(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線方向に複数の円筒ブロックを組み合わせて構成された外筒と、外筒の軸線方向に離間して配置された2つの軸受けによって外筒内で回転可能に支持された回転軸と、外筒に対し円筒ブロック毎に少なくとも1つ設けられた流体流路であって円筒ブロックの内周面に開口する流体流路と、該流体流路に対応して設けられると共に対向する円筒ブロックの内周面及び回転軸の外周面の少なくとも一方に形成されて前記流体流路に連通する環状の接続溝とを備え、外筒の流体流路と接続溝に連通するように回転軸に形成された流体流路とを接続溝を介して連通するロータリージョイント装置において、
外筒の外周面上における複数の位置に形成されると共に隣接する2つの円筒ブロックに跨がるかたちで外筒の外周面に露出するように形成された複数の取付溝であって底面が当該2つの円筒ブロックを組み合わせた状態で平面として加工された取付溝と、
複数の取付溝に対し1対1で対応すると共に取付溝に対する前記軸線方向及び外筒の円周方向に関する取付位相が1種類に設定された複数の位置決めブロックであって対応する取付溝の底面に対する取付面を平面に加工された位置決めブロックを備える、
ことを特徴とするロータリージョイント装置。
軸線方向に複数の円筒ブロックを組み合わせて構成された外筒と、外筒の軸線方向に離間して配置された2つの軸受けによって外筒内で回転可能に支持された回転軸と、外筒に対し円筒ブロック毎に少なくとも1つ設けられた流体流路であって円筒ブロックの内周面に開口する流体流路と、該流体流路に対応して設けられると共に対向する円筒ブロックの内周面及び回転軸の外周面の少なくとも一方に形成されて前記流体流路に連通する環状の接続溝とを備え、外筒の流体流路と接続溝に連通するように回転軸に形成された流体流路とを接続溝を介して連通するロータリージョイント装置の加工方法であって、
外筒の外周面上における複数の位置であって隣接する2つの円筒ブロックに跨がる位置に、底面が当該2つの円筒ブロックを組み合わせた状態で平面として加工されると共に、外筒の外周面に露出するかたちで形成された複数の取付溝を設け、
複数の取付溝に対し1対1で対応すると共に取付溝に対する前記軸線方向及び外筒の円周方向に関する取付位相が1種類に設定された複数の位置決めブロックであって対応する取付溝の底面に対する取付面が平面に加工された位置決めブロックを、隣接する2つの円筒ブロックに跨がるかたちで対応する取付溝内に取り付け、
隣接する2つの円筒ブロックにおける取付溝の底面同士を位置決めブロックで同一平面上に固定した状態で外筒の内周面を研削加工する
ことを特徴とするロータリージョイント装置の加工方法。
請求項1または請求項2記載のロータリージョイント装置を備えた工作機械用の主軸駆動装置であって、ロータリージョイント装置の回転軸に接続された主軸と主軸を回転駆動する駆動装置とを含み、駆動装置は、主軸周りに同軸的に配置されて主軸に連結されたモータロータおよび該モータロータの外周または内周に対向して主軸駆動装置のフレームに設けられたモータステータからなる直接駆動型のモータである、
ことを特徴とする工作機械用の主軸駆動装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1〜8に示すのは本発明の一実施形態である。
図1は、本発明によるロータリージョイント装置を備えた主軸駆動装置が適用される工作機械の一例として、門型工作機械(マシニングセンタ)1を示している。この種の門型工作機械1は、ベッド4上に付設された左右のコラム2、2と、コラム2、2上を上下方向(Z軸方向)に移動するクロスレール6と、クロスレール6上を水平に左右方向(Y軸方向)に移動するサドル7と、サドル7上をZ軸方向に移動するラム8と、ベッド4上を前後方向(X軸方向)に移動するテーブル5とを含む。そして、この門型工作機械1には、ラム8において、工具が取り付けられるスピンドルを備えたスピンドルユニット20を含む加工用ヘッド10が、鉛直方向の軸線(工作機械のZ軸と平行な軸線/以下、「C軸」という)を中心に回転駆動して加工用ヘッド10の角度位置を割り出す主軸駆動装置としてのC軸駆動装置30を介して支持されている。
【0030】
なお、加工用ヘッド10は、
図2で示すように、工具が取り付けられるスピンドル21を有するスピンドルユニット20と、スピンドルユニット20を支持する支持ヘッド22とで構成されている。また、加工用ヘッド10は、支持ヘッド22に内蔵されてスピンドルユニット20の角度位置を割り出す為の割出機構を備えている。スピンドルユニット20は、駆動モータ内蔵型のスピンドルヘッドであって、内蔵された駆動モータ(図示せず)によってスピンドル21を高速回転駆動するものである。
【0031】
そして、門型工作機械1は、ワークの加工時において、予め設定されたプログラムに基づく数値制御により、テーブル5、クロスレール6、サドル7及びラム8を移動させると共に、C軸駆動装置30が加工用ヘッド10をC軸を中心に回転駆動させて角度位置(回転位置)の割出しを行い、加工用ヘッド10がスピンドルユニット20の角度位置(回転位置)の割出しを行う。これにより、前記工作機械では、ワークの各加工面に対して工具を最適な角度で当てて加工を行うことができ、複雑な形状のワークの切削加工等を可能としている。
【0032】
C軸駆動装置30は、
図2及び
図3で示すように、加工用ヘッド10に連結されて加工用ヘッド10をC軸を中心に回転可能に支持する回転ヘッド50と、加工用ヘッド10への各種流体の供給および排出を行うロータリージョイント装置60とを備えている。
【0033】
回転ヘッド50は、
図4で示すように、C軸方向に貫通する貫通孔51aを有するハウジング51を主体としており、軸部材52a1、52a2が貫通孔51a内に配設された主軸52を備えている。また、図示の例では、回転ヘッド50は、ハウジング51におけるフランジ部51bに螺挿された複数のねじ部材によって門型工作機械1のラム8に取り付けられると共に、主軸52が加工用ヘッド10に組み付けられており、それによってラム8に対し加工用ヘッド10が支持された状態となっている。
【0034】
また、回転ヘッド50は、フレームとしてのハウジング51の貫通孔51a内に設けられたDDモータ53を駆動手段として主軸52の角度位置を割り出す割出し機構を備えている。さらに、回転ヘッド50は、割出し機構によって割り出された主軸52の回転位置を保持するためのクランプ装置54を備えている。
【0035】
主軸52は、ハウジング51の貫通孔51a内で回転可能に設けられた軸部材52a1、52a2と、軸部材52a2の加工用ヘッド10側の端部に取り付けられて半径方向(C軸と直交する方向)へ広がるフランジ部材52bと、後述のロータリジョイント装置60が接続される主軸内筒52eと、主軸内筒52eの加工用ヘッド10側の端部に取り付けられて半径方向へ広がるフランジ部材52fとを含んでいる。また、主軸内筒52eとフランジ部材52fとには、後述のロータリジョイント装置60と加工用ヘッド10との間で各種流体を供給または排出するための流体流路55が形成されている。なお、軸部材52a2は、円周方向に配設された複数の図示しないねじ部材によって軸部材52a1に組み付けられており、軸部材52a1と一体的に回転する。
【0036】
フランジ部材52bは、円周方向に配設された複数のねじ部材52gによって軸部材52a2に組み付けられており、軸部材52a2と一体的に回転する。さらに、フランジ部材52bには、円周方向に複数のねじ部材19が螺挿されており、このねじ部材19によって、加工用ヘッド10の支持部10cがフランジ部材52bに組み付けられる。従って、主軸52がDDモータ53によって回転駆動されることにより、加工用ヘッド10が主軸52と共に回転する。
【0037】
DDモータ53は、ステータスリーブ53cを介してハウジング51に固定されたモータステータ53aと、モータステータ53aの内周面に対向する配置で、主軸52に固定されたモータロータ53bとで構成されている。また、DDモータ53を駆動するための励磁電流の供給は、コネクタ17aを介してDDモータ53に接続されたケーブル17によって行われる。モータロータ53bは、軸部材52a1の外周面に外嵌固定されており、モータロータ53bの回転に伴って主軸52の軸部材52a1がC軸を中心として回転駆動される。
【0038】
なお、図示の例では、C軸駆動装置30の上端部に、主軸52の回転量、すなわち、加工用ヘッド10の回転量を検出するための回転検出器44が設けられている。この回転検出器44は、ハウジング51上の所定位置に配置された一対の検出器ヘッド44a、44aと、この検出ヘッド44a、44aに対向する配置で、主軸52と共に回転する軸部材52a1に取り付けられた検出リング44bとからなっている。この回転検出器44の検出信号は、工作機械の制御装置に送られ、加工用ヘッド10のC軸を中心とした回転制御に用いられる。
【0039】
また、図示の例では、主軸52の軸部材52a2とフランジ部材52bとの間に軸受ハウジング52dが形成されている。そして、この軸受ハウジング52dとハウジング51との間に軸受56が介装され、この軸受56により、主軸52がハウジング51に対し回転自在に支持された状態となっている。因みに、図示の例における軸受56は、複合ころ形式の旋回軸受の1つである3列円筒ころ軸受(3列ローラベアリング/アキシアル・ラジアルローラベアリング)であって、アキシアル方向及びラジアル方向の大きい荷重を受けることができるものである。
【0040】
ロータリージョイント装置60は、回転ヘッド50の主軸52に連結されて回転ヘッド50の上部に接続されるかたちで備えられている。なお、C軸駆動装置30が門型工作機械1のラム8に組み付けられた状態では、ロータリージョイント装置60は、ラム8の内部に収納されると共に、ラム8に対して回転不能に固定されている。
【0041】
ロータリジョイント装置60は、
図5で示すように、門型工作機械1のラム8に回転不能に固定される外筒61と、2つの軸受け62a、62bによって外筒61内で回転可能に支持された回転軸63とで構成されている。なお、以下の説明において、「軸線方向」とは、外筒61の軸線の方向を指すものとする。
【0042】
本実施例では、外筒61は、その主体となる部分が、軸線方向に併設された5つの円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを連結させて構成されている。各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eは、貫通孔を有するドーナッツ形(円筒状)のブロック体であり、それぞれの内径寸法および外径寸法は全て同一の寸法となっている。また、本実施例では、外筒61は、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを互いの軸線が正確に一致した状態で組み立てられて構成されているものとし、さらに、後述の外筒61の貫通孔64を形成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eは、その軸線が、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの軸線と正確に一致するように形成されているものとする。
【0043】
各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの連結構造について、例えば、円筒ブロック61a、61b、61cの連結の場合でいうと、円筒ブロック61bには、
図7で示すように、軸線を囲む円周方向に配設された複数の貫通穴が形成されており、各貫通穴には、ねじ部材77bが反回転ヘッド50側の端面から挿通される。そして、円筒ブロック61bは、ねじ部材77bを軸線方向における回転ヘッド50側に隣接する円筒ブロック61cの図示しない複数のねじ穴に螺合されて、円筒ブロック61cと組み付けられている。また、円筒ブロック61bには、反回転ヘッド50側の端面に、上記貫通穴とは位相をずらして円周方向に配設された複数のねじ穴75bが形成されている。そして、軸線方向における反回転ヘッド50側に隣接する円筒ブロック61aには、円筒ブロック61bと同様に複数の貫通穴が形成されており、この貫通穴に挿通された複数のねじ部材77aがねじ穴75bに螺合されることにより、円筒ブロック61bは円筒ブロック61aとも組み付けられている。
【0044】
つまり、外筒61を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eは、軸線方向における回転ヘッド50側に他の円筒ブロックが隣接する円筒ブロックに複数の貫通穴が形成されており、その貫通穴に挿通されたねじ部材のねじ部を、隣接する円筒ブロックの端面に形成されたねじ穴に螺合させることにより、隣接する2つの円筒ブロックが互いに組み付けられる構造となっている。
【0045】
また、図示の例では、位置決め用のピン78が、隣接する2つの円筒ブロックの組み合わせ毎に複数(図示の例では2つずつ)設けられている。具体的には、円筒ブロック61bを例示する
図6および
図7で示すように、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの他の円筒ブロックと隣接する端面には、隣接する円筒ブロック同士で円周方向における位相を一致させたかたちで2つの取付穴79aが形成されている。そして、隣接する円筒ブロックの各取付穴79aに位置決めピン78が嵌合されることにより、隣接する2つの円筒ブロックが円周方向における位相を互いに一致させた状態で連結される。
【0046】
図5で示すように、外筒61は、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの貫通孔で構成される貫通孔64を有している。すなわち、貫通孔64は、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eで構成されている。そして、一体としての外筒61は、貫通孔64の両端に、軸線方向に離間して2つの軸受け取付部を有している。さらに、2つの軸受け取付部には2つの軸受け62a、62bが配置されている。
【0047】
具体的には、外筒61は、最も反回転ヘッド50側に位置する円筒ブロック61aの反回転ヘッド50側の端面に組み付けられる円筒部材66であって円筒ブロック61aの内周面64aよりも大径の貫通孔68を有する円筒部材66と、円筒部材66の反回転ヘッド50側の端面に組み付けられる円筒部材67であって円筒部材66の貫通孔68よりも小径の貫通孔が形成された軸受け押さえ用の円筒部材67とを有している。そして、軸受け62aは、貫通孔68の内周面に対し、その外輪の外周面が嵌合した状態で設けられている。従って、円筒部材66の貫通孔68は、一方の軸受け取付部として機能している。また、軸受け62aは、円筒ブロック61aの反回転ヘッド50側の端面と円筒部材67の回転ヘッド50側の端面とで軸線方向の位置が規制されている。そして、軸受け62aの内輪の内周面が、外筒61の貫通孔64の一部を形成している。
【0048】
一方で、外筒61における最も回転ヘッド50側の円筒ブロック61eは、その回転ヘッド50側の端部において、貫通孔64の一部を為す内周面64eの径が大径となるように段部65が形成されている。そして、軸受け62bは、段部65の内周面に対し、その外輪の外周面が嵌合した状態で設けられている。従って、この段部65が、他方の軸受け取付部として機能している。また、軸受け62bは、段部65を形成する円筒ブロック61eの回転ヘッド50側の端面と、後述の回転軸63とにより軸線方向の位置が規制されている。
【0049】
因みに、円筒ブロック61aに対する円筒部材66の組み付け構造について、図示の例では、円筒ブロック61aは、反回転ヘッド50側の端部の外周面を小径とすることによって形成された段部を有している。一方で、円筒部材66は、回転ヘッド50側の端面の外周縁部を回転ヘッド50側へ突出させて形成された円形の突出部を有している。そして、円筒部材66は、前記突出部を円筒ブロック61aの前記段部に嵌め込まれることにより、円筒ブロック61aに対して位置決めされている。
【0050】
また、図示の例では、円筒ブロック61aと円筒部材66とは外周径がほぼ同じ大きさに形成されており、円筒部材66の貫通孔68と前記突出部の内周面とはその中心線を円筒部材66の軸線に一致させた状態で形成され、また、円筒ブロック61aの前記段部の外周面はその中心線を円筒ブロック61aの軸線に一致させた状態で形成されている。従って、円筒部材66の前記突出部を円筒ブロック61aの前記段部に嵌め込んで円筒部材66を円筒ブロック61aに組み付けることにより、円筒部材66は、円筒ブロック61aに対し軸線を一致させた状態で組み付けられた状態となり、貫通孔68もその中心線を円筒ブロック61aの軸線に一致させた状態で設けられることになる。それにより、軸受け62aは、円筒部材66の貫通孔68に嵌挿された状態において、内輪の内周面の中心線軸線が円筒ブロック61aの軸線に一致した状態で配設される。
【0051】
また、他方の軸受け取付部として円筒ブロック61eに形成された段部65の内周面は、その中心線を円筒ブロック61eの軸線に一致させた状態で形成されている。従って、軸受け62bは、円筒ブロック61eの前記段部に嵌挿された状態において、内輪の内周面の中心線軸線が円筒ブロック61eの軸線に一致した状態で配設される。
【0052】
軸受け62a、62bは、アンギュラ玉軸受であり、軸心のズレない構造のベアリングとなっている。軸受け62a、62bは、その外輪の外周面を段部65および貫通孔68に嵌合されて外筒61に設けられている。
【0053】
回転軸63は、外筒61の貫通孔64に嵌装された円筒部材である。回転軸63は、外筒61の貫通孔64に対し、C軸に関して同心的に配設されている。より詳しくは、回転軸63は、その外周面に軸線方向に離間して2つの軸受け部を有しており、各軸受け部が前述の外筒61における軸受け取付部に設けられた軸受け62a、62bの内輪の内周面に嵌合されることにより、貫通孔64内において、貫通孔64に対しC軸に関して同心的に配設されると共に回転可能に支持されている。従って、回転軸63は、その外周面が全体に亘って所定の間隔を為して貫通孔64の内周面に対向する状態で設けられている。
【0054】
また、回転軸63は、回転ヘッド50側の端部にフランジ部を有しており、このフランジ部によって円筒ブロック61eの前記段部に嵌挿された軸受け62bの軸線方向の位置を規制している。そして、回転軸63には、上記フランジ部に嵌め込まれるかたちで円盤状のフランジ体57が組み付けられている。
【0055】
このフランジ体57は、円盤状のフランジ部材57a、57b,57c、57dを同心状に組み合わせて構成されている。そして、フランジ体57は、フランジ部材57aにおいて、その軸線を囲む円周上の位置で嵌装された複数のねじ部材59aを、回転軸63に対し軸線方向における回転ヘッド50側の端面から螺挿させることにより、回転軸63に対し組み付けられている。また、フランジ体57は、フランジ部材57dが図示しない複数のねじ部材によって回転ヘッド50の主軸内筒52eに組み付けられている。従って、ロータリージョイント装置60の回転軸63と回転ヘッド50の主軸とは、フランジ体57を介して連結されている。
【0056】
しかも、フランジ体57は、回転軸63に対し軸線を一致させた状態で組み付けられており、且つ、回転ヘッド50の主軸52に対しても軸線を一致させた状態で組み付けられている。従って、ロータリージョイント装置60は、回転軸63の軸線を回転ヘッド50の主軸52の軸線に一致させた状態で組み付けられている。フランジ体57と回転軸63及び主軸52との組み付け構造について、詳しくは次の通りである。
【0057】
フランジ体57の最も回転軸63側(反回転ヘッド50側)に位置するフランジ部材57aは、反回転ヘッド50側の端面の外周縁部を反回転ヘッド50側へ突出させて形成された円形の突出部であって、その内周面の径が回転軸63の前記フランジ部の外径とほぼ一致する突出部を有している。そして、フランジ体57は、フランジ部材57aの前記突出部を回転軸63の前記フランジ部に嵌め合せることにより、回転軸63に対して位置決めされている。また、その構成において、回転軸63の前記フランジ部は、回転軸63の軸線を中心とする円盤状に形成されており、一方でフランジ部材57aの前記突出部は、その内周面の中心軸線がフランジ体57の軸線と一致するように形成されている。従って、回転軸63の前記フランジ部とフランジ部材57aの前記突出部とを嵌め合わせた状態において、フランジ体57は、回転軸63に対し軸線を一致させて組み付けられた状態となる。
【0058】
また、フランジ体57の最も回転ヘッド50側に位置するフランジ部材57dは、回転ヘッド50側の端面の外周縁部を回転ヘッド50側へ突出させて形成された円形の突出部を有している。そして、フランジ体57は、フランジ部材57dの前記突出部の内周面が、回転ヘッド50の主軸52における主軸内筒52eの端部の外周面に嵌め込まれることにより、主軸52に対して位置決めされている。また、その構成において、フランジ部材57dの前記突出部は、その内周面の中心軸線がフランジ体57の軸線と一致するように形成されている。従ってフランジ部材57dの前記突出部を主軸内筒52eに嵌め込んだ状態において、フランジ体57は回転ヘッド50の主軸52に対し軸線を一致させた状態で組み付けられた状態となる。
【0059】
なお、フランジ体57を構成するフランジ部材57a、57b、57c、57dには、ロータリジョイント装置60と回転ヘッド50との間で各種流体を供給・排出するための流体流路58が形成されている。
【0060】
外筒61の反回転ヘッド50側の端面には、外部(工作機械側)から流体を取り入れるためのポート及び外部へ流体を排出するためのポートとしてのポート69が、円周方向に位置をずらして複数形成されている。また、外筒61には、この複数のポート69に連通する複数の流体流路が形成されている。一方、回転軸63にも、外筒61の各流体流路に対応する複数の流体流路が、円周方向に位置をずらして形成されている。そして、外筒61側の各流体流路とそれに対応する回転軸63側の各流体流路とは、外筒61と回転軸63との対向面の両方に形成された環状の接続溝を介して連通しており、回転軸63が回転した場合でもその連通状態が維持されるように構成されている。また、回転軸63に形成された複数の流体流路は、前記流体流路55、58によって、それぞれ加工用ヘッド10における図示しないロータリジョイント装置に連通されている。従って、外部からロータリジョイント装置60の外筒61のポート69に供給された流体は、回転軸63を介して加工用ヘッド10のロータリジョイントへ供給される。
【0061】
より詳しくは、外筒61側の複数の流体流路は、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eのそれぞれに形成された流体流路71a、71b、71c、71d、71eとして形成されている。各流体流路71a、71b、71c、71d、71eは、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eに対し少なくとも1つ設けられ、それぞれが設けられる円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eに形成された対応する接続溝72a、72b、72c、72d、72eに連通するように形成されている。なお、各接続溝72a、72b、72c、72d、72eは、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eにおいて回転軸63側に開口した円周方向の環状の溝として形成されている。
【0062】
また、回転軸63の外周面には、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの接続溝72a、72b、72c、72d、72eに対応する複数の接続溝73a、73b、73c、73d、73eが形成されている。各接続溝73a、73b、73c、73d、73eは、回転軸63の外周面において外筒61側に開口した円周方向の環状の溝として形成されている。そして、各接続溝73a、73b、73c、73d、73eには、回転軸63側の複数の流体流路として、外筒61側の流体流路71a、71b、71c、71d、71eに対応する流体流路74a、74b、74c、74d、74eが連通している。従って、外筒61側の流体流路71a、71b、71c、71d、71eとそれに対応する回転軸63側の流体流路74a、74b、74c、74d、74eとは、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eに形成された接続溝72a、72b、72c、72d、72e及び回転軸63に形成された接続溝73a、73b、73c、73d、73eを介して連通され、回転軸63が回転した場合でもその連通状態が維持される。
【0063】
以上のような基本構造を有する外筒連結式のロータリジョイント装置60において、本実施例では、図示のように、駆動装置としてのDDモータ53の負荷を小さくする目的で、外筒61と回転軸63との対向面に、Oリング等の所謂スクイーズパッキンを用いない構成としている。
【0064】
但し、上記の様にスクイーズパッキンを用いない構成とした場合、外筒61側の流体流路と回転軸63側の流体流路との間で流体の漏れが生じ、それに起因して供給側の流体の圧力が低下してしまう。そこで、本発明が前提とするロータリージョイント装置では、そのように圧力が低下する場合でも、その圧力の低下を許容できる程度に抑える目的で、外筒61と回転軸63との直径すきまを可及的に小さくする構成としている。具体的には、外筒61と回転軸63との対向面の直径すきまを0.005mm以下とし、各ポート毎に液密または気密に近い状態としている。
【0065】
なお、本実施例では、ロータリジョイント装置60は、スクイーズパッキンを全く備えない構成としているが、これに限らず、外筒61の複数の流体流路の少なくとも1つに対応させて、外筒61と回転軸63との対向面にスクイーズパッキンを設ける構成としてもよい。例えば、特に高圧の流体を供給される流体流路に対し、その流体流路が連通する接続溝の軸線方向の両側にスクイーズパッキンとしてのOリングを設けて、接続溝の両側で流体を封止する構成としてもよい。ただし、複数のスクイーズパッキンを設ける場合には、それら全体による摺動抵抗により回転ヘッド50の主軸52を駆動するDDモータ53へ掛かる負荷が、DDモータ53の許容できる負荷の範囲内である必要がある。
【0066】
また、図示のロータリジョイント装置60では、外筒61と回転軸63との対向面の直径すきまから漏れ出た各種流体を回収するための構成として、複数のオイルシール90と、複数のドレン流路91と、複数のドレン溝92、93とを備えている。
【0067】
この構成において、オイルシール90は、一般的な低圧用の接触形シールであり、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eにおける軸線方向の両端部に設けられる。詳しくは、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eは、その内周面64a、64b、64c、64d、64eの軸線方向における両側端部が大径に形成されることにより段部94を有しており、各オイルシール90は、この段部94に外周面を嵌合された状態で設けられている。そして、各オイルシール90は、その内周面が回転軸63の外周面に摺動可能に接触することにより、直径すきまから漏れ出た流体を、軸線方向における各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの範囲内で封止している。但し、オイルシール90は、外筒61と回転軸63との対向面の直径すきまから僅かに漏れ出る流体を封止する程度のものであり、その接触による摺動抵抗は、前記スクイーズパッキンに比べて極めて少ないものである。従って、回転軸63と連結された回転ヘッド50の主軸52を駆動するDDモータ53へ掛かる負荷も小さいものとなる。
【0068】
また、ドレン溝92は、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eにおいて、回転軸63側へ開口するように形成された円周方向の環状の溝である。そして、各ドレン溝92は、図示の例では、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eにおいて、軸線方向における各オイルシール90と接続溝との間の位置の2箇所に形成されている。なお、図示の例では、各接続溝同士の間の位置にドレン溝92を形成することを省略している。さらに、ドレン溝93は、各ドレン溝92に対応させて回転軸63の外周面に複数形成されている。各ドレン溝93は、対応するドレン溝92が形成された円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61e側に開口する円周方向の環状の溝であり、軸線方向における各ドレン溝92に対向する位置に形成されている。そして、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eには、ドレン溝92に対応させてドレン流路91が形成されており、各ドレン流路91は、内周面側においてドレン溝92に連通している。また、各ドレン流路91は、外筒61の端部に形成されたポート(図示せず)に連通されており、そのポートを介して外部の装置(例えば回収タンク)に連通している。
【0069】
ところで、以上で説明したロータリージョイント装置60においては、前記のように、外筒61を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eは、端面に嵌装された位置決めピン78によって、隣接する円筒ブロックと位相が一致した状態に組み合わされ、その状態で隣接する2つの円筒ブロックの一方に貫装されたねじ部材を他方に螺合させることにより、隣接する2つの円筒ブロックが連結固定される構造となっている。しかし、このような連結構造のみでは、外筒61を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの組立状態を、常に、高い精度での組立状態、(本実施例の場合には、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの軸線が高い精度で一致した組立状態)とすることはできない。そのため、外筒61を一旦分解して再度組立する際に、その組立状態(より詳しくは、円筒ブロック毎の回転軸63との間の直径すきま)を高い精度で(分解前の状態とほぼ一致した状態に)再現することもできない。その理由は、次の通りである。
【0070】
まず、位置決めピン78については、単に、隣接する円筒ブロックの位相を合わせ、複数の流体流路を互いに対応させて連通させる目的で設けられたものでしかなく、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを上記のような高い精度での組立状態とすることを意図して設けられていない。何故なら、各位置決めピン78によって上記のような高い精度での組立状態を実現するためには、位置決めピン78と取付穴79aとの嵌め合いを小さくする必要が生じる。しかし、位置決めピン78と取付穴79aとの嵌め合いを小さくすると、外筒61の分解時に、位置決めピン78が取付穴79aから抜けにくくなり、作業性が非常に悪くなる。また、場合によっては、分解そのものが不可能になってしまう。従って、位置決めピン78と取付穴79aとの嵌め合いについてはある程度の遊びを設けなければならないため、上記のような高い精度での組立状態とするための構成として位置決めピン78を用いる構成とすることは、採用し難いのである。
【0071】
また、ねじ部材についても、軸線方向に作用する締結力によって隣接する円筒ブロック同士を連結するためのものでしかないため、同様である。より詳しくは、ねじ部材は、隣接する円筒ブロックの一方の円筒ブロックに形成された貫通穴に嵌挿され、その状態で、他方の円筒ブロックに形成されたねじ穴に螺装されるものであるが、その嵌挿される貫通穴との嵌め合い(隙間)は、位置決めピン78と取付穴79aとの嵌め合いよりも大きく設定されている。何故なら、ねじ穴等の雌ねじ加工は、穴加工(例えば、位置決めピン78が嵌合される取付穴79a等)に比べて位置寸法や径寸法についての誤差が大きく、また、ねじ部材等の雄ねじ加工は転造加工が一般的であり、位置決めピン78に比べて径寸法の誤差が大きいため、これらの加工精度を許容するためには、ねじ部材と貫通穴との嵌め合い(隙間)を、位置決めピン78と取付穴79aとの嵌め合いよりも大きくする必要があるからである。従って、ねじ部材の螺合によって、外筒61の各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの上記のような高い精度での組立状態とすることはできない。
【0072】
そこで、本発明によるロータリジョイント装置60は、外筒61における各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの組立状態を高い精度で再現するための構成として、外筒61に形成される複数の取付溝81と、各取付溝81に取り付けられる複数の位置決めブロック80とを備えている。
【0073】
各取付溝81は、
図8に示すように、隣接する2つの円筒ブロックに跨がるかたちで外筒61の外周面に露出するように形成された溝であり、その底面82は、隣接する2つの円筒ブロックを組み合わせた状態で平面として加工して形成されている。そして、図示の例では、
図7に示すように、取付溝81が、隣接する2つの円筒ブロックの組み合わせ毎に応じて、外筒61の外周上で90度ずつ位相をずらして3箇所に形成されている。これにより、隣接する2つの円筒ブロックの軸線同士を、外筒の外周面上における2箇所以上で、外筒61の軸線に直交する2つ以上の異なる方向に関して位置決めをすることが可能となる。
【0074】
また、各取付溝81に取り付けられる位置決めブロック80は、略直方体の形状をした金属製のブロックであり、取付溝81の底面82に対応する取付面83が平面に加工されている。また、位置決めブロック80は、位置決めブロック80を貫通すると共に、取付溝81の底面82に開口するようにして形成されたネジ孔に螺挿される4本の取り付けボルト89により、対応する取付溝81に取り付けられる。
【0075】
なお、図示の例では、ロータリージョイント装置60がラム8の内部に収納される際に位置決めブロック80がラム8の内部に引っ掛かることがないように、各取付溝81は、外筒61の半径方向に関する深さを、各取付溝81に取り付けられる位置決めブロック80の厚さよりも大きい寸法に形成されている。従って、各位置決めブロック80は、外筒61の外周面よりも内側へ埋没した状態で、各取付溝81に取り付けられている。
【0076】
ところで、各取付溝81の底面82は、同じ加工手段により、ほぼ同じ平面として加工されているものであるが、実際には、その表面状態(加工状態)は、表面粗さの公差の範囲内でばらつきを生じている。これは、各位置決めブロック80の取り付け面83についても同じである。特に、取付溝81の底面82については、取付溝81内での平面加工ということもあり、切削加工で仕上げられるが、切削加工による加工状態のばらつきにより、取付溝81間で表面状態に差が生じている。また、一つの取付溝81における底面82内であっても、その面内での位置が大きく異なると、その表面状態の差が大きくなっている。
【0077】
一方、各位置決めブロック80の取付面83については、研削加工で仕上げられるため、その加工状態のばらつきは底面82ほどではないが、やはり各位置決めブロック80間で表面状態に多少の差が生じており、また、一つの位置決めブロック80における取付面83内であっても、その面内での位置が大きく異なると、その表面状態の差が生じている。そして、各取付溝81の底面82と各位置決めブロック80の取付面83との組み合わせや位相が入れ替わると、その表面状態の差に起因して、位置決めされる各円筒ブロックの軸線の位置も異なった位置となる。このため、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの組立状態に誤差が生じることになる。
【0078】
そこで、各位置決めブロック80は、複数の取付溝81のいずれかに対して1対1で対応するように設けられている。より具体的には、各取付溝81と各位置決めブロック80との対応関係が1種類に設定されており、位置決めブロック80を取付溝81から一旦取り外して再度取り付ける際には、取り外し前に取り付けられていた取付溝81に対し必ず取り付けられるように対応関係を決められている。
【0079】
また、各位置決めブロック80は、対応する取付溝81に対する軸線方向及び外筒61の円周方向に関する取付位相が1種類に設定されたものとなっている。より具体的には、各位置決めブロック80は、対応する取付溝81に取り付けられる際の向きが、外筒61の上下方向(軸線方向)及び左右方向(円周方向)について、予め定められた1つの向き(位相)となるように、取付位相を決められている。
【0080】
そして、図示の例では、各位置決めブロック80と各取付溝81との対応関係を1種類に設定させるとともに軸線方向及び外筒61の円周方向に関する位相を対応させる構成として、位置決め用マーク85、86が、各位置決めブロック80および対応する各取付溝81に形成されている。すなわち、図示のように、各位置決めブロック80には、位置決め用マーク86が形成されている。しかも、位置決め用マーク85、86は取付溝と位置決めブロック80との組み合わせが1対1となるように、対応する取付溝81と位置決めブロック80との組み合わせ毎に異なるマークを用いている。
【0081】
具体的には、図示の例では、取付溝80と位置決めブロック81との組み合わせ毎にマークの数を異ならせるものとなっている。そして、位置決めブロック80を、自身に形成された位置決め用マーク85の数と同じ数の位置決め用マーク86が形成された取り付け溝81に取り付けることにより、位置決めブロック80が対応する取付溝81に取り付けられたことになり、位置決めブロック80と取り付け溝81との対応関係が異なるものとなることがないものとなっている。但し、位置決め用マーク85、86については、取付溝81と位置決めブロック80との組み合わせ毎に数を異ならせるものに限らず、他の取付溝81及び位置決め用ブロック80と区別できるものであれば、どのような形式のものであってもよい。例えば、
図8の位置決め用マーク85、86に代えて、
図9に示すように、数字を刻印して位置決め用マーク85、86としてもよい。
【0082】
また、位置決め用マーク85、86は、取付溝81に対する位置決めブロック80の取付位相を1種類に設定するために、両マーク85、86を突き合わせた状態とすることで取付溝81に対する位置決めブロック80の取付位相が所定の取り付け位相となるように形成されている。具体的には、位置決め用マーク85は、位置決めブロック80の前面(外周側の面)における上下及び左右の4つの辺のいずれかに沿って形成され、位置決め用マーク86は位置決めブロック80の所定の取付位相において位置決め用マーク85に対応する位置に形成されるものとする。因みに、
図8の例では、位置決め用マーク85は位置決めブロック80の前面における上辺に沿った位置に形成され、位置決め用マーク86は取付溝81側の対応する位置にのみ形成されている。従って、位置決め用マーク85を位置決め用マーク86に突き合わせた状態で位置決めブロック80を取付溝81に対し取り付けることにより、位置決めブロック80は、常に所定の位相で取り付けられた状態となる。なお、
図8の例では、位置決め用マーク86が取り付け溝81内に設けられているが、これに代えて、
図9に示すように、位置決め用マーク86が外筒61側の取付溝81外の位置に設けられていてもよい。
【0083】
なお、位置決めブロック80の取付溝81に対する取付位置に関しては、その取付位置が若干ずれるものであっても、外筒61における各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの組立状態を高い精度で再現するための目的においては支障はない。従って、各位置決めブロック80は、対応する各取付溝81に対し、上下方向(軸線方向)の寸法(高さ寸法)及び外筒61の円周方向の寸法(幅寸法)が小さいものであって、ボルトの固定のみによって取付位置が固定されるものであってもよい。具体的には、図示の例では、位置決めブロック80と、取付溝81とで幅寸法がほぼ一致したものとなっているが、取付溝81の幅寸法を位置決めブロック80の幅寸法よりもよりも大きいものとし、4本のボルト89のみで取付位置を固定するようにしてもよい。また、位置決めブロック80における高さ寸法及び幅寸法の少なくとも一方を、取付溝81の対応する寸法よりも小さくすることにより、位置決めブロック80の取り付け、取り外しの作業が容易に行えるようにもなる。
【0084】
但し、後述する外筒61の内周面(貫通孔64)に対する研削加工を考慮した場合、位置決めブロック80の幅寸法については、取付溝81の幅寸法とほぼ一致したものとするのが好ましい。何故なら、貫通孔64の研削加工を行う際に、貫通孔64の内周面に加工による円周方向の大きな外力が作用する。隣接する2つの円筒ブロックは、互いを軸線方向に連結する取り付けボルトの軸力によって軸線方向の端面(互いの接触する面)に生じる摩擦力で、円周方向に関する互いの位置を固定されているが、円周方向の外力が前記摩擦力を超えた場合、外力が作用した円筒ブロックは、位置決めブロックのボルト孔とボルト89とのガタの範囲で円周方向にずれてしまい、その軸線が外筒61の軸線と一致しなくなってしまう。
【0085】
これを防止するために、本実施例では、位置決めブロック80の幅寸法を取付溝81の幅寸法とほぼ一致したものとしている。具体的には、
図8に示すように、各取付溝81は、軸線方向に延在する内側面87a、87bが、底面82と同様に、隣接する2つの円筒ブロックを組み合わせた状態で平面として加工して形成されており、また、取付溝81の内側面87a、87bに対応する各位置決めブロック80の側面88a、88bも隣接する2つの円筒ブロックを組み合わせた状態で平面に加工されている。その上で、各位置決めブロック80は、幅寸法を、現合により、各取付溝81の幅寸法とほぼ一致するように加工されるとともに各取付溝81の幅寸法に対して若干の締め代を設定されている。これにより、各位置決めブロック80は、側面88a、88bが、対応する取付溝81の内側面87a、87bと隙間無く当接した状態で取り付けられる。これにより、外筒61の内周面を研削加工する際に、過大な外力が作用しても、外筒61を構成する各円筒ブロック同士が円周方向にずれることを防止できる。
【0086】
なお、図示の例では、各位置決めブロック80の上下方向の寸法に関しては、対応する取付溝81のそれよりも小さくなっており、上下方向の取り付け位置はボルト89のみによって固定されるものとなっている。しかし、位置決めブロック80の上下方向の寸法も、幅寸法と同様に、取付溝81の上下方向の寸法とほぼ一致したものとし、各位置決めブロック80の取り付け位置が厳密に1種類に固定されるものとしてもよい。具体的には、
図8の構成に代えて、
図9に示すように、取付溝81の上下方向の一方または両方に当接面100を設け、当接面100に位置決めブロック80の対応する上面101を当接させて、位置決めブロック80の上下方向に関する取付位置を厳密に(1種類に)固定させてもよい。これにより、ボルトの固定のみによって取付位置が固定される場合に比べて、底面82と取付面83との上下方向の位置のずれに起因した微妙な組立状態の誤差をさらに小さくすることができるので、より高い精度で各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの軸線が外筒61の軸線と一致した状態を再現することが可能になる。
【0087】
以上のような各取付溝81と各位置決めブロック80とを備える外筒61によれば、対応する取付溝81に対し位置決めブロック80を設定された取付位相で取り付けることにより、隣接する2つの円筒ブロックが外筒の外周面上における2箇所以上の位置において外筒61の軸線に直交する2つ以上の異なる方向に関して高い精度で位置決めされ、その結果として外筒61を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの組立状態を高い精度で維持することが可能となる。それにより、外筒61を一旦分解して再度組立する際にも、隣接する2つの円筒ブロックの組立状態を、分解前の状態とほぼ一致した状態、すなわち、本実施例における隣接する2つの円筒ブロックの軸線が正確に一致した状態に再現することができる。
【0088】
そして、そのような外筒61の組立構造を採用した本発明によるロータリージョイント装置では、外筒61の貫通孔64は、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを組み立てた状態とした上で、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eを一体の貫通孔64の内周面として研削加工することにより、所望の内径寸法に仕上げられる。
【0089】
詳しくは、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eは、以下の手順で加工される。
(1)隣接する2つの円筒ブロック61d、61eを、円周方向に関する位相を位置決め用のピン78によって対応させて、軸線方向に組み立てる。
(2)円筒ブロック61d、61eの外周上の3箇所に形成されている取付溝81のそれぞれに、対応する位置決めブロック80を、隣接する2つの円筒ブロック61d、61eに跨がるかたちで嵌め合わせる。
(3)その際、各位置決めブロック80は、位置決め用マーク85を対応する位置決め用マーク86と合わせることにより、軸線方向及び外筒61の円周方向に関する予め定められた取付位相で、対応する取付溝81に対し装着された状態となる。
(4)その上で、位置決めブロック80を4本のボルト89によって取付溝81に固定する。これにより、隣接する2つの円筒ブロックにおける各取付溝81の底面82が同一平面上に固定された状態となる。
(5)その状態で、円筒ブロック61dの端面に形成されている各貫通穴に取り付けボルトを挿通し、挿通した各取り付けボルトを、円筒ブロック61eの端面に形成された複数のねじ穴に螺合して、隣接する2つの円筒ブロック61d、61eを軸線方向に結合する。
(6)以上の(1)〜(5)を、隣接する2つの円筒ブロックの組み合わせ(円筒ブロック61cと61dとの組み合わせ、円筒ブロック61bと61cとの組み合わせ、円筒ブロック61aと61bとの組み合わせ)毎について繰り返し、複数の円筒ブロックを組立てて、一体としての外筒61の状態とする。
(7)そして、外筒61をその様に組み立てた状態において、貫通孔64、すなわち、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eに研削加工が施される。その上で、外筒61の貫通孔64は、その内径寸法を、回転軸63との対向面の直径すきまが0.005mm以下となるように仕上げる。
【0090】
このように、本発明によるロータリージョイント装置では、前述の取付溝81と位置決めブロック80との組み合わせにより、外筒61を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eのうちの隣接する2つの円筒ブロックを高い精度で位置決めし、且つ、その位置決め状態を維持(再現)可能な状態として、外筒61の貫通孔64が所望の内径寸法のものに研削加工されている。
【0091】
従って、外筒61は、位置決めブロック80を対応する取付溝81に対し設定された取付位相で組み付けた組立状態においては、貫通孔64を形成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eの軸線が一致した状態となり、回転軸63が貫通孔64内に組み付けられた状態における各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eと回転軸63との間の直径すきまが全体に亘って0.005mm以下の状態となる。
【0092】
そして、上記の組立状態、すなわち、位置決めブロック80を対応する取付溝81に対し設定された取付位相で組み付けた組立状態を維持する限りにおいては、貫通孔64と回転軸63との間の直径すきまが上記状態に維持することができる。それにより、外筒61の各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを分解して再度組立する際においても、分解時に各取付溝81から一旦取り外した位置決めブロック80を、対応する取付溝81に対し設定された取付位相で再度取り付けて隣接する2つの円筒ブロックを位置決めすることにより、外筒61の組立状態を、高い精度で分解前とほぼ同じ状態(本実施例における複数の円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの各軸線が、高い精度で一致した状態)とし、貫通孔64を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの内周面64a、64b、64c、64d、64eと回転軸63との間の直径すきまを高い精度で分解前と同じ状態にすることができる。
【0093】
さらに、本実施例では、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを外径寸法が同一の同形状のものとし、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの軸線(外周円の中心軸線)を高い精度で一致させた状態で組み立てて外筒61が構成されているため、前記した貫通孔64の研削加工において、外筒61の外周面を基準とすることにより、加工後の貫通孔64の軸線にズレ(変化)が生じないから、つかみ換え等の加工工程をより柔軟に選択できるといった効果が得られる。すなわち、貫通孔64の前記研削加工においては、外筒61の外周面をチャック等でつかんで保持した状態としてその加工が行われるが、加工の都合等によりチャックのつかみ換えが行われても、外筒61の外周面を基準に、貫通孔64の軸線を外筒61の軸線と一致させて研削加工することにより、加工された貫通孔64におけるチャックのつかみ換え前後の加工位置において各軸線にズレが生じない。なお、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの軸線をより正確に一致させておくために、貫通孔64の研削加工の前に、予め一体の外筒61の外周面を研削加工して仕上げておいてもよい。
【0094】
以上では、本発明の一実施例について説明したが、本発明によるロータリージョイント装置は前記のものに限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
【0095】
前記実施例では、外筒61を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを、それぞれの軸線が高い精度で一致させた状態で組み立て、その状態で外筒61の軸線を中心とした所望の内径寸法となるように貫通孔64に研削加工を施している。しかし、これに代えて、外筒61を構成する各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの組立状態を、互いの軸線が一致しない状態のものとしてもよい。
【0096】
すなわち、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eの軸線が互いに一致しない状態であっても、外筒61の最終的な組立状態として各取付溝81に位置決めブロック80を取り付けておき、外筒61の各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを分解して再度組立する際に、各取付溝から一旦取り外した位置決めブロック80を、取り外し前に取り付けられていた取付溝81の底面82に対し1対1で対応させると共に取付溝81に対する軸線方向及び外筒61の円周方向に関する取付位相を1種類に設定されたもとの状態となるように再度取り付けて、外筒61の組立状態を再現させることにより、貫通孔64を構成する内周面64a、64b、64c、64d、64eの各軸線を、高い精度で分解前の状態と一致した状態に再現することができる。
【0097】
また、前記実施例では、各取付溝81を、隣接する2つの円筒ブロックの組み合わせ毎に、外筒61の外周上で90度ずつ位相をずらして3箇所に形成しているが、これに限らない。すなわち、本発明では、取付溝81は、隣接する2つの円筒ブロックの組み合わせ毎に外筒61の外周上の少なくとも2箇所以上に設けられていれば良いため、2箇所あるいは、4箇所以上の位置に形成されるものとしてもよい。また、各取付溝81の外筒61の外周上での位相のずれは90度に限らないが、位置決めに関しては、前記実施例のように、直交する異なる方向に位置決めした方が好ましい。また、貫通孔64の研削加工による円周方向の外力に関しては、やはり前記実施例のように、取付溝81の少なくとも一つについて、さらに180度の位相で取付溝81を追加して設け、少なくとも外筒61の外周面で対向する2つの位置で前記外力を支えた方が好ましい。
【0098】
また、前記実施例では、隣接する2つの円筒ブロックの組み合わせ毎に2つの円筒ブロックを組み合わた状態で、各取付溝81を加工して設けているが、これに限らない。例えば、各円筒ブロック61a、61b、61c、61d、61eを一体の外筒61として組み立てた状態のままで、隣接する2つの円筒ブロックの組み合わせ毎の各取付溝81を加工してもよい。そして、各取付溝81を加工した後に、外筒61を分解しない状態のまま、各取付溝81に対して対応する位置決めブロック80を取り付けて、内周面64a、64b、64c、64d、64eを研削加工してもよい。このように加工することにより、各円筒ブロックを軸線方向に連結する取り付けボルトの締結力に起因した外筒61の組立状態の誤差を小さくすることができ、より高い精度で分解前の外筒61の組立状態を再現することができる。
【0099】
また、前記実施例では、2つの軸受け62a、62bは、アンギュラ玉軸受であるが、これに限らず、自動調心ころ軸受やスリーローラベアリング等の調心機能を有するころ軸受であっても良い。さらに、貫通孔64と回転軸63とのすきまが許容できる場合には、調心機能を有さない玉軸受やころ軸受であっても良い。
【0100】
さらに、本実施形態では、本発明によるロータリージョイント装置60を工作機械のC軸駆動装置30に適用しているが、これに限らず、工具が取り付けられるスピンドル21を回転駆動するスピンドルユニット20の主軸駆動装置や、スピンドルユニット20を支持する加工用ヘッド10の主軸駆動装置等に適用しても良いし、治具やワークを固定した対象装置としての円テーブルを支持する主軸を回転駆動する円テーブル装置の駆動装置に適用しても良い。