(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1開口部の開口方向が、前記第1及び第2伝熱管内の流体を熱するための燃焼ガスの流れ方向と略同じ向きに向かうように前記雌金具が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の伝熱管の振れ止め構造。
前記雄金具を前記雌金具の前記溝部内に配置した状態で、前記雄金具に設けた係合凸部が、前記雌金具に設けた被係合凸部に係合することによって、前記第1及び第2伝熱管の互いに離れる方向の移動を係止する構成としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の伝熱管の振れ止め構造。
前記雌金具は、前記一対の側壁部と、この一対の側壁部のそれぞれの基端部を互いに結合する底壁部とを有し、この底壁部が前記第1伝熱管に結合していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の伝熱管の振れ止め構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、
図13及び
図14に示す従来の配管整列装置1では、
図14に示すように、雌金具6に形成された溝部6bは、隣りの第1直線伝熱管2aに向かう開口部7の開口方向が、第1及び第2直線伝熱管2a、2b内の流体(水又は蒸気)を熱するための燃焼ガスの流れ方向8と逆向きに向かうように設けられた場合は、この燃焼ガスに含まれている燃焼灰が、雌金具6の開口部7から溝部6b内に流入して、この溝部6bの内面や、第2直線伝熱管2bの表面に付着して堆積することがある。
【0009】
つまり、
図14に示すように、燃焼灰は、雌金具6に形成されている一対の被係合凸部6c、6cによって形成されている凹部内に流入して、この凹部内に流入する燃焼灰は、この一対の被係合凸部6c、6cと、雄金具5の係合凸部5aとの当接部分の隙間を通って雌金具6の溝部6b内に流入する。そして、この溝部6b内に流入した燃焼灰は、溝部6b内に面している第2直線伝熱管2bの表面に付着して堆積する。
【0010】
このように、燃焼灰が、溝部6b内の第2直線伝熱管2bの表面に堆積すると、第2直線伝熱管2bのその表面が、その堆積した燃焼灰によって腐食して減肉することがある。その結果、第2直線伝熱管2b、ひいては、ボイラの耐久性を低下させる要因となり、ボイラの耐用年数を短縮させる原因となることがある。そして、雌金具6内に燃焼灰が堆積すると、第2直線伝熱管2bの伝熱効率が低下する。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ボイラ用伝熱管の隣り合うものどうしを互いに係合させて、当該伝熱管の振れを抑制すると共に、燃焼灰が雌金具の内側に流入し難くして堆積しないようにした伝熱管の振れ止め構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
第1の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、互いに略平行して配置されたボイラ用伝熱管の隣り合うものどうしを互いに係合させて当該伝熱管の振れを抑制することができる伝熱管の振れ止め構造において、互いに隣り合って配置されている第1伝熱管及び第2伝熱管のうちの一方の前記第1伝熱管に設けられ、互いに対向して配置されている一対の側壁部を有し、この一対の側壁部によってその間に、前記第2伝熱管に向かって開口する第1開口部を形成する溝部を有する雌金具と、他方の前記第2伝熱管に設けられ、前記雌金具の前記第1開口部及び前記溝部内に配置される突起状に形成された雄金具とを備え、前記雌金具が有する前記一対の側壁部は、前記第1伝熱管の管軸方向であって、前記雌金具の下部となる側の端縁部が第2開口部を形成し、前記一対の側壁部は、結合壁部を介して互いに
結合し、前記第1開口部の開口方向が、前記第1及び第2伝熱管内の流体を熱するための燃焼ガスの流れ方向と略同じ向きに向かうように前記雌金具が形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第1の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、
互いに隣り合って配置されている一方の第1伝熱管に設けられている雌金具と、他方の第2伝熱管に設けられている雄金具とを互いに係合させているので、例えば伝熱管内の蒸気が原因する振動や燃焼ガスの流れ等の外力によって、第1及び第2伝熱管が振れることを抑制することができる。つまり、雄金具は、雌金具の一対の側壁部によって形成されている溝部内に配置されているので、雄金具がこの一対の各側壁部に向かう方向に移動することを規制することができ、これによって、第1及び第2伝熱管の振れを抑制することができる。
また、雄金具は、この雄金具に向かって開口する雌金具の第1開口部及び溝部内に配置されて雌金具に係合する構成であるので、雌金具と雄金具とを互いに対向する位置に設けることができる。これによって、互いに係合する両金具に掛かる外力に基づくモーメントを比較的小さくすることができ、この伝熱管の振れ止め構造の強度の向上を図ることができる。
また、雌金具は、第1伝熱管の管軸方向であって、雌金具の下部となる側の端縁部に第2開口部が形成されているので、雌金具内に燃焼灰が流入したとしても、雌金具の下部となる側の端縁部に形成した第2開口部に通して排出することができる。よって、燃焼灰が雌金具の溝部内に付着して堆積することを防止することができる。更に、第1及び第2伝熱管を洗浄したときの洗浄水がこの雌金具内に滞留することを防止でき、洗浄水の電池作用による第1伝熱管の腐食減肉を防止できる。
【0020】
更に、雌金具の一対の側壁部は、結合壁部を介して互いに結合しており、一体物となっているので、この雌金具を第1伝熱管に溶接するときの手間を軽減でき、溶接時間を短縮することができる。
そして、雌金具に形成された溝部は、隣りの第2伝熱管に向かう第1開口部の開口方向が、第1及び第2伝熱管内の流体を熱するための燃焼ガスの流れ方向と略同じ向きに向かうように形成されているので、この燃焼ガスに含まれている燃焼灰が、雌金具の第1開口部から溝部内に流入して、この雌金具の内側に面している第1伝熱管の表面に付着して堆積することを抑制することができる。
【0021】
第2の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第1の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記雄金具には、貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
第2の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、雄金具には、貫通孔が形成されているので、雄金具に向かって飛来してくる燃焼灰は、この貫通孔を通り抜けて行くことができ、燃焼灰が雄金具に堰き止められて、雌金具の溝部内や第2伝熱管に付着することを抑制できる。
第3の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、互いに略平行して配置されたボイラ用伝熱管の隣り合うものどうしを互いに係合させて当該伝熱管の振れを抑制することができる伝熱管の振れ止め構造において、互いに隣り合って配置されている第1伝熱管及び第2伝熱管のうちの一方の前記第1伝熱管に設けられ、互いに対向して配置されている一対の側壁部を有し、この一対の側壁部によってその間に、前記第2伝熱管に向かって開口する第1開口部を形成する溝部を有する雌金具と、他方の前記第2伝熱管に設けられ、前記雌金具の前記第1開口部及び前記溝部内に配置される突起状に形成された雄金具とを備え、前記雄金具には、貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
第3の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、第1の発明と同様に、第1及び第2伝熱管の振れを抑制することができ、伝熱管の振れ止め構造の強度の向上を図ることができる。また、雄金具には、貫通孔が形成されているので、雄金具に向かって飛来してくる燃焼灰は、この貫通孔を通り抜けて行くことができ、燃焼灰が雄金具に堰き止められて、雌金具の溝部内や第2伝熱管に付着することを抑制できる。
【0023】
第4の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第3の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記雌金具が有する前記一対の側壁部は、前記第1伝熱管の管軸方向であって、前記雌金具の下部となる側の端縁部が第2開口部を形成し、前記一対の側壁部は、結合壁部を介して互いに結合することを特徴とするものである。
第4の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、
第1の発明における第1開口部の開口方向に係る部分以外は、第1の発明と同様の作用を奏する。
【0024】
第5の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第3又は第4の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記第1開口部の開口方向が、前記第1及び第2伝熱管内の流体を熱するための燃焼ガスの流れ方向と略同じ向きに向かうように前記雌金具が形成されていることを特徴とするものである。
第5の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、雌金具に形成された溝部は、隣りの第2伝熱管に向かう第1開口部の開口方向が、第1及び第2伝熱管内の流体を熱するための燃焼ガスの流れ方向と略同じ向きに向かうように形成されているので、この燃焼ガスに含まれている燃焼灰が、雌金具の第1開口部から溝部内に流入して、この雌金具の内側に面している第1伝熱管の表面に付着して堆積することを抑制することができる。
【0025】
第6の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第1乃至第5の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記雄金具を前記雌金具の前記溝部内に配置した状態で、前記雄金具に設けた係合凸部が、前記雌金具に設けた被係合凸部に係合することによって、前記第1及び第2伝熱管の互いに離れる方向の移動を係止する構成としたことを特徴とするものである。
第6の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、雄金具を雌金具の溝部内に配置した状態で、第1及び第2伝熱管の互いに離れる方向の移動を、係合凸部と被係合凸部との係合によって規制することができる。そして、互いに接近する方向の移動を、雄金具と第1伝熱管、又は雌金具と第2伝熱管との当接によって規制することができる。そして、雄金具が、雌金具の一対の各側壁部に向かう方向に移動することも規制することができる。これによって、第1及び第2伝熱管は、それぞれの管軸に対して直交する略放射状方向に移動することを互いに規制し合うようにすることができる。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
第7の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第1乃至第6の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記雄金具は、基端部が前記第2伝熱管に結合する脚部を有し、この脚部の先端部に膨大部が設けられ、この膨大部が前記雌金具の溝部内に収容され、前記膨大部は、前記溝部を形成する一対の各側壁に接近する方向に拡大するように形成された板状体、若しくは球状体であり、又は前記膨大部は、前記第2伝熱管と間隔を隔てて略平行すると共に、下方に向かって延びる形状であって、当該雄金具の上側縁部が、当該雄金具の上端部に向かうに従って前記第2伝熱管に接近する形状の傾斜縁部として形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
第7の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、雄金具が脚部と膨大部とを有する構成であり、この膨大部である板状体、又は球状体は、雄金具に設けた係合凸部としての機能を果たすようにすることができ、雌金具に設けた被係合凸部に係合させることができる。そして、雄金具の上側縁部を傾斜縁部として形成することによって、燃焼灰がこの傾斜縁部上に付着して堆積し難くすることができ、第1及び第2伝熱管が燃焼灰によって腐食して減肉することを抑制できる。
【0031】
第8の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第1乃至第7の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記雌金具は、前記一対の側壁部と、この一対の側壁部のそれぞれの基端部を互いに結合する底壁部とを有し、この底壁部が前記第1伝熱管に結合していることを特徴とするものである。
【0032】
第8の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、雌金具の溝部の底が底壁部によって形成されているので、この溝部内に燃焼灰が流入したとしても、この燃焼灰は、底壁部の表面に付着することがあっても、第1伝熱管におけるこの底壁部が結合する部分に付着することがなく、第1伝熱管の当該部分が燃焼灰によって腐食して減肉することを確実に防止できる。
【0033】
第9の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第1乃至第8の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記第1及び第2伝熱管が、互いに略平行して略鉛直方向に配置され、前記雌金具と前記雄金具とによって互いに係合された状態で、前記雌金具が有する前記一対の側壁部における前記第1伝熱管の管軸方向の上端縁部によって形成されている第3開口部、又は前記一対の側壁部の上端縁部と前記雄金具との間に形成されている隙間を覆うことができる蓋部を、前記雄金具又は前記雌金具に設けたことを特徴とするものである。
【0034】
第9の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、雄金具又は雌金具に設けた蓋部によって、雌金具の上端縁部によって形成されている第3開口部、又はこの上端縁部と雄金具との間に形成されている隙間を覆うことができるので、燃焼灰がこれら第3開口部、又当該隙間を通って雌金具の溝部内に流入してその内面に付着することを防止することができる。これによって、第1伝熱管が燃焼灰によって腐食して減肉することを抑制できる。
【0035】
第10の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第9の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記蓋部は、上面が傾斜面として形成されていることを特徴とするものである。
【0036】
第10の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、蓋部の上面を傾斜面として形成することによって、蓋部の上面に飛来する燃焼灰をこの傾斜面によって滑落させることができ、燃焼灰が蓋部の上面に付着して堆積しないようにすることができる。その結果、蓋部の上面に燃焼灰が堆積して、その堆積した燃焼灰が雌金具の溝部内に入り込むということが起こらないようにすることができる。
【0037】
第11の発明に係る伝熱管の振れ止め構造は、
第1乃至第10の発明に係る伝熱管の振れ止め構造において、前記伝熱管は、舶用ボイラに使用される伝熱管であることを特徴とするものである。
【0038】
第11の発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、上記のように、燃焼灰による伝熱管の腐食減肉を抑制することができ、伝熱管の腐食減肉が原因するトラブルの発生を防止することができるので、舶用ボイラを比較的長期間安定して運転できるようにすることに貢献できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る伝熱管の振れ止め構造によると、第1及び第2伝熱管内の流体を熱するための燃焼ガスに含まれている燃焼灰が、雌金具の第1開口部から溝部内に流入して、この雌金具の内側に面している第1伝熱管の表面に付着して堆積することを抑制することができる構成としたので、第1伝熱管の表面に燃焼灰が堆積した場合に起こることがある、第1伝熱管が腐食して減肉することを抑制できる。その結果、第1伝熱管、ひいては、ボイラの耐久性を向上させることができ、ボイラの耐用年数を増加させることができる。そして、雌金具内の第1伝熱管の表面に燃焼灰が堆積することを抑制できるので、第1伝熱管の伝熱効率の低下を防止できる。また、第1伝熱管の腐食減肉によるトラブルを未然に防止でき、ボイラを比較的長期間、安定して継続運転することができる。
【0040】
そして、雌金具の下部となる側の端縁部に第2開口部が形成されているので、雌金具内に燃焼灰が流入したとしても、雌金具の下部となる側の端縁部に形成した第2開口部にこの燃焼灰を通して排出することができる。よって、燃焼灰が雌金具の溝部内に付着して堆積することを防止して、第1伝熱管の腐食減肉を防止できる。また、第1及び第2伝熱管を洗浄したときの洗浄水がこの雌金具内に滞留することを防止でき、洗浄水の電池作用による第1伝熱管の腐食減肉を防止できる。
【0041】
また、雄金具に向かって飛来してくる燃焼灰を、雄金具に形成した貫通孔に通して
通過させるようにした場合は、燃焼灰が雄金具に堰き止められて、雌金具の溝部内や第2伝熱管に付着することを抑制できる。よって、第1及び第2伝熱管の腐食減肉を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造の第1実施形態を、
図1〜
図4を参照して説明する。この伝熱管の振れ止め構造11は、図には示さないが、例えば複数の伝熱管を吊下げて設けてある舶用ボイラに適用することができる。そして、この伝熱管は、例えばU字形状に形成されたものであって複数設けられ、U字形状に形成されたそれぞれの伝熱管の一方の各端部が第1管寄せと接続し、他方の各端部が第2管寄せと接続している。この第1管寄せ内の蒸気や水等の流体は、複数の各伝熱管を通って第2管寄せ内に流入する。
【0044】
そして、複数のU字形状に形成された伝熱管の第1管寄せと接続する側のそれぞれの直線部分であって、互いに隣り合うものどうしの直線部分に対して、
図1に示すように伝熱管の振れ止め構造11が設けられている。そして、同様に、複数のU字形状に形成された伝熱管の第2管寄せと接続する側のそれぞれの直線部分であって、互いに隣り合うものどうしの直線部分に対して、
図1に示すように伝熱管の振れ止め構造11が設けられている。また、これら複数のU字形状の伝熱管は、同一の鉛直面内に配置され、各伝熱管の直線部分は、隣り合うものどうしが互いに間隔を隔てて鉛直方向と平行して設けられている。
【0045】
そして、これら複数の伝熱管の振れ止め構造11は、それぞれ同等のものであるので、そのうちの1つを、
図1等を参照して説明し、これ以外の同振れ止め構造の説明を省略する。この
図1に示す左側の第1伝熱管の直線部分を第1直線伝熱管12と言い、右側の第2伝熱管の直線部分を第2直線伝熱管13と言う。なお、
図1には図示していないが、第1直線伝熱管12の後側面には雄金具15が設けられ、第2直線伝熱管13の前側面には雌金具14が設けられている。
【0046】
この伝熱管の振れ止め構造11は、
図1に示すように、雌金具14と雄金具15とを備えており、この雌金具14は、第1直線伝熱管12に溶接部16で溶接されて設けられ、雄金具15は、第2直線伝熱管13に溶接部17で溶接されて設けられている。そして、この雌金具14と雄金具15とが互いに係合することによって、第1及び第2直線伝熱管12、13を整列させることができ、各第1及び第2直線伝熱管12、13の振れを抑制することができる。
【0047】
雌金具14は、
図1及び
図4等に示すように、第1直線伝熱管12の管軸方向に沿って所定の長さに形成されている。そして、雌金具14は、管軸に対して垂直方向の断面形状が略コ字形状であり、互いに対向して配置されている一対の側壁部18、18を有し、この一対の側壁部18、18の先端縁部が結合壁部19を介して互いに結合している。また、この結合壁部19には、上端縁部から下端部側に向かって所定の長さの切欠き部(第1開口部20)が形成されている。
【0048】
この
図1に示すように、雌金具14の第1開口部20が形成されている範囲が、一対の側壁部18、18によって溝部21として形成されている部分である。そして、雌金具14に形成された第1開口部20の開口方向は、隣りの第2直線伝熱管13に向かう向きであって、第1及び第2直線伝熱管12、13内の蒸気や水等の流体を熱するための燃焼ガス及び燃焼灰の流れ方向8と略同じ向きに向かうように形成されている。
【0049】
また、
図1及び
図2に示すように、雌金具14の第1開口部20を形成している部分には、一対の被係合凸部22、22が形成されている。この一対の被係合凸部22、22は、一対の側壁部18、18の先端縁部から内側に向かう方向に突出するように形成されている。
【0050】
更に、雌金具14は、
図4(a)に示すように、第1直線伝熱管12の管軸方向であって、この雌金具14の下部となる側の端縁部が、下方に向かって開口する第2開口部23を形成すると共に、この雌金具14の上部となる側の端縁部が、上方に向かって開口する第3開口部24を形成している。要は、この雌金具14は、第1直線伝熱管12とによって、上下方向に開口する筒状に形成されている。
【0051】
次に、雄金具15を説明する。雄金具15は、
図1及び
図4等に示すように、第2直線伝熱管13の管軸方向に沿って所定の長さに形成されている。そして、雄金具15は、管軸に対して垂直方向の断面形状が略T字形状であり、雌金具14の溝部21内に配置される突起状に形成されている。そして、このように断面形状が略T字形状に形成された雄金具15は、基端部が第2直線伝熱管13に結合する脚部25を有し、この脚部25の先端部に膨大部が設けられ、この膨大部が雌金具14の溝部21内に収容されている。また、この膨大部は、溝部21を形成する一対の各側壁に接近する方向に拡大するように形成された板状体であり、係合凸部26を構成している。
【0052】
これら係合凸部26及び被係合凸部22は、
図1に示すように、雄金具15を雌金具14の溝部21内に配置した状態で、雄金具15に設けた係合凸部26が、雌金具14に設けた被係合凸部22、22に係合することによって、第1及び第2直線伝熱管12、13の互いに離れる前後方向の移動を規制することができる。そして、係合凸部26が第1直線伝熱管12に当接することによって、又は、被係合凸部22が第2直線伝熱管13に当接することによって、第1及び第2直線伝熱管12、13の互いに接近する前後方向の移動を規制することができる。
【0053】
そして、
図1及び
図3に示すように、雄金具15を雌金具14の溝部21内に配置した状態で、雄金具15の脚部25と雌金具14の一対の各被係合凸部22とが互いに当接することによって、又は、雄金具15の係合凸部26と雌金具14の一対の各側壁部18とが互いに当接することによって、第1及び第2直線伝熱管12、13のうちの一方が他方に対して、
図1に示す左右方向に移動することを規制することができる。
【0054】
これによって、第1及び第2直線伝熱管12、13は、それぞれの管軸に対して直交する略放射状方向に移動することを互いに規制し合うことができ、第1及び第2直線伝熱管12、13の振れを抑制することができる。
【0055】
また、
図1に示すように、雄金具15を雌金具14の溝部21内に配置した状態で、雄金具15の脚部25の下端縁部と雌金具14の結合壁部19の上端縁部(第1開口部20の底部)とが互いに当接可能な構成となっているので、この両方の縁部が互いに当接する方向に、第1及び第2直線伝熱管12、13のうちの一方が他方に対して移動することも規制することができる。
【0056】
次に、
図1及び
図2を参照して、雌金具14及び雄金具15の燃焼ガス及び燃焼灰の流れ方向8に対する取付け構造について説明する。雌金具14は、
図1及び
図2に示すように、この雌金具14に形成されている第1開口部20の開口方向が、第1及び第2直線伝熱管12、13内の蒸気や水等の流体を熱するための燃焼ガスの流れ方向8と略同じ向きに向かうように第1直線伝熱管12に設けられている。
【0057】
これによって、この燃焼ガスに含まれている燃焼灰が、雌金具14の第1開口部20から溝部21内に流入して、この溝部21の内面や、この雌金具14の内側に面している第1直線伝熱管12の表面に付着して堆積することを抑制することができる。
【0058】
その結果、第1直線伝熱管12の表面に燃焼灰が堆積した場合に起こることがある、第1直線伝熱管12が腐食して減肉することを抑制できる。よって、ひいてはボイラの耐久性を向上させることができ、ボイラの耐用年数を増加させることができる。そして、雌金具14内の第1直線伝熱管12の表面に燃焼灰が堆積することを抑制できるので、第1直線伝熱管12の伝熱効率の低下を防止できる。また、第1直線伝熱管12の腐食減肉によるトラブルを未然に防止でき、ボイラを比較的長期間継続して運転することができる。
【0059】
なお、この実施形態では、
図1に示すように、燃焼灰が、雌金具14の第1開口部20から溝部21内に流入して、この雌金具14の内側に面している第1直線伝熱管12の表面に堆積することを抑制して、第1直線伝熱管12のその表面の腐食減肉を防止しているが、その理由を以下に説明する。
【0060】
つまり、雄金具15及び雌金具14は、第1及び第2直線伝熱管12、13よりも、燃焼灰によって腐食減肉の可能性が極めて低くなるような材料によって製作してあるからである。例えば、雄金具15及び雌金具14の材質は、ASTMA560(Ni50Cr50)であり、第1及び第2直線伝熱管12、13の材質は、STBA28(9%Cr-1%Mo鋼)である。
【0061】
そして、
図1〜
図4に示すように、雌金具14は、この雌金具14の下側の端縁部に第2開口部23が形成されているので、雌金具14内に燃焼灰が流入したとしても、雌金具14の下側の端縁部に形成した第2開口部23に通して排出することができる。よって、燃焼灰が雌金具14の溝部21内に付着して堆積することを防止することができる。また、第1及び第2直線伝熱管12、13を洗浄したときの洗浄水がこの雌金具14内に滞留することを防止でき、洗浄水の電池作用による第1直線伝熱管12の腐食減肉を防止できる。
【0062】
更に、
図1及び
図4(a)に示すように、雌金具14の一対の側壁部18、18は、結合壁部19を介して互いに結合しており、一体物となっているので、この雌金具14を第1直線伝熱管12に溶接するときの手間を軽減でき、溶接時間を短縮することができる。
【0063】
そして、
図1に示すように、雄金具15は、この雄金具15に向かって開口する雌金具14の第1開口部20及び溝部21内に配置されて雌金具14に係合する構成であるので、雌金具14と雄金具15とを互いに対向する位置に設けることができる。これによって、互いに係合する両金具14、15に掛かる外力に基づくモーメントを比較的小さくすることができ、この伝熱管の振れ止め構造11の強度の向上を図ることができる。
【0064】
また、
図1に示す伝熱管の振れ止め構造11を、舶用ボイラに使用される多数の各伝熱管に適用しても、上記と同様に、燃焼灰による第1直線伝熱管12の腐食減肉を抑制することができる。これによって、第1直線伝熱管12の腐食減肉が原因するトラブルの発生を防止することができるので、舶用ボイラを比較的長期間安定して運転できるようにすることに貢献できる。
【0065】
次に、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造の第2実施形態を、
図5(a)、(b)、(c)を参照して説明する。この
図5に示す第2実施形態の伝熱管の振れ止め構造29は、
図1及び
図4に示す第1実施形態の伝熱管の振れ止め構造11と同様に、第1及び第2直線伝熱管12、13に設けられ、雌金具30と雄金具31とを備えている。
図5(a)は、第1直線伝熱管12に設けられている雌金具30を示す拡大斜視図、
図5(b)は第2直線伝熱管13に設けられている雄金具31を示す拡大斜視図、
図5(c)は伝熱管の振れ止め構造29を示す部分拡大側面図である。
【0066】
雌金具30は、
図5(a)に示すように、略半球形の逆椀状部材が略半分に切断された形状であって、半円弧状の基端周縁部が第1直線伝熱管12と溶接部16で結合している。そして、この雌金具30の半円弧状の上端周縁部と、第1直線伝熱管12の表面とによって、管軸方向上方に向かって開口する半円状の第3開口部24が形成されている。また、この雌金具30の上端周縁部には、第2直線伝熱管13に向かって開口する半円状の第1開口部20が形成されている。更に、この雌金具30の下端部には、管軸方向下方に向かって開口する半円状の第2開口部23が形成されている。
【0067】
また、雌金具30は、
図5(a)に示すように、一対の側壁部18、18が形成され、この一対の側壁部18、18の間に溝部21が形成されている。そして、第1開口部20を形成する円弧状の縁部が被係合凸部22であり、この第1開口部20と第2開口部23との間に結合壁部19が形成されている。
【0068】
雄金具31は、
図5(b)に示すように、略四角錐台形状の脚部25を備え、この脚部25の基端部が第2直線伝熱管13と溶接部17で結合している。そして、この脚部25の先端部に球状体の膨大部26が溶接されて結合している。
【0069】
ただし、雄金具31の脚部25を、略四角錐台形状としたが、これ以外の形状としてもよく、例えば略円錐台形状や略三角錐台形状等の略多角錐台形状としてもよい。そして、脚部25の先端部に膨大部26を溶接したが、これに代えて、脚部25と膨大部26とをねじにより互いに結合させてもよいし、両者を一体物としてもよく、例えば鋳物によって成型してもよい。
【0070】
この膨大部は、
図5(c)に示すように、係合凸部26としての機能を果たすものであり、雌金具14に設けた被係合凸部22に係合させることができる。つまり、
図5(c)に示すように、雄金具15の係合凸部26と脚部25の先端部との間に形成されている括れ部を、雌金具30の第1開口部20を形成する半円状の被係合凸部22に装着することによって、雌金具30と雄金具31とを互いに着脱自在に係合させることができる。
【0071】
ただし、第1実施形態と同等部分は、同一の図面符号で示し、それら同等部分は同様に作用するので、それらの詳細な説明を省略する。
【0072】
次に、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造の第3実施形態を、
図6(a)、(b)、(c)を参照して説明する。この
図6に示す第3実施形態の伝熱管の振れ止め構造34が備える雌金具35は、
図6(a)に示すように、一対の側壁部18、18の間隔を、
図4(a)に示す第1実施形態の雌金具14が有する一対の側壁部18、18の間隔よりも大きくしてある。これによって、雌金具35内に燃焼灰が流入したとしても、下方に向かって開口する第2開口部23からスムースに排出することができる。
【0073】
そして、
図6(a)に示すように、雌金具35に形成されている第1開口部20の管軸方向の長さを、
図4(a)に示す第1実施形態のものよりも短くしてある。これによって、雌金具35内に燃焼灰が流入し難くしてある。
【0074】
雄金具36は、
図6(b)、(c)に示すように、管軸に対して垂直方向の断面形状が略I字形状であり、雌金具35の溝部21内に配置される突起状に形成されている。そして、このように断面形状が略I字形状に形成された雄金具36は、基端部が第2直線伝熱管13に結合する脚部25を有し、この脚部25が雌金具35の溝部21内に収容され、この脚部25の先端部に膨大部37が設けられている。
【0075】
雄金具36の膨大部37は、
図6(b)、(c)に示すように、第2直線伝熱管13と間隔を隔てて略平行すると共に、下方に向かって延びる形状であって、この雄金具36の上側縁部37aが、雄金具36の上端部に向かうに従って第2直線伝熱管13に接近する形状の傾斜縁部37aとして形成されている。
【0076】
図6(c)に示す伝熱管の振れ止め構造34によると、雄金具36の上側縁部を傾斜縁部37aとして形成することによって、燃焼灰がこの傾斜縁部37a上に付着して堆積し難くすることができ、第1及び第2直線伝熱管12、13が燃焼灰によって腐食して減肉することを抑制できる。
【0077】
なお、第3実施形態の雄金具36の膨大部37は、雌金具35の一対の各側壁部18、18の間を通って下方に向かって突出する形状であるので、第1及び第2直線伝熱管12、13が互いに離れる前後方向に移動しようとしたときに、膨大部37が雌金具35の結合壁部19に係合して、その方向の移動を規制することができる。
【0078】
上記以外は、
図1に示す第1実施形態と同等の構成であり、同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
【0079】
次に、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造の第4実施形態を、
図7(a)、(b)を参照して説明する。この
図7に示す第4実施形態の伝熱管の振れ止め構造が備える雌金具41は、
図7(a)に示すように、管軸に対して垂直方向の断面形状が略C字形状であり、一対の側壁部18、18と、この一対の側壁部18、18のそれぞれの基端部を互いに結合する底壁部43とを有し、この底壁部43が第1直線伝熱管12に溶接部16で結合している。この底壁部43は、略一定の厚みの板状体であり、第1直線伝熱管12の外表面に沿う形状であって、溝部21内の側に突出するように形成されている。つまり、底壁部43は、第1直線伝熱管12の管軸に対して垂直方向の断面形状が略円弧状となっている。
【0080】
雄金具42は、
図7(b)に示すように、管軸に対して垂直方向の断面形状が略T字形状であり、この脚部25の基端部が第2直線伝熱管13に溶接部17で結合している。ただし、この脚部25の先端部に設けられている板状体である膨大部(係合凸部26)は、雌金具41に向かう側の側面26aが、雌金具41の底壁部43の表面に沿うように凹状に湾曲する湾曲面として形成されている。
【0081】
図7(a)、(b)に示す伝熱管の振れ止め構造によると、雌金具41の溝部21の底が底壁部43によって形成されているので、この溝部21内に燃焼灰が流入したとしても、この燃焼灰は、底壁部43の表面に付着することがあっても、第1直線伝熱管12におけるこの底壁部43が結合する部分に付着することがなく、第1直線伝熱管12の当該部分が燃焼灰によって腐食して減肉することを確実に防止できる。
【0082】
なお、雌金具41に形成されている第1開口部20は、この雌金具41の全長に亘って形成されており、結合壁部19は形成されていない。
【0083】
上記以外は、
図1に示す第1実施形態と同等の構成であり、同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
【0084】
次に、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造に使用される雄金具及び雌金具の第5〜第11実施形態を、
図8〜
図11を参照して説明する。これら各実施形態の雄金具46、48、50、52、54、58又は雌金具56のそれぞれの上端部には、蓋部47、49、51、53、55、57を設けてある。これらの蓋部47、49等は、例えば
図1に示す雌金具14が有する一対の側壁部18、18の上端縁部によって形成されている第3開口部24、又は一対の側壁部18、18の上端縁部と雄金具15との間に形成されている隙間を覆うことができる形状及び大きさに形成されている。
【0085】
これら
図8〜
図11に示す第5〜第11実施形態の雄金具46、48等及び雌金具56によると、これら雄金具46、48等又は雌金具56に設けられている蓋部47、49等によって、雌金具14の上端縁部によって形成されている第3開口部24、又はこの上端縁部と雄金具本体15との間に形成されている隙間を覆うことができるので、燃焼灰がこれら第3開口部24、又当該隙間を通って雌金具14の溝部21内に流入してその内面に付着することを防止することができる。これによって、第1直線伝熱管12が燃焼灰によって腐食して減肉することを抑制できる。
【0086】
なお、
図8(a)に示す第5実施形態の雄金具46、
図8(b)に示す第6実施形態の雄金具48、及び
図9(a)、(b)に示す第7実施形態の雄金具50は、雄金具本体15に蓋部47、49、51が一体に形成された、一体物とした例を示している。
【0087】
そして、
図10(a)に示す第8実施形態の雄金具52、
図10(b)に示す第9実施形態の雄金具54、
図11(a)に示す第10実施形態の雌金具56、
図11(b)に示す第11実施形態の雄金具58は、雄金具本体15又は雌金具本体14と蓋部53、55、57、49とを別々に製作して、その製作したものどうしを後から溶接して互いに結合する例を示している。
【0088】
図8(a)に示す第5実施形態の雄金具46は、
図1に示す第1実施形態の雄金具15の上面に、平面形状(管軸方向の上方から見える形状)が略矩形の板状体である蓋部47を設けたものである。つまり、この実施形態の雄金具本体15と蓋部47とを一体物として形成したものである。この蓋部47は、第2直線伝熱管13に溶接されている。
【0089】
図8(b)に示す第6実施形態の雄金具48は、
図1に示す第1実施形態の雄金具15の上面に、側面形状(第1直線伝熱管12の方向から見える形状)が略三角形の板状体である蓋部49を設けたものである。つまり、この実施形態の雄金具本体15と蓋部49とを一体物として形成したものである。この蓋部49は、第2直線伝熱管13に溶接されている。このように、蓋部49を略三角形の板状体とすることによって、蓋部49の上面を2つの傾斜面49a、49aとして形成することができる。これによって、蓋部49の上面に飛来する燃焼灰をこの傾斜面49a、49aによって滑落させることができ、燃焼灰が蓋部49の上面に付着して堆積しないようにすることができる。その結果、蓋部49の上面に燃焼灰が堆積して、その堆積した燃焼灰が雌金具14の溝部21内に入り込むということが起こらないようにすることができる。
【0090】
図9(a)、(b)に示す第7実施形態の雄金具50は、
図1に示す第1実施形態の雄金具15の上面に、第1直線伝熱管12の方向から見た側面形状が略半円形の蓋部51を設けたものである。つまり、この実施形態の雄金具本体15と蓋部51とを一体物として形成したものである。そして、
図9(a)に示す蓋部51は、右側手前方向から見ると、
図9(b)に示すように、略1/4円の扇形の形状となっている。この蓋部51は、第2直線伝熱管13に溶接されている。
【0091】
この
図9(a)、(b)に示すように蓋部51を形成すると、
図8(b)に示す蓋部49と同様に、蓋部51の上面を傾斜面51aとして形成することができ、燃焼灰が蓋部51の上面に付着して堆積しないようにすることができる。
【0092】
図10(a)に示す第8実施形態の雄金具52は、
図1に示す第1実施形態の雄金具15の上面に、平面形状(管軸方向の上方から見える形状)が略矩形の板状体である蓋部53を溶接して設けたものである。この蓋部53と、この実施形態の雄金具本体15とは、別々に製作されている。この蓋部53も第2直線伝熱管13に溶接されている。そして、蓋部53の第2直線伝熱管13に溶接される縁部53aは、第2直線伝熱管13の円弧状の表面と対応する円弧状に形成されている。このように、蓋部53と雄金具本体15とを別々に製作して、その製作したものを後から溶接するようにしたのは、この蓋部付き雄金具52を比較的簡単に製作できるようにするためである。
【0093】
図10(b)に示す第9実施形態の雄金具54は、
図1に示す第1実施形態の雄金具15の上端部に、平面形状(管軸方向の上方から見える形状)が略矩形の板状体である蓋部55を装着し、この装着した状態で蓋部55を溶接して設けたものである。そして、蓋部55には、この蓋部55をこの実施形態の雄金具本体15の上端部に装着できるように、雄金具本体15の上端部を挿入できる略T字形状の切欠き部55aが形成されている。この蓋部55と雄金具本体15とは、別々に製作されており、この蓋部55も第2直線伝熱管13に溶接されている。そして、蓋部55の第2直線伝熱管13に溶接される縁部55bは、第2直線伝熱管13の円弧状の表面と対応する円弧状に形成されている。
【0094】
図11(a)に示す第10実施形態の雌金具56は、
図1に示す第1実施形態の雌金具14の上端に、平面形状(管軸方向の上方から見える形状)が略矩形の板状体である蓋部57を溶接するものである。ただし、この実施形態の雌金具本体14の上端に蓋部57を溶接する前に、まず、
図1に示す雄金具15を、この実施形態の雌金具本体14の溝部21に係合させ、しかる後に、雌金具本体14の上端に蓋部57を溶接する。この蓋部57と雌金具本体14とは、別々に製作されている。この蓋部57も第2直線伝熱管13に溶接される。そして、蓋部57の第2直線伝熱管13に溶接される縁部57aは、第2直線伝熱管13の円弧状の表面と対応する円弧状に形成されている。
【0095】
図11(b)に示す第11実施形態の雄金具58は、
図1に示す第1実施形態の雄金具15の上端に、
図8(b)に示す第6実施形態の雄金具48が備える蓋部49を溶接して設けたものである。この蓋部49と、この実施形態の雄金具本体15とは、別々に製作されている。この蓋部49も第2直線伝熱管13に溶接されている。そして、蓋部49の第2直線伝熱管13に溶接される端面49bは、第2直線伝熱管13の円弧状の表面と対応する円弧状面に形成されている。
【0096】
なお、
図8(a)、(b)及び
図9(a)、(b)に示すそれぞれの蓋部47、49、51は、それぞれの雄金具本体15と同一の高さ(雌金具14側に向かう方向の寸法)に形成してある。そして、
図10(a)、(b)、
図11(b)に示すそれぞれの蓋部53、55、49は、雄金具本体15よりも少し高い寸法に形成してある。このように、蓋体47等の高さを設定するのは、雌金具14の上方に向かって開口する第3開口部24の形状及び大きさに対応させるためである。
【0097】
次に、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造の第12実施形態を、
図12を参照して説明する。この
図12に示す第12実施形態の伝熱管の振れ止め構造61は、
図1に示す第1実施形態の伝熱管の振れ止め構造11において、雄金具15の脚部25に矩形の貫通孔63を形成したものである。この雄金具62に形成されている貫通孔63は、
図12に示すように、雌金具14の溝部21内に配置されている。
【0098】
この
図12に示す伝熱管の振れ止め構造61によると、雄金具62には、貫通孔63が形成されているので、雄金具62に向かって飛来してくる燃焼灰は、この貫通孔63を通り抜けて行くことができ、燃焼灰が雄金具62に堰き止められて、雌金具14の溝部21内や第2直線伝熱管13に付着することを抑制できる。よって、第1及び第2直線伝熱管12、13の腐食減肉を防止できる。
【0099】
これ以外は、第1実施形態と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0100】
なお、
図12に示す貫通孔63は、矩形孔以外の他の形状の孔としてもよく、例えば円形孔、長円形孔、又は多角形孔としてもよい。そして、貫通孔63を、雌金具14の溝部21内及び溝部21の外側に亘る範囲に形成してもよい。
【0101】
ただし、上記実施形態では、例えば
図4(a)に示すように、雌金具14の下側の端縁部に第2開口部23を形成したが、この第2開口部23を形成せずに、雌金具14の下端部を閉塞する構成としてもよい。
【0102】
そして、上記各実施形態では、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造を舶用ボイラの伝熱管に適用したが、これ以外の用途に使用されるボイラの伝熱管に適用することができる。
【0103】
また、上記各実施形態では、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造を、それぞれがU字形状に形成された複数の伝熱管の一方の各端部が第1管寄せと接続し、他方の各端部が第2管寄せと接続する伝熱管に適用したが、これ以外の接続構造に構成された伝熱管に適用することもできる。
【0104】
更に、上記各実施形態では、本発明に係る伝熱管の振れ止め構造を第1及び第2直線伝熱管12、13に設けたが、これに代えて、伝熱管の屈曲する部分に設けてもよい。