(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作業機位置情報は、前記作業機に取り付けられたバケットの刃先の位置に関する情報である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の掘削機械の施工管理装置。
作業機と、前記作業機が取り付けられる旋回体と、前記旋回体を搭載して走行する走行体とを有する油圧ショベルが施工した結果に関する情報を生成する施工管理装置であり、
前記油圧ショベルの現在位置及び姿勢に関する情報を検出する車両状態検出部と、
前記車両状態検出部の検出結果に基づき、前記作業機の位置に関する情報である作業機位置情報を求める作業機位置情報生成部と、
前記車両状態検出部の検出結果に基づき、前記走行体の位置に関する情報である走行体位置情報を求める走行体位置情報生成部と、
前記走行体の動作を制御するパイロット圧方式の走行レバーと、
前記走行レバーに対する入力を検出する操作検出部と、
前記作業機位置情報又は前記走行体位置情報のいずれか一方を用いて、変化した施工対象を示す情報である施工位置情報を生成する施工位置情報生成部と、を含み、
前記施工位置情報生成部は、前記走行体を走行させる旨の入力を前記操作検出部が検出したときに、前記走行体位置情報を用いて前記施工位置情報を生成し、前記走行体を停止させる旨の入力を前記操作検出部が検出したときに、前記作業機位置情報を用いて前記施工位置情報を生成する、油圧ショベルの施工管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態は、掘削機械の一例として油圧ショベルを説明するが、以下の実施形態で対象とされる掘削機械は、掘削又は埋め戻す機能を有していれば油圧ショベルに限定されるものではない。
【0022】
<掘削機械の全体構成>
図1は、本実施形態に係る油圧ショベル100の斜視図である。
図2は、油圧ショベル100の側面図である。
図3は、油圧ショベル100の背面図である。
図4は、油圧ショベル100が備える制御系を示すブロック図である。
図5は、掘削機械の施工管理装置90が備える処理部91のブロック図である。
図6は、設計地形データによって示される設計地形を示す図である。本実施形態において、掘削機械としての油圧ショベル100は、本体部としての車両本体1と作業機2とを有する。車両本体1は、旋回体としての上部旋回体3と走行体としての走行装置5とを有する。上部旋回体3は、機関室3EGの内部に、図示しない動力発生装置及び油圧ポンプ等の装置を収容している。機関室3EGは、上部旋回体3の一端側に配置されている。
【0023】
本実施形態において、油圧ショベル100は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関を動力発生装置としているが、油圧ショベル100はこのようなものに限定されない。油圧ショベル100は、例えば、内燃機関と発電電動機と蓄電装置とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド方式の動力発生装置を備えるもの等であってもよい。
【0024】
上部旋回体3は、運転室4を有する。運転室4は、上部旋回体3の他端側に載置されている。すなわち、運転室4は、機関室3EGが配置されている側とは反対側に配置されている。運転室4内には、
図4に示す、表示入力装置38及び操作装置25が配置される。これらについては後述する。走行装置5は、上部旋回体3を搭載する。走行装置5は、履帯5a、5bを有している。走行装置5は、左右に設けられた油圧モータ5cの一方又は両方が駆動し、履帯5a、5bが回転することにより、油圧ショベル100を走行させる。作業機2は、上部旋回体3の運転室4の側方側に取り付けられている。
【0025】
油圧ショベル100は、履帯5a、5bの代わりにタイヤを備え、図示しないディーゼルエンジンの駆動力を、トランスミッションを介してタイヤへ伝達して走行が可能な走行装置を備えたものであってもよい。例えば、このような形態の油圧ショベル100としてホイール式油圧ショベルであってもよい。また、油圧ショベル100は、このようなタイヤを有した走行装置を備え、さらに車両本体(本体部)に作業機が取り付けられ、
図1のような上部旋回体3及びその旋回機構を備えていない構造を有する、例えばバックホウローダであってもよい。すなわち、バックホウローダは、車両本体に作業機が取り付けられ、車両本体の一部を構成する走行装置を備えたものである。
【0026】
上部旋回体3は、作業機2及び運転室4が配置されている側が前であり、機関室3EGが配置されている側が後である。前に向かって左側が上部旋回体3の左であり、前に向かって右側が上部旋回体3の右である。また、油圧ショベル100又は車両本体1は、上部旋回体3を基準として走行装置5側が下であり、走行装置5を基準として上部旋回体3側が上である。油圧ショベル100が水平面に設置されている場合、下は鉛直方向、すなわち重力の作用方向側であり、上は鉛直方向とは反対側である。
【0027】
作業機2は、ブーム6とアーム7とバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して車両本体1の前部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が取り付けられている。バケット8は、バケットピン15を中心として揺動する。
【0028】
図2に示すように、ブーム6の長さ、すなわち、ブームピン13からアームピン14までの長さは、L1である。アーム7の長さ、すなわち、アームピン14の中心からバケットピン15の中心までの長さはL2である。バケット8の長さ、すなわち、バケットピン15の中心からバケット8の刃先8Tまでの長さはL3である。
図1に示すように、刃先8Tは、バケット8のバケットピン15とは反対側に取り付けられた刃8Bの先端である。バケット8は、複数の刃8Bを有している。複数の刃8Bは一列に配列されている。複数の刃先8Tの列を、適宜刃先列という。
【0029】
バケット8は、複数の刃8Bを有していなくてもよい。つまり、
図1に示すような刃8Bを有しておらず、刃先が鋼板によってストレート形状に形成されたようなバケットであってもよい。作業機2は、例えば、単数の刃を有するチルトバケットを備えていてもよい。チルトバケットとは、バケットチルトシリンダを備え、バケットが左右にチルト傾斜することで油圧ショベルが傾斜地にあっても、斜面、平地を自由な形に成形、整地をすることができ、底板プレートによる転圧作業もできるバケットである。この他にも、作業機2は、バケット8の代わりに、法面バケット又は削岩用のチップを備えた削岩用のアタッチメント等を備えていてもよい。
【0030】
図1に示すブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ作動油の圧力(以下、適宜油圧という)によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム6を駆動して、これを昇降させる。アームシリンダ11は、アーム7を駆動して、アームピン14の周りを回動させる。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動して、バケットピン15の周りを回動させる。ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等の油圧シリンダと図示しない油圧ポンプとの間には、
図4に示す走行用制御弁37D及び作業用制御弁37Wが配置されている。後述する車両用電子制御装置26が走行用制御弁37D及び作業用制御弁37Wを制御することにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12又は油圧モータ5cに供給される作動油の流量が制御される。その結果、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12の動作が制御される。
【0031】
図2に示すように、ブーム6とアーム7とバケット8とには、それぞれ第1ストロークセンサ16と第2ストロークセンサ17と第3ストロークセンサ18とが設けられている。第1ストロークセンサ16、第2ストロークセンサ17及び第3ストロークセンサ18は、作業機2の姿勢を検出する姿勢検出部9である。第1ストロークセンサ16は、ブームシリンダ10のストローク長さを検出する。後述する表示制御装置39(
図4参照)は、第1ストロークセンサ16が検出したブームシリンダ10のストローク長さから、後述する車両本体座標系のZa軸に対するブーム6の傾斜角θ1を算出する。第2ストロークセンサ17は、アームシリンダ11のストローク長さを検出する。表示制御装置39は、第2ストロークセンサ17が検出したアームシリンダ11のストローク長さから、ブーム6に対するアーム7の傾斜角θ2を算出する。第3ストロークセンサ18は、バケットシリンダ12のストローク長さを検出する。表示制御装置39は、第3ストロークセンサ18が検出したバケットシリンダ12のストローク長さから、アーム7に対するバケット8の傾斜角θ3を算出する。
【0032】
車両本体1は、
図2に示すように位置検出部19を備える。位置検出部19は、油圧ショベル100の現在位置を検出する。位置検出部19は、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう)用の2個のアンテナ21、22(以下、適宜GNSSアンテナ21、22という)と、3次元位置センサ23と、傾斜角センサ24とを有する。GNSSアンテナ21、22は、車両本体1、より具体的には上部旋回体3に設置される。本実施形態において、GNSSアンテナ21、22は、3次元座標系である車両本体座標系{Xa、Ya、Za}のYa軸に沿って一定距離だけ離して設置されている。車両本体座標系{Xa、Ya、Za}の原点は、車両本体1の設計寸法に従って任意の点に定められている。車両本体座標系{Xa、Ya、Za}の原点の座標の情報は、作業機側記憶部35に予め記憶されている。
【0033】
GNSSアンテナ21、22は上部旋回体3の上であって、油圧ショベル100の左右方向に離れた両端位置に設置されることが好ましい。また、上部旋回体3の上であって、図示しないカウンタウエイト(上部旋回体3の後端)又は運転室4の後方に設置されてもよい。いずれにしても、GNSSアンテナ21、22は、可能な限り離れた位置に設置される方が、油圧ショベル100の現在位置の検出精度は向上する。また、GNSSアンテナ21、22は、オペレータの視界を極力妨げない位置に設置されることが好ましい。車両状態検出部としての姿勢検出部9と位置検出部19とは、掘削機械としての油圧ショベル100の位置(現在位置)及び作業機2の姿勢に関する情報としての車両状態を検出することができる。
【0034】
GNSSアンテナ21、22が受信したGNSS電波に応じた信号は、3次元位置センサ23に入力される。3次元位置センサ23は、GNSSアンテナ21、22の設置位置P1、P2の位置を検出する。
図3に示すように、傾斜角センサ24は、重力の作用する方向、すなわち鉛直方向Ngに対する車両本体1の幅方向の傾斜角θ4(以下、適宜ロール角θ4という)を検出する。なお、本実施形態において、幅方向とは、バケット8の幅方向を意味しており、上部旋回体3の幅方向、すなわち左右方向と一致している。ただし、作業機2がチルトバケットを備える場合には、バケットの幅方向と上部旋回体3の幅方向とが一致しないこともあり得る。
【0035】
上部旋回体3は、所定の軸Zrを中心として旋回する。所定の軸Zrを、適宜旋回中心軸Zrという。旋回中心軸Zrは、車両本体座標系のZa軸と平行な軸である。上部旋回体3は、GNSSアンテナ21、22の他に、アンテナ40Aを備えている。アンテナ40Aは、油圧ショベル100の外部との間で情報を無線通信するために用いられる。
【0036】
図4を用いて、油圧ショベル100の制御系について説明する。油圧ショベル100は、操作装置25と、車両用電子制御装置26と、車両制御装置27と、掘削機械の表示システム(以下、適宜表示システムという)28と、通信部40と、掘削機械の施工管理装置(以下、適宜施工管理装置という)90とを備える。操作装置25は、操作部としての作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rと、作業機操作検出部32L、32R及び走行操作検出部34L、34Rとを有する。本実施形態において、作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rは、パイロット圧方式のレバーであるが、これに限定されない。作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rは、例えば、電気方式のレバーであってもよい。この場合、作業機操作検出部32L、32R及び走行操作検出部34L、34Rは、操作部としての作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rに対する入力を検出する操作検出部として機能する。
【0037】
作業機操作部材31L、31Rは、オペレータが作業機2を操作するための部材であり、例えば、ジョイスティックのような握り部分と棒材とを備えた操作レバーである。このような構造の作業機操作部材31L、31Rは、握り部を握って前後左右に傾倒させることが可能である。
図4に示すように、作業機操作部材31L、31R及び作業機操作検出部32L、32Rは、それぞれ2組存在する。運転室4内の図示しないオペシートの左右各々に作業機操作部材31L、31Rが設置されている。例えば左に設置された作業機操作部材31Lを操作することで、アーム7及び上部旋回体3を動作させることができ、右に設置された作業機操作部材31Rを操作することで、バケット8及びブーム6を動作させることができる。
【0038】
作業機操作検出部32L、32Rは、作業機操作部材31L、31Rに対する入力、すなわち操作内容に応じてパイロット圧を発生させ、車両制御装置27が備える作業用制御弁37Wに発生した作動油のパイロット圧を供給する。このパイロット圧の大きさに応じて、作業用制御弁37Wが動作して、
図1に示すブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等に、図示しない油圧ポンプから作動油が供給される。作業機操作部材31L、31Rが電気方式のレバーである場合、作業機操作検出部32L、32Rは、作業機操作部材31L、31Rに対する入力、すなわち操作内容を、例えば、ポテンショメータ等を用いて検出し、入力を電気信号(検出信号)に変換して車両用電子制御装置26へ送る。車両用電子制御装置26は、この検出信号に基づいて、作業用制御弁37Wを制御する。
【0039】
走行操作部材33L、33Rは、オペレータが油圧ショベル100の走行を操作するための部材である。走行操作部材33L、33Rは、例えば、握り部と棒材とを備えた操作レバー(以下、適宜走行レバーと称呼する)である。このような走行操作部材33L、33Rは、オペレータが握り部を握って前後に傾倒させることが可能である。走行操作部材33L、33Rは、2つの操作レバーを同時に前に傾倒すれば油圧ショベル100が前進し、後ろに傾倒すれば油圧ショベル100は後進する。また、走行操作部材33L、33Rは、オペレータが足で踏むことで操作が可能な図示しないペダルであって、シーソー式のペダルである。ペダルの前側又は後側のいずれかを踏むことで前述した操作レバーと同様にパイロット圧が発生し、走行用制御弁37Dが制御され、油圧モータ5cが駆動し油圧ショベル100を前進又は後進させることができる。2つのペダルを同時に、かつ前側を踏めば油圧ショベル100は前進し、後側を踏めば油圧ショベル100は後進する。あるいは、片方のペダルの前側又は後側を踏めば、履帯5a、5bの片側のみが回転し、油圧ショベル100を旋回させることができる。このように、オペレータは、油圧ショベル100を走行させたい場合、手で操作レバーを前後に傾倒させるか又は足でペダルの前側又は後側を踏むかのうちいずれか一方を実行すれば、走行装置5の走行モータ5cを駆動させることができる。
図4に示すように、走行操作部材33L、33R及び走行操作検出部34L、34Rは、2組存在する。運転室4内の図示しないオペシートの前方に左右に並んで走行操作部材33L、33Rが設置されている。左側に設置された走行操作部材33Lを操作することで、左側の油圧モータ5cを駆動させて左側の履帯5bを動作させることができる。右側に設置された走行操作部材33Rを操作することで、右側の油圧モータ5cを駆動させて右側の履帯5aを動作させることができる。
【0040】
走行操作検出部34L、34Rは、走行操作部材33L、33Rに対する入力、すなわち操作内容に応じてパイロット圧を発生させ、車両制御装置27が備える走行用制御弁37Dに発生したパイロット圧を供給する。このパイロット圧の大きさに応じて、走行用制御弁37Dが動作して、走行用の油圧モータ5cに作動油が供給される。走行操作部材33L、33Rが電気方式のレバーである場合、走行操作検出部34L、34Rは、走行操作部材33L、33Rに対する入力、すなわち操作内容を、例えばポテンショメータ等を用いて検出し、入力を電気信号(検出信号)に変換して車両用電子制御装置26へ送る。車両用電子制御装置26は、この検出信号に基づいて、走行用制御弁37Dを制御する。
【0041】
車両用電子制御装置26は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)の少なくとも一方を含む作業機側記憶部35及びCPU(Central Processing Unit)等の演算部36を有している。車両用電子制御装置26は、油圧ショベル100が備えるエンジン及び油圧ポンプを制御する。作業機側記憶部35には、エンジン及び油圧ポンプを制御するためのコンピュータプログラム等が記憶されている。また、作業機側記憶部35には、前述したように、車両本体座標系COMの原点の座標の情報が記憶されている。さらに、作業機側記憶部35には、車両本体座標系COMにおける旋回中心位置P4(
図7、
図8参照)の座標の情報も記憶されている。旋回中心位置P4の詳細については後述する。作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rが電気方式のレバーである場合、車両用電子制御装置26は、作業機2、上部旋回体3及び走行装置5の動作も制御する。この場合、車両用電子制御装置26は、作業機操作部材31L、31R又は走行操作部材33L、33Rの操作に応じて作業機2又は走行装置5を動作させるための制御信号を生成して、車両制御装置27に出力する。
【0042】
車両制御装置27は、油圧制御弁等を備えた油圧機器であって、走行用制御弁37D及び作業用制御弁37Wを有している。これらは、作業機操作検出部32L、32R及び走行操作検出部34L、34Rからのパイロット圧によって制御される。作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rが電気方式のレバーである場合、走行用制御弁37D及び作業用制御弁37Wは、車両用電子制御装置26からの制御信号に基づいて制御される。
【0043】
走行操作部材33L、33Rがパイロット圧方式の走行レバーである場合、油圧ショベル100のオペレータがこれらに入力を与えて操作すると、走行操作検出部34L、34Rからのパイロット圧に応じた流量の作動油が走行用制御弁37Dから流出し、走行用の油圧モータ5cに供給される。走行操作部材33L、33Rの片方又は両方が操作されると、
図1に示す左右の油圧モータ5cの片方又は両方が駆動する.その結果、履帯5a、5bの少なくとも一方が回転して、油圧ショベル100が走行する。
【0044】
車両制御装置27は、走行用制御弁37Dに供給されるパイロット圧の大きさを検出して対応する電気信号を生成する油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbを備えている。油圧センサ37Slfは左前進のパイロット圧を検出し、油圧センサ37Slbは左後進のパイロット圧を検出し、油圧センサ37Srfは右前進のパイロット圧を検出し、油圧センサ37Srbは右後進のパイロット圧を検出する。車両用電子制御装置26は、油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbが検出し、生成した作動油のパイロット圧の大きさを示す電気信号を取得する。この電気信号は、エンジン又は油圧ポンプの制御又は後述する施工管理装置の動作等に使用される。前述したように、本実施形態では、作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rは、パイロット圧方式のレバーである。この場合、油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srb及び後述する油圧センサ37SBM、37SBK、37SAM、37SRMが、操作部としての作業機操作部材31L、31R及び走行操作部材33L、33Rに対する入力を検出する操作検出部として機能する。
【0045】
作業機操作部材31L、31Rがパイロット圧方式の操作レバーである場合、油圧ショベル100のオペレータがこれらの操作レバーを操作すると、作業機操作部材31L、31Rの操作に応じて発生したパイロット圧に対応した流量の作動油が作業用制御弁37Wから流出する。作業用制御弁37Wから流出した作動油は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12及び旋回モータの少なくとも1つに供給される。そして、
図1に示すブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12及び旋回モータのうちの少なくとも1つは、作業用制御弁37Wから供給された作動油に応じて、各シリンダは伸縮動作し、旋回モータは旋回駆動される。その結果、作業機2及び上部旋回体3の少なくとも一方が動作する。
【0046】
車両制御装置27は、作業用制御弁37Wに供給されるパイロット圧の大きさを検出して電気信号を生成する油圧センサ37SBM、37SBK、37SAM、37SRMを備えている。油圧センサ37SBMはブームシリンダ10に対応するパイロット圧を検出し、油圧センサ37SBKはアームシリンダ11に対応するパイロット圧を検出し、油圧センサ37SAMはバケットシリンダ12に対応するパイロット圧を検出し、油圧センサ37SRMは旋回モータに対応するパイロット圧を検出する。車両用電子制御装置26は、油圧センサ37SBM、37SBK、37SAM、37SRMが検出し、生成したパイロット圧の大きさを示す電気信号を取得する。この電気信号は、エンジン又は油圧ポンプの制御又は後述する施工管理装置の動作等に使用される。
【0047】
<施工管理装置90>
施工管理装置90は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部91と、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)の少なくとも一方を含む記憶部92とを有している。施工管理装置90、より具体的には処理部91は、油圧ショベル100の施工位置情報を生成する。施工位置情報は、油圧ショベル100が施工対象に施工した結果を含む情報である。施工対象とは、油圧ショベル100により施行される作業現場であって、土砂が掘削される場所、地面に溝を掘削して形成する場所又は法面整形などが施される場所等である。施工位置情報は、例えば、施工後における施工対象の表面の位置に関する情報である。この位置に関する情報は、例えば、グローバル座標系における位置(座標)で表される。施工位置情報は、変化した施工対象、例えば地形の形状を示す情報でもある。
【0048】
図5に示すように、処理部91は、作業機位置情報生成部91Aと、走行体位置情報生成部91Bと、施工位置情報生成部91Cとを有している。これらは、後述するように、個別の機能を有している。これらの機能は、例えば、処理部91が、それぞれの機能を実現するコンピュータプログラムを記憶部92から読み込み、読み込んだコンピュータプログラムに記述されている命令列を処理することにより実現される。記憶部92は、前述したコンピュータプログラム、処理部91が生成した施工位置情報及び予め作成された設計地形データ等を記憶している。設計地形データは、3次元の設計地形の形状及び位置に関する情報である。設計地形は、施工対象となる地面の地形を表した目標形状である。換言すれば、設計地形は、目標面(以下、適宜、設計面という)である目標形状を示す。
【0049】
施工管理装置90には、3次元位置センサ23と、姿勢検出部9としての第1ストロークセンサ16、第2ストロークセンサ17及び第3ストロークセンサ18と、傾斜角センサ24とが接続されている。さらに、施工管理装置90は、油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srb及び油圧センサ37SBM、37SBK、37SAM、37SRMといった各油圧センサが生成する電気信号を受信することができる。施工管理装置90は、これらの各センサからの検出値を取得する。施工管理装置90には、前述したアンテナ40Aを備えた通信部40が接続されている。施工管理装置90は、通信部40を介して油圧ショベル100の外部、例えば、油圧ショベル100の施工を管理する施工管理システムとの間で無線通信により情報をやり取りする。無線通信は、地上波通信又は衛星通信を利用することができる。無線通信は、油圧ショベル100と施工管理システムとの間で、設計地形データ及び施工位置情報等の情報を相互通信することができる。
【0050】
作業機位置情報生成部91Aは、前述した車両状態検出部の検出結果に基づき、作業機2の位置に関する情報である作業機位置情報を求める。走行体位置情報生成部91Bは、前述した車両状態検出部の検出結果に基づき、走行装置5の位置に関する情報である走行体位置情報を求める。施工位置情報生成部91Cは、作業機位置情報又は走行体位置情報のいずれか一方を用いて、油圧ショベル100が施工した施工対象の位置の情報としての施工位置情報を生成する。施工位置情報は、油圧ショベル100の施工結果を示す。
【0051】
施工位置情報生成部91Cは、油圧ショベル100が走行しているときは、作業機位置情報を用いず走行体位置情報を用いて施工位置情報を生成する。油圧ショベル100が走行しているときとは、例えば、走行装置5を走行させるために操作レバー(走行操作部材33L、33R)がオペレータに操作されたことを、操作検出部としての油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbの少なくとも一つが検出したときである。このような場合、施工位置情報生成部91Cは、走行体位置情報を用いて施工位置情報を生成する。施工位置情報生成部91Cは、走行装置5が停止されたことを、操作検出部としての油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbが検出したときには、作業機位置情報を用いて施工位置情報を生成する。
【0052】
<表示システム28>
表示システム28は、施工対象となる設計面の情報を含む作業エリア内の地形形状を示す情報や作業機2の姿勢又は位置に関する情報をオペレータに示すものである。オペレータが、作業機2や走行装置5を操作して、施工対象の地面を掘削して、後述する設計面になるように施工する際、オペレータは表示システム28に示された情報を利用し、効率的な施工を行うことができる。つまり、表示システム28は、オペレータによる作業機2の操作を支援することができるシステムである。表示システム28は、上述したブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12、3次元位置センサ23及び傾斜角センサ24、第1ストロークセンサ16、第2ストロークセンサ17及び第3ストロークセンサ18の他に、表示装置としての表示入力装置38と、表示制御装置39と、警報音を報知させるためのスピーカ等を含む音発生装置46とを有している。
【0053】
表示入力装置38は、タッチパネル式の入力部41と、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部42とを有する。表示入力装置38は、掘削等の施工を行うための情報を提供するための案内画面を表示する。また、案内画面には、各種のキーが表示される。操作者であるオペレータ(油圧ショベル100を点検又は修理する際はサービスマン)は、案内画面上の各種のキーに触れることにより、表示システム28の各種の機能を実行させることができる。
【0054】
表示制御装置39は、表示システム28の各種の機能を実行する。表示制御装置39は、RAM及びROMの少なくとも一方を含む表示側記憶部43、CPU等の表示処理部44を有する電子制御装置である。表示側記憶部43は、作業機データを記憶している。作業機データは、上述したブーム6の長さL1、アーム7の長さL2、バケット8の長さL3を含む。また、作業機データは、ブーム6の傾斜角θ1と、アーム7の傾斜角θ2と、バケット8の傾斜角θ3とのそれぞれの最小値及び最大値を含む。
【0055】
表示制御装置39と車両用電子制御装置26とは、無線又は有線の通信手段を介して互いに通信可能となっている。有線の通信手段としては、例えば、車内LAN(Local Area Network)がある。表示制御装置39は、前述した設計地形データ及び前述した各種のセンサからの検出値等の情報に基づいて、案内画面を表示入力装置38の表示部42に表示させる。この場合、表示制御装置39は、例えば、施工管理装置90の記憶部92から設計地形データを読み出して、案内画面の表示に用いる。設計地形は、例えば、
図6に示すように、三角形ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の設計面45を有している。なお、
図6では、複数の設計面のうち1つのみに符号45が付されており、他の設計面の符号は省略されている。施工対象は、これらの設計面45のうち1つ又は複数の設計面である。オペレータは、これらの設計面45のうち1つ又は複数の設計面を目標面70として選択する。目標面70は、複数の設計面45のうち、これから掘削される面である。表示制御装置39は、目標面70の位置をオペレータに知らせるための案内画面を表示入力装置38に表示させる。この他にも、表示制御装置39は、施工管理装置90の施工位置情報生成部91Cが生成した施工位置情報を表示入力装置38の表示部42に表示させることもできる。施工位置情報の表示部42への表示についての詳細は後述する。
【0056】
<バケット8の刃先8Tの位置を求める方法>
本実施形態において、施工管理装置90の施工位置情報生成部91Cが生成する施工位置情報は、バケット8が掘削した施工対象の地面等の位置情報を含むことがある。この位置情報は、作業機位置情報である。施工対象は、バケット8の刃先8Tによって掘削される。このため、施工位置情報生成部91Cが作業機位置情報を生成するにあたっては、少なくとも掘削時における刃先8Tの位置(以下、適宜刃先位置P3という)を求めることが必要である。刃先位置P3は、例えば、グローバル座標系{X、Y、Z}における座標で表される。施工管理装置90は、
図5に示す作業機位置情報生成部91Aが刃先位置P3を求める。作業機位置情報生成部91Aは、3次元位置センサ23、第1ストロークセンサ16、第2ストロークセンサ17、第3ストロークセンサ18及び傾斜角センサ24等の検出値に基づき、グローバル座標系{X、Y、Z}でのバケット8の刃先位置P3を求める。本実施形態において、バケット8の刃先位置P3は、次のようにして求められる。
【0057】
図7、
図8は、バケット8の刃先位置P3を求める方法の一例を説明するための図である。
図7は、油圧ショベル100の側面図であり、
図8は、油圧ショベル100の背面図である。バケット8の刃先位置P3を求めるにあたって、施工管理装置90の作業機位置情報生成部91Aは、
図7、
図8に示すように、前述したGNSSアンテナ21の設置位置P1を原点とする車両本体座標系{Xa、Ya、Za}を求める。本例では、油圧ショベル100の前後方向、すなわち車両本体1の座標系(車両本体座標系)COMのYa軸方向が、グローバル座標系COGのY軸方向に対して傾斜しているものとする。また、車両本体座標系COMでのブームピン13の座標は(0、Lb1、−Lb2)であり、予め施工管理装置90の記憶部92に記憶されている。
【0058】
図2及び
図4に示す3次元位置センサ23は、GNSSアンテナ21、22の設置位置P1、P2を検出する。検出された設置位置P1、P2の座標位置から、式(1)によってYa軸方向の単位ベクトルが算出される。
【0060】
図7に示すように、YaとZとの2つのベクトルで表される平面を通り、Yaと垂直なベクトルZ’を導入すると、式(2)及び式(3)の関係が成り立つ。式(3)のcは定数である。式(2)及び式(3)から、Z’は式(4)のように表される。さらに、Ya及びZ’と垂直なベクトルをX’とすると、X’は式(5)で示すようになる。
【0065】
図8に示すように、車両本体座標系COMは、これをYa軸周りにロール角θ4だけ回転させたものであるから、式(6)のように表される。
【0067】
また、第1ストロークセンサ16、第2ストロークセンサ17及び第3ストロークセンサ18の検出値から、前述したブーム6、アーム7、バケット8の現在の傾斜角θ1、θ2、θ3が算出される。車両本体座標系COM内におけるバケット8の刃先8Tの座標(xat、yat、zat)は、傾斜角θ1、θ2、θ3及びブーム6、アーム7、バケット8の長さL1、L2、L3を用いて、式(7)、式(8)及び式(9)で求めることができる。バケット8の刃先8Tは、車両本体座標系COMのYa−Za平面内を移動するものとする。グローバル座標系COGにおけるバケット8の刃先8Tの座標は、式(10)で求めることができる。グローバル座標系COGにおける刃先8Tの座標が刃先位置P3である。刃先位置P3は、グローバル座標系COGにおける座標{X、Y、Z}で表される。作業機位置情報生成部91Aは、このようにして算出した刃先位置P3を施工管理装置90の記憶部92に記憶させる。
【0072】
<油圧ショベル100の接地面における上部旋回体3の旋回中心の求め方>
本実施形態において、施工管理装置90の施工位置情報生成部91Cが生成する施工位置情報は、油圧ショベル100の接地面、すなわち、走行装置5が備える履帯5a、5bと地面R等の接地対象とが接する面における位置情報を含むことがある。この位置情報は、走行体位置情報である。走行体位置情報は、例えば、走行装置5の接地面CCの位置における上部旋回体3の旋回中心の位置(以下、適宜旋回中心位置という)P4に関する情報を含み、グローバル座標系COGにおける座標{X、Y、Z}で表される。接地面CCは、走行装置5が備える履帯5a、5bによって規定される平面である。接地面CCにおける旋回中心位置P4は、接地面CCと旋回中心軸Zrとの交点である。
【0073】
施工位置情報生成部91Cが施工位置情報を生成するにあたっては、
図5に示す走行体位置情報生成部91Bが旋回中心位置P4を求める。つまり、走行体位置情報生成部91Bは、車両本体座標系COMにおける旋回中心位置P4の座標を基に、グローバル座標系COGの座標を演算して求める。このようにして、走行体位置情報生成部91Bは、グローバル座標系COGにおける旋回中心位置P4の座標を得るのである。グローバル座標系COGにおける旋回中心位置P4の座標は、走行装置5の走行に応じて変化する。このため、走行体位置情報生成部91Bは、走行装置5の走行中に、所定の周期で旋回中心位置P4の座標を求め、走行体位置情報を生成する。旋回中心位置P4は、例えば、GNSSアンテナ21の設置位置P1との幾何学的な位置関係を用いて求めることができる。
【0074】
グローバル座標系COGのX軸周りにおける走行装置5の傾き角をθ5、Y軸周りにおける走行装置5のロール角をθ4とする。接地面CCと直交する方向における設置位置P1と旋回中心位置P4との距離をZa4、車両本体座標系COMのYa軸方向における設置位置P1と旋回中心位置P4との距離をYa4とする。Za4及びYa4の距離を示す情報は、予め作業機側記憶部35に記憶されている。グローバル座標系COGにおける設置位置P1の座標を{Xp1、Yp1、Zp1}とすると、グローバル座標系COGにおける旋回中心位置P4は、例えば、{Xp1−Za4×sinθ4、Yp1+Ya4×cosθ5、Zp1}として求めることができる。前述したように、車両本体座標系COMにおける旋回中心位置P4の座標を使って、グローバル座標系COGにおける旋回中心位置P4を求めてもよい。
【0075】
走行体位置情報生成部91Bは、
図2及び
図4に示す3次元位置センサ23からGNSSアンテナ21の設置位置P1を検出する。走行体位置情報生成部91Bは、検出された設置位置P1の座標{Xp1、Yp1、Zp1}から、前述した関係を用いてグローバル座標系COGにおける旋回中心位置P4を求め、例えば、記憶部92に記憶させる。
図4に示す施工管理装置90の処理部91は、作業機位置情報生成部91Aが求めた刃先位置P3に基づく作業機位置情報又は走行体位置情報生成部91Bが求めた旋回中心位置P4に基づく走行体位置情報のいずれか一方を用いて、油圧ショベル100の施工位置情報を生成する。
【0076】
<バケット8の刃先8Tの軌跡表示>
表示制御装置39は、掘削中における刃先8Tの軌跡を表示入力装置38の表示部42に表示させることがある。表示制御装置39は、刃先位置P3を求めるようにしてもよいし、作業機位置情報生成部91Aが求めた刃先位置P3を用いて掘削中における刃先8Tの軌跡を表示部42に表示させてもよい。また、作業機位置情報生成部91Aは、表示制御装置39が求めた刃先位置P3を用いて作業機位置情報を生成してもよい。
【0077】
表示制御装置39は、前述した手法によって求められたバケット8の刃先位置P3と、本実施形態においては
図4に示す施工管理装置90の記憶部92が記憶している設計地形データとに基づいて、
図6に示すように、3次元設計地形とバケット8の刃先8Tを通る平面(以下、適宜Ya−Za平面77という)との交線80を算出する。そして、表示制御装置39は、この交線80のうち目標面70を通る部分を目標画線として案内画面に表示する。次に、
図4に示す表示制御装置39が、作業対象となる地面をバケット8が掘削するときの刃先8Tの軌跡を、表示入力装置38の表示部42の画面42Pに表示させる例について説明する。
【0078】
図9は、表示部42の画面42Pにバケット8の刃先8Tの軌跡TLiを表示した例を示す図である。本実施形態において、表示制御装置39、より具体的には表示処理部44は、油圧ショベル100の現在位置に関する情報に基づいてバケット8の刃先8Tの位置を求める。表示処理部44は、目標面70と直交する方向における目標面70の周囲の所定範囲AIにバケット8の少なくとも一部が進入したときに、刃先8Tの位置に基づいて求めた、所定範囲AI内に存在する刃先8Tの軌跡(以下、適宜刃先軌跡という)TLiを、施工結果に関する情報として表示部42の画面42Pに表示する。
【0079】
このようにすることで、油圧ショベル100のオペレータは、刃先軌跡TLiによって実際にバケット8が掘削した状態を表示部42の画面42Pで確認することができる。その結果、オペレータは、刃先軌跡TLiを視認することで現在の施工状況を確認しながら施工を行うことができるので、作業効率が向上する。また、所定範囲AIの外に刃先8Tが存在する場合、その軌跡は表示されない。すなわち、設計面45(又は目標面70)近傍以外の余計な情報は画面42Pに表示されないので、表示システム28は、油圧ショベル100のオペレータが設計面にしたがって施工を進めるにあたって、オペレータに対して施工結果に関する情報を理解しやすく提供することができる。
【0080】
図9に示すように、刃先軌跡TLiは、掘削画面54の側面
図54bに表示される。すなわち、刃先軌跡TLiは、側面視におけるバケット8の刃先8Tの軌跡である。側面
図54bには、側面視によるバケット8のアイコン90が表示されている。また、側面
図54bには、側面視による目標面70の断面を示す目標画線79と、目標面70と直交する方向における所定範囲AIを規定するための地表側画線Lu及び地中側画線Ldとが表示されている(
図9の二点鎖線)。地表側画線Lu及び地中側画線Ldは、目標画線79と平行である。正面
図54aには、正面視によるバケット8のアイコン89及び正面視による目標面70の断面を示す目標画線78と、後述する第1平面Pu及び第2平面Pdとが表示されている。
【0081】
所定範囲AIは、目標面70と直交する方向(
図9の一点鎖線nが延在する方向)において、目標面70から地表面に向かって所定距離tuの位置に存在する目標面70に平行な第1平面Puと、地面内に向かって所定距離tdの距離に存在する目標面70に平行な第2平面Pdとで囲まれる範囲である。第1平面Puとバケット8の刃先8Tを通るYa−Za平面77(
図6参照)との交線が地表側画線Luであり、第2平面PdとYa−Za平面77との交線80が地中側画線Ldである。
【0082】
図9において、刃先軌跡TLiは、所定範囲AI内に描かれた実線である。
図9において、所定範囲AIの外側(この例では地表側画線Luよりも外側)に描かれた破線も、バケット8の刃先8Tの軌跡(以下、適宜範囲外軌跡という)TLeである。この例において、範囲外軌跡TLeは、便宜上記載してあるが、表示部42の実際の画面42Pには表示されない。
【0083】
所定範囲AIを規定する所定距離tu、tdは同じ大きさでもよいし、異なっていてもよい。所定距離tu、tdの大きさが異なる場合は、施工の精度を得るために、所定距離tdの方が所定距離tuよりも小さい方が好ましい。本実施形態において、所定距離tu、tdは同じ大きさ、すなわち、tu=tdである。本実施形態において、所定範囲AIの大きさ、すなわち、所定距離tu、tdの大きさは、油圧ショベル100が目標面70に施工する際の公差に相当する大きさとしている。このようにすることで、設計面45(目標面70)を過度に掘削する可能性を低減して、施工の精度低下を抑制することができる。また、所定距離tu、tdの大きさは、変更可能としてもよい。例えば、表示制御装置39の表示処理部44は、
図4に示す表示入力装置38の表示部42に所定距離tu、tdを変更するメニューを表示させ、油圧ショベル100のオペレータが入力部41から変更値を入力するようにしてもよい。このようにすることで、設計変更又は実際の施工場所の状況等によって所定範囲AIを変更する必要が生じた場合でも、柔軟に対応することができるので、作業効率が向上する。
【0084】
本実施形態において、所定範囲AIは、グラフィック情報84が有する複数のインデックスバー84aのうち、符号84Gで示す範囲に対応している。レベルマーク84bは、目標面70に相当する位置を示す。すなわち、目標面70と直交する方向における所定範囲AIの大きさであるtu+tdに相当する大きさが、符号84Gで示す複数のインデックスバー84aの範囲に対応している。本実施形態においては、バケット8の刃先8Tがこの範囲で移動すれば、目標面70は設計時における公差の範囲内で施工される。
【0085】
グラフィック情報84が有する複数のインデックスバー84aのうち、符号84Bで示す範囲は、所定範囲AIの地表側における外側を示している。グラフィック情報84が有する複数のインデックスバー84aのうち、符号84Yで示す範囲は、所定範囲AIの地中側における外側を示している。この範囲は、目標面70の設計時における公差の範囲を超えて目標面70を掘削したことを示す。グラフィック情報84が有する複数のインデックスバー84aのうち、符号84Rで示す範囲は、所定範囲AIの最も地中側における外側を示している。この範囲は、目標面70の設計時における公差の範囲を大きく超えて目標面70を掘削したことを示す。
【0086】
グラフィック情報84が有する複数のインデックスバー84aは、油圧ショベル100の掘削時において、バケット8の刃先8Tと目標面70との位置関係を表示する。すなわち、刃先8Tと目標面70との距離に応じて、インデックスバー84aの表示の態様が変化する。例えば、符号84Bの範囲のインデックスバー84aは青色に表示され、符号84Gの範囲のインデックスバー84aは緑色に表示され、符号84Yの範囲のインデックスバー84aは黄色に表示され、符号84Rの範囲のインデックスバー84aは赤色に表示される。
【0087】
したがって、バケット8の刃先8Tが所定範囲AIの地表側における外側にある場合、符号84Bで示す範囲のインデックスバー84aが青色に表示される。また、バケット8の刃先8Tが所定範囲AI内にある場合、符号84Bで示す範囲のインデックスバー84aが青色に表示されるとともに、符号84Gで示す範囲のインデックスバー84aが緑色に表示される。バケット8の刃先8Tが所定範囲AIの地中側における外側ある場合、符号84Bで示す範囲のインデックスバー84aが青色に表示され、符号84Gで示す範囲のインデックスバー84aが緑色に表示され、さらに、符号84Yで示す範囲のインデックスバー84aが黄色に表示される。このように、刃先軌跡TLiの表示に加えて、バケット8の刃先8Tと目標面70との距離に応じてインデックスバー84aの表示の態様が変更されることにより、油圧ショベル100のオペレータは、バケット8の刃先8Tが目標面70を中心とした所定範囲AIを超えて掘削しているか否かをさらに容易に知ることができる。その結果、オペレータは、掘削中において所定範囲AI内にバケット8の刃先8Tを保持しやすくなるので、施工の精度が向上する。
【0088】
刃先軌跡TLiは、バケット8の刃先8Tが所定範囲AI内に進入したときに、所定範囲AI内に表示される。このようにすることで、表示制御装置39は、バケット8の刃先8Tが所定範囲AIを実際に掘削したと考えられる場合の刃先軌跡TLiを表示部42の画面42Pに示すことができるので、油圧ショベル100のオペレータは、必要十分な範囲で施工状況を確認できる。なお、これに限定されず、刃先軌跡TLiは、バケット8の一部、例えば背面が所定範囲AI内に進入したときに所定範囲AI内に表示されてもよい。このように、本実施形態において、刃先軌跡TLiは、少なくともバケット8の一部が所定範囲AI内に進入したときに表示されていればよい。
【0089】
刃先軌跡TLiは、所定範囲AIの外では表示されないので、目標面70に対する一回の掘削、例えば、法面が作業対象となる地面(目標面70)である場合に、バケット8で法面の上から下にかけて所定の深さを掘って削るような掘削が終了し、バケット8の刃先8Tが所定範囲AIの外に出た後は、所定範囲AIの外側における範囲外軌跡TLeは表示されない。バケット8の刃先8Tが所定範囲AIの外に出た後は、所定範囲AI内に表示された刃先軌跡TLiは、次に刃先8Tが所定範囲AI内に進入するまで、そのまま表示が維持される。このようにすることで、油圧ショベル100のオペレータは、バケット8の刃先8Tが施工対象の地面を掘削した履歴を表示部42の画面42Pで確認できる。また、表示制御装置39は、所定範囲AIの外側における範囲外軌跡TLeを表示しないので、作業に必要な目標面70近傍の情報を、オペレータに対して確実に認識させることができる。また、表示制御装置39は、所定範囲AIの外側における範囲外軌跡TLeを表示しないことにより、範囲外軌跡TLeのデータを表示側記憶部43に保存しておく必要はない。このため、表示側記憶部43の記憶容量を効率的かつ有効に利用することができる。
【0090】
上述した例では、範囲外軌跡TLeは表示されないとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、表示制御装置39は、刃先軌跡TLiと範囲外軌跡TLeとを、それぞれの表示態様を異ならせて表示部42の画面42Pに表示してもよい。一例として、表示制御装置39は、刃先軌跡TLiを赤色の実線で表示し、範囲外軌跡TLeを刃先軌跡TLiよりも目立たない色(本例では、例えば薄い水色)かつ刃先軌跡TLiを示す実線よりも細い破線で表示してもよい。このようにすることで、表示制御装置39は、所定範囲AI内に存在する刃先軌跡TLiを油圧ショベル100のオペレータに対して認識させることができる。また、オペレータは、範囲外軌跡TLeを視認することができるので、例えば、バケット8を作業対象の地面に移動させる場合において、作業機操作部材31L、31Rの操作方法を改善し作業効率の向上を図ること等に範囲外軌跡TLeを役立てることも可能である。
【0091】
このように、刃先軌跡TLiと範囲外軌跡TLeとを、それぞれの表示態様を異ならせて表示部42の画面42Pに表示しても、所定範囲AIの外に存在する範囲外軌跡TLeは、所定範囲AI内に存在する刃先軌跡TLiよりも目立ちにくくなっている。このため、油圧ショベル100のオペレータは、範囲外軌跡TLeが画面42Pに表示されていても、刃先軌跡TLiの認識はほとんど妨げられない。その結果、表示システム28は、油圧ショベル100のオペレータが設計面にしたがって施工を進めるにあたって、オペレータに対して施工結果に関する情報を理解しやすく提供することができる。
【0092】
上述した通り、本実施形態では、所定範囲AI内における刃先軌跡TLiと、所定範囲AIの外における範囲外軌跡TLeとで、表示態様が異なっていればよい。両者の表示態様を異ならせることには、両者を表示した上でそれぞれの表示形態を異ならせることの他、範囲外軌跡TLeを表示せず、刃先軌跡TLiのみを表示することの両方が含まれる。
【0093】
本実施形態において、表示制御装置39は、バケット8の刃先8Tと目標面70又は目標面70に設定されていない設計面45との距離に基づき、警報として音を報知してもよい。例えば、刃先8Tが施工対象の地中側において、所定範囲AIの外に出たとき、すなわち、刃先8Tが地中側画線Ldよりも地中側に移動したときに、表示制御装置39は、
図4に示す音発生装置46から警報音を報知させてもよい。また、目標面70又は設計面45を超えてバケット8の刃先8Tが地面を掘削してしまうと、埋戻し等の手間が発生するため、設計面45(目標面70)を効率的に施工することにならない。このため、表示制御装置39は、刃先8Tと設計面45との距離に基づく警報として音も報知する。このように、刃先8Tと目標面70又は設計面45との距離に基づき、警報としての音を報知する態様を変更することで、油圧ショベル100のオペレータに、目標面70又は設計面45に対して掘削し過ぎていることを認識させることができる。したがって、オペレータは、掘削量を調整して過度な掘削を最小限に抑えることができる。
【0094】
<施工位置情報>
施工位置情報は、油圧ショベル100の施工結果に相当するので、
図4に示す施工管理装置90が生成した最新の施工位置情報を集積すると、その時点における施工の状況を把握することができる。施工対象の施工計画を管理する管理者は、施工の状況から、進捗状況及び正しい施工が実現されているか等を知ることができる。前述した通り、施工位置情報は、走行体位置情報又は作業機位置情報のいずれか一方である。
【0095】
図10は、施工位置情報を説明するための図である。
図11から
図14は、走行体位置情報を説明するための図である。
図15は、作業機位置情報を説明するための図である。本実施形態において、走行体位置情報は、走行体側現況更新ラインLcのグローバル座標系COGにおける座標である。走行体側現況更新ラインLcは、前述した旋回中心位置P4を通り、かつ車両本体座標系COMのXa−Ya平面と平行で、油圧ショベル100の進行方向と直交する直線である。走行体側現況更新ラインLcの長さは、一対の履帯5a、5bの外側同士の距離(以下、適宜履帯間距離という)Wcである。履帯間距離Wcは、記憶部92に予め記憶されている。
【0096】
作業機位置情報は、作業機側現況更新ラインLbのグローバル座標系COGにおける座標である。作業機側現況更新ラインLbは、バケット8のそれぞれの刃先8Tを結んだ直線である。作業機側現況更新ラインLbの長さは、バケット8の幅(以下、適宜バケット幅という)Wbである。バケット幅Wbは、
図1に示すバケットピン15の軸方向と平行な方向におけるバケット8の最大寸法である。バケット幅Wbは、記憶部92に予め記憶されている。例えば、バケット8がチルトバケット又は法面バケットで、刃先が鋼板により形成されストレート形状である場合、この刃に沿った直線が作業機側現況更新ラインLbとなる。
図1に示す作業機2に、バケット8の代わりに削岩機等が取り付けられた場合、削岩用のビットの先端の位置情報、より具体的にはグローバル座標系COGにおける座標が、作業機位置情報になる。
【0097】
図5に示す走行体位置情報生成部91Bが生成する走行体位置情報は、油圧ショベル100の単位時間あたりの移動量又は既に走行体側現況更新ラインLcが生成されているか否かによって、第1の方法、第2の方法又は第3の方法によって生成される。
図11に示すように、第1の方法は、走行体側現況更新ラインLcの方向、すなわち走行体側現況更新ラインLcが延びている方向を、
図2に示す位置検出部19が検出した油圧ショベル100の位置情報に基づいて求めた油圧ショベル100の移動方向FDと直交する方向とするものである。第1の方法は、油圧ショベル100の移動方向FDが分からないと使用できないため、油圧ショベル100の単位時間あたりの移動量Mvが所定の閾値Mvcよりも大きい場合に適用される。所定の閾値Mvcは、位置検出部19に用いられるRTK−GNSSの精度によって決まる値であり、例えば、1m/秒に設定される。
【0098】
Mv>Mvcである場合、走行体位置情報生成部91Bは、
図11に示すように、移動方向FDに直交する方向に向かい、旋回中心位置P4を通り、かつ車両本体座標系COMのXa−Ya平面と平行な直線を、走行体側現況更新ラインLcとして生成する。走行体側現況更新ラインLcにおいて、履帯5aの左外側又は履帯5bの右外側からそれぞれWc/2の位置(走行体側現況更新ラインLcの中点)が、旋回中心軸Zrを通る。この走行体側現況更新ラインLc上の位置情報、すなわちグローバル座標系COGにおける座標が、走行体位置情報となる。移動方向FDを求める場合、走行体位置情報生成部91Bは、
図12に示すように、異なるタイミングで取得された複数(この例では2つ)の旋回中心位置P4_m−1と旋回中心位置P4_mとから、旋回中心位置P4_m−1から旋回中心位置P4_mに向かうベクトルを求める(mは自然数)。走行体位置情報生成部91Bは、このベクトルの方向を移動方向FDとする。
【0099】
油圧ショベル100は、上部旋回体3が旋回するため、作業機2又はバケット8の位置を基準として走行体位置情報を求めると、誤差が生じる場合がある。走行体位置情報生成部91Bは、移動方向FDが得られる条件においては、移動方向FDに基づいて走行体位置情報を求めることにより、走行体位置情報を精度よく求めることができる。次に、走行体位置情報を求める第2の方法について説明する。
【0100】
第2の方法は、Mv≦Mvcであり、かつ既に走行体側現況更新ラインLcが生成されている場合に適用される。この場合、走行体位置情報生成部91Bは、
図13に示すように、前回の処理周期において生成した走行体側現況更新ラインLc_n−1と直交する線NDに直交する方向に向かい、旋回中心位置P4を通り、かつ車両本体座標系COMのXa−Ya平面と平行な直線を、新たな走行体側現況更新ラインLc_nとして生成する(nは自然数)。走行体側現況更新ラインLc_nにおいて、履帯5aの左外側又は履帯5bの右外側からそれぞれWc/2の位置(走行体側現況更新ラインLc_nの中点)が、旋回中心軸Zrを通る。この走行体側現況更新ラインLc_n上の位置情報、すなわちグローバル座標系COGにおける座標が、走行体位置情報となる。第2の方法は、移動方向FDが得られない場合であっても、前回得られた走行体側現況更新ラインLc_nを利用することにより、走行体位置情報の精度低下を抑制することができる。
【0101】
第3の方法は、Mv≦Mvcであり、かつ走行体側現況更新ラインLcが生成されていない場合に適用される。この場合、走行体位置情報生成部91Bは、
図14に示すように、上部旋回体3の前後方向に延びる直線(以下、適宜前後方向という)LTDに対して直交する方向に向かい、旋回中心位置P4を通り、かつ車両本体座標系COMのXa−Ya平面と平行な直線を、新たな走行体側現況更新ラインLcとして生成する。走行体側現況更新ラインLcにおいて、履帯5aの左外側又は履帯5bの右外側からそれぞれWc/2の位置(走行体側現況更新ラインLcの中点)が、旋回中心軸Zrを通る。前後方向LTDは、車両本体座標系COMのYa軸と平行な方向である。この走行体側現況更新ラインLc上の位置情報、すなわちグローバル座標系COGにおける座標が、走行体位置情報となる。第3の方法は、移動方向FDが得られず、かつ既存の走行体側現況更新ラインLcが存在しない場合であっても、走行体位置情報を生成することができる。このように、走行体位置情報生成部91Bは、油圧ショベル100が走行した移動方向に基づいて走行体位置情報を生成する。次に、作業機位置情報を求める方法について説明する。
【0102】
図5に示す作業機位置情報生成部91Aは、バケット8が有する複数の刃8Bの刃先列に平行、かつ長さがバケット幅Wbに相当する直線を、作業機側現況更新ラインLbとして生成する。作業機側現況更新ラインLbは、中点、すなわちバケット8の左右の端部からそれぞれWb/2の位置が、刃先列の中心に一致する。
図15に示す例では、刃8Ba、8Bb、8Bc、8Bd、8Beのうち中心に存在する刃8Bcの頂部、すなわち刃先8Tに作業機側現況更新ラインLbの中点が一致する。刃先列の中心は、前述した刃先位置P3である。作業機位置情報生成部91Aは、刃先8Bcの刃先位置P3を求め、刃先位置P3からバケット8の左右方向のそれぞれにWb/2の長さを各々伸ばした線を作業機側現況更新ラインLbとして生成すればよい。このようにして求められた作業機側現況更新ラインLb上の位置情報、すなわちグローバル座標系COGにおける座標が、作業機位置情報となる。作業機側現況更新ラインLbを作業機位置情報とすることにより、作業機2、より具体的にはバケット8が施工した施工対象の位置情報、すなわち施工結果を正確に求めることができる。
【0103】
本実施形態において、施工位置情報生成部91Cは、バケット8による掘削又は油圧ショベル100の走行によって施工位置情報が変化した場合、これを最新の情報に更新する。油圧ショベル100が走行しているときは、通常作業機2は停止しているが、作業機2を動かしながら油圧ショベル100が走行する可能性もある。これは、オペレータが、走行操作部材33L、33Rを操作しながら、作業機操作部材31L、31Rを操作する場合であって、作業機2は空中を移動するだけで施工対象を掘削しないような状況である。この場合、作業機位置情報を施工位置情報とすると、作業機2が掘削していないにも関わらず施工位置情報が更新される結果、施工位置情報の精度が低下する可能性がある。本実施形態において、施工位置情報生成部91Cは、油圧ショベル100が走行している場合に作業機位置情報を用いず、走行体位置情報を施工位置情報とするので、作業機2を動かしながら油圧ショベル100が走行している場合において、正しい施工位置情報を得ることができる。また、油圧ショベル100が停止しているときは、作業機2による掘削等が行われる。このような場合、施工位置情報生成部91Cは、作業機位置情報を施工位置情報とすることにより、作業機2が施工対象を掘削した結果を施工位置情報に反映することができる。
【0104】
図16、
図17は、施工位置情報の更新を説明するための図である。
図16、
図17に示すグリッド線は、施工対象の位置の情報、すなわち施工対象位置を示すために、グローバル座標系COG{X、Y、Z}に描いて表したものである。X方向に向かう複数の直線とY方向に向かう複数の直線とが交差する部分(以下、適宜施工対象位置という)に、例えば、施工対象の地形データが存在する。例えば、油圧ショベル100のバケット8が、施工対象位置PGa(X1、Y1、Z1)、施工対象位置PGb(X2、Y2、Z2)を掘削し、施工位置座標PGc(X3、Y3、Z3)は掘削しなかったとする。そのときの刃先8Tの軌跡をAで示す(
図17参照)。軌跡Aは、前述した作業機側現況更新ラインLbが移動した軌跡でもある。この場合、高さ方向、すなわちZ方向における軌跡Aの絶対値は、施工対象位置PGa、PGbよりも小さいため、施工対象を掘削して新たな面が生成されたことになる。Z座標の値が小さいほど地中側に地形が存在することを意味する。このため、軌跡AのZ方向の絶対値が施工対象位置のZ座標の値(上記の場合、Z1又はZ2)よりも小さいということは、施工により掘削が行われたことになる。
図5に示す施工位置情報生成部91Cは、作業機位置情報生成部91Aが生成した作業機位置情報を新たな施工位置情報として、施工対象位置PGa、PGbの値を更新する。この場合、変化したのはZ座標のみなので、Z座標の値を更新する。
【0105】
図17に示すように、油圧ショベル100のバケット8が、施工対象位置の上方を移動して、施工対象を掘削しなかったときの軌跡をBで示す。軌跡Bは、前述した作業機側現況更新ラインLbが移動した軌跡でもある。この場合、Z方向における軌跡Bの絶対値は、施工対象位置PGa、PGb、PGcよりも大きいため、施工対象を掘削した新たな面は生成されない。この場合、
図5に示す施工位置情報生成部91Cは、施工対象位置PGa、PGb、PGcの値を更新しない。すなわち、前回の処理周期における施工位置情報としての施工対象位置PGa、PGb、PGcが維持される。このように、施工位置情報生成部91Cは、作業機位置情報を用いる場合、作業機位置情報生成部91Aが生成した現時点の作業機位置情報が、既に存在する施工位置情報の高さ方向における位置よりも小さくなったときに、施工位置情報を現時点の作業機位置情報に更新する。
【0106】
仮に、油圧ショベル100が停止している状態で、オペレータが作業機操作部材31L、31Rを操作して、バケット8を空中で動作させたとする。この場合、施工対象位置が示すZ方向の座標の値よりも大きな値を有した作業機側現況ラインLbが求められることになるため、施工位置情報は更新されない。ただし、施工対象位置の情報が存在しない場所で、バケット8を空中で動作させることが行われた場合、その動作に応じて施工位置情報生成部91Cが施工位置情報を生成するようにしてもよい。なお、油圧ショベル100が停止し、かつ作業機2が動いておらず、エンジンのみが駆動している状態では、施工位置情報は更新されない。
【0107】
油圧ショベル100が走行し、施工対象位置PGa、PGb、PGcを走行したとする。この場合、前述した走行体側現況更新ラインLcが、施工対象位置PGa、PGb、PGcを通過する。この場合、
図5に示す施工位置情報生成部91Cは、走行時に走行体位置情報生成部91Bが生成した走行体位置情報を新たな施工位置情報として、すべての施工対象位置PGa、PGb、PGcの値を更新する。油圧ショベル100の走行中においては、Z座標の変化に関わらず、すべての施工対象位置PGa、PGb、PGcの値が最新の施工位置情報に更新される。すなわち、本実施形態において、施工位置情報生成部91Cは、走行体位置情報を用いる場合、施工位置情報を、走行体位置情報生成部91Bが生成した現時点の走行体位置情報に更新する。
【0108】
前述した例は、施工対象の地形データ、すなわち施工対象位置が存在する場合であるが、施工対象位置のZ座標の値が存在しなかったり、施工対象位置のすべての座標が存在しなかったりした場合でも、施工位置情報生成部91Cは、施工位置情報を更新することができる。例えば、施工対象位置のZ座標の値が存在しない場合、施工位置情報生成部91Cは、施工対象に対してバケット8が掘削したり、油圧ショベル100が走行したりしたときに、そのときの作業機側現況更新ラインLb又は走行体側現況更新ラインLcのZ座標から得られる施工位置情報を、新たな施工位置情報として施工対象位置に与えればよい。施工対象位置のX座標、Y座標及びZ座標の値が存在しない場合でも、施工位置情報生成部91Cは、施工対象に対してバケット8が掘削したり、油圧ショベル100が走行したりしたときに、そのときの作業機側現況更新ラインLb又は走行体側現況更新ラインLcのX座標、Y座標及びZ座標から得られる施工位置情報を、新たな施工位置情報として施工対象位置に与えればよい。
【0109】
<施工管理装置の動作例>
図18は、本実施形態に係る施工管理装置の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS101において、油圧ショベル100が走行中である場合(ステップS101、Yes)、
図5に示す施工管理装置90の処理部91は、処理をステップS102に進める。油圧ショベル100が走行中であるか否かは、
図4に示す走行操作部材33L、33Rが、油圧ショベル100の走行装置5を走行させるために操作されたことを油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbの少なくとも1つが検出したか否かで判断される。
【0110】
つまり、油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbの少なくとも1つが、油圧ショベル100の走行装置5を走行させるための操作があったことを検出すると、
図4に示す油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbがパイロット圧の上昇を検出する。これらが検出したパイロット圧が所定の閾値よりも高くなると、走行用の油圧モータ5cに作動油が供給されて履帯5a、5bのいずれか一方が駆動されて油圧ショベル100が走行する。油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbが検出するパイロット圧が所定の閾値以下である場合、油圧ショベル100の走行装置5は停止された又は停止していることになる。パイロット圧が所定の閾値以下になると、走行用の油圧モータ5cに対する作動油の供給が停止されて、油圧ショベル100が停止する。
【0111】
すなわち、油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbが検出したパイロット圧が所定の閾値よりも高くなると、油圧ショベル100が走行していると判断できる。油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbが検出したパイロット圧が所定の閾値以下になると、油圧ショベル100が停止していると判断できる。処理部91は、4個の油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbが検出したパイロット圧のうち、少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に、油圧ショベル100は走行していると判定する。処理部91は、4個の油圧センサ37Slf、37Slb、37Srf、37Srbが検出したパイロット圧のすべてが所定の閾値以下である場合に、油圧ショベル100は停止していると判定する。このように、パイロット圧を用いることによって、処理部91は、油圧ショベル100が走行しているか停止しているかを容易に判定することができる。
【0112】
ステップS102において、単位時間当たりの油圧ショベル100の移動量Mvが所定の閾値Mvcを超える場合(ステップS102、Yes)、処理部91の走行体位置情報生成部91Bは、処理をステップS103に進める。ステップS103において、走行体位置情報生成部91Bは、前述のような方法で油圧ショベル100の移動方向FDを求める。ステップS104において、走行体位置情報生成部91Bは、前述した第1の方法により走行体側現況更新ラインLcを生成する。次に、ステップS105に進み、走行体位置情報生成部91Bは、グローバル座標系COGに施工対象の地形データが表されたグリッドの各施工対象位置(
図16のグリッド点)を、走行体側現況更新ラインLcが通過した場合(ステップS105、Yes)、処理をステップS106に進める。ステップS106において、処理部91の施工位置情報生成部91Cは、走行体側現況更新ラインLcがグリッド点を通過した位置で、そのグリッド点のZ座標を、走行体側現況更新ラインLcのZ座標に更新する。すなわち、施工位置情報生成部91Cは、走行体位置情報としての走行体側現況更新ラインLcを用いて施工位置情報を生成して、グリッド点の値を更新する。グリッド点を走行体側現況更新ラインLcが通過しない場合(ステップS105、No)、処理部91は一処理周期を終了して次の処理周期に移行する。
【0113】
次に、ステップS102に戻って説明する。単位時間当たりの油圧ショベル100の移動量Mvが所定の閾値Mvc以下である場合(ステップS102、No)、処理部91の走行体位置情報生成部91Bは、処理をステップS107に進める。ステップS107において、前回の処理周期において走行体側現況更新ラインLcが生成されていた場合(ステップS107、Yes)、走行体位置情報生成部91Bは、処理をステップS108に進める。ステップS108において、走行体位置情報生成部91Bは、前述した第2の方法により走行体側現況更新ラインLcを生成する。その後、処理部91は、ステップS105及びステップS106を実行する。
【0114】
ステップS107において、前回の処理周期において走行体側現況更新ラインLcが生成されていない場合(ステップS107、No)、走行体位置情報生成部91Bは、処理をステップS109に進める。ステップS109において、走行体位置情報生成部91Bは、前述した第3の方法により走行体側現況更新ラインLcを生成する。その後、処理部91は、ステップS105及びステップS106を実行する。
【0115】
次に、ステップS101に戻って説明する。ステップS101において、油圧ショベル100が走行中でない場合(ステップS101、No)、処理部91は、処理をステップS110に進める。ステップS110において、処理部91の作業機位置情報生成部91Aは、刃先位置P3に基づいて作業機側現況更新ラインLbを生成する。次に、ステップS111に進み、作業機側現況更新ラインLbがグリッド点を通過した場合(ステップS111、Yes)、作業機位置情報生成部91Aは処理をステップS112に進める。ステップS112において、既に施工対象位置のデータが存在していた場合(ステップS112、Yes)、作業機位置情報生成部91Aは処理をステップS113に進める。
【0116】
ステップS113において、作業機位置情報生成部91Aは、グリッド点に存在する施工対象位置のデータのZ座標と、そのグリッド点における作業機側現況更新ラインLbのZ座標とを比較する。次にステップS114に進み、前述した比較の結果、作業機側現況更新ラインLbのZ座標が、グリッド点に存在する、施工対象位置のデータのZ座標よりも小さい場合(ステップS114、Yes)、作業機位置情報生成部91Aは処理をステップS115に進める。ステップS115において、施工位置情報生成部91Cは、作業機側現況更新ラインLbがグリッド点を通過した位置で、そのグリッド点のZ座標を、作業機側現況更新ラインLbのZ座標に更新する。すなわち、施工位置情報生成部91Cは、作業機位置情報としての作業機側現況更新ラインLbを用いて施工位置情報を生成して、グリッド点のZ座標の値を更新する。
【0117】
次に、ステップS111に戻って説明する。作業機側現況更新ラインLbがグリッド点を通過しない場合(ステップS111、No)、処理部91は一処理周期を終了して次の処理周期に移行する。次に、ステップS112に戻って説明する。ステップS112において、既存の施工対象位置のデータが存在していない場合(ステップS112、No)、作業機位置情報生成部91Aは処理をステップS115に進める。ステップS115において、施工位置情報生成部91Cは、作業機側現況更新ラインLbがグリッド点を通過した位置で、そのグリッド点のZ座標を、作業機側現況更新ラインLbのZ座標に更新する。次に、ステップS114に戻って説明する。作業機側現況更新ラインLbのZ座標がグリッド点に存在するデータのZ座標以上である場合(ステップS114、No)、処理部91は一処理周期を終了して次の処理周期に移行する。
【0118】
このような処理により、油圧ショベル100の施工位置情報が最新の情報に更新される。更新された施工位置情報は、施工管理装置90の記憶部92に一旦記憶された後、一日の作業が終了した後又は作業中における所定のタイミングで、記憶部92から外部に読み出される。読み出された施工位置情報は、例えば、施工管理装置90の記憶部92から有線で記憶媒体にダウンロードされて保存されたり、油圧ショベル100の外部にある管理施設のデータサーバー等に通信回線を介して保存されたりする。
【0119】
施工管理装置90に図示しないUSB(Universal Serial Bus)端子を設け、記憶媒体としてのUSBメモリをUSB端子に接続して施工位置情報をダウンロードするようにしてもよい。また、施工管理装置90にSD(Secure Digital)メモリカードスロットを設けて、記憶媒体としてのSDメモリカードを用いて施工位置情報をダウンロードしてもよい。
【0120】
施工管理装置90は、生成した施工位置情報を、表示システム28の表示入力装置38の表示部42に、例えば、施工対象の設計地形データとともにグラフィック表示させることもできる。このようにすることで、油圧ショベル100のオペレータ等は、視覚により施工状況を直感的に認識する。また、油圧ショベル100のオペレータ等は、視覚により掘削が不足している箇所又は修正が必要な箇所を直感的に認識することもできる。また、油圧ショベル100のオペレータ等は、作業現場で施工対象の施工の進捗状況を迅速に確認することも容易である。
【0121】
図19は、表示部42の画面42Pに施工位置情報を表示した一例を示す図である。この表示は、オペレータが掘削作業をしている最中に表示されるものである。掘削作業中は他の画面となるように設定しておき、オペレータが画面42Pの所定の場所(例えばメニューボタン85)に触れることで、画面を遷移させ表示させることもできる画面である。この表示は、施工結果である施工結果情報を分布図として表示させた施工位置情報の分布図を含むものである。側面
図54bには、目標画線79とともに符号TLi、TLdで示す太線が表示される。バケット8(アイコン89B)の刃先8Tが動いた軌跡TLiが施工結果として表示され、履帯5a、5bが走行した軌跡TLdがやはり太線で表示される。
【0122】
正面
図54aは、施工位置情報の分布図を示す。目標とする施工面、すなわち目標面の上をバケット8(アイコン89B)が移動したが掘削がされなかったところは、符号NOPで示す領域である。また、目標面に対して掘削がされ、目標施工面と同等の施工結果であるところは、符号DPで示す領域である。さらに、目標面に対して、深く掘削してしまったところは、符号DNで示す領域である。ここで、符号DNで示す領域は、例えば、表示する色を異ならせることにより掘削された深さの度合いを示す。所定の閾値より深く掘削されたところは、例えば青色で示し、その所定の閾値未満の深さに掘削されたところは、例えば水色で示す。掘削の深さの度合いに応じた色の種類又は数は、所定の場所(例えば、メニューボタン85)に触れて設定画面を呼び出すことで任意に設定することができる。このように施工結果を分布図で表示部42の画面42Pに表示することで、オペレータは施工結果を直観的に視認できる。なお、このような分布図は、後述する施工管理システムの表示装置に同様な形態で表示することもできる。
【0123】
なお、施工結果表示図の施工位置情報の分布図に換えて、
図18に示したステップS105又はステップS111で行われた処理で、推定現況更新ラインがグリッド点を通過した回数をもとに、その回数に応じた分布図、すなわち施工回数分布図を表示部42の画面42Pの正面
図54aに表示することもできる。例えば、回数が所定の回数以上であった施工場所は、赤色で示し、その回数が当該所定の回数未満であった場合は青色で示す。施工回数分布図の色分けの数、すなわち色の種類は、2つに限らず複数設定可能である。なお、施工位置情報の分布図と施工回数分布図とで示される色の種類は、画面42Pの左端のグラフィック情報84に示される。また、施工回数分布図における、施工回数の多さに応じた色の種類や数は、所定の場所(例えば、メニューボタン85)に触れて設定画面を呼び出すことで任意に設定することができる。
【0124】
前述した施工管理装置の動作の一例を示すフローチャートを用いて、施工回数分布図を表示部42の画面42Pに表示させる処理について説明する。ステップS105又はステップS111で行われる処理の回数をカウントし記憶部92に記憶する。表示処理部44は、
図19に示すような施工位置情報の分布図を示したグラフィック表示に代えて、その処理の回数の多さに応じた分布図をグラフィック表示させるようにしてもよい。すなわち、表示処理部44は、走行体側現況更新ラインがグリッド点を通過した回数(ステップS105がYesと判断された回数)又は作業機側現況更新ラインがグリッド点を通過した回数(ステップS111においてYesと判断された回数)を、例えば一日の作業の間でカウントする。そして、表示処理部44は、カウントした回数の多さに応じて施工対象の場所を色分けし分布図としてグラフィック表示させる。オペレータ等は、このようなグラフィック表示を視認することにより、施工対象の施工回数が把握できる。そして、オペレータ等は、この施工回数を示すグラフィック表示から、施工状況を直観的に把握することができる。オペレータが入力部41の所定の場所(例えばメニューボタン85)に触れることで、表示部42の画面が遷移する。このため、オペレータは、
図19に示す施工位置情報の分布図又は前述した施工回数の分布図のいずれか一方を表示部42に表示させることができる。
【0125】
<施工管理システム200>
図20は、本実施形態に係る施工管理システム200を示す図である。施工管理システム200は、前述した施工管理装置90を備える油圧ショベル100A、100Bによる施工状況を管理するものである。管理される油圧ショベル100は、一台でも複数台でもよい。複数台の油圧ショベル100が管理される場合、それらの油圧ショベル100は同一の作業現場で稼働するものであってもよいし、異なる作業現場で稼働するものであってもよい。施工管理システム200は、通信回線201に接続されたデータサーバー203を有している。
【0126】
通信回線201には、油圧ショベル100A、100Bとアンテナ40A、40Bを介して無線で通信する基地局202が接続されている。この無線通信は、地上波通信又は衛星通信を利用することができる。本実施形態において、データサーバー203は、有線で通信回線201と接続されているが、無線通信によって通信回線201と通信できるようになっていてもよい。通信回線201は、インターネット回線を用いることができる。なお、作業現場に、通信回線201及び基地局202を無線LANシステムにより構築して、データサーバー203及び表示装置206を作業現場内の事務所などに設置するようにしてもよい。
【0127】
データサーバー203は、処理部204の記憶部205とを備える。処理部204は、施工計画生成部204Aと、施工計画送信部204Bと、施工位置情報取得部204Cとを有する。データサーバー203には、表示装置206が接続されている。処理部204は、CPU等を備えたコンピュータである。記憶部205は、RAM及びROMの少なくとも一方を含む。施工計画生成部204Aは、油圧ショベル100A、100Bの施工計画を生成する。施工計画生成部204Aは、例えば、油圧ショベル100A、100Bの施工対象の設計面を生成し、記憶部205に記憶させる。施工計画送信部204Bは、施工計画生成部204Aが生成した施工計画、すなわち設計地形データを、通信回線201を介して油圧ショベル100A、100Bの施工管理装置90に送信する。施工位置情報取得部204Cは、油圧ショベル100A、100Bの施工管理装置90が生成した施工位置情報を、通信回線201を介して取得する。
【0128】
施工管理システム200が備えるデータサーバー203は、油圧ショベル100A、100Bから施工位置情報を取得し、記憶部205に記憶させ、施工の日々の進捗状況を管理することができる。また、データサーバー203は、油圧ショベル100A、100Bから取得した施工位置情報を表示装置206に、
図19で示したようなグラフィック表示をさせることもできる。このようにすることで、データサーバー203は、施工の進捗状況を分かりやすく表示させることができるので、管理者は、施工の進捗状況を容易に把握することができる。また、管理者は、施工管理システム200を用いて施工管理装置90が生成した施工位置情報をデータサーバー203にリアルタイムで取得させることも可能である。管理者は、リアルタイムで取得した施工位置情報を利用することにより、次の作業指示及び施工計画を迅速に油圧ショベル100のオペレータに連絡することができる。この連絡は、新たな設計地形データを、施工計画生成部204Aで生成し、施工計画送信部204Bから通信回線201を介して油圧ショベル100A、100Bの施工管理装置90に送信することである。このようにすると、電話又は直接指示という連絡の手段と比較して、迅速かつ正確に新たな施工計画(設計地形データ)をオペレータに示すことができる。
【0129】
以上、施工管理装置90は、油圧ショベル100が走行しているときは、作業機2の位置に関する作業機位置情報を用いず走行装置5の位置に関する走行体位置情報を用いて、油圧ショベル100の施工結果に相当する施工位置情報を生成する。このように、施工管理装置90は、油圧ショベル100の走行中に作業機2が操作された場合でも、走行体位置情報のみを用いて油圧ショベル100の施工結果を生成する。このため、施工管理装置90は、油圧ショベル100の走行時に作業機2が掘削等の作業をしていないにも関わらず、作業機位置情報が用いられることを回避できる。そして、施工管理装置90は、油圧ショベル100が走行中である場合、油圧ショベル100の正しい施工結果を示す走行体位置情報のみを用いて施工結果を生成する。以上のように、施工管理装置90は、作業機2を有する掘削機械としての油圧ショベル100を用いた情報化施工において、施工結果、すなわち変化した施工対象の形状を、確実かつ高精度で、迅速に求めることができる。
【0130】
施工管理装置90を用いることにより、施工後の測量も不要になるので、測量作業の手間も低減される。施工管理装置90は、作業機位置情報を用いる場合、高さ方向における位置が現況よりも低くなった場合に施工位置情報を最新の情報に更新し、新たな走行体位置情報が生成される毎に施工位置情報を更新する。このため、施工管理装置90は、リアルタイムで施工対象の形状を取得することができる。管理者は、施工管理装置90が生成した施工位置情報を利用することにより、次の作業指示及び施工計画を迅速に油圧ショベル100のオペレータに示すことができる。
【0131】
油圧ショベル100は、作業機2を用いて掘削する場合、一定の位置に留まって掘削することが多い。このような施工においては、油圧ショベル100の移動に基づいた施工位置情報は取得できない。施工管理装置90は、掘削時においては、作業機2の位置に関する作業機位置情報を用いて油圧ショベル100の施工結果を生成する。このため、油圧ショベル100が一定の位置に留まって掘削していても、施工結果を精度よく求めることができる。つまり、施工管理装置90は、油圧ショベル100が走行していない場所であって作業機2により掘削等の施工が行われた場所であっても、確実かつ正確に施工位置情報を生成することができる。
【0132】
GNSS又はGPSのみに頼って施工結果を取得しようとすると、油圧ショベル100が低速で走行する場合、GPSセンサの検知能力の限界から、油圧ショベル100が走行しているにも関わらず停車していると判断されてしまい、施工位置情報に誤差が生じる可能性がある。特に油圧ショベル100は、乗用車又はホイールローダ若しくはダンプトラック等の他の建設機械と比べても低速で走行する。このため、油圧ショベル100においては、施工位置情報に誤差が生じる可能性がより高くなる。すなわち、油圧ショベル100が低速で走行した場所の施工位置情報からは、施工がされなかったという結果が得られたり、古い施工結果が更新されないまま残ってしまったりする可能性がある。
【0133】
本実施形態は、油圧ショベル100のオペレータの意思に基づいて操作される走行レバーとしての操作レバー(又はペダル)としての走行操作部材33L、33Rの操作がされたか否かに基づいて、作業機位置情報と走行体位置情報とのいずれか一方を用いて施工位置情報が生成される。このため、油圧ショベル100の走行と停止とを確実に検出できる。その結果、油圧ショベル100が低速で走行した場所の施工位置情報であっても、施工がされたことを確実に検出でき、かつ古い施工結果も確実に更新できる。
【0134】
施工管理装置90は、油圧ショベル100が掘削した面と掘削していない面とを作業現場全体とし、施工位置情報を最新のものに更新することで、作業現場の最新の地形を取得できる。そして、施工管理装置90は、油圧ショベル100が作業現場を走行しても、作業機2によって作業現場を掘削しても、作業機位置情報又は走行体位置情報のいずれか一方を施工位置情報として用いて更新することにより、施工現場の地形を常に最新の形状に更新することができる。
【0135】
以上、本実施形態を説明したが、上述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。例えば、作業機2は、ブーム6、アーム7、バケット8を有しているが、作業機2に装着されるアタッチメントはこれに限られず、バケット8には限定されない。