(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789074
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】クランピング装置
(51)【国際特許分類】
G21C 19/02 20060101AFI20150917BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20150917BHJP
G21C 9/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
G21C19/02 JGDB
G21C15/18 E
G21C9/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2008-287278(P2008-287278)
(22)【出願日】2008年11月10日
(65)【公開番号】特開2009-122101(P2009-122101A)
(43)【公開日】2009年6月4日
【審査請求日】2011年11月9日
(31)【優先権主張番号】11/940,446
(32)【優先日】2007年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】グラント・クラーク・ジェンセン
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05615968(US,A)
【文献】
特開2002−311181(JP,A)
【文献】
特開2002−307902(JP,A)
【文献】
特開平11−182522(JP,A)
【文献】
米国特許第04848954(US,A)
【文献】
特開2000−056060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/02
G21C 9/00
G21C 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された管の間の溶接継手を支持する、または構造的にそれと置き換わるためのクランピング装置であって、
前記連結された管の両側に対向する関係で固定可能な上側クランプ本体(12)および下側クランプ本体(14)と、
前記上側と下側のクランプ本体を連結し、前記連結された管を貫通して延在可能な少なくとも1つのクランプボルト(16)であって、
前記上側および下側クランプ本体の一方が、前記クランプボルトに係合可能な相補的な形状のクランプボルトナット(18)を受け入れる少なくとも1つのくぼみ形状(22)を含み、前記くぼみ形状が、前記クランプボルトナットの回転を防止し、
前記上側および下側クランプ本体(12、14)の他方が、前記クランプボルト(16)のヘッドを受け入れるように成形された機械加工されたくぼみ、および前記機械加工されたくぼみの近傍に配設されたスロット状のくぼみ(25)を含む、
前記少なくとも1つのクランプボルト(16)と、
前記スロット状のくぼみに受け入れられ、前記クランプボルトの予荷重を保持するために前記クランプボルトのヘッドと係合可能なクランプボルトキーパ(24)であって、
前記クランプボルトキーパ(24)は、一方の端部で結合された2つの片持ち梁と、前記2つの片持ち梁の一方の自由端に配置されたインターフェイス歯とを有するヘアピン形状の部材を備え、
前記インターフェイス歯は、前記クランプボルト(16)のヘッドに係合されて前記クランプボルトの予荷重を保持する、
前記クランプボルトキーパ(24)と、
を備え、
前記クランプボルトのヘッドが、その外周の周りにラチェット歯(36)を備え、
前記ラチェット歯が、前記クランプボルトキーパが前記スロット状のくぼみ(25)に受け入れられたときに前記クランプボルトキーパ(24)上の対応する前記インターフェイス歯(38)と係合する、
クランピング装置。
【請求項2】
前記上側クランプ本体の前記くぼみ形状(22)が、前記クランプボルトナット(18)の球状の座面に対応して成形された球状の座面(20)を含み、
前記下側クランプ本体の前記機械加工されたくぼみが、前記クランプボルトヘッドの球状の座面に対応して成形された球状の座面(20)を含む、
請求項1に記載のクランピング装置。
【請求項3】
前記対応する歯(38)および前記ラチェット歯(36)が、前記クランプボルト(16)の回転を前記クランプボルトにかかる前記予荷重を増大させる方向に限定するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のクランピング装置。
【請求項4】
前記上側と下側のクランプ本体(12、14)を連結し、前記連結された管を貫通して延在可能な2つのクランプボルト(16)を備える請求項1から3のいずれかに記載のクランピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に溶接継手に関し、より詳細には沸騰水型原子炉における炉心スプレーラインの溶接継手を補修する、またはそれと置き換わるための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
稼動中の沸騰水型原子炉の炉心スプレー配管システムは、通常、溶接構造のものである。しかし、炉心スプレーシステム配管の溶接部は、粒界応力腐食割れ(IGSCC)を起こしやすい。その結果、炉心スプレーラインの溶接された配管継手に割れが生じる恐れがある。
【0003】
ほとんどの稼動中の原子炉に共通していることであるが、炉心スプレーの冷却水は、原子炉圧力容器の内部の配管によって原子炉の炉心領域に送給される。この内部配管の一部分は、原子炉圧力容器の壁の曲率半径に沿った水平部分である。水平配管の近位端は、炉心スプレーノズル貫通部においてTボックスに連結されている。この溶接部は、P3溶接部として示される。水平の炉心スプレーラインの遠位端は、短半径のエルボに溶接されている。短半径のエルボに炉心スプレーラインの遠位端を接合するこの溶接部は、P4a溶接部として示される。少なくとも1つの沸騰水型原子炉の設計では、Tボックスの極めて近位に炉心スプレーラインの別の溶接部が存在する。この溶接部は、P3a溶接部として示される。容器Tボックス近傍の例示的な配管構成を
図1に示す。
【0004】
万一P3a溶接部に割れが生じた場合、原子炉の炉心に冷却水を送給する炉心スプレーラインの構造的完全性は失われると考えられる。万一炉心スプレーライン内のP3a溶接部で円周方向に肉厚方向の割れが生じた場合にこの溶接部の分離を防ぐため、予防的補修が望ましいはずである。
【特許文献1】米国特許第5,521,951号公報
【特許文献2】米国特許第5,530,219号公報
【特許文献3】米国特許第5,602,887号公報
【特許文献4】米国特許第5,623,525号公報
【特許文献5】米国特許第5,642,955号公報
【特許文献6】米国特許第5,646,969号公報
【特許文献7】米国特許第5,675,619号公報
【特許文献8】米国特許第5,699,397号公報
【特許文献9】米国特許第5,802,686号公報
【特許文献10】米国特許第5,905,771号公報
【特許文献11】米国特許第5,947,529号公報
【特許文献12】米国特許第6,857,814号公報
【特許文献13】米国特許第6,131,962号公報
【特許文献14】米国特許第6,201,847号公報
【特許文献15】米国特許第6,345,084号公報
【特許文献16】米国特許第6,375,130号公報
【特許文献17】米国特許第6,421,406号公報
【特許文献18】米国特許第6,456,682号公報
【特許文献19】米国特許第7,203,263号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態では、クランピング装置が、連結された管の間の溶接継手を支持する、または構造的にそれと置き換わる。クランピング装置は、連結された管の両側に対向する関係で固定可能な上側クランプ本体および下側クランプ本体、ならびに上側と下側のクランプ本体を連結し、連結された管を貫通して延在可能な少なくとも1つのクランプボルトを含む。上側および下側クランプ本体の一方は、クランプボルトに係合可能な相補的な形状のクランプボルトナットを受け入れる少なくとも1つのくぼみ形状を有する。このくぼみ形状が、クランプボルトナットの回転を防止する。
【0006】
別の例示的な実施形態では、クランピング装置は、沸騰水型原子炉において、Tボックスに極めて近位の炉心スプレーラインの溶接部を支持する、または構造的にそれと置き換わる。この文脈において、クランピング装置は、スプレーラインの両側に対向する関係で固定可能な上側クランプ本体および下側クランプ本体を含む。上側および下側クランプ本体は、Tボックスからの隙間を確保するためにTボックス近傍に切り取られた部分を含む。少なくとも1つのクランプボルトが、上側と下側のクランプ本体を連結し、スプレーラインを貫通して延びる。上側および下側クランプ本体の一方は、クランプボルトに係合可能な相補的な形状のクランプボルトナットを受け入れる少なくとも1つのくぼみ形状を有する。このくぼみ形状が、クランプボルトナットの回転を防止する。
【0007】
さらに別の例示的実施形態では、連結された管の間の溶接継手を支持する、または構造的にそれと置き換わる方法には、継手領域内に連結された管を貫通する少なくとも1つの開口を形成するステップと、上側クランプ本体および下側クランプ本体を連結された管の両側に対向する関係で固定するステップと、少なくとも1つの開口を貫通して延在可能なクランプボルトによって上側と下側のクランプ本体を連結し、このクランプボルトを非円形の形状を有するクランプボルトナットを用いて固定するステップと、上側および下側のクランプ本体の一方の対応するくぼみ形状にクランプボルトナットを係合することによってクランプボルトナットの回転を防ぐステップとが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
連結された管の間の溶接された連結部を構造的に支持する、またはそれと置き換わる、特に炉心スプレーラインにおいて水平配管の短い部分を水平配管の残りの部分に接合するP3a溶接部と置き換わる、クランピング装置を本明細書で説明する。クランピング装置は、様々なサイズの炉心スプレーラインを備える原子炉プラントに適用可能である。
【0009】
図2は、炉心スプレーライン上に取り付けられたクランプアセンブリ10を示す。
図3および4は、クランプアセンブリ10の等角図である。クランプアセンブリ10は、炉心スプレーラインとインターフェースで連結する上側クランプ本体12および下側クランプ本体14を含む。クランプ本体12、14は、水平管に形成された穴を貫通する、少なくとも1つ、好ましくは2つのクランプボルト16によって水平管上の適切な位置に保持される。各々のクランプボルト16の端部には、クランプボルトナット18が装着される。
【0010】
炉心スプレーラインの外径は、特定の製造公差内で変更することができる。また、形成された曲線状の管は、断面がわずかに長円になることが多い。したがって、上側および下側クランプ本体12、14内に機械加工される曲率半径は、配管の公称曲率半径よりもわずかに小さいものである。これにより、クランプ本体12、14が炉心スプレーラインと適切にインターフェースで連結することが保証される。上側および下側クランプ本体12、14は、曲線状の管とインターフェースで連結するように機械加工されることが好ましい(すなわち機械加工された表面が、曲線状の管によって画定された平面内の管の曲率に沿う、あるいは類似する)。
【0011】
上側および下側クランプ本体12、14は、クランプボルトナット18およびクランプボルト16それぞれの球状座面と対合する、球状の座面20を特徴とする(
図5および6を参照)。さらに、上側クランプ本体12は、クランプボルトナット18の回転を防止するために各々のクランプボルトナット18とインターフェースで連結する、機械加工されたくぼみ形状22(非円形、好ましくは正方形)を組み込む。
【0012】
上側および下側クランプ本体12、14の両方が、炉心スプレーTボックスとの隙間を確保し、P3溶接部の後の検査用の視界をもたらすために、それぞれのクランプ本体12、14の側面に切り取られた部分26を含む(
図3および4を参照)。さらに、上側および下側クランプ本体12、14の両方は、全ての発生し得るP3a溶接クラウンとの隙間を確保するために機械加工された溝28を含む。
【0013】
下側クランプ本体14は、下側クランプ本体14内の機械加工されたくぼみ25内に位置するクランプボルトキーパ24(
図4)を収容する。各々のクランプボルト16には、1つのクランプボルトキーパ24が設けられることが好ましい。クランプボルトキーパ24は、キーパ24および下側クランプ本体14によって共有されるフィーチャをインターフェースで連結させることによって3つの別個の位置に拘束される。クランプボルトキーパ24の機能は、クランプボルト16の回転を防ぎ、したがってクランプボルトの予荷重を維持することである(以下でより詳細に説明する)。
【0014】
クランプボルトナット18の雌ネジは、クランプボルト16の雄ネジと対合する。ナット18は、上側クランプ本体12とインターフェースで連結する概ね正方形の形状および球状の座面を有することが好ましい。クランプボルト16の遠位端は、クランプボルトナット18の遠隔の取り付けを容易にするために、クランプボルトナット18のネジ内径よりもわずかに小さい直径になるように機械加工される。炉心スプレーの冷却水の漏れを最小に抑えるために、クランプボルトナット18の外径は、炉心スプレーラインの機械加工された穴よりもわずかに小さいものである。
【0015】
図7を参照すると、クランプボルト16の近位端は、下側クランプ本体14およびクランプボルトキーパ24の歯38それぞれとインターフェースで連結する、球状の座面34およびラチェット歯36を組み込む。さらに、クランプボルト16は、炉心スプレーの冷却水漏れを最小に抑えるために、炉心スプレーラインの機械加工された穴よりもわずかに小さいショルダ直径を有する(
図8を参照)。クランプボルトキーパ24は、一方の端部で結合された原則的には2つの片持ち梁から成る、ヘアピン様の形状であることが好ましい。第1および第2の片持ち梁の自由端、および両方の梁が互いに接合された共有端にも保持特徴が存在する。さらに、第1の片持ち梁の端部の保持特徴はまた、クランプボルト16の歯36とインターフェースで連結し、クランプボルト16の回転をボルトの予荷重を増大させる方向に限定するように機能する、歯38を組み込む。
【0016】
クランプアセンブリ10の取り付けは、
図8に示すように、配管部分においてEDM(放電加工機)などを介して最初に穴46を機械加工することによって実施される。続いて、クランプボルトキーパ24、下側クランプ本体14、およびクランプボルト16が、炉心スプレーラインの下面に1つのアセンブリとして一体とされる。クランプボルト16の遠位端は、配管の下面に設けられた穴46から挿入され、最終的には配管の上面に設けられた穴46から表面に出てくる。次いで、上側クランプ本体12およびクランプボルトナット18が、クランプボルト16の遠位端上に配置される。クランプボルト16は、クランプボルトナット18のねじ山に係合するように回転する。その後、クランプボルト16は、公称予荷重になるまで締め付けられる。最終的には、クランプボルト18は、承認されたトルクシーケンスに従うことによってその最終の指定値まで締め付けられる。
【0017】
説明したクランプアセンブリは、炉心スプレーラインにおいて水平管の短い部分と水平管の残りの部分の間のP3a溶接部を支持する、または構造的にそれと置き換わる。クランプアセンブリは、遠隔的に取り付けることができ、様々なサイズの炉心スプレーラインを有する原子炉プラントに適用可能である。
【0018】
最も実用的かつ好ましい実施形態であるとして現在考えられるものと併せて本発明を説明してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、その反対に添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる様々な改変形態および等価の構成を包含することを意図されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】沸騰水型原子炉における圧力容器Tボックス近傍の例示的な配管構成を示す図である。
【
図2】クランプ装置が取り付けられた炉心スプレーラインの斜視図である。
【
図8】取り付け方法の1つのステップを示す図である。
【0020】
10 クランプアセンブリ
12 上側クランプ本体
14 下側クランプ本体
16 クランプボルト
18 クランプボルトナット
20 球状の座面
22 機械加工されたくぼみ
24 クランプボルトキーパ
25 機械加工されたスロット状のくぼみ
26 切り取られた部分
28 機械加工された溝
34 球状の座面
36 ラチェット歯
38 歯
46 穴