【実施例】
【0017】
図1〜
図4を参照し、第1実施例の減速装置100を説明する。
図1は、減速装置100を軸方向に切った断面を示している。図面を明瞭化するために、一部の部品については、断面を表すハッチングを省略している。なお、
図1は、
図2〜
図4のI−I線に沿った断面に相当する。減速装置100は、第1減速ユニット100aと第2減速ユニット100bを備えている。減速ユニット100a、100bは偏心揺動型であり、同軸に配置されている。減速装置100の軸線100xは、第1減速ユニット100a及び第2減速ユニット100bの軸線に相当する。なお、軸線100xは、後述する第1キャリア6、第2キャリア44及びモータ歯車32の軸線にも相当する。
【0018】
減速装置100の動作を簡単に説明する。減速装置100は、形態上は、第1減速ユニット100aと第2減速ユニット100bが直列に連結された構造を有する。減速ユニット100a、100bの詳細は後述する。モータ(図示省略)のトルクは、第1減速ユニット100aの第1クランクシャフト8に供給される。第1減速ユニット100aは、モータのトルクを増幅して、第1キャリア6から出力する。第1キャリア6のトルクは、第2減速ユニット100bの第2クランクシャフト26に供給される。
【0019】
第2減速ユニット100bは、第2クランクシャフト26に供給されたトルクを増幅して、第2キャリア44から出力する。第2キャリア44は、減速装置100のケース50に対して相対的に回転する。減速装置100は、2個の減速ユニット100a、100bを利用することにより、大きなトルクを出力することができる。別言すると、減速装置100は、2個の減速ユニット100a、100bを利用することにより、大きな減速比を得ることができる。なお、減速装置100では、ケース50が図示しないベース部材に固定される。そのため、第2キャリア44が、減速装置100の出力部材に相当する。
【0020】
次に、第2減速ユニット100bの構造を説明する。
図1に示すように、減速ユニット100bは、第2内歯歯車21と第2キャリア44と第2外歯歯車20と第2クランクシャフト26を備えている。第2内歯歯車21は、減速装置100のケース50と複数の内歯ピン22で構成されている(
図2も参照)。第2キャリア44は、一対のアンギュラ玉軸受48によってケース50に支持されている。第2キャリア44は、第2出力プレート44cと第2ベースプレート44aで構成されている。第2柱状部44bが、第2出力プレート44cから第2ベースプレート44aに向けて延びており、第2ベースプレート44aに固定されている。第2出力プレート44cと第2ベースプレート44aの双方に、テーパーピン42が嵌め込まれている。テーパーピン42によって、第2出力プレート44cと第2ベースプレート44aの相対回転を防止している。第2キャリア44の全体が、第2減速ユニット100bの出力部材に相当する。
【0021】
第2クランクシャフト26は、一対の円錐ころ軸受18によって第2キャリア44に支持されている。第2クランクシャフト26は、2個の偏心体(第2偏心体)24を有している。第2入力歯車12が、第2クランクシャフト26に固定されている。軸方向において、2個の第2偏心体24は、一対の円錐ころ軸受18の間に位置している。また、軸方向において、第2入力歯車12は、一対の円錐ころ軸受18の外側に位置している。夫々の第2偏心体24に、第2外歯歯車20が、円筒ころ軸受28を介して嵌合している。第2キャリア44が第2クランクシャフト26を支持し、第2クランクシャフト26が第2外歯歯車20を支持している。別言すると、第2キャリア44が、第2クランクシャフト26と第2外歯歯車20を支持している。
【0022】
図1と
図2に示すように、3個の第1貫通孔20aと3個の第2貫通孔20bが、第2外歯歯車20の周方向に形成されている。また、第3貫通孔20cが、第2外歯歯車20の中央に形成されている。第1貫通孔20aと第2貫通孔20bは、第2外歯歯車20の周方向に交互に形成されている。夫々の第1貫通孔20aに、第2偏心体24が嵌合している。すなわち、第2減速ユニット100bは、3個の第2クランクシャフト26を備えている。夫々の第2貫通孔20bを、第2柱状部44bが通過している。第2減速ユニット100bでは、第2クランクシャフト26と第2柱状部44bが、周方向に交互に並んでいる。なお、
図4に示すように、3個の第2クランクシャフト26の夫々に、第2入力歯車12が固定されている。全ての第2入力歯車12が、出力歯車6dに噛み合っている。出力歯車6dについては後述する。
【0023】
第2クランクシャフト26が回転すると、第2偏心体24が、第2クランクシャフト26の軸線の周りを偏心回転する。第2外歯歯車20は、第2偏心体24の偏心回転に伴って、第2内歯歯車21と噛み合いながら偏心回転する。第2内歯歯車21の歯数(内歯ピン22の個数)と第2外歯歯車20の歯数は異なる。よって、第2外歯歯車20が第2内歯歯車21と噛み合いながら偏心回転すると、第2外歯歯車20が、第2内歯歯車21に対して回転する。上記したように、第2外歯歯車20は、第2キャリア44に支持されている。そのため、第2外歯歯車20が偏心回転すると、キャリア44が、第2内歯歯車21(ケース50)に対して回転する。
【0024】
第2減速ユニット100bでは、第2内歯歯車21の歯数(内歯ピン22の個数)が52個で、第2外歯歯車20の歯数が51個である。そのため、第2減速ユニット100bの減速比は「1/53」となる。このような大きな減速比は、第2偏心体24が第2外歯歯車20を偏心回転させ、第2外歯歯車20が第2内歯歯車21と噛み合いながら偏心回転することによって得られる。すなわち、第2偏心体24と第2外歯歯車20と第2内歯歯車21は、第2減速ユニット100bの主要部品に相当する。
【0025】
次に、第1減速ユニット100aについて説明する。第1減速ユニット100aも偏心揺動型であり、基本的な構造は第2減速ユニット100bと同じである。よって、第2減速ユニット100bと共通する構造については簡単に説明する。
図1に示すように、第1減速ユニット100aは、第1内歯歯車4と第1キャリア6と第1外歯歯車16と第1クランクシャフト8を備えている。第2キャリア44(第2出力プレート44c)は、軸線100xと同軸の円筒空間を有している。第1内歯歯車4は、第2キャリア44の円筒内面に形成されている。より詳しくは、第1内歯歯車4は、第2出力プレート44cの円筒内面に形成されている複数の溝と、その溝内に挿入されている内歯ピン45で構成されている(
図3を参照)。
【0026】
第1キャリア6は、一対の深溝玉軸受5によって第2キャリア44に支持されている。第2キャリア44は、第1減速ユニット100aのケースに相当する。別言すると、第2キャリア44は、第1減速ユニット100aのケースと一体である。第1キャリア6は、第1出力プレート6cと第1ベースプレート6aで構成されている。第1柱状部6bが、第1出力プレート6cから延びており、第1ベースプレート6aに固定されている。第1出力プレート6cには、出力歯車6dが形成されている。出力歯車6dは、第1キャリア6の一部に相当する。出力歯車6dは、第1出力プレート6cから、第1柱状部6bとは反対方向に延びている。出力歯車6dは、第2入力歯車12と噛み合っている。
【0027】
第1クランクシャフト8は、一対の円錐ころ軸受10によって第1キャリア6に支持されている。第1クランクシャフト8は、1個の偏心体(第1偏心体)7を有している。第1外歯歯車16が、第1偏心体7に嵌合している。第1外歯歯車16は、第1内歯歯車4に噛み合っている。第1クランクシャフト8には、第1入力歯車14が固定されている。第1入力歯車14は、軸線100x方向において、第2外歯歯車20の第3貫通孔20c内に位置している。第1入力歯車14は、第3貫通孔20c内で、モータ歯車32に噛み合っている。
【0028】
図2、3に示すように、第1減速ユニット100aは、2個の第1クランクシャフト8を有している。第1入力歯車14は、2個の第1クランクシャフト8の夫々に固定されている。双方の第1入力歯車14が、モータ歯車32に噛み合っている。2個の第1クランクシャフト8は、軸線100xに対して対称の位置に配置されている。
図1では、第1クランクシャフト8と第1柱状部6bの双方の特徴を示すために、第1減速ユニット100aについては
図2、3とは異なる断面を示している。第1減速ユニット100aの動作原理は、第2減速ユニット100bと実質的に同じなので説明を省略する。なお、第1減速ユニット100aでは、第1内歯歯車4の歯数(内歯ピン45の個数)が82個で、第1外歯歯車16の歯数が81個である。そのため、第1減速ユニット100aの減速比は「1/83」となる。
【0029】
図1に示すように、第1内歯歯車4は、第2入力歯車12と第2偏心体24の間に位置している。上記したように、第1内歯歯車4は第1外歯歯車16に噛み合っており、第1偏心体7が第1外歯歯車16に嵌合している。よって、
図3に示すように、第1内歯歯車4と第1外歯歯車16と第1偏心体7は、軸線100xに直交する1つの平面上に位置する。そのため、第1外歯歯車16あるいは第1偏心体7が、第2入力歯車12と第2偏心体24の間に位置していると表現することもできる。
【0030】
なお、第2内歯歯車21と第2外歯歯車20と第2偏心体24も、軸線100xに直交する1つの平面上に位置する(
図2を参照)。よって、第1内歯歯車4(第1外歯歯車16、第1偏心体7)が、第2入力歯車12と第2内歯歯車21の間に位置していると表現することもできる。または、第1内歯歯車4(第1外歯歯車16、第1偏心体7)が、第2入力歯車12と第2外歯歯車20の間に位置していると表現することもできる。さらに、一対の深溝玉軸受5も、軸線100x方向において、第2入力歯車12と第2偏心体24の間に位置している。そのため、一対の深溝玉軸受5は、第3貫通孔20cの外側に位置している。
【0031】
第2減速ユニット100bと同様に、第1偏心体7と第1外歯歯車16と第1内歯歯車4は、第1減速ユニット100aの主要部品に相当する。減速装置100では、第1減速ユニット100aの主要部品が、軸線100x方向において、第2偏心体24と第2入力歯車12の間に位置している。そのため、軸線100x方向において、減速装置100の全長を、第1減速ユニット100aの長さと第2減速ユニット100bの長さの合計よりも短くすることができる。なお、減速装置100では、軸線100x方向において、第1減速ユニット100aが、第2減速ユニット100bの軸方向長さの範囲内に位置する。そのため、減速装置100の軸方向全長は、第2減速ユニット100bの軸方向長さに等しい。
【0032】
第1減速ユニット100aの第1内歯歯車4が、第2減速ユニット100bの第2キャリア44の円筒内面に形成されている。減速装置100の径方向において、第1減速ユニット100aが、第2減速ユニット100bの直径の範囲内に位置する。そのため、減速装置100の直径は、第2減速ユニット100bの直径に等しい。減速装置100では、第1減速ユニット100aの全体が、第2減速ユニット100b内に収容されている。
【0033】
上記したように、第1内歯歯車4は、第2入力歯車12と第2偏心体24の間に位置している。別言すると、軸線100x方向において、第1内歯歯車4は、第2クランクシャフト26のシャフト部分に位置している。そのため、第1内歯歯車4の直径は、第2減速ユニット100bの主要部品(第2偏心体24、第2外歯歯車20、第2内歯歯車21)のサイズの影響を受けない。第1内歯歯車4と第2内歯歯車21が軸線100xに直交する1つの平面上に配置される場合、第1内歯歯車4の直径は、第2減速ユニット100bの主要部品のサイズによって制限される。具体的には、第1内歯歯車の直径を、第3貫通孔20cの直径よりも小さくすることが必要である。この場合、第1減速ユニット100aが小型になるので、減速装置の総減速比(第1減速ユニット100aと第2減速ユニット100bの合計の減速比)が、減速装置100の総減速比よりも小さくなる。
【0034】
第1減速ユニットの直径を小さくせずに第1内歯歯車4と第2内歯歯車21を軸線100xに直交する1つの平面上に配置する場合、第3貫通孔20cの直径を、第1内歯歯車4の直径よりも大きくすることが要求される。この場合、径方向において、軸線100xから第2クランクシャフト26までの距離が長くなる。その結果、第2減速ユニット100bの直径が大きくなり、減速装置100の直径が大きくなる。第1減速ユニット100aの第1内歯歯車4を第2入力歯車12と第2偏心体24の間に配置することによって、減速装置の軸方向及び径方向のサイズが増大することを抑制することができる。
【0035】
図5は、第1内歯歯車304と第2内歯歯車321を軸線300xに直交する1つの平面上に配置した減速装置300を示す。
図5の減速装置300の第1減速ユニット300aの直径は、
図1に示した第1減速ユニット100aの直径と同じである。減速装置300では、第1内歯歯車304が第2入力歯車312と第2偏心体24の間に位置していない。なお、
図5では、説明に必要な不要な部品の符号を省略している。
【0036】
減速装置300では、円筒部344dが、第2ベースプレート344aから第2ベースプレート344aに向けて延びている。円筒部344dは、第3貫通孔320cを通過している。第1減速ユニット300aの内歯歯車304が、円筒部344dの内周の一部に形成されている。第1キャリア306は、第3貫通孔320c内で、円筒部344d(第2キャリア344)に支持されている。減速装置300は、第1減速ユニット300aを第3貫通孔320c内に配置した分だけ、軸線300Xからクランクシャフト26までの距離が長くなる。
【0037】
図6を参照し、減速装置100と減速装置300のサイズの違いを比較する。なお、
図6では、減速装置100及び300の夫々に、モータ30を取り付けた図を示している。モータ30の出力軸31は、モータ歯車36の孔33にキー結合している。減速装置100では、モータ30がモータ固定部27に固定される。減速装置300では、モータ30が、モータ固定部327に固定される。
【0038】
図6に示すように、減速装置300の軸線300Xから第2クランクシャフト26までの距離Ra300は、減速装置100の軸線100Xから第2クランクシャフト26までの距離Ra100よりも長い。その差の分だけ、減速装置300の半径R300は、減速装置100の半径R100よりも長い。なお、第2クランクシャフト26からケース350の外周までの距離Rb300は、第2クランクシャフト26からケース50の外周までの距離Rb100と等しい。減速装置100は、第1内歯歯車4が第2入力歯車12と第2偏心体24の間に位置していることによって、軸方向長さと直径が短くなる。
【0039】
上記したように、第1偏心体7から第1クランクシャフト8の延びる向きは、第2偏心体24から第2クランクシャフト26が延びる向きと反対である。減速装置100では、第1入力歯車14とモータ歯車32が噛み合う位置が、減速装置300と比べて第2入力歯車12側に位置する。よって、減速装置100の第1入力歯車14からモータ30までの距離La100は、減速装置300の第1入力歯車14からモータ30までの距離La300よりも短くなる。そのため、モータフランジ46を含めた減速装置100の軸方向長さL100は、モータフランジ346を含めた減速装置300の軸方向長さL300よりも短くなる。なお、モータフランジ46を除いた減速装置100の軸方向長さLb100は、モータフランジ346を除いた減速装置300の軸方向長さLb300と等しい。
【0040】
減速装置100の他の特徴について説明する。上記したように、第1減速ユニット100aは1個の第1外歯歯車16を有しており、第2減速ユニット100bは2個の第2外歯歯車20を有している。偏心揺動型の減速装置の場合、外歯歯車の数が多いほど、偏心回転の影響が小さくなり、減速装置の回転バランスが向上する。反面、外歯歯車の数が少ないほど、減速装置のコストが低くなる。複数の減速ユニットを直列に連結した減速装置では、減速装置の出力部材を備えた減速ユニット(第2減速ユニット100b)の回転バランスが良好であれば、それ以外の減速ユニット(第1減速ユニット100a)の回転バランスが多少悪くても、減速装置全体の回転バランスを良好に維持することができる。減速装置100では、第2減速ユニット100bの第2外歯歯車20を2個にすることにより、減速装置100全体の回転バランスを良好に維持している。また、第1減速ユニット100aの第1外歯歯車16を1個にすることにより、減速装置100のコストを低く抑えている。
【0041】
第1入力歯車14が第1クランクシャフト8に固定され、第2入力歯車12が第2クランクシャフト26に固定されている。減速装置100では、モータのトルクは、モータ歯車32から第1入力歯車14に伝達される間に増幅される。また、モータのトルクは、出力歯車6dから第2入力歯車12に伝達される間にも増幅される。モータのトルクは、第1減速ユニット100aの主要部品(偏心体、外歯歯車及び内歯歯車)及び第2減速ユニット100bの主要部品によっても増幅される。すなわち、減速装置100は、モータのトルクを4箇所で増幅する。別言すると、減速装置100は4個の減速部を有している。
【0042】
上記したように、減速装置100の軸線100Xからクランクシャフト26までの距離Ra100は、減速装置300の軸線300Xからクランクシャフト26までの距離Ra300よりも短い。そのため、減速装置100の出力歯車6dの直径は、減速装置300の出力歯車306dの直径よりも小さくすることができる。出力歯車6dと第2入力歯車12の間の減速比は、出力歯車306dと第2入力歯車312の間の減速比よりも大きい。減速装置100は、減速装置300よりも大きな減速比を得ることができる。
【0043】
減速装置100では、モータ歯車32と第1入力歯車14が第1減速部に相当し、第1減速ユニット100aの主要部品が第2減速部に相当し、出力歯車6dと第2入力歯車12が第3減速部に相当し、第2減速ユニット100bの主要部品が第4減速部に相当する。別言すると、第1減速部が第1減速ユニット100aの前段減速部に相当し、第2減速部が第1減速ユニット100aの後段減速部に相当し、第3減速部が第2減速ユニット100bの前段減速部に相当し、第4減速部が第2減速ユニット100bの後段減速部に相当する。
【0044】
第1偏心体7が、第1入力歯車14と第2入力歯車12の間に位置している。別言すると、軸線100x方向において、第1入力歯車14は、第1偏心体7に対して、第2入力歯車12とは反対側に位置している。第1偏心体7は、一対の円錐ころ軸受10の間で、第1クランクシャフト8に形成されている。第1入力歯車14は、一対の円錐ころ軸受10の外側で、第1クランクシャフト8に固定されている。そのため、第1偏心体7と第1入力歯車14の間は、少なくとも、1個の円錐ころ軸受10を配置するための距離が要求される。別言すると、第1偏心体7から第1入力歯車14に向けて、第1クランクシャフト8が延びることが要求される。
【0045】
第1入力歯車14と第2入力歯車12を第1偏心体7に対して同じ側に配置する場合、第1入力歯車14と第2入力歯車12の干渉を避けるために、第2クランクシャフト26を必要以上に延ばすことが必要である。その結果、第2減速ユニット100bの軸方向長さが長くなり、減速装置100の軸方向全長が長くなる。第1偏心体7から第1クランクシャフト8が延びる方向が第2偏心体24から第2クランクシャフト26が延びる方向と反対なので、第1クランクシャフト8の長さに影響されることなく、第2クランクシャフトの長さを必要最小限にすることができる。
【0046】
第1内歯歯車4だけでなく、一対の深溝玉軸受5も、軸線100x方向において、第2入力歯車12と第2偏心体24の間に位置している。そのため、減速装置100は、第3貫通孔20c内に第2キャリアを延ばす必要がない。
【0047】
ケース50にモータフランジ46が固定されている。モータフランジ46には、モータ30(
図6を参照)が固定される。ケース50と第2キャリア44(第2出力プレート44c)の間にオイルシール52が配置されている。軸線100x方向においてモータフランジ46と反対側で、プレート2が第2キャリア44(第2出力プレート44c)に固定されている。モータフランジ46の中央部には、突出部36が形成されている。突出部36は、プレート2に向かって延びている。別言すると、モータフランジ46の中央部が、第2減速ユニット100bの内部に突出している。突出部36には貫通孔35が形成されており、モータ歯車32が貫通孔35を通過している。モータ歯車32には、ガードプレート38が固定されている。突出部36とモータ歯車32の間に、2個のオイルシール34が配置されている。オイルシール52、34、モータフランジ46、プレート2によって、減速装置100内のオイルが減速装置100の外部に漏れることを防止している。なお、ケース50とモータフランジ46の間にOリング49が配置されている。そのため、減速装置100内のオイルが、ケース50とモータフランジ46の間から減速装置100の外部に漏れることはない。
【0048】
上記したように、モータフランジ46の中央部には、突出部36が形成されている。そのため、モータフランジ46を鉛直方向下側にして使用する場合、オイルシール34に異物(歯車等の磨耗粉)が浸入しにくい。さらに、モータ歯車32にガードプレート38が固定されているので、一層オイルシール34に異物が浸入しにくい。なお、ガードプレート38の直径は、貫通孔35の端部35aの直径よりも大きい。そのため、モータ歯車32からモータの出力シャフトを取り外したときに、モータ歯車32が落下することを防止することができる。
【0049】
図7を参照し、第2実施例の減速装置200について説明する。減速装置200は、減速装置100の変形例である。具体的には、減速装置200は、第1減速ユニット200aの構造が減速装置100と異なる。減速装置200の部品であって減速装置100と実質的に同じ部品には、同じ符号又は下二桁の数字が同じ符号を付すことにより、説明を省略する。
【0050】
第1減速ユニット200aは、減速装置200の軸線200xと同軸の第1クランクシャフト208を備える。減速装置100が2個の第1クランクシャフト8を有するのに対して、減速装置200は、1個の第1クランクシャフト208を有する。第1クランクシャフト208は、軸方向に並ぶ2個の第1偏心体207を備えている。第1偏心体207の夫々に、第1外歯歯車216が嵌合している。第1偏心体207の偏心方向が180°ずれているので、第1外歯歯車216の偏心方向も180°ずれている。2個の第1外歯歯車216が、第1内歯歯車204に噛み合いながら偏心回転する。第1減速ユニット200aは、第1外歯歯車216の偏心方向が軸線200xに対して対称なので、回転バランスがよい。第1クランクシャフト208は貫通孔214を有しており、貫通孔214にシャフト232が嵌合している。なお、シャフト232の孔33に、モータの出力シャフトが嵌合している。よって、シャフト232は、モータの出力シャフトに相当する。
【0051】
第1クランクシャフト208は、深溝玉軸受210によって、キャリア206に支持されている。キャリア206は、出力歯車206dと第1出力プレート206cと第1柱状部206bとベースプレート206aで構成されている。キャリア206は、深溝玉軸受205によって、第2キャリア44に支持されている。
【0052】
第1及び第2実施例では、第2減速ユニットのキャリア(第2キャリア)が第1減速ユニットのケースを兼ねている例について説明した。第1減速ユニットのケースを別に用意し、第2減速ユニットのキャリアの円筒内面に固定してもよい。
【0053】
上記実施例では、第1及び第2減速ユニットが、外歯歯車が偏心回転するタイプの減速ユニットについて説明した。第1減速ユニットについては、内歯歯車が偏心回転するタイプの減速ユニットを採用することもできる。この場合の第1減速ユニットは、以下のように表現することができる。第1減速ユニットは、偏心体を有するクランクシャフトと、クランクシャフトを支持するケースと、ケースに支持されているとともに内歯歯車に噛み合っている外歯歯車を備えている。クランクシャフトには入力歯車が固定されており、その入力歯車にモータトルクが供給される。内歯歯車は、偏心外に係合しており、クランクシャフトの回転に伴って偏心回転する。第1減速ユニットは、入力歯車に供給されたモータトルクを増幅して外歯歯車から出力し、外歯歯車から出力されるトルクは、第2減速ユニットの入力歯車に供給される。
【0054】
本明細書では、「減速ユニットの直径」という表現を用いた。しかしながら、この表現は、本明細書が開示する技術を、外形が真円の減速ユニットに限定することを意図するものではない。例えば、減速ユニットの外径は、矩形、多角形であってもよい。減速ユニットの径方向サイズは、主要部品のうちの最大の部品の直径で規定されることに留意されたい。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。