(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、従来の集中巻線を用いた同期電動機900の主要部の断面図を示す。この同期電動機900は、固定子90と回転子93を備えている。固定子90は、複数のスロットS1〜S18と、複数の歯部T1〜T18とを備え、各歯部T1〜T18の周囲に各要素巻線91が巻回されている。各要素巻線91は、U,V,Wの相ごとに回転方向に複数ずつ連続して配置されている。
図9に示す例では、各相ともに各要素巻線91が周方向に3つ連続して配置され一つの回転方向巻線901から906を形成している。従って、
図9に示した例では、U,V,Wの各相は集中巻きのコイルが周方向にそれぞれ2つずつ配置されていることになる。一方、回転子93は、リング95に磁性体94を嵌込み、かつ、永久磁石96を配設固着させたものである。このような同期電動機900では、
図10(a)に示すように、要素巻線91が周方向に連続して配置されて1つの回転方向巻線901を構成しているので、回転方向巻線901に通電した際の磁束の分布は、
図10(b)に示すように、周方向に向かって台形状の磁束分布となるので、トルクリップルが生じやすいという問題があった。
【0003】
これを避ける為に固定子の製造方法の工夫や巻線方法を工夫することが多い。例えば、固定子の歯部のロータに向う面を円筒面とし、歯部の中心部は歯部の端面とロータ表面との距離が短く、歯部の両端部は歯部の端面とロータ表面との距離を長くし、各巻線の誘起電力を正弦波としてコギングトルクを抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、固定子の製造方法ではステータコアの積層もしくは回転子磁極の構造にスキュー構造と言われる回転方向への変化を用いて工夫することが多いが(例えば、特許文献2参照)、これはトルク定数を低下させる現象があり、また、スキュー構造にすることにより製造時に治具等の専用器具が必要となりコストアップの要因となる。また、スロットへ巻線挿入する作業性と生産性を悪化させる。また、巻線方法の工夫には、極数に対しスロットを整数にしない工夫や集中巻きではなく分布巻きとなる巻線方法を行うことが一般的である(例えば、特許文献3参照)。これはコイルの増加を意味し、かつ、巻線工数の増加を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の同期電動機100は、固定子10と回転子20を備えている。固定子10は、複数(18個)のスロットS1〜S18と、複数(18個)の歯部T1〜T18とを備え、各歯部T1〜T18の周囲に下層要素巻線11、上層要素巻線12がそれぞれ巻回されている。また、回転子20は、リング25に磁性体24を嵌込み、かつ、永久磁石26を配設固着させたもので、永久磁石26は周方向に16個取り付けられており、回転子20の極数は16となっている。なお、符号61,62は縦横の各中心線を示す。
【0014】
U相の下層要素巻線11は、第1スロットS1、第2スロットS2の間の第2歯部T2の周囲に巻回されている。
図1において、符号UはU相の巻線の入力端であることを示し、符号XはU相の巻線の出口端であることを示す。従って、第2歯部T2に巻回されている下層要素巻線11は、
図2に示すように、第1スロットS1から固定子10の中に入り第2スロットS2に向って巻回され、第2スロットS2から固定子10の外に出るように巻回されている。なお、
図2において、○の中に×マークが入った符号は巻き線が紙面の表面側から裏面に向う方向に延びることを示し、○印の中に点が入った符号は、巻線が紙面の裏側から表側に向う方向に延びていることを示している。また、
図2は、固定子10の内面に周方向に配置されている各スロットと各歯部を直線方向に伸ばして記載した模式図である。また、
図1に示す様に、第2スロットS2と第3スロットS3との間の第3歯部T3に巻回されている下側要素巻線11は、符号Uのある第3スロットS3から固定子10の中に入り、第2スロットS2に向って巻回され、符号Xのある第2スロットS2から固定子10の外に出るように巻回されている。つまり、第2歯部T2に巻回される下層要素巻線11と、第3歯部T3に巻回される下層要素巻線11とは互いに反対方向に向かって巻回されている。同様に、第3スロットS3と第4スロットS4との間の第4歯部T4に巻回されている下層要素巻線11は、符号Uのある第3スロットS3から固定子10の中に入り、第4スロットS4に向って巻回され、符号Xのある第4スロットS4から固定子10の外に出るように巻回されており、第3歯部T3に巻回される下層要素巻線11とは互いに反対方向に向かって巻回されている。このように、隣接する各下層要素巻線11は、互いにその巻回方向が逆方向となっている。
【0015】
同様に、V相の下層要素巻線11は、第5歯部T5、第6歯部T6、第7歯部T7に巻回され、W相の下層要素巻線11は、第8歯部T8、第9歯部T9、第10歯部T10に巻回され、隣接する各下層要素巻線11は、互いにその巻回方向が逆方向となっている。
なお、
図1において、符号V,WはV,W相の巻線に入力端であることを示し、符号Y,ZはV,W相の巻線の出口端であることを示す。更に、もう一つのU相の下層要素巻線11は、第11歯部T11、第12歯部T12、第13歯部T13に巻回され、もう一つのV相の下層要素巻線11は、第14歯部T14、第15歯部T15、第16歯部T16に巻回され、もう一つのW相の下層要素巻線11は、第17歯部T17、第18歯部T18、第1歯部T1に巻回されている。
【0016】
一方、U相の上層要素巻線12は、U相の下層要素巻線11と1スロット、或いは、1歯部だけ周方向にずれた第2スロットS2、第3スロットS3の間の第3歯部T3と、第4歯部T4と、第5歯部T5に巻回されている。また、上層要素巻線12は、下層要素巻線11の固定子10の中心側に配置されている。そして、下層要素巻線11と同様、隣接する各上層要素巻線12は、互いにその巻回方向が逆方向となっている。
【0017】
同様に、V相の上層要素巻線12は、第6歯部T6、第7歯部T7、第8歯部T8に巻回され、W相の上層要素巻線12は、第9歯部T9、第10歯部T10、第11歯部T11に巻回され、もう一つのU相の上層要素巻線12は、第12歯部T12、第13歯部T13、第14歯部T14に巻回され、もう一つのV相の上層要素巻線12は、第15歯部T15、第16歯部T16、第17歯部T17に巻回され、もう一つのW相の上層要素巻線12は、第18歯部T18、第1歯部T1、第2歯部T2に巻回されている。
【0018】
そして、第2歯部T2、第3歯部T3、第4歯部T4の3つの連続する歯部に巻回された3つのU相の下層要素巻線11は、下層U相回転方向巻線101を形成し、第5歯部T5、第6歯部T6、第7歯部T7の3つの連続する歯部に巻回された3つのV相の下層要素巻線11は、下層V相回転方向巻線102を形成し、第8歯部T8,第9歯部T9、第10歯部T10の3つの連続する歯部に巻回された3つのW相の下層要素巻線11は、下層W相回転方向巻線103を形成し、第11歯部T11、第12歯部T12、第13歯部T13の3つの連続する歯部に巻回された3つのU相の下層要素巻線11は、もうひとつの下層U相回転方向巻線104を形成し、第14歯部T14、第15歯部T15、第16歯部T16の3つの連続する歯部に巻回された3つのV相の下層要素巻線11は、もう一つの下層V相回転方向巻線105を形成し、第17歯部T17,第18歯部T18、第1歯部T1の3つの連続する歯部に巻回された3つのW相の下層要素巻線11は、もう一つの下層W相回転方向巻線106を形成する。
【0019】
また、同様に、第3歯部T3、第4歯部T4、第5歯部T5の3つの連続する歯部に巻回された3つのU相の上層要素巻線12は、上層U相回転方向巻線201を形成し、第6歯部T6、第7歯部T7、第8歯部T8の3つの連続する歯部に巻回された3つのV相の上層要素巻線12は、上層V相回転方向巻線202を形成し、第9歯部T9,第10歯部T10、第11歯部T11の3つの連続する歯部に巻回された3つのW相の上層要素巻線12は、上層W相回転方向巻線203を形成し、第12歯部T12、第13歯部T13、第14歯部T14の3つの連続する歯部に巻回された3つのU相の上層要素巻線12は、もうひとつの上層U相回転方向巻線204を形成し、第15歯部T15、第16歯部T16、第17歯部T17の3つの連続する歯部に巻回された3つのV相の上層要素巻線12は、もう一つの上層V相回転方向巻線205を形成し、第18歯部T17,第1歯部T1、第2歯部T2の3つの連続する歯部に巻回された3つのW相の上層要素巻線12は、もう一つの上層W相回転方向巻線206を形成する。
【0020】
以上述べた様に、下層要素巻線11、上層要素巻線12は、U(X),V(Y),W(Z)の相ごとに回転方向に複数ずつ連続して配置されている。
図1に示す例では、各相ともに各下層要素巻線11、各上層要素巻線12が周方向にそれぞれ3つずつ連続して配置され、それぞれ一つの下層回転方向巻線101〜106、上層回転方向巻線201〜206を形成している。従って、
図1に示した実施形態では、U,V,Wの各相は集中巻きのコイルが周方向にそれぞれ2つずつ配置されていることになる。そして、各相の下層回転方向巻線101〜106はそれぞれ対応する各上層回転方向巻線201〜206と1歯部あるいは1スロットずつずれて配置されている。
【0021】
そして、下層U相回転方向巻線101,104と上層U相回転方向巻線201,204とは第1、第2U相回転方向巻線301,304を形成し、下層V相回転方向巻線102,105と上層V相回転方向巻線202,205とは第1、第2V相回転方向巻線302,305を形成し、下層W相回転方向巻線103,106と上層W相回転方向巻線203,206とは第1、第2W相回転方向巻線303,306を形成する。
図3に示すように、下層U相回転方向巻線101,104、下層V相回転方向巻線102,105,下層W相回転方向巻線103,106とは中性点30によってY結線とされ、上層U相回転方向巻線201,204,上層V相回転方向巻線202,205、上層W相回転方向巻線203,206は下層の各相の各巻線101〜106にそれぞれ直列に接続されるように構成されている。また、下層の各相の回転方向巻線101〜106の端部にはそれぞれ各相の入力端子U2,V2,W2が接続され、高速巻線、低速巻線を切り替えられるように構成されている。高速巻線の場合には、入力端子U2,V2,W2から電流が入力され、下層の各相の各巻線101〜106のみに通電される。また、低速巻線に切り替えた場合には、入力端子U,V,Wから電流が入力され、下層と上層の各相の各巻線101〜106,201〜206に通電される。
【0022】
本実施形態の同期電動機100では、各相の各層の要素巻線11,12の円周方向への連続数をNcont、前記スロットS1〜S18の数をNslot、前記回転子20の極数をNpole、電流の印加相数をNphase、とするとき、Nslot±Npole=2n (n=1,2,・・・整数)であり、かつNslot=A/(A−1)・Npole(ただし,A=Nphase・Ncont)の関係が成り立ち、Ncont連続する各層の要素巻線11,12の層毎に、回転方向に1スロットずれて巻かれ m層(m>1であり整数)ある。
【0023】
図1を参照して説明した実施形態では、
Ncont=3、Nslot=18、Npole=16、Nphase=3であり、
Nslot+Npole=18+16=32
Nslot−Npole=18−16= 2
となり、
A=Nphase・Ncont=3・3=9
A/(A−1)・Npole=9/(9−1)・16=18=Nslot
となり、上記の要件を満たしている。また、層数mは2である。
【0024】
また、本実施形態の同期電動機の構成において、連続数がNcontで要素巻線の層数mがm=2k(kは自然数)であるとき、一相の回転方向巻線中心部にあっては[Ncont−(2k−1)]個の歯部に集中巻であって、回転方向巻線中心に対して外部に向かい(2k−1)個の歯部に対して巻線を巻回され、巻線の巻回数は回転方向巻線中心程多く,回転方向巻線中心から回転方向に向かって離れるほど少なくなり、m=2k−1(kは自然数)であるとき、一相の回転方向巻線中心部にあっては[Ncont−2(k−1)]個の歯部に集中巻であって、回転方向巻線中心に対して外部に向かい2(k−1)個の歯部に対して巻線を巻回され、巻線の巻回数は回転方向巻線中心程多く、回転方向巻線中心から回転方向に向かって離れるほど少なくなる。
【0025】
本実施形態では、
Ncont=3、m=2であるから、k=1となり、(2k−1)=1、[Ncont−(2k−1)]=2となる。つまり、中央の2つの歯部に集中巻きとなり、連続している回転方向巻線の中心から両側1つずつの歯部に巻線が巻回される。
なお、後で説明する
図6に示す
参考例のようにNcont=3、層数mが3の場合、k=2であり、2(k−1)=2、[Ncont−2(k−1)]=1となる。この場合、回転方向巻線の中央の1つの歯部に集中巻きとなり、中央から両側2つずつの歯部に巻線が巻回されることとなる。
【0026】
以上のように構成された、同期電動機100の動作について
図4を参照しながら説明する。
図4(a)に示すように、下層U相回転方向巻線101と、上層U相回転方向巻線201とは、1スロット或いは1歯部だけずれて配置されている。このため、第1U相回転方向巻線301の中央の第3歯部T3、第4歯部T4では、下層、上層ともU相の各要素巻線11,12が各歯部T3,T4に巻回されており、第1U相回転方向巻線301の中央から周方向に離れた第2歯部T2、第5歯部T5は、それぞれU相の下層要素巻線11、U相の上層要素巻線12のみが巻回されている。このため、第1U相回転方向巻線301に電流を流した場合、その電流によって生じる線65で示す磁束の強さは、
図4(b)に示すように、第1U相回転方向巻線301の中央付近の第3歯部T3、第4歯部T4付近では大きくなり、逆に第1U相回転方向巻線301の中央から周方向に離れた第2歯部T2、第5歯部T5では小さくなる。この結果、第1U相回転方向巻線301の磁束は周方向に略正弦波状となる。このことによって、本実施形態では、集中巻きの構成でもトルクリップルを効果的に低減することができる。
【0027】
図5を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。
図1から
図4を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
図1を参照して説明した実施形態では、各要素巻線11,12は、各歯部T1〜T18の周りにそれぞれ巻回することとして説明したが、本実施形態ではスロットを飛ばして巻線を巻回するように構成したものである。
図5に示すように、下層U相回転方向巻線101の巻線は、第1スロットS1と第4スロットS4との間で巻回される第1の巻線401と、第2スロットS2と第3スロットS3との間で巻回される第2の巻線411とによって構成されている。
図5に示すように、第1の巻線401は、第1スロットS1から固定子10の中に入り、第4スロットS4から固定子10の外に出るよう巻回される。なお、
図5において、○の中に×マークが入った符号は巻き線が紙面の表面側から裏面に向う方向に延びることを示し、○印の中に点が入った符号は、巻線が紙面の裏側から表側に向う方向に延びていることを示している。また、
図5は、固定子10の内面に周方向に配置されている各スロットと各歯部を直線方向に伸ばして記載した模式図である。また、第2の巻線411は、第3スロットS3から固定子10の中に入り、隣接する第2スロットS2から固定子10の外に出るよう巻回される。第1の巻線401と第2の巻線411とは巻回方向が逆方向となっている。。
【0028】
また、上層U相回転方向巻線201の巻線は、第2スロットS2と第5スロットS5との間で巻回される第3の巻線402と、第3スロットS3と第4スロットS4との間で巻回される第4の巻線412とによって構成されている。第3の巻線402は、第5スロットS5から固定子10の中に入り、第2スロットS2から固定子10の外に出るよう巻回される。また、第4の巻線412は、第3スロットS3から固定子10の中に入り、隣接する第4スロットS4から固定子10の外に出るよう巻回される。第3の巻線402と第4の巻線412とは巻回方向が逆方向となっている。そして、下層U相回転方向巻線101と上層U相回転方向巻線201とは、周方向に1スロットだけずれて配置されている。
【0029】
本実施形態では、
図1を参照して説明した実施形態と各回転方向巻線の巻き方が異なるが、中央の第3、第4歯部T3,T4の巻線数は両端の第1、第5歯部T1,T5よりも巻線数が多くなっており、固定子10に電流を流した際の周方向の磁束の分布は、
図4(b)に示すように略正弦波となり、
図1を参照して説明した実施形態と同様、集中巻きの構成でもトルクリップルを効果的に低減することができる。
【0030】
図6を参照しながら本発明の
参考例について説明する。
図1から
図5を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。回転方向巻線をスロットの長手方向に3層の配置とし、各相の回転方向巻線の間で巻線の巻回を行うようにしたものである。
【0031】
図6に示す様に、
本参考例は、下層U相回転方向巻線101と、上層U相回転方向巻線201と、その中間の中間U相回転方向巻線501とを備えている。下層U相回転方向巻線101と、上層U相回転方向巻線201と、中間U相回転方向巻線501とは、第1U相回転方向巻線550を構成する。各回転方向巻線101,201,501は下層、中間、上層の順にそれぞれ1スロットずつ周方向にずれて配置されている。そして、第5の巻線502は、第1スロットS1から固定子10の中に入り、第6スロットS6から固定子10の外に出るよう巻回される。また、第6の巻線503は、第5スロットS5から固定子10の中に入り、第2スロットS2から固定子10の外に出るよう巻回される。そして、第7の巻線504は、第3スロットS3から固定子10の中に入り、隣接する第4スロットS4から固定子10の外に出るよう巻回される。
【0032】
図6に示す様に、第1U相回転方向巻線550の中央にある第4歯部T4の両側の第33、第4スロットS3,S4にはそれぞれ5本の巻線が巻回され、その両側の第2、第5スロットS2,S5にはそれぞれ3本の巻線が巻回され、両端の第1、第6スロットS1,S6にはそれぞれ1本の巻線が巻回される。この様に、第1U相回転方向巻線550の中央の巻線数が多く、回転方向に向かって第1U相回転方向巻線550の両端に向うにつれて巻線数が少なくなるので、先に
図1から
図5を参照して説明した実施形態と同様、固定子10に電流を流した際の周方向の磁束の分布が、
図4(b)に示すような略正弦波となり、先に説明した実施形態と同様、集中巻きの構成でもトルクリップルを効果的に低減することができる。
【0033】
図7を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。
図7に示す様に、本実施形態の同期電動機100の固定子10は、
図2を参照して説明した第1U相回転方向巻線301をスロット或いは歯部の延びる方向に向かって上下に2つ重ね合わせて、それぞれ下層第1U相回転巻線351、上層第1U相回転巻線352としたものである。
図8に示す様に、下層第1U相回転巻線351は中性点に接続されてY結線を構成する。そして、下層第1U相回転巻線351に含まれる下層U相回転方向巻線101、上層U相回転方向巻線201の間には直列接続スイッチ52が設けられ、下層U相回転方向巻線101、上層U相回転方向巻線201とそれぞれ並列に下層U相回転方向巻線101、上層U相回転方向巻線201を並列接続することができる並列接続スイッチ51,53が設けられている。また、下層第1U相回転巻線351の一端には入力端子U2が接続されている。V相、W相についても構成は同様である。スイッチ51から53は図示しない外部制御装置によってオンオフされる。
【0034】
図示しない外部制御装置によって、低速巻線として同期電動機100を低速駆動する際には、電流を各端子U,V,Wから入力し、直列接続スイッチ52を閉とすることによって、下層第1U相回転巻線351と上層第1U相回転巻線352とが直列となる。また、図示しない外部制御装置によって、高速巻線として同期電動機100を高速駆動する際には入力端子U2,V2,W2から電流を入力するとともに、直列接続スイッチ52を開として並列接続スイッチ51,53を閉とすることによって、下層U相回転方向巻線101、上層U相回転方向巻線201を並列として巻線抵抗を低減することができる。これにより高速駆動の際の銅損を低減することができる。また、本実施形態は、高速巻線として下層第1U相回転巻線351のみに通電する場合であっても、下層第1U相回転巻線351が1スロットずらして配置された下層U相回転方向巻線101と上層U相回転方向巻線201によって構成されているので、周方向の磁束の分布が、
図4(b)に示すような略正弦波となり、集中巻きの構成で、高速駆動の際のトルクリップルを効果的に低減することができる。