特許第5789241号(P5789241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5789241
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-263001(P2012-263001)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-109459(P2014-109459A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】松隈 修
(72)【発明者】
【氏名】赤松 謙介
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−027374(JP,A)
【文献】 特開平01−102281(JP,A)
【文献】 特開平09−329566(JP,A)
【文献】 実開昭61−097775(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 − 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を配置するための試験空間が形成された試験槽を備え、
前記試験槽は、前壁、左側壁、右側壁、後壁及び天部を有し、前下がりに傾斜した方向に延びる分割面で下側槽部と上側槽部とに分かれており、
前記分割面で前記左側壁及び前記右側壁がそれぞれ二つに分割されて、前記上側槽部の内面には、前記天部、前記前壁、前記左側壁及び前記右側壁のそれぞれの少なくとも一部の内面が含まれており、
前記分割面の後端部は、前記天部の前後方向の中央よりも後側に位置し、
前記上側槽部は、前記試験空間を開放可能に前記下側槽部に支持されており、
前記前壁、前記左側壁及び前記右側壁において前記上側槽部に含まれる部位の内面に沿う側壁部を有し、前記下側槽部に着脱可能に配置される内槽体をさらに備え、
前記内槽体は、前記試験空間が開放されるように前記上側槽部が移動した状態でも前記下側槽部上に存在し得る環境試験装置。
【請求項2】
前記分割面の前端部は、前記前壁の高さ方向の中央よりも下側に位置している請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記内槽体は、前記側壁部の下端面が前記分割面の傾斜方向に対応している請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記内槽体の上面が開口している請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記内槽体は前記側壁部の上端部に架け渡される上面部を備えており、前記内槽体の少なくとも一部が透明材で構成されている請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記試験槽の背面側に突出したハンドルと、
前記環境試験装置の下端部に配置された車輪と、をさらに備えている請求項1から5の何れか1項に記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記天部及び前記前壁の少なくとも一方に透明板が設けられている請求項1から6の何れか1項に記載の環境試験装置。
【請求項8】
前記上側槽部は、透明な部材で構成されている請求項1から6の何れか1項に記載の環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1〜3に開示されているように、試料を配置するための試験空間が形成された試験槽を備えた環境試験装置が知られている。試験槽は、前壁、左側壁、右側壁、後壁及び天部を有している。特許文献1に開示された環境試験装置では、前壁、左側壁、右側壁及び後壁が水平方向に延びる分割面で上下に分割されている。そして、試験槽のうち下側の部位には、試料が配置される試料台が設けられ、上側の部位は上蓋として機能している。特許文献2に開示された環境試験装置では、左側壁及び右側壁の前端部が下側ほど前側に突き出た傾斜状に形成されており、前壁は、左側壁及び右側壁の前端部に当接するように配置された開閉扉として構成されている。特許文献3に開示された環境試験装置は、直方体状の試験槽となっており、前壁が外扉として構成され、さらにその内側に内扉が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2975601号明細書
【特許文献2】特許第2957903号明細書
【特許文献3】実開平3−54738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された環境試験装置では、試験槽が、水平方向に延びる分割面で上下に分割されているため、上蓋を回動して試験空間を開放した場合に、作業者が槽内に上から手を入れて、試料に対する配線等、試料の調整作業を行うことになる。この場合、作業者は通常、試験槽の前に立って作業を行うため、左右の側壁の前上部が作業の邪魔になることがある。これに対し、特許文献2に開示された環境試験装置では、左側壁及び右側壁の前端部が下側ほど前側に突き出た傾斜状に形成され、前壁が開閉扉として構成されているので、前壁を回動して試験空間を開放した場合には、作業者は槽内に前から手を入れて試料の調整作業等を行うことになる。したがって、試験槽が大きい場合には、調整作業を楽に行うことができるものの、試験槽が小さい場合や低い位置に設置される場合等には、調整作業が煩雑になる。この点は、特許文献3に開示された環境試験装置においても同様である。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、試験槽が小さい場合や低い位置にある場合等であっても試験槽内に配置された試料の調整作業が繁雑になることを抑制できる環境試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、試料を配置するための試験空間が形成された試験槽を備え、前記試験槽は、前壁、左側壁、右側壁、後壁及び天部を有し、前下がりに傾斜した方向に延びる分割面で下側槽部と上側槽部とに分かれており、前記分割面で前記左側壁及び前記右側壁がそれぞれ二つに分割されて、前記上側槽部の内面には、前記天部、前記前壁、前記左側壁及び前記右側壁のそれぞれの少なくとも一部の内面が含まれており、前記分割面の後端部は、前記天部の前後方向の中央よりも後側に位置し、前記上側槽部は、前記試験空間を開放可能に前記下側槽部に支持されており、前記前壁、前記左側壁及び前記右側壁において前記上側槽部に含まれる部位の内面に沿う側壁部を有し、前記下側槽部に着脱可能に配置される内槽体をさらに備え、前記内槽体は、前記試験空間が開放されるように前記上側槽部が移動した状態でも前記下側槽部上に存在し得る環境試験装置である。
【0007】
本発明では、試験槽が、左側壁及び右側壁において前下がりに傾斜した方向に延びる分割面で下側槽部と上側槽部とに分かれている。このため、上側槽部を下側槽部に対して移動させて試験空間を開放すると、上側槽部の一部である左側壁及び右側壁の前上部と天部の前部は、下側槽部から上方に離れた位置に移動する。そして、分割面の後端部が天部の前後方向の中央よりも後側に位置しているため、試験空間が開放された状態で、作業者が試験空間内に配置された試料の調整作業を行うときには、下側槽部の内側に上から手を入れて作業を行うことができる。したがって、試験槽が小さい場合や低い位置に設置された場合であっても、調整作業が煩雑になることを抑制することができる。しかもこのとき、左側壁及び右側壁の前上部が下側槽部から離れた位置にあるので、作業者が試験槽の前に立って作業を行う場合であっても、左側壁及び右側壁の前上部が作業の邪魔になることはない。したがって、試験空間内に配置された試料の調整作業が煩雑になることを抑制することができる。
しかも、試験空間が開放されるように上側槽部が移動した状態でも下側槽部上に存在し得る内槽体を備えているため、上側槽部を動かして試験空間を開放したときでも、内槽体が下側槽部上に残され得る。このため、下側槽部の上側に内槽体の側壁部によって区画された空間が形成される。したがって、試験空間が開放されるように上側槽部を移動した状態で環境試験装置を駆動させる場合においても、下側槽部及び内槽体によって形成される空間内の熱を逃げ難くすることができる。このため、空間内の温度が変化し難い状態で、例えば、下側空間内に配置された試料の観察をしながら、或いは試料の不具合をチェックしながら環境試験装置の駆動を行うことができる。また、試験以外に作業を行う場合等には、内槽体を取り外すこともできる。この場合には、作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0008】
ここで、前記分割面の前端部は、前記前壁の高さ方向の中央よりも下側に位置しているのが好ましい。この態様では、前壁において、その高さ方向の中央よりも下側の部位の一部が上側槽部に含まれることになるので、上側槽部を下側槽部に対して移動させて試験空間を開放したときに、下側槽部に含まれる前壁の上端が低くなる。したがって、試験槽の前に位置する作業者が試料の調整作業等を行うときの作業負担をより軽減することができる。
【0009】
前記内槽体は、前記側壁部の下端面が前記分割面の傾斜方向に対応していてもよい
【0011】
前記内槽体の上面が開口していてもよい。この態様では、開口した上面を通して内槽体内の様子を見ることができる。
【0012】
前記内槽体は前記側壁部の上端部に架け渡される上面部を備えていてもよい。この場合、前記内槽体の少なくとも一部が透明材で構成されていてもよい。この態様では、透明材で構成された部位を通して内槽体内の様子を見ることができる。また、内槽体の上面も塞がれているので、内槽体内の空間の熱が逃げ難くなる。
【0013】
前記環境試験装置は、前記試験槽の背面側に突出したハンドルと、前記環境試験装置の下端部に配置された車輪と、をさらに備えていてもよい。この態様では、作業者は、ハンドルを握って試験槽を背面側に倒した状態で押すことにより、試験槽を楽に移動させることができる。
【0014】
前記天部及び前記前壁の少なくとも一方に透明板が設けられていてもよい。この態様では、透明板を通して試験空間内の様子を観察することができる。
【0015】
前記上側槽部は、透明な部材で構成されていてもよい。この態様では、上側槽部から試験空間内の様子を観察することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の環境試験装置によれば、試験槽が小さい場合や低い位置にある場合等であっても試験槽内に配置された試料の調整作業が繁雑になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置の斜視図であり、上側槽部が閉じ位置にある状態を示している。
図2】上側槽部が開き位置にある状態の前記環境試験装置の斜視図である。
図3図1のIII−III線における部分断面図である。
図4図1のIV−IV線における部分断面図である。
図5】本発明のその他の実施形態に係る環境試験装置の斜視図である。
図6】本発明のその他の実施形態に係る環境試験装置の斜視図である。
図7】本発明のその他の実施形態に係る環境試験装置の斜視図である。
図8】本発明のその他の実施形態に係る環境試験装置の斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る環境試験装置の斜視図である。
図10】(a)上面が開口した内槽体の斜視図であり、(b)図10(a)のXb−Xb線における断面図である。
図11】上面部を有する内槽体の斜視図である。
図12】本発明のその他の実施形態に係る環境試験装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る環境試験装置10は、試験槽12と、試験槽12の下側に配置された機械室14と、機械室14の前側に配置された電装部16と、を備えている。また、この環境試験装置10には、試験槽12の背面側に配置されたハンドル18と、試験槽12及び機械室14を含む外装体20の下端部に配置された車輪19と、が設けられている。
【0020】
図3に示すように、試験槽12と機械室14とは上下方向に並ぶように配置されていて、これらが全体として縦長の直方体形状の本体部として形成されている。電装部16は、この本体部から前側に張り出すように設けられている。電装部16は、内部が空洞になるように前カバー16aが本体部に取り付けられることによって外面が構成され、前カバー16aと本体部との間に形成された内部空間内に図略の制御機器等が配設されている。
【0021】
電装部16の上面は、前下がりの傾斜面となっており、この上面には、図1に示すように、スイッチ類22、操作画面23、ロック解除ボタン24等が配置されている。ハンドル18は、電装部16の上面と略面一の傾斜面に沿って試験槽12の左右側面に沿って延びるフレーム部材26の後端部に設けられている。フレーム部材26は、試験槽12の背面から後側にさらに延びており、その後端部間に架け渡されるようにハンドル18が設けられている。すなわち、ハンドル18は、試験槽12の背面側に突出した位置に設けられている。そして、車輪19も外装体20における背面側部の下端部に設けられている。このため、外装体20が後方に傾くように環境試験装置10を倒し、外装体20の前端部の下端を浮かせることにより、その状態でハンドル18を把持して環境試験装置10を押せば、環境試験装置10を楽に動かすことができる。
【0022】
図3に示すように、試験槽12は、前壁31、左側壁32、右側壁33、後壁34、底面部35及び天部36を備え、全体として直方体形状に形成されている。試験槽12内には、内部空間ISが形成されている。内部空間ISには、試料を配置するための試験空間TSと、試験空間TSと連通し、試験空間TS内に供給される空気の温調を行う空調空間CSと、が含まれている。内部空間IS及び試験空間TSは略直方体形状に形成されている。なお、空調空間CSは、試験槽12内の内部空間ISの一部として形成されている必要はなく、試験槽12外に形成されるとともに、試験槽12を貫通する図略の貫通路によって試験槽12内に形成された試験空間TSと連通する構成であってもよい。
【0023】
試験槽12は、前下がりに傾斜した方向に延びる平面状の分割面Pで下側槽部39と上側槽部40とに分かれており、内部空間IS(試験空間TS)には、下側槽部39内に位置する下側空間(下側試験空間)と、上側槽部40内に位置する上側空間(上側試験空間)とが含まれている。分割面Pの前端部は、試験槽12の前壁31の高さ方向の中央よりも下側に位置し、分割面Pの後端部は、天部36の前後方向の中央よりも後側に位置している。なお、図例の分割面Pは、天部36の下面と後壁34の前面との交線の近傍を通り、分割面Pの後端部は、後壁34の後面(外面)の上端部の近傍に位置している。
【0024】
下側槽部39は、前壁31の下側部31a、左側壁32の下側部32a、右側壁33の下側部33a、後壁34及び底面部35を備えている。一方、上側槽部40は、前壁31の上側部31b、左側壁32の上側部32b、右側壁33の上側部33b及び天部36を備えている。したがって、下側空間(下側試験空間)は、前面、左側面、右側面、後面及び底面を有し、上面が開放されており、上側空間(上側試験空間)は、前面、左側面、右側面及び上面を有し、下面が開放されている。そして、下側空間(下側試験空間)と上側空間(上側試験空間)との間が、前記分割面Pと面一の傾斜平面となる。このため、上側槽部40には、前壁31の上端部、左側壁32の前上端部、右側壁33の前上端部及び天部36の前端部が含まれる。
【0025】
前壁31の下側部31aは、前カバー16aで覆われているため、外側から見えない。ただし、この構成に限られない。例えば、前カバー16aが機械室14のみの前面を覆っていてもよい。
【0026】
前壁31、左側壁32、右側壁33、後壁34、底面部35及び天部36はそれぞれ、金属板等からなる外壁板42と、外壁板42と間隔をおいて配置された金属板等からなる内壁板44と、これら外壁板42及び内壁板44間に設けられた断熱材43とを備えた構成である。そして、下側槽部39における分割面Pに面する傾斜上面と、上側槽部40における分割面Pに面する傾斜下面とには、それぞれ薄板45,46が配置され、断熱材43が露出しないようになっている。薄板45,46は金属又は断熱性の高い樹脂によって構成されている。傾斜上面を構成する薄板45と傾斜下面を構成する薄板46との間には、内部空間ISを外部から気密状に封止するパッキン48が配置されている。パッキン48は、傾斜上面側に配置された薄板に固定されている。本実施形態では二重パッキン48となっている。
【0027】
上側槽部40は、内部空間IS(試験空間TS)を開放可能に下側槽部39に支持されている。具体的に、試験槽12には、後壁34の外面と天部36の外面とを接続するように蝶番50が設けられており、上側槽部40は、この蝶番50を中心として回動可能に下側槽部39に支持されている。
【0028】
前述したように、内部空間ISには、試験空間TSと空調空間CSとが含まれている。試験空間TSは、略直方体形状に形成されており、空調空間CSは、試験空間TSの下側に位置する下側部と、試験空間TSの後側に位置する後側部とを有している。試験空間TSの下面には、スリット52aが形成された載置板52が配置されており、この載置板52を介して試験空間TSと空調空間CSの下側部とが区画されている。試料は載置板52上に配置される。試験空間TS内の空気はスリット52aを通して空調空間CSの下側部に流入する。試験空間TSの後面側には、多数の連通孔54aを有する網状のグリル54が配置されており、このグリル54を介して試験空間TSと空調空間CSの後側部とが区画されている。空調空間CSの後側部内の空気はグリル54の連通孔54aを通して試験空間TS内に流入する。
【0029】
空調空間CSには、冷却部であるフィン56と、加熱手段であるヒータ58と、送風部であるファン60の羽根車60aと、温度検知手段である温度センサ62と、内部空間IS内に溜まった水を排水するための排水管64とが配置されている。フィン56は、機械室14に配置されたスターリング冷凍機65の上部に設けられるとともに、空調空間CSの下側部内に配置されており、スターリング冷凍機65によって生成された冷熱によって冷却される。これにより、空調空間CS内の空気から吸熱し、当該空気を冷却する。なお、吸熱用の冷凍機としては、スターリング冷凍機に限られない。
【0030】
ヒータ58は、下側槽部39の後壁34を貫通するとともに、加熱部が空調空間CSの下側部内に配置されている。ヒータ58は、図略のコントローラによって加熱量が制御されるように構成されている。
【0031】
ファン60は、羽根車60aとこの羽根車60aを回転させるモータ60bとを有しており、モータ60bは、下側槽部39の後壁34の外面に固定されている。モータ60bの駆動軸は後壁34を貫通して空調空間CSの後側部内に位置しており、この駆動軸に羽根車60aが固定されている。
【0032】
温度センサ62は、空調空間CSの下側部内に配置されており、空調空間CS内の空気の温度を検出する。そして、温度センサ62によって検出された空気の温度が予め設定された閾値を超えていないかどうかを監視するのにも用いられる。
【0033】
下側槽部39の左側壁32(下側部32a)及び右側壁33(下側部33a)にはそれぞれ貫通孔が形成されており、この貫通孔にはキャップ66がそれぞれ着脱可能に被せられている。この貫通孔を通して、試験空間TSの試料に配線を行うことができる。
【0034】
環境試験装置10には、上側槽部40をロックするロック部材68と、ロック部材68による上側槽部40のロックを解除するロック解除ボタン24とが設けられている。図4に示すように、ロック部材68は、外装体20に回動可能に支持された回動部68aと、回動部68aの先端部に形成された爪部68bと、を有している。ロック部材68は、爪部68bが、被係止部70に係止されるロック位置(図4において実線で示す位置)と、爪部68bが被係止部70から離間した解錠位置(図4において二点鎖線で示す位置)とを取り得る。被係止部70は、上側槽部40の前壁31から前側に張り出した板69に固定されている。
【0035】
ロック解除ボタン24は、ロック部材68をロック位置から解錠位置に移動させるための操作部であり、電装部16の上面に配置されている。ロック解除ボタン24は、ロック部材68と一体的に動くように構成されている。ロック解除ボタン24が電装部16の上面から突出した位置(図4において実線で示す位置)にあるときには、ロック部材68はロック位置となり、ロック解除ボタン24が電装部16内に押し込まれた位置(図4において二点鎖線で示す位置)にあるときに、ロック部材68は解錠位置となる。したがって、ロック解除ボタン24を押圧操作することにより、ロック部材68をロック位置から解錠位置に移動させ、これにより上側槽部40のロックが解除されて、上側槽部40を上側に向けて回動させることが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、試験槽12が、左側壁32及び右側壁33において前下がりに傾斜した方向に延びる分割面Pで下側槽部39と上側槽部40とに分かれている。このため、上側槽部40を下側槽部39に対して移動させて試験空間TSを開放すると、上側槽部40の一部である左側壁32及び右側壁33の前上部と天部36の前部は、下側槽部39から上方に離れた位置に移動する。そして、分割面Pの後端部が天部36の前後方向の中央よりも後側に位置しているため、試験空間TSが開放された状態で、作業者が試験空間TS内に配置された試料の調整作業を行うときには、下側槽部39の内側に上から手を入れて作業を行うことができる。したがって、試験槽12が小さな場合や低い位置に設置された場合であっても、調整作業が煩雑になることを抑制することができる。しかもこのとき、左側壁32及び右側壁33の前上部が下側槽部39から離れた位置にあるので、作業者が試験槽12の前に立って作業を行う場合であっても、左側壁32及び右側壁33の前上部が作業の邪魔になることはない。したがって、試験空間TS内に配置された試料の調整作業が煩雑になることを抑制することができる。
【0037】
さらに本実施形態では、分割面Pの前端部が、前壁31の高さ方向の中央よりも下側に位置しているため、前壁31において、その高さ方向の中央よりも上側の部位が上側槽部40に含まれることになる。この結果、上側槽部40を下側槽部39に対して移動させて試験空間TSを開放したときに、下側槽部39に含まれる前壁31の上端が低くなる。したがって、試験槽12の前に位置する作業者が試料の調整作業等を行うときの作業負担をより軽減することができる。
【0038】
また本実施形態では、試験槽12の背面側にハンドル18が設けられるとともに、外装体20の背面における下端部に車輪19が設けられているので、作業者は、ハンドル18を握って試験槽12を背面側に倒した状態で押すことにより、試験槽12を楽に移動させることができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0040】
前記実施形態では、上側槽部40の外壁板42から内部空間IS内を見ることができない構成となっているがこれに限られるものではない。例えば、図5に示すように、上側槽部40の天部36に透明板72が嵌め込まれていて、この透明板72を通して内部空間IS(試験空間TS)内を観察できるように構成されていてもよい。また、図6に示すように、上側槽部40の天部36及び前壁31の上側部31bにそれぞれ透明板72が嵌め込まれていて、これらの透明板72を通して内部空間IS(試験空間TS)内を観察できるように構成されていてもよい。なお、前壁31にのみ透明板72が嵌め込まれていてもよい。
【0041】
また図7に示すように、上側槽部40は、透明な部材で構成されていてもよい。この場合にも、上側槽部40から試験空間TS内の様子を観察することができる。
【0042】
前記実施形態では、天部36の上面が水平な構成となっているが、これに限られるものではない。例えば、図8に示すように、天部36の上面が前下がりに傾斜した構成であってもよい。
【0043】
前記実施形態では、ハンドル18及び車輪19が設けられた構成となっているが、ハンドル18及び車輪19が省略された構成であってもよい。
【0044】
環境試験装置10は、図9に示すように、下側槽部39に着脱可能に載置される内槽体75を備えている。この内槽体75は、前壁31、左側壁32及び右側壁33において上側槽部40に含まれる部位(上側部32b,33b)の内面に沿う側壁部75aを有しており、左右両側の側壁部75aの下端面は分割面Pの傾斜方向に対応するように傾斜している。内槽体75は、上側試験空間を囲むように下側槽部39に載置されるが、上側槽部40が回動されて試験空間TSを開放した状態にあるときでも、上側槽部40に随伴していくのではなく、下側槽部39上に残される。
【0045】
図10(a)及び(b)に示すように、内槽体75の側壁部75aには、外側に向けて突出する外向き突部75cと、側壁部75aの下端部から下方に突出する下向き突部75dと、が形成されている。側壁部75aの幅(内槽体75の左右方向の長さ)が下側槽部39内の空間の幅よりも僅かに小さな幅になるように形成されていて、外向き突部75cが下側槽部39の上面に載り、下向き突部75dが下側槽部39内に入り込む。なお、側壁部75aの幅(内槽体75の左右方向の長さ)が下側槽部39内の空間の幅と同じに形成されていて、下向き突部75dが側壁部75aよりも僅かに内側で下向きに突出する構成としてもよい。また、側壁部75aの幅(内槽体75の左右方向の長さ)が下側槽部39内の空間の幅と同じに形成されていて、外向き突部75c及び下向き突部75dが省略されていてもよい。この場合、内槽体75を下側槽部39上に配置できるようにすべく、上側槽部40内の空間が下側槽部39内の空間よりも僅かに大きな幅になるように形成されていてもよい。また、外向き突部75c及び下向き突部75dは、全周に設けられていなくてもよい。
【0046】
この環境試験装置10では、上側槽部40を動かして試験空間TSを開放したときでも、内槽体75が下側槽部39上に残される。すなわち、内槽体75は下側槽部39から突出するように配置される。このため、下側槽部39の上側に内槽体75の側壁部75aによって区画された空間が形成される。したがって、試験空間TSが開放されるように上側槽部40を移動した状態で、環境試験装置10を駆動する場合においても、下側槽部39及び内槽体75によって形成される空間内の熱を逃げ難くすることができる。このため、上側槽部40を開いた状態にある場合でも、下側試験空間内の温度が変化し難い状態で、例えば、下側試験空間内に配置された試料の観察をしながら、或いは試料の不具合をチェックしながら環境試験装置10の駆動を行うことができる。内槽体75には、下側槽部39との接触部におけるシール性を確保すべく、パッキン(図示省略)が設けられていてもよい。また、内槽体75は、その下端部が下側槽部39の内側に嵌め込まれる構成であってもよい。内槽体75は、上側槽部40を開放して作業をすることが分かっている場合等に、運転前において試料がセットされた後にセットされる。そして上側槽部40を閉じて運転を行うので、その後に上側槽部40を開放した場合にも、下側槽部39上に存在し得る。
【0047】
図9に示す内槽体75は、図10に示すように、側壁部75aのみを有し、上面が開口した構成となっているが、これに限られない。図11に示すように、内槽体75は、側壁部75aの上端部に架け渡される上面部75bを備えていてもよい。この場合、内槽体75の少なくとも一部が透明材で構成されているのが好ましい。この構成では、内槽体75の上面も塞がれているので、内槽体75内の空間の熱が逃げ難くなる。
【0048】
内槽体75の前面部(側壁部75aの一部)又は上面部75bは開閉可能に構成されていてもよい。こうすれば、作業性を確保しつつ、内槽体75内の温度乱れを極力抑えることができる。すなわち、上面部75bが開閉可能である場合には低温時に槽内の温度乱れを抑制でき、前面部が開閉可能である場合には高温時に槽内の温度乱れを抑制できる。内槽体75は、ステンレス、アルミニウム等で構成することができ、また透明材はポリカーボネイト、塩化ビニル等で構成することができる。なお、上面部75bを備えた内槽体75においても、図10(a)(b)同様に、外向き突部75c及び下向き突部75dが形成されていてもよい。
【0049】
前記実施形態では、試験槽12の下側に機械室14が配置され、その前側に電装部16が配置された構成としたが、これに限られない。代替的に、例えば、図12に示すように、略直方体形状の試験槽12の後側に機械室14及び電装部16が配置された構成としてもよい。なお、図12に示す形態では、分割面Pが前壁31の下端部を通ることにより前壁31が上下に分割されていない構成となっているが、前記実施形態と同様に、前壁31が下側部31aと上側部31bとを有する構成としてもよい。
【0050】
前記実施形態では、上側槽部40が下側槽部39に対して回動可能に支持されるように構成されている。上側槽部40が回動するように支持されるのではなく、代替的に、上下方向にスライドすることによって試験空間TSを開放するように支持されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 環境試験装置
12 試験槽
18 ハンドル
19 車輪
31 前壁
31a 下側部
31b 上側部
32 左側壁
32a 下側部
32b 上側部
33 右側壁
33a 下側部
33b 上側部
34 後壁
35 底面部
36 天部
39 下側槽部
40 上側槽部
72 透明板
75 内槽体
75a 側壁部
75b 上面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12