマ焼結装置のチャンバー内に装着する段階と、ウ)前記チャンバーの内部を真空化する段階と、エ)前記モールド内の前記モリブデン粉末に一定した圧力を維持しつつ設定された昇温パターンによって昇温させながら最終目標温度に達するまで成形する成形段階と、オ)前記最終目標温度を5〜10分間さらに維持する段階と、カ)前記オ)段階後に一定圧力を維持しつつ前記チャンバーの内部を冷却する冷却段階とを含む。
【0009】
望ましくは、前記最終目標温度はPyrometerで測定して1100〜1300℃が適用される。
【0010】
また、前記エ)段階は、モールド内部の圧力を50〜70MPaに維持し、エ-1)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して30℃/min〜100℃/minの昇温速度で1次目標温度である600℃まで1次昇温する段階と、エ-2)前記1次目標温度を1〜3分間維持する段階と、エ-3)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で2次目標温度である700℃まで2次昇温する段階と、エ-4)前記2次目標温度を1〜3分間維持する段階と、エ-5)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で2次目標温度である800℃まで3次昇温する段階と、エ-6)前記3次目標温度を1〜3分間維持する段階と、エ−7)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で4次目標温度である900℃まで3次昇温する段階と、エ-8)前記4次目標温度を1〜3分間維持する段階と、エ-9)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で5次目標温度である1000℃まで5次昇温する段階と、 エ-10)前記5次目標温度を1〜3分間維持する段階と、エ-11)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で6次目標温度である1100℃まで6次昇温する段階と、エ-12)前記6次目標温度を1〜3分間維持する段階と、エ-13)前記モールド内の前記モリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で7次目標温度である1200℃まで7次昇温する段階と、エ-14)前記7次目標温度を1〜10分間維持する段階とを含む。
【0011】
さらに望ましくは、前記ア)段階は、前記モリブデン粉末を前記モールド内に充填し、成形プレスを用いて1400〜1600kgfの圧力下で予備加圧を施し、1〜10分間維持させる予備加圧過程を含む。
【0012】
また、前記ウ)段階は、前記モリブデン粉末の酸化及びガスや不純物による第2相の形成を抑えるために、1×10Pa〜1×10−3Paで前記チャンバーの内部を真空化し、前記カ)段階は、前記モールドの内部を50〜70MPaの圧力を維持しつつ冷却させる過程を含む。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法によれば、放電プラズマ焼結法を用いてスパッタリングターゲットに適した焼結体の製造時高密度化が可能であり、単一工程で短時間内に粒子成長が殆どない均質な組織、及び高純度の焼結体を製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲット製造方法に適用される放電プラズマ焼結装置を概略的に示した図である。
図2】本発明に係るモリブデン焼結時の昇温過程を示したグラフである。
図3】本発明に係る太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法に適用された焼結工程前のモリブデン粉末を走査電子顕微鏡で撮像した写真である。
図4】目標温度を1200℃にして、30、60及び80℃/minの昇温速度で昇温して製造されたモリブデン焼結体の表面を電解研磨した後センター部分とエッジ部分に対するEBSD分析写真である。
図5】目標温度を1200℃にして、30、60及び80℃/minの昇温速度で昇温して製造されたモリブデン焼結体をXRD分析した写真である。
図6】Pyrometerで温度測定して最終目標温度を1200℃にして製造された直径150mm、厚さ6.53mmのモリブデン焼結体の実際の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態による太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法をさらに詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明に係る太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法に適用される放電プラズマ焼結装置を概略的に示した図である。
【0017】
同図を参照すれば、放電プラズマ焼結装置100は、チャンバー110、冷却部120、電流供給部130、温度検出部140、ポンプ150、加圧器160、メイン制御器170及び操作部180を具備する。
【0018】
チャンバー110の内部には相互離隔されるように上部電極211と下部電極212が設けられており、示されていないが、上部電極211及び下部電極212は放熱のために冷却水が流通できるように形成されている。
【0019】
冷却部120は、チャンバー110の内壁に設けられた冷却水流通管と、上部電極211及び下部電極212に設けられた冷却水流通管に冷却水を流通させられるようになっている。
【0020】
電流供給部130は、上部電極211及び下部電極212を介してメイン制御器170に制御されて、パルス電流を印加する。
【0021】
温度検出部140は、チャンバー110に設けられた透視窓を通じて温度を検出する赤外線温度検出方式が適用されるのが好ましい。
【0022】
ポンプ150は、チャンバー110内部の内気を外部に排出できるようになっている。
【0023】
加圧器160はモールド200内に充填されたモリブデン粉末205を加圧できるように設けられるだけで済み、示された例では下部電極212の下部を昇降・下降することができるシリンダ構造が適用された。
【0024】
メイン制御器170は、操作部180を通じて設定された操作命令に応じて、冷却部120、電流供給部130、ポンプ150及び加圧器160を制御し、温度検出部140で検出された温度情報を受信して表示部(図示せず)を通じて表示する。
【0025】
モールド200は円柱状に形成されており、中央にモリブデン粉末を装入できるように収容溝が形成されている。
【0026】
この放電プラズマ焼結装置100において、上部電極211及び下部電極212からモールド200に印加される電流が集中されて昇温効率を高め、無駄なエネルギーの消耗を節減できるようにモールド200と上部電極211及び下部電極212の間にスペーサ221、222、223、231、232、233を挿入するのが望ましい。すなわち、モールド200内に電界を印加するための上部電極211とモールド200内に上方向から進む上部パンチ215の間には上部パンチ215に向かうほど外径が小さく形成され、グラファイト材の第1〜第3の上部スペーサ221、222、223が設けられる。また、下部電極212から延びて前記モールド200の下方向から内部に進む下部パンチ216の間にも下部パンチ216に向かうほど外径が小さく形成され、グラファイト材の第1〜第3の下部スペーサ231〜233が設けられる。
【0027】
この上部及び下部スペーサ221、222、223、231、232、233の挿入構造によれば、上部電極211及び下部電極212からパンチ215、216を通じてモールド200に電流が集中して電力利用効率及び発熱効率をアップすることができる。望ましくは、第1の上部スペーサ221及び第1の下部スペーサ231は直径が350mm、厚さ30mmのものが適用され、第2の上部スペーサ222及び第2の下部スペーサ232は直径300mm、厚さ60mmのものが適用され、第3の上部スペーサ223及び第3の下部スペーサ233は、直径200〜250mm、厚さ30〜60mmのものが適用される。
【0028】
以下、このような構造の放電プラズマ焼結装置100を用いてモリブデン(Mo)焼結体を製造する過程を説明する。
【0029】
本発明に係る太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法は、充填段階、装着段階、真空化段階、成形段階、保持段階及び冷却段階を経る。
【0030】
まず、充填段階では、焼結のためにモリブデン粉末を放電プラズマ焼結用モールド200に充填する段階である。放電プラズマ焼結用モールド200の下部に下部パンチ216を挟み込み、モリブデン(Mo)粉末をモールド200内に充填した後、上部パンチ215をモールド200の上部に挟み込む。
【0031】
望ましくは、モリブデン粉末をモールド200内に充填し、成形プレスを用いて1400〜1600kgfの圧力下で予備加圧を行い、1〜10分間維持させる予備加圧過程を行う。
【0032】
次いで、モールド200にモリブデン(Mo)粉末が充填されれば、モールド200を放電プラズマ焼結装置のチャンバー110内に装着する装着段階を経る。
【0033】
真空化段階は、チャンバー110の内部空間を真空状態にさせるものであって、ポンプ150を通じてチャンバー110の内部の空気を排出して真空状態にする。この際、チャンバー110の内部は1×10Pa〜1×10−3Paまで真空化させることによって、初期粉末の酸化及びガスや不純物による第2相の形成を抑える。
【0034】
成形段階はモリブデン粉末205を加熱して成形する段階であって、加圧器160を作動させてモールド200内のモリブデン粉末205に対して初期に50〜70MPaの圧力を維持し、設定された昇温及び等温パターンによってモールド200内の粉末を加熱し、図2を共に参照して説明する。
【0035】
この際、モールド200の昇温最終目標温度はモリブデン焼結体の相対密度を高めるために温度計(Pyrometer)で測定して、1100℃ 〜1300℃、さらに望ましくは1200℃に設定する。
【0036】
まず、モールド200内部の圧力を50〜70MPaに維持したまま、モールド200内のモリブデン粉末に対して30℃/min〜100℃/minの昇温速度で1次目標温度である600℃まで1次昇温する(S1段階)。
【0037】
次いで、1次目標温度である600℃に達すると、600℃を1〜3分間等温状態に維持する(S2段階)。
【0038】
S2段階後にはモールド200内のモリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で2次目標温度である700℃まで2次昇温させる(S3段階)。
【0039】
2次目標温度である700℃に達すると、等温状態を1〜3分間維持させる (S4段階)。
【0040】
S4段階後にはモールド200内のモリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で3次目標温度である800℃まで3次昇温させる(S5段階)。
【0041】
3次目標温度である800℃に到達すれば、等温状態を1〜3分間維持させる(S6段階)。
【0042】
S6段階後にはモールド200内のモリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で4次目標温度である900℃まで4次昇温させる(S7段階)。
【0043】
4次目標温度である900℃に到達すれば、等温状態を1〜3分間維持させる(S8段階)。
【0044】
S8段階後にはモールド200内のモリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で5次目標温度である1000℃まで5次昇温させる(S9段階)。
【0045】
5次目標温度である1000℃に到達すれば、等温状態を1〜3分間維持させる(S10段階)。
【0046】
S10段階後にはモールド200内のモリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で6次目標温度である1100℃まで6次昇温させる(S11段階)。
【0047】
6次目標温度である1100℃に到達すれば、等温状態を1〜3分間維持させる(S12段階)。
【0048】
S12段階後にはモールド200内のモリブデン粉末に対して10℃/min〜50℃/minの昇温速度で7次目標温度である1200℃まで7次昇温させる(S13段階)。
【0049】
最終目標温度である1200℃に達すれば、焼結体のセンター(Center)部分とエッジ(Edge)部分の温度偏差を無くすために、1分〜10分、望ましくは7分ほど等温状態を維持する(S14段階)
【0050】
却段階は、最終目標温度到達及び等温維持段階後にモールド200内のモリブデン粉末205に加わる圧力をそのまま維持しつつチャンバー110の内部を冷却する。
【0051】
冷却後にはモールド200からモリブデン焼結体を脱型するだけで済み、前述した過程を経て作製されたモリブデン焼結体は図6に示したように形成される。
【0052】
このような製造工程時、上部電極211及び下部電極212を通じて印加される電流によってモリブデン粉末205の粒子孔の隙間に低電圧パルス状の大電流が流入され、花火放電現象によって瞬間的に発生する放電プラズマの高いエネルギーによる熱拡散及び電界拡散とモールド200の電気抵抗による発熱及び加圧力と電気的エネルギーによって焼結体が形成され、またスパーク放電によって発生する高温スパッタリング現象は粉末粒子の表面に存在する吸着ガスと不純物を除去して清浄効果も奏するようになる。
【0053】
また、この放電プラズマ焼結方式は、電流がパンチ215、216を通じて試片であるモリブデン粉末に直接に流す直接加熱方式であって、モールド200の発熱と同時に試片の内部においても発熱が発生して、試片の内部と外部との温度差が少なく、相対的に低い温度と短い焼結時間によって焼結工程中発生する熱的活性化反応を最小化することができる。特に、モリブデン粉末を焼結する時、スパッタリングターゲット用に適した高密度化、結晶粒の微細化、高純度化焼結体の製造が可能になる。
【0054】
また、本発明に係るCIGS太陽電池用モリブデンスパッタリングターゲットの製造方法によれば、直径100〜200mm、厚さ6〜15mmの大面積の高密度、高純度及び微細結晶粒を有する焼結体を製造することができる。
図3は実験に使用したモリブデン(Mo)粉末として、球形を呈しつつ約1〜2μmの粒度を表し、凝集された形状を呈している。
【0055】
一方、製造された焼結体の各位置、すなわちセンターとエッジ(CenterとEdge)部分における温度差を確かめ、内外部の温度及び物性差を確認するために、パンチのセンター部分とエッジ部分に熱電対(thermocouple)を、外部は温度計(Pyrometer)を装着して温度を測定した。しかし、熱電対が測定できる最大温度が焼結温度より低い1100℃であることから、図2の工程条件下で熱電対が最大に耐えられる温度まで昇温して、最終温度における各位置による温度差を表に示し、これを通じてその後の温度偏差を推定した。
【0056】
【表1】
【0057】
から分かるように、焼結体のセンター(Center)部分とエッジ(Edge)部分における温度差は約49℃ほど差が出、センター(Center)部分と外部(Mold)の温度差は約200℃ほど差が出ることを確認した。一般に、高融点素材の焼結時温度計(Pyrometer)で外部の温度を測定しつつ焼結を行うが、表の温度差を参考にして、1100〜1300℃で焼結時、実際の内部温度は約1300〜1500℃であると推定できる。
【0058】
また、物性差を測定するために、図2の工程条件下で焼結された焼結体のセンター(Center)部分とエッジ(Edge)部分を切削して、各位置別及び昇温速度変化によるEBSD分析を、図4及び下記の表を通じて示した。下記の表図4を通じて確認できるように、結晶粒の大きさ、密度の偏差は微々たると測定された。既存の焼結方法では単一工程で短時間内にこのような小さな物性差を表し難く、またこのような小さな温度偏差によって均一な物性値を有しうる。
【0059】
【表2】
【0060】
一方、製造された焼結体の相変化及び第2相の生成如何を確認するために、X線回折分析を施し、その結果が図5に示されている。図5を通じて分かるように、MoCなどの第2相が生成されず、純Mo相だけが生成されたことを確認することができた。
【0061】
また、このような製造過程を経て製造される中、高真空化雰囲気及びスパーク放電効果によって発生する高温スパッタリング現象によって粉末粒子の表面に存在する吸着ガス及び不純物を除去して、既存の装備と異なるスパッタリングターゲットの製造に最も重要な酸素を除去する大きな長所を持っている。
【0062】
下記の表は初期原料粉末及び最終焼結体のICP純度分析の結果を表す。
【0063】
【表3】
【0064】
から分かるように、焼結時スパーク放電効果によって発生する高温スパッタリング現象によって、初期原料粉末の純度に変化なしで高純度のスパッタリングターゲットを製造することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6