【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に指摘がない場合、下記において、「部」は「重量部」を意味する。
【0045】
(実施例1)
<分散溶液の調製>
先ず、以下の成分の混合物を、分散メディアとして直径0.3mmのジルコニアビーズを用い、ダイノミル/シンマルエンタープライゼス社製のビーズミルを用いて分散処理した。
(1)ITO粒子(平均一次粒子径:30nm、酸化スズ含有率:10重量%) 85.0部
(2)アニオン性官能基を含むバインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−113”、重量平均分子量30000、ガラス転移温度:75℃) 10.0部
(3)バインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−83”、重量平均分子量:40000、ガラス転移温度:105℃) 5.0部
(4)溶剤〔組成比:メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=10/55/35(重量比)〕 185部
【0046】
次に、分散処理した上記混合物をフィルターを通してジルコニアビースを除去して分散溶液を得た。得られた分散溶液に含まれる固形分の全重量に対するITO粒子(導電性粒子)の重量含有率は85重量%である。また、Foxの式から求めたバインダ樹脂全体のガラス転移温度(Tg)は84℃であった。
【0047】
<透明導電膜付き原反の作製>
次に、コータとドライヤとを組み合わせた塗布乾燥機により分散溶液を透明基材(東レ社製のポリエステルフィルム“ルミラー”、厚み:100μm、ヘイズ:0.2%)に塗布して塗膜を形成し、1回目の乾燥を行った。その後、同じ塗布乾燥機のドライヤを用いて2回目の乾燥を行い、透明基材上に厚さ1.0μmの透明導電膜を設けた原反を得た。表1に1回目及び2回目の乾燥温度を示す。
【0048】
<樹脂溶液の調製>
以下の成分を混合して有機物膜形成用の樹脂溶液を調製した。
(1)放射線硬化性樹脂(ダイセルサイテック社製のトリメチロールプロパントリアクリレート“TMPTA”) 1.2部
(2)紫外線重合開始剤(BASFジャパン社製“イルガキュア907”) 0.06部
(3)溶剤(n−プロパノール) 100部
【0049】
<透明導電性シートの作製>
上記原反の透明導電膜上に、乾燥膜の厚さが100nmとなるように上記樹脂溶液を原反の作製と同じ塗布乾燥機を用い、ドライヤの温度を40℃に設定し、搬送速度10m/分で塗布、乾燥し、窒素雰囲気で紫外線照射を行って有機物膜を形成して透明導電性シートを得た。紫外線の照射光量は250mJ/cm
2とした。
【0050】
作製した透明導電性シートの透明導電膜のガラス転移温度をDSCにより測定したところ、85℃であった。
【0051】
(実施例2)
透明導電膜の厚さを0.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0052】
(実施例3)
透明導電膜の厚さを2.0μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0053】
(比較例1)
透明導電膜の厚さを0.3μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0054】
(比較例2)
透明導電膜の厚さを2.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0055】
(実施例4)
<分散溶液の調製>
先ず、以下の成分の混合物を、実施例1と同様にして分散処理して分散溶液を得た。得られた分散溶液に含まれる固形分の全重量に対するITO粒子(導電性粒子)の重量含有率は85重量%である。
(1)ITO粒子(平均一次粒子径:30nm、酸化スズ含有率:10重量%) 85.0部
(2)アニオン性官能基を含むバインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−106”、重量平均分子量:60000、ガラス転移温度:50℃) 15.0部
(3)溶剤〔組成比:メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=10/75/15(重量比)〕 150部
【0056】
<透明導電膜付き原反の作製>
上記で得られた分散溶液を用い、表1に示したように乾燥温度を設定し、透明導電膜の厚さを2.0μmとした以外は、実施例1と同様にして原反を作製した。
【0057】
<樹脂溶液の調製>
以下の成分を混合して有機物膜形成用の樹脂溶液を調製した。
(1)放射線硬化性樹脂(ダイセルサイテック社製のシリコンアクリレート“EBECRYL350”) 1.2部
(2)紫外線重合開始剤(BASFジャパン社製“イルガキュア184”) 0.10部
(3)溶剤(n−プロパノール) 100部
【0058】
<透明導電性シートの作製>
上記原反の透明導電膜上に、乾燥膜の厚さが55nmとなるように上記樹脂溶液を原反の作製と同じ塗布乾燥機を用い、ドライヤの温度を70℃に設定し、搬送速度10m/分で塗布、乾燥し、窒素雰囲気で紫外線照射を行って有機物膜を形成して透明導電性シートを得た。紫外線の照射光量は500mJ/cm
2とした。
【0059】
作製した透明導電性シートの透明導電膜のガラス転移温度をDSCにより測定したところ、50℃であった。
【0060】
(比較例3)
有機物膜の厚さを120nmに変更した以外は、実施例4と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0061】
(比較例4)
有機物膜の厚さを40nmに変更した以外は、実施例4と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0062】
(実施例5)
<分散溶液の調製>
先ず、以下の成分の混合物を、実施例1と同様にして分散処理して分散溶液を得た。得られた分散溶液に含まれる固形分の全重量に対するITO粒子(導電性粒子)の重量含有率は83重量%である。また、Foxの式から求めたバインダ樹脂の全体のガラス転移温度(Tg)は46℃であった。
(1)ITO粒子(平均一次粒子径:30nm、酸化スズ含有率:10重量%) 83.0部
(2)アニオン性官能基を含むバインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−113”、重量平均分子量:30000、ガラス転移温度:75℃) 5.0部
(3)バインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−117”、重量平均分子量:140000、ガラス転移温度:35℃) 12.0部
(4)溶剤〔組成比:メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=10/75/15(重量比)〕 150部
【0063】
<透明導電膜付き原反の作製>
上記で得られた分散溶液を用い、表1に示したように乾燥温度を設定し、透明導電膜の厚さを1.8μmとした以外は、実施例1と同様にして原反を作製した。
【0064】
<樹脂溶液の調製>
以下の成分を混合して有機物膜形成用の樹脂溶液を調製した。
(1)放射線硬化性樹脂(ダイセルサイテック社製のペンタエリスリトールトリアクリレート“PETRA”) 1.2部
(2)紫外線重合開始剤(BASFジャパン社製“イルガキュア819”) 0.012部
(3)溶剤(iso−ブタノール) 100部
【0065】
<透明導電性シートの作製>
上記原反の透明導電膜上に、乾燥膜の厚さが80nmとなるように上記樹脂溶液を原反の作製と同じ塗布乾燥機を用い、ドライヤの温度を50℃に設定し、搬送速度10m/分で塗布、乾燥し、実施例1と同様にして窒素雰囲気で紫外線照射を行って有機物膜を形成して透明導電性シートを得た。
【0066】
作製した透明導電性シートの透明導電膜のガラス転移温度をDSCにより測定したところ、46℃であった。
【0067】
(実施例6)
<分散溶液の調製>
先ず、以下の成分の混合物を、実施例5と同様にして分散処理して分散溶液を得た。得られた分散溶液に含まれる固形分の全重量に対するITO粒子(導電性粒子)の重量含有率は88重量%である。
(1)ITO粒子(平均一次粒子径:30nm、酸化スズ含有率:10重量%) 88.0部
(2)アニオン性官能基を含むバインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−113”、重量平均分子量:30000、ガラス転移温度:75℃) 4.5部
(3)バインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−117”、重量平均分子量:140000、ガラス転移温度:35℃) 7.5部
(4)溶剤〔組成比:メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=10/75/15(重量比)〕 150部
【0068】
<透明導電性シートの作製>
上記分散溶液を用いた以外は、実施例5と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0069】
作製した透明導電性シートの透明導電膜のガラス転移温度は、49℃であった。
【0070】
(比較例5)
<分散溶液の調製>
先ず、以下の成分の混合物を、実施例5と同様にして分散処理して分散溶液を得た。得られた分散溶液に含まれる固形分の全重量に対するITO粒子(導電性粒子)の重量含有率は80重量%である。
(1)ITO粒子(平均一次粒子径:30nm、酸化スズ含有率:10重量%) 80.0部
(2)アニオン性官能基を含むバインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−113”、重量平均分子量:30000、ガラス転移温度:75℃) 5.0部
(3)バインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−117”、重量平均分子量:140000、ガラス転移温度:35℃) 15.0部
(4)溶剤〔組成比:メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=10/75/15(重量比)〕 150部
【0071】
<透明導電性シートの作製>
上記分散溶液を用いた以外は、実施例5と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0072】
作製した透明導電性シートの透明導電膜のガラス転移温度は、45℃であった。
【0073】
(比較例6)
<分散溶液の調製>
先ず、以下の成分の混合物を、実施例5と同様にして分散処理して分散溶液を得た。得られた分散溶液に含まれる固形分の全重量に対するITO粒子(導電性粒子)の重量含有率は90重量%である。
(1)ITO粒子(平均一次粒子径:30nm、酸化スズ含有率:10重量%) 90.0部
(2)アニオン性官能基を含むバインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−113”、重量平均分子量:30000、ガラス転移温度:75℃) 4.5部
(3)バインダ樹脂(三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂“ダイヤナールBR−117”、重量平均分子量:140000、ガラス転移温度:35℃) 5.5部
(4)溶剤〔組成比:メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=10/75/15(重量比)〕 150部
【0074】
<透明導電性シートの作製>
上記分散溶液を用いた以外は、実施例5と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0075】
作製した透明導電性シートの透明導電膜のガラス転移温度は、52℃であった。
【0076】
表1に、実施例1〜6及び比較例1〜6の透明導電膜の乾燥温度、透明導電膜のTg、透明導電膜の構成及び有機物膜の乾燥温度と厚さを示す。
【0077】
【表1】
【0078】
次に、実施例1〜6及び比較例1〜6の透明導電性シートについてい、下記のとおり、抵抗率、光学特性及びイオン抽出量を評価した。その結果を表2に示す。
【0079】
(抵抗率)
先ず、ダイアインスツルメンツ社製の抵抗率計“ロレスタEP(MCP−360T型)”とLSPプローブを用いて透明導電性シートの表面抵抗を測定した。評価試料は、透明導電性シートから75mm×75mmのサンプルを切り出し使用した。次に、測定した表面抵抗に透明導電膜の厚さを乗じて抵抗率を算出した。
【0080】
(光学特性)
曇り(ヘイズ)を日本分光社製の分光光度計“V-570”を用いて測定して光学特性を評価した。具体的には、積分球“ILN−472”を組み合わせ、ヘイズ値計算モードで、レスポンスがFast、バンド幅が2.0nm、近赤外が8.0nm、走査速度が400nm/分の条件で波長範囲380〜780nmのスペクトルを測定した。ヘイズの計算は、C光源、視野2度の条件で行った。評価試料は、透明導電性シートから30mm×50mmのサンプルを切り出し使用した。
【0081】
(イオン抽出量)
容量50mLのポリプロピレン製の広口容器(アイボーイ)に1.5cm角の透明導電性シートと超純水6mLとを入れて16時間保存した。そして、保存後、水を分取し、抽出水の伝導率を堀場社製のコンパクト電気伝導率計“B173型”により測定した。用いた超純水の伝導率は0μS/cmであった。抽出水の伝導率が高いほどイオン抽出量が多いことを意味する。
【0082】
【表2】
【0083】
表2から、本発明の実施例1〜6は、比較例1〜6に比べて、抵抗率、光学特性及びイオン抽出量において高い評価を得たことが分かる。
【0084】
一方、比較例1では透明導電膜の厚さが薄いため、抵抗率が高くなり、比較例2では透明導電膜の厚さが厚いため、イオン抽出量が多くなった。また、比較例3では、有機物膜の厚さが厚いため、抵抗率が高くなり、比較例4では、有機物膜の厚さが薄いため、イオン抽出量が多くなった。さらに、比較例5では、透明導電膜の導電性粒子の含有量が少ないため、抵抗率が高くなり、比較例6では、透明導電膜の導電性粒子の含有量が多いため、抵抗率が高く、光学特性が低く、イオン抽出量が多くなった。