(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図8は特許文献1に示される従来のハイブリッド型油圧ショベルに備えられる旋回装置の要部構成を概略的に示した図である。この従来の旋回装置は、走行体と、この走行体に旋回輪を介して配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する油圧ショベルに備えられている。この従来の旋回装置は、旋回体に設けられており、
図8に示すように、旋回輪の内輪の内歯と噛み合うギヤ20が取り付けられる出力軸21aを有し、旋回体を旋回させる減速機21と、この減速機21を駆動する油圧モータ22、及び電動モータ23と、これらのモータ22,23の回転力を減速機21の入力軸21bに伝達可能な複数のギヤ25,26,27を含むギヤ列28とを有している。
【0003】
油圧モータ22の出力軸22aは、減速機21の入力軸21bに接続されるとともに、ギヤ列28に含まれるギヤ25に接続されている。電動モータ23の入出力軸23aは、ギヤ列28に含まれるギヤ27に接続されている。ギヤ25とギヤ26とが噛み合い、ギヤ26とギヤ27とが噛み合うように配置されている。これらのギヤ25,26,27は、減速機21の上方に設けられるギヤケース29の内部に収納されており、ギヤケース29の上方に油圧モータ22と電動モータ23とが並設されている。
【0004】
このように構成される従来の旋回装置にあっては、例えば油圧モータ22と電動モータ23を駆動することにより、油圧モータ22の回転力が出力軸22aを介してギヤ25に伝えられ、また電動モータ23の回転力が入出力軸23a、ギヤ27,26を介してギヤ25に伝えられる。すなわち、油圧モータ22と電動モータ23の双方の回転力がギヤ25、入力軸21bを介して減速機21に伝えられる。この減速機21の回転力は、出力軸21a、ギヤ20を介して図示しない旋回輪の内輪に伝えられ、これにより旋回体を旋回させることができる。
【0005】
また、旋回体の旋回からの停止に際しては、油圧モータ22にブレーキがかけられるが、旋回体の慣性力に応じた回転力がギヤ20、出力軸21aを介して減速機21に伝えられ、この減速機21の入出力軸21b、ギヤ25,26,27を介して電動モータ23に伝えられ、この電動モータ23が発電機として働く。その発電によって発生させた電力は、図示しない蓄電装置に蓄えられる。この蓄電装置に蓄えられた電力は、旋回体の旋回駆動等に活用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術は、旋回体の旋回から停止までの間にエネルギーの再生が行われ、電動モータ23が発電機として働くようになっているが、このような旋回体の停止に際し、油圧モータ22にブレーキがかけられるため、再生されるエネルギーの相当部分が油圧モータ22のブレーキ動作時の発熱に消費されてしまい、旋回体から減速機21に伝えられる回転力がギヤ列28を介して電動モータ23に円滑に伝達され難い。したがって、従来技術の構成では、再生効率の向上を見込み難い。特に、建設機械が小型機械であるミニショベルの場合には、旋回体の旋回からの停止に際して、油圧モータにかけられたブレーキによってこの油圧モータの回転が直ちに阻止される傾向にある。したがって、ミニショベルにあっては、旋回体の旋回からの停止に際して、旋回体の慣性力に応じた回転力が電動モータ23に伝えられ難く、再生が不能となることが起こり得る。
【0008】
なお、上述した再生効率を向上させることを考慮して、
図9に示すように、例えば油圧モータ22の出力軸22aと減速機21の入力軸21bとの間にクラッチ70を設け、旋回体の旋回からの停止に際してクラッチ70を切断するように構成することが考えられる。このようにクラッチ70を備えたものでは、旋回からの停止に際して油圧モータの回転がブレーキによって阻止されても、旋回体から減速機21の入力軸21bを介してギヤ25に伝えられる回転力を、クラッチ70を切断することにより油圧モータ22の回転停止の影響を受けることなく、ギヤ列28のギヤ25,26,27を介して電動モータ23の入出力軸23aに伝え、この電動モータ23を発電機として円滑に駆動することができる。
【0009】
しかし、このようにクラッチ70を設ける場合には、旋回体の旋回からの停止に際して、瞬時にクラッチ70を切断させる煩雑な制御が必要になる。通常、旋回体の旋回からの停止は、土砂の掘削、放土作業等に伴って頻繁に行われる。したがって、煩雑なクラッチ70の切断制御を頻繁に行わせる制御機構を設けることが必要になる。このことから、上述のようなクラッチ70、及びクラッチ70の制御機構を設けることは、現実的なものでなく実用性の点で問題がある。
【0010】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、旋回体の旋回からの停止に際し、煩雑な制御を要することなく減速機に伝えられた回転力を、再生を行う電動モータに円滑に伝えることができる建設機械の旋回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明
のうちの第1の発明は、走行体と、この走行体上に旋回輪を介して配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する建設機械に備えられ、上記旋回体に設けられ、上記旋回輪の内輪の内歯と噛み合うギヤが取り付けられる出力軸を有し、上記旋回体を旋回させる減速機と、上記減速機を駆動する複数のモータと、これらのモータの回転力を上記減速機の入力軸に伝達可能な複数のギヤを含むギヤ列とを有し、上記複数のモータはエネルギーの再生が可能な電動モータを含む建設機械の旋回装置において、上記ギヤ列の上記複数のギヤのうちの1つのギヤと一体に設けられる差動ギヤ機構を備え、
上記減速機の入力軸に上記差動ギヤ機構を接続し、上記複数のモータは、上記ギヤ列の上方に配置され上記差動ギヤ機構に接続される入出力軸を有する電動モータと、上記ギヤ列の上方において上記電動モータと並設され、上記ギヤ列の上記差動ギヤ機構が設けられるギヤとは異なるギヤに接続される出力軸を有する油圧モータとを含むことを特徴としている。
【0012】
このように構成した
第1の発明は、旋回体の旋回に際して、油圧モータと電動モータの回転力のそれぞれを差動ギヤ機構を介して減速機の入力軸に伝え
て減速機を駆動し、この減速機の出力軸に設けたギヤと旋回輪の内輪の内歯との噛み合いを介して、旋回輪を旋回させることができる。また、旋回体の旋回からの停止に際して、油圧モータにブレーキがかけられて、この油圧モータの回転が阻止された場合でも、差動ギヤ機構を介して電動モータを回転させ、この電動モータを発電機として活用させることができる。
すなわちこの第1の発明は、旋回体の旋回からの停止における電動モータによるエネルギーの再生に際し、ブレーキがかけられた油圧モータに影響を受けることなく、減速機に伝えられる回転力を差動ギヤ機構を介して再生を行う電動モータに円滑に伝え、この電動モータを発電機として駆動させ、その発電によって生じた電力を蓄電装置に蓄えることができる。また、この第1の発明は、減速機と電動モータとを差動ギヤ機構を介して直結したものであるから、ギヤ列の複数のギヤ同志の噛み合い抵抗による再生効率の低下を生じさせることなくエネルギーの再生を行わせることができる。またこ
の第1の発明のモータ配置関係は、減速機の直上に差動ギヤ機構が位置し、この差動ギヤ機構の直上のギヤ
列の部分の上方に電動モータが位置し、この電動モータの横方向のギヤ
列の部分の上方に油圧モータが位置する配置関係となる。したがって、油圧モータの外形形状が電動モータの外形形状よりも大きく設定される場合に、当該旋回装置の周囲に配置される機器や部材の設置状況の影響を受けて、減速機の直上のギヤ
列の部分の上方においては比較的小さなモータ配置空間しか確保できず、減速機の直上のギヤ
列の部分から離れたギヤ
列の部分では比較的大きなモータ配置空間を確保できる状況のときに有効であ
る。
【0013】
また本発明のうちの第2の発明は、走行体と、この走行体上に旋回輪を介して配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する建設機械に備えられ、上記旋回体に設けられ、上記旋回輪の内輪の内歯と噛み合うギヤが取り付けられる出力軸を有し、上記旋回体を旋回させる減速機と、上記減速機を駆動する複数のモータと、これらのモータの回転力を上記減速機の入力軸に伝達可能な複数のギヤを含むギヤ列とを有し、上記複数のモータはエネルギーの再生が可能な電動モータを含む建設機械の旋回装置において、上記ギヤ列の上記複数のギヤのうちの1つのギヤと一体に設けられる差動ギヤ機構を備え、上記減速機の入力軸に接続される上記ギヤ列のギヤとは異なる上記ギヤ列のギヤに上記差動ギヤ機構を設け、上記複数のモータは、上記ギヤ列の上方に配置され、上記差動ギヤ機構に接続される入出力軸を有する電動モータと、上記ギヤ列の下方に配置され、上記差動ギヤ機構に接続される入出力軸を有する別の電動モータとを含むことを特徴としている。
【0014】
このように構成した
第2の発明は、旋回体の旋回に際して、2つの電動モータの回転力のそれぞれを差動ギヤ機構を介して減速機の入力軸に伝えることができる。また、旋回体の旋回からの停止に際して、2つの電動モータのうちの一方にブレーキがかけられて該当する電動モータの回転が阻止された場合でも、差動ギヤ機構を介して他の電動モータを回転させ、発電機として活用させることができる。
すなわちこの第2の発明は、旋回体の旋回からの停止における電動モータによるエネルギーの再生に際し、ブレーキがかけられた電動モータに影響を受けることなく、減速機に伝えられる回転力を差動ギヤ機構を介して再生を行う電動モータに円滑に伝え、この電動モータを発電機として駆動させ、その発電によって生じた電力を蓄電装置に蓄えることができる。この第2の発明に備えられる2つの電動モータとしては、旋回体の旋回に際しての起動を円滑に行わせることができるギヤ列の複数のギヤの歯数比に設定することにより、いわゆる低速モータや高速モータとかの特殊構成のモータの採用を要せずに、標準仕様の電動モータを採用することができる。また
この第2の発明は、減速機の直上のギヤ
列の部分の上方においては電動モータの配置空間を確保できず、減速機の直上のギヤ
列の部分から離れたギヤ
列の部分の上方及び下方に電動モータの配置空間を確保できる状況のときに有効である。
【0015】
また本発明
のうちの第3の発明は、走行体と、この走行体上に旋回輪を介して配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する建設機械に備えられ、上記旋回体に設けられ、上記旋回輪の内輪の内歯と噛み合うギヤが取り付けられる出力軸を有し、上記旋回体を旋回させる減速機と、上記減速機を駆動する複数のモータと、これらのモータの回転力を上記減速機の入力軸に伝達可能な複数のギヤを含むギヤ列とを有し、上記複数のモータはエネルギーの再生が可能な電動モータを含む建設機械の旋回装置において、上記ギヤ列の上記複数のギヤのうちの1つのギヤと一体に設けられる差動ギヤ機構を備え、上記複数のモータは、上記ギヤ列の上方に配置され上記減速機の入力軸に接続される入出力軸を有する電動モータと、上記ギヤ列の上方において上記電動モータと並設され、上記ギヤ列の上記電動モータの上記入出力軸が接続されるギヤとは異なるギヤに設けられる上記差動ギヤ機構に接続される出力軸を有する油圧モータと、上記ギヤ列の下方に上記油圧モータと対向するように配置され、上記差動ギヤ機構に接続される入出力軸を有する別の電動モータとを含むことを特徴としている。
【0016】
このように構成した
第3の発明は、旋回体の旋回に際して、油圧モータと2つの電動モータの回転力のそれぞれを差動ギヤ機構を介して減速機の入力軸に伝えることができる。また、旋回体の旋回からの停止に際して、油圧モータにブレーキがかけられて、この油圧モータの回転が阻止された場合でも、減速機の入力軸に接続される入出力軸を有する電動モータに減速機の回転を伝えて、該当する電動モータを発電機として活用することができる。
すなわちこの第3の発明は、旋回体の旋回からの停止における電動モータによるエネルギーの再生に際し、ブレーキがかけられた油圧モータに影響を受けることなく、減速機に伝えられる回転力を差動ギヤ機構を介して再生を行う電動モータに円滑に伝え、この電動モータを発電機として駆動させ、その発電によって生じた電力を蓄電装置に蓄えることができる。また、この第3の発明は、減速機と、2つの電動モータのうちの1つとを直結したものであるから、ギヤ列の複数のギヤ同志の噛み合い抵抗による再生効率の低下を生じさせることなく再生を行わせることができる。また
この第3の発明は、減速機の直上に位置するギヤ
列の部分の上方に再生に活用される電動モータが配置される構成となるが、油圧モータの外形形状が2つの電動モータそれぞれの外形形状よりも大きく設定される場合に、当該旋回装置の周囲に配置される機器や部材の設置状況の影響を受けて、減速機の直上のギヤ
列の部分の上方においては比較的小さなモータ配置空間しか確保できず、減速機の直上のギヤ
列の部分から離れたギヤ
列の部分の上方では比較的大きなモータ配置空間を確保でき、また、その比較的大きなモータ配置空間の直下のギヤ
列の部分の下方において電動モータの配置空間を確保できる状況のときに有効である。
【0017】
また本発明は、上記第1〜第3の発明のいずれか1つの発明において、上記減速機の上方に配置され上記ギヤ列が収納されるギヤケースを備え、上記差動ギヤ機構を上記ギヤケースの内部に収納させたことを特徴としている。
【0018】
このように構成した本発明は、複数のギヤを含むギヤ列を収納するギヤケースと、差動ギヤ機構とを個別に設けることなく、差動ギヤ機構もギヤケースの内部に収納させるようにしたので、コンパクトなギヤ配列構造を実現させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明
の第1〜第3の発明は、旋回体の旋回からの停止に際して、複数のモータのうちのブレーキがかけられるモータが、そのブレーキによって回転を阻止されても、旋回体から減速機に伝えられた回転力を煩雑な制御を要さずに差動ギヤ機構を介して再生を行う電動モータに円滑に伝え、その電動モータを発電機として活用して電力を蓄えることができる。これにより従来に比べて容易に再生効率を向上させることができる。また、当該建設機械がミニショベル等の小型機械であっても、従来は困難であった再生動作を確実に行わせることができる。
【0020】
また、本発明の第1の発明は、油圧モータの外形形状が電動モータの外形形状よりも大きく設定される場合に、当該旋回装置の周囲に配置される機器や部材の設置状況の影響を受けて、減速機の直上のギヤ列の部分の上方においては比較的小さなモータ配置空間しか確保できず、減速機の直上のギヤ列の部分から離れたギヤ列の部分では比較的大きなモータ配置空間を確保できる状況のときに有効である。
【0021】
また、本発明の第2の発明に備えられる2つの電動モータとしては、旋回体の旋回に際しての起動を円滑に行わせることができるギヤ列の複数のギヤの歯数比に設定することにより、いわゆる低速モータや高速モータとかの特殊構成のモータの採用を要せずに、標準仕様の電動モータを採用することができる。またこの第2の発明は、減速機の直上のギヤ列の部分の上方においては電動モータの配置空間を確保できず、減速機の直上のギヤ列の部分から離れたギヤ列の部分の上方及び下方に電動モータの配置空間を確保できる状況のときに有効である。
【0022】
また、本発明の第3の発明は、減速機と、2つの電動モータのうちの1つとを直結したものであるから、ギヤ列の複数のギヤ同志の噛み合い抵抗による再生効率の低下を生じさせることなく再生を行わせることができる。またこの第3の発明は、減速機の直上に位置するギヤ列の部分の上方に再生に活用される電動モータが配置される構成となるが、油圧モータの外形形状が2つの電動モータそれぞれの外形形状よりも大きく設定される場合に、当該旋回装置の周囲に配置される機器や部材の設置状況の影響を受けて、減速機の直上のギヤ列の部分の上方においては比較的小さなモータ配置空間しか確保できず、減速機の直上のギヤ列の部分から離れたギヤ列の部分の上方では比較的大きなモータ配置空間を確保でき、また、その比較的大きなモータ配置空間の直下のギヤ列の部分の下方において電動モータの配置空間を確保できる状況のときに有効である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る建設機械の旋回装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明に係る旋回装置の第1
,第2,第3実施形態
、及び本発明者らが先に考案した参考例1,2が備えられる建設機械の一例として挙げたミニショベルを示す側面図である。
【0026】
参考例1に係る旋回装置は、建設機械例えば
図1に示すミニショベルに備えられている。このミニショベルは、走行体1と、この走行体1上に旋回輪2を介して配置される旋回体3と、この旋回体3に取り付けられ、土砂の掘削作業等に活用される作業装置4とを備えている。作業装置4は例えば、旋回体3に上下方向の回動可能に取り付けられるブーム5と、このブーム5の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるアーム6と、このアーム6の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるバケット7とを含んでいる。
【0027】
旋回体3の旋回フレーム3aの上方にはフロアプレート8が配置され、このフロアプレート8上には運転席9が設けられている。旋回フレーム3aの後端部には、重量バランスを確保するカウンタウエイト10を備えている。また、運転席9とカウンタウエイト10の間には、エンジン、油圧ポンプ等が収容される機械室11を備えている。
【0028】
なお、後述の本発明の第
1〜第
3実施形態
、及び参考例2に係る旋回装置も、例えば
図1に示すようなミニショベルに備えられている。本発明の第1〜第
3実施形態
、及び参考例1,2に係る旋回装置は、旋回体3上に設けられるものであり、後述するように、複数のモータの回転力のそれぞれを減速機21の入力軸21bに伝達可能なギヤ列28に含まれる複数のギヤ25,26,27のうちの1つのギヤと一体に設けられる差動ギヤ機構30を備え、複数のモータのうちの少なくとも1つのモータを差動ギヤ機構30に接続した構成にしてある。また、本発明の第1〜第
3実施形態
、及び参考例1,2に備えられる旋回装置は、後述するように、減速機21の上方に配置されギヤ列28が収納されるギヤケース29を備え、差動ギヤ機構30もギヤケース29の内部に収納させた構成にしてある。
【0029】
図2は
参考例1に係る旋回装置の要部構成を示す概略図、
図3は
参考例1に備えられる差動ギヤ機構を拡大して示した概略図である。
【0030】
参考例1に係る旋回装置は、
図2に示すように、旋回輪2の内輪の内歯と噛み合うギヤ20が取り付けられる出力軸21aを有し、旋回体3を旋回させる減速機21と、この減速機21を駆動する複数のモータ、例えば油圧モータ22と、エネルギーの再生が可能な電動モータ23と、これらのモータ22,23のそれぞれの回転力を減速機21の入力軸21bに伝達可能な上述した複数のギヤ25,26,27を含むギヤ列28とを有している。
【0031】
このギヤ列28の減速機21の直上に配置されるギヤ25と一体に差動ギヤ機構30を設けてあり、減速機21の入力軸21bに差動ギヤ機構30を接続してある。減速機21の上方に上述したギヤケース29を配置してあり、このギヤケース29の内部に、ギヤ25,26,27を含むギヤ列28と差動ギヤ機構30とを収納させてある。
【0032】
油圧モータ22は、ギヤケース29の上方に配置され差動ギヤ機構30に接続される出力軸22aを有している。すなわち、減速機21の直上にギヤ25と一体に設けられた差動ギヤ機構30が位置し、この差動ギヤ機構30の直上のギヤケース29の部分の上方に油圧モータ22が位置している。
【0033】
ギヤ列28は、差動ギヤ機構30が設けられるギヤ25と噛み合うギヤ26を有し、このギヤ26に噛み合うギヤ27を有し、エネルギーの再生を行う電動モータ、すなわち再生に際し発電機となる電動モータ23は、ギヤ列28の差動ギヤ機構30が設けられるギヤ25とは異なるギヤ27に接続される入出力軸23aを有している。この電動モータ23には、この電動モータ23が発電機として動作して発生させた電力を蓄える蓄電装置24が接続されている。
【0034】
差動ギヤ機構30は、
図3に示すように、ギヤ列28のギヤ25に一体に設けられるケース35と、このケース35に収納され、ケース35と一体に設けられるピニオンシャフト33と、ケース35に収納され油圧モータ22の出力軸22aに接続されるサイドギヤ31、及び減速機21の入力軸21bに接続されるサイドギヤ
34と、それぞれケース35に収納されて互いに対向するように回転自在にピニオンシャフト33に支持され、サイドギヤ31とサイドギヤ34にそれぞれ噛み合う2つのピニオンギヤ32とを含んでいる。
【0035】
このように構成した
参考例1は、旋回体3の旋回に際して、油圧モータ22の回転力を、出力軸22aから差動ギヤ機構30のサイドギヤ31、ピニオンギヤ32、サイドギヤ34を介して減速機21の入力軸21bに伝えることができる。また、電動モータ23の回転力を、入出力軸23からギヤ列28のギヤ27,26を介してギヤ25に伝え、差動ギヤ機構30のケース35及びピニオンシャフト33を
図2の紙面と直交する平面内に回転させてピニオンギヤ32及びサイドギヤ34を回転させることにより、減速機21の入力軸21bに伝えることができる。したがって、油圧モータ22と電動モータ23の協働により、減速機21を駆動させることができる。この減速機21の駆動により、減速機21の出力軸21aに設けたギヤ20が回転し、このギヤ20と旋回輪2の内輪の内歯との噛み合いを介して旋回体3を旋回させることができる。
【0036】
また、旋回体3の旋回からの停止に際して、油圧モータ22にブレーキがかけられて、この油圧モータ22の回転が阻止され、この油圧モータ22の出力軸22a及び差動ギヤ機構30のサイドギヤ31の回転が阻止された場合、旋回体3からギヤ20、及び出力軸21aを介して減速機21に伝えられた回転力を、この減速機21の入力軸21b、差動ギヤ機構30のサイドギヤ34、ピニオンギヤ32を介して、ピニオンシャフト33及びケース35の
図2の紙面と直交する平面内の回転として伝えることができる。したがって、ケース35の回転と一体的にギヤ列28のギヤ25が回転し、このギヤ25と噛み合うギヤ26を介してギヤ27が回転し、このギヤ27に接続された電動モータ23の入出力軸23aが回転する。
【0037】
すなわち、この
参考例1は、旋回体3の旋回からの停止における電動モータ23によるエネルギーの再生に際し、ブレーキがかけられた油圧モータ22の影響を受けることなく、減速機21に伝えられた回転力を煩雑な制御を要さずに、電動モータ23に円滑に伝えて、この電動モータ23を発電機として駆動させ、その発電によって生じた電力を蓄電装置24に蓄えることができる。この蓄電装置24に蓄えられた電力は、旋回体3の旋回起動時等に際して電動モータ23を駆動するエネルギーとして活用することができる。
【0038】
このように
参考例1によれば、エネルギーの再生時に、差動ギヤ機構30を介して電動モータ23を発電機として駆動させ、容易に再生効率を向上させることができる。また、従来では困難であった小型機械から成る当該ミニショベルにおけるエネルギーの再生も確実に行わせることができる。
【0039】
また、
参考例1によれば、複数のギヤ25,26,27を含むギヤ列28を収納するギヤケース29と、差動ギヤ機構30とを個別に設けることなく、差動ギヤ機構30もギヤケース29の内部に収納させるようにしたので、コンパクトなギヤ配列構造を実現させることができる。
【0040】
また、
参考例1におけるモータの配置関係は、減速機21の直上に差動ギヤ機構30が位置し、この差動ギヤ機構30の直上のギヤケース29の部分の上方に油圧モータ22が位置し、この油圧モータ22の横方向のギヤケース29の部分の上方に再生を行う電動モータ23が位置する配置関係となる。したがって、油圧モータ22の外形形状が電動モータ23の外形形状よりも大きく設定される場合に、当該旋回装置の周囲に配置される機器や部材の設置状況の影響を受けて、減速機21の直上のギヤケース29の部分の上方に比較的大きなモータ配置空間を確保でき、減速機21の直上のギヤケース29の部分から離れたギヤケース29の部分の上方では比較的小さな配置空間しか確保できない状況のときに有効である。
【0041】
図4は本発明の第
1実施形態の要部構成を示す概略図である。
【0042】
この
図4に示す第
1実施形態は、減速機21の入力軸21bに差動ギヤ機構30を接続し、減速機21を駆動可能な複数のモータが、
ギヤ列28、すなわちギヤケース29の上方に配置され差動ギヤ機構30に接続される入出力軸23aを有し、エネルギーの再生を行う電動モータ23と、ギヤケース29の上方において電動モータ23と並設され、ギヤ列28の差動ギヤ機構30が設けられるギヤ25とは異なるギヤ27に接続される出力軸22aを有する油圧モータ22を含む構成にしてある。差動ギヤ機構30の構成を含むその他の構成は、上記
参考例1と同等である。
【0043】
このように構成した第
1実施形態は、旋回体3の旋回に際して、油圧モータ22の回転力を、ギヤ列28のギヤ27,26を介してギヤ25に伝え、差動ギヤ機構30の上述したケース35及びピニオンシャフト33を回転させてサイドギヤ34を回転させることにより減速機21の入力軸21bに伝えることができる。また、電動モータ23の回転力を、入出力軸23aから差動ギヤ機構30の上述したサイドギヤ31、ピニオンギヤ32、サイドギヤ34を介して減速機21の入力軸21bに伝えることができる。したがって、
参考例1と同様に、油圧モータ22と電動モータ23の協働により、減速機21を駆動させ、これにより旋回体3を旋回させることができる。
【0044】
また、旋回体3の旋回からの停止に際して、油圧モータ22にブレーキがかけられて、この油圧モータ22の回転が阻止された場合、旋回体3からギヤ20、及び出力軸21aを介して減速機21の入力軸21b、差動ギヤ機構30の上述したサイドギヤ34、ピニオンギヤ32、サイドギヤ31を介して電動モータ23の入出力軸23の回転として伝えることができる。したがって、この第
1実施形態も、上述した
参考例1と同様に旋回体3の旋回からの停止に際し、煩雑な制御を要することなく減速機21に伝えられた回転力を、再生を行う電動モータ23に円滑に伝えることができ、容易に再生効率を向上させることができる。また、ミニショベルにあっても確実にエネルギーの再生を行わせることができる。さらに、ギヤケース29内に差動ギヤ機構30を収納させたことにより、
参考例1におけるのと同様の作用効果が得られる。
【0045】
また、この第
1実施形態のモータ配置関係は、減速機21の直上に差動ギヤ機構30が位置し、この差動ギヤ機構30の直上のギヤケース29の部分の上方に電動モータ23が位置し、この電動モータ23の横方向のギヤケース29の部分の上方に油圧モータ22が位置する配置関係となる。したがって、油圧モータ22の外形形状が電動モータ23の外形形状よりも大きく設定される場合、当該旋回装置の周囲に配置される機器や部材の設置状況の影響を受けて、減速機21の直上のギヤケース29の部分の上方においては比較的小さなモータ配置空間しか確保できず、減速機21の直上のギヤケース29の部分から離れたギヤケース29の部分の上方では比較的大きなモータ配置空間を確保できる状況のときに有効である。
【0046】
図5は
参考例2の要部構成を示す概略図である。
【0047】
この
図5に示す
参考例2は、減速機21の入力軸21bに差動ギヤ機構30を接続し、減速機21を駆動可能な複数のモータが、ギヤケース29の上方に配置され差動ギヤ機構30に接続される入出力軸40aを有する電動モータ40と、ギヤケース29の上方において電動モータ40と並設され、ギヤ列28の差動ギヤ機構30が設けられるギヤ25とは異なるギヤ27に接続される入出力軸41aを有する別の電動モータ41とを含む構成にしてある。また、電動モータ40と電動モータ41の双方を蓄電装置42に接続させてある。差動ギヤ機構30の構成を含むその他の構成は
参考例1と同等である。
【0048】
このように構成した
参考例2は、旋回体3の旋回に際して、電動モータ40の回転力を入出力軸40aから差動ギヤ機構30の上述したサイドギヤ31、ピニオンギヤ32、サイドギヤ34を介して減速機21の入出力軸21bに伝えることができる。また、別の電動モータ41の回転力を、ギヤ列28のギヤ27,26を介してギヤ25に伝え、差動ギヤ機構30の上述したケース35及びピニオンシャフト33を回転させてサイドギヤ34を回転させることにより減速機21の入力軸21bに伝えることができる。したがって、
参考例1と同様に、電動モータ40と電動モータ41の協働により減速機21を駆動させ、これにより旋回体3を旋回させることができる。
【0049】
また、旋回体3の旋回からの停止に際して、例えば電動モータ41にブレーキがかけられて、この電動モータ41の回転が阻止された場合、旋回体3からギヤ20、及び出力軸21aを介して減速機21に伝えられた回転力を、この減速機21の入力軸21a、差動ギヤ機構30のサイドギヤ34、ピニオンギヤ32、サイドギヤ31を介して電動モータ40の入出力軸40aの回転として伝えることができる。したがって、この
参考例2も、上述した
参考例1と同様に、旋回体3の旋回からの停止に際し、煩雑な制御を要することなく減速機21に伝えられた回転力を、エネルギーの再生を行う電動モータ40に円滑に伝え、電動モータ40を発電機として電力を発生させ、その発生させた電力を蓄電装置42に蓄え、容易に再生効率を向上させることができる。また、ミニショベルにあっても確実にエネルギーの再生を行わせることができる。さらに、ギヤケース29内に差動ギヤ機構30を収納させたことにより、
参考例1におけるのと同等の作用効果が得られる。
【0050】
また、この
参考例2に備えられる2つの電動モータ40,41としては、旋回体3の旋回に際しての起動を円滑に行わせることができるギヤ列28のギヤ25,27の歯数比に予め設定することにより、いわゆる低速モータや高速モータとかの高価な特殊構成のモータの採用を要せずに、標準仕様の比較的安価な電動モータを採用することができる。
【0051】
図6は本発明の第
2実施形態の要部構成を示す概略図である。
【0052】
この
図6に示す第
2実施形態は、減速機21の入力軸21bに接続されるギヤ列28のギヤ25とは異なるギヤ27に差動ギヤ機構30を設け、減速機21を駆動可能な複数のモータが、
ギヤ列28、すなわちギヤケース29の上方に配置され、差動ギヤ機構30に接続される入出力軸50aを有する電動モータ50と、ギヤケース29の下方に配置され、差動ギヤ機構30に接続される入出力軸51aを有する別の電動モータ51とを含む構成にしてある。また、電動モータ50と電動モータ51の双方を蓄電装置52に接続させてある。差動ギヤ機構30の構成を含むその他の構成は
参考例1と同等である。
【0053】
このように構成した第
2実施形態は、旋回体3の旋回に際して、電動モータ50の回転力、及び電動モータ51の回転力を、電動モータ50の入出力軸50a、及び電動モータ51の入出力軸51aから差動ギヤ機構30、この差動ギヤ機構30が設けられるギヤ27、ギヤ26、及びギヤ25を介して減速機21の入力軸21bに伝えることができる。したがって、
参考例2と同様に、電動モータ50と電動モータ51との協働により減速機21を駆動させ、これにより旋回体3を旋回させることができる。
【0054】
また、旋回体3の旋回からの停止に際して、例えば電動モータ51にブレーキがかけられて、この電動モータ51の回転が阻止された場合、旋回体3からギヤ20、及び出力軸21aを介して減速機21に伝えられた回転力を、この減速機21の入力軸21a、ギヤ列28のギヤ25、ギヤ26、ギヤ27、このギヤ27が一体に設けられた差動ギヤ機構30のケース35及びピニオンシャフト33の回転動作、ピニオンギヤ32、サイドギヤ31の回転を介して、電動モータ50の入出力軸50aの回転として伝えることができる。したがって、この第
2実施形態も、上述した
参考例2と同様に、旋回体3の旋回からの停止に際し、煩雑な制御を要することなく減速機21に伝えられた回転力を、再生を行う電動モータ50に円滑に伝え、電動モータ50を発電機として電力を発生させ、その電力を蓄電装置52に蓄え、容易に再生効率を向上させることができ、
参考例2と同等の作用効果が得られる。
【0055】
また、この第
2実施形態は、減速機21の直上のギヤケース29の部分の上方においては電動モータの配置空間を確保できず、減速機21の直上のギヤケース29の部分から離れたギヤケース29の部分の上方及び下方に電動モータの配置空間を確保できる状況のときに有効である。
【0056】
図7は本発明の第
3実施形態の要部構成を示す概略図である。
【0057】
この
図7に示す第
3実施形態は、減速機21を駆動可能な複数のモータが、
ギヤ列28、すなわちギヤケース29の上方に配置され減速機21の入力軸21bに接続される入出力軸62aを有する電動モータ62と、ギヤケース29の上方において電動モータ62と並設され、ギヤ列28の電動モータ62の入出力軸62aが接続されるギヤ25とは異なるギヤ27に設けられる差動ギヤ機構30に接続される出力軸60aを有する油圧モータ60と、ギヤケース29の下方に油圧モータ60と対向するように配置され、差動ギヤ機構30に接続される入出力軸61aを有する別の電動モータ61とを含む構成にしてある。また、電動モータ61と電動モータ62の双方を蓄電装置63に接続させてある。差動ギヤ機構30の構成を含むその他の構成は
参考例1と同等である。
【0058】
このように構成した第
3実施形態は、旋回体3の旋回に際して、電動モータ62の回転力を、入出力軸62aを介して減速機21の入力軸21bに伝えることができる。また、油圧モータ60の回転力と電動モータ61の回転力を、油圧モータ60の出力軸60a及び電動モータ61の入出力軸61aから差動ギヤ機構30、この差動ギヤ機構30が設けられるギヤ27、ギヤ26、及びギヤ25を介して減速機21の入力軸21bに伝えることができる。したがって、
参考例1と同様に、油圧モータ60と、電動モータ61,62との協働により減速機21を駆動させ、これにより旋回体3を旋回させることができる。
【0059】
また、旋回体3の旋回からの停止に際して、油圧モータ60にブレーキがかけられて、この油圧モータ60の回転が阻止された場合でも、差動ギヤ機構30を設けたことにより、ギヤ列28のギヤ25,26,27の回転が可能となる。したがって、旋回体3からギヤ20、及び出力軸21aを介して減速機21に伝えられた回転力を、ギヤ25に接続された減速機21の入力軸21aを介して電動モータ62の入出力軸62aの回転として伝えることができる。したがって、この第
3実施形態も
参考例1と同様に、旋回体3の旋回からの停止に際し、煩雑な制御を要することなく減速機21に伝えられた回転力をエネルギーの再生を行う電動モータ62に円滑に伝え、電動モータ60を発電機として電力を発生させ、その発生させた電力を蓄電装置63に蓄え、容易に再生効率を向上させることができ、
参考例1と同等の作用効果が得られる。なお、エネルギーの再生時に電動モータ61も再生用の電動モータとして活用可能であるが、電動モータ61と電動モータ62の双方にブレーキをかけない場合、ギヤ列28のギヤ25,26,27同志の噛み合い抵抗により、電動モータ61の負荷が電動モータ62の負荷よりも重くなることから、実際には負荷の軽い電動モータ62が再生用の電動モータとして活用される。
【0060】
すなわち、この第
3実施形態は、減速機21の入力軸21bと電動モータ62の入出力軸62aとを直結したものであるから、ギヤ列28のギヤ25,26,27同志の噛み合い抵抗による再生効率の低下を生じさせることなく再生を行わせることができ、優れた再生効率を確保できる。
【0061】
また、この第
3実施形態は、油圧モータ60の外形形状が2つの電動モータ61,62のそれぞれの外形形状よりも大きく設定される場合に、当該旋回装置の周囲に配置される機器や部材の設置状況の影響を受けて、減速機21の直上のギヤケース29の部分の上方においては比較的小さなモータ配置空間しか確保できず、減速機21の直上のギヤケース29の部分から離れたギヤケース29の部分の上方に比較的大きなモータ配置空間を確保でき、また、その比較的大きなモータ配置空間を確保できる箇所の直下のギヤケース29の部分の下方において電動モータの配置空間を確保できる状況のときに有効である。