(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から
図4を参照して、回路装置の一例として混成集積回路装置10の構造を説明する。
【0014】
図1を参照して、混成集積回路装置10は、回路基板12と、回路基板12の上面で重畳された3つのリード28、30、31A−31Cと、回路基板12の上面でこれらのリードに接近して配置されたトランジスタ34等の回路素子と、回路基板12の上面に固着された額縁状のケース材14と、ケース材14に囲まれる領域に充填された封止樹脂16とを主に備えている。
【0015】
回路基板12は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等を主材料とする回路基板である。回路基板12としてアルミニウムより成る基板を採用した場合は、回路基板12の両主面は陽極酸化膜により被覆されている。回路基板12の厚みは、放熱性を高めるために例えば0.5mm以上2.0mm以下程度である。尚、回路基板12の材料としては金属以外の材料も採用可能であり、例えばガラスエポキシ基板等の樹脂材料またはセラミック等も採用可能である。ここでは、
図2に示すように、金属からなる回路基板12の上面は樹脂材料から成る厚みが60μm程度の絶縁層50により被覆され、この絶縁層50の上面にアイランド18が形成されている。
【0016】
リード28は、ケース材14に組み込まれており、一端が紙面上にて左側で外部に導出すると共に、回路基板12の中央部を横切るように回路基板12の上面に配置されている。このリード28は直流電源の正極側に接続され、インバータ回路により変換される前の直流電力が通過する。また、リード28の幅は例えば8mm程度であり、リード28の上方に重畳して配置されるリード30の幅(6.5mm)や、リード31A−31Cの幅(5.0mm)よりも幅広に形成される。このことにより、下方に配置される出力リード28の上面を部分的に露出させて、この露出する上面部分に金属細線を接続することが可能となる。
【0017】
リード30は、リード28の上方で重畳するように、ケース材14に組み込まれている。ここでは、リード30は外部に露出せずに、セラミック基板22Dの上面に形成された導電パターンを経由して、外部に導出するリード29と接続されている。リード30は、外部に露出するリード29と、セラミック基板22Dに実装された抵抗を経由して直流電源の負極側に接続され、装置内部に於いて、直流電力を引き回す機能を有する。また、上記したようにリード30の幅は、リード30の上方に重畳して配置されるリード31A−31Cよりも広いので、リード30の上面の一部は、リード31A−31Cに被覆されず露出する。そして、この露出する部分のリード30の上面には金属細線が接続される。
【0018】
リード31A−31Cは、略L字形状を備えており、その一辺(紙面上にて横方向に長い辺)がリード28、30と重畳する位置に配置されている。更に、リード31A−31Cの紙面上に於ける下端は、ケース材14から外部に露出している。
【0019】
リード31Aは、セラミック基板22A、22Eに実装されたトランジスタ等の回路素子と金属細線を経由して接続されている。リード31Bは、セラミック基板22B、22Fに実装されたトランジスタ等の回路素子と接続されている。更に、リード31Cは、セラミック基板22G、22Cに実装された回路素子と接続されている。リード31A−31Cが接続される構造は、
図3および
図4を参照して後述する。ここで、リード31A、31Bは、装置に内蔵されたインバータ回路により変換された交流電力が外部に出力されるリードである。
【0020】
ここで、上記した各リード28、30、31A−31Cの厚みは、例えば1mm以上である。更に、各リードの外部に露出する部分には、ネジ止めの為の貫通孔が設けられる場合とセット側PCBに半田接続されるオンボードの場合がある。
【0021】
また、
図1(B)を参照して、リード28、リード30、リード31Aとは、ケース材14の絶縁材料が両者の間に介在することにより絶縁されている。具体的には、リード28とリード30とが厚み方向に離間する距離は例えば1mm以上である。同様に、リード30とリード31Aとが厚み方向に離間する距離も1mm以上である。更に、リード28の下面と回路基板12の上面も、ケース材14の絶縁材料により絶縁されており、この絶縁材料の厚さは例えば1mm以上である。
【0022】
ケース材14は、エポキシ樹脂等の樹脂材料を額縁形状に射出成形したものであり、上記した各リードが組み込まれている。また、回路基板12の周辺部上面にケース材14が固着されることにより、トランジスタ34等の回路素子を樹脂封止する空間が回路基板12の上面に設けられる。更に、ケース材14の紙面上における上下側辺には、内蔵される半導体素子の制御電極と接続される配線リード40が配置されている。
【0023】
セラミック基板22A−22Gは、Al
20
3(アルミナ)やAlN(窒化アルミニウム)等の無機固体材料から成り、厚みは例えば0.25mm以上1.0mm以下である。セラミック基板22は、上面に実装されるトランジスタ34と回路基板12とを絶縁させる働きを有する。セラミック基板22が回路基板12に固着される構造は
図2を参照して後述する。また、トランジスタ34やダイオード36が動作時に発生する熱は、セラミック基板22および回路基板12を経由して外部に放出される。ここで、トランジスタ34等の回路素子は必ずしもセラミック基板を介して回路基板12に固着される必要はなく、回路基板12の上面に直に回路素子が固着されても良い。
【0024】
図1(B)を参照して、配線リード40の上端部付近は基板42の貫通孔に差し込まれて固定されている。即ち、回路基板12の上面に配置されたトランジスタ34等の回路素子は、配線リード40を経由して基板42と電気的に接続されている。基板42には、複数個の信号リード44が配置されており、この信号リード44は外部接続端子として機能する。基板42は、例えば厚みが1mm程度のガラスエポキシ基板の主面に導電パターンが形成されたものである。基板42はセラミック基板、金属基板でもかまわない。
【0025】
封止樹脂16は、アルミナ等のフィラーが充填されたエポキシ等の樹脂材料から成り、ケース材14により囲まれる回路基板12の上面の空間に充填される。そして、封止樹脂16は、セラミック基板22A等、トランジスタ34、ダイオード36、金属細線26、基板42等を樹脂封止している。
【0026】
図1(A)を参照して、回路基板12の上面には、複数個のセラミック基板が配置されている。具体的には、7個のセラミック基板22A−22Gが回路基板12の上面に固着されており、各々のセラミック基板22A−22Gの上面に所定の回路素子が実装されている。
【0027】
セラミック基板22A、22B、22E、22Fの上面には、IGBT、MOSFET等のトランジスタおよびダイオードが実装されており、これらの素子によりインバータ回路が構成される。そして、セラミック基板22Cにはダイオードが実装され、セラミック基板22GにはIGBT、MOSFET等のトランジスタが実装され、これらの素子によりコンバータ回路が構成される。また、セラミック基板22Dの上面には電流値を検出するための抵抗が配置されている。
【0028】
本形態では、例えば70アンペア程度の直流電流が通過する幅の広いリード28とリード30とを、回路基板12の上面にて重畳して配置している。このようにすることで、両リードを同一平面上に配置した場合と比較すると、リード28、30が占有する面積が狭くなるので、装置全体の小型化なものになる。
【0029】
更に本形態では、回路基板12の中央部付近を等分する領域に、リード28、30を重畳して配置している。そして、これらのリードが重畳して配置される領域の近傍にトランジスタ等の回路素子を配置して金属細線を経由して接続している。このようにすることで、リード28、30に対してトランジスタ等の回路素子が接近して配置され、両者を接続する金属細線の線長を短くして、接続手段の電気抵抗を小さくすることが可能となる。
【0030】
更にまた、本形態では、リード28とリード30と共に、リード31A−31Cの一部をこれらのリードと重畳させている。更に、リード31A−31Cの重畳する箇所に配置された部分は金属細線を経由して半導体素子等の回路素子と接続され、これらのリード31A−31Cの端部は外部に露出している。このことにより、装置に内蔵された半導体素子を経由して出力される電流の経路の大部分がリード31A−31Cとなるので、この経路の電気抵抗を低減することが可能となる。
【0031】
また、リード31A−31Cは、アルファベットのL字状を呈しており、一辺が半導体素子等の回路素子に接続されると共に、他辺の端部がケース材14から外部に露出して外部端子を形成している。このことにより、回路素子と外部端子とが最短の距離で接続される。
【0032】
更に本形態では、直流電源の正極側に接続されるリード28と、直流電源の負極側に接続されるリード30とを重畳することによりペア配線の効果が得られる。具体的には、リード30を電流が通過する際に発生する磁界と、リード28を電流が通過する際に発生する磁界とが互いに打ち消しあう事により、発生するノイズが小さくなる。
【0033】
更に本形態では、断面積が大きいリード28、30、31A−31Cを経由して回路基板12の上面にてトランジスタ等の回路素子同士を接続することにより、電気特性が向上される。具体的には、配線インダクタンスが低減され、L負荷でのスイッチング動作時に発生するスイッチング電圧振動、ノイズの発生量が抑制される。
【0034】
図2を参照して、セラミック基板22が回路基板12に固着される構造を説明する。先ず、回路基板12がアルミニウムから成る回路基板の場合は、回路基板12の上面および下面は、陽極酸化により形成されたアルマイトから成る酸化膜46、48により被覆される。そして、酸化膜46が形成される回路基板12の上面は、フィラーが高充填された樹脂材料から成る絶縁層50により被覆される。
【0035】
回路基板12の上面には、厚みが50μm程度の銅等の金属膜を所定形状にエッチングしたアイランド18が形成されている。このアイランド18は電気信号が通過する配線としては用いられない。本形態では、アイランド18は、セラミック基板22の固着に用いられる固着材38(半田)の濡れ性を向上させるために用いられる。
【0036】
セラミック基板22の下面は、厚みが250μm程度の金属膜20により被覆されている。ここで、金属膜20は、セラミック基板22の下面全域にベタの状態で形成されている。このようにすることで、固着材38として半田を用いた場合、セラミック基板22の下面全域に半田が良好に溶着する。また、回路基板12の上面に設けられたアイランド18にも良好に半田が溶着する。従って、固着材38を介してセラミック基板22が強固に回路基板12に固着される。更に、固着材38として、熱伝導性に優れる金属である半田を採用することで、トランジスタ34の動作時に発生する熱が良好に回路基板12に伝導する。
【0037】
セラミック基板22の上面には、厚みが250μm程度の金属膜を所定形状にエッチングした導電パターン24が形成されている。そして、この導電パターン24にトランジスタ34やダイオード36が半田等の導電性固着材を介して実装されている。
【0038】
トランジスタ34としては、MOSFET、IGBT、バイポーラ・トランジスタが採用される。本形態では、トランジスタ34は、例えば電流値が1アンペア以上の大電流のスイッチングを行う。トランジスタ34の下面に設けられた電極は、半田等の導電性固着材を介して導電パターン24と接続される。以下の説明では、トランジスタとしてIGBTが採用された場合について説明する。
【0039】
ダイオード36は、上面に設けられた電極が金属細線26を介してトランジスタ34と接続され、下面の電極は半田等の導電性固着剤を介して導電パターン24に接続されている。
【0040】
具体例としては、トランジスタ34がIGBTの場合は、トランジスタ34の上面に設けられたエミッタ電極が、金属細線26を経由して、ダイオードの上面に設けられたアノード電極と接続される。そして、トランジスタ34の下面に設けられたコレクタ電極が、導電パターン24を経由して、ダイオードの下面に設けられたカソード電極と接続される。この接続構造の詳細は、
図3および
図4を参照して後述する。
【0041】
ここで、上記したトランジスタ等の電気的接続に用いられる金属細線26は、例えば直径が150μm〜500μm程度のアルミニウムから成るものである。また、金属細線26の替りに、アルミニウム等の金属箔をリボン状に形成したリボンボンディングが採用されても良い。
【0042】
本形態では、背景技術と同様に、回路基板12の上面には樹脂から成る絶縁層50が設けられる。絶縁層50の厚みは例えば60μm(50μm以上70μm以下)である。絶縁層50の材料は背景技術と同様であり、エポキシ樹脂等の樹脂材料にアルミナ等のフィラーが高充填されたものである。
【0043】
絶縁層50で回路基板12の上面を被覆する目的は、アイランド18の形成を容易にするためである。即ち、回路基板12の上面を被覆する酸化膜46の上面に直に銅から成るアイランド18を形成することも可能ではあるが、このようにすると回路基板12とアイランド18との密着強度が弱くなる。このため、本形態では、回路基板12とアイランド18との間に有機性材料からなる絶縁層50を介在させることにより、アイランド18と回路基板12との密着強度を向上させている。
【0044】
薄く形成される絶縁層50の耐圧は背景技術のものと比較して低くなる。しかしながら、絶縁層50の上面に形成されるアイランド18はトランジスタ34とは接続されないので、本形態では絶縁層50には高耐圧は必要とされない。
【0045】
更に、本形態の薄い絶縁層50の熱伝導率は4W/mK以上であり、背景技術の200μm程度に厚い絶縁層102の熱伝導率と比較すると4倍以上である。従って、トランジスタ34から発生した熱を、絶縁層50を経由して良好に外部に放出させることが可能となる。
【0046】
図3は、混成集積回路装置の内部にて、コンバータ回路を構成するIGBT(Q1)およびダイオードD1が接続される構造を説明する。ここでは、セラミック基板22Gの上面に2つのIGBT(Q1)が実装され、セラミック基板22Cの上面に5個のダイオードが実装されている。また、IGBT(Q1)とダイオードD1とは、リード28、リード30およびリード31Cが重畳される領域を挟んで、紙面上にて上下方向に対向するように配置されている。
【0047】
IGBT(Q1)の裏面に設けられたコレクタ電極は、半田等の導電性固着材を介してセラミック基板22Gの導電パターンに接続され、上面のエミッタ電極は金属細線26を介してリード30と接続され、上面のゲート電極は金属細線26を介して配線リード40と接続される。更に、セラミック基板22Gの導電パターンは、金属細線26を経由してリード31Cと接続されている。このことにより、IGBT(Q1)のエミッタ電極はリード30を経由して直流電源の正極側と接続される。ここでは、2つのIGBT(Q1)の各電極が並列に接続されており、このことにより大きな電流容量が確保される。
【0048】
セラミック基板22Cの上面には、5つのダイオードD1のカソード電極が半田を介して接続されている。そして、ダイオードD1の上面のアノード電極は、金属細線26を経由してリード31Cと接続され、下面のカソード電極は半田を介してセラミック基板22Cの上面に形成された導電パターンと接続されている。更に、セラミック基板22C上の導電パターンは金属細線を経由してリード28と接続されている。このことにより、ダイオードD1のカソード電極は直流電源の負極側と接続される。
【0049】
上記構成により、セラミック基板22Gに実装されたIGBT(Q1)のカソード電極と、セラミック基板22Cに実装されたダイオードD1のアノード電極とは、金属細線およびリード31Cを経由して接続される。ここで、IGBT(Q1)等が含まれるコンバータ回路の構成等は
図5(A)を参照して後述する。
【0050】
図4を参照して、インバータ回路を構成する各素子が接続される構造を説明する。ここでは、回路基板12の中央部付近に紙面上で横方向にリード28、リード30およびリード31Aが重畳して配置されている。リード28は、コンバータ回路により昇圧された直流電圧が印加されている。更に、リード31Aからは、リード28、30から供給された電流をスイッチングすることにより変換された交流電流が外部に出力される。
【0051】
リード28、30、31Aの紙面に於ける上側では、セラミック基板22EにIGBT(Q3)およびダイオードD3が接続されている。これらの裏面電極は半田を介してセラミック基板22Eの上面に設けられた同一の導電パターンに固着される。従って、IGBT(Q3)の裏面に設けられたコレクタ電極と、ダイオードD3の裏面に設けられたカソード電極とは、セラミック基板22Eの導電パターンを経由して接続される。また、IGBT(Q3)の上面に設けられたゲート電極は、金属細線26を経由してケース材14の側壁に備えられた配線リード40と接続される。更に、IGBT(Q3)のエミッタ電極およびダイオードD3のアノード電極は、複数の金属細線26を経由して、リード30と接続される。また、セラミック基板22Eの導電パターンは、金属細線26を経由して、リード31Aと接続されている。
【0052】
尚、セラミック基板22Eの上面には2つのIGBT(Q3)が実装されて両素子の各電極は共通に接続されている。即ち、2つのIGBT(Q3)は並列に接続されており、多くの電流容量が確保される。このことに関しては、他のセラミック基板に関して同様である。
【0053】
セラミック基板22Aの上面に設けられた導電パターンには、半田等の導電性固着材を介して、IGBT(Q2)の裏面に設けたコレクタ電極と、ダイオードD2の裏面に設けたカソード電極が実装されている。これらの素子が実装される導電パターンは、金属細線26を経由して、リード28と接続される。IGBT(Q2)のゲート電極は金属細線26を介して夫々が配線リード40に接続されている。また、IGBT(Q2)の上面に形成されたエミッタ電極とダイオードD2の上面に形成されたアノード電極は、金属細線を経由してリード31Aと接続されている。
【0054】
即ち、本形態では、セラミック基板22Eに実装されたIGBT(Q3)と、セラミック基板22Aに実装されたIGBT(Q2)とは、金属細線26およびリード31Aを経由して接続される。
【0055】
上記のように接続されたIGBT(Q2)およびIGBT(Q3)により直流電力が交流電力に変換される。具体的には、リード28およびリード30から供給される直流電力が、IGBT(Q2)およびIGBT(Q3)に供給される。そして、これらのIGBTが制御信号に基づいて相補的にスイッチングを行うことにより交流電力が生成され、この交流電力はリード31Aを経由して外部に出力される。
【0056】
上記したように、インバータ回路を構成するIGBT(Q2)およびIGBT(Q3)は、リード31Aの直近に配置されて接続されており、このリード31Aは外部まで連続して延在して外部出力端子を構成している。従って、両IGBTにより変換された交流電力を外部に出力する経路の大部分が、断面積が大きいリード31Aとなるので、この経路の電気抵抗を小さくすることが可能となる。
【0057】
ここで、
図1(A)を参照して、セラミック基板22F、22Bの上面に実装される回路素子およびその接続構造も、上記の場合と同様である。即ち、セラミック基板22F、22Bの上面には、ダイオードとIGBTが実装される。そして、セラミック基板22Fに実装されたIGBTと、セラミック基板22Bに実装されたIGBTとが、金属細線26を経由して直列に接続される。この結果、リード30、リード28から供給される直流電力は、セラミック基板22F、22Bに実装されたIGBTにより交流電力に変換され、この交流電力はリード31Bを経由して外部に出力される。
【0058】
図5を参照して、次に、上記した混成集積回路装置10が組み込まれる太陽電池発電システムの回路構成を説明する。
図5(A)は太陽電池発電システムを全体的に示す回路図であり、
図5(B)はこのシステムに含まれるIGBT(Q3)を詳細に示す回路図である。
【0059】
この図に示す発電システムは、太陽電池70と、太陽電池開閉部72と、昇圧チョッパ74と、インバータ76とリレー78、80とを備えている。この様な構成の発電装置により発電された電力は、電力系統82や自立運転用負荷84に供給される。また、本形態の混成集積回路装置10には、昇圧チョッパ74の一部であるコンバータ86およびインバータ76が組み込まれる。
【0060】
太陽電池70は、照射された光を電力に変換して出力する変換器であり、直流の電力を出力している。ここでは、1つの太陽電池70が図示されているが、複数個の太陽電池70が直列、および並列で接続された状態で採用されても良い。
【0061】
太陽電池開閉部72は、太陽電池70で発電された電気を集めて逆流を防止すると共に、昇圧チョッパ74に直流電流を供給する機能を備えている。
【0062】
昇圧チョッパ74は、太陽電池70から供給された直流電力の電圧を昇圧させる機能を備えている。昇圧チョッパ74では、IGBT(Q1)がオン動作およびオフ動作を周期的に繰り返すことにより、太陽電池70により発電された250V程度の電圧の直流電力を、300V程度の直流電力に昇圧している。具体的には、昇圧チョッパ74は、太陽電池の出力端子に対して直列に接続されたコイルL1と、コイルL1と接地端子との間に接続されたIGBT(Q1)とを備えている。そして、コイルL1により昇圧された直流電力は、逆流素子の為のダイオードD1および平滑用コンデンサC1を介して、次段のインバータ76に供給される。
【0063】
本形態では、昇圧チョッパ74に含まれるIGBT(Q1)およびダイオードD1が、
図1(A)に示すセラミック基板22G、22Cの上面に載置される。また、IGBT(Q1)のスイッチングは、
図1(B)に示す、信号リード44および配線リード40を経由して外部から供給される制御信号に基づいて行われる。即ち、基板42に実装された制御素子から出力される制御信号に基づいて、インバータ回路およびコンバータ回路は動作する。
【0064】
昇圧チョッパ74により昇圧された直流電力は、インバータ76により所定の周波数の交流電力に変換される。インバータ76は、昇圧チョッパ74の出力端子間に直列に接続された2つのIGBT(Q2)およびQ3と、同様に直列に接続された2つのIGBT(Q4)およびQ5とを備えている。また、これらのトランジスタのスイッチングは、外部から供給される制御信号により制御されており、Q2とQ3およびQ4とQ5は相補にスイッチングしている。そして、これらのスイッチングにより所定の周波数とされた交流電力は、Q2とQ3との接続点およびQ4とQ5との接続点から、外部に出力される。ここでは、4つのトランジスタから成る2相のインバータ回路が構築されている。尚、
図1(A)を参照すると、Q2、Q3、Q4およびQ5は、セラミック基板22A、22E、22Bおよび22Fに実装されている。
【0065】
インバータ76により変換された交流電力は、商用の電力系統82または自立運転用負荷84に供給される。電力系統82とインバータ76との間にはリレー78が介装されており、通常時にはリレー78は導通状態と成っており、どちらか一方に異常が検出されたらリレー78は遮断状態とされる。また、インバータ76と自立運転用負荷との間にもリレー80が介装されており、異常状態の際にはリレー80により電力の供給が遮断される。
【0066】
本形態では、
図1(A)を参照して、上記したインバータ回路の出力の経路の大部分は、リード31A、31Bである。リード31A、31Bは、電気抵抗値の低い銅から成り、更に上記したように断面積が大きいので、変換された電極が出力される経路の電気抵抗が低くなる。
【0067】
更に本実施の形態では、昇圧チョッパ74およびインバータ76に含まれる素子を、
図2に示すセラミック基板22の上面に固着している。従って、インバータ回路が動作しても、回路基板12の上面に形成されたアイランド18の上面には電圧は印加されないので、回路基板12とアイランド18とのショートは発生しない。
【0068】
図5(B)を参照して、上記したインバータ76に含まれるトランジスタの一つであるIGBT(Q3)は、2つのIGBTであるIGBT(Q31)、(Q32)と、これらのトランジスタの主電極に逆接続された4つのダイオードD31、D32、D33、D34とから構成されている。
【0069】
IGBT(Q31)とIGBT(Q32)とは並列に接続されている。具体的には、IGBT(Q31)およびIGBT(Q32)の、ゲート電極、エミッタ電極およびコレクタ電極が、共通に接続されている。このようにすることで、1つのトランジスタの場合と比較すると、大きい電流容量が得られる。
【0070】
また、ダイオードD31、D32、D33、D34のアノード電極はIGBT(Q31)とIGBT(Q31)のエミッタ電極に接続さている。そして、これらのダイオードのカソード電極は、IGBT(Q31)とIGBT(Q32)のコレクタ電極に接続されている。
【0071】
図6から
図8を参照して、次に、上記した混成集積回路装置10の製造方法を説明する。
【0072】
図6を参照して、先ず、回路基板12を用意する。
図6(A)は本工程を示す平面図であり、
図6(B)および
図6(C)は本工程を示す断面図である。
【0073】
図6(A)および
図6(B)を参照して、用意される回路基板12は厚みが1mm〜3mm程度の厚いアルミニウムや銅等の金属から成る回路基板である。回路基板12の材料としてアルミニウムが採用された場合、回路基板12の上面および下面は陽極酸化膜により被覆されている。尚、回路基板12は、大型の回路基板に対してプレス加工または研削加工を行うことにより所定の形に成形されている。
【0074】
回路基板12の上面に貼着された銅箔を所定形状にエッチングすることにより、アイランド18A−18Gが形成されている。このアイランド18A−18Gは、トランジスタ等の回路素子が実装されるものではなく、後述するセラミック基板の実装に使用される半田の濡れ性を向上させるためのものである。
【0075】
図6(C)を参照して、回路基板12の材料としてアルミニウムが採用された場合、回路基板12の上面および下面は、陽極酸化により生成されたアルマイトから成る酸化膜46、48により被覆される。更に、酸化膜46が形成される酸化膜46の上面は絶縁層50により被覆される。絶縁層50の組成や厚みは上記したとおりである。絶縁層50を設けることにより、有機性材料である樹脂を含む絶縁層50とアイランド18との密着性が良好なので、アイランド18を回路基板12に対して強固に密着させることが可能となる。
【0076】
図7を参照して、次に、回路基板12の所定箇所にセラミック基板を配置する。
図7(A)は本工程を示す平面図であり、
図7(B)および
図7(C)は断面図である。
【0077】
図7(A)を参照して、トランジスタやダイオード等の所定の回路素子が実装されたセラミック基板22A−22Gを、回路基板12の上面に固着する。ここで、各セラミック基板22A−22Gは、前工程にて回路基板12の上面に形成されたアイランド18A−18Gの上面に固着される。
【0078】
図7(C)を参照して、セラミック基板22の上面および下面には、導電パターン24および金属膜20が形成されている。そして、セラミック基板22の下面を被覆する金属膜20が、半田等の固着材38を介して、回路基板12の上面に設けられたアイランド18に固着される。セラミック基板22の下面に全面的にベタの金属膜20を設けることにより、セラミック基板22の下面全域に固着材38が密着する。従って、セラミック基板22は強固に回路基板12に接合される。ここで、セラミック基板22の上面には予めトランジスタ34およびダイオード36が固着されても良いし、セラミック基板22を回路基板12に固着した後にこれらの素子が実装されても良い。
【0079】
本工程では、アイランド18の上面に半田ペーストを塗布し、この半田ペーストの上面にセラミック基板22を載置した後に加熱硬化するリフロー工程により、セラミック基板22を面実装している。ここで、セラミック基板22の下面に形成される金属膜20と、回路基板12の上面に形成されるアイランド18は、両者ともに金属から成り半田の濡れ性が優れている。従って、溶融された半田からなる固着材38が両者に全面的に接触し、良好な接合が得られる。
【0080】
図8(A)を参照して、次に、回路基板12の上面周辺部にケース材14を接着する。ケース材14には、上記したように、出力リード28、30、31Aや配線リード40が予め組み込まれている。ケース材14は、エポキシ樹脂等の接着材を介して回路基板12の上面に接着される。
【0081】
図8(B)を参照して、次に、金属細線26で回路素子と各リードとを電気的に接続する。具体的には、セラミック基板22Bの上面に固着されたトランジスタ34のゲート電極を、金属細線26を経由して配線リード40と接続する。また、トランジスタ34の上面に配置されたエミッタ電極を、ダイオード36の上面に設けられたアノード電極と共に、出力リード30と接続する。また、セラミック基板22Fの上面に実装されたトランジスタ34は、金属細線26を経由して出力リード28と接続される。更に、セラミック基板22Eの上面に形成された導電パターンは、金属細線26を経由してリード31Aと接続される。
【0082】
本工程では、回路素子の接続には直径が150μm〜500μm程度のアルミニウムから成る金属細線が使用される。また、金属細線によるワイヤボンディングの替りに、リボン状のアルミ箔を用いたリボンボンディングが採用されても良い。
【0083】
図8(C)を参照して、次に、配線リード40の上端部を基板42の孔部に挿入する。このことにより、各配線リード40が、基板42の表面に形成された導電パターンを経由して、基板42に備えられた信号リード44と接続される。
【0084】
更に、ケース材14に囲まれる空間に封止樹脂16を充填する。封止樹脂16としては、シリコン樹脂やエポキシ樹脂が採用される。また、アルミナ等のフィラーが充填された樹脂材料が封止樹脂16として採用されても良い。封止樹脂16により、トランジスタ34、ダイオード36、金属細線26、配線リード40、基板42等が樹脂封止される。
【0085】
以上の工程を経て
図1に示す混成集積回路装置10が製造される。