特許第5789222号(P5789222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5789222カーボンナノチューブを含む帯電ローラ表面コーティング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789222
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブを含む帯電ローラ表面コーティング
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20150917BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150917BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20150917BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G03G15/02 101
   C09D7/12
   C09D201/00
   C09D5/24
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-114933(P2012-114933)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-3577(P2013-3577A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】13/161,216
(32)【優先日】2011年6月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ピー・ギルマーティン
(72)【発明者】
【氏名】リャン−ビー・リン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌ・エム・コバル
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・エム・スタッキー
【審査官】 杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−233904(JP,A)
【文献】 特開2004−13087(JP,A)
【文献】 特開2010−204135(JP,A)
【文献】 特開2002−323792(JP,A)
【文献】 特開2007−23149(JP,A)
【文献】 特開2005−62475(JP,A)
【文献】 特開2001−22156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝導性基材と、
前記伝導性基材にわたって配設された外表面コーティングであって、前記外表面コーティングは、1つ以上のポリマーと組み合わせた複数のカーボンナノチューブ(CNT)を含み、μm〜0μmの範囲の表面ラフネスRを提供する、外表面コーティングと、を含む帯電部材であって、
前記1つ以上のポリマーは、熱可塑性であり、重量平均分子量が10,000〜80,000の範囲であるポリカプロラクトン(PCL)を含み、
前記1つ以上のポリマーは、20nm〜10μmの範囲の平均粒径を有するポリマー粒子を形成し、
前記外表面コーティングは、1μm〜100μmの範囲の厚さを有する、前記帯電部材
【請求項2】
前記複数のCNTが、0nm〜0nmの範囲の平均外側直径、または0m/g〜,000m/gの範囲の表面積を有する、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記複数のCNTが0〜00の範囲のアスペクト比を有する、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記複数のCNTが、外表面コーティングの.1重量%〜重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記外表面コーティングが、Ω/□〜10Ω/□の範囲の表面抵抗率を有する、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項6】
帯電部材を形成する方法であって、
複数のカーボンナノチューブ(CNT)および1つ以上のポリマーを含む分散液を提供する工程であって、
前記1つ以上のポリマーが、熱可塑性であり、重量平均分子量が10,000〜80,000の範囲であるポリカプロラクトンを含む前記工程と
外側ベース層にこの分散液を適用する工程であって、前記外側ベース層が、伝導性基材にわたって提供される工程と
前記適用された分散液を固化して、外側ベース層上に外表面コーティングを形成して、前記外表面コーティングが、μm〜0μmの範囲の表面ラフネスRを有し、1μm〜100μmの範囲の厚さを有するようにする工程を含む、方法。
【請求項7】
前記複数のCNTおよび1つ以上のポリマーを含む分散液が、%〜0%の範囲の固形分重量%を有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のポリマーが、前記外表面コーティング内に分散された0nm〜0μmの範囲の平均粒径を有する複数のポリマー粒子を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記外側ベース層が、Ω/□〜13Ω/□の範囲の表面抵抗率を有する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
典型的な静電写真式再現装置において、複写されるべきオリジナルの光画像は、感光性部材上に静電潜像の形態で記録される。この静電潜像を、続いて、トナーと一般に称される検電熱可塑性樹脂粒子の適用によって視覚可能にする。詳細には、感光性部材を帯電させ、次いで光学系または画像入力装置からの光に曝し、その上に静電潜像を形成する。トナー粒子が光伝導性部材の表面に堆積された後、それらがコピーシートに転写されるか、または中間転写部材に転写され、続いてコピーシートに転写される。次いで定着プロセスによってコピーシートに永続的な画像が形成される。
【0002】
帯電ローラ(BCR)は、多くの場合、それらが、スコロトロン帯電器と比較して、オゾンをほとんど放出せず、より環境に優しいので、感光性部材をコロナ帯電するための帯電器として使用される。しかし、BCR帯電は、感光性部材および他の関連する印刷機部材と直接接触することを必要とする。この直接接触により、応力がBCRの表面ならびにBCRと直接接触する関連印刷機部材に加えられる。この場合に表面変形(結果としてプリント欠陥を生じるストリーク、摩耗およびくぼみ様変形を含む)が形成される。例えば、BCRの表面に構築された劣化および/またはデブリの結果として、暗色ストリークおよび白色/暗色スポットが現れ得る。ひいてはBCRおよび関連する印刷機部材の耐用年数が短縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
耐用年数を延ばすために、所望の表面、電気的および/または機械的特性を有する帯電部材のための材料および方法を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
種々の実施形態によれば、本教示は、帯電部材を含む。この帯電部材は、電気バイアスを受容するための伝導性基材、およびこの伝導性基材上に配設された外表面コーティングを含むことができる。外表面コーティングは、1つ以上のポリマーと組み合わせた複数のカーボンナノチューブ(CNT)を含むことができ、約2μm〜約20μmの範囲の表面ラフネスRを与える。1つ以上のポリマーは、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリオレフィン、ポリイミド、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、共役ジエンモノマー、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導されるコポリマー、フルオロポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0005】
種々の実施形態によれば、本教示はまた、複数のカーボンナノチューブ(CNT)および1つ以上のポリマーを含む分散液をまず提供することによる、帯電部材を形成する方法も含む。1つ以上のポリマーは、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリオレフィン、ポリイミド、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、共役ジエンモノマー、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導されるコポリマー、フルオロポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択できる。分散液は、伝導性基材にわたって提供された外側ベース層に適用でき、次いで固化されて、外側ベース層に外表面コーティングを形成して、形成された外表面コーティングが、約2μm〜約20μmの範囲の表面ラフネスRを有するようにできる。
【0006】
種々の実施形態によれば、本教示はさらに、帯電部材を含む帯電デバイスを含む。帯電部材は、伝導性基材および伝導性基材にわたって配設された外表面コーティングを含むことができる。外表面コーティングは、1つ以上のポリマーと組み合わせた複数のカーボンナノチューブ(CNT)を含むことができる。外表面コーティングは、約10Ω/□〜約1010Ω/□の範囲の表面抵抗率、および約2μm〜約20μmの範囲の表面ラフネスRを有することができる。1つ以上のポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリオレフィン、ポリイミド、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、共役ジエンモノマー、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導されるコポリマー、フルオロポリマー、およびこれらの組み合わせを含むことができる。1つ以上のポリマーは、ポリマーマトリックス、複数のポリマー粒子、およびそれらの組み合わせの形態であることができる。
【0007】
種々の実施形態によれば、本教示はさらに、帯電部材を用いることによる帯電方法を含む。帯電部材は、伝導性基材および伝導性基材にわたって配設された外表面コーティングを含むことができる。外表面コーティングは、1つ以上のポリマーと組み合わせた複数のカーボンナノチューブ(CNT)を含むことができる。外表面コーティングは、約10Ω/□〜約1010Ω/□の範囲の表面抵抗率、および約2μm〜約20μmの範囲の表面ラフネスRを有することができる。次いで帯電部材の伝導性基材は、電気的にバイアスをかけることができ、帯電部材と接触した状態の感光性部材を帯電する。
【0008】
前述の一般的な説明および次の詳細な説明の両方が例示的および説明的なものにすぎず、特許請求される本教示の制限するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本教示の種々の実施形態による種々の例示的な帯電デバイスを示す。
図1B図1Bは、本教示の種々の実施形態による種々の例示的な帯電デバイスを示す。
図1C図1Cは、本教示の種々の実施形態による種々の例示的な帯電デバイスを示す。
図2A図2Aは、本教示の種々の実施形態による帯電部材の種々の例示的な外表面コーティングを示す。
図2B図2Bは、本教示の種々の実施形態による帯電部材の種々の例示的な外表面コーティングを示す。
【0010】
図の詳細の一部は簡略化されており、厳密な構造上の正確さ、詳細および規模を維持することよりも、実施形態の理解を深めるために描かれていることに留意されたい。
【0011】
図1A〜1Cは、本教示の種々の実施形態に従う種々の例示的な帯電デバイスを示す。例えば、図1A〜1Cのそれぞれのデバイスは、感光性部材、例えば光伝導性ドラム110を含むことができ、この部材は帯電器によってその表面を帯電させることができ、帯電器には電源108から電圧が供給され得る。帯電器は、例えば図1A〜1Cに示されるように帯電ローラ120A〜Cの形態での帯電部材であることができるが、当業者は、本教示の種々の実施形態に従って、帯電ベルト、シート、フィルム、またはドレルト(ベルトとドラムとの中間物)を含む他のタイプの帯電部材を使用できることを理解するであろう。従って、ローラ、ベルトおよび/またはドレルトの形態での種々の伝導性基材は、帯電デバイスにおける帯電部材に使用できる。
【0012】
それぞれの例示的な帯電ローラ120A〜Cは、伝導性基材、例えば伝導性コア112にわたって配設された外表面コーティング129を含むことができる。図1A〜1Cに示されるように、帯電ローラ120A〜Cは回転状態にある間、DC電圧および場合によりAC電流が、電源108から帯電ローラ120A〜Cの伝導性コア121に印加され、感光性ドラム110を帯電できる。
【0013】
図1A〜1Cにおける各帯電部材120A〜Cは、例示的な光伝導性ドラム110と接触し続けるが、当業者は、帯電部材120A〜Cは、帯電されるべき誘電体受容器または他の好適な部材を帯電するために使用できることを理解する。加えて、光伝導性ドラムを用いる代わりに、光伝導性部材は、ベルト、フィルム、ドレルト、または他の既知の光伝導性部材の形態であることができる。
【0014】
一実施形態では、図1Aの帯電ローラ120Aは、本教示の種々の実施形態に従って、伝導性コア121およびこの伝導性コア121に直接提供される外表面コーティング129を含むことができる
【0015】
別の実施形態において、開示された外表面コーティング129は、図1Bに示されるように、伝導性コア112に配設される外側ベース層123を有する従来の帯電部材に適用される保護層であることができる。詳細には、図1Bに示される例示的な帯電ローラ120Bは、図1Aの要素すべてを含むことができ、さらに内側伝導性コア121と外表面コーティング129との間に配置された任意の外側ベース層123を含むことができる。実施形態において、外側ベース層123は、従来のBCRの表面層であることができる。
【0016】
実施形態において、中間層および/または接着剤層のような他の層は、図1A〜1Bの隣接層間、例えば伝導性コア121と外側ベース層123との間、および/または外側ベース層123と開示された外表面コーティング129との間、および/または伝導性コア121と開示された外表面コーティング129との間に(外側ベース層123が任意である場合)、配設できる。例えば、図1Cに示されるように、帯電ローラ120Cは、外側ベース層123に提供された外表面コーティング129を含むことができ、これが伝導性コア121と外側ベース層123との間に配設された1つ以上の中間層および接着剤層の任意の層125を有する伝導性コア121にわたって与えられる。実施形態において、任意層125は、帯電ローラのいずれかの隣接層間に配置されることができる。
【0017】
図1A〜1Cにおける伝導性コア121は、電極および各帯電ローラ120A〜Cの支持部材として作用できる。伝導性コア121は、アルミニウムの金属または金属合金、銅合金、ステンレススチールなど、クロムまたはニッケルめっきでコーティングされた鉄、および/または電気伝導性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない電気伝導性材料から形成できる。電気伝導性支持体の直径は、例えば約1mm〜約20cm、または約3mm〜約10cm、または約5mm〜約2cmであることができる。当業者に既知のいずれかの好適な伝導性コアまたは基材は、本教示の種々の実施形態に従って使用できる。
【0018】
外側ベース層123は、例えばイソプレン、クロロプレン、エピクロロヒドリン、ブチルエラストマー、ポリウレタン、シリコーンエラストマー、フッ素エラストマー、スチレン−ブタジエンエラストマー、ブタジエンエラストマー、ニトリルエラストマー、エチレンプロピレンエラストマー、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドコポリマー、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテルコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーまたはゴム(NBR)、天然ゴムなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる材料から形成できる。外側ベース層123は、約10mm〜約20cm、例えば約50mm〜約3cmの厚さを有することができる。外側ベース層123は、約10Ω/□〜約1013Ω/□、または約10Ω/□〜約1011Ω/□、または約10Ω/□〜約1010Ω/□の範囲の電気的表面抵抗率を有することができる。実施形態において、外側ベース層123の寸法および/または電気的、機械的、および/または他の特徴は制限されない。
【0019】
任意の中間層および/または接着剤層は、開示された帯電部材の所望の特性および性能目的を達成するために適用できる。例示的な中間層は、エラストマー層、例えばシリコーン、EPDM、ウレタン、エピクロロヒドリンなどが挙げられる材料から形成された中間伝導性ゴム層であることができる。例示的な接着剤層は、例えばエポキシ樹脂およびポリシロキサンから形成できる。接着剤としては、知的財産権を有する材料、例えばTHIXON403/404、Union Carbide A−1100、Dow H41、Dow TACTIX740、Dow TACTIX741、およびDow TACTIX742を挙げることができる。
【0020】
いずれかの好適な充填剤材料が、帯電部材120A〜Cのそれぞれの層(外側ベース層123、中間層、接着剤層、および/または外表面コーティング129を含む)に含まれることができる。例示的な充填剤材料としては、カーボンブラック、例えばKetjen Blackおよびアセチレンブラック、熱分解炭素、グラファイト、金属または金属合金、例えばアルミニウム、銅、ニッケルおよびステンレススチール、金属酸化物、ドープ酸化金属、例えば酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体および酸化スズ−酸化インジウム固溶体、電気伝導性プロセスによって処理された表面を有する絶縁材料など、テトラエチルアンモニウムの過塩素酸塩または塩素酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムなど、アルカリ金属、例えばリチウムおよびマグネシウムの過塩素酸塩または塩素酸塩、およびアルカリまたはアルカリ土類金属の塩など、および/またはこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
実施形態において、帯電ローラを用いる代わりに、例えばローラ120A〜Cの材料および構造に対応する種々の帯電ベルトまたはシートまたはドレルトを、本教示の種々の実施形態に従って感光性部材または他の構成要素を帯電するために使用できる。
【0022】
各帯電部材120A〜Cについて開示された外表面コーティング129は、1つ以上のポリマーと組み合わせた少なくとも複数のカーボンナノチューブ(CNT)を含むことができる。例えば、図2A〜2Bは、本教示の種々の実施形態に従う種々の例示的な外表面コーティング129A〜Bを記載する。示されるように、1つ以上のポリマーは、図2A〜2Bに示されるポリマーマトリックス280Aおよび/または280を形成でき、および/または図2Bに示されるようにポリマー粒子280Bであることができる。ポリマー粒子280Bは、外表面コーティング129B内に分散された、約20nm〜約10μm、または約100nm〜約2μm、または約300nm〜約1μmの範囲の平均粒径を有することができる。CNTは、伝導性充填剤として使用できる。
【0023】
本明細書で使用される場合、特に指示のない限り、用語「カーボンナノチューブ」またはCNTは、約100ナノメートル以下の少なくとも1つのマイナー寸法、例えば幅または直径を有する細長い炭素材料を指す。CNTは、約10nm〜約90nm、または約15nm〜約70nm、または約20nm〜約50nmの範囲の平均外側直径、約20m/g〜約1,000m/g、または約100m/g〜約800m/g、または約200m/g〜約600m/gの範囲の平均表面積、および約10〜約300、または約20〜約200、または約30〜約100の範囲の平均アスペクト比を有することができるが、CNTの寸法は制限されない。
【0024】
1つの実施形態において、CNT205は、グラファイトの1原子厚さ層の、いわゆるグラフェンシートと考えられることができ、ナノメートルサイズのシリンダー、チューブまたは他の形状に巻き上げられることができる。実施形態において、CNTとしては、単一壁カーボンナノチューブ(SWCNT)、多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)、および/またはそれらの種々の官能化されたおよび誘導体化されたフィブリル形態を挙げることができる。
【0025】
外表面コーティング129はまた、1つ以上のポリマーを含むことができる。例示的なポリマーとしては、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリオレフィン、ポリイミド、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、共役ジエンモノマー、ビニル芳香族モノマー、およびエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導されるコポリマー、フルオロポリマーおよびこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0026】
例示的な実施形態において、ポリカプロラクトンは、熱可塑性であることができ、約10,000〜約80,000、例えば約20,000〜約50,000、または約25,000〜約45,000の範囲の重量平均分子量を有することができる。熱可塑性ポリカプロラクトンの市販例としては、Capa(登録商標)6250およびCapa(登録商標)6100(Perstorp,SwedenのPerstorp ABおよび/またはToledo,OhioのPerstorp USA)を挙げることができる。
【0027】
別の例示的な実施形態において、共役ジエンモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび/またはエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導されるコポリマーとしては、スチレン−ブタジエン(SB)コポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン(NBR)コポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ターポリマーなど、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。ある実施形態において、外表面コーティング129、129A/Bのために使用されるポリマーは、熱可塑性アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ターポリマーであることができる。アクリロニトリルは、ABSターポリマーの約15重量%〜約35重量%で含まれることができる。ブタジエンは、ABSターポリマーの約5重量%〜約30重量%で含まれることができる。スチレンは、ABSターポリマーの約40重量%〜約60重量%で含まれることができる。ABSコポリマーの市販例としては、例えばMiddlebury,CTのChemtura Corp.からのBlendex(登録商標)200を挙げることができる。
【0028】
種々のポリウレタンは、外表面コーティング129、129A/Bのための熱可塑性または熱硬化性ポリマーとして本明細書で好適に使用できる。実施形態において、好適なポリウレタンは、ポリアクリレートおよびポリイソシアネートから誘導できる。好適なポリウレタンとしては、ポリアスパラギン酸エステルおよびイソシアネートの反応生成物(「2Kウレタン」)、ヒドロキシ官能性ポリアクリレートおよびイソシアネートの反応生成物など、およびこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。ポリアクリレートの市販例としては、Desmophen(登録商標)NH1120およびDesmophen(登録商標)A450BA(Leverkusen,GermanyのBayer Material Science AG)を挙げることができる。イソシアネートの市販例としては、Desmodur(登録商標)BL3175A(Leverkusen,GermanyのBayer Material Science AG)を挙げることができる。
【0029】
種々のフェノール樹脂は、外表面コーティング129、129A/Bのためのポリマーとして本明細書で使用できる。本明細書で使用される場合、用語「フェノール樹脂」は、酸性または塩基性触媒の存在下、アルデヒドとフェノール供給源との縮合生成物を指す。
【0030】
フェノール供給源は、例えば、フェノール、アルキル置換されたフェノール、例えばクレゾールおよびキシレノール、ハロゲン置換されたフェノール、例えばクロロフェノール、多価フェノール、例えばレソルシノールまたはピロカテコール、多価フェノール、例えばナフトールおよびビスフェノールA、アリール置換されたフェノール、シクロアルキル置換されたフェノール、アリールオキシ置換されたフェノールなど、およびこれらの組み合わせであることができる。種々の実施形態において、フェノール供給源は、フェノール、2,6−キシレノール、o−クレゾール、p−クレゾール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2,3,4−トリメチルフェノール、3−エチルフェノール、3,5−ジエチルフェノール、p−ブチルフェノール、3,5−ジブチルフェノール、p−アミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、3,5−ジシクロヘキシルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クロチルフェノール、3,5−ジメトキシフェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、p−エトキシフェノール、p−ブトキシフェノール、3−メチル−4−メトキシフェノール、p−フェノキシフェノール、多環フェノール、例えばビスフェノールA、およびこれらの組み合わせであることができる。
【0031】
フェノール系樹脂を製造する際に使用するためのアルデヒドは、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、パラアルデヒド、グリオキザール、フルフルアルデヒド、プロピノンアルデヒド、ベンズアルデヒドおよびこれらの組み合わせであることができる。一実施形態では、アルデヒドはホルムアルデヒドであることができる。
【0032】
フェノール樹脂の非限定例としては、ジシクロペンタジエンタイプのフェノール系樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。フェノール樹脂の他の非限定例としては、アルコール可溶性レゾールタイプのフェノール樹脂、例えばPHENOLOTE(登録商標)J−325(Tokyo,JapanのDIC Corp)、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、およびクレゾールを有するホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(登録商標)29159および29101(OxyChem Co.)およびDURITE(登録商標)97(Borden Chemical)、またはアンモニア、クレゾール、およびフェノールを有するホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(登録商標)29112(OxyChem Co.)、または4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノールを有するホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(登録商標)29108および29116(OxyChem Co.)、またはクレゾールおよびフェノールを有するホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(商標)29457(OxyChem Co.)、DURITE(登録商標)SD−423A、SD−422A(Borden Chemical)、またはフェノールおよびp−tert−ブチルフェノールを有するホルムアルデヒドポリマー、例えばDURITE(登録商標)ESD556C(Border Chemical)を挙げることができる。
【0033】
実施形態において、フェノール樹脂は、そのまま使用でき、またはそれらは修飾されることができる。例えば、フェノール樹脂は、好適な可塑剤で修飾でき、可塑剤としては、例えば、ポリビニルブチラール、ナイロン樹脂、熱硬化性アクリル系樹脂、ポリビニルホルマール、アルキド、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂(ビスフェノールA、エピクロロヒドリンポリマーなど)、ポリアミド、ポリアクリレート、オイルなど、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。種々の修飾剤は、DESMOPHEN(登録商標)、DESMODUR(登録商標)、BUTVAR(登録商標)、ELVAMIDE(登録商標)、DORESCO(登録商標)、SILCLEAN(登録商標)、およびPARALOID(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない種々の商標名で知られている。
【0034】
種々のアミノプラスト樹脂は、外表面コーティング129、129A/Bのためのポリマーとして本明細書で使用できる。本明細書で使用される場合、用語「アミノプラスト樹脂」は、窒素含有物質およびホルムアルデヒドから製造されるアミノ樹脂を指し、ここで窒素含有物質としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミンおよび/またはグリコールウリルを挙げることができる。アミノプラスト樹脂は、高度にアルキル化される、または部分的にアルキル化されることができる。実施形態において、アミノプラスト樹脂はそのまま使用でき、またはそれらは修飾できる。例えば、アミノプラスト樹脂は、好適な可塑剤で修飾でき、可塑剤としては例えば、ポリビニルブチラール、ナイロン樹脂、熱硬化性アクリル系樹脂、ポリビニルホルマール、アルキド、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂(ビスフェノールA、エピクロロヒドリンポリマーなど)、ポリアミド、ポリアクリレート、オイルなど、およびこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。種々の修飾剤は、DESMOPHEN(登録商標)、DESMODUR(登録商標)、BUTVAR(登録商標)、ELVAMIDE(登録商標)、DORESCO(登録商標)、SILCLEAN(登録商標)、およびPARALOID(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない種々の商標名で知られている。
【0035】
メラミンが使用される場合、得られたアミノプラスト樹脂は「メラミン樹脂」として知られている場合がある。メラミン樹脂は、CYMEL(登録商標)、BEETLE(登録商標)、DYNOMIN(登録商標)、BECKAMINE(登録商標)、UFR(登録商標)、BAKELITE(登録商標)、ISOMIN(登録商標)、MELAICAR(登録商標)、MELBRITE(登録商標)、MELMEX(登録商標)、MELOPAS(登録商標)、RESART(登録商標)およびULTRAPAS(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない種々の商標名で知られている。
【0036】
実施形態において、メラミン樹脂は、次の一般式を有することができる。
【化1】
式中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または1〜8個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を表す。
【0037】
メラミン樹脂は、水−可溶性、分散性または非分散性であることができる。種々の実施形態において、メラミン樹脂は、高度にアルキル化/アルコキシル化され、部分的にアルキル化/アルコキシル化され、または混合アルキル化/アルコキシル化されることができる。種々の実施形態において、メラミン樹脂は、メチル化、n−ブチル化またはイソブチル化されることができる。他の実施形態において、メラミン樹脂は、低いメチロールおよび高いイミノ含有量を有することができる。実施形態において、メラミン樹脂は、メトキシメチルおよびイミノ主要機能を伴ってオリゴマー性質と記載されることができる。メラミン樹脂の非限定例としては、メチル化された高イミノメラミン樹脂(部分的にメチロール化されたおよび高度にアルキル化された)、例えばCYMEL(登録商標)323、325、327、328、385、高度にメチル化されたメラミン樹脂、例えばCYMEL(登録商標)350、9370、部分的にメチル化されたメラミン樹脂(高度にメチロール化されたおよび部分的にメチル化された)、例えばCYMEL(登録商標)373、370、高固形分の混合エーテルメラミン樹脂、例えばCYMEL(登録商標)1130、324、n−ブチル化メラミン樹脂、例えばCYMEL(登録商標)1151、615、n−ブチル化された高イミノメラミン樹脂、例えばCYMEL(登録商標)1158、イソ−ブチル化メラミン樹脂、例えばCYMEL(登録商標)255−10を挙げることができる。CYMEL(登録商標)メラミン樹脂は、Woodland Park,NJのCytec Industries Inc.から市販されている。
【0038】
実施形態において、メラミン樹脂は、メチル化ホルムアルデヒド−メラミン樹脂、メトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、プロポキシメチル化メラミン樹脂、ブトキシメチル化メラミン樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂、アルコキシアルキル化メラミン樹脂、例えばメトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、プロポキシメチル化メラミン樹脂、ブトキシメチル化メラミン樹脂、およびこれらの混合物から選択できる。
【0039】
実施形態において、尿素が使用される場合、得られたアミノプラスト樹脂はまた「尿素樹脂」として知られる。尿素樹脂は、CYMEL(登録商標)、BEETLE(登録商標)、DYNOMIN(登録商標)、BECKAMINE(登録商標)およびAMIREME(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない種々の商標名で知られている。
実施形態において、尿素樹脂は次の一般式を有することができる。
【化2】
式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または1〜8個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を表す。
【0040】
実施形態において、尿素樹脂は、水−可溶性、分散性または非分散性であることができる。種々の実施形態において、尿素樹脂は、高度にアルキル化/アルコキシル化され、部分的にアルキル化/アルコキシル化され、または混合アルキル化/アルコキシル化されることができる。種々の実施形態において、尿素樹脂は、メチル化、n−ブチル化またはイソブチル化されることができる。尿素樹脂の非限定例としては、メチル化尿素樹脂、例えばCYMEL(登録商標)U−65、U−382、n−ブチル化尿素樹脂、例えばCYMEL(登録商標)U−1054、UB−30−B、イソブチル化尿素樹脂、例えばCYMEL(登録商標)U−662、UI−19−Iを挙げることができる。CYMEL(登録商標)尿素樹脂は、Cytecand Park,NJのCytec Industries Inc.から市販される。
【0041】
実施形態において、ベンゾグアナミンが使用される場合、得られたアミノプラスト樹脂はまた、「ベンゾグアナミン樹脂」として知られる。ベンゾグアナミン樹脂は、CYMEL(登録商標)、BEETLE(登録商標)、およびUFORMITE(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない種々の商標名で知られている。
【0042】
実施形態において、ベンゾグアナミン樹脂は次の一般式を有することができる。
【化3】
式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または1〜8個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を表す。
【0043】
ベンゾグアナミン樹脂は、水−可溶性、分散性または非分散性であることができる。種々の実施形態において、ベンゾグアナミン樹脂は、高度にアルキル化/アルコキシル化され、部分的にアルキル化/アルコキシル化され、または混合アルキル化/アルコキシル化されることができる。種々の実施形態において、ベンゾグアナミン樹脂は、メチル化、n−ブチル化またはイソブチル化されることができる。ベンゾグアナミン樹脂の非限定例としては、CYMEL(登録商標)659、5010、5011を含むことができる。CYMEL(登録商標)ベンゾグアナミン樹脂は、Woodland Park,NJのCytec Industries Inc.から市販されている。
【0044】
実施形態において、グリコウラシルが使用される場合、得られたアミノプラスト樹脂はまた「グリコールウリル樹脂」として知られる。グリコールウリル樹脂は、CYMEL(登録商標)およびPOWDERLINK(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない種々の商標名にて知られている。
【0045】
実施形態において、グリコールウリル樹脂は、次の一般式を有することができる。
【化4】
式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または1〜8個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を表す。
【0046】
グリコールウリル樹脂は、水−可溶性、分散性または非分散性であることができる。種々の実施形態において、グリコールウリル樹脂は、高度にアルキル化/アルコキシル化され、部分的にアルキル化/アルコキシル化され、または混合アルキル化/アルコキシル化されることができる。種々の実施形態において、グリコールウリル樹脂は、メチル化、n−ブチル化またはイソブチル化されることができる。グリコールウリル樹脂の非限定例としては、CYMEL(登録商標)1170、1171が挙げられる。CYMEL(登録商標)グリコールウリル樹脂は、Woodland Park,NJのCytec Industries Inc.から市販されている。
【0047】
実施形態において、フッ素含有ポリマーまたはフルオロポリマーは、例えばフルオロポリマー粒子として、外表面コーティング129、129A/Bのために使用できる。これらのフルオロポリマーは、例えばビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー性繰り返し単位を含むことができる。フルオロポリマーは、線状または分岐状ポリマー、および架橋フルオロエラストマーを含むことができる。フルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびビニリデンフルオライド(VDF(登録商標)またはVF2)のコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド(VDF(登録商標))、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、およびテトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド(VF2)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマーおよびこれらの混合物を挙げることができる。実施形態において、フルオロポリマーおよび/またはそれらの粒子は、化学および熱安定性を提供でき、低い表面エネルギーを有することができる。フルオロポリマーおよび/またはそれらの粒子は、約255℃〜約360℃または約280℃〜約330℃の溶融温度を有することができる。ある実施形態において、例示的なフルオロポリマーおよび/またはそれらの粒子は、外表面コーティングを形成するために溶融できる。
【0048】
図2A〜2Bを再び参照すると、CNT205は、化学的および/または物理的に、図2Aのポリマーマトリックス280A、図2Bのポリマー粒子280B、および/または図2Bのポリマーマトリックス280に結合できる。
【0049】
本明細書で使用される場合、ポリマーマトリックスまたはポリマー粒子に「化学的結合した」CNTは、化学結合、例えばイオン性または共有結合を指し、例えば物理的結合、例えば水素結合または2つの化学種が互いに近接する場合に生じ得る分子の物理的捕捉のような弱い結合機構ではない。例えば、CNT205は、ポリマーマトリックス280A−280およびポリマー粒子280Bのそれぞれと化学的および/または物理的に結合し、外表面コーティング129A/BのためのCNTポリマー複合体を形成できる。
【0050】
一実施形態では、CNT205は、ポリマー粒子および/またはポリマーマトリックスを形成するポリマーと化学的に結合(例えば架橋)することなく、ポリマー粒子280Bおよび/またはポリマーマトリックス280Aおよび/または280と物理的に混合でき、またはこれらに分散できる。別の実施形態において、CNTは、ポリマー粒子およびマトリックスのポリマー鎖に化学的に結合できる。さらに別の実施形態において、一部のCNTは、ポリマー粒子およびマトリックスと物理的に混合できるが、他のCNTは、ポリマー粒子およびマトリックスに化学的に結合できる。実施形態において、CNT205およびポリマー粒子280Bは、外表面コーティング129Bのポリマーマトリックス280内に独立に分散できる。ポリマーマトリックス280は、ポリマー粒子280Bと同一または異なる1つ以上のポリマーから形成できる。
【0051】
外表面コーティング129、129A/Bは、コーティングプロセスを含む種々のフィルム形成技術によって形成でき、続いて固化プロセス、例えば硬化、乾燥、溶融、および/または冷却プロセスにより、物理的または化学的にポリマーと架橋して、ポリマーマトリックスを形成できる。
【0052】
例えば、CNTおよび1つ以上のポリマー(例えばPCL)を含む分散液は、例えばトルエンのような溶媒中でのボールミル加工によって調製できる。このプロセスは、数日を要する場合がある。分散液は、約5%〜約60%、または約10%〜約50%、または約20%〜約40%の範囲の固形分重量%を含むことができる。次いで分散液は、例えばBCRの伝導性コア121、BCRの中間層、BCRの接着剤層、および/または従来のBCRの従来の外側ベース層にコーティングできる。分散液を表面に適用するための例示的なコーティング技術としては、浸漬コーティング、ローラコーティング、スプレーコーティング、回転噴霧器、リングコーティング、ダイキャスティング、フローコーティングなどを挙げることができるが、これらに限定されない。適用されたまたはコーティングされた分散液は、次いで使用されるポリマーに従って、固化、例えば硬化または乾燥できる。
【0053】
あるいは、分散液は、CNTおよび複数のポリマー粒子を含むように調製できる。実施形態において、ポリマー粒子は、ポリマー粒子分散液に含有されることができ、これを次いで伝導性充填剤と混合する。例えば、CNTおよびポリマー粒子を含有する混合物は、上述のように所望の固形分パーセンテージを有するように形成できる。
【0054】
一実施形態では、CNTおよびポリマー粒子を含有する分散液のフィルムまたは層形成は、例えばBCRの伝導性基材、中間層、接着剤層、および/または外側ベース層にコーティングされることができる。コーティングされた分散液はさらに、例えばポリマー粒子の一部を少なくとも部分的に溶融し、続いて例えば冷却プロセスによって処理をすることができる。ポリマー粒子のこうした部分的な溶融は、図2Bに示されるポリマーマトリックス280を形成できる。
【0055】
別の実施形態において、CNTおよびポリマー粒子を含有する分散液のフィルムまたは層形成は、第2のポリマーをそれらと混合する、例えば好適な溶媒中でのボールミル加工プロセスを用いることによって処理できる。第2のポリマーは、ポリマー粒子と同一または異なることができる。CNT、ポリマー粒子、および第2のポリマーを含有する分散液は、上述の所望の固体形分重量%、例えば約5%〜約60%、または約10%〜約50%、または約20%〜約40%の範囲を有することができる。次いで分散液を、例えばBCRの伝導性基材、中間層、接着剤層、および/または外側ベース層にコーティングできる。分散液を表面に適用するための例示的なコーティング技術としては、浸漬コーティング、ローラコーティング、スプレーコーティング、回転噴霧器、リングコーティング、ダイキャスティング、フローコーティングなどを挙げることができるが、これらに限定されない。適用されたまたはコーティングされた分散液は、次いで使用されるポリマーに従って、固化、例えば硬化または乾燥できる。外表面コーティング129Bは、次いでポリマーマトリックス280中に分散した伝導性充填剤205およびポリマー粒子280Bの両方を有するように形成できる。
【0056】
他の場合、CNTおよび特定量の固形分を有するポリマーを含有する分散液はまた、別個の基材表面に適用でき、固化した層を形成でき、これを次いで層形成後の基材から除去し、次いで外表面コーティング129、129A/Bとして帯電部材の対応する層(例えば伝導性コア、外側ベース層など)に適用する。
【0057】
図1A〜1Cおよび2A〜2Bに示される形成された外表面コーティング129、129A/Bは、約1μm〜約100μm、例えば約3μm〜約40μm、または約4μm〜約20μmの範囲の厚さを有することができるが、外表面コーティングの厚さは制限されない。
【0058】
実施形態において、得られた帯電部材に関する特定表面、電気的、機械的および/または構造的特性は、CNTおよびポリマーの量/選択に依存して選択および制御できる。実施形態において、CNTは、外表面コーティングの総固形分の約10重量%未満、または約5重量%未満、例えば約0.1重量%〜約4重量%、または約0.2重量%〜約3重量%、または約0.3重量%〜約2重量%の範囲の量で外表面コーティングに存在できる。すなわち、CNTは、例えば帯電に必要な表面抵抗率を得るために顕著な重量増量を必要とせず、これは帯電に必要とされる同じ表面抵抗率を得るためには、約10%〜約50%の一般的な重量増量を必要とする従来の伝導性充填剤とは異なる。結果として、外表面コーティングの構造上の全体的一体性は、CNTの低重量増量のために改善できる。
【0059】
この様式において、外表面コーティングは、約10Ω/□〜約1010Ω/□、または約10Ω/□〜約10Ω/□、または約10Ω/□〜約10Ω/□の範囲の表面抵抗率を有する表面を有する各帯電部材120を提供でき、これは、多数の環境および機械的変化によって事実上影響を受けない。
【0060】
実施形態において、外表面コーティングは、約2μm〜約20μm、または約4μm〜約15μm、または約6μm〜約10μmの範囲のラフネスRを有する表面を有する帯電部材120A〜Cを提供できる。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「表面ラフネスRz」は、標準JIS B0601−1982に開示されるような10点中間表面ラフネスを指す。用語、表面ラフネス、プロファイル、プロファイルの参照長さ、ラフネス曲線、カットオフ値、プロファイルの中間線、およびプロファイルピークおよび谷は、この標準に規定される通りである。例えば、10点中間ラフネスは、差異の値であり、その長さはプロファイルからの参照長さに対応するサンプル化された部分内で、中間線に平行であり、プロファイルと交差しない直線からの垂直倍率方向にて測定される場合に最高の高さから5番目の高さまでのピーク高度の中間値と、最も深い谷から5番目の深さまでの谷の高度の中間値との間で、マイクロメートル(μm)単位で表現される値である。プロファイルは、例えば標準表面形状測定装置によって示されてもよい。
【0062】
加えて、開示された外表面コーティングは、関連する印刷機部材と直接接触することによる問題を解決するために、帯電部材の保護層として機能し得る。1つの例において、外表面コーティングの使用は、コーティングを有していない従来のBCRと比較して、均一帯電および所望の帯電性を提供できる。
【0063】
故にプリント品質は、開示された外表面コーティング129を用いることによって改善できる。さらに、外表面コーティング129は、従来のBCRまたは開示される例示的なBCR120A〜Cをリファビッシュできる。一般に、BCRの外表面が許容可能なプリントを提供するには損傷を受け過ぎている場合、リファビッシュするために回収されるべきである。実施形態において、リファビッシュは、開示される外表面コーティング129を適用することを含むことができる。保護層を既に有するまたは有していない保護外表面コーティング129を、損傷した表面を有するBCRに適用することによって、BCRは複数回使用できる。
【0064】
実施例
例示的な分散液は、トルエン溶媒中、約20〜40nmの直径、約1〜2μmの長さおよび40〜600m/gの表面積を有する複数壁カーボンナノチューブ(MWCNT、Nanostructured & Amorphous Materials,Inc.Houston,TXから供給される)を含む混合サンプルをCAPA6250ポリカプロラクトン(Perstorp、Swedenから供給)と共にボールミル加工することによって調製した。分散液は、約3重量%カーボンナノチューブを含み、約18%固形分重量であった。分散液を形成するために、約200gの1/8インチのステンレススチールショットを、混合サンプルに添加し、次いで約4日間の期間にわたってローラミル加工した。次いで分散液を、綿チップフィルターを通してろ過し、ミリングボールを除去し、Tsukiageコーターを用いてImariBCR上にコーティングし、約6μmのコーティング厚さを得た。コーティングされたローラは、次いで約140℃の対流オーブンにて約15分間乾燥し、外表面コーティングとしてMWCNT含有コーティングを有する例示的なBCRを形成した。
【0065】
形成されたBCRの加速試験を、プリントカートリッジ摩耗試験固定器具で行った。試験は、抵抗および帯電均一性測定およびプリント試験を含む初期スクリーニング(時間=0)を含んでいた。形成されたBCRは、摩耗固定器具において約50,000サイクルの摩耗に供し、続いて時間0でのスクリーニングと同じ手順の下でスクリーニングに供した。同じプロセスを、プリントストリークが見られるまで、摩耗固定器具で連続5万回のインターバルにて継続した、すなわちスクリーングした。
【0066】
得られたBCRの帯電均一性は、Hodaka固定器具にて50キロサイクルの摩耗試験の前後、MWCNT含有コーティングを有していないコントロールBCRよりも大きいことが観察された。加えて、電荷構築または電荷容量の劣化は観察されなかった。さらに、MWCNT含有コーティングを有する形成されたBCRは、MWCNT含有コーティングを有していないコントロールBCRに比べて、出発トルクから操作中のトルクデータまでいかなるトルク問題も示さなかった。
【0067】
従来またはコントロールBCR上のMWCNT含有コーティングの適用により、高品質で印刷された画像も得られた。例えば、Hodaka固定器具上で50キロサイクル摩耗後、コーティングされたBCRを備えたImperia機からスキャンされたプリント画像は、この50キロサイクル摩耗に供した後にプリント欠陥を示さなかった。対照的には、コーティングを有していないコントロールBCRから得られた印刷された画像は、多量のストリークを示した。形成されたBCRの寿命は、MWCNT含有コーティングの適用により延長された。
以下に、本発明の例示的態様を列挙する。
<1> 伝導性基材と、
前記伝導性基材にわたって配設された外表面コーティングであって、前記外表面コーティングは、1つ以上のポリマーと組み合わせた複数のカーボンナノチューブ(CNT)を含み、約2μm〜約20μmの範囲の表面ラフネスRzを提供する、外表面コーティングと、を含む帯電部材であって、
前記1つ以上のポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリオレフィン、ポリイミド、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、共役ジエンモノマー、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導されるコポリマー、フルオロポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される部材。
<2> 前記複数のCNTが、約10nm〜約90nmの範囲の平均外側直径、または約20m2/g〜約1,000m2/gの範囲の表面積を有する、<1>に記載の部材。
<3> 前記複数のCNTが約10〜約300の範囲のアスペクト比を有する、<1>に記載の部材。
<4> 前記複数のCNTが、外表面コーティングの約0.1重量%〜約4重量%の範囲の量で存在する、<1>に記載の部材。
<5> 前記外表面コーティングが、1つ以上のポリマーによって形成される複数のポリマー粒子を含み、前記複数のポリマー粒子が、約20nm〜約10μmの範囲の平均粒径を有する、<1>に記載の部材。
<6> 前記外表面コーティングが、約105Ω/□〜約1010Ω/□の範囲の表面抵抗率を有する、<1>に記載の部材。
<7> 帯電部材を形成する方法であって、
複数のカーボンナノチューブ(CNT)および1つ以上のポリマーを含む分散液を提供する工程であって、
前記1つ以上のポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリオレフィン、ポリイミド、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、共役ジエンモノマー、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導されるコポリマー、フルオロポリマー、およびこれらの組み合わせかなる群から選択される提供する工程と、
外側ベース層にこの分散液を適用する工程であって、前記外側ベース層が、伝導性基材にわたって提供される工程と前記適用された分散液を固化して、外側ベース層上に外表面コーティングを形成して、前記外表面コーティングが、約2μm〜約20μmの範囲の表面ラフネスRzを有するようにする工程を含む、方法。
<8> 前記複数のCNTおよび1つ以上のポリマーを含む分散液が、約5%〜約60%の範囲の固形分重量%を有する、<7>に記載の方法。
<9> 前記1つ以上のポリマーが、前記外表面コーティング内に分散された約20nm〜約10μmの範囲の平均粒径を有する複数のポリマー粒子を含む、<7>に記載の方法。
<10> 前記外側ベース層が、約106Ω/□〜約1013Ω/□の範囲の表面抵抗率を有する、<7>に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B