【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すことが含まれる。当業者は、本願発明者により発見された代表的な技術に従う、実施例中に開示される技術が、本発明の実施において十分に機能すること、したがってその実施のための好ましい方式を構成すると考えられ得ることを認識すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変更が、開示された特定の実施形態においてなされ得ること、そして本発明の精神と範囲からはずれることなく同様の、または類似の結果がなお得られることを認識すべきである。
【0077】
実施例I
イソフルランおよびセボフルランの髄腔内投与
この研究を、疼痛を低減し、無痛覚を提供することにおける麻酔薬ガスの直接的な髄腔内注射の効能を評価するために設計した。この研究を、髄腔内に直接注射されるか、または以下の研究で示されるように食塩水に溶解させた、麻酔ガスであるイソフルランおよびセボフルランを使用して、1ヶ月の期間にわたって実施した。使用した対象動物はラットであった。なぜなら、ラットは、疼痛/無痛覚試験の十分に確立されたモデルを有していたからである。特に、350gm超の体重のSprague−Dawleyラットを使用した。これらのラットを、ペントバルビタール(50mg/kg)で麻酔し、そしてこれらの動物の麻酔深度を、有害刺激への角膜反射および足引き込み反射(paw withdrawal reflex)によって決定した。
【0078】
ラットの頚部を剃り、手術の間の細菌汚染を回避するために、消毒薬溶液で清潔にした。後頚部の筋肉(posterior neck muscle)の正中外科切開(midline surgical dissection)を行い、後頭環椎の膜(occipito−atlantoid membrane)へのアクセスを達成した。この膜を同定し、その後切開した。無菌のポリエチレンカテーテルを、脊髄の腰膨大までクモ膜下腔内に導入した(各動物において測定して、おおよそ7〜8cm)。まず3−0絹縫合糸で頚部の筋肉を縫合し、それから皮膚の切開をステープルで閉じることによって、外科的な創傷を閉じた。
【0079】
手術後、ラットをそれらのケージに移動させ、これらのラットが、麻酔誘発性低体温(anesthetic−induced hypothermia)にならないように、放射ランプ(radiant lamp)を、ケージ上に配置した。これらのラットを、手術の終わりからラットが完全に覚醒するまで、継続的にモニタリングした。手術後に任意の運動障害を示したラットを安楽死させた。
【0080】
手術から5日目に、創傷の感染も運動機能障害も有さないラットを、疼痛挙動研究室に輸送し、揮発性麻酔薬を使用した髄腔内研究に入れた。12匹のラットをこの研究のために選択した。全てのこれらのラットは髄腔内カテーテルを有した。イソフルラン(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)およびセボフルラン(フルオロメチル2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルエーテル)を、ハロゲン化エーテル化合物として使用した。これらの両方は、ハロゲン化揮発性麻酔薬であり、イソフルランはBaxterによって製造され、セボフルランはAbbott Laboratoriesによって製造された。12匹のラットを、各々研究AおよびBのための、4匹のラット3群に分けた。
【0081】
第一の群において、2マイクロリットルの保存剤を含まないノーマルセーラインを、髄腔内カテーテルを介して各ラットに注射した。その後、このカテーテルに、保存剤を含まないノーマルセーラインを流した(flush)。それから、この群についての疼痛挙動試験(pain behavioral testing)を実施した。
【0082】
第二の群において、2マイクロリットルのイソフルランを、髄腔内カテーテルを介して各ラットに注射した。このカテーテルにもまた、保存剤を含まないノーマルセーラインを流した。その後、この群を疼痛挙動試験に供した。
【0083】
第三の群において、2マイクロリットルのセボフルランを、髄腔内カテーテルを介して各ラットに注射した。このカテーテルにもまた、保存剤を含まないノーマルセーラインを流した。その後、この群を疼痛挙動試験に供した。
【0084】
「ホットプレート」挙動試験を使用して、疼痛の知覚および無痛覚を評価した。これらの研究に使用した疼痛挙動試験モデルは、Tony Yakshによって十分に確立されている(例えば、Chaplanら、1994;Yakshら、2001;KimおよびChung、1992;Sorkinら、2001を参照のこと)。この試験は、ラットが、その肢の直下に配置された放射熱源などの有害刺激に応答して、どのくらい迅速に後脚を引き込むのかを決定することを含む。引き込みのためのこの時間は、「熱引き込み潜伏時間(thermal withdrawal latency)」として公知である。
【0085】
ラットを、25℃に維持した加熱されたガラスプレートを備える、改変されたHargreaves装置での試験に移した(Hargreavesら、1988を参照のこと)。プレートの下の集束映写用電球(focused projection bulb)を、脚の中央の足底表面に狙いを定めた。フォトダイオード作動性タイマーが引き込み潜伏時間を測定し、25秒のカットオフ時間を使用して、組織の損傷を防止した。放射熱に対する熱引き込み潜伏時間を、各髄腔内注射の5分後および30分後に測定した。各脚を三回試験し、その結果を平均した。以下のデータを、右後脚および左後脚の両方について収集した。
【0086】
【表1】
その後、これらのラットを、それらの髄腔内注射から回復する時間、置いておいた。呼吸低下、心臓または神経学的な不全(compromise)のような明らかな有害作用は存在しなかった。注射後30分で、これらのラットを、群分けにしたがって再度試験した。
【0087】
【表2】
この研究の結果は、疼痛を低減することにおける揮発性麻酔薬の髄腔内投与の効能を実証した。2マイクロリットルの髄腔内送達される最小用量において、イソフルランおよびセボフルランの鎮痛効果を示した。熱潜伏時間(thermal latency time)は有意に増大し、ゆえに、熱性C線維疼痛経路が、有効に鈍らされたことを示した。この研究はまた、活性剤ガスを髄腔内送達することの安全性に幾分の見通しを与えた。この研究におけるラットはいずれも有害作用を経験せず、全ての群について熱潜伏時間のベースラインに戻ることによって示されるように、それらの全ては、30分後に髄腔内注射から完全に回復した。
【0088】
実施例II
食塩水に溶解させたイソフルランの5μLサンプルの調製
以下の方法(「通気(bubbling)」法とも言われる)を使用して、イソフルランを食塩水に溶解させた。研究C:モック気化デバイスを、500mlの改変エルレンマイアーフラスコ(2つの入口および液相への1つのカテーテル)を使用して作製した。このフラスコを、0.9%ノーマルセーラインで部分的に満たし、栓のついたガラスピペットを、イソフルランの注入のために液相の底部に挿入した。第二の排出(egress)ピペットは、この閉鎖された容器からのガスの排出を可能にした。2L/分での酸素中2%イソフルラン溶液を、このピペットを介して注入し、およそ10分間の注入後に、この0.9%食塩溶液を飽和させた。5mLをこの飽和した食塩溶液から取り出し、上記の実施例Iに概説される手順を使用して10匹の動物に投与した。
【0089】
研究Cについて、全ての動物を、実験AおよびBと同様に準備した。本発明者らは、髄腔内カテーテルを介して、4匹の動物に5マイクロリットルの溶解させたイソフルラン溶液(0030で調製した)を注射した。注記、脚引き込みまでのコントロール(ベースライン)潜伏時間は、使用した異なる強度の加熱ランプに起因して、研究Cにおいて異なる。各動物は、研究Cにおいてそれら自体のコントロールとして役立つ。
【0090】
研究Cのデータを、熱源に対する脚引き込みまでの秒でここに提示する。表形式およびグラフ形式。結果を
図2に示す。
【0091】
【表3】
実施例III
人工脳脊髄液に溶解させたイソフルランを使用する疼痛の髄腔内抑制
疼痛感受性を、人工脳脊髄液(ACSF)中のイソフルランの髄腔内投与後に測定した。さらに、以下に詳述されるように、イソフルランをまずACSFに溶解させ、次に、投与前に超音波処理した。その後、髄腔内投与されて、無痛覚または感覚脱失を達成し得るイソフルランの適切な濃度を決定するために、用量反応関係を、刺激−応答(SR)グラフを作成することによって評価した。ACSF中のイソフルランを髄腔内投与することの薬理学的なプロフィールの特徴付けを、ラットを使用してこの実施例で実施し;さらに、当業者によって認識されるように、類似のアプローチを使用して、ヒトにおける正確な薬理学的なプロフィールを決定し得る。
【0092】
ACSFに溶解されたイソフルランを、以下の方法によって調製した。イソフルランを、以下の組成(mMで)を有する脳脊髄液(pH7.4)に近い緩衝化塩溶液と、10%〜50%のv/v比で密閉された真空容器内で混合した:NaC1、120;KC1、3;NaHCO
3、25;CaCl
2、2.5;MgCl
2、0.5;グルコース、12。合わせた溶液を、3〜5分、機械的に攪拌し、次に、使用時まで熱的中立の超音波処理機中に保持される。
【0093】
ACSF中のイソフルランの溶液を、次に、以下の方法を介してラットに髄腔内投与した。処置溶液を、10μlの容量で腰部セグメント(lumbar segment)L1〜2上に重なる髄腔内カテーテルを介して送達し、続いて、10μlのACSFを流す。
【0094】
人工CSFに溶解させたイソフルランの髄腔内投与の後に、疼痛の知覚を、20秒のカットオフ時間を使用する改変を伴う、上記の「ホットプレート」挙動試験を使用して試験した。上記のように、「ホットプレート」挙動試験は、放射熱に対する後脚引き込み閾値(すなわち、ラットが熱源から脚を持ち上げて離すまでの持続時間)を試験することを含む。
【0095】
ACSF中のイソフルランの髄腔内投与は無痛覚をもたらした。
図3に示されるように、ACSF中のイソフルランの髄腔内投与(すなわち、1.46mg用量のイソフルラン)は、放射熱に対する後脚引き込み閾値を試験することによって測定されるように、無痛覚をもたらした。10μLの、ACSF中のイソフルラン溶液(10%v/v)を使用した。以下に記載されるように、この用量のイソフルランは、適度な用量の髄腔内イソフルランを代表する。さらに、
図3に示されるように、DMSOを、髄腔内注射のための薬学的組成物に含め得る。1%の濃度のDMSOを使用した。
【0096】
次に、動物を横断して応答を標準化し、そして髄腔内投与されて、無痛覚または感覚脱失を達成し得るイソフルランの適切な濃度を決定するために、用量反応関係を、刺激−応答(SR)グラフを作成することによって評価した。
図4は、ACSF中のイソフルランの注射の後、10分の時点についての用量による最大可能効果(maximal possible effect)(MPE)の刺激−応答(SR)グラフを示す。種々の用量のイソフルランをx軸に示す;例えば、
図3に示される、上記で使用された10%v/v溶液のイソフルランは、
図4に示されるように、およそ34%のMPEに相当する。ACSFおよび/またはDMSOを含む薬学的組成物を
図3に示す。ここでは、MPEを使用して、動物を横断して応答を標準化する。MPEを、((薬物応答時間−ベースライン応答時間)/(カットオフ時間−ベースライン応答時間))*100と計算する。ここで使用されるカットオフ時間は20秒であった。
図4に示されるように、実質的な鎮痛効果が観察された。
図4に示されるデータについて1%のDMSO溶液を使用した。
【0097】
実施例IV
抽出溶媒を含む麻酔薬組成物の調製
以下の溶液を調製した。イソフルランを取得した。NMPをSigma−Aldrich Chemical会社から取得した。40%(v/v)溶液のイソフルラン−NMP溶液を、40mlのイソフルランを60mlのNMPに添加して作製した。40%(v/v)溶液のイソフルラン−エタノール溶液を、40mlのイソフルランを60mlのエタノールに添加して作製した。
【0098】
種々の濃度のイソフルランおよびNMPを含む食塩水組成物を、以下のように、上記のNMP−イソフルラン溶液と食塩水とを混合することによって作製した:
【0099】
【表4】
種々の濃度のイソフルラン−エタノールを含むコントロール組成物を、以下のように、上記のイソフルラン−エタノール組成物と食塩水とを混合することによって作製した:
【0100】
【表5】
組成物の安定性を決定するために、以下の実験を実行し得る。各サンプルを、5mlのサンプルを含む2つの容器に分ける。このサンプルのうちの一方に蓋をする。他方のサンプルは蓋をしないままにする。時間(1時間、6時間、24時間など)をわたって、イソフルランが溶液から分離されているか否かを確認するために、これらのサンプルを調べる。さらに、各溶液中のイソフルランの濃度を、各時点で決定し得る。蓋をしていないサンプルを、蓋をしたサンプルと比較し、溶液の安定性を決定し得る。さらにその後、イソフルラン−NMP組成物を、コントロール組成物と比較し得る。麻酔薬組成物が全ての濃度で混和性のままであることが予測される。
【0101】
実施例V
イソフルラン組成物の調製および安定性試験
組成物中のイソフルランの安定性を、2つの方法で決定した。第一に、上記の組成物を、肉眼のレベルで相分離の存在について調べた。第二に、これらの組成物のイソフルラン含量を、時間をわたって、これらに蓋をしないままにしたときに、組成物中に残留するイソフルランの重さを量ることによって決定した。簡潔には、ガラスバイアルを、5〜10mlの組成物ビヒクルで満たし、その後重さを量った;バイアルのうちの一つは、イソフルランを受容せず、コントロールとして役立てた。他のバイアルは、種々の量のイソフルランを受容した。これらを、フード内で蓋をしないままにした。時間(0時間、0.4時間、1時間、16時間、24時間)をわたって、これらのバイアルの重さを量り、イソフルランが組成物中に留まっているか、または蒸発したかを確認した。時間をわたってビヒクル中の蒸発した量を、イソフルラン組成物中のそれから引いた。したがって、ビヒクル中のイソフルランの量を、各時点において大まかに決定した。
【0102】
純粋な形態のイソフルランは、揮発性の薬剤である。イソフルランの揮発性を決定するために、2つのバイアルは、示される量の純粋な形態のイソフルランを受容した。これらのバイアルを、化学換気フード内に置き、蓋をしないままにした。示された時間に、これらのバイアルの重さを量り、蒸発したイソフルランの量を決定した。以下の表に示されるように、0.7893gのイソフルランは3時間以内に蒸発したのに対し、3.4825gのイソフルランは、完全に蒸発するのにおよそ8時間を要した。イソフルランのこれらの量は、以下に示されるイソフルラン(iso)組成物を調製するために使用されたイソフルランの量に類似する。
【0103】
【表6】
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のイソフルラン溶液(v/v)の調製:純粋なイソフルランUSP(Forane)液体を、示される濃度でNMP(Sigma−Aldrich)と混合する;混合物を激しくボルテックス(vortex)し、均質なイソフルラン−NMP溶液を調製した。溶液中のNMPの量を低減するために、食塩水(0.9% NaCl)を混合物に添加した。
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
表7に示されるように、10%および40%のイソフルランをNMPと混合し、その結果生じた溶液は透明な外観であった。NMP濃度が最小の63%であるまで、NMP中の10% イソフルランを食塩水と混合することができた。このことは、NMP濃度が溶液中で63%未満であったとき、イソフルランが沈殿したことを意味する。表3に示されるように、NMPは、イソフルランの揮発性を低減した(表8 対 表6)。
【0106】
プロピレングリコール中のイソフルラン溶液(v/v)の調製:純粋なイソフルランUSP(Forane)液体を、示される濃度でプロピレングリコール(Sigma−Aldrich)と混合した;混合物を激しくボルテックスし、均質なイソフルラン−プロピレングリコール溶液を調製した。
【0107】
【表9】
【0108】
【表10】
表9に示されるように、10%および30%のイソフルランをプロピレングリコールと混合し、その結果生じた溶液は透明な外観であった。プロピレングリコール濃度が最小の72%であるまで、プロピレングリコール中の10% イソフルランを食塩水と混合することができた。表10に示されるように、プロピレングリコールは、イソフルランの揮発性を低減した(表10 対 表6)が、それは、NMPほど良好ではなかった(表10 対 表8)。
【0109】
ジメチルスルホキシド(DMSO)中のイソフルラン溶液(v/v)の調製:純粋なイソフルランUSP(Forane)液体を、示される濃度でDMSO(BDH)と混合する;混合物を激しくボルテックスし、均質なイソフルラン−DMSO溶液を調製した。溶液中においてより少量のDMSOを使用してイソフルラン溶液を調製するために、食塩水(0.9% NaCl)を、この混合物に添加した。
【0110】
【表11】
表11に示されるように、10%および50%のイソフルランをDMSOと混合し、その結果生じた溶液は透明な外観であった。72% DMSOと20% 食塩水との組み合わせ中の8% イソフルランを調製し、その結果生じた溶液は透明な外観であった。
【0111】
動物試験
イソフルランの足底内(intraplanar)投与:100μlの純粋な形態のイソフルランまたは100μlの2% リドカインを、後脚の足底表面(planar surface)に皮下注射した。全てのラットで、反対側の後脚を、それら自体のコントロールとして役立てた。
【0112】
脚引き込み潜伏時間の測定:放射熱(Planar Analgesia Instrument、UgoBasile、Italy)を使用して、ラットを、熱刺激に対する応答について試験する。最小の運動を許容するアクリル製の箱でラットが15分間、馴化した後、熱源を、後脚の中央の足底表面(mid−plantar surface)の下に配置した。引き込み潜伏時間を、熱刺激の開始から後脚の活発な(brisk)引き込みまでの期間として定義する。組織の損傷を回避するために、22秒のカットオフ時間を設定した。熱刺激を、3〜5分の刺激間の間隔で各後脚に三回適用した。熱侵害受容閾値(thermalnociceptive threshold)を、処置前および処置後に評価した。コントロールの脚と比較しての処置した脚での引き込み閾値における増大を、試験した処方物の鎮痛活性として評価した。
【0113】
統計分析:統計上の比較のために、スチューデントの対応のあるt‐検定分析(student paired t−test analysis)を使用した。P<0.05で差を有意とみなした。
【0114】
実験を上記のように実行した。
図5に示されるように、後脚へのイソフルランの投与は、未処置の脚(con.iso)と比較したとき、有意な(P<0.05)抗侵害受容性効果を生じた(iso)。抗侵害受容性効果は、25分で始まり、実験を通して継続した。リドカインの投与(lid対con.lid)は、有意な抗侵害受容性効果をもたらし、これは、5分で始まり、15分でピークになり、そして45分でベースラインレベルに戻った。
【0115】
実施例VI
ヒトにおける無痛覚のためのイソフルランの局所塗布
局所的なイソフルランの効能を評価するために、少量(1cc)の50% ISO/DMSO溶液を、ヒト被験体の皮膚に塗布した。50% ISO/DMSO溶液を塗布した場合に、およそ1時間の期間にわたって、被験体は、軽い触診(light touch)に対する顕著な局部感覚脱失応答を含む局部感覚脱失特性を観察した。皮膚の刺激(skin irritation)は観察されなかった。
【0116】
さらに、ヒト被験体におけるこの局部感覚脱失応答を定量化するために、臨床研究を以下に記載されるように実行し得る。イソフルラン(ISO)は、十分に確立された安全性プロフィールを有する、広く使用される揮発性麻酔薬である。ジメチルスルホキシド(DMSO)は、角質層(水不浸透性の皮膚の層)を横切っての薬物の動きを促進する薬物送達系として使用されてきた有機溶媒である。以前の研究は、メトキシフルランのレシチン被覆された微小滴での局部感覚脱失を示した(Haynesら、1991)。
【0117】
以下のアプローチを、局所的なイソフルランの無痛覚を試験するために使用し得る。局所的なアミトリプチリン(amitryptiline)研究を含む研究(clinicaltrials.gov/show/ NCT00471445)に類似した研究を実行し得る。効能および/または局部の皮膚の刺激についてヒト志願者での皮膚評価もまた試験し得る。アミトリプチリンの例において、重要な進歩は、皮膚の刺激および疼痛遮断特性に関して異なる用量およびビヒクルのみを比較する志願者を使用する予備的な(pilot)ヒトでの試験から現れた(Gernerら、2003)。ビヒクルと活性薬物との間を区別するために、ビヒクルのみの部位 対 薬物+ビヒクル(異なる用量で)の部位を含む数箇所の部位を、以下で概説されるように試験する。
【0118】
被験体の適格性:試験被験体は、健康上の問題を有さない(皮膚の感受性も他の医療上の問題も有さないことを含む)志願した成人であるべきである。彼らは、読み書きができ、かつ4時間にわたって次の試験プロトコールで、彼らの前腕へ試験医薬を塗布することに同意する必要がある。
【0119】
処置計画:健常な志願者は、印をつけるペンを使用して彼らの利き腕ではない前腕に書かれた直径約10cmの3つの円を有し得る。ベースラインの生命徴候を取得し得る。
【0120】
医薬を以下のように塗布し得る:それぞれ低用量のISO/高用量のISO/ビヒクルのみを3つのスポットに塗布し、tegaderm(6×7cm、3M Healthcare、St Paul MN)で覆う。これは、15分後に取り外し得る。
【0121】
試験を、ベースライン(塗布前)、15分(包帯の除去後)、60分、3時間、および24時間で、3つの円の中心で行い得る。試験は、軽い触診に対する感受性を含み得る。
【0122】
触診検出閾値(A δ−小さな有髄線維−「速い疼痛(fast pain)」触診):触診検出閾値を、0.1mN、0.5mN、0.9mN、3.2mN、6.1mNまたは8.0mNの力を施すように較正される、6つのvon Freyモノフィラメントを使用する、Dixon 1のup/down法を使用して決定し得る。0.5mNで開始して、von Freyモノフィラメントを、約1秒当て得る。被験体が刺激を検出できなかった場合、次に高い力のvon Freyモノフィラメントを当てる。被験体が刺激の存在を検出したら、次に低いvon Freyを施す。up/down試験シークエンスを、最初の検出後、4つのさらなるvon Frey適用について続ける。50%の力学的な検出閾値を、Dixon 1に記載される手順を使用して計算する。最高の力のvon Freyモノフィラメントに対して検出されなかった場合、50%の検出閾値に、19mNの値を割り当てる。
【0123】
疼痛の検出(C線維−大きな無髄の「遅い疼痛(slow pain)」)、鮮鋭さ(sharpness)閾値および針プローブ(needle probe)に対する疼痛:鮮鋭さ検出を、重みをかけた針デバイス2を使用して決定し得る。30ゲージ針(
【0124】
【化1】
)の先端をやすりで磨いて、平坦な円筒形の末端を生成する。コットンチップ塗布器(cotton tip applicator)を針のLuer接続部に挿入し、コットンチップ塗布器のシャフトにワッシャーを置き、刺激のために所望の力レベルを達成する。次に、この組立て品全体を30ccシリンジ内に入れ、その結果、針がシリンジの先端から出、この組立て品がシリンジ内を自由に動く。針を皮膚表面に当てたとき、確実かつ一貫した力を加える。3種の力を使用する:100mN、200mNおよび400mN。各刺激を、約1秒間加える。各力を、擬似ランダムな(pseudorandom)順番で目的の各領域内に10回加える。被験体に、刺激が鋭いか否かを示すように指示する。刺激が鋭い場合、被験体は、刺激が痛みを伴うか否かを示す。
【0125】
皮膚の刺激について評価するために、被験体に、0〜10のスケール(0=全く刺激されない、そして10=極めて刺激される)で各時点、各位置での「局部の皮膚の刺激」を評点するように依頼し得る。最後に、皮膚を、各時点、上記の部位で、発赤(redness)および明らかな刺激について「存在するかまたは存在しないか」として調べ得る。
【0126】
本明細書に引用された、各々および全ての特許、特許出願および刊行物の開示は、それらの全体が参考として本明細書に援用される。
【0127】
本明細書で開示され、かつ特許請求される組成物および方法の全ては、本開示を鑑みて、過度な実験をすることなく作製および実行され得る。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されたが、変形が、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく本明細書に記載された組成物および方法、ならびに方法の工程または方法の工程の連続順に加えられ得ることが当業者に明らかである。より具体的には、化学的および生理的の両方で関連する特定の薬剤が、本明細書に記載される薬剤の代わりになり得、一方で同じまたは類似の結果が達成されることは明らかである。当業者に明らかな全てのこのような類似の代用物および改変物は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0128】
本発明は具体的な実施形態に関して開示されてきたが、本発明の他の実施形態および変形物が本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態および等価な変形物を包含するとみなされるように意図される。
【0129】
参考文献
以下の参考文献は、これらが、本明細書に示されるものを補足する、例示的な手続き上のまたは他の詳細を提供する程度まで、参考として本明細書に具体的に援用される。
【0130】
【化2】